特許第6563141号(P6563141)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6563141溶融紡糸によるヒアルロン酸塩ファイバーの製造方法及びこれにより製造されたヒアルロン酸塩ファイバー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6563141
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】溶融紡糸によるヒアルロン酸塩ファイバーの製造方法及びこれにより製造されたヒアルロン酸塩ファイバー
(51)【国際特許分類】
   D01F 9/00 20060101AFI20190808BHJP
   A61L 27/20 20060101ALI20190808BHJP
   A61L 27/50 20060101ALI20190808BHJP
   A61L 27/54 20060101ALI20190808BHJP
   A61L 31/14 20060101ALI20190808BHJP
   A61L 31/16 20060101ALI20190808BHJP
   A61L 31/04 20060101ALI20190808BHJP
   A61L 17/10 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
   D01F9/00
   A61L27/20
   A61L27/50
   A61L27/54
   A61L31/14
   A61L31/16
   A61L31/04 120
   A61L17/10
【請求項の数】10
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-531277(P2018-531277)
(86)(22)【出願日】2016年9月1日
(65)【公表番号】特表2018-527486(P2018-527486A)
(43)【公表日】2018年9月20日
(86)【国際出願番号】KR2016009748
(87)【国際公開番号】WO2017039335
(87)【国際公開日】20170309
【審査請求日】2018年3月5日
(31)【優先権主張番号】10-2015-0125088
(32)【優先日】2015年9月3日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518073505
【氏名又は名称】ジンウ バイオ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】JINWOO BIO CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】クォン,ドン コン
(72)【発明者】
【氏名】パク,スン ヒョン
【審査官】 斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−262595(JP,A)
【文献】 特開2009−041117(JP,A)
【文献】 特表2012−501391(JP,A)
【文献】 特表2016−502612(JP,A)
【文献】 特表2016−505722(JP,A)
【文献】 特表2014−533992(JP,A)
【文献】 特表2014−502678(JP,A)
【文献】 特表2015−522720(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0021217(US,A1)
【文献】 韓国公開特許第10−2012−0015655(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 15/00 − 33/18
C08B 37/08
D01D 1/00 − 13/02
D01F 1/00 − 6/96
D01F 9/00 − 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の工程を含む、溶融紡糸によるヒアルロン酸塩ファイバーの製造方法。
(a)重量平均分子量500〜3,000kDaのヒアルロン酸塩の水分含有量を5〜20%に調節する工程、
(b)水分含有量が調節されたヒアルロン酸塩を溶融紡糸装置に入れ、150〜200℃で加熱した後、高圧紡糸してヒアルロン酸塩ファイバーを製造する工程、および
(c)ヒアルロン酸塩ファイバーをエタノール水溶液に浸漬させて表面を硬化させる工程。
【請求項2】
前記ヒアルロン酸塩のpHは6〜8であることを特徴とする、請求項1に記載のヒアルロン酸塩ファイバーの製造方法。
【請求項3】
前記表面を硬化させる工程は、エタノール水溶液に1回浸漬させるか、或いはエタノール水溶液のエタノール濃度を順次増加させながら2〜5回浸漬させることを特徴とする、請求項1に記載のヒアルロン酸塩ファイバーの製造方法。
【請求項4】
前記エタノール水溶液の濃度は30〜99体積%であることを特徴とする、請求項1に記載のヒアルロン酸塩ファイバーの製造方法。
【請求項5】
重量平均分子量500〜3,000kDaのヒアルロン酸塩が100%の純度で含有されたことを特徴とするヒアルロン酸塩ファイバー。
【請求項6】
重量平均分子量500〜3,000kDaのヒアルロン酸塩が含有されており、37℃の食塩水に24時間浸漬したときは、下記式による膨潤度が141〜148%であり、ファイバーの形態が維持されることを特徴とするヒアルロン酸塩ファイバー。
膨潤度(%)=(一定時間経過後のHAファイバーの重量/初期ファイバーの重量)×100
【請求項7】
請求項5または6に記載のヒアルロン酸塩ファイバーを含む手術用縫合糸。
【請求項8】
請求項5または6に記載のヒアルロン酸塩ファイバーを含む整形フィラー。
【請求項9】
請求項5または6に記載のヒアルロン酸塩ファイバーを含むリフティング用糸。
【請求項10】
請求項5または6に記載のヒアルロン酸塩ファイバーを含む組織工学用スキャフォールド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒアルロン酸塩ファイバーに関し、より詳細には、手術用縫合糸、整形フィラー、リフティング用糸、組織工学用スキャフォールド(Scaffold)などに活用可能なヒアルロン酸塩ファイバー及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒアルロン酸(hyaluronic acid、HA)は、分子量500,000乃至13,000,000Daの無色の高粘度多糖類であって、繰り返し単位であるD−グルクロン酸とN−アセチルグルコサミンが(1−3)と(1−4)に交互に結合されている。
【0003】
HAは、さまざまな人体生理活性に関与し、分子量に応じて多様な生理活性を有することが知られている。特に、高分子のヒアルロン酸は、人体充填剤(space−filler)として使用され、血管新生阻害(anti−angiogenic)、免疫抑制(Immunosuppressive)などの機能を有することが知られている。
【0004】
したがって、現在2.0MDa以上のHAを用いて高粘性のハイドロゲル形態にして、関節注射剤、整形フィラー及び内・外科手術用癒着防止剤として多く活用されている。ところが、ほとんどの製品は、高粘性水溶液またはハイドロゲルの液状であって活用性、保管性及び加工性の面で制限がある。特に、液状として活用するときにHA自体の安定性(Stability)に劣って製品の保管及び流通に注意が要求され、実際、製品内のHA含有量が1〜5%程度の低濃度であって、患者体内への投入の際に高濃度の高用量投入が不可能であるだけでなく、高い体積による投入圧力により患者にとって大きな苦痛を伴うことになる。
【0005】
また、HAを液状として体内投入するとき、体内に存在するさまざまな分解酵素などにより急速に分解されて分子量が低くなることにより、体内持続性も低くなり、治療部位に対する効果が低下するという欠点がある。
【0006】
よって、HAの安定性、活用性などを向上させるために、韓国公開特許第2014−0100469号及び日本特開2011−31034号では、安全性が立証された分解性高分子を主原料として、HAを一部少量、10%以内でブレンディング(Blending)またはコーティングさせた縫合糸を開示しているが、HAの含有量が低いという問題点があった。
【0007】
HA単独でファイバー(fiber)を製造すると、HA含有量を増やすことはできるものの、一般にHA高分子多糖体内の強い水素結合に起因する溶融不可によりHA自体のみでファイバーを製造する方法はまだ知られていない。
【0008】
そこで、本発明者らは、かかる問題点を解決するために努力した結果、非溶融性のヒアルロン酸塩の水分含有量を前処理によって調節した後、溶融紡糸させた場合、手術用縫合糸、整形フィラー、組織工学用スキャフォールド(Scaffold)などに活用可能なヒアルロン酸ナトリウムファイバ(fiber)を製造することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、生体適合性、皮膚弾力能及び水分保持力に優れたヒアルロン酸塩を主成分とするヒアルロン酸塩ファイバー及びその製造方法を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、安全性及び生体適合性に優れたヒアルロン酸塩ファイバーで製造された手術用縫合糸、整形フィラー、リフティング用糸及び組織工学用スキャフォールド(Scaffold)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は、(a)重量平均分子量500〜3,000kDaのヒアルロン酸塩の水分含有量を5〜20%に調節する工程と、(b)水分含有量が調節されたヒアルロン酸塩を溶融紡糸装置に入れ、150〜200℃に加熱した後、高圧紡糸してヒアルロン酸塩ファイバーを製造する工程と、(c)ヒアルロン酸塩ファイバーをエタノール水溶液に浸漬させて表面を硬化させる工程とを含む、溶融紡糸によるヒアルロン酸塩ファイバーの製造方法を提供する。
【0012】
本発明において、前記ヒアルロン酸塩のpHは6〜8であることを特徴とする。
【0013】
本発明において、前記表面を硬化させる工程は、エタノール水溶液に1回浸漬させるか、或いはエタノール水溶液のエタノール濃度を順次増加させながら2〜5回浸漬させることを特徴とする。
【0014】
本発明において、前記エタノール水溶液の濃度は30〜99体積%であることを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、前記方法で製造されたヒアルロン酸塩ファイバーを提供する。
【0016】
また、本発明は、前記ヒアルロン酸塩ファイバーを含む手術用縫合糸、整形フィラー、リフティング用糸及び組織工学用スキャフォールド(Scaffold)を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明のヒアルロン酸塩ファイバーは、ヒアルロン酸を主成分として製造され、安全性(Safety)及び生体適合性に優れるだけでなく、通常の液状ハイドロゲル製品とは異なり、微生物汚染がなく、管理および使用が容易であるため、様々な形態の組織修復用製剤として利用することができる。
【0018】
また、本発明のヒアルロン酸塩ファイバーは、固相の製品であって、ヒアルロン酸塩の濃度に対する体積が非常に小さいため、体内投入時の患者の痛みや不便を最小限に抑えて治療効果を極大化することができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明で使用した溶融紡糸装置(Spinning Apparatus)の説明図である。
図2】高分子のヒアルロン酸塩の水分含有量を調整する前と水分含有量を10%に調整した後にそれぞれ測定したDSCの結果である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明者らは、強い水素結合により溶融がなされないヒアルロン酸塩を湿潤処理させる場合、溶融紡糸が可能であるので、高含量のヒアルロン酸塩を含むヒアルロン酸塩ファイバーを製造することができること、および表面硬化工程によってヒアルロン酸塩ファイバーの物性を調節することができることを見出し、本発明を完成した。
【0021】
本発明の一実施形態では、水分含有量が調節されたヒアルロン酸ナトリウムの溶融に起因する吸熱ピークを示差走査熱量計(Differential Scanning Calorimeter)(DSC)によって測定して確認し、測定結果に応じてヒアルロン酸ナトリウム内の水分含有量を5〜20%に調節した後、150〜200℃で溶融紡糸してヒアルロン酸ナトリウムファイバー(Fiber)を製造した。そして、物性を向上させるために、ヒアルロン酸ナトリウムファイバーを50%、70%および95%のエタノール水溶液に順次浸漬させて表面を硬化させることでヒアルロン酸塩ファイバー(Fiber)を製造した。
【0022】
その結果、製造されたヒアルロン酸ナトリウムファイバー(Fiber)は、生理食塩水に長時間浸漬しても物性及び形態維持が可能であることを確認した。
【0023】
したがって、本発明は、一態様において、(a)重量平均分子量500〜3,000kDaのヒアルロン酸塩の水分含有量を5〜20%に調節する工程と、(b)水分含有量が調節されたヒアルロン酸塩を溶融紡糸装置に入れ、150〜200℃で加熱した後、高圧紡糸してヒアルロン酸塩ファイバーを製造する工程と、(c)ヒアルロン酸塩ファイバーをエタノール水溶液に浸漬させて表面を硬化させる工程とを含んでなる、溶融紡糸によるヒアルロン酸塩ファイバーの製造方法に関する。
【0024】
本発明において、ヒアルロン酸塩は、ヒアルロン酸に塩が結合されているものであって、ヒアルロン酸ナトリウム、ヒアルロン酸カルシウム、ヒアルロン酸カリウムなどを例示することができるが、これに限定されない。
【0025】
前記ヒアルロン酸塩の水分含有量の調節は、ヒアルロン酸塩の水分を調節することができるものであれば、その方法に制限なく行うことが可能である。例えば、恒温恒湿器を用いてヒアルロン酸塩の水分を調節することができる。
【0026】
ヒアルロン酸塩内の水分含有量が5%未満である場合、高温高圧下で溶融紡糸による紡糸(Spinning)の際に溶融の困難により紡糸(Spinning)に困難さがあり、ヒアルロン酸塩の水分含有量が20%を超える場合、紡糸(Spinning)後にファイバー(fiber)内の高い水分含有量により硬化過程後にもファイバー(Fiber)の形態維持が困難であるという問題点がある。
【0027】
本発明では、水分含有量が5〜20%に調節されたヒアルロン酸塩を溶融紡糸装置(図1参照)の溶融貯蔵部(melt reservoir)に入れ、150〜200℃で加熱した後、高圧紡糸させてヒアルロン酸塩ファイバーを製造することを特徴とする。
【0028】
本発明に係るヒアルロン酸塩ファイバーは、ヒアルロン酸塩単独で製造が可能であるが、活用分野に応じて、当業分野で通常用いられる担体または賦形剤成分をさらに含むことができ、その種類及び含有量の範囲は特に限定されない。
【0029】
本発明の主な用途である組織修復用製剤として活用するとき、より強化された物性及び機能性を確保するために薬理学的に許容される生体適合性製剤であるセルロース系素材、および分解性に優れた高分子、例えばポリエチレン、ポリジオキサノン、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルピロリドン、ポリ乳酸などをヒアルロン酸と混合し、紡糸(Spinning)して製造することができる。
【0030】
ヒアルロン酸塩を溶融紡糸し、乾燥させて製造したヒアルロン酸塩ファイバーをそのまま使用する場合、ヒアルロン酸自体の水分敏感性により保管及び物性維持が難しい安定性(Stability)問題がある。
【0031】
よって、かかる問題を解決するために、本発明では、製造されたヒアルロン酸塩ファイバーをエタノール水溶液に浸漬させて表面を硬化させることを特徴とする。
【0032】
ヒアルロン酸ナトリウムファイバーの表面硬化は、90〜99体積%のエタノール水溶液に1回浸漬(浸漬時間1秒内外)させるか、或いはエタノール水溶液のエタノール濃度を順次増加させながら2〜5回浸漬させること(浸漬時間1秒内外)を特徴とする。
【0033】
表面硬化のために使用されるエタノール水溶液の濃度は30〜99体積%、好ましくは50〜95体積%である。
【0034】
また、本発明では、表面硬化されたヒアルロン酸ナトリウムファイバーをグルタルアルデヒド(glutaraldehyde)、エピクロロヒドリン(epychlorohydrin)などの架橋合成化学物質の水溶液、またはキトサン(chitosan)、ポリリシン(polylysine)などの水溶化の際に陽イオン性を帯びる天然高分子物質の水溶液に浸漬させて表面を架橋させる工程をさらに含むことを特徴とする。このように表面が一部架橋されたヒアルロン酸ナトリウムファイバーは分解抵抗性及び機械的物性が向上できる。
【0035】
本発明は、別の態様において、上記の方法で製造されたヒアルロン酸塩ファイバーに関する。
【0036】
本発明によって製造されたヒアルロン酸塩ファイバーは、純度100%のヒアルロン酸塩で製造することが可能であり、表面が固く硬化または架橋されており、従来の液状ヒアルロン酸塩組織修復用製品とは異なり、微生物汚染がなく、管理及び使用が容易であるため、様々な形態の組織修復用製剤として利用できる。
【0037】
したがって、本発明は、別の態様において、前記ヒアルロン酸塩ファイバーを含む手術用縫合糸、整形フィラー、リフティング用糸及び組織工学用スキャフォールド(Scaffold)に関する。
【実施例】
【0038】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。これらの実施例は本発明を例示するためのものに過ぎない。本発明の範囲がこれらの実施例によって制限されるものと解釈されないのは、当該分野における通常の知識を有する者にとって自明のことであろう。
【0039】
実施例1:湿潤処理によるHAペースト(Paste)製造
分子量1.2MDaのヒアルロン酸ナトリウム(Hi−Aqua(登録商標)、(株)ジンウバイオ)を恒温恒湿器を用いて湿潤処理した。すなわち、相対湿度60%の条件下でヒアルロン酸ナトリウム10gを基準に1〜3時間放置してヒアルロン酸ナトリウム内の水分含有量を5〜30%に調整した。参考として、湿潤処理前のHA内の水分含有量は2%程度であった。
【0040】
実験例1:示差走査熱量計(DSC)による測定
示差走査熱量計(DSC6100、Seiko、Japan)を用いて、30〜250℃の温度範囲、10℃/minの昇温速度条件で湿潤処理前のヒアルロン酸ナトリウムと実施例1で湿潤処理したヒアルロン酸ナトリウムの吸熱ピークをそれぞれ測定した。DSC測定の結果、湿潤処理が施されていないヒアルロン酸ナトリウム粉末の場合は、溶融に起因した吸熱ピークが全く感知されなかったが、これに対し、水分含有量が5%以上に調整されたヒアルロン酸ナトリウムの場合は、温度区間150〜200℃付近で溶融に起因した吸熱ピークが強く感知されることを確認することができた。よって、上記温度区間でヒアルロン酸ナトリウムの溶融紡糸が可能であることが分かった。
【0041】
実施例2:溶融紡糸によるHAファイバー(Fiber)製造
実施例1で湿潤処理したヒアルロン酸ナトリウムを溶融紡糸装置(Melt Spinning Apparatus)の溶融貯蔵部に入れ、これを150〜200℃で窒素圧処理して紡糸(spinning)させた後、常温で一般乾燥させてヒアルロン酸ナトリウムファイバー(HAFiber)を製造した。
【0042】
実施例3:溶融紡糸及び表面硬化によるHAファイバー(Fiber)製造
実施例2と同様の方法で紡糸(spinning)させて製造したHAファイバー(Fiber)を50%エタノール、70%エタノール、最終95%エタノールに順次浸漬させて表面を硬化させた後、常温で一般乾燥させてヒアルロン酸ナトリウムファイバー(HA Fiber)を製造した。
【0043】
実施例4:溶融紡糸及び表面硬化によるHAファイバー(Fiber)製造
実施例2と同様の方法で紡糸(spinning)させて製造したHAファイバー(Fiber)を95%エタノールに直ちに浸漬させて表面を硬化させた後、常温で一般乾燥させてヒアルロン酸ナトリウムファイバー(HA Fiber)を製造した。
【0044】
実施例5:溶融紡糸及び表面硬化によるHAファイバー(Fiber)製造
実施例2と同様の方法で紡糸(spinning)させて製造したHAファイバー(Fiber)を50%エタノールに直ちに浸漬させて表面を硬化させた後、常温で一般乾燥させてヒアルロン酸ナトリウムファイバー(HA Fiber)を製造した。
【0045】
実験例2:水分膨潤度(SwellingRatio)の測定
実施例2〜5で得たヒアルロン酸ナトリウムファイバー(HA Fiber)を37℃、生理食塩水に浸漬させ、時間による膨潤度を測定した。その結果を表1に示す。
【0046】
参考として、膨潤度は次の式で求めた。
【0047】
潤度(%)=(一定時間経過後のHAファイバーの重量/初期ファイバーの重量)
【0048】
【表1】
【0049】
表1に示すように、表面硬化が行われていない実施例2のヒアルロン酸ナトリウムファイバー(HA Fiber)は、生理食塩水に浸漬して2時間が経過したときにファイバー(Fiber)の形態維持が不可能であって膨潤度の測定が不可能であった。
【0050】
30%、50%および95%エタノール水溶液で表面硬化した実施例3のヒアルロン酸ナトリウムファイバー(HA Fiber)は、生理食塩水に浸漬して24時間が経過した後も膨潤度が148%程度であって、硬化過程によって表面が固く硬化してファイバー(Fiber)の形態維持が可能であることを確認した。
【0051】
また、95%エタノール水溶液で表面硬化した実施例4のヒアルロン酸ナトリウムファイバー(HA Fiber)は、生理食塩水に浸漬して24時間が経過した後もファイバー(Fiber)の形態が維持されるが、50%エタノール水溶液で表面硬化した実施例5のヒアルロン酸ナトリウムファイバー(HA Fiber)は、生理食塩水に浸漬して5時間が経過したときにファイバー(Fiber)の形態維持が不可能であることが分かった。
【0052】
以上、本発明の内容の特定の部分を詳細に述べたので、当該分野における通常の知識を有する者にとって、このような具体的な記述は単に好適な実施形態に過ぎず、本発明の範囲を制限するものではないことは明らかである。よって、本発明の実質的な範囲は添付された請求の範囲とそれらの等価物によって定められるといえる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明のヒアルロン酸塩ファイバーは、手術用縫合糸、整形フィラー、組織工学用スキャフォールド(Scaffold)などに活用可能である。
図1
図2