特許第6563142号(P6563142)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6563142ミリ秒アニールシステムのための予熱プロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6563142
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】ミリ秒アニールシステムのための予熱プロセス
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/26 20060101AFI20190808BHJP
   H01L 21/265 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
   H01L21/26 F
   H01L21/265 602B
【請求項の数】20
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2018-533755(P2018-533755)
(86)(22)【出願日】2017年1月27日
(65)【公表番号】特表2019-505988(P2019-505988A)
(43)【公表日】2019年2月28日
(86)【国際出願番号】US2017015211
(87)【国際公開番号】WO2017136222
(87)【国際公開日】20170810
【審査請求日】2018年6月26日
(31)【優先権主張番号】62/289,519
(32)【優先日】2016年2月1日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502278714
【氏名又は名称】マットソン テクノロジー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Mattson Technology, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ポール ティマンズ
【審査官】 宇多川 勉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−222747(JP,A)
【文献】 特開2010−165733(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0335685(US,A1)
【文献】 特開平04−215423(JP,A)
【文献】 特開平06−045322(JP,A)
【文献】 特開2009−164451(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/26
H01L 21/265
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミリ秒アニールシステムのための熱処理プロセスにおいて、前記プロセスは、
ミリ秒アニールシステムのプロセスチャンバにおけるウェーハ支持部に基板を収容すること、
前記基板を中間温度に加熱すること、および
前記中間温度への前記基板の加熱次いでミリ秒加熱閃光を使用して前記中間温度を上回る温度に前記基板を加熱すること、を含み、
前記ミリ秒加熱閃光は、毎秒10℃を上回る速度で前記基板の上面全体を加熱するように構成されており、
前記中間温度への前記基板の加熱の前に、当該プロセスは、ソーク期間中に維持されるべきプリベーク温度に前記基板を加熱することを含んでおり
前記基板を中間温度に加熱することは、前記プリベーク温度から前記中間温度まで前記基板の温度を昇温させることによって行われる、
ミリ秒アニールシステムのための熱処理プロセス。
【請求項2】
前記プリベーク温度は、前記基板について酸化の反応速度を減じるように選択される、請求項1記載の熱処理プロセス。
【請求項3】
前記プリベーク温度は、前記基板について中間層の成長を阻止するように選択される、請求項1記載の熱処理プロセス。
【請求項4】
前記プリベーク温度は、約200℃〜約500℃の範囲である、請求項1記載の熱処理プロセス。
【請求項5】
前記ソーク期間は約0.5秒〜約10分である、請求項1記載の熱処理プロセス。
【請求項6】
前記ソーク期間は約100秒未満である、請求項1記載の熱処理プロセス。
【請求項7】
前記ソーク期間は約30秒未満である、請求項1記載の熱処理プロセス。
【請求項8】
当該プロセスは、前記プロセスチャンバ内に雰囲気ガスを導入することを含んでいる、請求項1記載の熱処理プロセス。
【請求項9】
前記雰囲気ガスは、窒素、アルゴン、またはヘリウムを含んでいる、請求項8記載の熱処理プロセス。
【請求項10】
前記雰囲気ガスは大気圧である、請求項8記載の熱処理プロセス。
【請求項11】
前記雰囲気ガスは、約1トル未満の圧力にある、請求項8記載の熱処理プロセス。
【請求項12】
前記雰囲気ガスは、水素、重水素、アンモニア、またはヒドラジン種のうちの1つ以上を含んでいる、請求項8記載の熱処理プロセス。
【請求項13】
当該プロセスは、化学的還元種を生成するためにプラズマを誘導することを含んでいる、請求項1記載の熱処理プロセス。
【請求項14】
当該プロセスは、UV光を使用して種を生成することを含んでいる、請求項1記載の熱処理プロセス。
【請求項15】
ミリ秒アニールシステムにおいて基板を熱処理するための方法であって、前記方法は、
ミリ秒アニールシステムのプロセスチャンバを上部チャンバおよび下部チャンバに分割するウェーハ面プレートを有する前記プロセスチャンバ内に、基板を収容するステップと、
前記下部チャンバ近くに位置する1つ以上の加熱源を使用して前記基板をプリベーク温度に加熱するステップと、を含んでおり、
ソーク期間中に、当該方法は、前記基板の温度をほぼ前記プリベーク温度に維持するステップを有していて、前記ソーク期間後に、当該方法は、昇温フェーズ中に、前記基板の温度を前記プリベーク温度から中間温度へと上昇させる昇温過程を用いて前記基板を加熱するステップを含んでおり、
当該方法は、前記昇温フェーズ中に前記基板の温度を前記プリベーク温度から前記中間温度に昇させるための前記基板の加熱後に、リ秒加熱閃光を使用して前記中間温度を上回る温度に前記基板を加熱するステップを含んでおり前記ミリ秒加熱閃光は、毎秒10℃を上回る速度で前記基板の上面全体を加熱するように構成されている、
ミリ秒アニールシステムにおいて基板を熱処理するための方法。
【請求項16】
前記ソーク期間前または前記ソーク期間中に、当該方法は、前記プロセスチャンバ内に雰囲気ガスを導入するステップを含んでいる、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記雰囲気ガスは、水素、重水素、アンモニア、またはヒドラジン種のうちの1つ以上を含んでいる、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記ソーク期間前または前記ソーク期間中に、当該方法は、化学的還元種を生成するために前記プロセスチャンバ内にプラズマを誘導するステップを含んでいる、請求項15記載の方法。
【請求項19】
前記プリベーク温度は、約200℃〜約500℃の範囲である、請求項15記載の方法。
【請求項20】
前記ソーク期間は約0.5秒〜約10分である、請求項15記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本願は、2016年2月1日に出願された、米国仮特許出願第62/289,519号、発明の名称「Pre−Heat Processes for Millisecond Anneal System」の優先権の利益を主張するものであり、この文献は参照によって本願に組み込まれる。
【0002】
分野
本発明は、一般的に、基板、例えば半導体基板を処理するために使用される熱プロセスチャンバに関し、より詳細にはミリ秒アニール熱プロセスチャンバに関する。
【0003】
背景技術
ミリ秒アニールシステムは、基板、例えばシリコンウェーハを超高速に熱処理するための半導体プロセスに使用することができる。半導体プロセスにおいては、ドーパント種の拡散を制御しつつ、それと同時に、注入ダメージを回復させるため、堆積された層の品質を向上させるため、層界面の品質を向上させるため、ドーパントを活性化させるため、また他の目的を達成するために、高速な熱処理をアニールステップとして使用することができる。
【0004】
毎秒10℃を上回ることができる割合で基板の上面全体を加熱するために、集中的で短時間の露光を使用することによって、半導体基板のミリ秒の、または超高速の温度処理を達成することができる。基板の一方の表面のみを高速に加熱することによって、基板の厚さにわたり大きい温度勾配を生じさせることができ、その一方で、基板のバルクは、露光前の温度を維持する。したがって、基板のバルクはヒートシンクとして機能し、その結果、上面の高速な冷却速度が生じる。
【0005】
概要
本発明の実施の形態の態様および利点は、下記の明細書において部分的に明らかになるか、明細書から理解されるか、または実施の形態の実践によって理解される。
【0006】
本発明の1つの例示的な態様は、ミリ秒アニールシステムのための熱処理プロセスに関する。このプロセスは、ミリ秒アニールシステムのプロセスチャンバにおけるウェーハ支持体上に基板を収容すること;基板を中間温度に加熱すること;ミリ秒加熱閃光を使用して基板を加熱すること;を含んでいる。中間温度への基板の加熱の前に、このプロセスは、ソーク期間のためのプリベーク温度への基板の加熱を含んでいてよい。
【0007】
本発明の他の例示的な態様は、基板を熱処理するための方法に関する。この方法は、プロセスチャンバを、上部チャンバおよび下部チャンバに分割するウェーハ面プレートを有するプロセスチャンバ内に基板を収容するステップを含む。この方法は、下部チャンバ近くに位置する1つ以上の加熱源を使用して基板をプリベーク温度に加熱するステップを含む。ソーク期間中、この方法は、基板の温度をほぼプリベーク温度に維持するステップを含む。ソーク期間後、この方法は、基板の温度を中間温度へと上昇させるために基板を加熱するステップを含んでいてよい。
【0008】
本発明の他の例示的な態様は、半導体基板を熱処理するための、システム、方法、装置およびプロセスに関する。
【0009】
種々の実施の形態のそれらの特徴、態様および利点ならびに他の特徴、態様および利点は、下記の明細書および添付の特許請求の範囲を参照することにより一層理解されるであろう。本願に組み込まれ、また本願の一部を成す添付の図面は、本発明の実施の形態を示しており、また明細書と共に、関連する原理を説明するために用いられる。
【0010】
当業者に対する実施の形態の詳細な説明を、添付の図面を参照しながら下記に記す。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施例による、例示的なミリ秒アニール加熱プロフィールを示す。
図2】本発明の実施例による、例示的なミリ秒アニールシステムの一部の例示的な斜視図を示す。
図3】本発明の実施例による、例示的なミリ秒アニールシステムの分解図を示す。
図4】本発明の実施例による、例示的なミリ秒アニールシステムの断面図を示す。
図5】本発明の実施例による、ミリ秒アニールシステムにおいて使用される例示的なランプの斜視図を示す。
図6】本発明の実施例による、ミリ秒アニールシステムのウェーハ面プレートにおいて使用される例示的なエッジ反射器を示す。
図7】本発明の実施例による、ミリ秒アニールシステムにおいて使用することができる例示的な反射器を示す。
図8】本発明の実施例による、ミリ秒アニールシステムにおいて使用することができる例示的なアークランプを示す。
図9】本発明の実施例による、例示的なアークランプの動作を示す。
図10】本発明の実施例による、例示的なアークランプの動作を示す。
図11】本発明の実施例による、例示的な電極の断面図を示す。
図12】本発明の実施例による、ミリ秒アニールシステムにおいて使用される例示的なアークランプに水およびガス(例えばアルゴンガス)を供給するための例示的な閉ループシステムを示す。
図13】本発明の実施例による、ミリ秒アニールシステムのための例示的な温度測定システムを示す。
図14】本発明の実施例による、半導体基板を加熱するためのタングステンハロゲンランプを備えている例示的なミリ秒アニールシステムを示す。
図15】本発明の実施例による、ミリ秒アニール閃光用の中間温度への昇温前の、酸化種を放出するためのソーク期間中のプリベークによる加熱サイクルの例を示す。
図16】本発明の実施例による、例示的な方法のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下では、複数の実施の形態をより詳細に説明し、またそれらの実施の形態のうちの1つまたは複数の例は、図面に図示されている。各実施例は、実施の形態の説明を目的として表されており、本発明の限定を目的として表されたものではない。実際には、当業者であれば、本発明の範囲または精神から逸脱することなく、種々の修正および変更を実施の形態に対して行えることが分かるであろう。例えば、1つの実施の形態の一部として図示または説明された特徴を別の実施の形態と共に用いて、さらに別の実施の形態を創作することができる。したがって、本発明の態様がそのような修正および変更をカバーすることが意図されている。
【0013】
概観
本発明の例示的な態様は、基板と誘電体膜との間の界面における酸化物の成長を低減する、または制限するためのミリ秒アニールシステムのための予熱プロセスに関する。説明および考察を目的として、本発明の態様を、「ウェーハ」または半導体ウェーハを参照しながら考察する。当業者であれば、本明細書における開示内容によって、本発明の例示的な態様を、任意の半導体基板または他の適切な基板に関連させて使用できることを理解するであろう。さらに、数値と関連させた「約」という語の使用は、記載された数値の10%以内を表すことが意図されている。
【0014】
毎秒10℃を上回ることができる割合でウェーハの上面全体を加熱するために、集中的で短時間の露光(例えば「閃光」)を使用することによって、半導体ウェーハのミリ秒の、または超高速の熱処理を達成することができる。典型的な熱処理サイクルには、以下のことが含まれると考えられる:(a)冷たい半導体基板をチャンバに搬入すること;(b)例えば窒素ガス(大気圧)によってチャンバをパージすること;(c)半導体基板を中間温度Tに加熱すること;(d)ウェーハのバルクの温度をTに維持しながら、閃光による露光でもって半導体基板の上面をミリ秒にわたり加熱すること;(e)半導体基板のバルクをヒートシンクに伝導性に接続した状態での半導体基板の上面の伝導冷却によって急速に冷却すること;(f)大気圧のプロセスガスを冷却剤として用いて、熱放射および熱対流によって半導体基板のバルクを緩慢に冷却すること;(g)半導体基板を再びカセットへと搬送すること。
【0015】
熱処理サイクルにおけるこれらのプロセスステップの正確なパラメータ(例えば、持続時間、温度設定点、加熱率など)はいわゆるプロセスレシピに予め記載されている。このレシピをユーザによって編集することができ、また修正することができる。電子システムコントローラによって、実行時に、レシピを実施することができる。コントローラは、1つまたは複数のプロセッサおよび1つまたは複数のメモリデバイスを含むことができる。メモリデバイスは、レシピをコンピュータ可読命令として記憶することができ、このコンピュータ可読命令が、1つまたは複数のプロセッサによって実行されると、コントローラによってレシピが実施される。
【0016】
システムは、1つまたは複数のメモリデバイスに記憶されている、事前に規定された複数のレシピを有することができる。用途または熱処理のタイプによって、どのレシピが実施されるかを決定することができる。例えば25個の半導体基板を保持するカセットを収容しているFOUP(Front Opening Unified Pods)によって、半導体基板をシステムに搬入することができる。25個の半導体基板のエンティティは、半導体基板の1つの「バッチ」または1つの「ロット」を成すことができる。一般的に、1つのロットは同一のレシピによって処理される。同一のレシピを用いる複数のロットの処理間に休止期間が存在しない場合、システムは連続モードで稼働していると言える。
【0017】
このような処理サイクルが実施されるプロセスチャンバは典型的には、大気圧で制御されたガス雰囲気により作動される。幾つかの用途においては、酸素の存在を回避しなければならない。この目的のために、雰囲気ガスは純粋な窒素であってよい。アンモニア、水素、重水素、フォーミングガス、またはこれらの混合物のような別のガスを使用することもできる。他の用途は、広い範囲のガス雰囲気、例えば、酸素、オゾン、NOおよびNOのような窒素酸化物、酸素と水素の混合物、NFまたはHClのようなハロゲン含有化合物、を使用することができる。
【0018】
前のプロセスステップにおいて基板上に膜層(例えば、誘電体膜層)が堆積されている場合には、基板の熱処理中に膜の下で酸化物が成長することがある。膜自体内の残留酸素が酸化剤となることがある。酸化物はしばしば、半導体ウェーハのシリコンまたはシリコン・ゲルマニウム表面の界面に形成された酸化シリコンであり得る。このような酸化物は、装置の電気的パラメータの劣化をもたらす恐れがある。
【0019】
例えば、堆積膜は、比較的高い誘電率を有する材料の膜であり得る。これら高誘電率(high-k)膜は、二酸化シリコンよりも大きい誘電率を有する。高誘電率膜は、トランジスタ用のゲート誘電体、またはキャパシタに用いられる誘電体を形成するためにしばしば使用される。これらの用途では、単位面積あたりの容量を最大化または増加させることが有効であり得る。しかしながら、高誘電率膜と半導体基板との間に酸化物が成長した場合、これは単位面積あたりの容量を減少させる傾向にある。
【0020】
酸化速度は、酸化種の濃度および温度とともに上昇する。高誘電率膜はしばしば、原子層堆積法(ALD)または有機金属化学気相成長法(MOCVD)によって堆積され、その結果、堆積プロセスに使用される化学前駆体のような堆積プロセスからの残存不純物を含むことがある。例えば、HO、OH、塩素または炭素のような種が膜内に残ることがある。これらの種の幾つかは、基板の望ましくない酸化を増加させることがあり、またはさもなければ電気的特性を低下させる場合がある。
【0021】
膜から残留酸素を迅速に除去する1つのアプローチは、低圧水素雰囲気を用いることであってよい。水素は酸素種と化学反応することができ、すなわち生成される酸化物を還元することができる。
【0022】
本発明の例示的な態様は、半導体ウェーハと誘電体膜との間の界面における酸化物の成長を低減するまたは制限する予熱プロセスを用いて半導体基板を熱処理することに関する。幾つかの実施の形態では、通常のミリ秒アニール加熱サイクルが実施される前に、半導体基板を、室温よりも高いプリベーク温度へと加熱することができる。
【0023】
例えば1つの実施の形態では、熱処理プロセスは、ミリ秒アニールシステムのプロセスチャンバにおけるウェーハ支持体上に基板を収容すること;基板を中間温度に加熱すること、ミリ秒加熱閃光を使用して基板を加熱すること、を含んでいてよい。中間温度への基板の加熱の前に、このプロセスは、ソーク期間のためにプリベーク温度へ基板を加熱することを含んでいてよい。
【0024】
幾つかの実施の形態において、プリベーク温度は、基板に付随する酸化の反応速度を減じるように選択される。幾つかの実施の形態において、プリベーク温度は、基板に付随する中間層の成長を阻止するように選択される。例えば、幾つかの実施の形態では、プリベーク温度は、約200℃〜約500℃の範囲である。幾つかの実施の形態では、ソーク期間は、約100秒未満、30秒未満のように、約0.5秒〜約10分であってよい。
【0025】
幾つか実施の形態では、このプロセスは、プロセスチャンバ内に雰囲気ガスを導入することを含んでいてよい。幾つかの実施の形態においては、雰囲気ガスは、窒素、アルゴン、またはヘリウムを含んでいてよい。幾つかの実施の形態においては、雰囲気ガスは大気圧であってよい。幾つかの実施の形態においては、雰囲気ガスは約1トル未満の圧力であってよい。幾つかの実施の形態では、雰囲気ガスは、水素、重水素、アンモニア、またはヒドラジン種のうちの1つ以上を含んでいてよい。幾つかの実施の形態では、このプロセスは、化学的還元種を生成するためにプラズマを誘導することを含んでいる。幾つかの実施の形態では、励起された種およびラジカルを生成するためにUV光源が使用されてよい。
【0026】
本発明の他の例示的な態様は、基板を熱処理するための方法に関する。この方法は、プロセスチャンバを、上部チャンバおよび下部チャンバに分割するウェーハ面プレートを有するプロセスチャンバ内に基板を収容するステップを含む。この方法は、下部チャンバ近くに位置する1つ以上の加熱源を使用して基板をプリベーク温度に加熱するステップを含む。ソーク期間中、この方法は、基板の温度をプリベーク温度付近に維持するステップを含む。ソーク期間後、この方法は、基板の温度を中間温度へと上昇させるために基板を加熱するステップを含んでいてよい。幾つかの実施の形態では、プリベーク温度は、約200℃〜約500℃の範囲であってよい。幾つかの実施の形態では、ソーク期間は約0.5秒〜約10分であってよい。
【0027】
幾つかの実施の形態では、この方法は、ソーク期間前またはソーク期間中に、プロセスチャンバ内に雰囲気ガスを導入するステップを含んでいてよい。雰囲気ガスは、水素、重水素、アンモニア、またはヒドラジン種のうちの1つ以上を含んでいてよい。幾つかの実施の形態では、この方法は、ソーク期間前またはソーク期間中に、化学的還元種を生成するためにプラズマをプロセスチャンバ内へと誘導するステップを含んでいてよい。幾つかの実施の形態では、励起された種およびラジカルを生成するためにUV光が使用されてよい。
【0028】
幾つかの実施の形態では、ソーク期間後、この方法は、基板の温度を中間温度へと上昇させるための基板を加熱するステップを含んでいてよい。中間温度への基板の加熱後に、この方法は、ミリ秒加熱閃光を使用して基板を加熱するステップを含んでいてよい。
【0029】
例示的なミリ秒アニールシステム
例示的なミリ秒アニールシステムは、集中的で短時間の露光を提供して、例えば約10℃/sを上回ることができる割合で、ウェーハの上面を加熱するように構成することができる。図1には、ミリ秒アニールシステムを使用して達成される、半導体基板の例示的な温度プロフィール(温度変化)100が示されている。図1に図示されているように、半導体基板(例えば、シリコンウェーハ)のバルクが、昇温フェーズ102中に中間温度Tに加熱される。中間温度は、約450℃〜約900℃の範囲であってよい。中間温度Tに達すると、半導体基板の上面を、非常に短い集中的な閃光に晒すことができ、その結果、約10℃/sまでの加熱の割合(速度)が得られる。窓110は、短い集中的な閃光中の、半導体基板の温度プロフィールを示す。曲線112は、閃光による露光中の、半導体基板の上面の急速な加熱を示す。曲線116は、閃光による露光中の、半導体基板のその他の部分またはバルクの温度を表す。曲線114は、ヒートシンクとして機能する半導体基板のバルクを介する、半導体基板の上面の伝導冷却による急速な冷却を示す。半導体基板のバルクは、基板に関する迅速な上面冷却速度を生じさせるヒートシンクとして機能する。曲線104は、冷却剤としてのプロセスガスを用いる、熱放射および熱対流による半導体基板のバルクの緩慢な冷却を示す。本発明の例示的な態様によれば、熱処理プロセスは、基板を中間温度に加熱する前に、半導体基板をソーク期間のためのプリベーク温度へと加熱することを含んでいてよい(図15参照)。
【0030】
例示的なミリ秒アニールシステムは、例えば半導体基板の上面をミリ秒の時間で露光するための、つまり、いわゆる「閃光」を生じさせるための光源として、複数のアークランプ(例えば、4つのアルゴンアークランプ)を含むことができる。基板が中間温度(例えば、約450℃〜約900℃)に加熱されると、閃光を半導体基板に供給することができる。複数の連続モードアークランプ(例えば、2つのアルゴンアークランプ)または別のランプ(例えば、タングステンランプ)を使用して、半導体基板をプリベーク温度および/または中間温度に加熱することができる。幾つかの実施の形態においては、プリベーク温度および/または中間温度への半導体基板の加熱が、ウェーハのバルク全体を加熱する昇温割合で、半導体基板の下面を介して達成される。
【0031】
図2から図5には、本発明の実施例による、例示的なミリ秒アニールシステム80の種々の態様が図示されている。図2から図4に図示されているように、ミリ秒アニールシステム80は、プロセスチャンバ200を含むことができる。プロセスチャンバ200を、ウェーハ面プレート210によって、上部チャンバ202および下部チャンバ204に分割することができる。半導体基板60(例えばシリコンウェーハ)を、ウェーハ支持プレート214(例えば、ウェーハ面プレート210に挿入された石英ガラスプレート)に取り付けられている支持ピン212(例えば、石英支持ピン)によって支持することができる。
【0032】
図2および図4に図示されているように、ミリ秒アニールシステム80は、例えば半導体基板60の上面をミリ秒の時間で露光するための、つまり、いわゆる「閃光」を生じさせるための光源として、上部チャンバ202の近傍に配置されている、複数のアークランプ220(例えば、4つのアルゴンアークランプ)を含むことができる。基板が中間温度(例えば、約450℃〜約900℃)に加熱されると、閃光を半導体基板に供給することができる。
【0033】
下部チャンバ204の近傍に設けられている、複数の連続モードアークランプ240(例えば、2つのアルゴンアークランプ)を使用して、半導体基板60をプリベーク温度および/または中間温度に加熱することができる。幾つかの実施の形態においては、プリベーク温度および/または中間温度への半導体基板60の加熱が、下部チャンバ204から、半導体基板60のバルク全体を加熱する昇温割合で、半導体基板の下面を介して達成される。
【0034】
図3に図示されているように、半導体基板60を加熱するための、(例えば、中間温度への半導体基板の加熱に使用するための)下部アークランプ240からの光、および(例えば、閃光によるミリ秒の加熱の提供に使用するための)上部アークランプ220からの光を、水の窓260(例えば、水冷式の石英ガラス窓)を介して、プロセスチャンバ200に入射させることができる。幾つかの実施の形態においては、水の窓260は、2つの石英ガラス板から成るサンドイッチ構造を含むことができ、それら2つの石英ガラス板の間において、約4mmの厚さの水の層が石英板を冷却するために循環しており、また例えば約1,400nmを上回る波長に対する光学的なフィルタを提供することができる。
【0035】
さらに図3に図示されているように、プロセスチャンバ壁250は、加熱光を反射するための反射性のミラー270を含むことができる。反射性のミラー270は、例えば、水冷式の研磨されたアルミニウムパネルであってよい。幾つかの実施の形態においては、ミリ秒アニールシステムにおいて使用されるアークランプのメインボディは、ランプ放射に関する反射器を含むことができる。例えば、図5には、ミリ秒アニールシステム80において使用することができる、上部ランプアレイ220および下部ランプアレイ240の両方の斜視図が示されている。図示されているように、各ランプアレイ220および240のメインボディは、加熱光を反射するための反射器262を含むことができる。それらの反射器262は、ミリ秒アニールシステム80のプロセスチャンバ200の反射表面の一部を形成することができる。
【0036】
半導体基板の温度均一性を、半導体基板の異なる領域に入射する光の密度を操作することによって制御することができる。幾つかの実施の形態においては、メイン反射器に対して小型の反射器の反射等級を変更することによって、かつ/またはウェーハを包囲するウェーハ支持面に取り付けられたエッジ反射器の使用によって、均一性の調整を達成することができる。
【0037】
例えば、下部ランプ240からの光を半導体基板60の縁部に再度方向付けるために、エッジ反射器を使用することができる。一例として、図6には、例示的なエッジ反射器264が図示されており、このエッジ反射器264はウェーハ面プレート210の一部を形成していて、下部ランプ240からの光を半導体基板60の縁部に方向付けるために使用することができる。エッジ反射器264を、ウェーハ面プレート210に取り付けることができ、またこのエッジ反射器264は、半導体基板60を取り囲むことができる、または少なくとも部分的に取り囲むことができる。
【0038】
幾つかの実施の形態においては、ウェーハ面プレート210の近傍のチャンバ壁に、付加的な反射器を取り付けることもできる。例えば、図7には、加熱光のための反射器ミラーとして機能することができ、またプロセスチャンバ壁に取り付けることができる、例示的な反射器が図示されている。より詳細には、図7には、下部チャンバ壁254に取り付けられている、例示的なくさび形反射器272が示されている。また図7には、上部チャンバ壁252の反射器270に取り付けられている反射性の素子274も示されている。半導体基板60の処理の均一性を、プロセスチャンバ200における、くさび形反射器272および/または他の反射性の素子(例えば反射性の素子274)の反射等級を変更することによって調整することができる。
【0039】
図8から図11には、半導体基板60の上面をミリ秒の時間で集中的に露光するための(例えば「閃光」を生じさせるための)光源として使用することができる、例示的な上部アークランプ220の種々の態様が図示されている。例えば、図8には、例示的なアークランプ220の横断面図が示されている。アークランプ220は、例えば、オープンフローのアークランプであってよく、このアークランプでは、加圧されたアルゴンガス(または他の適切なガス)がアーク放電中に高圧プラズマに変換される。アーク放電は、負に帯電されたカソード222と、そこから距離を置いて設けられている(例えば、約300mm離隔されている)、正に帯電されたアノード230との間の石英管225において行われる。カソード222とアノード230との間の電圧が、アルゴンの降伏電圧(例えば、約30kV)または他の適切なガスの降伏電圧に達すると、安定した低誘導性のプラズマが即座に形成され、このプラズマが電磁スペクトルの可視範囲およびUV範囲の光を放射する。図8に図示されているように、ランプは、半導体基板60の処理のためにランプによって提供された光を反射するために使用することができるランプ反射器262を含むことができる。
【0040】
図10および図11には、本発明の実施例による、ミリ秒アニールシステム80におけるアークランプ220の例示的な動作の異なる態様が図示されている。より詳細には、プラズマ226が、水壁228によって内側から水冷される石英管225内に包含されている。水壁228は、高い流速でランプ220のカソード端部に注入され、またアノード端部において排出される。同一のことが、アルゴンガス229についても当てはまり、このアルゴンガス229もまた、カソード端部においてランプ220に供給され、アノード端部から排出される。水壁228を形成する水は、遠心作用が水の渦を生じさせるように、ランプの軸線に対して垂直に注入される。したがって、ランプの中心線に沿って、アルゴンガス229のためのチャネルが形成される。アルゴンガス柱229は、水壁228と同一方向に回転する。プラズマ226が形成されると、水壁228は石英管225を保護し、かつプラズマ226を中心軸線に向かって閉じ込める。水壁228および電極(カソード230およびアノード222)のみが、高エネルギのプラズマ226と直接的に接触する。
【0041】
図11には、本発明の実施例による、アークランプと共に使用される例示的な電極(例えば、カソード230)の断面図が示されている。図11には、カソード230が図示されている。しかしながら、類似の構成をアノード222に対して使用することができる。
【0042】
幾つかの実施の形態においては、電極が高い熱負荷に晒されるので、電極のうちの一方または両方がそれぞれ先端部232を含むことができる。この先端部をタングステンから作製することができる。またこの先端部を水冷式の銅製ヒートシンク234に接合かつ/または融着させることができる。銅製ヒートシンク234は、電極の内部冷却システムの少なくとも一部(例えば、1つまたは複数の水冷チャネル236)を含むことができる。電極はさらに、水または他の液体の循環および電極の冷却を提供するための水冷チャネル236を備えている真鍮製ベース部235を含むことができる。
【0043】
本発明の態様による例示的なミリ秒アニールシステムにおいて使用されるアークランプは、水およびアルゴンガスのための、オープンフローのシステムであってよい。しかしながら幾つかの実施の形態においては、保存上の理由から、両媒体を閉ループ系において循環させることができる。
【0044】
図12には、本発明の実施例によるミリ秒アニールシステムにおいて使用される、オープンフローのアルゴンアークランプを動作させるために必要とされる水およびアルゴンガスを供給するための、例示的な閉ループ系300が図示されている。
【0045】
より詳細には、高純度水302およびアルゴン304がランプ220に供給される。高純度水302は、水壁および電極の冷却のために使用される。ランプから送り出されるものは、ガス/水混合物306である。この水/ガス混合物306は、ランプ220の入口に再び供給できるようになる前に、セパレータ310によって、ガスを含まない水302および乾性のアルゴン304に分離される。ランプ220を介する所要圧力降下を生じさせるために、ガス/水混合物306が、水駆動式のジェットポンプ320を用いてポンピングされる。
【0046】
高出力電動ポンプ330は、ランプ220における水壁を駆動させるための水圧、ランプ電極のための冷却水、およびジェットポンプ320のための駆動流を供給する。ジェットポンプ320の下流側に設けられているセパレータ310を、混合物(アルゴン)から液相および気相を抽出するために使用することができる。アルゴンはさらに、ランプ220に再び流入する前に、コアレッシングフィルタ340において乾燥される。必要に応じて、付加的なアルゴンをアルゴン源350から供給することができる。
【0047】
アークによって水中に放出された粒子を除去するために、水は1つまたは複数の粒子フィルタ350を通過する。イオン性汚染は、イオン交換樹脂によって除去される。水の一部は、混床イオン交換フィルタ370を通過する。イオン交換バイパス370への入口弁372を、水の抵抗率によって制御することができる。水の抵抗率が下側の値よりも低下すると弁372が開かれ、水の抵抗率が上側の値に達すると、弁372が閉じられる。システムは、活性炭フィルタバイパスループ380を含むことができ、そこでは水の一部を付加的に濾過して、有機汚染を除去することができる。水温を維持するために、水は熱交換器390を通過することができる。
【0048】
本発明の実施例によるミリ秒アニールシステムは、半導体基板の両表面(例えば、上面および下面)の温度を独立して測定するための能力を有することができる。図13には、ミリ秒アニールシステム80のための例示的な温度測定システム150が図示されている。
【0049】
ミリ秒アニールシステム80の簡略化された図が図13に示されている。半導体基板60の両面の温度を、複数の温度センサによって、例えば温度センサ152および温度センサ154によって独立して測定することができる。温度センサ152は、半導体基板60の上面の温度を測定することができる。温度センサ154は、半導体基板60の下面を測定することができる。幾つかの実施の形態においては、約1,400nmの測定波長を有している、狭帯域高温測定センサを、例えば半導体基板60の中心領域の温度を測定するための温度センサ152および/または温度センサ154として使用することができる。幾つかの実施の形態においては、温度センサ152および154が、閃光による加熱によって生じるミリ秒温度スパイクを分解するには十分な高さであるサンプリングレートを有している、超高速放射計(UFR:ultra−fast radiometer)であってよい。
【0050】
温度センサ152および154の読取り値は、補償された放射率であってよい。図13に図示されているように、放射率補償スキームは、診断用閃光156と、基準温度センサ158と、半導体ウェーハの上面および下面を測定するように構成されている温度センサ152および154と、を含むことができる。診断用加熱および測定値を、診断用閃光156(例えば、試験用閃光)と共に使用することができる。基準温度センサ158からの測定値を、温度センサ152および154の放射率補償のために使用することができる。
【0051】
幾つかの実施の形態においては、ミリ秒アニールシステム80が、水の窓を含むことができる。水の窓は、温度センサ152および154の測定帯域にあるランプ放射を抑制する光学フィルタを提供することができ、それによって温度センサ152および154は、半導体基板に由来する放射のみを測定する。
【0052】
温度センサ152および154の読取り値を、プロセッサ回路160に供給することができる。プロセッサ回路160を、ミリ秒アニールシステム80のケーシング内に配置することができるが、代替的には、プロセッサ回路160を、ミリ秒アニールシステム80から離れた場所に配置することができる。本明細書に記載する種々の機能を、所望される場合には、単一のプロセッサ回路によって実行することができるか、または局所的なプロセッサ回路および/または遠隔のプロセッサ回路の他の組合せによって実行することができる。
【0053】
下記において詳細に考察するように、温度測定システムは、別の温度センサを含むことができ、例えば、ウェーハ支持プレートの1つまたは複数の温度測定値を取得するように構成されている(例えば、図16に図示されているような)温度センサ、および/または例えば約450℃を下回る温度、例えば約300℃未満、例えば約250℃未満の温度において、半導体基板の1つまたは複数の温度測定値を取得するように構成されている(例えば、図22に図示されているような)遠赤外線温度センサを含むことができる。プロセッサ回路160は、温度センサから取得した測定値を処理して、半導体基板および/またはウェーハ支持プレートの温度を求めるように構成することができる。
【0054】
半導体基板を中間温度Tに加熱するための代替源は、下部プロセスチャンバに配置されている複数のタングステンハロゲンランプから成るアレイであってよい。例えば、2つの連続モードアークランプは、250kWの総出力のために、それぞれ125kWの電力を有することができる。それぞれが6kWを有している40個のタングステンハロゲンランプから成るアレイによって、同一の出力を提供することができる。図14には、半導体基板60をプリベーク温度および/または中間温度Tに加熱するためのタングステンハロゲンランプ245を備えている例示的なミリ秒アニールシステムが図示されている。ハロゲンランプを用いる加熱の利点は、経済的な利点である。タングステンハロゲンランプは、廉価であると考えられ、またより長い耐用年数を有することができる。また、タングステンハロゲンランプは、高価な水冷式ユニットおよび水処理ユニットを必要とせずに、電気的な接続部だけを必要とすると考えられる。
【0055】
酸化物の成長を減少させるための予熱プロセスの例
本発明の例示的な態様は、基板と誘電体膜との間の界面における酸化物の成長を低減しながら、または中間層の厚さを低減しながら、ウェーハを熱処理することに関する。本発明の例示的な態様による予熱プロセスはさらに、望ましくない不純物の影響を排除することによって膜積層体の電気的品質を改善することができる。
【0056】
幾つかの実施の形態では、通常の加熱サイクルが実施される前に、半導体基板を、室温よりも高く中間温度よりも低いプリベーク温度へと加熱することができる。プリベーク温度の上限温度は、酸化する反応速度が中間層成長を阻止するために十分低いように設定することができる(例えば、典型的には<約500℃)。プリベーク温度の下限は、酸化種または他の望ましくない種の除去を十分に短い時間で完了するために、酸化種または他の望ましくない種の放出速度が十分高くなるように、設定することができる(例えば、典型的には>約200℃)。
【0057】
プリベーク温度で経過する時間は、望ましくない種が膜を離れるのに十分な時間が提供されるのを確実にすると同時に、最適化されたウェーハ処理量のための最短の総処理時間が提供されるように選択(例えば、最適化)することができる。この時間を「ソーク(soak)期間」と呼ぶことができる。幾つかの実施の形態では、プリベーク温度におけるソーク期間は、約100秒未満、約30秒未満のように、約0.5秒〜10分であってよい。
【0058】
プロセス全体は、大気圧の窒素、アルゴンまたはヘリウムのような比較的不活性なガス雰囲気中で行うことができるが、低圧の環境、例えば1トル未満の圧力で行うこともできる。プロセス全体は、望ましくない種の除去を助成し、酸化物の還元を助け、残存する何らかの酸化種と反応する種の支援により行われてもよい。この目的のために、ガス雰囲気は、水素、重水素、アンモニア、またはヒドラジン種を含んでいてもよい。これらのガスは、比較的不活性のガス種の1つと混合されてよい。
【0059】
ウェーハ温度を比較的低く維持しながら、化学的還元種を生成するためにプラズマ源を使用することにより反応速度を増加させることもできる。例えば、プラズマ源は、半導体基板の近傍に水素または重水素ラジカルを供給することができる。ここでは主に還元種に焦点を当てているが、低温ソーク中に酸化種を使用することもできる。この酸化種は、温度が十分低く保たれ、これらの種自体が中間層の成長を引き起こさない程度に十分短いソーク時間であるように提供されている。例えば、(プラズマからの)酸化分子または酸化ラジカルのような酸化種は、膜またはその表面の不純物を除去するのを助けることができる。反応種は、加熱アークランプまたはその他のUV源のようなUVエネルギ源によって発生させることもできる。
【0060】
図15には、本発明の実施例による、ミリ秒アニール閃光のための中間温度への昇温前の酸化種を放出するためのソーク期間中のプリベークを伴う加熱サイクルの例が図示されている。図示したように、反応種64を有した膜62を含む基板60を、プリベーク温度TPRE-BAKEまで加熱することができる。プリベーク温度TPRE-BAKEは、例えば約200℃〜約500℃の範囲であってよい。基板60は、ソーク期間TSOAKの間、プリベーク温度に維持することができる。ソーク期間TSOAKの間に反応種64を放出することができる。ソーク期間TSOAKは、例えば、約100秒未満、約30秒未満のように、約0.5秒〜約10分の範囲であってよい。次いで温度を、本発明の実施例によるミリ秒アニール閃光を受容する前に中間温度へと上昇させることができる。
【0061】
図16には、本発明の実施例による、例示的な方法(400)のフローチャートが図示されている。図16には、説明および考察を目的として、特定の順序で実行される複数のステップが示されている。当業者であれば、本明細書における説明によって、本明細書に開示する方法のうちのいずれかの種々のステップを、本発明の範囲から逸脱することなく、省略、拡張、修正、類似の実施かつ/または整理できることを理解するであろう。
【0062】
(402)において、この方法は、ミリ秒アニールシステムのプロセスチャンバにおけるウェーハ支持部に基板を収容するステップを含んでいてよい。例えば、ミリ秒アニールシステムと協働するプロセスチャンバを上部チャンバと下部チャンバとに分割するウェーハ面プレートの一部として設けられたウェーハ支持部上に基板を収容することができる。
【0063】
(404)において、この方法は、プリベーク温度へ基板を加熱するステップを含んでいてよい。上述したように、プリベーク温度は、基板の酸化の反応速度を減じるように、かつ/または中間層の成長を阻止するように選択することができる。幾つかの実施の形態では、プリベーク温度は、約200℃〜約500℃の範囲であってよい。幾つかの実施の形態においては、ミリ秒アニールシステムの下部チャンバ近傍に配置されている熱源(例えばアークランプ、タングステンハロゲンランプ)を使用して、基板をプリベーク温度へと加熱することができる。
【0064】
(406)において、この方法は、ソーク期間を終了するかどうかを決定するステップを含んでいてよい。ソーク期間は、望ましくない種を膜から離脱させるのに十分である程度に長く、かつ総プロセス時間に不要な作用を与える程には長くないように提供される時間の期間であってよい。幾つかの実施の形態では、プリベーク温度におけるソーク期間は、約100秒未満、約30秒未満のように、約0.5秒〜約10分であってよい。
【0065】
ソーク期間が終了しない場合は、この方法は、(408)に示したように、プリベーク温度に維持するステップを含んでいてよい。この方法は付加的に、(410)に示したように、望ましくない種の除去を助成し、酸化物の還元を助け、何らかの残存する酸化種と反応する雰囲気ガス種を導入するステップを含んでいてもよい。例えば、雰囲気ガスは、水素、重水素、アンモニア、および/またはヒドラジン種を含むことができる。これらのガスは、比較的不活性のガス種の1つ、例えば窒素と混合されてよい。
【0066】
幾つかの実施の形態では、この方法は(410)で、ウェーハ温度を比較的低く維持しながら、化学的還元種を生成するためのプラズマを誘導するプラズマ源を使用するステップを含んでいてもよい。例えば、プラズマ源は、半導体基板の近傍に水素または重水素ラジカルを供給することができる。
【0067】
膜における欠陥の不動態化処理により膜品質を向上させるために種を使用することもできる。例えば、酸素または窒素含有種は欠陥の不動態化処理に役立つことができるが、プロセス条件は、酸化物中間層の成長の程度を制限するように選択されなければならない。この欠陥不動態化プロセスを助成するためには、低温ソーク条件を選択することができる。不純物除去および欠陥不動態化処理を支援する励起種およびラジカルを生成するために紫外線(UV)放射源を使用することも有効であり得る。UVエネルギ源は、350nm未満の波長で顕著な放射出力を生成する、システム内の任意のアークランプであってよい。例えばUV波長は、酸素、窒素、NO、NO、ヒドラジン、水素、アンモニア、水蒸気、および/またはトリクロロエチレン、ジクロロエチレン、トリクロロエタン、HCl、またはNFのようなハロゲン含有種を励起して、励起された分子およびラジカル、またはオゾンのような他の化学種をも含む様々な反応種を生成することができる。これらの種は、ウェーハ近くの気相中でUV放射を吸収することにより、またはウェーハ表面で、またはウェーハ表面上の膜に吸収された種の励起によっても生成することができる。UV光を提供するために、他のUVエネルギ源、例えばXeまたはKrアークランプのような別のアークランプを使用することができる。Hgランプ、重水素ランプ、エキシマランプ、UVレーザ、またはUV LEDも使用することができる。比較的短いUV波長(例えば、約250nm未満)を生成する光源は、アンモニアから発生した励起窒素種を含む幾つかの用途に有用であり得る。
【0068】
ソーク期間が完了すると、この方法は、(412)に示すように、ミリ秒アニール閃光のためのプロセスチャンバを準備するステップを含んでいてよい。例えば、(410)で導入された雰囲気ガスがパージされてよく、不活性ガス(例えば、窒素ガス)をプロセスチャンバ内に導入することができる。次いでこの方法は、中間温度に基板を加熱するステップ(414)と、本明細書に記載されたミリ秒アニール閃光を使用して基板を加熱するステップ(416)とを含んでいてよい。
【0069】
本発明の対象を、本発明の特定の実施例を参照しながら詳細に説明したが、当業者であれば、上記の記載を理解することによって、そのような実施の形態の代替形態、変形形態および等価形態を容易に創作できることは明らかである。したがって、本明細書の範囲は、限定的なものではなく、むしろ例示的なものであり、また本発明の対象は、当業者には容易に明らかになるであろう、本発明の対象に対するそのような修正、変更および/または追加が含まれることを排除するものではない。
図1
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