特許第6563166号(P6563166)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6563166FIBおよび/または電子顕微鏡とともに使用するデュアル・レーザ・ビーム・システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6563166
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】FIBおよび/または電子顕微鏡とともに使用するデュアル・レーザ・ビーム・システム
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/12 20140101AFI20190808BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20190808BHJP
   B23K 26/36 20140101ALI20190808BHJP
   B23K 26/06 20140101ALI20190808BHJP
   B23K 26/067 20060101ALI20190808BHJP
   B23K 15/00 20060101ALI20190808BHJP
   B23K 15/06 20060101ALI20190808BHJP
   H01J 37/317 20060101ALI20190808BHJP
   H01J 37/28 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
   B23K26/12
   B23K26/00 N
   B23K26/36
   B23K26/06
   B23K26/067
   B23K15/00 508
   B23K15/06
   H01J37/317 D
   H01J37/28 B
【請求項の数】11
【外国語出願】
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-228872(P2013-228872)
(22)【出願日】2013年11月4日
(65)【公開番号】特開2014-97531(P2014-97531A)
(43)【公開日】2014年5月29日
【審査請求日】2016年10月27日
(31)【優先権主張番号】13/677,854
(32)【優先日】2012年11月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501419107
【氏名又は名称】エフ・イ−・アイ・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(72)【発明者】
【氏名】ケリー・ブルランド
【審査官】 黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2011/0309553(US,A1)
【文献】 国際公開第2011/127327(WO,A1)
【文献】 特開2008−68275(JP,A)
【文献】 特開2007−296533(JP,A)
【文献】 特開2011−167763(JP,A)
【文献】 特開2003−66375(JP,A)
【文献】 特開2002−96187(JP,A)
【文献】 特表2011−527639(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 − 26/70
B23K 15/00
B23K 15/06
H01J 37/28
H01J 37/317
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子ビームとレーザ・ビームの両方を用いて加工物を加工するシステムであって、
真空室を含んでおり、前記真空室内に支持された第1の加工物を加工する第1の加工ステーションと、
前記真空室の外側で第2の加工物を加工する第2の加工ステーションと、
源出力レーザ・ビームを生成するレーザ源と、
前記源出力レーザ・ビームを少なくとも第1のレーザ・ビームおよび第2のレーザ・ビームに分割し、前記第1のレーザ・ビームを前記真空室内の前記第1の加工物に送達し、前記第2のレーザ・ビームを前記真空室の外側の前記第2の加工物に送達するビーム・スプリッタを備える光学系と、
前記第1のレーザ・ビームの経路に配置され、前記第1のレーザ・ビームを前記第2のレーザ・ビームよりもより精密な加工に適したものにするように、周波数、強度またはパルス幅もしくは前記源出力レーザ・ビームのパルス持続時間を変更するビーム調整装置と、
前記真空室内の前記第1の加工物を加工する粒子ビーム源と
を備え、単一の前記レーザ源が、前記真空室内で前記第1の加工物を処理するためのより高精度の前記第1のレーザ・ビームと、前記真空室の外側で前記第2の加工物を処理するための低精度の前記第2のレーザ・ビームを提供し、前記第1のレーザ・ビームの特性を前記第2のレーザ・ビームの特性とは無関係に制御することができるシステム。
【請求項2】
前記光学系が、前記第1のレーザ・ビームを前記第1の加工物の表面において位置決めする第1のビーム・ステアリング機構と、前記第2のレーザ・ビームを前記第2の加工物の表面において位置決めする第2のビーム・ステアリング機構とを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第2のレーザ・ビームのパワーが前記第1のレーザ・ビームのパワーよりも大きく、前記第2のレーザ・ビームが、少なくとも毎秒10,000立方ミクロンの材料を除去するバルク材料除去を実行するように適合されており、前記第1のレーザ・ビームが、毎秒5000立方ミクロン未満の材料を除去する微細加工を実行するように適合されている、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
荷電粒子ビームとレーザ・ビームの両方を用いて加工物を加工するシステムであって、
真空室と、
前記真空室内の加工物を加工する荷電粒子ビーム・システムと、
前記真空室の外側に配置された複数のレーザ源と、
ビーム・スプリッタと、前記複数のレーザ源のそれぞれに対応するビーム調整装置および偏向走査ミラーとを含む光学系と、
を備え、前記光学系は、前記複数のレーザ源のそれぞれが、前記真空室の外側から、前記真空室内の前記加工物上に、独立した特性を有する集束スポットを形成するように、前記真空室の外側の前記複数のレーザ源から前記真空室内の加工物までレーザ・ビームを導くように構成されたシステム
【請求項5】
前記複数のレーザ源のうちの1つのレーザ源が第1の強度を有するビームを生成し、前記複数のレーザ源のうちの別のレーザ源が第2の強度を有するビームを生成し、前記第2の強度が前記第1の強度の1/2よりも小さい、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記複数のレーザ源のうちの1つのレーザ源がフェムト秒レーザであり、前記複数のレーザ源のうちの別のレーザ源がナノ秒レーザまたは連続波レーザである、請求項4または5に記載のシステム。
【請求項7】
前記複数のレーザ源からの前記レーザ・ビームのうちの複数のレーザ・ビームが、同じ対物レンズによって前記加工物の表面で集束する、請求項4から6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記複数のレーザ源からの前記レーザ・ビームのうちの複数のレーザ・ビームが、異なる対物レンズによって前記加工物の表面で集束する、請求項4から6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
荷電粒子ビーム・システムを使用する方法であって、
レーザ源から源出力レーザ・ビームを生成するステップと、
第1のレーザ・ビームおよび第2のレーザ・ビームを生成するために前記源出力レーザ・ビームをビーム・スプリッタに導くステップと、
前記第1のレーザ・ビームを真空室の外側から前記真空室内の第1の加工物に導くステップと、
前記第1のレーザ・ビームのパワーを減少させるために、ビーム調整装置を通して前記第1のレーザ・ビームを導くステップと、
真空室の外側の第2の加工物に第2のレーザ・ビームを導くステップと、
荷電粒子ビームを導いて、前記第1の加工物を加工するステップと
を含み、
対応する前記第1あるいは第2の加工物の位置において、前記第2のレーザ・ビームの強度が前記第1のレーザ・ビームの強度よりも大きく、前記第2のレーザ・ビームが、前記第1のレーザ・ビームよりも速い速度で材料を除去し、前記第1のレーザ・ビームが、前記荷電粒子ビームよりも速い速度で材料を除去する
方法。
【請求項10】
前記ビーム調整装置を通して前記第1のレーザ・ビームを導くステップが、空間ビーム・プロファイル変更器、時間ビーム・プロファイル変更器、周波数シフタ、周波数逓倍光学部品、減衰器、増幅器、モード選択光学部品およびビーム拡大器のうちの少なくとも1つを通して前記第1のレーザ・ビームを導くステップを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1のレーザ・ビームと前記第2のレーザ・ビームが、それぞれに対応する前記第1あるいは第2の加工物を同時に加工する、請求項9または10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、別個のレーザ加工スポットを荷電粒子ビーム機器および/または電子顕微鏡と一緒に使用するレーザ加工ツールの構成に関する。
【背景技術】
【0002】
電子顕微鏡および集束イオン・ビーム(FIB)システムと一緒にレーザを使用することには、集積回路、磁気記録ヘッド、フォトリソグラフィ・マスクなどの小型デバイスの製造、修理および検査の分野においてさまざまな用途がある。それらの用途を、エネルギー探査、材料科学および生物学の分野で使用することもできる。一般に走査電子顕微鏡(SEM)であるこの電子顕微鏡は、ターゲットすなわち加工物に対する損傷を最小限に抑えつつ高分解能の画像化を提供し、FIBは、加工物を改変する目的および画像を形成する目的に使用される。透過型電子顕微鏡(TEM)、透過型走査電子顕微鏡(STEM)など他のタイプの電子顕微鏡が使用されることもある。
【0003】
FIBとSEM/STEM/TEMの両方を使用することによって、試料の内部を画像化する能力を提供することができる。FIBシステムは、その名称が示唆するとおり、電子ビームではなく、イオン(通常はガリウム・イオン)の微細集束ビームを使用することを除いて、走査電子顕微鏡と同じように機能する。イオンの微細集束ビームは、小ビーム電流では画像化に使用することができ、大ビーム電流では、特定の部位の画像化、付着またはミリング(milling)に使用することができる。FIBツールの一般的な1つの用途は表面の機械加工である。理想的なFIB装置は、大きなビーム電流および大きな加速電位を使用することによって、試料を深さ数十または数百ミクロンまで機械加工することができる。小さなビーム電流および小さな加速電位を使用すると、理想的なFIB装置は、ナノメートル規模またはそれよりも薄い層を傷つけることなく、原子の厚さに近い層を機械加工によって除去することができる。FIBのこのようなマイクロ機械加工およびナノ機械加工能力は、高分解能画像化用のSEM/STEM/TEMとともに使用されたときにしばしば非常に効果的である。他のプロセスでは、不要な電気接続を切断する目的および/または半導体中に接続を形成するために導電材料を付着させる目的にFIBを使用することができる。FIBは、マスクなし注入(maskless implantation)にも使用される。これらのFIBプロセスおよび/またはSEMプロセスでは、障害物が比較的に少ない環境を作り出すことがしばしば必要である。残念なことに、バルク材料除去プロセスを含むいくつかの異なるプロセスは、SEM/STEM/TEMおよびFIBを潜在的に妨害しうる大量の切削屑(debris)を生み出す。
【0004】
この分野では最近、加工物を迅速に加工するためにレーザを使用することが導入された。例えば、2009年1月9日に出願されたUtlaut他の「Multibeam System」という名称の米国特許出願公開第2011/0163068号明細書は、追加のレーザ・ビームを使用して加工を迅速に実行するFIBシステムを対象としている。SEM/STEM/TEMおよびFIBシステムと一緒に使用するとき、レーザ・アブレーション・プロセスは、表面にレーザを照射することによってその表面から材料を除去することができる。非常に高速なピコ秒レーザは非熱的(athermal)アブレーション・プロセスを実行し、より低速のナノ秒レーザおよび連続波レーザ(「CWレーザ」)は熱的アブレーション・プロセスを提供する。
【0005】
レーザ・アブレーションは通常、パルス・レーザを使用して実行される。荷電粒子ビーム加工と比べると、レーザ・アブレーションは、比較的に大量の材料を非常に迅速に除去
することができる。しかしながら、レーザの波長は、荷電粒子ビーム中の荷電粒子の波長よりもはるかに長い。ビームを集束させうるスポット・サイズは、一つにはビームの波長によって制限されるため、レーザ・ビームの最小スポット・サイズは一般に荷電粒子ビームの最小スポット・サイズよりも大きい。したがって、荷電粒子ビームは一般にレーザ・ビームよりも微細な分解能を有し、非常に小さな構造物をマイクロ機械加工することができるが、ビーム電流は制限され、マイクロ機械加工が容認できないほどに遅くなることがある。他方、レーザ・マイクロ機械加工は一般にはるかに高速だが、ビーム波長が長いことによって分解能が本質的に制限される。レーザ機械加工の他の使用は例えば、本発明の譲受人に譲渡されており、参照によって本明細書に組み込まれるStraw他の「Charged Particle Beam Masking for Laser Ablation Micromachining」という名称の米国特許第8,168,961号明細書に記載されている。この背景技術の項に含まれていることによって、米国特許第8,168,961号明細書が先行技術であるとは認められない。
【0006】
最近の進歩は、加工物をSEM/STEM/TEMおよびFIBシステムに対して使用することができるようにする加工物の緻密な前処理に対してレーザを使用することを可能にした。SEM/STEM/TEMおよびFIBツールは、薄い熱影響域(heat affected zone)(「HAZ」)を有する前処理された試料を必要とし、このシステムは、サブミクロン規模の欠陥など、大きな試料中の非常に精確な1つの位置をターゲットとすることがある。レーザ技法を使用して、バルク試料を切削し、同時に、SEM/STEM/TEMおよびFIB加工に適した薄いHAZおよび/またはミクロン規模の終点を生成することができる方法は一般に知られていない。
【0007】
異なるタイプのレーザが好ましいいくつかの場合がある。いくつかのレーザは、加工物からの大規模なバルク材料除去に対して最良である。例えば、それらのレーザは、加工物が分析に適したサイズを有するように、パッケージング材料を切削し、または不要な大量の材料を加工物から切除することができる。それらのレーザを、調査対象の領域を露出させることができるように加工物に深いトレンチを切削する目的に使用することもできる。切削に使用するレーザのパワーは一般に数ワットから数百ワットである。1ナノ秒から連続波までの範囲のパルス幅が一般的である。532nm、1064nm、10.6ミクロン(例えばCO2レーザ)などのより長い波長(例えば一般的な可視波長および近赤外波長)がしばしば使用される。これらのレーザは、穴およびトレンチを含むある範囲の特徴部分(feature)を形成するアブレーションしきい値を超える高いレーザ・フルエンス(パルス・エネルギーを照射面積で割ったもの)を加工物に提供する。これらの迅速な切削プロセスにおいて使用される大きなパワーは、画像化、回路編集などの微細なSEM/STEM/TEMおよびFIBプロセスを実行する前に除去しなければならない熱影響域を形成する傾向がある。材料除去速度が大きいことによって、FIBおよびSEM/STEM/TEMの真空環境と両立しない切削屑が生み出されることもある。
【0008】
マイクロ機械加工、ドリリング、ルーティング、トレンチ形成、エッチングおよび熱影響域除去プロセスなどの精密加工に対してより適したさまざまなタイプのレーザがある。このタイプの加工用の一般的なレーザは、バルク材料除去に使用されるレーザよりも短い波長、短いパルス幅およびより密に集束したスポットを使用する。ミクロン規模の波長までのレーザを使用することができるが、355nm、266nmなどの短波長レーザが好ましい。多くの材料がこれらの波長を容易に吸収し、これらの波長は小さなスポット・サイズに集束させることができるためである。数十ピコ秒、フェムト秒レジームなどの短パルス幅レーザも好ましい。それらのレーザは、小さな熱影響域を残す材料除去を提供するからである。これらの用途に対して使用される一般的なレーザのパワー・レベルは数ワット以下程度である。
【0009】
異種の材料からなり、SEM/STEM/TEMおよび/またはFIBを使用して画像化または改変する前にレーザによって加工することが望ましい試料は数多く存在する。これらの試料のいくつかの例は、チップ、ウェーハなどの半導体デバイス、半導体材料、導線および結合剤を含む3D積層パッケージを含むパッケージ化されたチップ、リソグラフィ・マスク、生体試料、岩などの鉱物試料、または複合材料、セラミック、ガラス、コーティング、接着剤、ゴム、ポリマー、超伝導体、磁性材料、合金、金属などの材料試料を含む。これは、加工することができる加工物材料の多様性を示す少数の試料のリストである。上に挙げなかった他の多くの試料材料を加工することもできる。
【0010】
異なる材料からなる構造物を有利に加工するためにしばしばレーザが選択される。例えば、波長10.6ミクロンのCO2レーザは、3D積層パッケージのパッケージング材料を切断するのに好ましく、波長1.3ミクロンのパルス・レーザは、パッケージ内の半導体チップ上の金属構造物を切削するのに好ましく、短波長パルス・レーザは、チップ上のシリコン構物造を加工するのに好ましい。シリコンは約1100nmよりも長い波長の光に対して透過性であり、金属はIR波長を吸収するため、シリコンに対する損傷をより少なく抑えて加工を実施することができる。
【0011】
1つの課題は、単一のレーザを備えるシステムでは、異なる複数のレーザ・ビームが必要なときに、所望の機能を実行できないことがあることである。言い換えると、異なるレーザ・タイプを有するように構成された複数のシステムを別個に購入、使用する必要なしに、異なるタイプのレーザに関連した複数の作業を実行する方法は知られていない。このような場合、加工物は、1つのシステムによる1つのレーザ処理を受け、別のレーザ処理システムへ運ばれ、次いで別のレーザ処理を受ける。
【0012】
他の課題は、機械加工プロセスによって生じた好ましくない切削屑が、FIBおよび/またはSEM/STEM/TEM室内の源、検出器などの重要な構成要素に付着し、それらの構成要素の効力を低下させることがあることである。このタイプの切削屑は、FIB/SEM/STEM/TEM顕微鏡の機能を妨害する可能性がある。また、従来の電子顕微鏡では一般に、試料の画像化は真空下で実行する必要がある。これは、気体雰囲気は急速に広がり、気体雰囲気が電子ビームを減衰させるためである。結果として、レーザ機械加工プロセス中に放出される切削屑が真空環境を劣化させ、画像化を妨げることがある。別の場合には、機械加工プロセス後の不要な切削屑があまりに大量であるため、切削屑が、SEM/STEM/TEMの真空室に加工物を実際に収容するのを妨げることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許出願公開第2011/0163068号明細書
【特許文献2】米国特許第8,168,961号明細書
【特許文献3】米国特許第5,656,186号明細書
【特許文献4】米国特許第7,923,306号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
複数のタイプのレーザ・ビーム・スポットを使用して、削摩された大量の材料を加工室内で生み出すことなく、SEM/STEM/TEMおよびFIBとともに加工物を加工することができるシステムが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の好ましい一実施形態では、少なくとも1つのレーザ・ビーム源から生成された2つの集束レーザ・ビーム・スポットを使用するシステムであって、SEM/STEM/TEMおよびFIB画像化用の加工物を適切に加工することができるように、それらの集束レーザ・スポットが同時にまたは逐次的に作用するシステムが開示される。それらの集束レーザ・ビーム・スポットは、加工物を異なる態様で加工することができるような異なる特性を有する。
【0016】
この好ましい実施形態のシステムは、2つの別個のレーザ・ビーム源を含む構成または2つのレーザ・ビームに分離される1つのレーザ・ビーム源を含む構成を有することができる。このシステムは、外部レーザ加工ステーションと室の内部のレーザ加工ステーションとを有し、この室は一般に真空室である。外部レーザ加工ステーションでは、第1のレーザ・ビーム・スポットによってバルク材料除去および深いトレンチ・エッチングを実行することができる。内部室ステーションでは第2のレーザ・ビーム・スポットが使用される。この第2のレーザ・ビーム・スポットは、マイクロ機械加工、ドリリング、ルーティング、エッチング、熱影響域除去プロセスなどの精密加工に対して使用される。
【0017】
本発明の目的は、SEM/STEM/TEM/FIB画像化プロセスにおいてしばしば必要となるより微細でより高精度のミリングまたは機械加工とは別に、大規模なバルク材料除去または深いトレンチのエッチングをシステムが実行することができるように、異なるタイプのレーザ・ビーム・スポットの使用を改良することにある。
【0018】
以上では、以下の本発明の詳細な説明をより十分に理解できるように、本発明の特徴および技術上の利点をかなり広く概説した。以下では、本発明の追加の特徴および利点を説明する。開示される着想および特定の実施形態を、本発明の同じ目的を達成するために他の構造を変更しまたは設計するベースとして容易に利用することができることを当業者は理解すべきである。さらに、このような等価の構造は、添付の特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨および範囲を逸脱しないことを当業者は理解すべきである。
【0019】
次に、本発明および本発明の利点のより完全な理解のため、添付図面に関して書かれた以下の説明を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1A】2つのレーザ・ビームに分割される1つのレーザ源を有し、その1つのレーザ源が、外部加工ステーションおよび集束イオン・ビームを有する内部室ステーションとともに使用される一実施形態を示す図である。
図1B】2つのレーザ・ビームに分割される1つのレーザ源を有し、その1つのレーザ源が、外部加工ステーションおよび集束イオン・ビームとSEM/STEM/TEMとを有する内部室ステーションとともに使用される他の実施形態を示す図である。
図1C】2つのレーザ・ビームに分割される1つのレーザ源を有し、その1つのレーザ源が、モーション・ステージを備える外部加工ステーションおよびモーション・ステージを備える内部室ステーションとともに使用される他の実施形態を示す図である。
図2】加工物を加工するための2つのレーザ・ビームを独立に生成する2つのレーザ源と、SEM/STEM/TEMおよび/またはFIBとを有する本発明の一実施形態を示す図である。
図3】別個のレーザ・ビームが2つの独立したレーザ・スポットを生成する本発明の一実施形態を示す図である。
図4】ビーム調整装置(beam conditioner)によって別個のレーザ・ビームが2つの独立したレーザ・スポットを生成する本発明の一実施形態を示す図である。
図5】真空室の外側に送達される1つのレーザ・スポットと真空室の内側に送達される1つのレーザ・スポットとを有する本発明の一実施形態を示す図である。
図6】真空室の外側に送達される1つのレーザ・スポットと真空室の内側に送達される1つのレーザ・スポットとを有し、SEM/STEM/TEMとFIBの両方が開示された本発明の一実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明のさまざまな実施形態は、SEM/STEM/TEMおよび/またはFIBとともに使用される異なるレーザ加工構成を使用する。これらの構成は、1つまたは複数のレーザ源を使用して、内部真空室および外部ステーションで使用する異なる加工特性を有するレーザ・スポットを生成する。これらの構成が1つのレーザ源を利用するのかまたは複数のレーザ源を利用するのかに関わらず、異なるタイプの集束レーザ・スポットが生成され、それらのスポットを使用して、加工物を別々に加工しかつ/または異なる態様で加工する。
【0022】
本明細書には、これらのシステムを構築するのに使用することができる光学構成部品の多くの選択肢が記載される。本明細書に記載された実施形態は、レーザ源、ミラー、ビーム・スプリッタ、ビーム・ステアリング(beam steering)機構およびビーム変更光学部品を使用する光学系構成部品の可能な配置を含む。添付の特許請求の範囲に含まれるその他の配置は、当技術分野の通常の技術を使用して容易に設計することができる。
【0023】
図1Aは、1つのレーザ源と2つの別個の加工ステーションとを使用するマルチ・レーザ・ビーム・システム120の好ましい一実施形態を示す。レーザ源またはレーザ発生装置100は、マルチ・レーザ・ビーム・システム120全体に対して使用するのに十分なエネルギーを有するレーザ・ビームを発生させる。レーザ源100は、Mourou他の米国特許第5,656,186号明細書に記載されているフェムト秒レーザなどの超高速パルス・レーザとすることができる。このようなレーザは、一般的な集束イオン・ビームよりもはるかに迅速に加工物から材料を除去することができるが、イオン・ビームほど精確ではない。加工物はさらに加工することが意図されており、そのため、システム120が、連続波レーザ、ナノ秒レーザ、CO2レーザなどのより低コストのレーザ源を使用す
ることが可能であり、このことは、大体積材料加工に対して有効である。これらの低コスト・レーザ源の多くは、レーザ・ビームを複数のビームに分割し、それらのビームを、複数の加工物の表面の複数の集束スポットに送達することができるような十分なパワーを提供する。後に、バルク材料加工に適したレーザ源のより広範なリストを記載する。
【0024】
レーザ源100は原レーザ・ビーム107を生成し、原レーザ・ビーム107はビーム・スプリッタ108で分割される。ビーム・スプリッタ108は、原レーザ・ビーム107を、異なるエネルギーを有する2つの独立したレーザ・ビームに分割することができる。さまざまなビーム・スプリッタを使用することができる。ビーム・スプリッタは、偏光ビーム・スプリッタ・キューブ(polarizing beam splitter cube)、部分反射ミラーなどのバルク光学部品とすることができる。ビームを切り替える光学構成部品またはビームをステアリングする光学構成部品も、異なる経路に沿ってパルスが加工物の表面まで伝搬するのを可能にすることにより、ビーム・スプリッタの役目を果たすことができる。パルスは、異なるビーム経路に沿って一度にまたは交互に送達することができる。ビーム分割を実行するように構成し駆動することができる光学構成部品には、AOM、EOM、ポッケルス・セル(pockels cell)、スイッチング可能なLCD偏光子などがある。あるいは、光ファイバ実施態様では、光ファイバ・カプラをビーム・スプリッタとして使用することもできる。
【0025】
ビーム・スプリッタ108は、第1のレーザ・ビーム経路130に沿って1つのビームを導き、このビームには、ビーム・ステアリング機構である第1の走査ミラー102および第1の対物レンズ109が作用する。ビーム・スプリッタ108は、加工物の別個のレーザ・ビーム加工が必要な場合でも2つの別個のレーザ源が必要ないような態様で、2つの別個のレーザ・ビームを生成することができる。このシステムでは、2つの別個の加工物、すなわち外部ステーション105上で加工する加工物104と一般に真空室である内部室112内で加工する第2段階の加工物116とを同時に加工することができる。第1の走査ミラー102および第1の対物レンズ109は第1のレーザ・ビーム103を生成することができる。
【0026】
外部ステーション105において、第1のレーザ・ビーム103は、加工物104の関心領域を露出させるためのバルク材料除去および深いトレンチの切削に使用する第1のレーザ・スポット150を生成する。画像化プロセスに不要なパッケージング材料を加工物104が含むことがある。第1のレーザ・ビーム103は、外部ステーション105上で、不要なパッケージング材料を削り取ることができる。例えば、集積回路用の3D ICパッケージはしばしば、厚さ数mmの部分を含む。第1のレーザ・ビーム103からのレーザ・スポット150を使用して、外部ステーション105でパッケージを半分に切断しまたはパッケージの長さに沿ってトレンチを切削してから、内部室112内で加工物104をさらに加工することができる。数十立方ミリメートルまたは数百立方ミリメートルの材料の除去を含むことがあるこれらのバルク加工を内部室112内で実行した場合には、それらの加工が、真空環境を汚染しまたは繊細な構成部品の表面に切削屑を付着させることにより、SEM/STEM/TEM/FIBプロセスを妨害することになる。
【0027】
室112の外部でバルク・レーザ加工を実施し、その後に微細な内部レーザ加工を実施するのによく適した多くの用途がある。選鉱およびエネルギー探査の分野では、さまざまな鉱物試料を、第1のレーザ・ビーム103で加工して、内部を露出させてから、内部室112内でのより微細でより精密な加工を実行することができる。そのままでは内部室112に収まらない加工物104の一部分を、外部レーザ・ステーション105で除去することもできる。例えば、外部レーザ・ステーション105を使用して、大きな半導体ウェーハの一部分を切除することができる。
【0028】
ビーム・ステアリング機構は一般に回転発生装置に分類される。機械式回転装置には、圧電、電磁もしくは電歪アクチュエータまたは他のアクチュエータによって作動させることができるステアリング・ミラーが含まれる。ガルバノメータ(galvanometer)、チルト・ウェッジ(tilt wedge)およびマイクロ機械加工されたミラーのアレイも機械式ビーム偏向器の範疇に含まれる。光ビームをステアリングすることができる他の光学要素にはAOM、EOMなどがある。
【0029】
内部室112内に移送された後、第2段階の加工物116となった加工物は、より高精度の追加の加工を受ける。外部ステーション105から内部室112への加工物104の移送は手動または自動で実行することができる。外部ステーション105の加工物と内部ステーション113の加工物は同時にまたは逐次的に加工することができる。
【0030】
一般に、内部室112を排気し、内部室112内の高真空を維持するためにターボ分子ポンプ(図示せず)が使用される。この真空システムは、内部室112内に、一般に約1×10-7トルから5×10-4の間の真空を提供する。電子源およびイオン源は一般にターボ・ポンプによって排気され、次いでイオン・ポンプによって1×10-10トルから1×10-7トルなどの低圧に維持される。
【0031】
FIB110に高圧電源(図示せず)が接続され、この高圧電源は、約1keVから60keVのイオン・ビームを形成する能力を有する。あるいは、このシステムはSEM/STEM/TEMを含むこともできる。このFIBおよび/またはSEM/STEM/TEMはそれぞれ偏向器およびレンズを含む。それらの偏向器およびレンズは一般に磁気式だが、静電式とすることも可能である。磁気レンズおよび磁気偏向器は、コントローラと、偏向磁場を発生させる磁気コイルを駆動する増幅器とを有する。静電レンズおよび静電偏向器は、コントローラと、偏向電場を発生させる帯電プレートを駆動する増幅器とを有する。
【0032】
ビーム・スプリッタ108によって分割された後、レーザ・ビーム107の一部分は、ビーム調整ステーション101を含んでもよい第2のレーザ・ビーム経路131に沿って進む。このレーザ・ビームの調整は、内部室112内において実行する必要があるより微細な精密加工のためにレーザ・ビームを前処理する操作である。調整ステーション101は、パワーなどのレーザ・ビーム特性を変更することができる。調整ステーション101は、レーザ・ビームの振幅、エネルギー、偏光、時間パルス波形、空間プロファイル、波長または他の特性を変更することもできる。調整ステーション101は任意であり、用途によっては不要である。いくつかの実施形態では、試料を加工するレーザ・ビームを協力して生成するレーザ発生装置100と調整装置101の組合せを「レーザ源」とみなす。
【0033】
ビーム調整ステーション101には広範な種類のビーム調整光学部品を含めることができる。異なるビーム経路の調整では、同様の要素および/または異なる要素を使用することができる。これらのビーム調整光学要素には例えば、偏光子、偏光変更器(polarization modifier)、ファラデー・アイソレータ(faraday isolator)、空間ビーム・プロファイル変更器、時間的ビーム・プロファイル変更器、周波数シフタ、周波数逓倍光学部品、減衰器、ビーム・スプリッタ、増幅器、モード選択光学部品、ビーム拡大器、レンズおよびリレー・レンズが含まれる。等しいパワー比または異なるパワー比を有する複数のビームにレーザ・ビーム107を分割することができるビーム・スプリッタ108を調整光学部品とみなすこともできる。これらの光学要素には、追加の光路距離からなることができる遅延線、折り返された光路および光ファイバ遅延線も含まれる。
【0034】
2011年4月12日に発行されたBruland他の米国特許第7,923,306号明細書は、レーザ、配置、構成およびビーム変更要素について、ならびに1つまたは2つのレーザを使用して単一の加工物に複数のスポットを送達することに関して詳細に論じている。この特許文献は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0035】
第2のレーザ・ビーム115は、第2のビーム経路131に沿って独立して進むことができ、第2のレーザ・ビーム115には、第2の走査ミラー111および第2の対物レンズ114が作用することができ、第2のレーザ・ビーム115は集束レーザ・スポット151を生成することができる。ビーム・スポット151を伴う第2のレーザ・ビーム115はFIB110と協働して、内部室112内の第2段階の加工物116を加工する。
【0036】
外部ステーション105でのバルク材料除去に続いて、より微細な機械加工を、第2のレーザ・ビーム115および関連するビーム・スポット151を使用して実行することができる。より微細でより精密な機械加工が可能なレーザには例えば、Nd:YVO4、Nd:YLF、Nd:YAGなどの希土類元素がドープされたレーザント(lasant)を含むレーザおよびアレキサンドライト、Cr:LiSAF、Cr:LiCAFなどのバイブロニック(vibronic)レーザントを含むレーザを含む、ダイオード励起qスイッチ固体レーザ(diode−pumped q−switched solid state laser)などの固体レーザが含まれる。後に、より微細な機械加工が可能なレーザ源のより広範なリストを記載する。SEM/STEM/TEMおよびFIB処理の前に、第2のレーザ・ビーム115および関連するレーザ・スポット151を使用して、熱影響域を除去すること、または加工物116の小部分を削り取ることもできる。このプロセスは時に「スライス・アンド・ビュー(slice and view)」と呼ばれ、このプロセスを複数回繰り返して、試料内部の3D測定を実施し、または内部の特徴部分の位置を突き止め、その特徴部分を画像化することができる。
【0037】
第2のレーザ・ビーム115および関連するレーザ・スポット151は、1/10ミクロン未満のビームを生成することができる集束イオン・ビーム・カラム110と協働して、ステーション113上に配置された加工物116の精密加工を実行する。集束イオン・ビーム・カラム110からのイオン・ビーム117の材料除去速度は比較的に小さい。除去速度およびビーム・スポット・サイズはビーム電流によって変化することを当業者は理解するであろう。除去速度は、除去する材料によっても変化し、ビームと一緒にエッチング強化ガスが使用される場合にはエッチング強化ガスの種類によっても変化する。
【0038】
外部ステーション105で加工物104からバルク材料を除去すると、内部ステーション113での加工物116の後続の加工中に生じる材料の量が減り、したがって内部室112内の真空および構成部品の汚染が低減する。全体として、外部ステーション105で生じた切削屑は、内部室112内へ移送される前に廃棄され、その結果、この切削屑が、SEM/STEM/TEMおよびFIBプロセスに関与する真空および構成部品を妨害する可能性がなくなる。それぞれのステーションが分離されていることによって、バルク切削屑が光学部品から遠ざけられることにより、SEM/STEM/TEMおよびFIB構成部品のシステム寿命が長くなる。
【0039】
図1Bは、システム140の本発明の他の実施形態を示す。システム140は、図1Bのシステム120の全ての特徴および構成部品を含み、電子顕微鏡141をさらに含む。本発明のこの実施形態は1つのFIB源だけに限定されない。レーザ・システム140は、1つのFIBもしくは複数のFIBを有することができ、または1つもしくは複数のFIBと1つもしくは複数の電子顕微鏡とを有することができる。
【0040】
ガリウム・イオンを送達する液体金属イオン源(LMIS)が最も一般的なFIB源であるが、ネオン源、ヘリウム源などのそれほど伝統的とは言えないFIB源を使用することもできる。これらのシステムで使用される電子顕微鏡は普通、SEMであるが、TEM、STEMなどの他のタイプの電子顕微鏡を使用することもできる。本明細書に記載されたシステムの原理および利点は、多くのタイプの電子顕微鏡および/またはFIBのうちのどのタイプにも当てはまる。
【0041】
図1Cは、システム140の本発明の他の実施形態を示す。システム140は、図1Bのシステム120の全ての特徴および構成部品を含み、加工物を再位置決めすることができる機械式位置決めステージをさらに含む。外部ステーション105および内部ステーション113は、加工物を載置するプラットホームからなることができる。これらのステーションはさらに、加工する試料を適切に固定するように設計されたクランプまたはホルダを含むことができる。これらのステーションはさらに、加工前または加工中に加工物の位置を調整するためのモーション・システムを含むことができる。モーション・ステージ160は外部ステーション105の部分であり、モーション・ステージ161は内部ステーション113の部分である。この文脈では、位置が、限定はされないが、横方向の位置決め、縦方向の位置決め、傾斜または回転を含む線位置または角位置を意味することがある。このような位置決めは、走査ミラー102などのビーム・ステアリング機構と協働して、加工物の表面の適切な位置を加工するようにレーザを導くことができる。実際には、加工物の表面のレーザ・スポット位置のターゲティングまたは再位置決めは、加工物の機械的な再位置決めだけによって、もしくはビーム・ステアリング機構だけによって、または調和して機能する加工物の機械的な位置決めとビーム・ステアリングとの調整された作用によって実行することができる。
【0042】
本明細書に記載されたシステムの原理および利点は、電子顕微鏡とFIBの両方を含む幅広い種類の荷電粒子ビーム機器のうちのどの機器にも当てはまる。ガリウム・イオンを送達する液体金属イオン源(LMIS)が最も一般的なFIB源であるが、プラズマ集束イオン・ビーム(PFIB)またはネオン、ヘリウムなどの代替イオンなどのそれほど伝統的とは言えない他のFIB源を使用することもできる。これらのシステムで使用される電子顕微鏡は普通、走査電子顕微鏡(SEM)だが、TEM(透過型電子顕微鏡)、STEM(透過型走査電子顕微鏡)などの他のタイプの電子顕微鏡を使用することもできる。
【0043】
図2は、2つの独立したレーザ・ビームおよびそれぞれのレーザ・ビーム・スポットを2つの独立したレーザ源を使用して生成するデュアル・レーザ・システム200を有する一構成を示す他の好ましい実施形態を示す。このシステムは集束イオン・ビーム・カラム208を含み、あるいはSEM(図示せず)を含むことができる。異なるタイプのレーザは機械加工上の異なる利点を提供し、この構成は、2つの別個のレーザの使用、すなわち第1のレーザ源203および第2のレーザ源204の使用を提供する。第1のレーザ源203および第2のレーザ源204ならびにそれぞれの集束スポット250および251は、試料材料を除去する能力に影響を及ぼす独立した特性を有することができる。試料材料を削摩し、機械加工し、除去しまたは改変するレーザ・スポットの能力はレーザ・スポットの強度と定義され、レーザ・スポットの強度は、パワー、振幅、エネルギー、パルス幅、時間パルス波形、スポット・サイズ、空間パルス分布、フルエンス、偏光、波長などの光学特性によって識別することができる。
【0044】
マルチ・ビーム・レーザ加工において異なるレーザおよび異なるレーザ・パルス特性を使用すると、試料材料の加工を有利に改良することができる。マルチ・ビーム・レーザ加工システムではタイプの異なる多くのレーザ源を使用しまたは組み合わせることができる。関係する試料材料および所望の加工結果によって、あるレーザ源はバルク材料除去によく適し、他のレーザ源は微細な試料加工によく適する。
【0045】
これらのレーザ源には例えば、Nd:YVO4、Nd:YLF、Nd:YAGなどの希土類元素がドープされたレーザントを含むレーザおよびアレキサンドライト、Cr:LiSAF、Cr:LiCAFなどのバイブロニック・レーザントを含むレーザを含む、ダイオード励起qスイッチ固体レーザなどの固体レーザが含まれる。
【0046】
これらのレーザ源にはさらに、ピコ秒パルス・レーザ出力を生成することができるSESAMモード同期Nd:YVO4レーザなどのダイオード励起モード同期固体レーザ(diode−pumped mode−locked solid state laser)が含まれる。モード同期固体レーザは、発振器−再生増幅器構成および発振器−パワー増幅器構成を含むことができる。これらのレーザ源にはさらに、フェムト秒(fs)レーザ出力を生成するためのチャープ・パルス増幅(chirped pulse amplification)レーザ・システム、あるいはフェムト秒パルス・レーザ出力を生成するための当技術分野でよく知られている他のパルス引伸し光学部品およびパルス圧縮光学部品が含まれる。
【0047】
これらのレーザ源にはさらに、希土類ドープ・ソリッド・コア・ファイバ・パルス・レーザ(pulsed rare earth−doped solid core fiber laser)および希土類ドープ・フォトニック結晶ファイバ・パルス・レーザ(pulsed rare earth−doped photonic crystal fiber laser)が含まれる。希土類ドープ・ファイバ・パルス・レーザは、qスイッチおよび発振器−増幅器構成を含むことができる。さらに、ブロード・エリア半導体レーザ、単一周波数半導体レーザ、発光ダイオード、qスイッチ固体レーザおよびファイバ・レーザを含む多種多様な発振器を使用することができる。
【0048】
追加のレーザ源にはさらに、半導体レーザ、CO2レーザおよびアルゴン−イオン・レーザを含む気体レーザ、ならびにエキシマ・レーザが含まれる。
【0049】
マルチ・ビーム・レーザ加工システムに含めることができるレーザ源によって、約150nmから約11,000nmまでの広範囲にわたる波長を生み出すことができる。本明細書の作成時には、使用するレーザ源に応じて、10fsから1μs超の範囲のパルス幅および連続波から100MHz超の範囲のPRFを生み出すことができる。使用するレーザ源によっては、パルス波形、パルス当たりのエネルギーもしくは出力パワー、パルス幅、偏光および/または波長を調整または選択することができることがある。
【0050】
よく知られている非線形調波変換プロセスによって、上記レーザの基本波長出力を調波波長に変換することもできる。この変換は、第1のレーザ源203、第2のレーザ源204などのレーザ源の内部で、または調整ステーション101などの調整ステーションの内部で実行することができる。
【0051】
このデュアル・レーザ・システムは真空室201を含み、真空室201は、その内部に、加工物213を加工するための内部加工ステーション202を含む。第1のレーザ源203はレーザ・ビーム209を生成し、レーザ・ビーム209は走査ミラー205へ向かい、次いで対物レンズ210を通過し、対物レンズ210で集束して、第1のレーザ・ビーム・スポット250を生成する。第2のレーザ源204はレーザ・ビーム211を生成し、レーザ・ビーム211は走査ミラー206へ向かい、次いで対物レンズ212を通過し、対物レンズ212で集束して、第2のレーザ・ビーム・スポット251を生成する。さらに、FIBカラム208が荷電粒子ビーム207を生成し、荷電粒子ビーム207は加工物213の表面へ導かれる。第1のレーザ・ビーム209と第2のレーザ・ビーム211はともに、イオン・ビーム207に対してある角度で加工物に接近し、同時にまたは逐次的に加工物213を加工することができる。これらの光ビームおよび粒子ビームは全て、同時にまたは逐次的に加工物に作用することができる。これらのビームは全て、加工物の表面で完全に重なるように、もしくは部分的に重なるように、または全く重ならないように導くことができる。
【0052】
図2に示したシステムは単に可能な1つの構成を示すものであり、多くの異なる構成が可能である。これらの2つのレーザ・ビームは、室の内側もしくは外側にまたは室の内側と外側の両方に送達することができる。これらの2つのレーザ源および光学部品の部分は、室の内側もしくは外側または室の内側と外側の両方に置くことができる。第2のレーザ・ビーム211を第1のレーザ・ビーム209を増幅したものとすることもできる。本発明は2つのレーザ・ビームだけに限定されない。より大きなスループットを達成するため、もしくは複数の部位を一度に加工することができるようにするため、または異なる材料に対する望ましい加工能力をそれぞれが有する複数の異なるレーザ特性の中からの選択を可能にするために、3つ以上のレーザ・ビームの使用が有利なことがある。
【0053】
第1のレーザ・ビーム209と第2のレーザ・ビーム211は異なるレーザ・スポット250、251に集束する。それぞれのレーザ・ビーム源、ビーム経路光学部品および集束光学部品の特性に応じて、レーザ・スポットはそれぞれ異なるサイズまたは異なる形状を有することができる。第1のレーザ・ビーム209とレーザ・ビーム211はそれぞれ専用のビーム偏向器を有するため、これらのビームはそれぞれ、対応するレーザ・スポットの偏向プロファイルを同期させること、および対応するスポットのパルス生成タイミングを別々にすることができる。走査ミラー205および206はビーム偏向器の例である。加工中の第1のレーザ・ビームと第2のレーザ・ビームとの間の所望の空間関係を生み出すため、第1のレーザ・ビームに作用するビーム偏向器と第2のレーザ・ビームに作用するビーム偏向器は、同期した偏向コマンドを有することができる。加工物の同じ領域または異なる領域を加工するため、所望の空間関係は、完全に重なった関係もしくは部分的に重なった関係、または全く重なっていない関係とすることができる。同じ時刻もしくは異なる時刻にパルスが生成され、または時間的な所望の重なりでパルスを生成されるように、第1のレーザ・ビームと第2のレーザ・ビームの間のパルス生成のタイミングを同期させることもできる。任意の数のレーザ・ビーム、電子ビームおよびFIBの空間関係および/またはタイミングを調整することができる。さらに、これらのプロセスを、外部加工ステーションおよび内部加工ステーションの部分であるモーション・サブシステムと同期させることもできる。
【0054】
レーザ・スポットと粒子ビームの空間的および時間的配置を同期させるために図示されていない制御システムが使用される。このような制御システムは一般に、レーザ源、SEM/STEM/TEM、FIB、光、電子および粒子ビーム偏向器、モーション・ステージ、およびシステム内の被作動構成部品、例えばいくつかのタイプのビーム調整光学部品とインタフェースする1つまたは複数のコンピュータ・システムおよび電子部品を含む。普通は、センサ・フィードバックおよび制御アルゴリズムを使用することによって精密調整を実行するためにフィードバック制御システムが使用される。システム構成部品を調整、制御するソフトウェアおよびファームウェアが、ハードディスク上、フラッシュ・メモリ内などに電子的に読出し可能なフォーマットで記憶される。
【0055】
図3は、別個のレーザ・ビームが2つの独立したレーザ・スポットを生成する本発明の一実施形態を示す。デュアル・レーザ・システム320は、2つの独立したレーザ源301、302を使用して2つの独立したレーザ・ビームを生成する。このシステムは集束イオン・ビーム・カラム310を含み、SEM/STEM/TEM(図示せず)を含むことができる。レーザ301および302からのレーザ・ビームはそれぞれ、波長、時間パルス・プロファイル、エネルギー、パワー、スポット・サイズ、スポット形状、偏光などの独立した特性を有する集束スポット332および333を生成することができる。
【0056】
デュアル・レーザ・システム320は真空室314を含み、真空室314は、その内部に、加工物316を加工するための内部加工ステーション315を有する。第1のレーザ源301はレーザ・ビームを生成し、このレーザ・ビームは、走査ミラー303へ向かい、次いでビーム結合器308を通過して、ビーム331を生成する。一般的なビーム結合器は、異なる偏光を有するレーザ・ビームを効率的に結合することができる偏光ビーム・キューブである。ビーム331は対物レンズ312を通過し、対物レンズ312で集束して、第1のビーム・スポット332を生成する。第2のレーザ源302はレーザ・ビームを生成し、このレーザ・ビームは、走査ミラー306へ向かい、次いでビーム調整装置308を通過して、第2のビーム330を生成する。第2のビーム330は対物レンズ312を通過し、集束して、第2のビーム・スポット333を生成する。このタイプのシステムでは、ビームの送達を助けるため、図示されていないリレー光学部品を使用することができる。さらに、FIB310が荷電粒子ビーム311を生成し、荷電粒子ビーム311は加工物316の表面へ導かれる。
【0057】
図4は、ビーム調整装置によって別個のレーザ・ビームが2つの独立したレーザ・スポットを生成する本発明の一実施形態を示す。デュアル・レーザ・システム420は、2つの独立したレーザ源401、402を使用して2つの独立したレーザ・ビームを生成する。これらのレーザ・ビームは、それぞれのビーム調整ステーション403および404を通過する。ビーム調整光学部品については、広範なさまざまなタイプのビーム調整光学部品が上で論じられている。このシステムは、荷電ビーム414を有する集束イオン・ビーム・カラム412を含み、SEM/STEM/TEM(図示せず)を含むことができる。さらに、ビーム調整ステーション403および404によってレーザ401および402からのレーザ・ビームを変更することができ、レーザ401および402からのレーザ・ビームはそれぞれ、波長、時間パルス・プロファイル、エネルギー、パワー、スポット・サイズ、スポット形状、偏光などの独立した特性を有する集束スポット415および417を生成することができる。
【0058】
デュアル・レーザ・システム420は真空室413を含み、真空室413は、その内部に、加工物416を加工するための内部加工ステーションを含む。第1のレーザ源401はレーザ・ビームを生成し、このレーザ・ビームは、ビーム調整装置403、偏向走査ミラー410およびビーム・スプリッタ409を通過して、ビーム422を生成する。ビーム422は対物レンズ418を通過し、対物レンズ418で集束して、第1のビーム・スポット415を生成する。第2のレーザ源402はレーザ・ビームを生成し、このレーザ・ビームは、ビーム調整装置404、偏向走査ミラー411およびビーム・スプリッタ409を通過して、第2のビーム421を生成する。第2のビーム421は対物レンズ418を通過し、集束して、第2のビーム・スポット417を生成する。
【0059】
図5は、真空室の外側に送達される1つのレーザ・ビームと真空室の内側に送達される1つのレーザ・ビームとを有する本発明の一実施形態を示す。マルチ・レーザ・ビーム・システム520は、レーザ・ビーム源501およびレーザ・ビーム源502によって2つのレーザ・ビームを生成する。レーザ・ビーム源501からのレーザ・ビームは偏向走査ミラー503へ向かい、次いで対物レンズ505を通過して、第1のレーザ・スポット530を有するレーザ・ビーム506を生成する。第1のレーザ・スポット530は外部ステーション508上の加工物を加工する。第1のレーザ・スポット530を使用して、加工物の関心領域を露出させるためのバルク材料除去および深いトレンチの切削を実行することができる。バルク除去は例えば、少なくとも10,000μm3の材料を除去することを意味する。バルク除去プロセスは、少なくとも10,000μm3/秒の速度で材料を除去する。除去速度はシリコンに関して提供されるが、本発明は、シリコン加工物の加工だけに限定されない。いくつかの実施形態では、バルク除去プロセスが、25,000μm3/秒超、50,000μm3/秒超または100,000μm3/秒超の速度で材料を除去する。
【0060】
微細または精密レーザ材料除去は一般に10,000μm3未満の材料を除去すること
を意味する。微細または精密レーザ材料除去プロセスは一般に、10,000μm3/秒
未満、5,000μm3/秒未満または1,000μm3/秒未満の速度で材料を除去することを伴う。これに対して、集束イオン・ビーム・システムは一般に数μm3/秒の速度で材料を除去する。
【0061】
システム520は、内部ステーション504へ外部ステーション508から材料を移送するロボット507を可動ステージ上に含む。ロボット507は、室の扉509を通して加工物を移送する。ロボット507は、加工物を、自動または手動で移送することができる。室510を換気することなく試料を装填することを可能にするため、室の扉は、図示されていない真空インタロックを伴うことができる。内部室510内に移送された後、この時点では第2段階の加工物516と呼ばれる移送された加工物は、より高精度の追加の加工を受ける。内部室510は一般に真空室である。外部ステーション508でのプロセスと内部ステーション504でのプロセスは同時にまたは逐次的に実行することができる。
【0062】
第2のレーザ源502はレーザ・ビームを生成し、このレーザ・ビームは、偏向走査ミラーによって処理され、対物レンズ513によって集束して、集束スポット517を有するレーザ・ビーム515を生成する。第2のレーザ・ビーム・スポット517は、荷電粒子ビーム512を生成するFIBカラム511と協働して加工物を加工する。外部ステー
ション508で蓄積した切削屑は、内部室510内へ移送される前に廃棄され、その結果、切削屑が真空室510およびFIBプロセスを妨害する可能性がなくなる。それぞれのステーションが分離されていることによって、バルク切削屑が光学部品から遠ざけられることにより、SEM/STEM/TEMおよびFIB構成部品のシステム寿命が長くなる。
【0063】
図6は、1つのレーザ源601、ビーム・スプリッタ602、別個のビーム調整ステーション603、605、FIB612およびSEM/STEM/TEM611を有し、FIB612とSEM/STEM/TEM611がともに真空室622内にビームを送達する、本発明の他の実施形態であるシステム650を示す。図1Aに示した実施形態と同様に、レーザ・ビームは1つの源から生成され、分割される。第1のレーザ・ビームは、偏向走査ミラーへ向かい、対物レンズ608を通過し、外部ステーション619上の加工物617の表面に第1のビーム・スポット618を生成する。第2のレーザ・ビームは、別の偏向走査ミラーへ向かい、対物レンズ615を通過し、対物レンズ615は、真空室622内の内部ステーション621上の加工物623を加工する第2のレーザ・ビーム・スポット620を生成する。第2のレーザ・ビーム・スポットとFIB612およびSEM/STEM/TEM611の使用は、より微細な精密加工を可能にする。
【0064】
別個の独立した機能のための2つ以上のタイプのレーザ・ビームを粒子ビーム機器とともに使用する先行技術は知られていない。真空室内でレーザ加工機能を使用し、さらにプロセスの強化および切削屑の管理に複数のレーザ・ビームを使用する先行技術も知られていない。
【0065】
複数のレーザ・ビーム・スポットを有するレーザ・ビーム・システムを使用することにはいくつかの利点がある。複数のビーム・スポットを有するシステムは、バルク加工に適したレーザ・ビームを使用してバルク加工を実行し、その後に、精密加工に適したレーザ・ビームを使用して、HAZ除去、マイクロ規模の削剥などの精密加工を実行することができることによって加工能力を向上させる。独立した複数のレーザ・スポットの使用は、異なる材料および特性に適合した特定のレーザの使用を可能にする。このシステムの他の利点は、2つの別個のシステムを購入する必要なしに、1つのシステムが、バルク材料除去、より微細な精密加工などの別個の機能を実行することができることである。1つの加工ステーションだけを使用することによって、1つのシステムから別のシステムへ加工物213を移動させる必要なしに、FIBプロセス、SEM/STEM/TEMプロセス、ならびに第1のレーザ・ビーム・スポットを使用するプロセスおよび第2のレーザ・ビーム・スポットを使用するプロセスを含む全てのビーム変更を、実行することができる。このような移送では、データおよび材料の緻密な追跡操作が必要となることがある。独立した複数のレーザを使用して別個のビーム・スポットを生成することには明確な利点がある。1つのレーザ・ビームを使用してバルク除去を実行することができ、別のレーザによる微細加工を使用して、異なるタイプの材料を加工することができる。例えば、積層3D ICパッケージの場合には、バルク・パッケージング材料または結合剤の切削に適した1つのレーザと、シリコン・チップの微細加工に適した第2のレーザとを選択することができる。
【0066】
本発明のいくつかの実施形態によれば、荷電粒子ビームとレーザ・ビームの両方を用いて加工物を加工するシステムは、真空室を含んでおり、真空室内に支持された第1の加工物を加工する第1の加工ステーションと、この真空室の外側で第2の加工物を加工する第2の加工ステーションと、源出力レーザ・ビーム(source output laser beam)を生成するレーザ源と、源出力レーザ・ビームを少なくとも第1のレーザ・ビームおよび第2のレーザ・ビームに分割し、第1のレーザ・ビームを真空室内の第1の加工物に送達し、第2のレーザ・ビームを真空室の外側の第2の加工物に送達するように構成された光学系と、真空室内の第2の加工物を加工する粒子ビーム源とを備える。
【0067】
いくつかの実施形態では、光学系が、第1のレーザ・ビームを第1の加工物の表面において位置決めする第1のビーム・ステアリング機構と、第2のレーザ・ビームを第2の加工物の表面において位置決めする第2のビーム・ステアリング機構とを含む。
【0068】
いくつかの実施形態では、光学系が、第1のレーザ・ビーム、第2のレーザ・ビームまたは第1のレーザ・ビームと第2のレーザ・ビームの両方の周波数、強度またはパルス幅もしくはパルス持続時間を変更する少なくとも1つの調整装置を含み、それぞれの加工物を加工するときに第1のレーザ・ビームと第2のレーザ・ビームの強度が異なる。いくつかの実施形態では、第2のレーザ・ビームのパワーが第1のレーザ・ビームのパワーよりも大きく、第2のレーザ・ビームが、少なくとも毎秒10,000立方ミクロンの材料を除去するバルク材料除去を実行するように適合されており、第1のレーザ・ビームが、毎秒5000立方ミクロン未満の材料を除去する微細加工を実行するように適合されている。
【0069】
いくつかの実施形態によれば、荷電粒子ビームとレーザ・ビームの両方を用いて加工物を加工するシステムは、真空室と、真空室内の加工物を加工する荷電粒子ビーム・システムと、真空室の外側に配置された複数のレーザ源と、真空室の外側の前記複数のレーザ源から真空室内の加工物までレーザ・ビームを導くように構成された光学系とを備える。
【0070】
いくつかの実施形態では、前記複数のレーザ源のうちの1つのレーザ源が第1の強度を有するビームを生成し、前記複数のレーザ源のうちの別のレーザ源が第2の強度を有するビームを生成し、第2の強度が第1の強度の1/2よりも小さい。いくつかの実施形態では、前記複数のレーザ源のうちの1つのレーザ源がフェムト秒レーザであり、前記複数のレーザ源のうちの別のレーザ源がナノ秒レーザまたは連続波レーザである。
【0071】
いくつかの実施形態では、前記複数のレーザ源からのレーザ・ビームのうちの複数のレーザ・ビームが、同じ対物レンズによって加工物の表面で集束する。いくつかの実施形態では、前記複数のレーザ源からのレーザ・ビームのうちの複数のレーザ・ビームが、異なる対物レンズによって加工物の表面で集束する。
【0072】
本発明のいくつかの実施形態によれば、荷電粒子ビームとレーザ・ビームの両方を用いて加工物を加工するシステムは、第1の加工物を含む真空室と、真空室内の第1の加工物を加工する荷電粒子ビーム・カラムと、第1の加工物を加工する第1のレーザ・ビームの源と、第1の加工物または第2の加工物を加工する第2のレーザ・ビームの源とを備え、第1のレーザ・ビームと第2のレーザ・ビームのビーム特性が異なり、第1のレーザ・ビームの源と第2のレーザ・ビームの源のうちの少なくとも一方の源が、第1のレーザ・ビームまたは第2のレーザ・ビームを真空室内の加工物まで導くように適合されている。
【0073】
いくつかの実施形態では、第1のレーザ・ビームの源および第2のレーザ・ビームの源が単一のレーザ・ビーム発生装置を含み、第1のレーザ・ビームの源と第2のレーザ・ビームの源のうちの少なくとも一方の源が、ビーム発生装置が発生させたビームの周波数、強度またはパルス幅もしくはパルス持続時間を変更するビーム調整装置を含む。いくつかの実施形態では、ビーム調整装置が、第1のレーザ・ビームのパワーが第2のレーザ・ビームのパワーの1/10になるように構成されており、第2のレーザ・ビームがバルク除去に適し、第1のレーザ・ビームが微細機械加工に適する。いくつかの実施形態では、第2の加工物が真空室の外側に配置される。
【0074】
いくつかの実施形態では、第1のレーザ・ビームおよび第2のレーザ・ビームが真空室
内の第1の加工物に導かれる。いくつかの実施形態では、第1のレーザ・ビームと第2のレーザ・ビームが、同じ対物レンズによって加工物の表面で集束する。いくつかの実施形態では、第1のレーザ・ビームと第2のレーザ・ビームが、異なる対物レンズによって加工物の表面で集束する。
【0075】
いくつかの実施形態では、第1のレーザ・ビームが、波長変換、パルス幅またはパルス周波数の変更、増幅および減衰のうちの1つのプロセスによって調整される。
【0076】
いくつかの実施形態では、このシステムが、第1のレーザ・ビームおよび/または第2のレーザ・ビームに対して作用して、第1のレーザ・ビームまたは第2のレーザ・ビームを第1の加工物の表面の所望の位置に導くステアリング・ミラーをさらに備える。
【0077】
本発明のいくつかの実施形態によれば、荷電粒子ビーム・システムを使用する方法は、第1のレーザ・ビームを導いて第1の加工物を加工するステップと、真空室の外側から第2のレーザ・ビームを導いて、第1の加工物または真空室内の第2の加工物を加工するステップと、荷電粒子ビームを導いて、前記第1の加工物または前記第2の加工物を加工するステップとを含み、対応する加工物の位置において、第1のレーザ・ビームの強度が第2のレーザ・ビームの強度よりも大きく、第1のレーザが、第2のレーザよりも速い速度で材料を除去し、第2のレーザが、荷電粒子ビームよりも速い速度で材料を除去する。
【0078】
いくつかの実施形態では、第1のレーザ・ビームを導くステップが、レーザ・ビーム発生装置から生じたビームを真空室の外側の第1の加工物に導くステップを含み、第2のレーザ・ビームを導くステップが、同じレーザ・ビーム発生装置から生じたビームを、ビーム調整装置を通して、真空室内の第2の加工物に向かって導くステップを含む。
【0079】
いくつかの実施形態では、ビーム調整装置を通してビームを導くステップが、空間ビーム・プロファイル変更器、時間ビーム・プロファイル変更器、周波数シフタ、周波数逓倍光学部品、減衰器、増幅器、モード選択光学部品およびビーム拡大器のうちの少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態では、第1のレーザ・ビームを導いて第1の加工物を加工するステップが、第1のレーザ・ビームを、真空室内に配置された第1の加工物に導くステップを含む。
【0080】
いくつかの実施形態では、第1のレーザ・ビームを導くステップおよび第2のレーザ・ビームを導くステップが、第1のレーザ・ビームを、対物レンズを通して、真空室内の第1の加工物に向かって導くステップ、および第2のレーザ・ビームを、同じ対物レンズを通して、真空室内の第1の加工物に向かって導くステップを含む。いくつかの実施形態では、第1のレーザ・ビームを導くステップおよび第2のレーザ・ビームを導くステップが、第1のレーザ・ビームを、対物レンズを通して、真空室内の第1の加工物に向かって導くステップ、および第2のレーザ・ビームを、別の対物レンズを通して、真空室内の第1の加工物に向かって導くステップを含む。
【0081】
いくつかの実施形態では、第1のレーザ・ビームを導くステップおよび第2のレーザ・ビームを導くステップが、第1のレーザ発生装置から生じた第1のレーザ・ビームを導くステップを含み、第2のレーザ・ビームを導くステップが、第2のレーザ発生装置から生じた第2のレーザ・ビームを導くステップを含む。いくつかの実施形態では、第1のレーザ・ビームを導くステップおよび第2のレーザ・ビームを導くステップが、第1のレーザ発生装置から生じた第1のレーザ・ビームを導くステップを含み、第2のレーザ・ビームを導くステップが、第1のレーザ発生装置から生じた第2のレーザ・ビームを導くステップを含み、第1のレーザ・ビームまたは第2のレーザ・ビーム、あるいは第1のレーザ・ビームと第2のレーザ・ビームの両方が、ビーム調整装置を通過して、強度、波長またはパルス幅もしくはパルス周波数を変化させる。
【0082】
いくつかの実施形態では、第1のレーザ・ビームと第2のレーザ・ビームが、それぞれの加工物を同時に加工する。
【0083】
本明細書に開示された着想および特定の実施形態を、本発明の同じ目的を達成するために他の構造を変更しまたは設計するベースとして容易に利用することができることを当業者は理解すべきである。さらに、このような等価の構造は、添付の特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨および範囲を逸脱しないことを当業者は理解すべきである。
【符号の説明】
【0084】
100 レーザ源またはレーザ発生装置
101 ビーム調整ステーション
102 第1の走査ミラー
104 加工物
108 ビーム・スプリッタ
109 第1の対物レンズ
110 FIBカラム
111 第2の走査ミラー
114 第2の対物レンズ
120 マルチ・レーザ・ビーム・システム
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5
図6