(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6563172
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】プロテクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/6599 20110101AFI20190808BHJP
【FI】
H01R13/6599
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-266750(P2013-266750)
(22)【出願日】2013年12月25日
(65)【公開番号】特開2015-122272(P2015-122272A)
(43)【公開日】2015年7月2日
【審査請求日】2016年11月17日
【審判番号】不服2018-7134(P2018-7134/J1)
【審判請求日】2018年5月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(72)【発明者】
【氏名】田中 雅宏
(72)【発明者】
【氏名】加藤 元
(72)【発明者】
【氏名】及川 伸夫
(72)【発明者】
【氏名】池田 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】水谷 竜彦
(72)【発明者】
【氏名】黒野 洋輔
【合議体】
【審判長】
平田 信勝
【審判官】
小関 峰夫
【審判官】
内田 博之
(56)【参考文献】
【文献】
特開平2−148584(JP,A)
【文献】
特開平5−315028(JP,A)
【文献】
特開平11−67367(JP,A)
【文献】
特開平11−176520(JP,A)
【文献】
特開2011−44327(JP,A)
【文献】
特開2013−12457(JP,A)
【文献】
実開平3−38920(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/6599
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器の外周を被うプロテクタであって、
合成樹脂材より形成された樹脂本体部と、導電性材より形成され、前記樹脂本体部の内面に設けられた導電性皮膜層とを備え、
前記樹脂本体部の取付部には、ボルト挿通穴を有するカラーが埋設され、
前記カラーは、導電性材より形成され、前記樹脂本体部側の表面より突出し、
前記カラーの内面にも前記導電性皮膜層が形成されたことを特徴とするプロテクタ。
【請求項2】
請求項1記載のプロテクタであって、
前記樹脂本体部は、着色された合成樹脂材より形成されたことを特徴とするプロテクタ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のプロテクタであって、
前記電子機器は、コネクタ装置であることを特徴とするプロテクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器等の外周を被うプロテクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より種々の電子機器が提案されている(特許文献1参照)。電子機器には、機器の保護とシールドの両方を図るために、電子機器の外周をシールドシェル(プロテクタ)で被う構造のものがある。
図8〜
図12には、かかる構造の一従来例が示されている。
【0003】
図8〜
図12において、コネクタ装置50は、第1コネクタ51と、第1コネクタ51に電線Wを介して接続された第2コネクタ52と、これらの外周を被うシールド部材であるシールドシェル60とを備えている。
【0004】
シールドシェル60は、第1コネクタ51と電線Wの上部側を覆う第1ロアシールドシェル部材61及び第1アッパーシールドシェル部材62と、第2コネクタ52と電線Wの下部側を覆う第2ロアシールドシェル63部材及び第2アッパーシールドシェル部材64とを備えている。これらシールドシェル部材61〜64は、鉄板(SPCE)等の金属材よりプレス成形でそれぞれ形成されている。
【0005】
第2アッパーシールドシェル部材64には、
図13に詳しく示すように、切欠部64aが形成されている。この切欠部64aは、プレス加工上の必要性から形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−12457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記従来例では、シールドシェル60を構成する各シールドシェル部材61〜64が鉄板等の金属材より形成されているため、シールドシェル60が重量化する。これにより、電子機器であるコネクタ装置50の重量が重くなる。又、各シールドシェル部材61〜64は、プレス加工で形成されるため、プレス加工上の制約(絞り深さ、絞り方向)を受けるため、形状の自由度が低い。更に、第2アッパーシールドシェル部材64のように切欠部64aを形成する場合には、切欠部64aがシールド性能の低減を招来する。
【0008】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、軽量化と形状自由度の向上とシールド性能の向上を図ることができるプロテクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、電子機器の外周を被うプロテクタであって、合成樹脂材より形成された樹脂本体部と、導電性材より形成され、前記樹脂本体部の
内面に設けられた導電性皮膜層とを備え
、前記樹脂本体部の取付部には、ボルト挿通穴を有するカラーが埋設され、前記カラーは、導電性材より形成され、前記樹脂本体部側の表面より突出し、前記カラーの内面にも前記導電性皮膜層が形成されたことを特徴とするプロテクタである。
【0010】
前記樹脂本体部は、着色された合成樹脂材より形成さ
れることが好ましい。前記電子機器は、コネクタ装置である場合を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、プロテクタは、合成樹脂材より形成された樹脂本体部を有するため、軽量化を図ることができる。又、プロテクタの樹脂本体部は、形状制約がプレス加工に較べて遙かに少ない合成樹脂の射出成形で作製できるため、形状の自由度が高い。更に、射出成形上の理由から切欠部を形成する必要性もプレス加工に較べて遥かに少ないため、シールド性能が向上する。以上より、軽量化と形状自由度の向上とシールド性能の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態を示し、コネクタ装置の斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態を示し、コネクタ装置の正面図である。
【
図3】本発明の一実施形態を示し、
図2のA−A線拡大断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態を示し、第1コネクタの分解斜視図である。
【
図5】本発明の一実施形態を示し、第2コネクタの分解斜視図である。
【
図6】本発明の一実施形態を示し、(a)は第2ロアプロテクタ部材の斜視図、(b)は(a)のB−B線断面図である。
【
図7】本発明の一実施形態を示し、(a)は第2ロアプロテクタ部材の平面図、(b)は(a)のC−C線拡大断面図である。
【
図8】従来例を示し、コネクタ装置の斜視図である。
【
図9】従来例を示し、コネクタ装置の正面図である。
【
図10】従来例を示し、
図9のD−D線拡大断面図である。
【
図11】従来例を示し、第1コネクタの分解斜視図である。
【
図12】従来例を示し、第2コネクタの分解斜視図である。
【
図13】従来例を示し、(a)は第2アッパーシールドシェルの斜視図、(b)は(a)のE部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1〜
図7は本発明の一実施形態を示す。
図1〜
図3に示すように、電子機器であるコネクタ装置1は、第1コネクタ2と、第1コネクタ2に電線Wを介して接続された第2コネクタ10と、第1コネクタ2、電線W及び第2コネクタ10の外周を被うプロテクタ20とを備えている。
【0015】
第1コネクタ2は、接続用開口3aを有するハウジング3と、接続用開口3a内に配置された複数の接続端子4とを備えている。第1コネクタ2の各接続端子4には、一方側の電線(図示せず)に固定されたLA端子(図示せず)がネジ止め等によって接続される。
【0016】
第2コネクタ10は、複数の接続用開口11aを有するハウジング11と、接続用開口11a内に配置された複数の接続端子12とを備えている。第2コネクタ10の各接続端子12には、他方方側の電線(図示せず)に固定されたLA端子(図示せず)がネジ止め等によって接続される。
【0017】
プロテクタ20は、第1コネクタ2と電線Wの上部側を覆う第1ロアプロテクタ部材21及び第1アッパープロテクタ部材22と、第2コネクタ10と電線Wの下部側を覆う第2ロアプロテクタ部材23及び第2アッパープロテクタ部材24とを備えている。
【0018】
第1ロアプロテクタ部材21と第1アッパープロテクタ部材22は、第1コネクタ2の接続用開口3aを除く外周を被っている。第2ロアプロテクタ部材23と第2アッパープロテクタ部材24は、第2コネクタ10のコネクタ嵌合箇所を除く外周をほぼ被っている。
【0019】
次に、各プロテクタ部材21〜24の構成を、第2ロアプロテクタ部材23を例に説明する。第2ロアプロテクタ部材23は、
図6(a)、(b)に示すように、合成樹脂材より形成された樹脂本体部25と、この樹脂本体部25の内面に設けられた導電性皮膜層26の二層構造である。
【0020】
樹脂本体部25は、着色された合成樹脂より形成されている。着色の色は、他のコネクタ装置1との識別を行うことができる色に設定されている。導電性皮膜層26は、導電性材の金属材より形成されている。導電性皮膜層26は、樹脂メッキ、蒸着、導電塗料の塗布、スパッタリングなどで形成されている。第2ロアプロテクタ部材23は、ベースプロテクタ部23aと、このベースプロテクタ部23aに対し斜め方向に傾斜している傾斜プロテクタ部23bを有する。ベースプロテクタ部23aと傾斜プロテクタ部23bの境界箇所には補強リブ23cが設けられている。ベースプロテクタ部23aの複数箇所には、取付部23dが突設されている。各取付部24dには、
図7(a)、(b)に詳しく示すように、カラー(スペーサ)27が埋設されている。カラー27は、導電金属製のリング状で、その中心穴がボルト挿通穴27aである。カラー27の内面にも導電性皮膜層26が形成されている。カラー27の樹脂本体部25側は、樹脂本体部25の表面よりdだけ突出している。
【0021】
第2ロアプロテクタ部材23は、取付部23dを被取付部(図示せず)に配置し、樹脂本体部25側からボルト(図示せず)をボルト挿通穴27aに通して被取付部(図示せず)に螺入することによって固定される。導電性皮膜層26は、カラー27、ボルト(図示せず)、被取付部(図示せず)等をアース経路としてアース接続される。
【0022】
以上説明したように、プロテクタ20を構成する各プロテクタ部材21〜24は、合成樹脂材より形成された樹脂本体部25と、樹脂本体部25の内面に設けられた導電性皮膜層26とを有する。従って、プロテクタ20は、樹脂本体部25の強度によって第1コネクタ2等を保護すると共に、導電性皮膜層26によって内外からの電磁波を遮蔽するため、シールド性能を有する。
【0023】
プロテクタ20は、主に合成樹脂材より形成された樹脂本体部25で形成されるため、軽量化になる。これにより、コネクタ装置1の軽量化を図ることができる。又、樹脂本体部25は、形状制約がプレス加工に較べて遙かに少ない合成樹脂の射出成形で作製できるため、形状の自由度が高い。更に、射出成形上の理由から切欠部を形成する必要性もプレス加工に較べて遥かに少ないため、第1コネクタ2等を極力隙間なく被うことができ、シールド性能が向上する。以上より、プロテクタ20の軽量化と形状自由度の向上とシールド性能の向上を図ることができる。
【0024】
その上、プロテクタ20の樹脂本体部25は、樹脂成形されるため、従来例で必要であったエッジ処理が不要である。
【0025】
樹脂本体部25は、着色された合成樹脂材より形成され、導電性皮膜層26は、樹脂本体部25の内面に設けられている。従って、プロテクタ20の識別機能とシールド性能を両立させることができる。識別機能を持たせる必要がない場合には、導電性皮膜層26を樹脂本体部25の外面に設けても良く、又、樹脂本体部25の内面と外面の両方に導電性皮膜層26を設けても良い。
【0026】
各プロテクタ20の取付部23dには、ボルト挿通穴27aを有するカラー27が埋設されている。従って、ボルト締結力等による樹脂本体部25の割れを防止できる。
【0027】
カラー27は、導電性材より形成され、樹脂本体部25側の面より突出している。従って、ボルト(図示せず)の締結力が樹脂本体部25に作用するのを防止できる。又、締結されたボルト(図示せず)とカラー27が電気的に確実に接触するため、この実施形態のように、ボルト(図示せず)とカラー27をアース経路として利用できる。
【0028】
この実施形態では、電子機器は、コネクタ装置1であるが、コネクタ装置1以外の電子機器でも本発明を適用できることはもちろんである。
【符号の説明】
【0029】
1 コネクタ装置(電子機器)
20 プロテクタ
23d 取付部
25 樹脂本体部
26 導電性皮膜層
27 カラー
27a ボルト挿通穴