(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
正逆回動可能な駆動歯車と、該駆動歯車に噛み合う第1従動歯車と、前記駆動歯車及び前記第1従動歯車の噛み合い部位とは前記駆動歯車の周方向について異なる部位で前記駆動歯車に噛み合う第2従動歯車と、前記第1従動歯車及び前記第2従動歯車を連結する連結付勢部材とを備え、
前記駆動歯車、前記第1従動歯車及び前記第2従動歯車は、前記駆動歯車及び前記第1従動歯車の噛み合い部位と、前記駆動歯車及び前記第2従動歯車の噛み合い部位とが同一平面上に位置するように並置されており、
前記連結付勢部材は、前記駆動歯車の正回動方向前方に位置する歯面と前記第1従動歯車の正回動方向後方に位置する歯面とが前記駆動歯車及び前記第1従動歯車の噛み合い部位において当接する部分を有すると同時に、前記駆動歯車の正回動方向後方に位置する歯面と前記第2従動歯車の正回動方向前方に位置する歯面とが前記駆動歯車及び前記第2従動歯車の噛み合い部位において当接する部分を有するように、前記第1従動歯車及び前記第2従動歯車を前記駆動歯車に向けて付勢した状態で、前記第1従動歯車及び前記第2従動歯車を連結し、
前記連結付勢部材により、前記第1従動歯車及び前記第2従動歯車の並置方向に直交する方向の前記第1従動歯車及び前記第2従動歯車の両端部の内、一方の端部側同士が連結されることで、前記第1従動歯車及び前記第2従動歯車は、前記一方の端部側が互いに引き付け合うように前記駆動歯車に向けて付勢されていることを特徴とする歯車機構。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体基板にプラズマ処理等の各種処理を施す基板処理装置が知られている。この基板処理装置は、通常、基板を搬送するための搬送装置を備えている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記の搬送装置は、モーター等の駆動源によって回動する駆動歯車と、該駆動歯車に噛み合って従動する従動歯車とを有する歯車機構を具備する場合が多い。
特に、基板処理装置の搬送装置の場合、搬送装置によって基板をチャンバに搬入して該基板にプラズマ処理等の処理を施し、処理後の基板をチャンバから元の位置に搬出する動作が行われることが多い。すなわち、搬送装置によって基板を進退動させる動作が行われる場合が多い。
このため、基板処理装置の搬送装置が具備する歯車機構の場合、一方向に回動するだけではなく、その逆方向にも回動する駆動歯車、すなわち正逆回動可能な駆動歯車が用いられるのが一般的である。
【0004】
ここで、駆動歯車と従動歯車とを噛み合わせてスムーズに無理なく回動させるためには、一般的に、駆動歯車及び従動歯車の噛み合い部位にバックラッシと称される隙間が設けられる。
具体的には、
図1に示すように、駆動歯車G1が有する一の歯T1の回動方向R1前方に位置する歯面SF1と、従動歯車G2が有する一の歯T2の回動方向R2(歯T1が回動方向R1に回動することに伴って回動する方向)後方に位置する歯面SB2とが当接する部分Cを有する場合に、駆動歯車G1が有する歯T1の回動方向R1後方に位置する歯面SB1と、従動歯車G2が有する歯T2の回動方向R2後方に隣接する歯T3の回動方向R2前方に位置する歯面SF3との間に、隙間であるバックラッシBが設けられる。
【0005】
しかしながら、バックラッシBを設けると、駆動歯車G1が正逆回動可能な駆動歯車である場合、正回動(回動方向R1)から逆回動(回動方向R1’)に切り替える際に、バックラッシBによる遊びが生じ、バックラッシBの範囲内で駆動歯車G1の回転駆動力が従動歯車G2に伝達されない、すなわちバックラッシBの範囲内で駆動歯車G1の逆回動に連動して従動歯車G2が回動しないおそれがある。駆動歯車G1を逆回動から正回動に切り替える際も同様である。
また、駆動歯車G1の正回動が停止した際に、これに伴って従動歯車G2も直ちに停止するのではなく、バックラッシBの範囲内で従動歯車G2が更に正回動する(過回動が生じる)おそれもある。駆動歯車G1の逆回動を停止した際も同様である。
従い、前述した基板処理装置の搬送装置など、基板を進退動させる動作が必要で、なお且つ、高精度な位置決めを行う必要がある用途に用いる歯車機構では、駆動歯車G1及び従動歯車G2の噛み合い部位におけるバックラッシBが問題となる。
【0006】
上記のようなバックラッシに起因した位置決め精度の不良を改善するため、特許文献2には、正回動のときに用いる歯車対(第1歯車100及び第2歯車200)と、逆回動のときに用いる歯車対(第1歯車110及び第2歯車210)とを設けることが提案されている(特許文献2の段落0032、0033、
図4等)。
すなわち、特許文献2に記載の歯車機構は、正回動のときには、第1歯車100の歯面と第2歯車200の歯面とが当接して第1歯車100の回転駆動力が遊びなく第2歯車200に伝達され、逆回動のときには、第1歯車110の歯面と第2歯車210の歯面とが当接して第1歯車110の回転駆動力が遊びなく第2歯車210に伝達されるように構成されている。
【0007】
特許文献2に記載の歯車機構によれば、各歯車対の仕様を完全に同一のものにし、なお且つ、各歯車対が完全に仕様通りに製造されれば、駆動歯車の回動方向を切り替える際に生じ得るバックラッシによる遊びに起因した回転駆動力の未伝達が防止されることが期待できる。
しかしながら、実際には、製造公差等の影響により、各歯車対を完全に仕様通りに製造することは困難であるため、累積ピッチ誤差等の影響により、駆動歯車の回動方向を切り替える際に遊びが生じて、駆動歯車から従動歯車への回転駆動力が伝達されない範囲が生じるおそれがある。
【0008】
また、バックラッシに起因した位置決め精度の不良を改善するため、いわゆるシザーズギヤと称される歯車機構が提案されている(例えば、特許文献3、4参照)。
このシザーズギヤは、付勢力を付与するためのバネ等を介して同軸に取り付けられて一体的に回動する正逆回動可能な2枚の歯車からなる駆動歯車と、これらに噛み合って従動する従動歯車とを備える。そして、駆動歯車及び従動歯車の噛み合い部位において、従動歯車の一の歯が駆動歯車を構成する一方の歯車と他方の歯車とに挟み込まれている。具体的には、従動歯車の一の歯の正回動方向後方に位置する歯面と、駆動歯車を構成する一方の歯車が有する一の歯の正回動方向前方に位置する歯面とが当接するように、駆動歯車を構成する前記一方の歯車に正回動方向の付勢力が付与されると共に、従動歯車の前記一の歯の正回動方向前方に位置する歯面と、駆動歯車を構成する他方の歯車が有する一の歯の正回動方向後方に位置する歯面とが当接するように、駆動歯車を構成する前記他方の歯車に逆回動方向の付勢力が付与される構成とされている。
【0009】
上記のシザーズギヤによれば、駆動歯車の回動方向を切り替える際に生じ得るバックラッシによる遊びに起因した回転駆動力の未伝達や、駆動歯車の回動を停止した際に生じ得るバックラッシに起因した従動歯車の過回動が防止されることが期待できる。
しかしながら、シザーズギヤは、前述のように、従動歯車の一つの歯を、付勢力が付与された駆動歯車を構成する2枚の歯車の歯で回動方向の前後から挟み込む構成である。従い、構造的に、駆動歯車の歯面と従動歯車の歯面との間で潤滑油の油膜切れを生じ易く、歯車機構の損傷に通じるおそれがあるという問題がある。
また、従動歯車の一つの歯を駆動歯車を構成する2枚の歯車の歯で回動方向の前後から挟み込む構成であるため、必然的に、従動歯車の一つの歯において歯幅方向(歯車の回動軸方向)に異なる位置にある部位を挟み込むことになる。このため、従動歯車の歯にねじれ応力が作用することになり、従動歯車の損傷や寿命低下に通じるおそれもある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、斯かる従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、駆動歯車の回動方向を切り替える際に生じ得るバックラッシによる遊びに起因した回転駆動力の未伝達や、駆動歯車の回動を停止した際に生じ得るバックラッシに起因した従動歯車の過回動が防止され、従動歯車、ひいては従動歯車に連結された部材の高精度な位置決めが可能であると共に、損傷が生じ難い歯車機構を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記課題を解決するため、本発明は、正逆回動可能な駆動歯車と、該駆動歯車に噛み合う第1従動歯車と、前記駆動歯車及び前記第1従動歯車の噛み合い部位とは前記駆動歯車の周方向について異なる部位で前記駆動歯車に噛み合う第2従動歯車と、前記第1従動歯車及び前記第2従動歯車を連結する連結付勢部材とを備え、前記駆動歯車、前記第1従動歯車及び前記第2従動歯車は、前記駆動歯車及び前記第1従動歯車の噛み合い部位と、前記駆動歯車及び前記第2従動歯車の噛み合い部位とが同一平面上に位置するように並置されており、前記連結付勢部材は、前記駆動歯車の正回動方向前方に位置する歯面と前記第1従動歯車の正回動方向後方に位置する歯面とが前記駆動歯車及び前記第1従動歯車の噛み合い部位において当接する部分を有すると同時に、前記駆動歯車の正回動方向後方に位置する歯面と前記第2従動歯車の正回動方向前方に位置する歯面とが前記駆動歯車及び前記第2従動歯車の噛み合い部位において当接する部分を有するように、前記第1従動歯車及び前記第2従動歯車を前記駆動歯車に向けて付勢した状態で、前記第1従動歯車及び前記第2従動歯車を連結し、前記連結付勢部材により、前記第1従動歯車及び前記第2従動歯車の並置方向に直交する方向の前記第1従動歯車及び前記第2従動歯車の両端部の内、一方の端部側同士が連結されることで、前記第1従動歯車及び前記第2従動歯車は、前記一方の端部側が互いに引き付け合うように前記駆動歯車に向けて付勢されていることを特徴とする歯車機構
を提供
する。
【0019】
本発明に係る歯車機構においては、駆動歯車に第1従動歯車と第2従動歯車の双方が噛み合うため、1つの駆動歯車で2つの従動歯車を回転駆動させ、なお且つ、駆動歯車を正回動するときに用いる従動歯車と駆動歯車を逆回動するときに用いる従動歯車とを使い分ける用途に有用である。なお、前述した特許文献2に記載の歯車機構と異なり、歯車対を2対設けるのではなく、2つの従動歯車に対して共通する駆動歯車を用いているため、累積ピッチ誤差等の影響が少ない。
【0020】
また、本発明に係る歯車機構においては、以下の(1)及び(2)の状態となるように、連結付勢部材が、第1従動歯車及び第2従動歯車を駆動歯車に向けて付勢した状態で、第1従動歯車及び第2従動歯車を連結する。
(1)駆動歯車の正回動方向前方に位置する歯面と第1従動歯車の正回動方向(駆動歯車が正回動方向に回動するときに、これに従動して第1従動歯車が回動する方向)後方に位置する歯面とが駆動歯車及び第1従動歯車の噛み合い部位において当接する部分を有する。
(2)駆動歯車の正回動方向後方に位置する歯面と第2従動歯車の正回動方向(駆動歯車が正回動方向に回動するときに、これに従動して第2従動歯車が回動する方向)前方に位置する歯面とが駆動歯車及び第2従動歯車の噛み合い部位において当接する部分を有する。
従い、駆動歯車が正回動するときには、上記(1)の状態により、駆動歯車と第1従動歯車との噛み合いには、バックラッシによる遊びが生じない。一方、駆動歯車が逆回動するときには、上記(2)の状態により、駆動歯車と第2従動歯車との噛み合いには、バックラッシによる遊びが生じない。このため、本発明に係る歯車機構によれば、駆動歯車の回動方向を切り替える際に生じ得るバックラッシによる遊びに起因した回転駆動力の未伝達が防止されることになる。
また、駆動歯車の正回動が停止した際に、仮に第1従動歯車が正回動方向に過回動可能であれば、連結付勢部材によって第1従動歯車に連結された第2従動歯車も正回動方向に過回動することになる。しかしながら、上記(2)の状態により、第2従動歯車の正回動方向への過回動が防止されるため、これに伴い、第1従動歯車の正回動方向への過回動も防止されることになる。一方、駆動歯車の逆回動が停止した際には、上記(1)の状態により、第1従動歯車の逆回動方向への過回動が防止されるため、これに伴い、第2従動歯車の逆回動方向への過回動も防止されることになる。このため、本発明に係る歯車機構によれば、駆動歯車の回動を停止した際に生じ得るバックラッシに起因した第1従動歯車及び第2従動歯車の過回動が防止されることになる。
従い、例えば、第1従動歯車と第2従動歯車の双方に連結された部材を、駆動歯車が正回動する場合(第1従動歯車が遊びなく正回動する場合)及び駆動歯車が逆回動する場合(第2従動歯車が遊びなく逆回動する場合)の双方において、高精度に位置決めすることが可能である。
【0021】
さらに、本発明に係る歯車機構においては、駆動歯車及び第1従動歯車の噛み合い部位と、駆動歯車及び第2従動歯車の噛み合い部位とが同一平面上に位置するように、駆動歯車、第1従動歯車及び第2従動歯車が並置され、駆動歯車及び第1従動歯車の噛み合い部位と、駆動歯車及び第2従動歯車の噛み合い部位とが、駆動歯車の周方向について異なる位置にある。
すなわち、駆動歯車の一つの歯を、2枚の歯車(第1従動歯車及び第2従動歯車)の歯で回動方向の前後から挟み込む構成ではなく、駆動歯車の異なる歯をそれぞれ第1従動歯車の歯と第2従動歯車の歯とで反対の回動方向から押圧する構成であるため、潤滑油の油膜切れが生じ難い。また、駆動歯車の一つの歯において歯幅方向に異なる位置にある部位を挟み込む構成ではないため、駆動歯車の歯にねじれ応力が作用し難い。
従い、本発明に係る歯車機構は、従来のシザーズギヤと比べて損傷が生じ難いという利点を有する。
【0022】
好ましくは、前記連結付勢部材は、弾性部材を具備し、前記連結付勢部材により、前記第1従動歯車及び前記第2従動歯車の並置方向(すなわち、駆動歯車及び第1従動歯車の噛み合い部位と、駆動歯車及び第2従動歯車の噛み合い部位とが位置する平面において、第1従動歯車の回動軸と第2従動歯車の回動軸とを結ぶ直線の方向)に直交する方向の前記第1従動歯車及び前記第2従動歯車の両端部の内、一方の端部側同士が前記弾性部材が自然長よりも伸長した状態で連結されることで、前記第1従動歯車及び前記第2従動歯車は、前記一方の端部側が互いに引き付け合うように前記駆動歯車に向けて付勢されている。
【0023】
斯かる好ましい構成によれば、自然長より伸長した状態の弾性部材(すなわち、引っ張り力が作用する弾性部材)を具備する連結付勢部材によって、第1従動歯車及び第2従動歯車の一方側の端部同士を連結することにより、比較的容易に、第1従動歯車及び第2従動歯車を駆動歯車に向けて付勢することが可能である。
【発明の効果】
【0024】
以上に説明したように、本発明によれば、駆動歯車の回動方向を切り替える際に生じ得るバックラッシによる遊びに起因した回転駆動力の未伝達や、駆動歯車の回動を停止した際に生じ得るバックラッシに起因した従動歯車の過回動が防止され、従動歯車、ひいては従動歯車に連結された部材の高精度な位置決めが可能であると共に、損傷が生じ難い歯車機構が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の一実施形態について説明する。
図2は、本発明の一実施形態に係る歯車機構を適用した基板搬送装置の構成を示す図である。
図2(a)は平面図であり、
図2(b)は正面図である。
図2に示すように、本実施形態の基板搬送装置100は、第1歯車機構10、第2歯車機構20、回動基台30、第1平行リンク機構40、第2平行リンク機構50、基板保持基台60及び固定基台70を備えている。回動基台30は、固定基台70に回動可能に嵌合されている。
基板搬送装置100は、基板処理装置(図示せず)内で半導体基板を搬送するための装置である。基板保持基台60には、基板を載置して保持する基板保持治具(図示せず)が取り付けられ、回動基台30の回動や、第1平行リンク機構40及び第2平行リンク機構50の平行運動によって、基板保持基台60と一体となって動作する基板保持治具が予め決められた位置に移動するように制御される。
【0027】
第1歯車機構10は、回動基台30を回動軸AX1周りに回動させるための機構である。回動基台30が回動軸AX1周りに回動することにより、回動基台30に連結された、第1平行リンク機構40、第2平行リンク機構50及び基板保持基台60も、回動基台30と一体となって回動軸AX1周りに回動する。なお、第1平行リンク機構40は、回動基台30に対しても、モーター等の駆動源(図示せず)によって、回動軸AX1周りに回動可能に構成されている。
【0028】
第2歯車機構20は、第2平行リンク機構50を構成するリンク部材51を回動軸AX2周りに回動させると共に、リンク部材52を回動軸AX3周りに回動させるための機構である。リンク部材51が回動すること、或いはリンク部材52が回動することによって、第2平行リンク機構50は平行運動を行う。これにより、第2平行リンク機構50に取り付けられた基板保持基台60も平行運動を行うことになる。
【0029】
以下、適宜、
図3及び
図4を参照しつつ、第1歯車機構10及び第2歯車機構20について具体的に説明する。
図3は、本実施形態に係る第1歯車機構10の概略構成を示す図である。
図3(a)は平面図であり、
図3(b)は正面図である。
図3に示すように、本実施形態に係る第1歯車機構10は、駆動歯車11と、第1従動歯車12と、第2従動歯車13と、歯付きベルト(歯付きタイミングベルト)141を具備する連結付勢部材14とを備えている。本実施形態の第1従動歯車12は、前述した回動基台30と連結されており、第1従動歯車12が回動することで回動基台30も回動する。
なお、駆動歯車11、第1従動歯車12及び第2従動歯車13の歯数や寸法は、説明の便宜を考慮して図示しており、実際のものとは異なる。また、タイミングベルト141の歯141Tは、視認性の観点より、一部のみ図示しているが、実際には全長に亘って設けられている。
【0030】
駆動歯車11は、モーター等の駆動源(図示せず)によって正逆回動可能な平歯車である。第1従動歯車12は、平歯車であり、駆動歯車11に噛み合っている。第1従動歯車12は、回動基台30と同軸上に配置され、回動基台30と一体となって回動するように回動基台30に連結されている。このため、第1従動歯車12の回動軸は、回動基台30の回動軸AX1と同一である。
第2従動歯車13は、平歯車であり、駆動歯車11及び第1従動歯車12の噛み合い部位とは第1従動歯車12の周方向について異なる部位で第1従動歯車12に噛み合っている。
連結付勢部材14は、駆動歯車11の回動に連動して第2従動歯車13も回動するように、駆動歯車11及び第2従動歯車13を連結している。
【0031】
駆動歯車11、第1従動歯車12及び第2従動歯車13は、駆動歯車11及び第1従動歯車12の噛み合い部位と、第2従動歯車13及び第1従動歯車12の噛み合い部位とが同一平面P1上に位置するように並置されている。換言すれば、駆動歯車11の回動軸(図示せず)、第1従動歯車12の回動軸AX1及び第2従動歯車13の回動軸(図示せず)が、全て平面P1に対して垂直であり、互いに平行な回動軸となっている。
【0032】
連結付勢部材14は、以下の(1)及び(2)の状態となるように、駆動歯車11及び第2従動歯車13を第1従動歯車12に向けて付勢した状態で、駆動歯車11及び第2従動歯車13を連結している。
(1)駆動歯車11の正回動方向(本実施形態では、
図3(a)に矢符Aで示す回動方向を正回動方向と称する)前方に位置する歯面11Fと第1従動歯車12の正回動方向B(駆動歯車11が正回動方向Aに回動するときに、これに従動して第1従動歯車12が回動する方向)後方に位置する歯面12Bとが駆動歯車11及び第1従動歯車12の噛み合い部位において当接する部分を有する。
図3(a)においては、歯面11Fと歯面12Bとの当接部分を黒丸で示している。
(2)第2従動歯車13の正回動方向C(駆動歯車11が正回動方向Aに回動するときに、これに連動して第2従動歯車13が回動する方向)後方に位置する歯面13Bと第1従動歯車12の正回動方向B前方に位置する歯面12Fとが第2従動歯車13及び第1従動歯車12の噛み合い部位において当接する部分を有する。
図3(a)においては、歯面13Bと歯面12Fとの当接部分を黒丸で示している。
【0033】
具体的には、本実施形態の連結付勢部材14は、駆動歯車11と第2従動歯車13との間に巻架されたゴム製のタイミングベルト141を具備している。
より具体的には、連結付勢部材14は、駆動歯車11と同軸に配置されて駆動歯車11と一体的に回動する歯付きプーリ142と、第2従動歯車13と同軸に配置されて第2従動歯車13と一体的に回動する歯付きプーリ143とを更に備えている。そして、タイミングベルト141が歯付きプーリ142と歯付きプーリ143との間に巻架され、タイミングベルト141の歯141Tが、歯付きプーリ142の歯142T及び歯付きプーリ143の歯143Tに噛み合っている。
【0034】
そして、タイミングベルト141における駆動歯車11及び第2従動歯車13と噛み合っていない2つの直線移動部141A、141Bの内、一方の直線移動部141Aが有する歯141Tの歯数の方が他方の直線移動部141Bが有する歯141Tの歯数よりも少なくなる(例えば、歯数が一つ少ない)ように、タイミングベルト141は巻架されている。
これにより、駆動歯車11及び第2従動歯車13は、一方の直線移動部141A側が互いに引き付け合うように第1従動歯車12に向けて付勢される。換言すれば、一方の直線移動部141Aが有する歯141Tの歯数の方が少ないため、一方の直線移動部141Aには常に引っ張り力Fが作用する。この引っ張り力Fにより、駆動歯車11及び第2従動歯車13の一方の直線移動部141A側が互いに引き付け合うように第1従動歯車12に向けて付勢される。これにより、前述した(1)及び(2)の状態を実現している。
【0035】
以上に説明した構成を有する第1歯車機構10においては、駆動歯車11と第2従動歯車13の双方が第1従動歯車12に噛み合っている。そして、駆動歯車11及び第2従動歯車13を連結する連結付勢部材14によって、駆動歯車11の回動に連動して第2従動歯車13も回動する。従い、第2従動歯車13も第1従動歯車12を回動させるための駆動歯車としての機能を奏すると考えることができる。
【0036】
また、本実施形態に係る第1歯車機構10においては、前述した(1)及び(2)の状態となるように、連結付勢部材14が、駆動歯車11及び第2従動歯車13を第1従動歯車12に向けて付勢した状態で、駆動歯車11及び第2従動歯車13を連結している。
従い、駆動歯車11が正回動する(正回動方向Aに回動する)ときには、前述した(1)の状態により、駆動歯車11と第1従動歯車13との噛み合いには、バックラッシによる遊びが生じない。一方、駆動歯車11が逆回動する(正回動方向Aと逆方向に回動する)とき(第2従動歯車13が逆回動するとき)には、前述した(2)の状態により、第2従動歯車13と第1従動歯車12との噛み合いには、バックラッシによる遊びが生じない。このため、本実施形態に係る第1歯車機構10によれば、駆動歯車11の回動方向を切り替える際に生じ得るバックラッシによる遊びに起因した回転駆動力の未伝達が防止されることになる。
また、駆動歯車11の正回動が停止した際には、前述した(2)の状態により、第1従動歯車13の正回動方向への過回動が防止される。一方、駆動歯車11の逆回動(第2従動歯車13の逆回動)が停止した際には、前述した(1)の状態により、第1従動歯車13の逆回動方向への過回動が防止される。このため、本実施形態に係る第1歯車機構10によれば、駆動歯車11の回動を停止した際に生じ得るバックラッシに起因した第1従動歯車12の過回動が防止されることになる。
従い、第1従動歯車11、ひいては第1従動歯車11に連結された回動基台30を、駆動歯車11が正回動する場合(第1従動歯車12が遊びなく正回動する場合)及び駆動歯車11が逆回動する場合(第1従動歯車12が遊びなく逆回動する場合)の双方において、高精度に位置決めすることが可能である。
【0037】
さらに、本実施形態に係る第1歯車機構10においては、駆動歯車11及び第1従動歯車12の噛み合い部位と、第2従動歯車13及び第1従動歯車12の噛み合い部位とが同一平面P1上に位置するように、駆動歯車11、第1従動歯車12及び第2従動歯車13が並置され、駆動歯車11及び第1従動歯車12の噛み合い部位と、第2従動歯車13及び第1従動歯車12の噛み合い部位とが、第1従動歯車11の周方向について異なる位置にある。
すなわち、従来のシザーズギヤと異なり、第1従動歯車12の一つの歯を、2枚の歯車(駆動歯車11及び第2従動歯車13)の歯で回動方向の前後から挟み込む構成ではなく、第1従動歯車11の異なる歯をそれぞれ駆動歯車11の歯と第2従動歯車13の歯とで反対の回動方向から押圧する構成であるため、潤滑油(本実施形態では、真空グリース)の油膜切れが生じ難い。また、従来のシザーズギヤと異なり、第1従動歯車12の一つの歯において歯幅方向(
図3の紙面に垂直な方向)に異なる位置にある部位を挟み込む構成ではないため、第1従動歯車12の歯にねじれ応力が作用し難い。
従い、本実施形態に係る第1歯車機構10は、従来のシザーズギヤと比べて損傷が生じ難いという利点を有する。
【0038】
図4は、本実施形態に係る第2歯車機構20の概略構成を示す図である。
図4(a)は平面図であり、
図4(b)は正面図である。
図4に示すように、本実施形態に係る第2歯車機構20は、駆動歯車21と、第1従動歯車22と、第2従動歯車23と、連結付勢部材24とを備えている。本実施形態の第1従動歯車22は、前述したリンク部材51と連結されており、第1従動歯車22が回動することでリンク部材51も回動する。また、本実施形態の第2従動歯車23は、前述したリンク部材52と連結されており、第2従動歯車23が回動することでリンク部材52も回動する。
なお、駆動歯車21、第1従動歯車22及び第2従動歯車23の歯数や寸法は、説明の便宜を考慮して図示しており、実際のものとは異なる。
【0039】
駆動歯車21は、正逆回動可能な平歯車である。具体的には、駆動歯車21は、第1平行リンク機構40の先端部(第2平行リンク機構50寄りの端部)側に固定されている(第1平行リンク機構40に対しては相対回動しない)。第1平行リンク機構40がモーター等の駆動源(図示せず)によって回動基台30に対して回動軸AX1周りに正逆回動することにより、第1平行リンク機構40に固定された駆動歯車21も第1平行リンク機構40と一体となって回動軸AX1周りに正逆回動することになる。これにより、駆動歯車21と噛み合っている第1従動歯車22及び第2従動歯車23を基準に考えれば、駆動歯車21は、その中心軸を回動軸として、第1従動歯車22及び第2従動歯車23に対して正逆回動することになる。
第1従動歯車22は、平歯車であり、駆動歯車21に噛み合っている。第1従動歯車22は、第2平行リンク機構50を構成するリンク部材51の回動軸AX2と同軸上に配置され、リンク部材51と一体となって回動するようにリンク部材51に固定されている(リンク部材51に対しては相対回動しない)。
第2従動歯車23は、平歯車であり、駆動歯車21及び第1従動歯車22の噛み合い部位とは駆動歯車21の周方向について異なる部位で駆動歯車21に噛み合っている。第2従動歯車23は、第2平行リンク機構50を構成するリンク部材52の回動軸AX3と同軸上に配置され、リンク部材52と一体となって回動するようにリンク部材52に固定されている(リンク部材53に対しては相対回動しない)。
連結付勢部材24は、第1従動歯車22及び第2従動歯車23を連結している。
【0040】
駆動歯車21、第1従動歯車22及び第2従動歯車23は、駆動歯車21及び第1従動歯車22の噛み合い部位と、駆動歯車21及び第2従動歯車23の噛み合い部位とが同一平面P2上に位置するように並置されている。換言すれば、駆動歯車21の回動軸(図示せず)、第1従動歯車22の回動軸AX2及び第2従動歯車23の回動軸AX3が、全て平面P2に対して垂直であり、互いに平行な回動軸となっている。
【0041】
連結付勢部材14は、以下の(1)及び(2)の状態となるように、第1従動歯車22及び第2従動歯車23を駆動歯車21に向けて付勢した状態で、第1従動歯車22及び第2従動歯車23を連結している。
(1)駆動歯車21の正回動方向D前方に位置する歯面21Fと第1従動歯車22の正回動方向E(駆動歯車21が正回動方向Dに回動するときに、これに従動して第1従動歯車22が回動する方向)後方に位置する歯面22Bとが駆動歯車21及び第1従動歯車22の噛み合い部位において当接する部分を有する。
図4(a)においては、歯面21Fと歯面22Bとの当接部分を黒丸で示している。
(2)駆動歯車21の正回動方向D後方に位置する歯面21Bと第2従動歯車23の正回動方向F(駆動歯車21が正回動方向Dに回動するときに、これに従動して第2従動歯車23が回動する方向)前方に位置する歯面23Fとが駆動歯車21及び第2従動歯車23の噛み合い部位において当接する部分を有する。
図4(a)においては、歯面21Bと歯面23Fとの当接部分を黒丸で示している。
【0042】
具体的には、本実施形態の連結付勢部材24は、弾性部材(ばね)241を具備している。
より具体的には、連結付勢部材14は、弾性部材241が介挿された金属製の帯板部材242と、第1従動歯車22と同軸に配置されて第1従動歯車22と一体的に回動するプーリ243と、第2従動歯車23と同軸に配置されて第2従動歯車23と一体的に回動するプーリ244とを更に備えている。そして、帯板部材242がプーリ243とプーリ244との間に掛架され、弾性部材241が自然長よりも伸長した状態で、帯板部材242の両端部がビス3によってプーリ243及びプーリ244にそれぞれ固定されている。
なお、本実施形態の第2歯車機構20では、連結付勢部材24として上記の構成を有するものを用いているが、本発明はこれに限るものではなく、前述した第1歯車機構10が備える連結付勢部材14と同様の構成を有するものを用いることも可能である。
【0043】
以上の構成を有する連結付勢部材24により、第1従動歯車22及び第2従動歯車23の並置方向に直交する方向Vの第1従動歯車22及び第2従動歯車23の両端部の内、一方の端部側V1同士が弾性部材241が自然長よりも伸長した状態で連結されることで、第1従動歯車22及び第2従動歯車23は、一方の端部側V1が互いに引き付け合うように駆動歯車21に向けて付勢される。換言すれば、帯板部材242には自然長よりも伸長した状態の弾性部材241が介挿されているため、帯板部材242には常に引っ張り力Fが作用する。この引っ張り力Fにより、第1従動歯車22及び第2従動歯車23の一方の端部側V1が互いに引き付け合うように駆動歯車21に向けて付勢される。これにより、前述した(1)及び(2)の状態を実現している。
【0044】
以上に説明した構成を有する第2歯車機構20は、本実施形態のように、駆動歯車21を正回動するときに用いる従動歯車(第1従動歯車22)と駆動歯車21を逆回動するときに用いる従動歯車(第2従動歯車23)とを使い分ける用途に有用である。なお、前述した特許文献2に記載の歯車機構と異なり、本実施形態に係る第2歯車機構20は、歯車対を2対設けるのではなく、2つの従動歯車(第1従動歯車22、第2従動歯車23)に対して共通する駆動歯車21を用いているため、累積ピッチ誤差等の影響が少ない。
【0045】
また、本実施形態に係る第2歯車機構20においては、前述した(1)及び(2)の状態となるように、連結付勢部材24が、第1従動歯車22及び第2従動歯車23を駆動歯車21に向けて付勢した状態で、第1従動歯車22及び第2従動歯車23を連結している。
従い、駆動歯車21が正回動する(正回動方向Dに回動する)ときには、前述した(1)の状態により、駆動歯車21と第1従動歯車22との噛み合いには、バックラッシによる遊びが生じない。一方、駆動歯車21が逆回動する(正回動方向Dと逆方向に回動する)ときには、前述した(2)の状態により、駆動歯車21と第2従動歯車23との噛み合いには、バックラッシによる遊びが生じない。このため、本実施形態に係る第2歯車機構20によれば、駆動歯車21の回動方向を切り替える際に生じ得るバックラッシによる遊びに起因した回転駆動力の未伝達が防止されることになる。
また、駆動歯車21の正回動が停止した際に、仮に第1従動歯車22が正回動方向Eに過回動可能であれば、連結付勢部材24によって第1従動歯車22に連結された第2従動歯車23も正回動方向Fに過回動することになる。しかしながら、前述した(2)の状態により、第2従動歯車23の正回動方向Fへの過回動が防止されるため、これに伴い、第1従動歯車22の正回動方向Eへの過回動も防止されることになる。一方、駆動歯車21の逆回動が停止した際には、前述した(1)の状態により、第1従動歯車22の逆回動方向(正回動方向Eと逆方向)への過回動が防止されるため、これに伴い、第2従動歯車23の逆回動方向(正回動方向Fと逆方向)への過回動も防止されることになる。このため、本実施形態に係る第2歯車機構20によれば、駆動歯車21の回動を停止した際に生じ得るバックラッシに起因した第1従動歯車22及び第2従動歯車23の過回動が防止されることになる。
従い、第1従動歯車22と第2従動歯車23の双方に連結された第2平行リンク機構50を、駆動歯車21が正回動する場合(第1従動歯車22が遊びなく正回動する場合)及び駆動歯車21が逆回動する場合(第2従動歯車23が遊びなく逆回動する場合)の双方において、高精度に位置決めすることが可能である。
【0046】
さらに、本実施形態に係る第2歯車機構20においては、駆動歯車21及び第1従動歯車22の噛み合い部位と、駆動歯車21及び第2従動歯車23の噛み合い部位とが同一平面P2上に位置するように、駆動歯車21、第1従動歯車22及び第2従動歯車23が並置され、駆動歯車21及び第1従動歯車22の噛み合い部位と、駆動歯車21及び第2従動歯車23の噛み合い部位とが、駆動歯車21の周方向について異なる位置にある。
すなわち、駆動歯車21の一つの歯を、2枚の歯車(第1従動歯車22及び第2従動歯車23)の歯で回動方向の前後から挟み込む構成ではなく、駆動歯車21の異なる歯をそれぞれ第1従動歯車22の歯と第2従動歯車23の歯とで反対の回動方向から押圧する構成であるため、潤滑油の油膜切れが生じ難い。また、駆動歯車21の一つの歯において歯幅方向(
図3の紙面に垂直な方向)に異なる位置にある部位を挟み込む構成ではないため、駆動歯車21の歯にねじれ応力が作用し難い。
従い、本実施形態に係る第2歯車機構20は、従来のシザーズギヤと比べて損傷が生じ難いという利点を有する。