(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6563181
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】日焼け止め皮膚外用剤
(51)【国際特許分類】
A61K 8/37 20060101AFI20190808BHJP
A61K 8/60 20060101ALI20190808BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20190808BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20190808BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
A61K8/37
A61K8/60
A61K8/06
A61Q19/00
A61Q17/04
【請求項の数】11
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-166037(P2014-166037)
(22)【出願日】2014年8月18日
(65)【公開番号】特開2016-41665(P2016-41665A)
(43)【公開日】2016年3月31日
【審査請求日】2017年7月31日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000113470
【氏名又は名称】ポーラ化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀江 亘
【審査官】
向井 佑
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−143900(JP,A)
【文献】
特開2009−234971(JP,A)
【文献】
特開2013−112614(JP,A)
【文献】
特開2011−236199(JP,A)
【文献】
特開2010−189388(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00〜 8/99
A61Q 1/00〜90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分(a)〜(c)を含有する水中油型乳化皮膚外用剤。
(a)紫外線吸収剤
(b)脂肪酸ポリグリセリル
(c)モノラウリン酸スクロース
【請求項2】
成分(b)の脂肪酸部位が、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、及びリシノール酸から選択されるいずれかである請求項1に記載の水中油型乳化皮膚外用剤。
【請求項3】
成分(b)のHLBが7以上、かつポリグリセリン部位の重合度が6〜10である請求項1又は2に記載の水中油型乳化皮膚外用剤。
【請求項4】
成分(b)がオレイン酸ポリグリセリル−10を含む請求項1〜3のいずれかに記載の水中油型乳化皮膚外用剤。
【請求項5】
成分(b)/成分(c)の重量比率が0.1〜10である請求項1〜4のいずれかに記載の水中油型乳化皮膚外用剤。
【請求項6】
親水基にポリオキシエチレン構造を持つ界面活性剤を実質的に含有しないことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の水中油型乳化皮膚外用剤。
【請求項7】
成分(a)が3種類以上の紫外線吸収剤からなる請求項1〜6のいずれかに記載の水中油型乳化皮膚外用剤。
【請求項8】
成分(a)がジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルを含む請求項1〜7のいずれかに記載の水中油型乳化皮膚外用剤。
【請求項9】
更に成分(d)として、脂肪酸石鹸を含有することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の水中油型乳化皮膚外用剤。
【請求項10】
更に成分(e)として、高級アルコール、HLBが5以下の親油性界面活性剤、ワック
スのいずれかからなる、25℃で固形の油溶性成分を含有することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の水中油型乳化皮膚外用剤。
【請求項11】
日焼け止め用である請求項1〜10のいずれかに記載の水中油型乳化皮膚外用剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水中油型乳化皮膚外用剤に関し、更に詳細には日焼け止め用に好適な水中油型乳化皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の美容意識の高まりにともない、消費者の紫外線防御に対する関心は高くなっており、市場からは、より紫外線防御能の高い皮膚外用剤が求められている。その結果、近年の日焼け止め皮膚外用剤には、紫外線散乱剤や紫外線吸収剤を高配合する傾向がある。そのような状況下、紫外線散乱剤である微粒子金属酸化物が高配合された皮膚外用剤には、白浮きや青白く不自然な仕上がりという外観上の課題や、きしみや被膜感という感触上の課題がある。そのため、紫外線吸収剤を主成分とする、自然な仕上がり、かつきしみ感が少ない日焼け止め皮膚外用剤が消費者に好まれる傾向にある。
しかしながら、紫外線吸収剤は極性が高く、乳化状態が不安定化しやすい。そのため、紫外線吸収剤を多量に高配合した場合、皮膚外用剤の経時での安定性を保つこと、紫外線防御能を一様に発揮することが困難であるといった課題があった。従来技術として、親水基にポリオキシエチレンをもつ界面活性剤が紫外線吸収剤の乳化に使用されているが、オキシエチレンは親水基の中でも比較的疎水性が高いため、極性が高い油に溶解しやすく、安定性を保つことが困難であった。さらに、乳化状態が不安定になると、肌上での紫外線吸収剤の分布が不均一になるため、一様な紫外線防御能を発揮することが難しい。つまり、自然な仕上がり、かつきしみ感が少ない感触でありながら、経時での安定性と紫外線防御機能の一様な発揮を両立した皮膚外用剤の開発が急務であった。
【0003】
これら課題のうち、特に経時での安定性については特定のエステル化合物(特許文献1)の活用や、特定のオルガノシロキサン誘導体(特許文献2)の活用が検討されているが、紫外線防御能の一様な発揮については、何ら検討されていない。ましてや、皮膚外用剤の経時での安定性と、紫外線防御能を一様に発揮する事の両立が検討された例もない。
【0004】
ここでいう紫外線防御能の一様な発揮とは、皮膚外用剤を塗布したのち、揮発成分が揮発して形成された化粧膜について、各部位における紫外線防御能の指標となるSPFアナライザー測定値のばらつきが十分に小さいことを示す。紫外線防御能が一様に発揮されない場合、紫外線防御能の低い箇所から肌に紫外線が到達し、悪影響を及ぼすため好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許3220657号
【特許文献2】特許5203537号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、この様な状況下為されたものであり、自然な仕上がり、かつきしみ感が少ない感触でありながら、経時安定性と紫外線防御能の一様な発揮を兼ね備えた日焼け止め用水中油型乳化皮膚外用剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この様な状況に鑑みて、本発明者らは、経時安定性と紫外線防御能の一様な発揮を兼ね備えた日焼け止め用水中油型乳化皮膚外用剤を求めて、鋭意研究努力を重ねた結果、紫外線吸収剤および脂肪酸ポリグリセリルおよびモノラウリン酸スクロースを含有する日焼け止め用水中油型乳化皮膚外用剤が、その様な機能を備えていることを見いだし、発明を完成させるに至った。即ち、本発明は以下に示すとおりである。
<1>以下の成分(a)〜(c)を含有する水中油型乳化皮膚外用剤。
(a)紫外線吸収剤
(b)脂肪酸ポリグリセリル
(c)モノラウリン酸スクロース
<2>成分(b)の脂肪酸部位が、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リシノール酸のいずれかである請求項1に記載の水中油型乳化皮膚外用剤。
<3>成分(b)のHLBが7以上、かつポリグリセリン部位の重合度が6〜10である<1>に記載の水中油型乳化皮膚外用剤。
<4>成分(b)がオレイン酸ポリグリセリル−10を含む<1>〜<3>のいずれかに記載の水中油型乳化皮膚外用剤。
<5>成分(b)/成分(c)の重量比率が0.1〜10である<1>に記載の水中油型乳化皮膚外用剤。
<6>親水基にポリオキシエチレン構造を持つ界面活性剤を実質的に含有しないことを特徴とする<1>に記載の水中油型乳化皮膚外用剤。
<7>成分(a)が3種類以上の紫外線吸収剤からなる<1>に記載の水中油型乳化皮膚外用剤。
<8>成分(a)がジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルを含む<1>又は<7>に記載の水中油型乳化皮膚外用剤。
<9>更に成分(d)として、脂肪酸石鹸を含有することを特徴とする<1>に記載の水中油型乳化皮膚外用剤。
<10>更に成分(e)として、高級アルコール、HLBが5以下の親油性界面活性剤、ワックスのいずれかからなる、25℃で固形の油溶性成分を含有することを特徴とする<1>に記載の水中油型乳化皮膚外用剤。
<11>日焼け止め用である<1>に記載の水中油型乳化皮膚外用剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、自然な仕上がり、かつきしみ感が少ない感触でありながら、経時安定性と紫外線防御能の一様な発揮を兼ね備えた日焼け止め用水中油型乳化皮膚外用剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(1)本発明の水中油型乳化皮膚外用剤の必須成分である紫外線吸収剤
本発明の乳化皮膚外用剤は、紫外線吸収剤を含有することを特徴とする。かかる成分は通常は、日焼け止め皮膚外用剤に於いては、紫外線から肌を守る目的で配合されるが、本発明では、加えて紫外線防御能の一様な発揮および高温経時での安定性向上も目的とする。それ以外の目的で含有する場合に於いても、本発明の効果の及ぶところであり、本発明の技術的範囲に属する。
高い紫外線防御能の発揮のためには、3種類以上の紫外線吸収剤を併用することが好ましく、4種類以上併用する事がさらに好ましい。配合可能な紫外線吸収剤としては、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、オクトクリレン、ポリシリコーンー15、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオン酸2−エチルヘキシル、ビス(レスルシニル)トリアジン、メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール、ジエチルアミノヒドロキシ安息香酸ヘキシル、t−ブチルメトキシベンゾイルメタン等の化合物があげられる。また、本発明においては、紫外線吸収剤と微粒子酸化チタンや微粒子酸化亜鉛などの紫外線散乱剤を併用しても構わない。
【0010】
また、この様な効果を奏するためには、紫外線吸収剤の水中油型皮膚外用剤に占める割合の下限は0.01%以上が好ましく、0.1%以上がより好ましく、上限は25.0%以下が好ましく、20.0%以下がより好ましい。
本明細書で言及されている全てのパーセントは、別段の指示がない限り、重量%である
紫外線A波をブロックする紫外線吸収剤には、t−ブチルメトキシベンゾイルメタン、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルなどが例示できるが、前者は金属イオンの影響により変色し、安定性の点で課題がある。そのため、安定性に優れた紫外線吸収剤としては、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルを含む事が好ましい。市販されている原料としてはジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルの例としてUvinul A+(BASF社製)が例示できる。
ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルの皮膚外用剤に占める割合の下限は0.01%以上が好ましく、0.10%以上がより好ましく、上限は10.0%以下が好ましく、5.0%以下がより好ましい。皮膚外用剤に占める割合が少なすぎると紫外線防御能が弱く、一方、多すぎると結晶として析出しやすくなる。
【0011】
(2)本発明の水中油型乳化皮膚外用剤の必須成分である脂肪酸ポリグリセリル
本発明の水中油型皮膚外用剤は、脂肪酸ポリグリセリルを含有することを特徴とする。かかる成分は、本発明の乳化皮膚外用剤の必須成分である紫外線吸収剤を安定的に配合させる事を目的とする。それ以外の目的で含有する場合においても、本発明の効果の及ぶところであり、本発明の技術的範囲に属する。また、後記するモノラウリン酸スクロースと併用することにより、製剤の安定性は格段に向上する。本目的を発揮するためには、脂肪酸ポリグリセリルのHLBの下限は7以上が好ましく、さらに好ましくは9以上である。HLBの上限は特に制限されない。また、脂肪酸ポリグリセリルの脂肪酸の炭素数の下限はC12以上が好ましく、C16以上がさらに好ましい。また、炭素数の上限はC24以下が好ましく、C18以下がさらに好ましい。さらに脂肪酸は直鎖状でも分岐していても良く、飽和でも不飽和であっても良いが、温度変化により性状の変化が少ない不飽和脂肪酸である事が好ましい。また、脂肪酸ポリグリセリルのポリグリセリル部位の重合度はグリセリンの重合度が大きくかつ、温度によって状態変化が起きないことが好ましく、重合度6〜10であることが好ましい。このような範囲の脂肪酸ポリグリセリルを用いることにより、本発明の乳化皮膚外用剤の安定性を顕著に向上させることが可能となる。このような脂肪酸ポリグリセリルとして、ミリスチン酸ポリグリセリル−6、ステアリン酸ポリグリセリル−6、オレイン酸ポリグリセリル−6、リシノール酸ポリグリセリル−6、ミリスチン酸ポリグリセリル−10、ステアリン酸ポリグリセリル−10、イソステアリン酸ポリグリセリル−10、オレイン酸ポリグリセリル−10、リノール酸ポリグリセリル−10、ジステアリン酸ポリグリセリル−10、ジイソステアリン酸ポリグリセリル−10などが例示できる。この中でも、オレイン酸ポリグリセリル−10が特に好ましく例示でき、市販されている原料としてはデカグリン1−OV(日光ケミカルズ社製)が例示できる。
本発明の乳化皮膚外用剤全体に占める脂肪酸ポリグリセリルの割合の下限は0.1%以上が好ましく、0.5%以上がさらに好ましい。またその上限は5%以下が好ましく、4%以下がさらには好ましい。下限以下では十分な安定性を確保できず、上限以上ではべたついた感触となり好ましくない。
【0012】
(3)本発明の水中油型乳化皮膚外用剤の必須成分であるモノラウリン酸スクロース
本発明の水中油型皮膚外用剤は、モノラウリン酸スクロースを含有することを特徴とする。かかる成分は、本発明の乳化皮膚外用剤の必須成分である紫外線吸収剤を安定的に配合させる事を目的とする。それ以外の目的で含有する場合に於いても、本発明の効果の及ぶところであり、本発明の技術的範囲に属する。また、前記脂肪酸ポリグリセリルと併用することにより、製剤の安定性は格段に向上する。一般的にモノラウリン酸スクロースは、モノエステル、ジエステル、トリエステルを含有するが、モノエステルを50%以上含むことが好ましい。このような市販原料としては、DKエステルS−L18A、(第一工業製薬株式会社製)が好ましく例示できる。
本発明の乳化皮膚外用剤全体に占めるモノラウリン酸スクロースの割合の下限は0.1%以上が好ましく、0.2%以上がさらに好ましい。またその上限は5%以下が好ましく、4%以下がさらに好ましい。下限以下では十分な安定性を確保できず、上限以上ではべたついた感触となり好ましくない。
【0013】
(4)本発明の水中油型乳化皮膚外用剤
本発明の水中油型皮膚外用剤は、(a)紫外線吸収剤、(b)脂肪酸ポリグリセリル、(c)モノラウリン酸スクロースを含有する事を特徴とする。紫外線吸収剤に対する界面活性剤の割合は、紫外線吸収剤の含有量(質量)を1とすると界面活性剤の含有量(質量)の下限は0.05以上が好ましく、さらに好ましくは0.1以上である。上限は1以下であり、さらに好ましくは0.5以下である。活性剤の割合が下限以下では十分な安定性を確保できず、上限以上ではべたついた感触となり好ましくない。
本発明の乳化皮膚外用剤の界面活性剤量に占める脂肪酸ポリグリセリルの割合の下限は10%以上であり、さらに好ましくは20%以上である。同じく界面活性剤含有量に占めるモノラウリン酸スクロースの割合の下限は5%以上であり、さらに好ましくは10%以上である。いずれも下限以下では十分な安定性を確保できない。
本発明の水中油型乳化皮膚外用剤における脂肪酸ポリグリセリル/モノラウリン酸スクロースの比率は、0.1〜10が好ましく、より好しくは0.2〜8であり、さらに好しくは0.4〜6である。このような範囲で脂肪酸ポリグリセリルとモノラウリン酸スクロースを配合することにより、本発明の水中油型乳化皮膚外用剤の紫外線防御能の一様な発揮が可能となる。
本発明の水中油型乳化皮膚外用剤は、水酸基にポリオキシエチレン構造を持つ界面活性剤を実質的に含有しない事を特徴とする。ここでいう実質的に含有しないとは、皮膚外用剤全体に占める割合が0.1%以下であり、界面活性剤に占める割合が5%以下である事を示す。親水基にポリオキシエチレン構造をもつ界面活性剤は、親水基の疎水性の高さ故に、極性が高い紫外線吸収剤に溶解しやすく、安定性および防御能を一様に発揮することが困難であり、好ましくない。
また、本発明の水中油型乳化皮膚外用剤は、日焼け止め用であっても良く、化粧料であって良く、さらに毛髪用であっても良い。
【0014】
(5)本発明に好適な脂肪酸石鹸
本発明の水中油型皮膚外用剤は、高温保存経時での乳化安定性を向上させるために、脂肪酸石鹸を含有する事が好ましい。脂肪酸は、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸から選ばれる一種または二種以上であることが好ましい。脂肪酸塩の形態としては、ナトリウム塩、カリウム塩、トリエタノールアミン塩等が挙げられるが、なかでもカリウム塩が好ましい。乳化皮膚外用剤に対する脂肪酸石鹸の含有量の下限は0.01%以上が好ましく、さらに好ましくは0.1%以上である。上限は3%以下であり、さらに好ましくは2.5%以下である。この範囲内で脂肪酸石鹸を配合することにより、本発明の乳化皮膚外用剤の高温経時での安定性が向上する。
【0015】
(6)本発明に好適な25℃で固形の油溶性成分
また、本発明の水中油型皮膚外用剤は、必要に応じて、乳化滴の界面を強固にする目的として、25℃で固形の油溶性成分を配合することが好ましい。具体的には、高級アルコール、親油性界面活性剤、ワックスが挙げられる。本水中油型皮膚外用剤において25℃で液状の油溶性成分/25℃で固形の油溶性成分の比率の上限は1000以下であり、さらに好ましくは500以下である。このような範囲で油溶性固形成分を配合することにより、本発明の乳化皮膚外用剤の高温保存経時での安定性が向上する。
本発明の水中油型皮膚外用剤に配合される油溶性固形成分である高級アルコールとしては、セチルアルコール、ステアリルアルコール、アラキジルアルコール、ベヘニルアルコール等が例示できる。これらを一種類配合しても、二種類以上組み合わせて配合しても同等の効果が得られる。高級アルコールの配合量の下限は、皮膚外用剤全体に対して0.01%以上が好ましく、さらに好ましくは0.1%以上である。上限は、5%以下であり、さらに好ましくは4%以下である。このような範囲で、高級アルコールを配合することにより、本発明の乳化皮膚外用剤の高温安定性は向上する。
本発明の水中油型皮膚外用剤に配合される油溶性固形成分である親油性界面活性剤は、HLBが5以下であることが好ましく、グリセリル脂肪酸エステル、脂肪酸ソルビタンが例示できる。具体的にはステアリン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル(以上、グリセリル脂肪酸エステル)、ステアリン酸ソルビタン、セスキステアリン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン(以上、脂肪酸ソルビタン)が例示できる。これらを一種類配合しても、二種類以上組み合わせて配合しても同等の効果が得られる。この中でもステアリン酸ソルビタンが好ましく例示できる。親油性界面活性剤の配合量の下限は、皮膚外用剤全体に対して0.01%以上が好ましく、さらに好ましくは0.1%以上である。上限は、3%以下であり、さらに好ましくは2.5%以下である。このような範囲で、親油性界面活性剤を配合することにより、本発明の乳化皮膚外用剤の高温安定性は向上する。
本発明の水中油型皮膚外用剤に配合される油溶性固形成分であるワックスとしては、天然ワックス、合成ワックスが挙げられる。その中でも、植物ワックスが好ましく、カルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックスが特に好ましい。ワックスの配合量の下限は、皮膚外用剤全体に対して、0.01%以上が好ましく、さらに好ましくは0.%以上である。上限は、3%以下であり、さらに好ましくは2.5%以下である。このような範囲で、ワックスを配合することにより、本発明の乳化皮膚外用剤の高温安定性は向上する。
【0016】
(7)本発明のその他の成分
前記必須成分および好適な成分以外に、本発明の水中油型皮膚外用剤においては、通常皮膚外用剤で使用される任意の成分を含有することが出来る。この様な任意の成分としては、例えば、マカデミアナッツ油、アボカド油、トウモロコシ油、オリーブ油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、サフラワー油、綿実油、ホホバ油、ヤシ油、パーム油、液状ラノリン、硬化ヤシ油、硬化油、モクロウ、硬化ヒマシ油、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、イボタロウ、ラノリン、還元ラノリン、硬質ラノリン、ホホバロウ等のオイル、流動パラフィン、スクワラン、プリスタン、オゾケライト、パラフィン、セレシン、ワセリン等の炭化水素類、イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジ−2−エチルヘキシル、乳酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタンエリトリット等の合成エステル油類、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサンシロキサン等の環状ポリシロキサン、アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等の変性ポリシロキサン、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノールアミンエーテル等のアニオン界面活性剤類、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等のカチオン界面活性剤類、イミダゾリン系両性界面活性剤(2−ココイル−2−イミダゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、ベタイン系界面活性剤(アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)、アシルメチルタウリン等の両性界面活性剤類、プロピレングリコール脂肪酸エステル類(モノステアリン酸プロピレングリコール等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル、アルキルグルコシド、(グリセリン/オキシブチレン)コポリマーアルキルエーテル等の非イオン界面活性剤類、ポリエチレングリコール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリセリン、イソプレングリコール、1,2−ペンタンジオール、2,4−ヘキサンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール等の多価アルコール類、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム等の保湿成分類、グアガム、クインスシード、カラギーナン、ガラクタン、アラビアガム、ペクチン、マンナン、デンプン、キサンタンガム、カードラン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、グリコーゲン、ヘパラン硫酸、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、トラガントガム、ケラタン硫酸、コンドロイチン、ムコイチン硫酸、ヒドロキシエチルグアガム、カルボキシメチルグアガム、デキストラン、ケラト硫酸、ローカストビーンガム、サクシノグルカン、カロニン酸,キチン、キトサン、カルボキシメチルキチン、寒天、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、ベントナイト等の増粘剤、表面を処理されていても良い、マイカ、タルク、カオリン、合成雲母、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸(シリカ)、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の粉体類、表面を処理されていても良い、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化コバルト、群青、紺青、酸化チタン、酸化亜鉛の無機顔料類、表面を処理されていても良い、雲母チタン、魚燐箔、オキシ塩化ビスマス等のパール剤類、レーキ化されていても良い赤色202号、赤色228号、赤色226号、黄色4号、青色404号、黄色5号、赤色505号、赤色230号、赤色223号、橙色201号、赤色213号、黄色204号、黄色203号、青色1号、緑色201号、紫色201号、赤色204号等の有機色素類、ポリエチレン末、ポリメタクリル酸メチル、ナイロン粉末、オルガノポリシロキサンエラストマー等の有機粉体類、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール類、ビタミンA又はその誘導体、ビタミンB6塩酸塩、ビタミンB6トリパルミテート、ビタミンB6ジオクタノエート、ビタミンB2又はその誘導体、ビタミンB12、ビタミンB15又はその誘導体等のビタミンB類、α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、ビタミンEアセテート等のビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチン、ピロロキノリンキノン等のビタミン類等、フェノキシエタノール等の抗菌剤などが好ましく例示できる。
【実施例】
【0017】
以下に、実施例を示して、本発明について更に詳細に説明を加えるが、本発明がかかる実施例にのみ限定されないことは言うまでもない。
【0018】
<実施例1−14>
表1および2に示す処方に従って、本発明の水中油型乳化皮膚外用剤を製造した。即ち、イ、ロ、ハの成分を80℃に加温して、イにロを加えて均一化したのち、撹拌しながら徐々にハを加えた。しかる後に攪拌冷却し、50℃にてニを加え、水中油型乳化皮膚外用剤1を得た
。
同様に操作して本発明の皮膚外用剤2−14を得た。なお、表中の数字は重量%を表す。
また、実施例4の皮膚外用剤は、本発明の範囲外の参考例である。
【0019】
【表1】
【0020】
【表2】
【0021】
<比較例1−3>
表1に示す処方に従って、実施例1と同様に操作して、本発明の皮膚外用剤に属さない比較例1−3の皮膚外用剤を製造した。なお、比較例1は製造直後から乳化せず、皮膚外用剤を得ることができなかった。
【0022】
<試験例1>
皮膚外用剤1−14、比較例1−3の高温経時での乳化安定性を調べた。即ち、皮膚外用剤をサンプル容器に詰め、40℃の恒温室に保存し、1か月後および3か月後の外観状態を目視で観察した。
【0023】
評価基準
0:安定である。
1:分離はしていないが、不均一である。
2:わずかに分離相がある。
3:明らかに分離相がある。
【0024】
この結果から、本発明の皮膚外用剤は高温経時での乳化安定性に優れることがわかる。
【0025】
<試験例2>
皮膚外用剤1−14、比較例1−3の高温経時での乳化安定性を調べた。即ち、皮膚外用剤をサンプル容器に詰め、40℃の恒温室に保存し、1か月後および3か月後のエマルションの状態を光学顕微鏡で観察した。
【0026】
評価基準
0:変化なし。
1:わずかに合一している。
2:明らかに合一している。
3:明らかに合一し、極端に大きなエマルション粒子がある。
【0027】
この結果から、本発明の皮膚外用剤は高温経時での乳化安定性に優れることがわかる。
<試験例3>
皮膚外用剤1−14、比較例1−3の高温経時での変色安定性を調べた。即ち、皮膚外用剤をサンプル容器に詰め、40℃の恒温室に保存し、1か月後および3か月後の変色度合を目視で観察した。
【0028】
評価基準
0:変化なし。
1:わずかに変色している。
2:明らかに変色している。
【0029】
この結果から、本発明の皮膚外用剤は高温経時での変色安定性に優れることがわかる。
【0030】
<試験例4>
皮膚外用剤1−14、比較例1−3の紫外線防御能の一様な発揮を調べた。即ち、皮膚外用剤をサージカルテープ(スリーエム ヘルスケア株式会社社製Transpore)に2mg/cm
2を塗布し、15分間自然乾燥させる。その後、化粧膜上の異なる10点について、Labsphere社製 UV−1000S SPFアナライザーを用いてSPF値を測定し、変動係数C.V.を求めた。C.V.値が小さいほど紫外線防御能が一様に発揮する事を意味する。
【0031】
この結果から、本発明の皮膚外用剤は、紫外線防御能を一様に発揮する事がわかる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は皮膚外用剤に応用できる。