(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
コンクリート製基礎から突出される複数本のアンカーボルトに接合するための金属製下部ベースプレートと、該下部ベースプレートの上方に位置される金属製上部ベースプレートと、該上部ベースプレートに上端部が接合されると共に下端部が上記下部ベースプレートに接合され、これらベースプレートを上下に連結する金属製壁状補剛部材とを含み、
上記上部ベースプレートに接合して、当該上部ベースプレートの上面に接続部材を配置し、
該接続部材を、木質柱と接続するための柱接続パーツと、木質柱を避けて位置され、ブレースと接続するためのブレース接続パーツとから構成し、
これら柱接続パーツとブレース接続パーツは、上記上部ベースプレートに別々に、当該上部ベースプレートの長さ方向に沿って間隔を隔てて、並べて設けられ、
上記下部ベースプレートには、当該下部ベースプレートの幅方向中央位置に、その長さ方向に沿って間隔を隔てて、アンカーボルトを挿通するボルト穴が設けられ、
前記壁状補剛部材は、前記柱接続パーツと前記ブレース接続パーツの並び方向に沿って配置される第1壁材と、上記第1壁材に形成され、上記下部ベースプレートに接合されるアンカーボルトを避けるための凹部と、該第1壁材の両側に、当該第1壁材と交差する方向に沿ってアンカーボルト及びその周辺を包囲するように配置される第2壁材とを含み、
前記第1壁材には、前記ブレース接続パーツを一体に設け、前記上部ベースプレートには、その上面に上記ブレース接続パーツを配置するための挿通部を形成し、
上記ブレース接続パーツには、ブレースが高力ボルトで回転可能に摩擦接合されたことを特徴とする木造用柱脚金物。
【背景技術】
【0002】
木造建築物の柱を基礎に固定する金物として、特許文献1及び特許文献2が知られている。特許文献1の「柱脚用金物」は、基礎コンクリートの上面に敷設される下プレートと、構造物を載せるための上プレートと、前記上下プレートを間隔を保ち且つ平行に保持するためのスペーサと、上下プレートを一体化するための締結部材と、ジャッキボルトと、から構成され、前記上プレートには、結合部材を備え、前記下プレートには、アンカー孔と、下プレートの水平を確保するために前記ジャッキボルトを進退可能にねじ込む水準調整用ネジ孔と、を備えている柱脚用金物により、ジャッキボルト端部の突出量を個々に変化させ、基礎コンクリートの上面が傾斜している場合も、下プレートを水平に敷設でき、その結果上プレートに載る構造物も正確に据え置かれて、建築物の強度が向上するものである。
【0003】
特許文献2の「柱固定用金物」は、基礎面から柱を立設するために基礎面上に配設される柱固定用金物に関し、柱に形成されたスリットに係合可能な柱接合部と、柱を支持する支持部と、支持部を支持固定する支持固定部と、を有し、柱接合部には、柱と柱接合部とを貫通する第1固着部材が配設される第1の挿入孔が設けられ、支持固定部には、支持固定部を基礎面に固定するための第2の固着部材が配設される第2の挿入孔が設けられ、支持部には、第2の固着部材により支持固定部を固定するための作業可能空間が設けられている。
【0004】
近年、内部空間を無柱としたり、柱間スパンを広くとって開口部を広げるようにした中規模・大規模の木造建築物の需要が増えてきている。このような木造建築物では、木質部材(集成材を含む)が大断面化しないように、断面寸法を極力抑えることが好ましい。このため、この種の木造建築物は、鉄骨造建築物などと同様に、ブレース架構で構築される。ブレース架構で構築すると、ブレース材の端部及び柱材の端部が接合される柱脚部には、ブレース材からの斜め方向軸力と柱材からの上下方向軸力とが複合的に作用することになる。
【0005】
木造建築物に用いられる金物は、上記特許文献に開示されているように、基礎側のアンカーボルトとの接合部分及び柱材との接合部分双方を確保するために、基礎側に面するプレートと柱材側に面するプレートを有する、いわゆる二重プレート構造で構成されている。
【0006】
特許文献3は、この種の二重プレート構造を備えて、柱材及びブレース材との取り合いを確保するようにした「木造建築物における横架材及び縦構造材と筋交いを金物で接合する方法」であって、基礎部と、並列した横架材と、並列した縦構造材とが接合され、四隅部を有する矩形の木造構造において、横架材と縦構造材における隅部、基礎部と縦構造材における隅部を接合する筋交いを固定する手段である金物、柱脚金物を筋交いの取り付け角度にとらわれずに設置するため、金物、柱脚金物に1方向以上複数方向に筋交いを取り付ける耳を形成し、耳に筋交いの端部と、接合固定できる耳の略中心部に一個の孔部を形成し、筋交いと接合具で接合する木造建築物における横架材及び縦構造材と筋交いを金物で接合する方法である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明にかかる木造用柱脚金物の好適な実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る木造用柱脚金物に木質柱と木質ブレースを接続して基礎に接合した状態を示す斜視図、
図2は、
図1の木造用柱脚金物の概略側面図、
図3は、
図1の木造用柱脚金物に作用する力の様子を示す概念図、
図4は、
図1中、A−A線矢視断面図、
図5は、壁部材の他の例を示す、
図4に対応する断面図、
図6は、
図1の木造用柱脚金物の他の例を示す要部側面図である。
【0019】
本実施形態に係る木造用柱脚金物1は
図1に示すように、鉄筋コンクリート製などのコンクリート製基礎2に、木質柱3及び木質ブレース4を接合固定するために用いられる。木質柱3は、木材に限らず、集成材などのエンジニアドウッドなど、あらゆる木製材料を含む。また、本実施形態では、木質ブレース4を例示していて、当該木質ブレース4もあらゆる木製材料を含むほか、鋼製のブレースであってもよい。以下、ブレースを、木質ブレース4として説明する。
【0020】
木造用柱脚金物1は
図1〜
図3に示すように、コンクリート製基礎2側に設けられる下部ベースプレート5と、下部ベースプレート5の上方に位置され、木質柱3及び木質ブレース4と接続される上部ベースプレート6と、これらベースプレート5,6を上下に連結する壁状補剛部材7を主体として構成される。
【0021】
壁状補剛部材7は、第1壁材8及び第2壁材9から構成される。これら下部ベースプレート5、上部ベースプレート6及び壁状補剛部材7はいずれも、鋼製などの金属材料で形成される。
【0022】
下部ベースプレート5は、平面長方形状の平板材で形成される。下部ベースプレート5には、複数のボルト穴10が貫通形成される。これらボルト穴10には、コンクリート製基礎2に埋設され、かつ当該基礎2の上面2aから上方へ向かって突出される複数本のアンカーボルト11が挿通される。下部ベースプレート5は、ボルト穴10に挿通されたアンカーボルト11に、ダブルナット12を介して接合され、これにより、基礎2の上面2aに設置固定される。13はワッシャーである。
【0023】
図示例にあっては、ボルト穴10が2つ、アンカーボルト11が2本の場合が示されているが、これらボルト穴10及びアンカーボルト11の数は複数であれば、その数は問わない。また、本実施形態では、ボルト穴10は、下部ベースプレート5の幅方向中央位置に、その長さ方向に沿って間隔を隔てて設けられている。しかしながら、ボルト穴10は、このような配置に限ることなく、下部ベースプレート5の幅方向中央位置を避けて、当該中央位置を幅方向両側から挟む位置に、その長さ方向に沿って間隔を隔てて設けるようにしても良い。
【0024】
上部ベースプレート6も、平面長方形状の平板材で形成される。図示例にあっては、上部ベースプレート6は、下部ベースプレート5と同じ寸法で形成されているが、下部ベースプレート5より小さくても、あるいは大きくてもよい。
【0025】
上部ベースプレート6の上面6aには、木質柱3及び木質ブレース4を接続するための接続部材が接合されて配置される。接続部材は、木質柱3と接続するための柱接続パーツ14と、木質ブレース4と接続するためのブレース接続パーツ15とから構成される。これら接続パーツ14,15は、上部ベースプレート6の幅方向中央位置に、その長さ方向に沿って間隔を隔てて、並べて設けられる。
【0026】
ブレース接続パーツ15は、柱接続パーツ14によって上部ベースプレート6の上面6aに接合される木質柱3と位置的に干渉しないように、木質柱3の接合位置を避けて、言い換えれば木質柱3から離してその外側に設置される。これにより、一つの木造用柱脚金物1において、木質柱3及び木質ブレース4を個々に分けて、分離独立して単一の上部ベースプレート6に接合できるようになっている。
【0027】
柱接続パーツ14は、上部ベースプレート6の上面6aに立設され、木質柱3に形成されるほぞ穴に嵌め合わされるパイプ状のほぞ16である。木質柱3には、その側面からほぞ穴を突き抜ける形態でピン挿通孔が形成されると共に、ほぞ16には、ピン挿通孔に合致するピン孔16aが形成される。木質柱3のほぞ穴をほぞ16に嵌合した状態でピン挿通孔にピン17を挿通し、ピン17をピン孔16aに貫通させることにより、木質柱3は、柱接続パーツ14に接続され、上部ベースプレート6上に、ひいては木造用柱脚金物1上に設置固定される。
【0028】
ブレース接続パーツ15は、木質柱3に隣接する位置に設置されて、上部ベースプレート6の上面6aに接合される。木質ブレース4の長さ方向端部には、ボルト孔を有するジョイントブラケット18が設けられる。ブレース接続パーツ15は、当該ジョイントブラケット18にボルト接合可能なボルト孔19aを有するガセットプレート19で構成される。
【0029】
ジョイントブラケット18とガセットプレート19とは、それらのボルト孔に挿通される高力ボルト20によって回転可能に摩擦接合され、これにより、木質ブレース4は、ブレース接続パーツ15に接続され、上部ベースプレート6上に、ひいては木造用柱脚金物1にピン接合される。
【0030】
第1壁材8及び第2壁材9からなる壁状補剛部材7は
図1〜
図4に示すように、第1壁材8及び第2壁材9いずれもが、上部ベースプレート6にそれらの上端部が接合されると共に、それらの下端部が下部ベースプレート5に溶接接合される。溶接接合は、隅肉溶接など、どのような手法であってもよい。
【0031】
第1壁材8は、上部ベースプレート6及び下部ベースプレート5の長さ方向に一致する柱接続パーツ14とブレース接続パーツ15の並び方向に沿って配置される。第2壁材9は、第1壁材8の両側に、当該第1壁材8と交差する方向、図示例では直交する方向に沿って配置される。
【0032】
第1壁材8は、平板材から形成される。第1壁材8は、下部ベースプレート5の幅方向中央位置に、その長さ方向に沿って設けられる。従って、上下のベースプレート5,6と第1壁材8の接合状態は、ベースプレート5,6の長さ方向から見て、ほぼエの字の形態となる。
【0033】
本実施形態では、2本のアンカーボルト11が下部ベースプレート5に対し、その幅方向中央位置で接合されるため、第1壁材8には、下部ベースプレート5に接合されるアンカーボルト11を避けるための凹部21が2箇所に形成される。
【0034】
図示例にあっては、第1壁材8は、その全長に亘って上部ベースプレート6と連続的に接合される横架部分8aと、第1壁材8の長さ方向中央位置で横架部分8aより垂下され、下部ベースプレート5と接合される脚部分8bとから略T字形状に形成される。横架部分8aは適宜高さを有し、脚部分8bは適宜幅を有し、2箇所の凹部21は、アンカーボルト11に面するように、横架部分8aの直下で脚部分8bの側方にそれぞれ形成される。
【0035】
第1壁材8は、下部ベースプレート5の幅方向中央位置を避けて、当該中央位置を幅方向両側から挟む位置で互いに平行に2枚設けるようにしても良い。この場合、第1壁材8は、凹部21を形成することなく、上端部及び下端部が当該第1壁材8の全長に亘って上下のベースプレート5,6に接合されるように、長方形状に形成すればよい。あるいは、上述したように、ボルト穴10、そしてまたアンカーボルト11が、下部ベースプレート5の幅方向中央位置を避けて、当該中央位置を幅方向両側から挟む位置に、その長さ方向に沿って間隔を隔てて設けられる場合にも、第1壁材8は、長方形状に形成すればよい(
図7中、二点鎖線B参照)。
【0036】
第1壁材8の両側に配置される第2壁材9は、上下のベースプレート5,6の幅方向に沿って適宜長さで形成される。
図4に示す例では、第2壁材9は、中央部9aの両側に折り曲げ部9bを有する平断面コ字状に形成され、コ字状の凹所9cが互いに向かい合うように配設される。第2壁材9は、平板材を折り曲げて形成してもよいし、C型チャンネル材を用いてもよい。
【0037】
これら第2壁材9は、アンカーボルト11及びその周辺を包囲するように配設される。第2壁材9は、
図5に他の例を示すように、平板状に形成してもよい。さらに、
図4に示した第2壁材9については、
図6に示すように、折り曲げ位置及びその周辺の上下のベースプレート5,6部分に発生する応力集中を緩和するために、中央部9aと折り曲げ部9bの境界の上端部及び下端部に、切り欠き9dを形成することが好ましい。
【0038】
次に、本実施形態に係る木造用柱脚金物1の作用について説明する。本実施形態に係る木造用柱脚金物1は、下部ベースプレート5のボルト穴10に、コンクリート製基礎2から突出される2本のアンカーボルト11を挿通し、これらアンカーボルト11にダブルナット12を締結することによって、基礎2に接合固定される。
【0039】
その後、上部ベースプレート6の柱接続パーツ14に木質柱3を接続すると共に、ブレース接続パーツ15に高力ボルト20を介して木質ブレース4を接続することで、これら木質柱3及び木質ブレース4が木造用柱脚金物1に接合される。これにより、木造建築物の木質柱3及び木質ブレース4が木造用柱脚金物1を介して、基礎2に固定される。
【0040】
図3に示すように、木質柱3に作用する上下方向軸力F1は、上部ベースプレート6から壁状補剛部材7の第1壁材8及び第2壁材9に流れ、木質柱3直下の下部ベースプレート5の部分を介して基礎2によって支持される。また、ブレース接続パーツ15から入力される木質ブレース4の斜め方向軸力F2は、上下方向軸力F1と同様に、上部ベースプレート6から壁状補剛材7の第1壁材8及び第2壁材9に流れ、下部ベースプレート5を介して基礎2によって支持される。
【0041】
斜め方向軸力F2は、上部ベースプレート6に対するブレース接続パーツ15の接合範囲に応じて、当該斜め方向軸力F2に沿う力線f2a方向からボルト孔19aの直下に向かう力線f2b方向にわたり、上部ベースプレート6に広範に分散して流れ、基礎2によって負担されるようになっている。
【0042】
以上説明した本実施形態に係る木造用柱脚金物1にあっては、上部ベースプレート6の上面6aに、柱接続パーツ14で接続される木質柱3を避けて、木質ブレース4のブレース接続パーツ15を配置して、これら接続パーツ14,15を別々に設けているため、木質柱3に、木質ブレース4からの入力F2が影響することはなく、また木質ブレース4に、木質柱3からの入力F1が影響することもないので、そしてまた、木質ブレース4からの入力F2は上部ベースプレート6を介して広範に分散される(f2a〜f2b)ことから、壁状補剛部材7下の下部ベースプレート5全体、そしてまた基礎2側の複数本のアンカーボルト11に、ほぼ均等に力を負担させることができる。従って、いずれかのアンカーボルト11に偏って力がかかる場合に比して、アンカーボルト11の本数を削減することができる。
【0043】
また、柱接続パーツ14及びブレース接続パーツ15双方において、木質柱3及び木質ブレース4からの入力F1,F2が複合的に作用することはなく、柱接続パーツ14は木質柱3のみからの入力を、ブレース接続パーツ15は木質ブレース4のみからの入力を負担すれば十分であって、複合力に抗する場合よりも、これら接続パーツ14,15のサイズや強度を軽減できると同時に、木造用柱脚金物1自体の設計も簡便化することができ、これらのことから、木質ブレース4を含むブレース架構を採用する木造建築物において、筋交い及び柱の双方を一括して組み込むようにした背景技術に比べ、木質ブレース4に加わる力を単純かつ合理的に基礎2側へ伝達することができる。
【0044】
さらに、木質柱3と柱接続パーツ14との接合部分には上下方向軸力F1のみが作用し、木質ブレース4とブレース接続パーツ15との接合部分には斜め方向軸力F2のみが作用するだけなので、背景技術のように複合力が作用する場合に比べて、これら接合部分の必要接合耐力を軽減することができるとともに、木質柱3及び木質ブレース4の断面寸法も小さく押さえることができる。
【0045】
従って、本実施形態に係る木造用柱脚金物1であれば、内部空間を無柱としたり、柱間スパンを広くとって開口部を広げるようにした中規模・大規模の木造建築物をブレース架構で構築する場合に、木質ブレース4からの斜め方向軸力F2及び木質柱3からの上下方向軸力F1がともに大きくかつ複合的に作用することになる柱脚部を、これら木質柱3等の断面寸法を小さく押さえつつ、高耐力・高剛性で堅牢に構成することができる。
【0046】
特に、木質ブレース4の水平面に対する傾斜角度が小さく、柱脚部に比較的大きな水平分力が作用する場合であっても、柱接続パーツ14とブレース接続パーツ15で個別に木質柱3及び木質ブレース4を接合するようにしたので、水平分力が木質柱3側に影響することを遮断して、上記作用効果を適切かつ十分に発揮させることができる。
【0047】
上下のベースプレート5,6を上下に連結して力を分散・伝達する壁状補剛部材7を、接続パーツ14,15の並び方向に沿って配置される第1壁材8と、第1壁材8と交差する方向に沿って配置される第2壁材9で構成したので、上下のベースプレート5,6の長さ方向に沿って作用するせん断力に対し、木造用柱脚金物1のせん断耐力を高く確保することができ、優れた柱脚性能を保証することができる。
【0048】
また、第1壁材8に、下部ベースプレート5に接合されるアンカーボルト11を避けるための凹部21を形成したので、木造用柱脚金物1のせん断耐力を維持しつつ、アンカーボルト11を下部ベースプレート5の幅方向中央位置に設けることができ、当該幅方向中央位置を挟んで両側に設ける場合に比べて、アンカーボルト11の使用本数、ボルト穴10の数を削減できると共に、アンカーボルト11が埋設されるコンクリート製基礎2の幅寸法も抑えることができて、低コストかつ施工性の良い木造用柱脚金物1を得ることができる。
【0049】
第1壁材8を、その全長に亘って上部ベースプレート6と連続的に接合される横架部分8aと、第1壁材8の長さ方向中央位置で横架部分8aより垂下され、下部ベースプレート5と接合される脚部分8bとから略T字形状に形成したので、上部ベースプレート6の上面6aに並べた接続パーツ14,15それぞれからの入力F1,F2を、横架部分8aを介して適切に下部ベースプレート5へ伝達することができる。
【0050】
第2壁材9を、中央部9aの両側に折り曲げ部9bを有する平断面コ字状に形成したので、第2壁材9によりアンカーボルト11及びその周辺を取り囲んで補剛することができ、アンカーボルト11周辺に発生し得る下部ベースプレート5の面外変形を小さくすることができる。
【0051】
また、コ字状断面であるので、ベースプレート5,6に接合する際、その上に第2壁材9を容易に立てて置くことができ、組立性に優れる。木質ブレース4からベースプレート5,6の長さ方向に加わるせん断力(水平分力)を、第1壁材8だけでなく、折り曲げ部9bでも負担することができる。さらに、第2壁材9自体、平板状である場合に比して、座屈に対して有利である。
【0052】
ブレース接続パーツ15のガセットプレート19とジョイントブラケット18とをピン接合したので、木造用柱脚金物1に対する木質ブレース4の相対回動をスムーズに許容することができる。また、ピン接合を高力ボルト20による摩擦接合としたので、回動初期における接合部分の剛性を確保することができる。
【0053】
図7〜
図9には、上記実施形態の変形例が示されている。
図7は、第1壁材を説明する説明図であって、
図7(a)は側面図、
図7(b)は平面図、
図8は、上部ベースプレートの平面図、
図9は、上部ベースプレートの他の例を示す平面図である。
【0054】
この変形例では、壁状補剛部材7の第1壁材8に、ブレース接続パーツ15のガセットプレート19が一体的に設けられる。上部ベースプレート6には、ガセットプレート19を上面6aに配置し、第1壁材8を下方に配置するために、ガセットプレート19をその下方から挿通するための挿通部として、貫通孔22が形成される。
【0055】
貫通孔22周りに、ガセットプレート19及び第1壁材8を上部ベースプレート6に溶接接合することで、上記実施形態と同様の木造用柱脚金物1を構成することができる。
図9に示した上部ベースプレート9の他の例では、挿通部として、貫通孔22に代えてスリット23が形成されている。スリット23であれば、より簡便にガセットプレート19を上部ベースプレート6に取り付けることができる。
【0056】
この変形例では、第1壁材8とブレース接続パーツ15とを一体化したことにより、溶接接合箇所を介して力の伝達を確保する上記実施形態と異なり、木質ブレース4からの入力を、直接的に、単純かつ確実に下部ベースプレート5へ伝達することができて、これにより、下部ベースプレート5のアンカーボルト11に均等に負担させることができると共に、部品としての壁状補剛部材7、特に木質ブレース4からの入力F2の影響が少なくなることによって、上部ベースプレート6の設計を容易化かつ適正化することができる。
【0057】
また、
図7中、二点鎖線Bで示すように、アンカーボルト11と位置的に干渉しない配置で第1壁材8を設置できる場合には、第1壁材8は、長方形状に形成することができる。また、
図7中、一点鎖線Cで示すように、第1壁材8の脚部分8bの下端には、下部ベースプレート5に対する溶接脚長を長く確保できるように、拡幅部8cを形成するようにしてもよい。
【0058】
図10には、上記実施形態の他の変形例が示されている。
図10は、変形例に係る木造用柱脚金物1の側面図である。この変形例は、アンカーボルト11の本数が3本以上の場合である。
【0059】
この場合には、第1壁材8は、上部ベースプレート6に、その長さ方向ほぼ全長に亘って連続的に接合される横架部分8aから、アンカーボルト11の間に垂下させて複数の脚部分9bが形成されると共に、横架部分8a下に脚部分8b間に位置させて複数の凹部21が形成されて構成される。これにより、木質柱3及び木質ブレース4を基礎2に固定する際に、木造用柱脚金物1の基礎2に対する接合強度を自在にかつ適切に確保することができる。
【0060】
これら変形例であっても、上記実施形態と同様の作用効果を奏することはもちろんである。
【0061】
図11及び
図12には、さらに他の変形例として、前後方向あるいは左右方向の二方から木質ブレース4が接合される側柱に採用して好ましい木造用柱脚金物1が示されている。
図11は、この変形例に係る木造用柱脚金物を説明する図であって、(a)は側面図、(b)は平面図、(c)は底面図、(d)は正面図である。
図12は、この変形例に用いられる部品を説明する図であって、(a)は第1壁材にガセットプレートを一体化して構成した壁状補剛部材の側面図、(b)は第2壁材の正面図である。
【0062】
二つの木質ブレース4と接合するために、上部ベースプレート6の上面6aにはその長さ方向に、柱接続パーツ14を両側から挟む配置で、ブレース接続パーツ15のガセットプレート19が一対設けられる。一対のガセットプレート19は、壁状補剛部材7を構成する第1壁材8の脚部分8bの両側に配置されて、第1壁材8の長さ方向両端側に一体的に設けられる。
【0063】
従ってこの変形例の場合、柱接続パーツ14は、脚部分8bの直上に設けられる。すなわち、第1壁材8には、ガセットプレート19が二つ形成される。上部ベースプレート6には、一対のガセットプレート19をその下方から挿通するための貫通孔22が二つ並べて形成される。そして、貫通孔22周りに、一対のガセットプレート19及び第1壁材8が上部ベースプレート6に溶接接合される。下部ベースプレート5への第1壁材8の接合は、上記実施形態と同様である。
【0064】
二つの第2壁材9は、
図5に示した平板状もしくは
図4に示した断面コ字状に形成される。この変形例では、各第2壁材9には、第1壁材8の長さ方向端部に嵌め合わされる凹溝24が形成される。これら第2壁材9は、それらの凹溝24に第1壁材8の両端がそれぞれ嵌合された状態で、上部ベースプレート6及び下部ベースプレート5に対して溶接接合される。
【0065】
この変形例では、第2壁材9と第1壁材8の両端とは、凹溝24により互いに嵌り合って直接交差する状態に組み付けられ、これにより第2壁材9が、第1壁材8の両側に、当該第1壁材8と交差する方向に沿って配置される。
【0066】
上記実施形態で説明した木造用柱脚金物1には、木質ブレース4を一つしか接合できないが、この変形例では、単一の木造用柱脚金物1に二つの木質ブレース4を接合することができ、側柱位置で木質柱3及び木質ブレース4を合理的に効率よく接合することができる。このような変形例であっても、上記実施形態と同様の作用効果を奏することはもちろんである。
【0067】
上記実施形態や各種変形例で説明した柱接続パーツ14であるほぞ16は、パイプ状に限らず、ピン状やプレート状、あるいは鉄筋であっても良いことはもちろんである。また、木質ブレース4のジョイントブラケット18とブレース接続パーツ15であるガセットプレート19の接続形式も、ピン形式に限らず、剛接合形式であってもよい。