(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6563220
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】転倒検知端末およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G08B 21/02 20060101AFI20190808BHJP
【FI】
G08B21/02
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-56193(P2015-56193)
(22)【出願日】2015年3月19日
(65)【公開番号】特開2016-177459(P2016-177459A)
(43)【公開日】2016年10月6日
【審査請求日】2017年12月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108085
【氏名又は名称】セコム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100106840
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100115808
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 真司
(74)【代理人】
【識別番号】100113549
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 守
(74)【代理人】
【識別番号】100117444
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100131451
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 理
(72)【発明者】
【氏名】古田 展康
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 宏幸
【審査官】
永田 義仁
(56)【参考文献】
【文献】
特表2014−518666(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/055255(WO,A1)
【文献】
中国特許出願公開第103593944(CN,A)
【文献】
特開2004−038430(JP,A)
【文献】
特表2012−505683(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00− 5/01
A61B 5/06− 5/22
G08B 19/00−31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者により携帯され、当該利用者の転倒を検知する転倒検知端末において、
前記転倒検知端末の動きを検出して動きデータを出力する動きセンサと、
前記動きデータから前記利用者の転倒を検出し、前記利用者の転倒異常を判定する転倒判定手段と、
前記動きデータから前記利用者の体動を検出し、前記転倒判定手段による転倒検出の後の所定のキャンセル判定時間内に所定の第1体動または前記第1体動より小さい継続的な第2体動が検出された場合には前記転倒検出をキャンセルする取消処理手段と、
を備え、
前記取消処理手段は、
前記動きデータから所定の時間的な区間ごとに前記利用者の動き変化量を求め、前記動き変化量が第1基準量以上の体動を前記第1体動として検出し、前記キャンセル判定時間において前記動き変化量が前記第1基準量より低い第2基準量以上の区間が所定数以上ある場合に前記第2体動として検出することを特徴とする転倒検知端末。
【請求項2】
利用者により携帯され、当該利用者の転倒を検知する転倒検知端末において、
前記転倒検知端末の動きを検出して動きデータを出力する動きセンサと、
前記動きデータから前記利用者の転倒を検出し、前記利用者の転倒異常を判定する転倒判定手段と、
前記動きデータから前記利用者の体動を検出し、前記転倒判定手段による転倒検出の後の所定のキャンセル判定時間内に所定の第1体動または前記第1体動より小さい継続的な第2体動が検出された場合には前記転倒検出をキャンセルする取消処理手段と、
を備え、
前記取消処理手段は、
前記利用者の動き変化量が所定基準量以上の体動を前記第1体動として検出し、前記利用者の動き変化量が前記基準量より小さい継続的な体動を前記第2体動として検出する手段であって、前記キャンセル判定時間における前記動き変化量の積算値が所定値以上である場合に前記第2体動として検出することを特徴とする転倒検知端末。
【請求項3】
利用者により携帯され、当該利用者の転倒を検知する転倒検知端末において、
前記転倒検知端末の動きを検出して動きデータを出力する動きセンサと、
前記動きデータから前記利用者の転倒を検出し、前記利用者の転倒異常を判定する転倒判定手段と、
前記動きデータから前記利用者の体動を検出し、前記転倒判定手段による転倒検出の後の所定のキャンセル判定時間内に所定の第1体動または前記第1体動より小さい継続的な第2体動が検出された場合には前記転倒検出をキャンセルする取消処理手段と、
を備え、
前記取消処理手段は、
前記動きデータから所定の時間的な区間ごとに前記動き変化量を求め、前記キャンセル判定時間において前記動き変化量が第1基準値以上の区間が第1所定数以上ある場合に前記第1体動として検出し、前記キャンセル判定時間において前記動き変化量が前記第1基準値より小さい第2基準値以上の区間が前記第1所定数より多い第2所定数以上ある場合に前記第2体動として検出することを特徴とする転倒検知端末。
【請求項4】
利用者の転倒を検知する転倒検知端末で実行されるプログラムであって、
前記転倒検知端末には、前記転倒検知端末の動きを検出して動きデータを出力する動きセンサが備えられており、
前記プログラムは、コンピュータに
前記動きデータから前記利用者の転倒を検出し、前記利用者の転倒異常を判定する転倒異常判定を行う処理と、
前記動きデータから前記利用者の体動を検出し、前記転倒異常判定を行う処理による転倒検出の後の所定のキャンセル判定時間に所定の第1体動または前記第1体動より小さい継続的な第2体動が検出された場合には前記転倒検出をキャンセルする処理と、
を実行させ、
前記キャンセルする処理では、
前記動きデータから所定の時間的な区間ごとに前記利用者の動き変化量を求め、前記動き変化量が第1基準量以上の体動を前記第1体動として検出し、前記キャンセル判定時間において前記動き変化量が前記第1基準量より低い第2基準量以上の区間が所定数以上ある場合に前記第2体動として検出することを特徴とするプログラム。
【請求項5】
利用者の転倒を検知する転倒検知端末で実行されるプログラムであって、
前記転倒検知端末には、前記転倒検知端末の動きを検出して動きデータを出力する動きセンサが備えられており、
前記プログラムは、コンピュータに
前記動きデータから前記利用者の転倒を検出し、前記利用者の転倒異常を判定する転倒異常判定を行う処理と、
前記動きデータから前記利用者の体動を検出し、前記転倒異常判定を行う処理による転倒検出の後の所定のキャンセル判定時間に所定の第1体動または前記第1体動より小さい継続的な第2体動が検出された場合には前記転倒検出をキャンセルする処理と、
を実行させ、
前記キャンセルする処理では、
前記利用者の動き変化量が所定基準量以上の体動を前記第1体動として検出し、前記利用者の動き変化量が前記基準量より小さい継続的な体動を前記第2体動として検出する手段であって、前記キャンセル判定時間における前記動き変化量の積算値が所定値以上である場合に前記第2体動として検出することを特徴とするプログラム。
【請求項6】
利用者の転倒を検知する転倒検知端末で実行されるプログラムであって、
前記転倒検知端末には、前記転倒検知端末の動きを検出して動きデータを出力する動きセンサが備えられており、
前記プログラムは、コンピュータに
前記動きデータから前記利用者の転倒を検出し、前記利用者の転倒異常を判定する転倒異常判定を行う処理と、
前記動きデータから前記利用者の体動を検出し、前記転倒異常判定を行う処理による転倒検出の後の所定のキャンセル判定時間に所定の第1体動または前記第1体動より小さい継続的な第2体動が検出された場合には前記転倒検出をキャンセルする処理と、
を実行させ、
前記キャンセルする処理では、
前記動きデータから所定の時間的な区間ごとに前記動き変化量を求め、前記キャンセル判定時間において前記動き変化量が第1基準値以上の区間が第1所定数以上ある場合に前記第1体動として検出し、前記キャンセル判定時間において前記動き変化量が前記第1基準値より小さい第2基準値以上の区間が前記第1所定数より多い第2所定数以上ある場合に前記第2体動として検出することを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、利用者(携帯者)の転倒を検知する機能を有する転倒検知端末に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人の体動(動き)をセンサで検出し、その検出データから転倒検出を行う装置が知られている(例えば特許文献1参照)。そして、転倒検出後に体動が検出された場合には、通報の必要がないため、転倒検出をキャンセルする技術も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−360522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、転倒検出後の人の動き方は不規則である。通常、人は、緊急事態に至るような転倒の後、ほとんど動けないか、あるいは、ゆっくりとしか動けない。しかし、緊急事態に至らなかった場合でも、ゆっくりとしか動かないこともある。一方、緊急事態に至るような転倒の後でも、負傷した箇所をさすったり苦痛で身体を動かしたりすることもある。そのため、従来の装置のように、画一的に体動の有無に基づいて転倒検出をキャンセルしてしまうと、本来はキャンセルすべきでない転倒検出を誤ってキャンセルしてしまうおそれがある。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたもので、利用者の体動に応じて適切に転倒検出の自動キャンセルを行うことのできる転倒検知端末を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の転倒検知端末は、利用者により携帯され、当該利用者の転倒を検知する転倒検知端末において、前記転倒検知端末の動きを検出して動きデータを出力する動きセンサと、前記動きデータから前記利用者の転倒を検出し、前記利用者の転倒異常を判定する転倒判定手段と、前記動きデータから前記利用者の体動を検出し、前記転倒判定手段による転倒検出の後の所定のキャンセル判定時間内に所定の体動が検出された場合には前記転倒検出をキャンセルする取消処理手段と、を備え、前記取消処理手段は、所定の第1体動および前記第1体動より小さい継続的な第2体動を検出し、前記第1体動または前記第2体動が検出された場合に前記転倒検出をキャンセルする。
【0007】
この構成により、動きセンサにより利用者の動きを示す動きデータが取得され、その動きデータから利用者の転倒が検出されて利用者が転倒したか否かが判定される。このとき、動きデータから利用者の体動が検出され、転倒検出の後の所定のキャンセル判定時間に大きい体動(第1体動)または小さい継続的な体動(第2体動)が検出された場合には転倒検出が自動的にキャンセルされる。したがって、転倒検出後に大きい体動が検出された場合にも自動キャンセルが行われ、また、転倒検出後に小さい継続的な体動が検出された場合にも自動キャンセルが行われる。このように、転倒検出のキャンセルを行う場合に、利用者の体動に応じて適切な自動キャンセルを行うことができる。
【0008】
また、本発明の転倒検知端末では、前記取消処理手段は、前記利用者の動き変化量が所定基準量以上の体動を前記第1体動として検出し、前記利用者の動き変化量が前記基準量より小さい継続的な体動を前記第2体動として検出してもよい。
【0009】
この構成により、大きい体動(利用者の動き変化量が所定基準量以上の体動)を第1体動として適切に検出することができる。また、小さい継続的な体動(利用者の動き変化量が基準量より小さい継続的な体動)を第2体動として適切に検出することができる。よって、大きい体動と小さい体動に対してそれぞれ適切に自動キャンセルの判定を行うことができる。
【0010】
また、本発明の転倒検知端末では、前記取消処理手段は、前記動きデータから所定の時間的な区間ごとに前記動き変化量を求め、前記キャンセル判定時間において前記動き変化量が前記基準量以上の区間が所定数以上ある場合に前記第2体動として検出してもよい。
【0011】
この構成により、動き変化量が基準量以上の区間(時間的な区間)がキャンセル判定時間内に所定数以上ある場合に、第2体動(小さい継続的な体動)として適切に検出することができる。よって、小さい体動に対して適切に自動キャンセルの判定を行うことができる。
【0012】
また、本発明の転倒検知端末では、前記取消処理手段は、前記キャンセル判定時間における前記動き変化量の積算値が所定値以上である場合に前記第2体動として検出してもよい。
【0013】
この構成により、キャンセル判定時間における動き変化量の積算値が所定値以上である場合に、第2体動(小さい継続的な体動)として適切に検出することができる。よって、小さい体動に対して適切に自動キャンセルの判定を行うことができる。
【0014】
また、本発明の転倒検知端末では、前記取消処理手段は、前記動きデータから所定の時間的な区間ごとに前記動き変化量を求め、前記キャンセル判定時間において前記動き変化量が第1基準値以上の区間が第1所定数以上ある場合に前記第1体動として検出し、前記キャンセル判定時間において前記動き変化量が前記第1基準値より小さい第2基準値以上の区間が前記第1所定数より多い第2所定数以上ある場合に前記第2体動として検出してもよい。
【0015】
この構成により、動き変化量が第1基準値以上の区間(時間的な区間)がキャンセル判定時間内に第1所定数以上ある場合に、第1体動(大きい体動)として適切に検出することができる。また、動き変化量が第2基準値(第1基準値より小さい基準値)以上の区間(時間的な区間)が第2所定数(第1所定数より多い所定数)以上ある場合に、第2体動(小さい継続的な体動)として適切に検出することができる。よって、大きい体動と小さい体動に対してそれぞれ適切に自動キャンセルの判定を行うことができる。
【0016】
本発明のプログラムは、利用者の転倒を検知する転倒検知端末で実行されるプログラムであって、前記転倒検知端末には、当該端末の動きを検出して動きデータを出力する動きセンサが備えられており、前記プログラムは、コンピュータに、前記動きデータから前記利用者の転倒を検出し、前記利用者の転倒異常を判定する転倒異常判定を行う処理と、前記動きデータから前記利用者の体動を検出し、前記転倒異常判定を行う処理による転倒検出の後の所定のキャンセル判定時間に所定の体動が検出された場合には前記転倒検出をキャンセルする処理と、を実行させ、前記キャンセルする処理では、所定の第1体動および前記第1体動より小さい継続的な第2体動を検出し、前記第1体動または前記第2体動が検出された場合に前記転倒検出をキャンセルする。
【0017】
このプログラムによっても、上記の端末と同様、動きセンサにより利用者の動きを示す動きデータが取得され、その動きデータから利用者の転倒が検出されて利用者が転倒したか否かが判定される。このとき、動きデータから利用者の体動が検出され、転倒検出の後の所定のキャンセル判定時間に大きい体動(第1体動)または小さい継続的な体動(第2体動)が検出された場合には転倒検出が自動的にキャンセルされる。したがって、転倒検出後に大きい体動が検出された場合にも自動キャンセルが行われ、また、転倒検出後に小さい継続的な体動が検出された場合にも自動キャンセルが行われる。このように、転倒検出のキャンセルを行う場合に、利用者の体動に応じて適切な自動キャンセルを行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、利用者の体動に応じて適切に転倒検出の自動キャンセルを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施の形態における転倒検知端末のブロック図である。
【
図2】転倒検出を説明するための加速度データの一例を示す図である。
【
図3】(a)転倒後に体動がない場合の加速度データの一例を示す図である。 (b)転倒後に大体動がある場合の加速度データの一例を示す図である。 (c)転倒後に継続的な小体動がある場合の加速度データの一例を示す図である。
【
図4】本発明の実施の形態における転倒検知端末の動作説明のためのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態の転倒検知端末について、図面を用いて説明する。本実施の形態では、高齢者の転倒を検知する監視システム等に用いられる転倒検知端末の場合を例示する。この転倒検知端末の機能(転倒検知機能)は、端末のメモリ等に格納されたプログラムによって実現することができる。
【0021】
転倒検知端末は、利用者(高齢者など)に携帯される端末装置である。例えば、転倒検知端末は、リストバンド型(腕時計型)のウェアラブル端末で構成され、利用者(高齢者など)が手首や腕に装着される。転倒検知端末は、首からぶら下げるペンダント型であってもよく、頭や耳に装着するタイプの頭部装着型でもよく、また、ベルトタイプなどの腰装着型であってもよい。
【0022】
まず、本実施の形態の転倒検知端末の構成を、図面を参照して説明する。
図1は、本実施の形態の転倒検知端末の構成を示すブロック図である。
図1に示すように、転倒検知端末1は、加速度センサ2、装着センサ3、高度センサ4、救急ボタン5を備えている。また、この転倒検知端末1は、操作表示部6、振動部7、電源部8、無線通信部9、監視制御部10を備えている。
【0023】
加速度センサ2は、利用者の動きを検出し、利用者の動きを示す動きデータ(加速度データ)を出力する機能を備えたセンサであり、例えば3軸加速度センサで構成される。加速度センサ2は、所定のサンプリング周期で検出した加速度データを出力する。装着センサ3は、人体(腕)への装着状態(装着されているか否か)を検出する機能を備えたセンサであり、例えば静電容量方式センサなど、人体の装着部位の接触や近接を電気的に検出可能なセンサで構成される。高度センサ4は、気圧変化等を利用して端末の高さの変化を検出する機能を備えたセンサであり、例えば気圧センサで構成される。救急ボタン5は、利用者が非常時に救急通報するための操作部(救急操作部)である。
【0024】
操作表示部6は、例えばタッチパネルディスプレイで構成され、異常報知などの各種の情報表示をする機能(情報表示機能)と、キャンセル操作などの各種の入力操作をする機能(入力操作機能)を備えている。振動部7は、バイブレーション装置などで構成され、振動による刺激で利用者へ異常や操作受付などを報知する機能を備えている。電源部8は、電池などのバッテリなどで構成される。無線通信部9は、例えば携帯通信網を介して遠隔の監視センタ11に設置されたセキュリティ端末12と無線通信を行う機能を備えている。また、無線通信部9は、ブルートゥース(登録商標)や特定小電力無線などで、宅内に設置されたセキュリティ端末(図示せず)と無線通信を行う機能を備えている。
【0025】
監視制御部10は、各センサ(加速度センサ2、装着センサ3、高度センサ4)や操作部(救急ボタン5、操作表示部6)からの入力に基づいて、救急監視を行う機能を有する救急監視部13と、生活監視を行う機能を有する生活監視部14と、転倒監視を行う機能を有する転倒監視部15を備えている。また、この監視制御部10は、転倒検知端末1の各部を制御する機能を備えている。
【0026】
救急監視部13は、利用者が救急対応を求めて救急ボタン5を操作した際に、監視センタ11に救急通報を行う機能を備えている。例えば、救急ボタン5が2秒間押され続けると、救急異常と判定し、救急異常を監視センタ11に通報するとともに、異常確定したことを振動・画面・音・光などで周囲に報知する。救急異常は、意識的な操作による異常であるため、キャンセル操作は受け付けない。なお、生活異常や転倒異常(後述する)の発生中でも、救急異常が発生した場合は、救急異常が優先される。
【0027】
生活監視部14は、加速度センサ2の出力に基づき、利用者(携帯者、装着者)が日常生活で生じる程度に動いているかを監視し、急病などにより動けない状態が継続していることを通報する機能を備えている。生活監視部14は、装着状態(装着された状態)のときに生活監視を実行する。例えば、加速度センサ2の出力から利用者の動き(体動)を検出し、日常生活レベルの体動が一定期間(例えば1時間)継続して生じていないと、生活異常と判定する。生活異常と判定すると、その旨を利用者に振動・画面・音・光などにより報知する。この生活監視部14は、生活異常と判定・報知した後、所定のキャンセル時間(例えば10秒)の間に体動が検出されるか、またはキャンセル操作が入力された場合、生活異常を取り消す(異常通報しない)処理を行う。体動の検出処理については、転倒監視における処理と同様(後述する)である。
【0028】
ここで、転倒検知の基本的なロジックについて説明する。転倒監視部15は、加速度センサ2の出力(加速度データ)に基づいて、加速度の変化を分析し、そして、転倒らしい特徴が現れた転倒事象を抽出することにより、転倒を検出する。転倒監視部15は、様々な転倒判定(転倒検出)を行う機能を備えている。転倒監視部15は、そのための構成として転倒判定部16を備えている。
【0029】
図2には、転倒検出を説明するための加速度データの一例が示される。転倒判定部16は、加速度センサ2の出力から「衝撃」を検出し、その検出結果(評価値)に基づいて転倒を検出してもよい。この場合、転倒判定部16は、転倒判定の処理対象となる加速度データから、所定の閾値(例えば30m/sec
2)以上の加速度のピークを検出する。そして、その加速度のピーク時点を含む一定期間(例えば100msec、ピークの前後50msecずつ)を対象に加速度変化量H(加速度変化の積算値)を求める。転倒判定部16は、加速度変化量Hが所定の転倒基準値(例えば50m/sec
2)以上であれば、利用者が転倒したと判定する。すなわち、転倒事象が検出される。
【0030】
例えば、以下の式1を用いることにより、所定期間(例えば100msec)内の加速度データ(スカラー化された加速度データa1、a2、・・・、a5)について、直前の加速度との差分絶対値を求め、この期間にわたって積算することにより、加速度変化量Hが算出される。なお、加速度変化量Hは、加速度センサーの3軸の各軸(X軸、Y軸、Z軸)ごとに算出し、3軸の合計や平均として算出してもよい。
H=|a1−a2|+|a2−a3|+・・・+|a4−a5| (式1)
【0031】
なお、転倒判定部16は、加速度ピークにおける加速度の値(ピーク値P)に基づいて、転倒判定(転倒検出)を行ってもよい。また、転倒判定部16は、加速度変化量Hとピーク値Pとの比率H/Pに基づいて、転倒判定(転倒検出)を行ってもよい。また、転倒判定部16は、加速度ピーク前後の一定期間を対象に加速度変化量Hを求めるのではなく、順次入力される加速度データについて前後一定期間の加速度変化量Hを求め、あるいは、一定期間ごとにその期間内の加速度変化量Hを求め、転倒判定(転倒検出)を行ってもよい。また、転倒判定部16は、加速度センサ2の出力から「自由落下特性」を検出し、その検出結果(評価値)に基づいて転倒を検出してもよい。あるいは、転倒判定部16は、加速度センサ2の出力から「衝撃」と「自由落下特性」を検出し、それぞれの検出結果(評価値)に基づいて転倒を検出してもよい。
【0032】
また、転倒監視部15は、転倒検出を自動キャンセルする機能を備えている。転倒監視部15は、そのための構成として取消処理部17を備えている。取消処理部17では、体動検出による自動キャンセル処理が行われる。すなわち、転倒が検出された場合であっても、その後に体動が検出されれば利用者は危険な状態ではないと考えられるため、取消処理部17は、転倒検出を自動キャンセルする。この体動検出(自動キャンセル処理)では、転倒検出した時点(またはピークの時点)から、所定の遅延時間(例えば3秒)の体動は無視し、それ以降のキャンセル判定時間(例えば15秒)の間の体動の有無を判定する。体動の有無の判定は、加速度のピーク値または変化量の観測により行う。例えば、所定の閾値以上のピーク値の検出やその検出回数、検出されたピーク値の合計、単位時間当たりの加速度の変化量、所的期間(例えば数秒間)または体動判定時間における加速度の変化量の合計、などに基づき所定の体動を検出する。転倒検出後、キャンセル判定時間の経過時までに所定の体動が検出されなければ、転倒判定部16は転倒異常を確定する。
【0033】
具体的には、取消処理部17は、転倒検出後、キャンセル判定時間が経過するまでの間に、2種類の体動(第1体動、第2体動)の検出による自動キャンセル処理を行う。
【0034】
図3は、加速度のデータの一例を示す図であり、(a)は転倒後に体動がない場合のデータ、(b)は転倒後に大体動(第1体動)がある場合のデータ、(c)は転倒後に継続的な小体動(第2体動)がある場合のデータである。
図3(a)に示すように、転倒検出後、キャンセル判定時間の経過時までに体動が検出されなければ、取消処理部17は自動キャンセル処理を行わず、転倒判定部16は転倒異常を確定する。
【0035】
一方、
図3(b)に示すように、転倒検出後(所定の遅延時間は無視して)、キャンセル判定時間の経過時までに、比較的早くかつ大きな体動(大体動)を検出した場合、取消処理部17は、転倒検出を自動キャンセルする。例えば、単位時間あたりの加速度変化量Hが第1の閾値(例えば40m/sec
2)を超えた場合、あるいは、所定の基準値(例えば、15m/sec
2)以上の加速度ピーク値が検出された場合に、転倒検出が自動キャンセルされる。
【0036】
また、
図3(c)に示すように、転倒検出後(所定の遅延時間は無視して)、キャンセル判定時間の経過時までに、比較的ゆっくりでかつ小さな体動(小体動)をある程度継続して検出した場合、取消処理部17は、転倒検出を自動キャンセルする。例えば、単位時間あたりの加速度変化量Hが第1の閾値(例えば40m/sec
2)未満かつ第2の閾値(例えば10m/sec
2)以上である区間をカウントし、そのような区間が所定回数(例えば10回)以上検出された場合、あるいは、キャンセル判定時間における加速度変化量Hを積算した合計値が一定値(例えば150m/sec
2)を超えた場合に、転倒検出が自動キャンセルされる。
【0037】
このように、取消処理部17は、第1体動および第2体動(第1体動より小さい継続的な体動)を検出し、第1体動または第2体動が検出された場合に転倒検出をキャンセルする。具体的には、取消処理部17は、利用者の加速度変化量Hが基準量(例えば40m/sec
2)以上の体動を第1体動として検出し、利用者の加速度変化量Hが基準量(例えば40m/sec
2)より小さい継続的な体動を第2体動として検出する。
【0038】
また、取消処理部17は、加速度データから所定の時間的な区間(例えば1秒)ごとに加速度変化量Hを求め、キャンセル判定時間において加速度変化量Hが基準量(例えば10m/sec
2)以上の区間が所定数(例えば10個)以上ある場合に第2体動として検出してもよい。あるいは、取消処理部17は、キャンセル判定時間における加速度変化量Hの積算値が所定値(例えば150m/sec
2)以上である場合に第2体動として検出してもよい。
【0039】
また、取消処理部17は、加速度データから所定の時間的な区間(例えば1秒)ごとに加速度変化量を求め、キャンセル判定時間において加速度変化量Hが第1基準値(例えば40m/sec
2)以上の区間が第1所定数(例えば1個)以上ある場合に第1体動として検出してもよい。また、取消処理部17は、キャンセル判定時間において加速度変化量Hが第1基準値より小さい第2基準値(例えば10m/sec
2)以上の区間が第1所定数より多い第2所定数(例えば10個)以上ある場合に第2体動として検出してもよい。
【0040】
つぎに、本実施の形態の転倒検知端末1の動作を、
図4のフロー図を参照して説明する。本実施の形態の転倒検知端末1では、まず、加速度データから利用者の転倒を検出する転倒検出処理が行われる(S1)。そして、転倒と判定された場合には(S2)、転倒フラグをONにする(S3)。つぎに、加速度データから利用者の体動を検出する体動検出処理が行われる(S4)。転倒後に大体動が検出された場合には(S5)、転倒フラグをOFFにする(S6)。また、転倒後に継続的な小体動が検出された場合にも(S7)、転倒フラグをOFFにする(S6)。キャンセル時間が経過するまで上記の処理(ステップS4〜S7)を繰り返し、大体動と継続的な小体動のいずれも検出されなかった場合には(S8)、転倒異常を確定する(S9)。
【0041】
このような本実施の形態の転倒検知端末1によれば、加速度センサ2により利用者の動きを示す加速度データが取得され、その加速度データから利用者の転倒が検出されて利用者が転倒したか否かが判定される。このとき、加速度データから利用者の体動が検出され、転倒検出の後の所定のキャンセル判定時間に大きい体動(第1体動)または小さい継続的な体動(第2体動)が検出された場合には転倒検出が自動的にキャンセルされる。
【0042】
したがって、転倒検出後に大きい体動が検出された場合に自動キャンセルが行われるため、転倒後に歩行しているなど危険性が低い状態であることが明らかな状況では、速やかに転倒検出がキャンセルされる。また、転倒検出後に小さい継続的な体動が検出された場合にも自動キャンセルが行われるため、転倒後の動きが比較的小さくゆっくりな場合であっても、しばらく動きが続くことで危険性が低い状態であることが確認された段階で、転倒検出がキャンセルされる。このように、転倒検出のキャンセルを行う場合に、利用者の体動に応じて適切な自動キャンセルを行うことができる。
【0043】
本実施の形態では、大きい体動(利用者の加速度変化量が所定基準量以上の体動)が、第1体動として適切に検出される。また、小さい継続的な体動(利用者の加速度変化量が基準量より小さい継続的な体動)が、第2体動として適切に検出される。
【0044】
また、本実施の形態では、加速度変化量が基準量以上の区間(時間的な区間)がキャンセル判定時間内に所定数以上ある場合に、第2体動(小さい継続的な体動)として適切に検出される。
【0045】
また、本実施の形態では、キャンセル判定時間における加速度変化量の積算値が所定値以上である場合に、第2体動(小さい継続的な体動)として適切に検出される。
【0046】
また、本実施の形態では、加速度変化量が第1基準値以上の区間(時間的な区間)がキャンセル判定時間内に第1所定数以上ある場合に、第1体動(大きい体動)として適切に検出される。また、加速度変化量が第2基準値(第1基準値より小さい基準値)以上の区間(時間的な区間)が第2所定数(第1所定数より多い所定数)以上ある場合に、第2体動(小さい継続的な体動)として適切に検出される。
【0047】
以上、本発明の実施の形態を例示により説明したが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではなく、請求項に記載された範囲内において目的に応じて変更・変形することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
以上のように、本発明にかかる転倒検知端末は、利用者の体動に応じて適切に転倒検出の自動キャンセルを行うことができるという効果を有し、高齢者の転倒を検知する監視システム等に用いられ、有用である。
【符号の説明】
【0049】
1 転倒検知端末
2 加速度センサ
3 装着センサ
4 高度センサ
5 救急ボタン
6 操作表示部
7 振動部
8 電源部
9 無線通信部
10 監視制御部
11 監視センタ
12 セキュリティ端末
13 救急監視部
14 生活監視部
15 転倒監視部
16 転倒判定部(転倒判定手段)
17 取消処理部(取消処理手段)