特許第6563235号(P6563235)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6563235
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】回転電機の回転子の絶縁スペーサ
(51)【国際特許分類】
   F02C 7/32 20060101AFI20190808BHJP
   H02K 7/18 20060101ALI20190808BHJP
   F16D 1/033 20060101ALI20190808BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
   F02C7/32
   H02K7/18 Z
   F16D1/033
   F01D25/00 F
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-75362(P2015-75362)
(22)【出願日】2015年4月1日
(65)【公開番号】特開2016-194286(P2016-194286A)
(43)【公開日】2016年11月17日
【審査請求日】2018年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜飼 健
(72)【発明者】
【氏名】中山 真哉
(72)【発明者】
【氏名】中村 英之
(72)【発明者】
【氏名】原川 崇
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 一正
【審査官】 齊藤 彬
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−065006(JP,A)
【文献】 実開昭62−054327(JP,U)
【文献】 特開昭61−130616(JP,A)
【文献】 特開昭62−119810(JP,A)
【文献】 実開平06−069441(JP,U)
【文献】 特開昭62−163212(JP,A)
【文献】 特開平03−017134(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 7/32
F01D 25/00
F16D 1/033
H02K 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電機の回転子の主軸の端部に位置し鉄系素材からなる軸継手部と、駆動機の主軸の端部に位置し鉄系素材からなる軸継手部との間に挿入される回転電機の回転子の絶縁スペーサにおいて、
前記回転子の軸継手部のインロー部に対応して設けられたインロー部を有し、鉄系素材からなる回転電機側部材と、
鉄系素材からなる中間部材と、
前記駆動機の軸手部のインロー部に対応して設けられたインロー部を有し、鉄系素材からなる駆動機側部材と、
前記回転電機側部材と前記中間部材との間のみに設けられた第1の絶縁部材と、
前記駆動機側部材と前記中間部材との間のみに設けられた第2の絶縁部材とを具備し、
前記回転電機側部材、前記中間部材、前記駆動機側部材、前記第1の絶縁部材、前記第2の絶縁部材は、一体構造となるように構成される、回転電機の回転子の絶縁スペーサ。
【請求項2】
前記回転電機側部材、前記中間部材、前記駆動機側部材、前記第1の絶縁部材、前記第2の絶縁部材は、接着剤により一体構造となるように固着される、請求項1記載の回転電機の回転子の絶縁スペーサ。
【請求項3】
前記回転電機側部材、前記中間部材、前記駆動機側部材、前記第1の絶縁部材、前記第2の絶縁部材は、締結部材により一体構造となるように締結される、請求項1記載の回転電機の回転子の絶縁スペーサ。
【請求項4】
前記回転電機側部材、前記中間部材、前記駆動機側部材、前記第1の絶縁部材及び前記第2の絶縁部材は、リング形状である、請求項1記載の回転電機の回転子の絶縁スペーサ。
【請求項5】
前記回転電機側部材、前記中間部材、前記駆動機側部材、前記第1の絶縁部材及び前記第2の絶縁部材は、円盤形状である、請求項1記載の回転電機の回転子の絶縁スペーサ。
【請求項6】
前記中間部材、前記第1の絶縁部材及び前記第2の絶縁部材の外径は、前記回転電機側部材及び前記駆動機側部材の外径よりも大きい、請求項1記載の回転電機の回転子の絶縁スペーサ。
【請求項7】
前記第1の絶縁部材及び前記第2の絶縁部材は、ガラス基材に樹脂を含浸させた絶縁部材である、請求項1記載の回転電機の回転子の絶縁スペーサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、回転電機に係り、回転子の軸端部にて駆動機側軸端部との電気的な絶縁を行なう回転電機の回転子の絶縁スペーサに関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機(例えば、タービン発電機)は、機械エネルギーを電気エネルギーへ変換する要素であり、その回転子は駆動機の回転子と互いに結合される構造となる。ここで、発電機の駆動方式の一つとして、発電機の両側からタービン(蒸気タービンやガスタービン)により駆動される両軸駆動方式が存在する。
【0003】
図6は、両軸駆動方式を採用するタービン発電機とタービンとの接続構成を示す図である。
【0004】
同図に示すように、タービン発電機51の一方にはタービン52が接続され、他方にはタービン53が接続される。タービン52のタービン発電機51側のタービン軸52bには、軸受61(絶縁でないもの)、継手62a(絶縁でない)、接地ブラシ63が設けられる。タービン52の反対側のタービン軸52aにも軸受61が設けられる。
【0005】
また、タービン53のタービン発電機51側のタービン軸53aには2つの軸受61、接地ブラシ63、継手62b(電気絶縁部)が設けられる。また、タービン53の反対側のタービン軸53bにも軸受61が設けられる。
【0006】
タービン発電機51のタービン52側のタービン軸51aには、軸受61、継手62aが設けられる。また、タービン発電機51のタービン53側のタービン軸51bには、絶縁軸受71、継手62bが設けられる。
【0007】
ここで、タービン発電機51に関しては磁気的不平衡等による軸電圧が、またタービン52、53に関しては、蒸気との摩擦により発生する静電気により軸電圧が発生することが知られており、この軸電圧により、回転子を支持する軸受61等で電蝕を引き起こすため、その対策が必要とされている。
【0008】
一般に、タービン発電機51において発生する軸電圧は、磁気的な不平衡による磁束の変動が発電機回転子と鎖交することにより交流電圧として発生し、その対策としては、反駆動機側の全ての軸受に対して対地絶縁を行なうことで、軸電流が流れることを防止する構造が採用されている。
【0009】
また、タービン軸に発生する軸電圧に関しては、回転子が電気的に油膜等を介して浮いている状態において、静電気により充電されることで上昇する。そして、最終的には軸受油膜の絶縁破壊により軸電流が流れることとなる。そのため、その対策としては、図7に示すように、タービン軸を接地ブラシ63等により接地することにより、軸受61へ軸電流が流れることを防止する構造が図られている。
【0010】
さて、図6に示す両軸駆動方式においても、軸電流を防止する対策が必要とされる。具体的には、発電機51の両側に位置するタービン(蒸気タービン、またはガスタービン)52、53に対しては、それぞれに対して接地ブラシ63(軸接地)が必須となる。
【0011】
その一方で、タービン発電機51において発生する軸電圧による軸電流を防止するためには、タービン発電機51の片側を電気的に浮かした状態とする必要があるが、タービン軸において必要とされる接地部位により、この構成を図ることが困難となる。そのため、図6に示す両軸駆動方式においては、発電機51と片側のタービン53(駆動機)間において、軸を電気的に絶縁した状態で結合(継手62b(電気絶縁部)させる必要がある。
【0012】
次に、軸継手部における絶縁構造の課題について説明を行なう。
【0013】
発電機やタービン等の駆動機における軸結合部は、タービン出力に応じた伝達トルクが負荷され、また、短絡事故等が発生した場合においては、過渡的に過大なトルクが課せられることとなる。
【0014】
そのため、軸結合部においては機械的な特性が要求され、特に結合に用いられるボルト等は適切な軸力を確保するために、伸び量管理を行い締結作業を実施していることが知られている。
【0015】
しかしながら、軸結合部において絶縁物を挿入する構造とした場合、ガラスや綿布基材の絶縁物では、長期的な劣化による絶縁枯れのため収縮してしまうため、絶縁物の厚さによっては適正な軸力が維持できなくなる恐れがある。
【0016】
また、軸結合部においては、継手面における摩擦力により必要とされるトルクを伝達する設計となっているが、絶縁面が継手面となった場合、経年的に摩擦係数が変化する可能性が想定されることから、将来的に許容伝達トルクが低下する恐れが考えられる。
【0017】
更に、軸結合部においては、各軸間のミスアライメントを抑制するために、軸継手面においてインロー構造(嵌め合い構造)が用いられているが、上記同様に絶縁面が継手面となった場合は、インロー構造において必要とされる寸法公差が確保できなくなる可能性がある。
【0018】
そのため、軸継手における絶縁を溶射によるアルミナ皮膜により実現し、上述の課題解決を図った構造が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2003−65006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかしながら、上述の軸継手における絶縁を溶射によるアルミナ皮膜により実現する構造は、溶射を行なうために、絶縁構造型ロータカップリングは複数枚に分割され、各々のプレートを絶縁ボルトで固定する必要がある。そのため、作業性および調整作業が悪化ししまうという問題がある。
【0021】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、両軸駆動方式等、発電機と駆動機間で軸絶縁を行なう必要がある構成において、軸電圧に伴う軸電流を確実に抑制することが可能とであることに加え、長期的な信頼性および良好な作業性を確保することができる絶縁構造を有する回転電機の回転子の絶縁スペーサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の第1の観点によれば、回転電機の回転子の主軸の端部に位置し鉄系素材からなる軸継手部と、駆動機の主軸の端部に位置し鉄系素材からなる軸継手部との間に挿入される回転電機の回転子の絶縁スペーサにおいて、前記回転子の軸継手部のインロー部に対応して設けられたインロー部を有し、鉄系素材からなる回転電機側部材と、鉄系素材からなる中間部材と、前記駆動機の軸手部のインロー部に対応して設けられたインロー部を有し、鉄系素材からなる駆動機側部材と、前記回転電機側部材と前記中間部材との間のみに設けられた第1の絶縁部材と、前記駆動機側部材と前記中間部材との間のみに設けられた第2の絶縁部材とを具備し、前記回転電機側部材、前記中間部材、前記駆動機側部材、前記第1の絶縁部材、前記第2の絶縁部材は、一体構造となるように構成される、回転電機の回転子の絶縁スペーサである。
【発明の効果】
【0023】
軸電圧に伴う軸電流を確実に抑制することが可能とであることに加え、長期的な信頼性および良好な作業性を確保することができる絶縁構造を有する回転電機の回転子の絶縁スペーサを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】第1の実施形態に係る回転電機の回転子の絶縁スペーサ11の断面を示す図である。
図2】第1の実施形態に係る回転電機の軸継手部2、4と絶縁スペーサ11との結合構造を示す図である。
図3】第2の実施の形態に係る絶縁スペーサ11の断面を示す図である。
図4】第3の実施の形態に係る絶縁スペーサ11の断面を示す図である。
図5】第4の実施の形態に係る絶縁スペーサ11の断面を示す図である。
図6】両軸駆動方式を採用するタービン発電機とタービンとの接続構成を示す図である。
図7】タービン発電機51とタービン52との接続構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
<第1の実施の形態>
図1は、第1の実施形態に係る回転電機の回転子の絶縁スペーサの断面を示す図である。
【0026】
同図に示すように、回転電機の回転子は回転子主軸1と、回転子主軸1に対して設けられた軸継手部2とを有する。他方、回転子主軸1と結合される駆動機主軸3に対しても同様に、軸継手部4が設けられている。なお、同図において、破線Cは、回転子主軸1及び駆動機主軸3の回転軸(中心軸)を示している。
【0027】
各々の軸継手部2、4には、インロー構造(嵌め合い構造)とするための凹凸部が設けられており、それぞれ回転子主軸1の継手インロー部5、および駆動機主軸3の継手インロー部6となる。
【0028】
なお、図1においては、インロー構造として、回転子主軸1及び駆動機主軸3側に凹形状を形成する場合を示したが、回転子主軸1及び駆動機主軸3側を凸形状に形成しても良い。
【0029】
回転子主軸1および駆動機主軸3の間には、絶縁スペーサ11が挿入される。この絶縁スペーサ11は、鉄系素材から作られた3枚のリング(回転電機側リング12、駆動機側リング13、中間リング14)を有する。
【0030】
回転子主軸1の軸継手部2、駆動機主軸3の軸継手部4及び絶縁スペーサ11は、互いに締結部材(例えば、ボルトとナット)により固定される。図2に示すように、軸継手部2には締結部材用穴7a、軸継手部4には締結部材用穴7b及び絶縁スペーサ11には締結部材用穴7bが対応する位置に円周上に形成され、これら締結部材用穴7a〜7cに締結部材を通して固定することにより、回転子主軸1の軸継手部2、駆動機主軸3の軸継手部4及び絶縁スペーサ11を固定する。
【0031】
回転電機側リング12と中間リング14との間、及び駆動機側リング13と中間リング14との間には、ガラス基材に樹脂を含浸させた絶縁物15が挿入される。ここで、各絶縁物15と各リング12、13、14とは、それぞれ適切な接着材等により互いに固着されており、絶縁スペーサ11は一体構成とされている。
【0032】
絶縁スペーサ11の両側には、それぞれ継手インロー部5、6に対応した箇所にインロー部16、17が設けられており、各主軸1、3と絶縁スペーサ11の相対的な半径位置を決定することが可能である。
【0033】
本実施形態によれば、絶縁スペーサ11に設けられた絶縁物15によって、回転子主軸1と駆動機主軸3における電気的な絶縁を行なうことが可能となる。また、絶縁スペーサ11を第1の実施の形態の構造とすることで、絶縁物15の厚さは、軸電圧に対する電気絶縁を行なう上で最低限必要な厚さとすることが可能となり、経年的な変化量を十分小さくすることが可能となる。
【0034】
更に、各軸継手部2、4および絶縁スペーサ11の接触面は、それぞれ金属加工面になるため、摩擦係数の変化も抑制することが可能となる。
<第2の実施の形態>
図3は、第2の実施の形態に係る絶縁スペーサ11の断面を示す図である。
【0035】
本実施の形態では、図3に示すように、絶縁スペーサ11における各構成品(回転電機側リング12、駆動機側リング13、中間リング14、絶縁物15)を、より強固に結合するために、絶縁物15に対して塗布された接着材に加えて、絶縁製のボルトおよびナット等の締結部品21を用いて各構成品(回転電機側リング12、駆動機側リング13、中間リング14、絶縁物15)を締結する。
【0036】
なお、第1の実施の形態のように、各構成品(回転電機側リング12、駆動機側リング13、中間リング14、絶縁物15)を、接着剤により固定して一体構造とした上で、締結部品21により、各構成品を締結しても良い。
【0037】
これにより、第1の実施形態の絶縁スペーサ11に比して、より強固な絶縁スペーサを提供することができる。
<第3の実施の形態>
図4は、第3の実施の形態に係る絶縁スペーサ11の断面を示す図である。
【0038】
第1の実施の形態における絶縁スペーサ11は、リング形状のものとしたが、本実施の形態においては、図4に示すように、絶縁スペーサ11を円盤形状としたものである。
【0039】
このような構造を採用することにより、絶縁物15の接着面積を拡大することが可能となり、より接着性を高めることが可能となる。
<第4の実施の形態>
図5は、第4の実施の形態に係る絶縁スペーサ11の断面を示す図である。
【0040】
本構造においては、図5に示すように、中間リング14および絶縁物15の外径寸法を、回転電機側リング12、駆動機側リング13よりも大きくしたことを特徴とする。
【0041】
本実施の形態によれば、回転電機側リング12と中間リング14との間、駆動機側リング13と中間リング14との間の電気的な沿面距離が拡大されることから、例えば導電性の異物付着による通電の可能性を減少することが可能となる。
【0042】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行なうことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0043】
1…回転子主軸 2…軸継手部 3…駆動機主軸 4…軸継手部 5…継手インロー部 6…継手インロー部 11…絶縁スペーサ 12…回転電機側リング 13…駆動機側リング 14…中間リング 15…絶縁物 16、17…インロー部 51…タービン発電機、52、53…タービン。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7