(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、容器を形成するために接着剤を用いた場合、接着剤から発生するガスにより、容器の内部の圧力が上昇して断熱効果が低減したり、検出素子が汚染されたりする場合があった。特に、容器の内部を真空環境にする場合、真空槽内で接着剤による接着を行わなければならないため、接着剤の硬化時間が長くなり、その間に接着剤からガスの放出が起きるため、接着剤から発生するガスの影響が大きい。
【0006】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明のいくつかの態様に係る目的の1つは、検出素子を収容する容器を形成する際に用いられる接着剤から発生するガスの影響を抑制することができる放射線検出器およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明に係る放射線検出器は、
放射線を検出する検出素子と、
前記検出素子を冷却する冷却素子と、
前記検出素子および前記冷却素子を収容する容器と、
を含み、
前記容器は、
前記放射線を通過させる窓部を有する第1外殻部材と、
前記冷却素子に接続されている第2外殻部材と、
前記第2外殻部材を構成する材料よりも電気抵抗率が大きい材料で構成され、前記第1外殻部材と前記第2外殻部材とに接続されている第3外殻部材と、
を有し、
前記第3外殻部材は、板状であり、
前記第3外殻部材の中心部には、第1貫通孔が設けられ、
前記第1貫通孔には、前記第2外殻部材が挿入され、
前記第3外殻部材の周縁部には、前記第1外殻部材が接合され、
前記第3外殻部材の前記第1貫通孔と前記周縁部との間の領域には、前記第3外殻部材を貫通している第2貫通孔が設けられ、
前記第2貫通孔には、端子ピンが挿入され、
前記第2貫通孔は、封止部材で封止され、
前記第3外殻部材の材質は、コバールであり、
前記封止部材の材質は、ガラスである。
【0008】
このような放射線検出器では、第3外殻部材が第2外殻部材を構成する材料よりも電気抵抗率が大きい材料で構成されているため、後述するように、第1外殻部材と第3外殻部
材とを抵抗溶接により接合することができるとともに、第2外殻部材により冷却素子の熱を効率よく外部に伝達することができる。したがって、このような放射線検出器では、第1外殻部材と第3外殻部材とを接着剤を用いて接続しなくてもよいため、接着剤から発生するガスの影響を抑制することができる。さらに、第2外殻部材によって冷却素子の熱を効率よく外部に伝達することができるため、冷却素子の冷却効率を高めることができる。
【0009】
(2)本発明に係る放射線検出器において、
前記冷却素子は、ペルチェ素子であり、
前記ペルチェ素子の吸熱部は、前記検出素子に接続され、
前記ペルチェ素子の放熱部は、前記第2外殻部材に接続されていてもよい。
【0010】
このような放射線検出器では、ペルチェ素子の放熱部が第2外殻部材に接続されているため、ペルチェ素子の冷却効率を高めることができる。
【0013】
(
3)本発明に係る放射線検出器において、
前記第2外殻部材の材質は、銅であってもよい。
【0014】
このような放射線検出器では、第2外殻部材の材質がコバール等と比べて熱伝導率が大きい金属である銅であるため、第2外殻部材によって冷却素子の熱を効率よく外部に伝達することができる。
【0015】
(
4)本発明に係る放射線検出器において、
前記第1外殻部材は、前記第2外殻部材を構成する材料よりも電気抵抗率大きい材料で構成されていてもよい。
【0016】
このような放射線検出器では、第2外殻部材によって冷却素子の熱を効率よく外部に伝達して冷却効率を高めるとともに、例えば第1外殻部材が第2外殻部材を構成する材料よりも電気抵抗率が小さい材料である場合と比べて、第1外殻部材を介して冷却素子やその近傍が加熱されて冷却効率が低下することを抑制することができる。
【0021】
(
5)本発明に係る放射線検出器の製造方法は、
第1外殻部材と第2外殻部材と第3外殻部材とを有する容器に放射線を検出する検出素子が収容されている放射線検出器の製造方法であって、
前記第2外殻部材と、前記第2外殻部材を構成する材料よりも電気抵抗率が大きい材料で構成されている前記第3外殻部材と、を接合する工程と、
前記第2外殻部材に冷却素子を取り付ける工程と、
前記冷却素子に前記検出素子を取り付ける工程と、
前記放射線を通過させる窓部が設けられた前記第1外殻部材と、前記第3外殻部材と、を抵抗溶接により接合して、前記容器を形成する工程と、
前記第3外殻部材に端子ピンを設ける工程と、
を含み、
前記第3外殻部材は、板状であり、
前記第3外殻部材の中心部には、第1貫通孔が設けられ、
前記第2外殻部材と前記第3外殻部材とを接合する工程では、前記第1貫通孔に、前記第2外殻部材が挿入され、
前記容器を形成する工程では、
前記第3外殻部材の周縁部に、前記第1外殻部材が接合され、
前記端子ピンを設ける工程では、
前記第3外殻部材の前記第1貫通孔と前記周縁部との間の領域に設けられた、前記第3外殻部材を貫通している第2貫通孔に前記端子ピンを挿入し、前記第2貫通孔を封止部材で封止し、
前記第3外殻部材の材質は、コバールであり、
前記封止部材の材質は、ガラスである。
【0022】
このような放射線検出器の製造方法では、第1外殻部材と第3外殻部材とを抵抗溶接により接合して容器を形成する工程を含むことにより、第1外殻部材と第3外殻部材とを接着剤を用いて接着しなくてもよいため、接着剤から発生するガスの影響を抑制することができる。また、このような放射線検出器の製造方法では、第2外殻部材に冷却素子を取り付ける工程を含むため、第2外殻部材によって冷却素子の熱を効率よく外部に伝達して冷却素子の冷却効率を高めることが可能な放射線検出器を製造することができる。
【0023】
(
6)本発明に係る放射線検出器の製造方法において、
前記第2外殻部材と前記第3外殻部材とを接合する工程では、前記第2外殻部材と前記第3外殻部材とをろう付けして接合してもよい。
【0024】
このような放射線検出器の製造方法では、第2外殻部材と第3外殻部材とをろう付けして接合することができるため、例えば第2外殻部材と第3外殻部材とを接着剤を用いて接着した場合と比べて、強度を保つことができる。
【0025】
(
7)本発明に係る放射線検出器の製造方法において、
前記第1外殻部材と前記第3外殻部材とを接合する工程は、前記第2外殻部材と前記第3外殻部材とを接合する工程の後に行われてもよい。
【0026】
(
8)本発明に係る放射線検出器の製造方法において、
前記第1外殻部材と前記第3外殻部材とを接合する工程では、前記抵抗溶接を真空環境で行ってもよい。
【0027】
このような放射線検出器の製造方法では、容器の内部を真空環境にすることができる。
【0030】
(
9)本発明に係る放射線検出器の製造方法において、
前記第2外殻部材の材質は、銅であってもよい。
【0031】
このような放射線検出器の製造方法では、第2外殻部材の材質がコバール等と比べて熱
伝導率が大きい金属である銅であるため、第2外殻部材によって冷却素子の熱を効率よく外部に伝達することができる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0036】
1. 放射線検出器
まず、本実施形態に係る放射線検出器について図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係る放射線検出器100を模式的に示す断面図である。
【0037】
放射線検出器100は、放射線を検出するための検出器である。放射線検出器100は、例えば、X線を検出する。放射線検出器100は、例えば、シリコンドリフト検出器(SDD)である。
【0038】
放射線検出器100は、
図1に示すように、検出素子10と、冷却素子20と、容器30と、フィードスルー40と、を含む。
【0039】
検出素子10は、X線を検出する。検出素子10は固体半導体素子であり、例えば入射X線によってLiを拡散させたP型Siから発生した電子を同心円状の電位勾配を持った電極構造により効率よくアノードに導くように構成されている素子である。検出素子10は、冷却素子20の吸熱部22に接続されており、冷却素子20によって冷却される。検出素子10は、冷却素子20によって、−20度〜−40度程度まで冷却される。
【0040】
冷却素子20は、検出素子10を冷却するための素子である。冷却素子20は、例えば、ペルチェ素子である。ペルチェ素子は、ペルチェ効果を利用した素子であり、直流電流を流すことにより、熱を吸熱部から放熱部に移動させることができる。図示の例では、冷却素子20(ペルチェ素子)は、検出素子10に接続されている吸熱部22から第2外殻部材34に接続されている放熱部24に熱を移動させることができる。これにより、検出素子10が冷却される。
【0041】
冷却素子20は、容器30を構成している第2外殻部材34に接続されている。図示の
例では、冷却素子20の放熱部24が第2外殻部材34に接続されている。そのため、冷却素子20の熱(吸熱部22で吸収した熱や素子自体が発生する熱等)を、第2外殻部材34を介して、容器30の外部に伝達することができる。
【0042】
容器30は、検出素子10と冷却素子20とを気密に収容している。なお、図示はしないが、容器30に、放射線検出器100のその他の構成部材が収容されていてもよい。容器30の内部は、例えば真空環境である。放射線検出器100では、容器30の内部を真空環境にすることで、断熱を図っている。
【0043】
容器30は、第1外殻部材32と、第2外殻部材34と、第3外殻部材36と、を有している。第1〜第3外殻部材32,34,36は、検出素子10および冷却素子20が収容される空間31を覆う部材である。図示の例では、第2外殻部材34と第3外殻部材36とで構成されているベース部に、第1外殻部材32からなる蓋部が接合されて、容器30が構成されている。
【0044】
第1外殻部材32の形状は、図示の例では、有底の円筒状である。なお、第1外殻部材32の形状は、特に限定されず、凹状、半球状であってもよい。第1外殻部材32は、X線を通過させる窓部33を有している。図示の例では、窓部33は、第1外殻部材32の底部の中央部に設けられている。窓部33は、X線を通過させつつ、容器30の真空を保持することができる。窓部33は、例えば、金属薄膜や、有機薄膜等である。第1外殻部材32は、第3外殻部材36に接続されている。
【0045】
第2外殻部材34は、冷却素子20に接続されている。第2外殻部材34と冷却素子20とは、機械的に接続されているとともに、熱的に接続されている。図示の例では、冷却素子20と第2外殻部材34は、接続部材26を介して接合されている。接続部材26は、例えば、インジウムを含むはんだである。第2外殻部材34は、冷却素子20の熱を容器30の外部に伝達する熱伝導部として機能する。第2外殻部材34は、第3外殻部材36に接続されている。第2外殻部材34は、第3外殻部材36に設けられた貫通孔37に挿入されている。
【0046】
第3外殻部材36の形状は、例えば、板状、円板状である。第3外殻部材36は、第1外殻部材32と第2外殻部材34とに接続されている。第1外殻部材32と第2外殻部材34とは、第3外殻部材36を介して、接続されている。第1外殻部材32と第2外殻部材34とは、接していない(すなわち、離間している)。
【0047】
第3外殻部材36の上面の周縁部には接合面が設けられており、当該接合面に第1外殻部材32が接合されている。第1外殻部材32と第3外殻部材36とは、抵抗溶接により接合されている。図示の例では、第1外殻部材32と第3外殻部材36とは、第3外殻部材36に突起35を設け、突起35に電流を集中させて溶接を行うプロジェクション溶接によって接合されている。なお、第1外殻部材32に突起を設けて第1外殻部材32と第3外殻部材36とをプロジェクション溶接によって接合してもよい。
【0048】
第3外殻部材36の中心部には、貫通孔37が設けられている。貫通孔37は、容器30の内部(空間31)と、容器30の外部とを連通するように設けられている。貫通孔37には、第2外殻部材34が挿入されており、第2外殻部材34と第3外殻部材36とが接合されることによって貫通孔37が封止されている。第2外殻部材34と第3外殻部材36とは、例えば、ろう付けにより接合されている。
【0049】
第1外殻部材32と、第2外殻部材34と、第3外殻部材36とは、互いに異なる材料で構成されている。第3外殻部材36は、第2外殻部材34を構成する材料よりも電気抵
抗率が大きい材料で構成されている。また、第1外殻部材32は、第2外殻部材34を構成する材料よりも電気抵抗率が大きい材料で構成されている。
【0050】
第1外殻部材32の材質は、熱伝導率が小さい(すなわち電気抵抗率が大きい)材料であることが好ましい。これにより、冷却素子20の熱が第1外殻部材32に伝わって検出素子10やその近傍を加熱して、冷却効率が低下することを抑制することができる。第1外殻部材32は、検出素子10を囲むように検出素子10の近傍に配置されているため、例えば第1外殻部材が熱伝導率が大きい材料からなる場合には、第1外殻部材に冷却素子の熱が伝わることにより、検出素子や、検出素子の近傍が加熱されて冷却効率が低下する場合がある。
【0051】
また、第1外殻部材32の材質は、非磁性であることが好ましい。これにより、放射線検出器100が電子顕微鏡等に組み込まれたときに、検出素子10に対する磁場の影響を低減することができる。第1外殻部材32の材質は、例えばステンレス鋼である。
【0052】
第2外殻部材34の材質は、熱伝導率が大きい(すなわち電気抵抗率が小さい)材料であることが好ましい。これにより、冷却素子20の熱を、効率よく外部に伝達することができる。第2外殻部材34の材質は、銅、アルミニウム等の熱伝導率が大きい金属である。
【0053】
第3外殻部材36の材質は、電気抵抗率が大きい材料であることが好ましい。これにより、第3外殻部材36と第1外殻部材32とを抵抗溶接により接合することができる。抵抗溶接はジュール熱を利用して溶接を行うため、電気抵抗率が小さい材料では発熱が少なく、また熱が逃げやすいため、溶接が困難である。第3外殻部材36の材質は、コバールであることが好ましく、鉄等であってもよい。
【0054】
フィードスルー40は、第3外殻部材36に設けられている。フィードスルー40は、端子ピン42と、封止部材44と、を有している。端子ピン42は、第3外殻部材36に設けられた貫通孔46に挿入されている。端子ピン42の容器30の内部側の端部には、検出素子10と端子ピン42とを電気的に接続している配線(図示せず)が接続されている。封止部材44は、端子ピン42が挿入された貫通孔46を封止している。フィードスルー40(端子ピン42)は、複数設けられており、例えば、検出素子10に電源を供給するため給電用、検出素子10の出力信号を取り出すための信号出力用、検出素子10のグランド用などに用いられる。なお、端子ピン42の容器30内の端部に、冷却素子20と端子ピン42とを電気的に接続するための配線を接続して、フィードスルー40(端子ピン42)を冷却素子20の給電用等に用いてもよい。第3外殻部材36の材質がコバールである場合、封止部材44の材質は、例えば硬質ガラス(ホウ珪酸ガラス)等のガラスである。
【0055】
放射線検出器100は、例えば、以下の特徴を有する。
【0056】
放射線検出器100では、第3外殻部材36が第2外殻部材34を構成する材料よりも電気抵抗率が大きい材料で構成されているため、第1外殻部材32と第3外殻部材36とを抵抗溶接により接合することができるとともに、第2外殻部材34によって冷却素子20の熱を効率よく外部に伝達することができる。したがって、放射線検出器100では、第1外殻部材32と第3外殻部材36とを接着剤を用いて接続しなくてもよいため、当該接着剤から発生するガスの影響を抑制することができる。これにより、接着剤から発生するガスにより、容器30の内部の圧力が上昇して断熱効果が低減したり、検出素子10が汚染されたりすることを防ぐことができる。さらに、放射線検出器100では、第2外殻部材34によって冷却素子20の熱を効率よく外部に伝達することができるため、冷却素
子20の冷却効率を高めることができる。
【0057】
このように放射線検出器100では、蓋部(第1外殻部材32)とベース部(第2外殻部材34と第3外殻部材36)とからなる容器30において、ベース部を電気抵抗率が異なる2つの部材(第2外殻部材34および第3外殻部材36)で構成することにより、抵抗溶接により蓋部とベース部とを接合することができるとともに、冷却素子20の冷却効率を高めることができる。
【0058】
ここで、例えば、ベース部が1つの部材で構成されている場合に、ベース部の材質を電気抵抗率が小さい材料にすると、冷却素子の冷却効率を高めることができるが、ベース部と蓋部との接続に電気溶接を用いることができずに、接着剤を用いなければならない。そのため、接着剤から発生するガスにより、容器の内部の圧力が上昇して断熱効果が低減したり、検出素子が汚染されたりする場合がある。
【0059】
また、例えば、ベース部が1つの部材で構成されている場合に、ベース部の材質を電気抵抗率が大きい材料にすると、ベース部と蓋部との接続に電気溶接を用いることができるが、冷却素子の冷却効率を低下させてしまう。
【0060】
これに対して、放射線検出器100では、上述したように、ベース部を電気抵抗率が異なる第2外殻部材34と第3外殻部材36とで構成することにより、抵抗溶接により蓋部とベース部とを接合することができるとともに、冷却素子20の冷却効率を高めることができる。
【0061】
また、放射線検出器100では、第1外殻部材32と第2外殻部材34とは、第3外殻部材36を介して接続されているため、例えば、第1外殻部材と第2外殻部材とが直接接続されている場合と比べて、冷却素子20の熱が第2外殻部材34を介して第1外殻部材32に伝わることを抑制することができる。これにより、第1外殻部材32を介して冷却素子やその近傍が加熱されて冷却効率が低下することを抑制することができる。
【0062】
放射線検出器100では、冷却素子20はペルチェ素子であり、ペルチェ素子の放熱部24は第2外殻部材34に接続されているため、ペルチェ素子(冷却素子20)の冷却効率を高めることができる。
【0063】
放射線検出器100では、第3外殻部材36の材質は、コバールである。コバールは、銅等と比べて、電気抵抗率が大きい合金である。そのため、第3外殻部材36の材質としてコバールを用いることにより、第1外殻部材32と第3外殻部材36とを抵抗溶接により接合することができる。
【0064】
放射線検出器100では、第2外殻部材34の材質は、銅である。銅は、コバール等と比べて、熱伝導率が大きい金属である。そのため、第2外殻部材34によって冷却素子20の熱を効率よく外部に伝達することができる。
【0065】
放射線検出器100では、第1外殻部材32は、第2外殻部材34を構成する材料よりも電気抵抗率が大きい材料で構成されている。そのため、第2外殻部材34によって冷却素子20の熱を効率よく外部に伝達して冷却効率を高めるとともに、例えば第1外殻部材が第2外殻部材を構成する材料よりも電気抵抗率が小さい材料である場合と比べて、第1外殻部材32を介して冷却素子やその近傍が加熱されて冷却効率が低下することを抑制することができる。
【0066】
放射線検出器100では、第3外殻部材36に設けられた貫通孔46に端子ピン42が
挿入され、貫通孔46は封止部材44によって封止されている。また、第3外殻部材36の材質は、コバールであり、封止部材44の材質は、ガラスである。コバールの熱膨張率とガラスの熱膨張率との差は小さい。そのため、放射線検出器100では、第3外殻部材36の熱膨張率と封止部材44の熱膨張率との差を小さくすることができ、封止部材44で貫通孔46を良好に封止することができる。
【0067】
2. 放射線検出器の製造方法
次に、本実施形態に係る放射線検出器の製造方法について、図面を参照しながら説明する。
図2は、本実施形態に係る放射線検出器の製造方法の一例を示すフローチャートである。
図3〜
図6は、本実施形態に係る放射線検出器の製造工程を模式的に示す断面図である。
【0068】
まず、
図3に示すように、第2外殻部材34と第3外殻部材36とを接合する(S10)。第2外殻部材34と第3外殻部材36とは、ろう付けにより接合される。ろう材としては、例えば、銀ろうを用いることができる。
【0069】
次に、
図4に示すように、第3外殻部材36にフィードスルー40を形成する(S12)。具体的には、第3外殻部材36を貫通している貫通孔46に端子ピン42を挿入し、貫通孔46を封止部材44で封止して、フィードスルー40を形成する。
【0070】
なお、ここでは、第2外殻部材34と第3外殻部材36とを接合した後に、第3外殻部材36にフィードスルー40を形成する例について説明したが、第3外殻部材36にフィードスルー40を形成した後に、第2外殻部材34と第3外殻部材36とを接合してもよい。
【0071】
次に、
図5に示すように、第2外殻部材34に冷却素子20を取り付ける(S14)。例えば、第2外殻部材34上に、インジウムを含むはんだ(接続部材26)を塗布した後、当該はんだ上に冷却素子20を載置してホットプレート等で加熱することにより、第2外殻部材34と冷却素子20とを接続部材26を介して接続することができる。
【0072】
次に、
図6に示すように、冷却素子20に検出素子10を取り付ける(S16)。冷却素子20上に検出素子10を接着剤等で固定することにより、冷却素子20を検出素子10に取り付けることができる。その後、検出素子10の電極と端子ピン42とを配線(図示せず)などで電気的に接続する。
【0073】
次に、
図1に示すように、窓部33が設けられた第1外殻部材32と第3外殻部材36とを、抵抗溶接により接合して、容器30を形成する(S18)。
【0074】
抵抗溶接の手法としては、例えば、プロジェクション溶接を用いる。具体的には、第3外殻部材36に突起35を設け、突起35に電流を集中させて溶接を行うことで、第1外殻部材32と第3外殻部材36とを接合する。なお、抵抗溶接は、真空環境において、行われる。そのため、容器30内の空間31を真空環境にすることができる。例えば、第1外殻部材32と第3外殻部材36とを真空槽中に導入した後、真空槽を真空環境にして抵抗溶接を行うことにより、容器30の内部を真空環境にすることができる。
【0075】
以上の工程により、放射線検出器100を製造することができる。
【0076】
放射線検出器100の製造方法は、例えば、以下の特徴を有する。
【0077】
放射線検出器100の製造方法では、第2外殻部材34と、第2外殻部材34を構成す
る材料よりも電気抵抗率が大きい材料で構成されている第3外殻部材36と、を接合する工程と、第1外殻部材32と第3外殻部材36とを抵抗溶接により接合して容器30を形成する工程と、を含む。したがって、放射線検出器100の製造方法では、第1外殻部材32と第3外殻部材36との接続に接着剤を用いなくてもよいため、接着剤から発生するガスの影響を抑制することができる。また、放射線検出器100の製造方法では、第2外殻部材34に冷却素子20を取り付ける工程を含むため、第2外殻部材34によって冷却素子20の熱を効率よく外部に伝達して冷却素子20の冷却効率を高めることが可能な放射線検出器を製造することができる。
【0078】
また、放射線検出器100の製造方法では、第1外殻部材32と第3外殻部材36とが抵抗溶接により接合されることにより、例えば第1外殻部材32と第3外殻部材36とが接着剤で接着される場合と比べて、強度を高めることができ、信頼性を高めることができる。
【0079】
放射線検出器100の製造方法では、第1外殻部材32と第3外殻部材36とを接合する工程では、第1外殻部材32と第3外殻部材36とを接合するための抵抗溶接を真空環境で行う。これにより、容器30の内部を真空環境にすることができる。
【0080】
放射線検出器100の製造方法では、第2外殻部材34と第3外殻部材36とを接合する工程では、第2外殻部材34と第3外殻部材36とをろう付けして接合するため、例えば接着剤を用いて第2外殻部材と第3外殻部材とを接着した場合と比べて、強度を保つことができる。
【0081】
なお、上述したように、第2外殻部材34は、冷却素子20の熱を効率よく外部に伝えるために電気抵抗率が小さい材料で構成されていることが好ましく、第3外殻部材36は、第1外殻部材32と抵抗溶接により接合されるために電気抵抗率が大きいことが好ましい。そのため、第2外殻部材34の電気抵抗率と第3外殻部材36の電気抵抗率との差は大きいことが好ましいが、電気抵抗率の差が大きい場合、抵抗溶接により良好な接合を行うことは難しい。ろう付けでは、電気抵抗率の差が大きい部材同士であっても、良好な接合を行うことができる。したがって、第2外殻部材34と第3外殻部材36とはろう付けにより接合される。
【0082】
放射線検出器100の製造方法では、第3外殻部材36を貫通している貫通孔46に端子ピン42を挿入し、貫通孔46を封止部材44で封止する工程を含み、第3外殻部材36の材質は、コバールであり、封止部材44の材質は、ガラスである。そのため、貫通孔46を封止部材44により良好に封止することができる。
【0083】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0084】
例えば、上述した放射線検出器100では、容器30の内部が真空環境である例について説明したが、容器30の内部が窒素ガス等の不活性ガス環境であってもよい。容器30の内部が不活性ガス環境である場合でも、容器30の内部が真空環境である場合と、同様の効果を奏することができる。
【0085】
ここで、容器30の内部を不活性ガス環境にする場合、
図2に示す第1外殻部材と第3外殻部材とを抵抗溶接により接合する工程(S18)が上述した実施形態と異なる。具体的には、まず、第1外殻部材32と第3外殻部材36とを真空槽中に導入する。次に、真空槽を真空環境にした後に不活性ガスを導入して、真空槽を不活性ガス環境にする。そして、不活性ガス環境で第1外殻部材32と第3外殻部材36とを抵抗溶接により接合して
容器30を形成する。これにより、容器30の内部を不活性ガス環境にすることができる。
【0086】
また、例えば、上述した放射線検出器100では、検出素子10がX線を検出する検出素子である例について説明したが、検出素子10は、X線以外の放射線を検出する検出素子であってもよい。
【0087】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。