特許第6563266号(P6563266)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6563266
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】車両用電源制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/02 20060101AFI20190808BHJP
   H02J 1/00 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
   B60R16/02 645Z
   H02J1/00 306B
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-137616(P2015-137616)
(22)【出願日】2015年7月9日
(65)【公開番号】特開2017-19363(P2017-19363A)
(43)【公開日】2017年1月26日
【審査請求日】2018年6月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】上田 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】中村 吉秀
(72)【発明者】
【氏名】生田 宜範
(72)【発明者】
【氏名】重實 泰行
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 周二
【審査官】 菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−241036(JP,A)
【文献】 特開2013−241080(JP,A)
【文献】 特開2014−143882(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/02
H02J 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の電源の出力電圧がしきい値電圧以下のときに半導体スイッチング素子を強制的にオフさせる低電圧遮断機能を有するスイッチングデバイスを用い、前記電源から前記車両の負荷に対する電力供給を前記半導体スイッチング素子の制御信号に基づいてオンオフさせる電源制御装置において、
前記電源とは独立して設けられ該電源の定格出力電圧よりも低く前記しきい値電圧よりも高い定電圧を出力する補助電源と、
前記電源の出力電圧を検出する電源電圧検出部と、
前記電源により充電されるキャパシタと、
前記電源電圧検出部の検出電圧が、前記定格出力電圧と前記定電圧との間の基準電圧以上であるときに、前記電源に前記キャパシタを接続し、前記検出電圧が前記基準電圧と前記しきい値電圧との間であるときに、前記キャパシタを前記電源、アース及び前記スイッチングデバイスのGND端子から切り離す接続部と、
前記検出電圧が前記しきい値電圧以下であるときに、前記キャパシタの充電電荷により、前記定電圧との間に前記基準電圧分の電位差を有する負電圧を生成して前記GND端子に印加し、前記負電圧と該負電圧の印加前における前記GND端子の電位との電位差分だけ、該GND端子の電位を基準とした前記制御信号の電位を低下させる負電圧生成部と、
を備えることを特徴とする車両用電源制御装置。
【請求項2】
前記基準電圧は、前記定電圧との電位差が前記しきい値電圧よりも大きいことを特徴とする請求項1記載の車両用電源制御装置。
【請求項3】
前記接続部及び前記負電圧生成部は、前記キャパシタの正極の接続先を前記電源と前記補助電源との間で切り換える正極側切換部と、前記キャパシタの負極の接続先をアースと前記スイッチングデバイスのGND端子との間で切り換える負極側切換部と、前記電源電圧検出部の検出電圧に応じて前記正極側切換部及び前記負極側切換部の切り換え状態を制御する切換制御部とを有していることを特徴とする請求項1又は2記載の車両用電源制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の電源から負荷への電力供給をパワーMOSFETによりオンオフする車両用電源制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両内の電源分配を行う電源ボックス(以下、ユニットという)では、軽量化、及び省電力化の要求に応えるため、半導体の利用が拡大している。さらに小型化を進めるため、従来のプリドライバ+MOSFET(等のデバイス)の構成か、ドライバ及び保護機能を持つ制御回路を一体化したデバイスであるIPD(Intelligent Power Device)の利用が拡大している。これらのデバイスは、電圧低下時にオン抵抗の増加による過熱防止のため低電圧遮断機能を内蔵するものが多い。
【0003】
ここで、スタータは大電流を流すため、バッテリの内部抵抗によりバッテリの端子電圧が低下する。このように車両ではエンジン始動時(特にクランキング時)において一時的に電圧が低下する現象が発生する。車両内では一時的に電圧が低下するクランキング時であっても動作が必要な負荷が存在し、これらを動作させるためには低電圧遮断機能の回避が必要となる。
【0004】
そこで、スタータスイッチのオンからエンジンの始動完了までの間、負電圧を生成してPチャネルパワーMOSFETのゲートに印加する提案が行われている。この提案によれば、クランキングにより電源電圧が低下しても、PチャネルパワーMOSFETのゲート−ソース間電圧をゲートしきい値電圧より大きい電圧に保って、電源から負荷への電力供給が遮断されないようにすることができる(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−241036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、電源電圧の一時的な低下は上述したエンジンの始動時に限って発生する訳ではない。例えば、電源と負荷との間で発生したレアショートによりショート電流が流れると電源電圧が一時的に低下することがある。この場合にも、エンジンの始動時と同様に、低電圧遮断機能を回避し電源から負荷への電力供給が継続されるようにすることが必要となる。
【0007】
本発明は前記事情に鑑みなされたもので、本発明の目的は、電源から負荷への電力供給を低電圧遮断機能を有するスイッチングデバイスによりオンオフするのに当たり、電源電圧が一時的に低下しても電源から負荷への電力供給を常時確保することができる車両用電源制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明の第1の態様による車両用電源制御装置は、
車両の電源の出力電圧がしきい値電圧(例えば3V)以下のときに半導体スイッチング素子を強制的にオフさせる低電圧遮断機能を有するスイッチングデバイスを用い、前記電源から前記車両の負荷に対する電力供給を前記半導体スイッチング素子の制御信号に基づいてオンオフさせる電源制御装置において、
前記電源とは独立して設けられ該電源の定格出力電圧(例えば12V)よりも低く前記しきい値電圧(例えば3V)よりも高い定電圧(例えば5V)を出力する補助電源と、
前記電源の出力電圧を検出する電源電圧検出部と、
前記電源により充電されるキャパシタと、
前記電源電圧検出部の検出電圧が、前記定格出力電圧(例えば12V)と前記定電圧(例えば5V)との間の基準電圧(例えば8V)以上であるときに、前記電源に前記キャパシタを接続し、前記検出電圧が前記基準電圧(例えば8V)と前記しきい値電圧(例えば3V)との間であるときに、前記キャパシタを前記電源、アース及び前記スイッチングデバイスのGND端子から切り離す接続部と、
前記検出電圧が前記しきい値電圧(例えば3V)以下であるときに、前記キャパシタの充電電荷により、前記定電圧(例えば5V)との間に前記基準電圧(例えば8V)分の電位差を有する負電圧(例えば−3V)を生成して前記GND端子に印加し、前記負電圧と該負電圧の印加前における前記GND端子の電位との電位差分だけ、該GND端子の電位を基準とした前記制御信号の電位を低下させる負電圧生成部と、
を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の第1の態様による車両用電源制御装置によれば、電源の出力電圧が基準電圧(例えば8V)以上である間は接続部がキャパシタを電源に接続する。このため、電源の出力電圧が基準電圧(例えば8V)を下回って接続部が電源から絶縁させたキャパシタは、基準電圧(例えば8V)に相当する電荷を蓄えた状態にある。このキャパシタは、アース及びスイッチングデバイスのGND端子とも絶縁されるので、基準電圧(例えば8V)に相当する電荷を蓄えた状態を保つ。
【0010】
その後、電源の出力電圧がしきい値電圧(例えば3V)までさらに下がると、スイッチングデバイスにおいて半導体スイッチング素子に対する制御信号が出力される。このとき、補助電源の定電圧(例えば5V)に対してキャパシタが蓄えた電荷分に相当する電位差、つまり、基準電圧(例えば8V)分の電位差を有する負電圧(例えば−3V)が生成されて、スイッチングデバイスのGND端子に印加される。これにより、GND端子の電位を基準とした制御信号の電位が負電圧の印加前におけるGND端子の電位と負電圧との電位差分だけ低下する。
【0011】
このため、仮に、本来ならば低電圧遮断機能が動作するほど低い電位に電源の出力電圧が一時的に低下しても、それに応じて出力される半導体スイッチング素子の制御電位を低下させて、制御信号を実質的に電源の出力電圧がしきい値電圧(例えば3V)を越えているときの電位とすることができる。
【0012】
これにより、電源から負荷への電力供給を低電圧遮断機能を有するスイッチングデバイスによりオンオフするのに当たり、電源電圧が一時的に低下しても電源から負荷への電力供給を常時確保することができる。
【0013】
また、本発明の第2の態様による車両用電源制御装置は、本発明の第1の態様による車両用電源制御装置において、前記基準電圧(例えば8V)は、前記定電圧(例えば5V)との電位差が前記しきい値電圧(例えば3V)よりも大きいことを特徴とする。
【0014】
本発明の第2の態様による車両用電源制御装置によれば、本発明の第1の態様による車両用電源制御装置において、基準電圧(例えば8V)と定電圧(例えば5V)との電位差(8V−5V=3V)は、定電圧(5V)としきい値電圧(例えば3V)との電位差(5V−3V=2V)よりも大きい。
【0015】
このため、仮に、電源の出力電圧がしきい値電圧(例えば3V)よりも下がっても、定電圧(5V)に対して基準電圧(例えば8V)分の電位差を有する負電圧(例えば、−3V)は、電源の出力電圧(例えば2V)との間に、しきい値電圧(例えば3V)以上の電位差(2V−(−3V)=6V)を持つことになる。
【0016】
したがって、電源の出力電圧(例えば2V)が一時的に低下しても、それに応じて半導体スイッチング素子の制御信号の基準となるスイッチングデバイスのGND端子の電位を低下させて、制御信号が出力されたときの半導体スイッチング素子を確実にオン状態にすることができる。
【0017】
なお、本発明の第1又は第2の態様による車両用電源制御装置において、前記接続部及び前記負電圧生成部は、本発明の第3の態様による車両用電源制御装置のように、前記コンデンサの正極の接続先を前記電源と前記補助電源との間で切り換える正極側切換部と、前記コンデンサの負極の接続先をアースと前記スイッチングデバイスのGND端子との間で切り換える負極側切換部と、前記電源電圧検出部の検出電圧に応じて前記正極側切換部及び前記負極側切換部の切り換え状態を制御する切換制御部とを有している構成とすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、電源から負荷への電力供給を低電圧遮断機能を有するスイッチングデバイスによりオンオフするのに当たり、電源電圧が一時的に低下しても電源から負荷への電力供給を常時確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係る車両用電源制御装置の原理的な構成を示す回路図である。
図2図1の電源の出力電圧と低電圧駆動負荷に対応するインテリジェントパワーデバイス(IPD)のGND端子の電位との関係を示すタイミングチャートである。
図3】(a)〜(c)は図1の電源の出力電圧に応じた負電圧生成部の回路状態を示す説明図である。
図4図1のバイアス電圧切換部の概略構成を示す回路図である。
図5】本発明の他の実施形態に係る車両用電源制御装置の原理的な構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の一実施形態に係る電源制御装置の原理的な構成を示す回路図である。
【0021】
本実施形態の電源制御装置1(請求項中の車両用電源制御装置に相当)は、不図示の車両に搭載された電源BATTから各負荷31,32,…,3nに対し、主電線5とこれから分岐する分岐電線51,52,…,5nとを介して電力を供給する、所謂電源ボックスとして利用されるものである。
【0022】
なお、本実施形態では、負荷31は例えばヘッドライト等の電装品であるものとする。また、負荷32,…,3nは、例えば、制御系や補機系の電装品等の、低電圧でも駆動させる必要がある電装品であるものとする。
【0023】
そして、電源制御装置1は、各分岐電線51,52,…,5nから対応する各負荷31,32,…,3nに対する電力供給をオンオフするインテリジェントパワーデバイス(IPD)131,132,…,13n(請求項中のスイッチングデバイスに相当)と、その動作を制御する制御部11とを有している。
【0024】
制御部11は、定電圧源15(請求項中の補助電源に相当)が電源BATTの出力電圧から生成する図2の定電圧(例えば、5V)により動作し、負荷31,32,…,3nを動作させる際に、対応するIPD131,132,…,13nに向けた制御信号を出力する。
【0025】
各IPD131,132,…,13nは、PチャネルパワーMOSFETa(請求項中の半導体スイッチング素子に相当)とそのドライバ回路bとをそれぞれ内蔵している。PチャネルパワーMOSFETaは、ゲートへの駆動信号の入力によりゲート−ソース間電圧が図2のゲートしきい値電圧(Vlow、例えば3V。請求項中のしきい値電圧に相当)を超えると、ドレイン−ソース間がオン抵抗の低下により導通する。各IPD131,132,…,13nは、PチャネルパワーMOSFETaのドレイン−ソース間が導通すると、電源BATTから負荷31,32,…,3nに電力を供給する。
【0026】
また、各IPD131,132,…,13nは、低電圧遮断機能を有している。この低電圧遮断機能とは、電源BATTの電源電圧が低下したときに、半導体スイッチング素子のオン抵抗増加による過熱を防止するために負荷31,32,…,3nへの電力供給を遮断する機能である。
【0027】
本実施形態のIPD131,132,…,13nでは、PチャネルパワーMOSFETaのソース電位が図2のゲートしきい値電圧(Vlow)まで下がると、PチャネルパワーMOSFETaのゲート−ソース間電圧が下がってドレイン−ソース間が遮断される。そこで、このPチャネルパワーMOSFETaの動作を、電源BATTの電源電圧がゲートしきい値電圧(Vlow)まで低下したときに負荷31,32,…,3nへの電力供給を遮断する低電圧遮断機能として利用している。しかし、半導体スイッチング素子としてNチャネルパワーMOSFETを用いる場合にも、別の構成で同様の低電圧遮断機能を実現することができる。
【0028】
そこで、以下の説明では、各IPD131,132,…,13nが単に、電源BATTの電源電圧がしきい値電圧(Vlow)以下に低下したときに、半導体スイッチング素子をオフして負荷31,32,…,3nへの電力供給を遮断する低電圧遮断機能を有していることを前提とするのに止め、各IPD131,132,…,13nが半導体スイッチング素子としてPチャネルパワーMOSFETを用いているか否かについては特定しないこととする。
【0029】
本実施形態の電源制御装置1が使用される不図示の車両では、始動時にエンジンをクランキングさせる際にスタータモータが電力を大量に消費する。このときには、電源BATTの電源電圧が一時的に大きく低下する。電源BATTの電源電圧が低下すると、IPD131,132,…,13nの低電圧遮断機能が動作して半導体スイッチング素子aがオフされ、電源BATTから負荷31,32,…,3nへの電力供給が遮断されてしまう。
【0030】
このような現象の発生は、特に、低電圧でも駆動させる必要がある負荷32,…,3nにとって問題となる。これらの負荷32,…,3nには、電源BATTの電源電圧が一時的に大きく低下しても電力供給を確保する必要がある。
【0031】
そこで、本実施形態の電源制御装置1は、電源BATTの電源電圧が低下しても負荷32,…,3nに対する電力供給を確保するために、動作電圧検出部7、低電圧検出部9、負電圧生成部17及びバイアス電圧切換部19を設けている。
【0032】
負電圧生成部17(請求項中の負電圧生成部及び接続部に相当)は、キャパシタCと、キャパシタCの正極を電源BATTに接続するスイッチSW1、キャパシタCの負極をGND(アース)に接続するスイッチSW3、及び、キャパシタCの正極を定電圧源15の出力側に接続するスイッチSW5とを有している。
【0033】
キャパシタCは、正極がスイッチSW1のオンにより電源BATTに接続され負極がスイッチSW3のオンによりGND(アース)に接続されると、電源BATTの出力電圧によって充電される。
【0034】
また,キャパシタCは、スイッチSW1,SW3がオフされて電源BATTから切り離された状態でスイッチSW5がオンされると、正極の接続先が電源BATTから定電圧源15の出力側に切り換わると共に負極がGND(アース)から切り離される。この状態では、キャパシタCの負極に、キャパシタCの充電電荷分の電圧を定電圧源15の定電圧(例えば5V)から差し引いた電位が現れる。
【0035】
動作電圧検出部7(請求項中の電源電圧検出部及び切換制御部に相当)は、定電圧源15が定電圧を生成する前の電源BATTの出力電圧を検出する。そして、動作電圧検出部7は、検出した電圧が定電圧源15による定電圧よりも高く電源BATTの定格出力電圧(例えば12V)よりも低い図2の基準電圧(Vmin、例えば8V)以上であるときに、動作電圧検出部7は、図3(a)に示すように、負電圧生成部17のスイッチSW1,SW3をオンさせる。
【0036】
このとき、負電圧生成部17のスイッチSW5は後述する低電圧検出部9によりオフされている。このため、キャパシタCは、電源BATTの出力電圧が基準電圧Vmin(例えば8V)以上であるときに、基準電圧Vmin以上で充電される。
【0037】
また、動作電圧検出部7は、検出した電圧が基準電圧Vminを下回ると、図3(b)に示すように、負電圧生成部17のスイッチSW1,SW3をオフさせる。
【0038】
一方、低電圧検出部9(請求項中の電源電圧検出部及び切換制御部に相当)は、電源BATTの出力電圧を検出し、検出した電圧がしきい値電圧Vlow(例えば3V)を超えていると、負電圧生成部17のスイッチSW5をオフさせる。
【0039】
このため、電源BATTの出力電圧がしきい値電圧Vlowから基準電圧Vmin(例えば8V)までの間であるときには、キャパシタCは、基準電圧Vmin(例えば8V)に対応する電荷を蓄えた状態で電源BATTから絶縁される。
【0040】
また、低電圧検出部9は、検出した電圧がしきい値電圧Vlow(例えば3V)以下であるときに、図3(c)に示すように、負電圧生成部17のスイッチSW5をオンさせる。このとき、負電圧生成部17のスイッチSW1,SW3は動作電圧検出部7によりオフされている。このため、キャパシタCは、基準電圧Vmin(例えば8V)に対応する電荷を蓄えた状態で、正極が定電圧源15の出力側に接続される。そして、キャパシタCの負極には、キャパシタCの充電電荷分の電圧(例えば8V)を定電圧源15の定電圧(例えば5V)から差し引いた負電位(例えば−3V)が現れる。
【0041】
ところで、図1に示す負荷31に対応するIPD131のGND端子はGND(アース)に接続されている。このGND端子には、ドライバ回路bのアースが接続されている。このため、IPD131のドライバ回路bは、IPD131に向けた制御部11からの制御信号に応じた制御信号入力(IN)の電位と、GND端子の電位との電位差に応じて、半導体スイッチング素子aをオンオフさせる。
【0042】
具体的には、IPD131のドライバ回路bは、IPD131に向けた制御部11からの制御信号の入力がなく制御信号入力(IN)の電位がGND(アース)電位であると、制御信号入力(IN)の電位とGND端子の電位(GND(アース)電位)との電位差がしきい値電圧Vlowを超えないので、半導体スイッチング素子aをオフさせる。
【0043】
また、IPD131のドライバ回路bは、制御部11からの制御信号の入力により制御信号入力(IN)の電位とGND端子の電位(GND(アース)電位)との電位差がしきい値電圧Vlowを超えると、半導体スイッチング素子aをオンさせる。
【0044】
一方、低電圧駆動の負荷32,…,3nに対応するIPD132,…,13nのGND端子は、図2のタイミングチャートに示すように、電源BATTの出力電圧がしきい値電圧(例えば3V)を超えている(1),(2)の期間では、負電圧生成部17が図3(a)又は図3(b)に示す回路状態にあるので、GND端子からGND(アース)に向かう方向を順方向とするダイオードD1を介してGND(アース)に接続される。このGND端子には、ドライバ回路bのアースが接続されている。
【0045】
また、IPD132,…,13nのGND端子は、図2に示すように、電源BATTの出力電圧がしきい値電圧Vlow(例えば3V)以下である(3)の期間では、負電圧生成部17が図3(c)に示す回路状態にあるので、GND端子からキャパシタCの負極に向かう方向を順方向とするダイオードD3を介してキャパシタCの負極に接続される。
【0046】
したがって、IPD132,…,13nのドライバ回路bは、電源BATTの出力電圧がしきい値電圧Vlow(例えば3V)を超えているときは、制御信号入力(IN)の電位とGND端子の電位との電位差に応じて、半導体スイッチング素子aをオンオフさせる。
【0047】
また、IPD132,…,13nのドライバ回路bは、電源BATTの出力電圧がしきい値電圧Vlow(例えば3V)以下であるときは、制御信号入力(IN)の電位と、GND端子に接続されるキャパシタCの負極に現れる負電位(例えば−3V)との電位差に応じて、半導体スイッチング素子aをオンオフさせる。
【0048】
具体的には、電源BATTの出力電圧がしきい値電圧Vlow(例えば3V)を超えているときは、IPD132,…,13nのドライバ回路bは、制御信号の入力がなく制御信号入力(IN)の電位がGND(アース)電位であると、制御信号入力(IN)の電位とGND端子の電位(GND(アース)電位)との電位差がしきい値電圧Vlowを超えないので、半導体スイッチング素子aをオフさせる。
【0049】
また、IPD132,…,13nのドライバ回路bは、制御信号の入力により制御信号入力(IN)の電位とGND端子の電位(GND(アース)電位)との電位差がしきい値電圧Vlowを超えると、半導体スイッチング素子aをオンさせる。
【0050】
一方、電源BATTの出力電圧がしきい値電圧Vlow(例えば3V)以下であるときは、IPD132,…,13nのドライバ回路bは、制御信号の入力がなく制御信号入力(IN)の電位がGND(アース)電位であると、制御信号の電位と負電位(例えば−3V)に逆バイアスされたGND端子の電位との電位差がしきい値電圧Vlowを超えないので半導体スイッチング素子aをオフさせる。
【0051】
また、IPD132,…,13nのドライバ回路bは、制御信号の入力により制御信号入力(IN)の電位と負電位(例えば−3V)に逆バイアスされたGND端子の電位との電位差がしきい値電圧Vlowを超えると、半導体スイッチング素子aをオンさせる。
【0052】
このように、IPD132,…,13nは、電源BATTの出力電圧がしきい値電圧Vlow(例えば3V)を超えるか否かによって、ドライバ回路bのアースが接続されるGND端子の電位を、GND(アース)電位と負電位(例えば−3V)とに切り換える。このため、制御信号入力(IN)に入力される制御信号の基準とする電位を、GND端子の電位に合わせてGND(アース)電位と負電位(例えば−3V)とに切り換える必要がある。
【0053】
そこで、バイアス電圧切換部19は、IPD132,…,13nに向けた制御部11からの制御信号の電位を、IPD132,…,13nのGND端子の電位に合わせて切り換える。
【0054】
バイアス電圧切換部19は、図4の回路図に示すように、pnp型のトランジスタQ1を有している。このトランジスタQ1は、各IPD132,…,13nに1対1に対応してバイアス電圧切換部19内に複数設けられている。各トランジスタQ1のエミッタは定電圧源15の出力側に接続され、コレクタは対応するIPD132,…,13nのGND端子と制御信号入力(IN)に接続されている。
【0055】
バイアス電圧切換部19は、IPD132,…,13nに向けた制御部11からの制御信号の入力がなく、対応するトランジスタQ1のベース電位がGND(アース)電位よりも高い電位である間は、トランジスタQ1のコレクタ−エミッタ間が遮断されるので、対応するIPD132,…,13nに制御信号を出力しない。
【0056】
また、バイアス電圧切換部19は、IPD132,…,13nに向けた制御部11からの制御信号の入力により、対応するトランジスタQ1のベース電位がGND(アース)電位に逆バイアスされると、トランジスタQ1のコレクタ−エミッタ間が導通するので、対応するIPD132,…,13nに制御信号を出力する。
【0057】
このとき、対応するIPD132,…,13nのGND端子の電位がGND(アース)電位であると、バイアス電圧切換部19が対応するIPD132,…,13nに出力する制御信号の電位は、制御部11からバイアス電圧切換部19に入力される制御信号と同じGND(アース)電位を基準とした電位となる。
【0058】
一方、対応するIPD132,…,13nのGND端子の電位が負電位(例えば−3V)であると、バイアス電圧切換部19が対応するIPD132,…,13nのドライバ回路bに出力する制御信号の電位は、制御部11からバイアス電圧切換部19に入力される制御信号のGND(アース)電位と負電位(例えば−3V)との電位差分だけ低下した電位を基準とした電位となる。
【0059】
このように、バイアス電圧切換部19が、IPD132,…,13nのGND端子の電位に合わせて制御部11からの制御信号の基準となる電位を切り換えることで、IPD132,…,13nの誤動作を防止することができる。
【0060】
即ち、IPD132,…,13nに制御信号が入力されていないにもかかわらず、IPD132,…,13nのGND端子の電位がGND(アース)電位から負電位(例えば−3V)に切り換わるのに連動して、IPD132,…,13nの制御信号入力(IN)の電位がGND端子の電位に対して(PチャネルパワーMOSFETaのゲート電位がソース電位に対して)相対的に上がることがない。
【0061】
このため、電源BATTの出力電圧がしきい値電圧Vlow(例えば3V)以下に下がったときに、IPD132,…,13nのGND端子の電位が切り換わるのに連動して、半導体スイッチング素子aが誤ってオンされる(PチャネルパワーMOSFETaのドレイン−ソース間が誤って導通する)のを防止することができる。
【0062】
以上に説明した実施形態の電源制御装置1によれば、電源の出力電圧が基準電圧Vmin(例えば8V)以上である間に充電したキャパシタCを、電源BATTの出力電圧が基準電圧Vminよりも低下したら電源BATTから切り離し、電源BATTの出力電圧がさらにしきい値電圧(例えば3V)以下に低下したら、キャパシタCの正極を定電圧源15に接続するようにした。
【0063】
そして、定電圧源15が出力する定電圧(例えば5V)に対してキャパシタCの充電電荷に応じた電圧(例えば8V)分の電位差を有する負電位(例えば−3V)をキャパシタCの負極に発生させて、この電位に、低電圧駆動の負荷32,…,3nに対応するIPD132,…,13nの、ドライバ回路bのアースが接続されるGND端子の電位を切り換えるようにした。
【0064】
このため、電源BATTの出力電圧がしきい値電圧Vlow(例えば3V)まで下がって、制御部11からのGND(アース)電位の制御信号がIPD132,…,13n(PチャネルパワーMOSFETaのゲート)に入力されても、IPD132,…,13nの制御信号入力(IN)の電位とGND端子の電位との電位差がしきい値電圧Vlow(例えば3V)を超えず半導体スイッチング素子aがオンされない状態になった際に、制御部11からの制御信号の電位をGND(アース)電位からIPD132,…,13nのGND端子の負電圧分だけ低下させて、制御信号の入力時に制御信号入力(IN)の電位とGND端子の電位との電位差をしきい値電圧Vlow(例えば3V)以上にすることができる。
【0065】
これにより、電源BATTから負荷32,…,3nへの電力供給をIPD131,…,13nの半導体スイッチング素子aによりオンオフするのに当たり、電源BATTの出力電圧が一時的に低下しても電源BATTから負荷32,…,3nへの電力供給を常時確保することができる。
【0066】
また、電源BATTの出力電圧に応じてIPD131,…,13nのGND端子の電位を切り換える構成は、負荷31,…,3nに対応するIPD131,…,13n単位で設けることができるので、本実施形態のように、低電圧駆動の負荷32,…,3nに対応するIPD132,…,13nのみに設ける等して、回路規模の増加を必要最小限に抑えることができる。
【0067】
なお、負電圧生成部17のスイッチSW1に代えて、図5の回路図に示す本発明の他の実施形態の電源制御装置1のように、電源BATTからキャパシタCの正極に向かう方向を順方向とするダイオードD5を用いるように構成してもよい。
【0068】
また、上述した実施形態では、基準電圧(例えば8V)と定電圧(例えば5V)との電位差(8V−5V=3V)を、定電圧(5V)としきい値電圧Vlow(例えば3V)との電位差(5V−3V=2V)よりも大きくしたが、両電位差の大小関係を逆転させたりなくしたりしてもよい。
【0069】
さらに、上述した実施形態では、半導体スイッチング素子aと共にドライバ回路bを内蔵したIPD131,132,…,13nを用いたが、本発明は、ドライバ回路bと別体に設けた半導体スイッチング素子aを用いて負荷3に対する電力供給を制御する場合にも適用可能である。
【0070】
また、それらにおいて、半導体スイッチング素子aとしてPチャネルパワーMOSFETに代えてNチャネルパワーMOSFETを用いる場合にも、本発明は適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、車両の電源から負荷への電力供給を低電圧遮断機能を有するスイッチングデバイスによりオンオフする電源制御を行う際に用いて極めて有用である。
【符号の説明】
【0072】
1 電源制御装置(車両用電源制御装置)
31,…,3n 負荷
5 主電線
51,52,…,5n 分岐電線
7 動作電圧検出部(電源電圧検出部、切換制御部)
9 低電圧検出部(電源電圧検出部、切換制御部)
11 制御部
131,…,13n インテリジェントパワーデバイス(IPD、スイッチングデバイス)
15 定電圧源(補助電源)
17 負電圧生成部(接続部)
19 バイアス電圧切換部
a PチャネルパワーMOSFET(半導体スイッチング素子)
b ドライバ回路
BATT 電源
C キャパシタ
SW1,SW5 スイッチ(正極側切換部)
SW3 スイッチ(負極側切換部)
Vmin 基準電圧
Vlow ゲートしきい値電圧(しきい値電圧)
図1
図2
図3
図4
図5