特許第6563268号(P6563268)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6563268
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】脱着車両
(51)【国際特許分類】
   B60R 19/38 20060101AFI20190808BHJP
   B60P 1/64 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
   B60R19/38 D
   B60P1/64 A
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-141440(P2015-141440)
(22)【出願日】2015年7月15日
(65)【公開番号】特開2017-24431(P2017-24431A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2018年4月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002358
【氏名又は名称】新明和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡本 斉
【審査官】 諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−081477(JP,A)
【文献】 特開2007−276687(JP,A)
【文献】 実開平06−010039(JP,U)
【文献】 特開2000−335338(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/036035(WO,A1)
【文献】 特開2007−246045(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3137224(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60G 1/00−99/00
B60P 1/64
B60P 7/13
B60R 19/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の車高を調整可能なエアサスペンションと、
上記車体の後部に設けられて通常位置又は格納位置に切換可能な可動式リアバンパと、
伸縮動作により上記可動式リアバンパを切り換えるバンパ用エアシリンダと、
上記エアサスペンション及び上記バンパ用エアシリンダに高圧エアを送り込む空圧回路とを備え、
上記車体に対して荷箱を脱着可能な脱着車両において、
上記荷箱を切り離す際に、上記エアサスペンション及び上記バンパ用エアシリンダが連動し、該エアサスペンションが縮小して上記車体の車高が低くなり、上記可動式リアバンパが格納位置になるように構成され
上記エアサスペンション及び上記バンパ用エアシリンダを連動させるための連動切換スイッチをさらに備え、該連動切換スイッチがオンのときのみ上記エアサスペンション及び上記バンパ用エアシリンダを連動させるように構成されている
ことを特徴とする脱着車両。
【請求項2】
請求項1に記載の脱着車両において、
上記荷箱を切り離す際に、上記空圧回路により、上記エアサスペンション及び上記バンパ用エアシリンダの高圧エアを同時に抜くように構成されている
ことを特徴とする脱着車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体に対して荷箱を脱着可能な脱着車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種の脱着車両として、例えば特許文献1に示すように、車体に対して脱着可能に搭載される荷箱を上昇させて該車体から切り離した状態で支持脚により支持するようにした、いわゆる水平脱着式の脱着車両は知られている。
【0003】
一方で、上記支持脚の伸縮範囲を大きくとれないような場合などに、特許文献2又は3のようなエアサスペンションを調整する技術を利用し、車体の高さを低くして荷箱の水平脱着等を容易にすることも知られている。
【0004】
また、特許文献4のように、車体の後部に通常位置又は格納位置に切換可能な可動式リアバンパを設けることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4312412号公報
【特許文献2】特開2005−125907号公報
【特許文献3】特開平7−81477号公報
【特許文献4】特開2007−276687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1のような水平脱着方式の脱着車両では、荷箱の支持脚を延ばした状態で、車体が前進して荷箱の脱着を行う必要がある。また、荷箱を載置するスペースや車体が前進及び後進するスペースだけでなく、車体が旋回するスペースを確保する必要もある。特に荷箱を多数並べているような場所では、このようなスペースを確保するのは困難である。
【0007】
そのため、車体の前後方向が長いと、その旋回及び前後進するための操作が面倒になるという問題がある。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、荷箱の脱着時の車体の姿勢を調整して狭い場所でもできるだけ容易に荷箱の脱着を行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、この発明では、車高調整とリアバンパの格納とを連動させるようにした。
【0010】
具体的には、第1の発明では、車体の車高を調整可能なエアサスペンションと、
上記車体の後部に設けられて通常位置又は格納位置に切換可能な可動式リアバンパと、
伸縮動作により上記可動式リアバンパを切り換えるバンパ用エアシリンダと、
上記エアサスペンション及び上記バンパ用エアシリンダに高圧エアを送り込む空圧回路とを備え、
上記車体に対して荷箱を脱着可能な脱着車両を前提とし、
上記脱着車両は、
上記荷箱を切り離す際に、上記エアサスペンション及び上記バンパ用エアシリンダが連動し、該エアサスペンションが縮小して上記車体の車高が低くなり、上記可動式リアバンパが格納位置になるように構成されている。
【0011】
上記の構成によると、荷箱の切り離し時に、エアサスペンションを縮小させて車体の車高を低くすると共に、可動式リアバンパを収納位置に納め車体の前後の長さを短くすることができるので、車体の旋回及び前後進の操作が容易になる。本発明では、エアサスペンションとバンパ用エアシリンダとを連動させて車体の姿勢変化を容易に行うことができる。
【0012】
第2の発明では、第1の発明において、
上記荷箱を切り離す際に、上記空圧回路により、上記エアサスペンション及び上記バンパ用エアシリンダの高圧エアを同時に抜くように構成されている。
【0013】
上記の構成によると、空圧回路を制御することにより、高圧エアを同時に抜くだけでエアサスペンションとバンパ用エアシリンダとを連動させることができる。
【0014】
第3の発明では、第1又は第2の発明において、
上記エアサスペンション及び上記バンパ用エアシリンダを連動させるための連動切換スイッチをさらに備え、該連動切換スイッチがオンのときのみ上記エアサスペンション及び上記バンパ用エアシリンダを連動させるように構成されている。
【0015】
上記の構成によると、常にエアサスペンション及びバンパ用エアシリンダを連動させるようにすると、荷箱の脱着時にのみ連動させるようにすることで、走行中等通常の使用状態とすべき場合の安全が確保される。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明によれば、荷箱を切り離す際にエアサスペンション及びバンパ用エアシリンダを連動させて車体の車高を低くすると共に、可動式リアバンパを格納位置にするようにしたことにより、荷箱の脱着時の車体の姿勢を適切に調整して狭い場所でもできるだけ容易に荷箱の脱着を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る脱着車両が荷箱を脱着する様子を示す正面図である。
図2】本発明の実施形態に係る脱着車両の通常の使用状態を示す正面図である。
図3】操作盤の概要を示す正面図である。
図4】脱着車両の空圧回路図である。
図5】変形例に係る空圧回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1及び図2は、本発明の実施形態の脱着車両1を示し、この脱着車両1は、運転室3と、シャーシ4と、複数の車輪5とを備えた走行可能な車体2を備えている。
【0020】
この車体2は、例えばシャーシ4の後部に、その車高を調整可能なエアサスペンション6を備えている。また、車体2の後部には、通常位置又は格納位置に切換可能な可動式リアバンパ7が設けられている。この可動式リアバンパ7は、伸縮動作により可動式リアバンパ7を切り換えるバンパ用エアシリンダ8を備えている。また、車体2には、エアサスペンション6及びバンパ用エアシリンダ8に高圧エアを送り込む空圧回路30(図4に示す)を備えている。可動式リアバンパ7は、バンパ用エアシリンダ8内の圧力が低下したときに自動で縮小させるため、例えば、引っ張りコイルバネ等による戻り機構9を備えていてもよい。また、サスペンション内に入った空気を戻り機構として利用してもよい。
【0021】
脱着車両1は、さらに車体2に対して脱着可能に搭載される荷箱10を備えている。この荷箱10は、例えば二対の支持脚11を備え、この支持脚11は、回動可能且つ伸縮可能となっている。図1に示すように、この支持脚11を回動させて伸長させた状態で、車体2のサスペンションのエアを抜くことにより地上高を下げて、車体2から切り離した状態で支持脚11により荷箱10を地面等に支持できるようになっている。なお、車体2の地上高を下げる代わりに、荷箱10を上昇させて車体2から切り離すようにしてもよい。
【0022】
例えば、運転室3には、操作盤20が設けられており、図3に示すように、この操作盤20には、可動式リアバンパ7を伸縮させるリアバンパスイッチ21と、バンパ用エアシリンダ8を伸縮させて可動式リアバンパ7を伸長させた通常位置又は縮小させた格納位置に切り換えるためのエアサススイッチ22が設けられている。そして、操作盤20には、エアサスペンション6及びバンパ用エアシリンダ8を連動させるための連動切換スイッチ23を備えている。例えば、リアバンパスイッチ21とエアサススイッチ22はモーメンタリスイッチよりなり、連動切換スイッチ23は、トグルスイッチよりなる。例えば、走行速度が10km/h以上のときには、連動切換スイッチ23が押されても連動しないような安全機構を設けるのが望ましい。
【0023】
図4に示すように、空圧回路30は、エアサスペンション6の動作を切り換えるための3ポート2位置切換弁よりなるエアサス用切換弁31と、バンパ用エアシリンダ8の動作を切り換えるための3ポート2位置切換弁よりなるバンパ用切換弁32と、プロテクションバルブ33とを備えている。少なくともエアサス用切換弁31及びバンパ用切換弁32は、制御装置24と信号のやり取りをしており、連動切換スイッチ23がオンのときのみエアサスペンション6及びバンパ用エアシリンダ8を連動させるように構成されている。
【0024】
次に、本実施形態に係る脱着車両1の作動について説明する。
【0025】
まず、図2に示す走行時などの通常の使用状態では、荷箱10がシャーシ4に搭載されて支持脚11が収納されている。エアサス用切換弁31及びバンパ用切換弁32は、図4の通常位置にあり、エアサスペンション6は伸長して車高は高く、バンパ用エアシリンダ8は伸長し、可動式リアバンパ7は通常位置となっている。これにより、快適走行でき、後突に対する安全性も確保されている。
【0026】
そして、荷箱10を切り離す際には、図1に示すように、まず、支持脚11を回動させて鉛直とした後、連動切換スイッチ23をオン側に倒し、連動操作可能な状態とする。このとき、車体2は停止しているので、安全機構が働かず連動操作が可能となる。
【0027】
次いで、エアサススイッチ22及びリアバンパスイッチ21のどちらかを操作すると、エアサス用切換弁31及びバンパ用切換弁32が収納位置に切り換わる。それにより、高圧エアが大気開放され、エアサスペンション6及びバンパ用エアシリンダ8が連動し、エアサスペンション6が縮小して車体2の車高が低くなり、可動式リアバンパ7が格納位置になる。なお、連動切換スイッチ23がオフの場合には、エアサス用切換弁31又はバンパ用切換弁32を単独で切換操作可能となっている。
【0028】
このように、荷箱10の切り離し時に、同時にエアサスペンション6を縮小させて車体2の車高を低くすると共に、可動式リアバンパ7を収納位置に納め車体2の前後の長さを短くすることができるので、車体2の旋回及び前後進の操作が容易になる。連動切換スイッチ23をオン側に倒した状態では、エアサススイッチ22及びリアバンパスイッチ21のどちらかを操作すると、エアサスペンション6とバンパ用エアシリンダ8とが連動するので、車体2の姿勢変化を容易に行うことができる。
【0029】
また、本実施形態では、荷箱10を切り離す際に、空圧回路30を制御することにより、高圧エアを同時に抜くだけで容易にエアサスペンション6とバンパ用エアシリンダ8とを連動させることができる。
【0030】
さらに、連動切換スイッチ23によって、荷箱10の脱着時にのみエアサスペンション6とバンパ用エアシリンダ8とを連動させるようにすることで、走行中等の安全を確保することができる。
【0031】
したがって、本実施形態に係る脱着車両1によると、荷箱10の脱着時の車体2の姿勢を調整して狭い場所でもできるだけ容易に荷箱10の脱着を行える。
【0032】
−変形例−
図5は本発明の実施形態の変形例を示し、空圧回路30の構成が異なる点で上記実施形態と異なる。なお、本変形例では、図1図4と同じ部分については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0033】
すなわち、本変形例では、エアサスペンション6及びバンパ用エアシリンダ8の制御を1つの3ポート2位置切換弁34で行っている。
【0034】
この場合、構成が極めて容易となるが、空圧回路30のどこかでエア漏れすると、エアサスペンション6及びバンパ用エアシリンダ8の両方に問題が発生する可能性がある。
【0035】
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0036】
すなわち、上記実施形態では、脱着車両1は荷箱10を備えているが、荷箱10の種類は、ドライコンテナ、冷凍コンテナ、塵芥用コンテナ、湿塩散布コンテナなど特に限定されない。
【0037】
上記実施形態では、可動式リアバンパ7は、バンパ用エアシリンダ8で直接伸縮させて通常位置と格納位置とを切り換えるようにしているが、特許文献4のようにバンパ用エアシリンダを伸縮させて間接的に可動式リアバンパを回動させて通常位置と格納位置とを切り換えるようにしてもよい。
【0038】
上記実施形態では、バンパ用エアシリンダ8は、単動形シリンダとして戻り機構9を設けているが、この戻り機構9を設けずに複動形シリンダとしてもよい。その場合には、バンパ用エアシリンダ8はエア抜きではなく、逆方向にピストンロッドを動かすことで伸縮の切り換えるようにすればよい。
【0039】
上記実施形態では、脱着車両1は、水平脱着式脱着車両としているが、車体の車高を低くした上で、荷箱を傾斜させながら積み降ろしする脱着車両であってもよい。この場合でも、エアサスペンション6とバンパ用エアシリンダ8を調整し、車高を低くすると共に全長を短くすれば、車体2の前後移動及び旋回が容易となる。
【0040】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【符号の説明】
【0041】
1 脱着車両
2 車体
3 運転室
4 シャーシ
5 車輪
6 エアサスペンション
7 可動式リアバンパ
8 バンパ用エアシリンダ
9 戻り機構
10 荷箱
11 支持脚
20 操作盤
21 リアバンパスイッチ
22 エアサススイッチ
23 連動切換スイッチ
24 制御装置
30 空圧回路
31 エアサス用切換弁
32 バンパ用切換弁
33 プロテクションバルブ
34 位置切換弁
図1
図2
図3
図4
図5