特許第6563269号(P6563269)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6563269複数の灌注式電極と1つの力センサとを有するカテーテル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6563269
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】複数の灌注式電極と1つの力センサとを有するカテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/12 20060101AFI20190808BHJP
   A61M 25/00 20060101ALI20190808BHJP
   A61M 25/14 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
   A61B18/12
   A61M25/00 530
   A61M25/00 550
   A61M25/14
【請求項の数】8
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-143870(P2015-143870)
(22)【出願日】2015年7月21日
(65)【公開番号】特開2016-22388(P2016-22388A)
(43)【公開日】2016年2月8日
【審査請求日】2018年7月9日
(31)【優先権主張番号】14/338,018
(32)【優先日】2014年7月22日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・トーマス・ビークラー
(72)【発明者】
【氏名】アサフ・ゴバリ
(72)【発明者】
【氏名】ローワン・オルンド・ヘテル
【審査官】 宮下 浩次
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−192947(JP,A)
【文献】 特開2013−027707(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/00 − 18/28
A61M 25/00
A61M 25/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿入管と、
前記挿入管の遠位端上に取り付けられた遠位電極と、
前記遠位端に取り付けられた力センサであって、前記力センサが中央開口部を有し、かつ前記遠位端に加わる力を測定するように構成された、力センサと、
前記力センサの近位に取り付けられた近位電極と、
前記挿入管の近位端から前記遠位端へと延び、前記中央開口部を通過し、前記遠位電極内の開孔を通して灌注流体を供給すべく構成された第1のチューブと、
前記挿入管の近位端から延び、前記中央開口部に入り、かつ前記近位電極内の開孔を通して灌注流体を供給すべく構成された第2のチューブと、を具備し
前記力センサが中央空間を取り囲む管形状を有し、前記第1のチューブが前記中央空間を横切り、かつ前記第2のチューブが前記中央空間に入り、
前記力センサの前記中央空間の内部に位置付けられた分流器を更に具備し、前記分流器が前記第2のチューブと流体連通しており、
前記力センサが少なくとも1つのコイルを具備し、前記分流器が前記少なくとも1つのコイルと同じ軸平面内に位置付けられている、プローブ。
【請求項2】
前記遠位電極内の開孔および前記近位電極内の開孔のそれぞれに対する前記灌注流体のそれぞれの流量を実現するように構成されたコントローラを備える、請求項1に記載のプローブ。
【請求項3】
前記コントローラが、前記遠位端に加わる前記力に応じて前記それぞれの流量の少なくとも1つを設定するように構成される、請求項2に記載のプローブ。
【請求項4】
前記分流器が、灌注流体を主に軸方向から主に半径方向へと再方向付けして前記近位電極内の開孔に給送すべく構成されている、請求項に記載のプローブ。
【請求項5】
挿入管を準備することと、
前記挿入管の遠位端に遠位電極を取り付けることと、
前記遠位端に力センサを取り付けることであって、前記力センサが中央開口部を有し、かつ前記遠位端に加わる力を測定するように構成された、力センサを取り付けることと、
前記力センサの近位に近位電極を取り付けることと、
前記挿入管の近位端から延びる第1のチューブを前記中央開口部に通すことであって、前記第1のチューブが前記遠位電極内の開孔を通して灌注流体を供給すべく構成された、第1のチューブを前記中央開口部に通すことと、
前記挿入管の近位端から延びて前記中央開口部に入るように第2のチューブを通すことであって、前記第2のチューブが、前記近位電極内の開孔を通して灌注流体を供給すべく構成された、第2のチューブを通すことと、を含み、
前記力センサが中央空間を取り囲む管形状を有し、前記第1のチューブが前記中央空間を横切り、かつ前記第2のチューブが前記中央空間に入り、
前記力センサの前記中央空間の内部に位置付けられた分流器を介して前記第2のチューブからの灌注流体を方向付けることを更に含み、前記分流器が前記第2のチューブと流体連通しており、
前記力センサが少なくとも1つのコイルを具備し、前記第1のチューブが前記少なくとも1つのコイルを経由し、かつ前記分流器が前記少なくとも1つのコイルと同じ軸平面内に位置付けられている、プローブの製造方法。
【請求項6】
前記第1及び第2のチューブに対する前記灌注流体のそれぞれの流量を実現することを含む、請求項に記載のプローブの製造方法。
【請求項7】
前記遠位端に加わる前記力に応じて前記それぞれの流量の少なくとも1つを設定することを含む、請求項に記載のプローブの製造方法。
【請求項8】
前記分流器で、灌注流体を主に軸方向から主に半径方向へと再方向付けして前記近位電極内の開孔に給送することを更に含む、請求項に記載のプローブの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、「Catheter With Multiple Irrigated Electrodes And A Force Sensor」と題した米国特許出願第13/424,783号(2012年3月20日出願)の利益及び本出願に対する優先権を主張するものであり、該出願はその全体が本明細書において参照により援用されている。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、一般に、電極を有するカテーテルに関し、特に、電極を灌注するカテーテルに関する。
【背景技術】
【0003】
心臓の一部切除を含む医学的処置は、様々な心不整脈の治療、並びに心房細動の管理のために使用され得る。そのような手技は、当該技術分野において既知である。静脈瘤の治療など、体内組織のアブレーションを用いる他の医療手技も、当該技術分野において既知である。このような手技を行うためのアブレーションエネルギーは、高周波(RF)エネルギーの形態であってよく、これは、手技に用いられるカテーテルの1つ以上の電極を介して、組織に供給される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このアブレーションエネルギーを体内組織に印加する場合、制御されていないと、組織の温度の望ましくない上昇が起こることがある。したがって、アブレーションが関与するあらゆる医学的処置の最中に、組織の温度を制御することが重要である。制御のための1つの方法は、アブレーションされている組織を灌注することである。
【0005】
参照により本特許出願に組み込まれる文書は本出願の一部をなすものとみなされるべきであるが、これらの援用される文書において、任意の用語が、本明細書において明示的又は暗示的になされる定義と矛盾するように定義される限りは、本明細書における定義のみが考慮されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態は、プローブを提供するものであり、このプローブは、
挿入管と、
挿入管の遠位端上に取り付けられた電極と、
遠位端に取り付けられた力センサであって、力センサが中央開口部を有し、かつ遠位端に加わる力を測定するように構成された、力センサと、
中央開口部を通過し、かつ電極の開孔を通して灌注流体を供給すべく構成されたチューブと、を備える。
【0007】
開示される実施形態において、電極は、それぞれの一連の開孔を有する複数の個別電極を含む。典型的には、プローブは、それぞれの一連の開孔に供給するチューブに接続される対応の灌注管を備える。プローブは、それぞれの一連の開孔に対する灌注流体のそれぞれの流量を実現するように構成されたコントローラを更に備えていてもよい。いくつかの実施形態において、コントローラは、遠位端に加わる力に応じてそれぞれの流量の少なくとも1つを設定するように構成される。典型的には、プローブは、それぞれの灌注管に接続される対応する弁を含み、対応する弁は、それぞれの一連の開孔に対する灌注流体のそれぞれの流量を設定することができる。
【0008】
代替実施形態において、力センサは中央空間を取り囲む管形状を有し、チューブは中央空間を横切る。
【0009】
更なる代替実施形態において、力センサは少なくとも1つのコイルを備え、チューブは、少なくとも1つのコイルを通って経路が定められる。
【0010】
本発明の一実施形態に従い、
挿入管を準備することと、
挿入管の遠位端に電極を取り付けることと、
中央開口部を有し、かつ遠位端に加わる力を測定するように構成された、力センサを遠位端に取り付けることと、
灌注流体を電極の開孔を通して供給するように構成されたチューブを中央開口部に通すことと、を含む、方法が更に提供される。
【0011】
本発明の更なる実施形態は、
挿入管と、
挿入管の遠位端上に取り付けられた遠位電極と、
遠位端に取り付けられた力センサであって、力センサが中央開口部を有し、かつ遠位端に加わる力を測定するように構成された、力センサと、
力センサの近位に取り付けられた近位電極と、
挿入管の近位端から遠位端へと延び、中央開口部を通過し、かつ遠位電極内の開孔を通して灌注流体を供給すべく構成された第1のチューブと、
挿入管の近位端から延び、中央開口部に入り、かつ近位電極内の開孔を通して灌注流体を供給すべく構成された第2のチューブと、を具備してなる、プローブを提供している。
【0012】
本発明の一実施形態に従い、
挿入管を準備することと、
挿入管の遠位端に遠位電極を取り付けることと、
遠位端に力センサを取り付けることであって、力センサが中央開口部を有し、かつ遠位端に加わる力を測定するように構成された、力センサを取り付けることと、
力センサの近位に近位電極を取り付けることと、
挿入管の近位端から延びる第1のチューブを中央開口部に通すことであって、第1のチューブが遠位電極内の開孔を通して灌注流体を供給すべく構成された、第1のチューブを中央開口部に通すことと、
挿入管の近位端から延びて中央開口部に入るように第2のチューブを通すことであって、第2のチューブが、近位電極内の開孔を通して灌注流体を供給すべく構成された、第2のチューブを通すことと、を含む、方法が更に提供されている。
【0013】
以下の実施形態の詳細な説明を、以下の図面と併せ読むことによって、本開示のより深い理解が得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態によるカテーテルプローブアブレーションシステムの概略描写図である。
図2】本発明の一実施形態による、システムに使用されるカテーテルプローブの遠位端の概略断面図である。
図3】本発明の一実施形態による、専用の灌注管を有するシステムに使用されるカテーテルプローブの遠位端の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
概論
本発明の一実施形態は、心臓組織のアブレーションといった低侵襲的処置で典型的に使用されるカテーテルプローブを提供する。プローブは、侵襲を少なくするために、通常約2mmの小さな外径を有する挿入管を備える。少なくとも1つの電極、典型的には2つ以上の個別電極は、挿入管の遠位端に取り付けられる(遠位端は挿入管とほぼ同じ直径を有する)。
【0016】
力センサが遠位端内に取り付けられ、この力センサは、端部が組織と接触するときに遠位端に加わる力を測定する。(力を制御することにより、組織のアブレーションをより正確に行うことが可能となる。)力センサは、挿入管の外装と接触する管形状を有し得る。センサは中央開口部を有し、典型的には、中央空間を画定する。
【0017】
1つ以上の電極は、電極及び電極の近くの本体材料に灌注流体を供給するために使用される、それぞれの一連の開孔を有する。灌注チューブは、力センサの中央開口部を通り、典型的には、センサの中央空間を横切って、電極に接続される。チューブは、電極の開孔部に灌注流体を供給する。
【0018】
力センサ内の「空の」領域、即ち、中央開口部及び中央空間を灌注チューブのために使用することにより、本発明の実施形態は、遠位端における利用可能な(小さな直径の)空間を極めて効率的に使用する。この空間の効率的利用により、アブレーションの間に遠位端の電極を灌注することができ、更に、カテーテルプローブの直径を増加させる必要なくアブレーションの間の力を測定することができることを意味する。
【0019】
システムの説明
ここで発明の実施形態による図を参照すると、図1は、カテーテルプローブアブレーションシステム10の概略描写図であり、図2は、このシステムに使用されるカテーテルプローブ14の遠位端12の概略断面図である。システム10において、プローブ14は、被験者22の内腔18(例えば、心臓20の心室)に挿入される挿入管16を備える。プローブは、典型的には、体内組織26のアブレーションを実施することを含む処置中に、システム10の操作者24によって使用される。
【0020】
心臓内操作について、挿入管16及び遠位端12は、典型的には2〜3mm程度である非常に小さい外径を一般的に有するべきである。したがって、カテーテルプローブ14の内部構成要素も全て、できる限り小型で細く製造され、小さな機械的ひずみによる破損をできる限り避けるよう配置される。
【0021】
システム10の機能は、システムコントローラ30によって管理され、このシステムコントローラには、システム10の動作のためのソフトウェアが保存されているメモリ34と通信を行う処理装置32が含まれている。コントローラ30は、典型的に、一般目的のコンピュータ処理装置を含む業界標準のパーソナルコンピュータである。しかしながら、いくつかの実施形態では、コントローラの機能の少なくともいくつかは、例えば、特定用途向け集積回路(ASIC)又は現場でプログラム可能なゲートアレイ(FPGA)などのカスタム設計のハードウェア及びソフトウェアを使用して実行される。コントローラ30は、典型的に、ポインティングデバイス36及びグラフィカルユーザインタフェース(GUI)38(これらによってシステム10のパラメータを操作者が設定することが可能になる)を使用して操作者24によって管理される。更に、GUI 38は、典型的に、処置の結果をオペレータに対して表示する。
【0022】
メモリ34中のソフトウェアは、例えば、ネットワークを介して電子的形態でコントローラにダウンロードすることができる。代替的に又は追加的に、このソフトウェアは、光学的、磁気的、又は電子的記憶媒体など、非一過性の有形媒体上に提供され得る。
【0023】
1つ以上の電極は遠位端12に取り付けられる。一例として、図2は、かかる3つの電極である第1の電極40、第2の電極42、及び第3の電極44を示しており、これら電極は互いに絶縁される。電極は、典型的には、管16の絶縁外装46の上に形成された金属薄層を備える。典型的には、この遠位端は、互いに及び電極40、42、及び44から絶縁された他の電極を有するが、簡略化のため図には示されていない。一例として、遠位端の端にある電極40は、平坦な底面を備えたカップの形状を有すると仮定されており、本明細書ではカップ電極とも呼ばれる。カップ電極40は、典型的には、約0.1mm〜約0.2mmの範囲の厚さを有する。
【0024】
第2の電極42はリングの形状であり、本明細書ではリング電極42とも呼ばれる。リング電極42は、典型的には、カップ電極と同様の厚さを有する金属から形成される。第3の電極44は、外装46の上方の突出部又はバンプの形状であり、バンプ電極44とも呼ばれる。バンプ電極44はカップ電極及びリング電極と同様の厚さを有してもよく、又はいくつかの実施形態では若干厚めであってもよい。本開示において、電極40、42、及び44、並びに遠位端のその他の電極は、本明細書において総じて電極40Cとも呼ばれる。
【0025】
電極40Cは、管16の中の導線(図示せず)によってシステムコントローラ30に接続される。後述のように、電極のうちの少なくとも1つが、組織26のアブレーションに使用される。電極は、アブレーションで使用されることに加えて、典型的には、当技術分野で周知の他の機能を行い、そうした機能のいくつかは以下に記載される。必要に応じて、他の機能に使用されるとき、コントローラ30は、周波数多重化によって、違う機能の電流をそれぞれ区別することができる。例えば、高周波(RF)アブレーション電力は約数百kHzの周波数で提供されてもよく、位置検出周波数は約1kHzの周波数であってもよい。電極に対して測定されるインピーダンスを用いて遠位端12の位置を評価する方法は、参照により本明細書に組み込まれるBar−Talらの米国特許出願第2010/0079158号に開示されている。
【0026】
システムコントローラ30は、力モジュール48と、RFアブレーションモジュール50と、灌注モジュール52と、追跡モジュール54と、を備える。処理装置32は、遠位端に加わる力の大きさ及び方向を測定するために、力モジュールを使用して遠位端12の力センサ58に供給され、かつ力センサ58から受信する信号を生成及び測定する。力センサ58の動作及び構造は以下により詳細に記載される。
【0027】
処理装置32は、アブレーションモジュールを使用して、例えば、1つ以上の電極40Cを介して印加されるアブレーション電力のレベルなどのアブレーションパラメータを監視及び制御する。モジュールは、施されるアブレーションの持続時間も監視及び制御する。
【0028】
典型的には、アブレーションの間、アブレーションをもたらす電極(1つ又は複数)、並びに周辺領域に熱が生じる。熱を消散させ、かつアブレーションプロセスの効率を改善するために、システム10は遠位端12に灌注流体を供給する。以下により詳細に記載されるように、システム10は、灌注モジュール52を使用して、灌注流体の流量及び温度などの灌注パラメータを監視及び制御する。
【0029】
装置32は、追跡モジュール54を使用して、患者22に対する遠位端の位置及び配向を監視する。監視は、Biosense Webster(Diamond Bar,CA)製のCarto3(登録商標)システムに提供されているもののような技術分野で知られた任意の追跡法によって実施され得る。かかるシステムは、患者22の外部及び遠位端12の内部にある高周波(RF)電磁送信及び受信要素を使用する。あるいは又はこれに加えて、追跡は、これもまたCarto3(登録商標)システムに提供されているもののような、1つ以上の電極40Cと、患者22の皮膚に取り付けられるパッチ電極との間の測定インピーダンスによって実施され得る。簡略化のため、追跡に固有でありかつモジュール54で使用される、例えば、前記の要素及びパッチ電極などの要素は、図1に示されていない。
【0030】
図2に示されるように、遠位端12は挿入管16に接続される。遠位端の上には電極40Cが取り付けられており、遠位端内には力センサ58が取り付けられている。力センサ58と類似した力センサの態様は、2007年10月8日出願の米国特許出願第2009/0093806号(Govariら)、及び2009年11月30日出願の米国特許出願第2011/0130648号(Beecklerら)に記載されており、当該特許出願の開示は共に参照により本明細書に組み込まれる。
【0031】
図2は、力センサ58の概略断面図である。センサ58は、連結部材の両端の間のばね接続部62を形成する弾性連結部材60を備える。例として、連結部材60は、第1の部分64及び第2の部分66の2つの部分で形成され、これら2つの部分が固定的に互いに接合されていると仮定される。連結部材60のこの2つの部分は、一般に管状であり、連結部材も中央開口部68を備えた管形状を有するように接合される。連結部材60を2つの部分で形成する必要はないが、2つの部分で実施することにより、力センサ内に含まれる要素、並びに遠位端に取り付けられる他の要素を部材に組み付けるのが簡単になる。典型的には、連結部材60は、ニッケルチタン(ニチノール)などの超弾性合金で形成される。
【0032】
部材がばねとして挙動するように、連結部材60は、典型的には、部材の第1の部分64の長さ部分に切り込まれた1つ以上の螺旋70を有する。本明細書に記載され、かつ図2に示される実施形態では、螺旋70は、第1の切り込み螺旋72及び第2の切り込み螺旋74の2つの絡み合った螺旋として形成され、本明細書では二重螺旋とも呼ばれる。しかしながら、連結部材60はあらゆる正の整数の螺旋を有していてもよく、当業者は、過度な実験をすることなしに、本発明の説明を2つ以外の螺旋の数を包含するように適合させることができるであろう。あるいは、上述されるように、連結部材は、1つ以上の管状螺旋切り込みによって生成されるものと同様の可撓性及び強度特性を有する、コイルばね又は任意の他の好適な種類の弾性構成要素を備えてもよい。
【0033】
連結部材60は、典型的には、可撓性プラスチック材料で形成される外装46の内部に取り付けられ、かつ外装46によって覆われる。部材60は、典型的には、外装46の内径とほぼ等しい外径を有する。連結部材の外径ができるだけ大きいような構成は、力センサ58の感度を増加させる。これに加えて及び以下に説明されるように、管状連結部材の比較的大きな直径、及び比較的薄い壁は、連結部材内に封入される中央空間61を提供し、遠位端内の以下に記載される他の要素がこの中央空間61を使用する。
【0034】
例えば、カテーテルプローブ14が、電極40Cを通してRF(高周波)電気エネルギーを送達することにより心臓内組織をアブレーションするのに使用される場合、遠位端12の領域でかなりの熱が発生する。この理由から、外装46は、例えば、ポリウレタンなどの耐熱性プラスチック材料を備え、この形状及び弾性は、熱に対する曝露により大きな影響を実質的に受けないことが望ましい。
【0035】
力センサ58内、典型的には連結部材の中央空間内で、コイル76、78、80、及び82を備える接続部感知アセンブリは、接続部62の任意の寸法変化(接続部の軸方向変位及び角偏向など)の正確な読み取りを提供する。これらのコイルは、本発明の実施形態で用いられ得る磁気変換器の一種類である。本発明の出願明細書及び請求項の文脈中で「磁気変換器」は、加えられた電流に対応して磁場を発生させる機器、及び/又は加えられた磁場に対応して電気信号を出力する機器の意味で使用される。本願の実施形態では、コイルを磁気変換器として記述しているが、代わりの実施形態では、当業者にとっては自明であるように、他の種類の磁気変換器を用いることができる。
【0036】
感知アセンブリのコイルは、接続部62の両側に存在する2つのサブアセンブリに分けられ、1つのサブアセンブリは、コントローラ30及び力モジュール48からケーブル(図示せず)を介して送られる電流により駆動されて磁場を発生させるコイル82を備える。この磁場は、コイル82から軸方向に離間する遠位端のセクションに位置するコイル76、78、及び80を備える第2のサブアセンブリにより受信される。本出願及び特許請求の範囲の文脈で用いられる「軸方向」という用語は、遠位端12の長手方向対称軸84の方向を指す。軸平面とは、この長手方向の軸に対して垂直な平面であり、軸方向セクションとは、2つの軸平面間に含まれるカテーテルの一部分である。コイル82は、典型的には、軸84とほぼ平行であり、かつ軸84と完全に一致する対称軸を有する。
【0037】
コイル76、78、及び80は、異なる半径方向位置に固定されている。(「半径方向」という用語は、軸84に対する座標を指す。)具体的には、この実施形態では、コイル76、78、及び80の全てが、カテーテルの軸に関して異なる方位角で同一の軸平面中に位置し、軸84に対して略平行なそれぞれの対称軸を有する。例えば、これら3つのコイルは軸から同一の半径方向距離だけ離れて、方位角的に120°の間隔をあけて配置され得る。
【0038】
コイル76、78、及び80は、コイル82によって伝達される磁場に応じて電気信号を発する。これらの信号は、ケーブル(図示せず)によってコントローラ30に伝達され、コントローラ30は、軸84に対して平行な接続部62の変位、並びに接続部62の軸からの角偏向を測定するために、力モジュール48を使用して信号を処理する。コントローラ30は、測定した変位及び偏向から、典型的には、力モジュール48に保存されている予め決められた較正テーブルを使用して、接続部62に加わる力の大きさ及び方向を評価することができる。
【0039】
コントローラ30は、遠位端12の位置及び配向を測定するために追跡モジュール54を使用する。測定方法は、当該技術分野で知られた任意の便利な方法であってよい。一実施形態において、患者22の外部で発生する磁場は、遠位端の中の要素において電気信号を生成し、コントローラ30はこの電気信号レベルを用いて遠位端の位置及び配向を評価する。あるいは、磁場は遠位端の中で生じる場合があり、磁場によって生成された電気信号は患者22の外部で測定されてもよい。簡略化のため、遠位端を追跡するために使用される遠位端12の要素は、図2に示されていない。しかしながら、かかる要素がコイルを備える場合、コイル76、78、80、及び82の少なくともいくつかは、力センサ58の要素として使用する他に、遠位端で必要とされる追跡要素として使用されてもよい。
【0040】
電極40Cの少なくともいくつかは、小さな灌注開孔部を有して構成される。この開孔部は、典型的に、約0.1〜0.2mmの範囲の直径を有する。本明細書に記載の実施形態では、カップ電極40、リング電極42、及びバンプ電極44は、それぞれの一連の灌注開孔部86、88、及び90を有する。開孔部に供給される灌注流体は、チューブ92を使用して流体を一連の灌注開孔部へ移動させる灌注モジュール52によって供給される。
【0041】
灌注流体は、典型的には、生理食塩水であり、モジュール52によって制御される流体の流量は、典型的には、およそ10〜20cc/分の範囲内であるが、この範囲よりも多くても又は少なくてもよい。
【0042】
チューブ92は、中央開口部68を通過し、部材60の中央空間61を横切るように配置されて、電極まで経路が定められる。チューブ92を開口部に通して連結部材の中央空間を横切るようにすることにより、力センサ58に必要な寸法要件以外の遠位端の寸法要件(特に直径)に、チューブのための必要条件が加わらない。いくつかの実施形態では、チューブは、コイル76、78、80、及び82の1つ以上を通って経路が定められ、遠位端内の空間の使用効率を更に高めてもよい。
【0043】
電極40Cのそれぞれに供給するために、チューブ92は、各電極40、42、及び44の灌注開孔部に供給する灌注管94、96、及び98に接続する。
【0044】
いくつかの実施形態では、灌注モジュール52を使用してコントローラ30により動作される弁が、管94、96、及び98の少なくとも1つに設置され、コントローラが個々の管に対する灌注流体の流量を設定する及び/又は切り替えるのが可能となる。一例として、管94、96、及び98は、対応する弁100、102、及び104によって制御される、これらの管を通過する灌注を有すると仮定される。図2に示されるように、典型的には、管94、96、及び98、並びに弁100、102、及び104の少なくともいくつかは、中央空間61内に位置する。
【0045】
コントローラ30は、弁を使用して、電極によって行われる機能に従って個々の電極への流量を設定することができる。例えば、電極がアブレーションで使用されている場合、コントローラ30は、電極を通過する流量を電極がアブレーションで使用されていない場合に比べて増加させることができる。あるいは又はこれに加えて、コントローラ30は、遠位端のセンサによって測定されたパラメータの値に従って、特定の電極に対する流量を変更することができる。かかるパラメータとしては、力センサ58により測定された力の大きさ、並びに力センサにより測定された力の方向が挙げられる。流量を変更するためにコントローラを使用することができる他のセンサとしては、遠位端中の温度センサが挙げられる。
【0046】
典型的には、コントローラ30及び灌注モジュール52は、血液が管、チューブ、及び電極の灌注開孔部に入るのを防止するために、各管94、96、及び98、並びにそれらの対応の電極を通過する灌注流体の最低流量を維持する。
【0047】
いくつかの実施形態では、各電極用の個別の管に接続する共通のチューブ92を介して灌注流体を個別電極に供給するのではなく、モジュール52から出てプローブ14を通って各電極のそれぞれまで個別の灌注管が延びる。管94、96、及び98と同様に、コントローラ30は、個々の管のそれぞれを通して灌注流量を調整することができる。
【0048】
そのような実施形態の例は、専用の灌注管114及び116を介してそれぞれ給送されるカップ電極110及びリング電極112の形態の電極40Cを特徴とする図3に例示されている。遠位端12は、図2に示す実施形態と同様に、挿入管16に接続されている。遠位端の上には電極40Cが取り付けられており、遠位端内には力センサ58が取り付けられている。断面図で概略的に示すように、力センサ58は、中央開口部120を有する弾性の管形状連結部材118を具備し、この連結部材は連結部材の両端の間のばね接続部122を形成している。前述したように、連結部材118は、しっかりと一体に結合されている第1の部分124及び第2の部分126から形成され得る。同様に、連結部材118は、超弾性合金で形成され得る。
【0049】
連結部材118は、この部材がばねとして挙動するように、部材の第1の部分124の長さ部分に第1の切り込み螺旋128と第2の切り込み螺旋130とを具備してなる二重螺旋を有し得る。連結部材118は、シース132の内部に取り付けられ、かつその外装で覆われ得る。この外装は典型的に可撓性プラスチック材料で形成される。
【0050】
力センサ58の内部において受信用コイル134、136、138、及び伝送用コイル140を具備する接続部感知アセンブリは、上述されるように、接続部122の寸法変化の正確な読み取りを提供する。本実施形態はまた、被検者22内の所望の部位において外部的に印加された場を感知して遠位端12の位置決めを促進すべく構成された楕円形コイル142及び144を特徴とする。上述したように、ある軸平面の内部に受信用コイル134、136、及び138が位置し、別の軸平面の内部に楕円形コイル142及び144が位置し得る。先に述べたように、これらのコイルは、力モジュール48及び/又は追跡モジュール54と共に使用され得る。
【0051】
図示されているように、電極40Cは、カップ電極110用及びリング電極112用のそれぞれの一連の灌注開孔146及び148を有し得る。第1のチューブ114は、前述したような様式にて、中央開口部68を通過するように配置することにより、カップ電極110へと経路指定される。第2のチューブ116は、中央開口部68を通過し、灌注流体を主に軸方向から主に半径方向へと再方向付けするように構成されている分流器150とのインタフェースをとることにより、リング電極112へと経路指定される。灌注モジュール52を使用してカップ電極110及びリング電極112に対する流量の個別制御を行い上記の機能を遂行するコントローラ30により、チューブ114及び116に対し個別に灌注流体を給送できる。
【0052】
本実施形態において、分流器150は、楕円形コイル142及び144の軸平面の内部に、又はその軸平面の付近に位置決めされ得る。例えば、分流器150及び楕円形コイル142及び144は、カテーテル軸84を中心とした半径方向へ別々の方位角にて離間配置され得る。この構成は、力センサ58の機能を妨げることなしに、分流器150、ひいてはリング電極112を比較的遠位に位置決めすることを可能にしている。カップ電極110とリング電極112との間の距離を減ずることにより、電極間で組織のアブレーションを効率的に行うことが所望され得る。また同時に、リング電極112をばね接続部122の近位に位置決めし、カップ電極110及び力センサ58との間の距離を減ずることにより、力センサ58がカップ電極110の位置の指示精度の向上を可能にすることも所望され得る。
【0053】
上述した実施形態は一例として記載されたものであり、本発明は、本明細書において上に具体的に図示及び説明した内容に限定されないことが明らかであろう。むしろ、本発明の範囲には、上で説明した様々な特徴の組み合わせと部分的組み合わせの両方、並びにそれらの変形形態及び修正形態が含まれるが、これらは、上述の説明を読めば当業者には想到されるものであり、従来技術では開示されていないものである。
【0054】
〔実施の態様〕
(1) 挿入管と、
前記挿入管の遠位端上に取り付けられた遠位電極と、
前記遠位端に取り付けられた力センサであって、前記力センサが中央開口部を有し、かつ前記遠位端に加わる力を測定するように構成された、力センサと、
前記力センサの近位に取り付けられた近位電極と、
前記挿入管の近位端から前記遠位端へと延び、前記中央開口部を通過し、前記遠位電極内の開孔を通して灌注流体を供給すべく構成された第1のチューブと、
前記挿入管の近位端から延び、前記中央開口部に入り、かつ前記近位電極内の開孔を通して灌注流体を供給すべく構成された第2のチューブと、を具備してなる、プローブ。
(2) 前記それぞれの一連の開孔に対する前記灌注流体のそれぞれの流量を実現するように構成されたコントローラを備える、実施態様1に記載のプローブ。
(3) 前記コントローラが、前記遠位端に加わる前記力に応じて前記それぞれの流量の少なくとも1つを設定するように構成される、実施態様2に記載のプローブ。
(4) 前記力センサが中央空間を取り囲む管形状を有し、前記第1のチューブが前記中央空間を横切り、かつ前記第2のチューブが前記中央空間に入る、実施態様1に記載のプローブ。
(5) 前記力センサの前記中央空間の内部に位置付けられた分流器を更に具備し、前記分流器が前記第2のチューブと流体連通している、実施態様4に記載のプローブ。
【0055】
(6) 前記分流器が、灌注流体を主に軸方向から主に半径方向へと再方向付けして前記近位電極内の開孔に給送すべく構成されている、実施態様5に記載のプローブ。
(7) 前記力センサが少なくとも1つのコイルを具備し、前記分流器が前記少なくとも1つのコイルと実質的に同じ軸平面内に位置付けられている、実施態様5に記載のプローブ。
(8) 挿入管を準備することと、
前記挿入管の遠位端に遠位電極を取り付けることと、
前記遠位端に力センサを取り付けることであって、前記力センサが中央開口部を有し、かつ前記遠位端に加わる力を測定するように構成された、力センサを取り付けることと、
前記力センサの近位に近位電極を取り付けることと、
前記挿入管の近位端から延びる第1のチューブを前記中央開口部に通すことであって、前記第1のチューブが前記遠位電極内の開孔を通して灌注流体を供給すべく構成された、第1のチューブを前記中央開口部に通すことと、
前記挿入管の近位端から延びて前記中央開口部に入るように第2のチューブを通すことであって、前記第2のチューブが、前記近位電極内の開孔を通して灌注流体を供給すべく構成された、第2のチューブを通すことと、を含む、方法。
(9) 前記第1及び第2のチューブに対する前記灌注流体のそれぞれの流量を実現することを含む、実施態様8に記載の方法。
(10) 前記遠位端に加わる前記力に応じて前記それぞれの流量の少なくとも1つを設定することを含む、実施態様9に記載の方法。
【0056】
(11) 前記力センサが中央空間を取り囲む管形状を有し、前記第1のチューブが前記中央空間を横切り、かつ前記第2のチューブが前記中央空間に入る、実施態様8に記載の方法。
(12) 前記力センサの前記中央空間の内部に位置付けられた分流器を介して前記第2のチューブからの灌注流体を方向付けることを更に含み、前記分流器が前記第2のチューブと流体連通している、実施態様11に記載の方法。
(13) 前記分流器で、灌注流体を主に軸方向から主に半径方向へと再方向付けして前記近位電極内の開孔に給送することを更に含む、実施態様12に記載の方法。
(14) 前記力センサが少なくとも1つのコイルを具備し、前記第1のチューブが前記少なくとも1つのコイルを経由し、かつ前記分流器が前記少なくとも1つのコイルと実質的に同じ軸平面内に位置付けられている、実施態様12に記載の方法。
図1
図2
図3