(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記移動加工処理は、前記作業領域に複数の前記加工装置による加工が可能な前記被加工物があり、かつ該作業領域に隣接する他の前記作業領域で加工する前記被加工物がない場合、他の前記作業領域に対応する前記加工装置を、隣接する前記作業領域に移動させて複数の前記加工装置で前記被加工物を加工する請求項1から請求項3の何れか1項記載の生産設備。
一つ当たりの前記被加工物の平均加工時間を前記設定時間で除算することで、前記加工装置の最小台数を算出し、該最小台数に基づいて複数種類の前記被加工物の搬送順を決定する請求項5記載の生産設備の設計方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、例えば、航空機の生産ラインでは、複数のスキンに対して打鋲装置でリベットを打ち込み接合すること(以下「打鋲」という。)で、被加工物である胴体パネルを形成(加工)する。この胴体パネルは、部位によって全長及び全幅等の形状が異なるため、胴体パネルによっては打鋲数が大きく異なる場合がある。
このため、形状が異なる被加工物によって加工装置の占有時間も異なる。すなわち、加工に要する工程数が異なる。例えば、全長が長い被加工物は2台の加工装置によって加工される一方、全長が短い被加工物に対しては1台の加工装置で加工するときのように、長さが異なる被加工物に対して使用する加工装置の台数が異なる。
このため、最も工程数の多い被加工物に対応するように複数の加工装置が生産設備に設けられる場合がある。しかしながら、形状が異なる被加工物が連続して搬送されると、複数の加工装置のうち、一部の加工装置が一時的に被加工物の加工を行わない場合が生じる。このように非稼働の加工装置が生じる場合は、生産設備として被加工物の加工を効率良く行えていないこととなる。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、形状が異なる複数の被加工物を連続して加工する場合でも、被加工物を効率良く加工できる、生産設備、生産設備の設計方法、並びに生産設備の制御方法及び製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の生産設備、生産設備の設計方法、並びに生産設備の制御方法及び製造方法は以下の手段を採用する。
【0009】
本発明の第一態様に係る生産設備は、形状が異なる複数種類が混在する複数の被加工物を、
生産ラインとして予め定められた搬送経路で搬送する搬送装置と、前記搬送経路を搬送される前記被加工物を加工する複数の加工装置と、複数の前記加工装置
のそれぞれに対応し
、前記搬送経路に
対して搬送方向に複数予め設定され、
搬送された前記被加工物を加工するために
対応する前記加工装置が作業可能な範囲を示す作業領域と、
前記搬送装置を制御して前記作業領域から搬送方向下流側に配置された前記作業領域へ前記被加工物の搬送を行うとともに、自身に対応する前記作業領域において加工する前記被加工物がない前記加工装置を、隣接する他の前記作業領域に移動させて前記被加工物を加工する移動加工処理を行う制御装置と、を備える。
【0010】
本構成に係る生産設備は、形状が異なる複数種類が混在する複数の被加工物を、予め定められた搬送経路で搬送する搬送装置を備える。被加工物は、例えば航空機の胴体部分を形成する胴体パネルであり、その形状に応じて全長や全幅が異なる。また、被加工物に対する加工は、例えば打鋲である。
【0011】
さらに、生産設備は、搬送経路を搬送される被加工物を加工する複数の加工装置と、複数の加工装置毎に対応して搬送経路に予め設定され、被加工物を加工するために各加工装置が作業可能な範囲を示す作業領域と、を備える。すなわち、加工装置は、自身に対応する作業領域で停止した被加工物に対して、この作業領域内を移動して被加工物に対して予め定められた加工を行う。なお、ここでいう作業とは加工と同義である。また、生産設備は、一例として、パルスラインであり、被加工物が加工装置の設置位置において停止し続ける停止時間が予め定められており、この停止時間が経過すると被加工物は次の作業領域へ搬送される。
【0012】
そして、移動加工処理が制御装置によって行われる。移動加工処理は、自身に対応する作業領域において加工する被加工物がない加工装置を、隣接する他の作業領域に移動させて被加工物を加工する処理である。
このように、本構成は、被加工物の加工に使用されていない加工装置を隣接する他の作業領域に移動させて、他の作業領域で被加工物の加工を行わせる。換言すると、加工装置が本来の作業領域を超えて移動することで、複数の加工装置が協調して被加工物を加工する。
従って、本構成によれば、加工装置の稼働率が向上し、複数の加工装置によって協調して加工を行うので、形状が異なる複数の被加工物を連続して加工する場合でも、被加工物を効率良く加工できる。
【0013】
上記第一態様では、前記作業領域に隣接して前記搬送経路に予め設定され、隣接する前記作業領域に対応する前記加工装置が移動して前記被加工物を加工する予備作業領域を備え、前記移動加工処理が、前記予備作業領域に隣接する前記作業領域で加工する前記被加工物がなく、かつ前記予備作業領域で加工する前記被加工物がある場合、前記予備作業領域に隣接する前記作業領域に対応する前記加工装置を前記予備作業領域に移動させて前記被加工物を加工してもよい。
【0014】
本構成に係る生産設備は、作業領域に隣接して搬送経路に予め設定される予備作業領域を備える。予備作業領域は、隣接する作業領域に対応する加工装置が移動して被加工物を加工する。
【0015】
そして、移動加工処理は、予備作業領域に隣接する作業領域で加工する被加工物がなく、かつ予備作業領域で加工する被加工物がある場合、予備作業領域に隣接する作業領域に対応する加工装置を予備作業領域に移動させて被加工物を加工する。すなわち、予備作業領域のみを移動する加工装置はなく、予備作業領域で被加工物を加工する場合にのみ、隣接する作業領域から予備作業領域に加工装置が移動してくる。
このように、本構成によれば、被加工物の加工に使用されていない加工装置を隣接する予備作業領域に移動させて、予備作業領域で被加工物の加工を行わせるため、加工装置の稼働率が向上し、形状が異なる複数の被加工物を連続して加工する場合でも、被加工物を効率良く加工できる。
【0016】
上記第一態様では、前記予備作業領域が、前記作業領域間に設定されてもよい。
【0017】
本構成によれば、予備作業領域を作業領域間に設けることによって、加工装置が故障しても、故障した加工装置の替わりに、隣接する加工装置が予備作業領域で加工を行うので、加工装置の故障により生産設備そのものを停止することを抑制できる。
【0018】
上記第一態様では、前記移動加工処理が、前記作業領域に複数の前記加工装置による加工が可能な前記被加工物があり、かつ該作業領域に隣接する他の前記作業領域で加工する前記被加工物がない場合、他の前記作業領域に対応する前記加工装置を、隣接する前記作業領域に移動させて複数の前記加工装置で前記被加工物を加工してもよい。
【0019】
本構成は、被加工物の加工に使用されていない加工装置を隣接する作業領域に移動させ、複数の加工装置が協調して一つの被加工物の加工を行う。このため、本構成によれば、加工装置の稼働率が向上し、形状が異なる複数の被加工物を連続して加工する場合でも、被加工物を効率良く加工できる。
【0020】
本発明の第二態様に係る生産設備の設計方法は、各前記加工装置が前記被加工物の加工に使用できる時間が設定時間とされ、上記記載の前記移動加工処理を実施した場合に、各前記加工装置の稼働時間が前記設定時間を超えないように、複数種類の前記被加工物の搬送順を決定する。
【0021】
本構成によれば、より適切に被加工物の搬送順番を決定できる。
【0022】
上記第二態様では、一つ当たりの前記被加工物の平均加工時間を前記設定時間で除算することで、前記加工装置の最小台数を算出し、該最小台数に基づいて複数種類の前記被加工物の搬送順を決定してもよい。
【0023】
本構成によれば、加工される被加工物は形状が異なるものが複数搬送されるため、非加工物の平均加工時間に基づいて加工装置の最小台数を算出することにより、加工装置の必要台数を適切に決定できる。
【0024】
本発明の第三態様に係る生産設備の制御方法は、形状が異なる複数種類が混在する複数の被加工物を、
生産ラインとして予め定められた搬送経路で搬送する搬送装置と、前記搬送経路を搬送される前記被加工物を加工する複数の加工装置と、複数の前記加工装置
のそれぞれに対応し
、前記搬送経路に
対して搬送方向に複数予め設定され、
搬送された前記被加工物を加工するために
対応する前記加工装置が作業可能な範囲を示す作業領域と、を備える生産設備の制御方法であって、
前記搬送装置を制御して前記作業領域から搬送方向下流側に配置された前記作業領域へ前記被加工物の搬送を行うとともに、自身に対応する前記作業領域において加工する前記被加工物がない前記加工装置を、隣接する他の前記作業領域に移動させて前記被加工物を加工する移動加工処理を行う。
【0025】
本発明の第四態様に係る製造方法は、上記記載の生産設備によって被加工物を製造する。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、形状が異なる複数の被加工物を連続して加工する場合でも、被加工物を効率良く加工できる、という優れた効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、本発明に係る生産設備、生産設備の設計方法、並びに生産設備の制御方法及び製造方法の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0029】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態について説明する。
【0030】
図1は、第1実施形態に係る生産設備10の構成図である。
図1の例では、生産設備10が有するライン(以下「生産ライン」という。)は、1ラインだけであるが、2以上の生産ラインが並列に設けられてもよい。
【0031】
生産設備10は、形状が異なる複数種類が混在する複数の被加工物12を、予め定められた搬送経路14で搬送する搬送装置16を備える。被加工物12は、その形状に応じて全長や全幅が異なり、それに伴い被加工物12の加工位置や加工数も異なる。また、被加工物12は、形状が同じであっても、被加工物12に対する加工位置や加工数が異なる場合もある。被加工物12は、例えば航空機の胴体部分を形成する胴体パネルであり、胴体パネルは複数(2又は3)のスキン18等によって形成される。すなわち、1つのラインに対して、複数種類の被加工物12が混在して搬送(混流ともいう。)される。
被加工物12に対する加工は、例えば被加工物12にリベットを打ち込むことで接合する打鋲である。また、本実施形態に係る生産設備10は、搬送経路14としてレール(軌道)20が敷設され、搬送装置16として無人搬送車(Automatic Guide Vehicle、以下「AGV」という。)が用いられる。搬送装置16には、治具22が備えられ、この治具22によって被加工物12が搬送装置16に固定される。なお、この治具22は、一例として、被加工物12の種類(全長及び全幅等)が異なっても固定可能な共用治具とされている。
【0032】
さらに、生産設備10は、搬送経路14を搬送され、停止した被加工物12を加工する複数の加工装置24を備える。加工装置24は、一例として門型の自動打鋲装置(AUTOMATIC RIVETING DEVICE、以下「A/R」という。)である。加工装置24は、底部に車輪等が設けられ、自走が可能とされている。なお、加工装置24は、
図2に示されるように作業領域(以下「作業エリア」という。)30毎に配置されている。
本第1実施形態に係る生産設備10は、所謂パルスラインであり、被加工物12が加工装置24の設置位置(作業エリア)において停止し続ける停止時間が予め定められており、この停止時間が経過すると被加工物12は次の作業エリアへ搬送される。すなわち、各加工装置24は、予め定められた一定時間である停止時間内で被加工物12に加工を行う必要がある。この停止時間は、被加工物12の種類に関わらず同じである。
【0033】
また、生産設備10には、
図2にも示されるように、加工装置24毎に対応して作業エリア30が搬送経路14に予め設定されている。作業エリア30は、被加工物12の停止位置が設定されており、停止した被加工物12を加工するために各加工装置24が作業可能な範囲を示すものである。なお、ここでいう作業とは、加工と同義である。また、換言すると被加工物12は、生産設備10によって製造されるものである。
【0034】
以下の説明において作業エリア30又は加工装置24の設置位置を示すものとして、Pos.1,2,3・・・との表記も用いる(後述の
図3,4等)。このように表記する場合、末尾の番号が大きい程、被加工物12の搬送方向下流側に設置された加工装置24に対応する作業エリア30又は設置位置を示す。
【0035】
また、搬送装置16及び加工装置24は、制御装置32によって制御される。制御装置32は、作業エリア30に到達した搬送装置16の停止時間、加工装置24によって被加工物12に行う加工(加工位置)等の管理を行う。
【0036】
ここで、以下の説明では、本第1実施形態に係る被加工物12を胴体パネル12とし、搬送装置16をAGV16とし、加工装置24をA/R24として説明する。
例えば、
図1に示されるように、AGV16が備える治具22に、ロボット23によって複数のスキン18等が載置され、AGV16がレール20上を移動する。そして、各A/R24に対応する停止位置にAGV16が停止すると、A/R24は各々に対応する作業エリア30内で移動しながら、スキン18同士を打鋲することで胴体パネル12を形成する。
【0037】
そして、制御装置32は、A/R24によって胴体パネル12を打鋲する加工を行う場合に移動加工処理(胴体パネル12の製造)を行う。
本第1実施形態に係る移動加工処理は、自身に対応する作業エリア30において打鋲する胴体パネル12がないA/R24を、隣接する他の作業エリア30(後述するバッファエリア)に移動させて胴体パネル12を打鋲する処理である。
【0038】
すなわち、移動加工処理は、胴体パネル12の打鋲に使用されていないA/R24を隣接する他の作業エリア30に移動させて、この他の作業エリア30で胴体パネル12の打鋲を行わせるものであり、換言すると、A/R24が本来の作業領域を超えて移動することで、複数のA/R24が協調して胴体パネル12を打鋲する。従って、移動加工処理が行われることにより、A/R24の稼働率が向上し、複数のA/R24によって協調して打鋲を行うので、形状が異なる複数の胴体パネル12を連続して打鋲する場合でも、胴体パネル12を効率良く打鋲できる。
【0039】
次に、本第1実施形態に係る移動加工処理(以下「バッファエリア移動処理」という。)について詳細に説明する。
【0040】
本第1実施形態に係る生産設備10は、
図2に示されるように、作業エリア30に隣接して搬送経路14に予め予備作業領域(以下「バッファエリア」という。)34が設定されている。バッファエリア34は、隣接する作業エリア30に対応するA/R24が移動して胴体パネル12を打鋲する領域である。バッファエリア34は、一例として、作業エリア30に対して胴体パネル12の搬送方向下流側に隣接して設定される。
そして、バッファエリア移動処理は、バッファエリア34に隣接する作業エリア30で打鋲する胴体パネル12がなく、かつバッファエリア34で打鋲する胴体パネル12がある場合、バッファエリア34に隣接する作業エリア30に対応するA/R24をバッファエリア34に移動させて胴体パネル12を打鋲する。すなわち、バッファエリア34は作業エリア30でもあるものの、バッファエリア34のみを移動するA/R24はなく、バッファエリア34で胴体パネル12を打鋲する場合にのみ、隣接する作業エリア30からバッファエリア34にA/R24が移動してくる。
【0041】
図3,4を参照してバッファエリア34の有無によるA/R24の稼働状態及び稼働率の相違を示す。
【0042】
図3は、バッファエリア34がない場合におけるA/R24の稼働状態を示す模式図である一方、
図4は、本第1実施形態に係るバッファエリア34がある場合におけるA/R24の稼働状態を示す模式図である。
図3,4の横列が各A/R24の位置を示し、縦列(Takt1〜5又はTakt1〜4)が作業エリア30(Pos.1〜3)及びバッファエリア34で行われる工程の内容、換言すると時間経過(タクトタイムともいう。)を示す。また、
図3,4の例では、全長の異なる胴体パネル12が3種類(大、中、小)あり、大の胴体パネル12はタクトタイム3回分の作業で打鋲が完了し、中の胴体パネル12はタクトタイム2回分の作業で打鋲が完了し、小の胴体パネル12はタクトタイム1回分の作業で打鋲が完了する。すなわち、大の胴体パネル12は3台のA/R24で打鋲が完了し、中の胴体パネル12は2台のA/R24で打鋲が完了し、小の胴体パネル12は1台のA/R24で打鋲が完了する。なお、以下の説明において大の胴体パネル12を胴体パネル12_b、中の胴体パネル12を胴体パネル12_m、小の胴体パネル12を胴体パネル12_sと表記する。また、Pos.1に対応するA/R24をA/R1、Pos.2に対応するA/R24をA/R2、Pos.3に対応するA/R24をA/R3と表記する。
【0043】
図3の例では、生産設備10に3台のA/R24が備えられ、大、小、中の順で胴体パネル12が搬送経路14を搬送される。
【0044】
図3のTakt1において、Pos.1に大の胴体パネル12_bが搬送・停止され、停止時間(一定時間)内でA/R1が胴体パネル12_bの全長の3分の1を打鋲する。
【0045】
次のTakt2において、Pos.1に小の胴体パネル12_sが搬送・停止され、停止時間内にA/R1が胴体パネル12_sの打鋲を完了する。また、Pos.1からの胴体パネル12_bがPos.2に搬送・停止され、A/R2で胴体パネル12_bの次の3分の1を打鋲する。
【0046】
次のTakt3において、Pos.1に中の胴体パネル12_mが搬送・停止され、停止時間内にA/R1が胴体パネル12_mの全長の2分の1を打鋲する。また、Pos.1からの胴体パネル12_sがPos.2に搬送・停止されるものの、既に打鋲が完了しているのでA/R2は稼働しない。また、Pos.2からの胴体パネル12_bがPos.3に搬送・停止され、A/R3が胴体パネル12_bの残り3分の1を打鋲し、胴体パネル12_bの打鋲が完了する。
【0047】
次のTakt4において、Pos.1からの胴体パネル12_mがPos.2に搬送・停止され、A/R2で胴体パネル12_mの残り2分の1を打鋲し、胴体パネル12_mの打鋲が完了する。また、Pos.2からの胴体パネル12_sがPos.3に搬送・停止されるものの、既に打鋲が完了しているのでA/R3は稼働しない。
【0048】
次のTakt5において、Pos.2からの胴体パネル12_mがPos.3に搬送・停止されるものの、既に打鋲が完了しているのでA/R3は稼働しない。
【0049】
このように大、小、中の順番で胴体パネル12が搬送される
図3の例では、A/R24の稼働率は67%である。
【0050】
一方、
図4の例では、生産設備10に2台のA/R24と共にバッファエリア34が設けられ、
図3と同様に大、小、中の順で胴体パネル12が搬送経路14を搬送される。なお、バッファエリア34は、
図3におけるPos.3の位置に設定される。すなわち、上述のように、バッファエリア34のみを移動するA/R24はないため、
図4の例では、2台のA/R24は、Pos.1及びPos.2に位置し、Pos.2に位置するA/R2はバッファエリア34へも移動可能とされる。
【0051】
図4のTakt1において、Pos.1に大の胴体パネル12_bが搬送・停止され、停止時間内でA/R1が胴体パネル12_bの全長の3分の1を打鋲する。
【0052】
次のTakt2において、Pos.1に小の胴体パネル12_sが搬送・停止され、停止時間内にA/R1が胴体パネル12_sの打鋲を完了する。また、Pos.1からの胴体パネル12_bがPos.2に搬送・停止され、A/R2で胴体パネル12_bの次の3分の1を打鋲する。
【0053】
次のTakt3において、Pos.1に中の胴体パネル12_mが搬送・停止され、停止時間内にA/R1が胴体パネル12_mの全長の2分の1を打鋲する。また、Pos.1からの胴体パネル12_sがPos.2に搬送・停止されるものの、既に打鋲が完了しているのでA/R2は、Pos.2で打鋲する胴体パネル12が無い。また、Pos.2からの胴体パネル12_bがバッファエリア34に搬送・停止される。
このTakt3において、A/R2は、Pos.2で打鋲する胴体パネル12が無いため、バッファエリア34に移動して胴体パネル12_bの残り3分の1を打鋲する。これにより、Takt3で胴体パネル12_bの打鋲が完了する。
【0054】
次のTakt4において、Pos.1からの胴体パネル12_mがPos.2に搬送・停止され、A/R2で胴体パネル12_mの残り2分の1を打鋲し、胴体パネル12_mの打鋲が完了する。また、Pos.2からの胴体パネル12_sがバッファエリア34に搬送・停止されるものの、既に打鋲が完了しているのでA/R2がPos.2からバッファエリア34へ移動することはない。
【0055】
図4の例では、
図3の例よりも大、小、中の胴体パネル12の打鋲が完了するまでの工程が短く、かつA/R24の稼働率(稼働率100%)も向上するので、A/R24の台数が少なくて済む。
このように、本第1実施形態に係る生産設備10によれば、胴体パネル12の打鋲に使用されていないA/R24を隣接するバッファエリア34に移動させて、バッファエリア34で胴体パネル12の打鋲を行わせるため、A/R24の稼働率が向上し、形状が異なる複数の胴体パネル12を連続して打鋲する場合でも、胴体パネル12を効率良く打鋲できる。
【0056】
なお、
図4の例では、Pos.2において打鋲するべき胴体パネル12が無い場合に、A/R2がバッファエリア34へ移動し、胴体パネル12の打鋲を行っている。しかしながら、これに限らず、Pos.2でA/R24が胴体パネル12の打鋲が終了しても胴体パネル12の停止時間が残っており、かつバッファエリア34に打鋲を要する胴体パネル12がある場合、Pos.2のA/R24がバッファエリア34へ移動し、さらに他の胴体パネル12を打鋲してもよい。
【0057】
また、バッファエリア34は、作業エリア30間、換言するとA/R24間に設定されてもよい。
例えば、上流側の作業エリア30に対応するA/R24が故障により打鋲できなくなった場合等に、下流側のA/R24がバッファエリア34に移動して故障したA/R24の替わりに、バッファエリア34において胴体パネル12の打鋲を行ってもよい。この場合、バッファエリア34へ移動したA/R24は、バッファエリア34での打鋲が終わると、再び自身に対応する作業エリア30へ戻り、そこで胴体パネル12の打鋲を行う。
このように、バッファエリア34を作業エリア30間に設けることによって、A/R24が故障しても、故障したA/R24の替わりに隣接するA/R24がバッファエリア34で打鋲を行うので、A/R24の故障により生産設備10そのものを停止することを抑制できる。
【0058】
次に、バッファエリア34の数(以下「バッファエリア数」という。)及び複数種類の胴体パネル12の搬送順を決定する生産設備設計処理について説明する。すなわち、生産設備設計処理は、生産設備10の設計時に実行される処理であり、生産設備設計処理の結果に応じて、バッファエリア34の数や胴体パネル12の搬送順が決定される。
【0059】
図5は、本第1実施形態に係る生産設備設計処理を実行する情報処理装置50(コンピュータ)の電気的構成を示すブロック図である。
本実施形態に係る情報処理装置50は、情報処理装置50全体の動作を司るCPU(Central Processing Unit)52、各種プログラム及び各種データ等が予め記憶されたROM(Read Only Memory)54、CPU52による各種プログラムの実行時のワークエリア等として用いられるRAM(Random Access Memory)56、生産設備設計処理を実行するプログラム等、各種プログラム及び各種データを記憶する記憶手段としてのHDD(Hard Disk Drive)58を備えている。
【0060】
さらに、情報処理装置50は、キーボード及びマウス等から構成され、各種操作の入力を受け付ける操作入力部60、各種画像を表示する、例えば液晶ディスプレイ装置等の画像表示部62、通信回線を介して他の情報処理装置等と接続され、他の情報処理装置等との間で各種データの送受信を行う外部インタフェース64を備えている。
【0061】
これらCPU52、ROM54、RAM56、HDD58、操作入力部60、画像表示部62、及び外部インタフェース64は、システムバス70を介して相互に電気的に接続されている。従って、CPU52は、ROM54、RAM56、及びHDD58へのアクセス、操作入力部60に対する操作状態の把握、画像表示部62に対する画像の表示、並びに外部インタフェース64を介した他の情報処理装置等との各種データの送受信等を各々行なうことができる。
【0062】
図6は、本第1実施形態に係る生産設備設計処理を行う場合に、情報処理装置50によって実行されるプログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【0063】
ステップ100では、航空機胴体部分の一月当たりの生産台数(生産機数)、及び一台当たりに要する胴体パネル12の数が入力される。
次のステップ102では、一月当たりの胴体パネル12の生産枚数をステップ100で入力された値に基づいて算出する。
例えば、航空機胴体部分の一月当たりの生産台数が4.15台、一台当たりに要する胴体パネル12の枚数が13枚とすると、一月当たりの胴体パネル12の生産枚数(加工枚数)は54枚/月となる。
【0064】
また、ステップ104では、生産設備10の一月当たりの稼働日数、及び一日当たりの稼働時間が入力される。
次のステップ106では、生産設備10の一月当たりの稼働時間をステップ104で入力された値に基づいて算出する。
例えば、一月当たりの稼働日数が20日、一日当たりの稼働時間が20時間とすると、一月当たりの稼働時間は400時間/月となる。
【0065】
次のステップ108では、一枚の胴体パネル12の打鋲に使用できる時間(以下「生産レート」という。)を算出する。生産レートは、ステップ104で算出した一月当たりの生産枚数とステップ106で算出した一月当たりの稼働時間から算出される。
例えば、一月当たりの生産枚数が54枚、一月当たりの稼働時間が400時間であると、生産レートは444分/枚(7.4時間/枚=400/54)となる。この生産レートは、各A/R24が胴体パネル12の打鋲に使用できる時間、所謂タクトタイムである。
【0066】
次のステップ110では、生産設備10がトラブル等により停止する可能性を考慮して、ステップ108で算出した生産レートに所定値を乗算した値を算出する。上記所定値は、生産設備10の予測される稼働率であり、例えば0.85である。このため、生産レートが444分/枚とすると、ステップ108で算出される値は、377分/枚となる。
この値は、一台のA/R24が胴体パネル12を打鋲することができる実質の稼働時間を示し、これがA/Rシミュレーションに設定稼働時間として設定される。
【0067】
ステップ112では、一枚当たりの胴体パネル12の平均打鋲時間が入力される。平均打鋲時間は、予め求められるものである。
【0068】
次のステップ114では、ステップ112で入力された平均打鋲時間をステップ110で算出した設定稼働時間で除算することで、必要とするA/R24の最小台数を算出する。生産設備10に対して胴体パネル12は形状が異なるものが複数搬送されるため、胴体パネル12の平均打鋲時間に基づいてA/R24の最小台数を算出することにより、A/R24の必要台数を適切に決定できる。
例えば、平均打鋲時間が1061分/枚であり、設定稼働時間を377分/枚とすると、A/R24の最小台数は3台(2.8台=1061/377)となる。
【0069】
なお、ステップ110を行うことなく、ステップ108で算出した生産レートを用いてステップ114でA/R24の最小台数を算出してもよい。この場合、生産レートが設定稼働時間とされる。
【0070】
そして、ステップ114で算出したA/R24の最小台数の値を用いて、バッファエリア34の数及び胴体パネル12の搬送順をシミュレーションにより決定する。
【0071】
まず、ステップ200では、バッファエリア数N
Bが設定される。バッファエリア数N
Bは初期値として1(N
B=1)が設定される。バッファエリア34は、一例として、胴体パネル12の搬送方向の最下流側の作業エリア30の更に下流側に隣接して設定される。
【0072】
次のステップ202では、胴体パネル12の搬送順を設定する。胴体パネル12の搬送順は、例えば、ランダムに設定されてもよいし、予め定められた規則(ルール)に基づいて設定されてもよい。
【0073】
次のステップ204では、ステップ110で算出した設定稼働時間、ステップ114で決定したA/R24の台数、ステップ200で設定したバッファエリア数N
B、及びステップ202で設定した胴体パネル12の搬送順に基づいて、生産設備10のシミュレーション(以下「A/Rシミュレーション」という。)を行う。
このA/Rシミュレーションでは、全ての胴体パネル12への打鋲が完了するまでに、各A/R24が各胴体パネル12を打鋲する時間を算出する。
【0074】
次のステップ206では、全ての工程(Takt)においてA/R24が設定稼働時間内に胴体パネル12への打鋲が完了したか否かを判定する。すなわち、生産設備設計処理では、各A/R24の稼働時間が設定稼働時間を超えないように胴体パネル12の搬送順を決定する。
ステップ206で肯定判定となった場合は、ステップ208へ移行する。
【0075】
ステップ208では、設定したバッファエリア数N
B及び胴体パネル12の搬送順で生産ラインが成立したとして、成立したA/Rシミュレーション結果をHDD58に記憶する。そして、その後、成立したA/Rシミュレーション結果に基づいて、生産設備10が製造される。
【0076】
一方、ステップ206で否定判定となった場合は、ステップ210へ移行する。
ステップ210では、胴体パネル12の搬送順の全ての組み合わせについてA/Rシミュレーションが終了したか否かを判定し、肯定判定の場合はステップ212へ移行する。一方、否定判定の場合はステップ202へ移行し、それまでに設定した胴体パネル12の搬送順とは異なる搬送順を再設定し、A/Rシミュレーションを再び行う。
【0077】
ステップ212では、設定したバッファエリア数N
Bと胴体パネル12の搬送順では成立解が無いため、バッファエリア数N
Bを1つ増加する設定を行う(N
B=N
B+1)。なお、増加したバッファエリア34は、下流側の作業エリア30とこれに隣接する作業エリア30との間に新たに設定される。
【0078】
ステップ212による設定が完了すると、ステップ202へ移行して胴体パネル12の搬送順を設定し、ステップ204でA/Rシミュレーションを再び行う。
【0079】
図7〜9は、A/Rシミュレーションが不成立となった場合の胴体パネル12の搬送順の一例である。なお、
図7〜9の例では、A/R24が3台設定され、一つのバッファエリア34がPos.3の下流側に設定されている。
【0080】
図7は、A/R24毎に、各Taktで胴体パネル12(一例として13枚のパネル(PanelA〜M))の打鋲に要した時間(稼働時間)を示している。
図7に示されるように、Takt11では、A/R3がバッファエリア34において胴体パネルJを打鋲するが、A/Rシミュレーションにより算出された稼働時間は428分であり、実質の稼働時間(設定稼働時間)である377分を超過している。
【0081】
図8は、胴体パネルA〜M毎に必要とする打鋲時間(必要打鋲時間)と、算出された打鋲時間(実打鋲時間)、及び必要打鋲時間と実打鋲時間との差(残作業)とを示した模式図である。
図8に示されるように、胴体パネルJ以外の胴体パネル12は、全て必要打鋲時間と実打鋲時間が一致し、残作業が0であるものの、胴体パネルJは51分の残作業が生じている。
【0082】
図9は、A/R1〜A/R3毎の稼働時間を示した模式図である。A/R1及びA/R2は、A/Rシミュレーション結果の稼働時間が全て実質の稼働時間(377分)以内である。一方、A/R3のTakt11における稼働時間は、377分を超える。
【0084】
図10に示されるように、A/Rシミュレーションが成立しているため、実質の稼働時間を超える稼働時間となったA/R24のTaktはない。
【0085】
図11に示されるように、A/Rシミュレーションが成立しているため、全ての胴体パネル12は、全て必要打鋲時間と実打鋲時間が一致し、残作業が0分である。
【0086】
図12に示されるように、A/Rシミュレーションが成立しているため、全てのA/R24の稼働時間が実質の稼働時間(377分)以内である。
【0087】
図13は、各A/R24が対応する作業エリア30(Pos.1〜3)及びバッファエリア34で打鋲する胴体パネル12、及び胴体パネル12の搬送状態を示した模式図である。
図13に示されるように、Takt6においてA/R3は、Pos.3で胴体パネルIの打鋲を行った後に、バッファエリア34において胴体パネルGの打鋲を行う。同様に、Takt7〜12においてA/R3は、Pos.3で胴体パネルB,M,F,J,L,Hの打鋲を行った後に、バッファエリア34で胴体パネルI,B,M,F,J,Lの打鋲を行う。また、Takt14においてA/R3は、Pos.3で打鋲する胴体パネル12がないため、バッファエリア34で胴体パネルKを打鋲する。さらに、Takt16においてA/R3は、Pos.3で打鋲する胴体パネル12がないため、バッファエリア34で胴体パネルEを打鋲し、全ての胴体パネル12の打鋲を設定稼働時間内に完了する。
【0088】
なお、生産設備設計処理では、胴体パネル12をより効率良く形成するために、上流側のA/R24において、本来なら完了するはずの打鋲を、敢えて一部残して下流側のA/R24に行わせるようにA/Rシミュレーションを行ってもよい。
【0089】
以上説明したように、本第1実施形態に係る生産設備10は、形状が異なる複数種類が混在する複数の胴体パネル12を、予め定められた搬送経路14で搬送するAGV16、搬送経路14を搬送される胴体パネル12を打鋲する複数のA/R24、及び複数のA/R24毎に対応して搬送経路14に予め設定され、胴体パネル12を打鋲するためにA/R24が作業可能な範囲を示す作業エリア30を備える。生産設備10は、さらに、作業エリア30に隣接して搬送経路14に予め設定され、隣接する作業エリア30に対応するA/R24が移動して胴体パネル12を打鋲するバッファエリア34を備える。
そして、生産設備10の制御装置32は、バッファエリア34に隣接する作業エリア30で打鋲する胴体パネル12がなく、かつバッファエリア34で打鋲する胴体パネル12がある場合、バッファエリア34に隣接する作業エリア30に対応するA/R24をバッファエリア34に移動させて胴体パネル12を打鋲する移動加工処理を行う。
【0090】
このように、本第1実施形態に係る生産設備10は、胴体パネル12の打鋲に使用されていないA/R24を隣接するバッファエリア34に移動させて、バッファエリア34で胴体パネル12の打鋲を行わせるので、A/R24の稼働率が向上し、形状が異なる複数の胴体パネル12を連続して打鋲する場合でも、胴体パネル12を効率良く打鋲できる。
【0091】
また、A/R24が故障により打鋲できなくなった場合等に、故障したA/R24に対応する作業エリア20を新たにバッファエリア34と設定し、新たに設定したバッファエリア34に隣接するA/R24が新たに設定したバッファエリア34に移動して胴体パネル12の打鋲を行ってもよい。なお、A/R24が故障した場合は、故障したA/R24を用いない設定によって
図6に示される生産設備設計処理を行い、胴体パネル12の搬送順を再び決定する。すなわち、稼働できるA/R24の台数に見合った胴体パネルの生産レートとA/R24の台数を設定し、ステップ200〜212に係る処理(シミュレーション)を行い、胴体パネル12の搬送順を再び決定し、決定した搬送順に応じてA/R24を制御する。なお、ステップ200では、新たに設定したバッファエリア34を加味して、バッファエリア数が設定される。
【0092】
〔第2実施形態〕
以下、本発明の第2実施形態について説明する。
【0093】
なお、本第2実施形態に係る生産設備10の構成は、
図1に示す第1実施形態に係る生産設備10の構成と同様であるので説明を省略する。
【0094】
本第2実施形態に係る移動加工処理は、自身に対応する作業エリア30において打鋲する胴体パネル12がないA/R24を、隣接する他の作業エリア30(A/R24が設置されている作業エリア30)に移動させて胴体パネル12を打鋲する処理である。
【0095】
次に、第2実施形態に係る移動加工処理(以下「同時複数A/R処理」という。)について説明する。
同時複数A/R処理は、作業エリア30に複数のA/R24による打鋲が可能な胴体パネル12があり、かつこの作業エリア30に隣接する他の作業エリア30で打鋲する胴体パネル12がない場合、他の作業エリア30に対応するA/R24を、隣接する作業エリア30に移動させて複数のA/R24で胴体パネル12を打鋲する。
【0096】
複数のA/R24による打鋲が可能な胴体パネル12とは、例えば、胴体パネル12_b,12_mのように一台のA/R24で打鋲が完了しない胴体パネル12である。
また、複数のA/R24で胴体パネル12を打鋲するとは、本第2実施形態では一例として2台のA/R24で同時に打鋲することをいう。
【0097】
同時複数A/R処理によれば、
図14にも示されるように、胴体パネル12の打鋲に使用されていないA/R24を隣接する作業エリア30に移動させ、複数のA/R24が協調して一つの胴体パネル12の打鋲を行う。このため、A/R24の稼働率が向上し、形状が異なる複数の胴体パネル12を連続して打鋲する場合でも、胴体パネル12を効率良く打鋲できる。
【0098】
次に、
図15,16を参照して同時複数A/R処理の有無によるA/R24の稼働状態及び稼働率の相違を示す。
【0099】
図15は、同時複数A/R処理を行わない場合におけるA/R24の稼働状態を示す模式図である一方、
図16は、同時複数A/R処理を行う場合におけるA/R24の稼働状態を示す模式図である。
図15,16の横列が各A/R24の位置を示し、縦列(Takt1〜5又はTakt1〜4)が作業エリア30(Pos.1〜3)で行われる工程の内容、換言すると時間経過を示す。
【0100】
図15の例では、生産設備10に3台のA/R24が備えられ、小、大、中の順で胴体パネル12が搬送経路14を搬送される。
【0101】
図15のTakt1において、Pos.1に小の胴体パネル12_sが搬送・停止され、停止時間内でA/R1が胴体パネル12_sの打鋲を完了する。
【0102】
次のTakt2において、Pos.1に大の胴体パネル12_bが搬送・停止され、停止時間内でA/R1が胴体パネル12_bの全長の3分の1を打鋲する。また、Pos.1からの胴体パネル12_sがPos.2に搬送・停止されるものの、既に打鋲が完了しているのでA/R2は稼働しない。
【0103】
次のTakt3において、Pos.1に中の胴体パネル12_mが搬送・停止され、停止時間内にA/R1が胴体パネル12_mの全長の2分の1を打鋲する。また、Pos.1からの胴体パネル12_bがPos.2に搬送・停止され、A/R2で胴体パネル12_bの次の3分の1を打鋲する。また、Pos.2からの胴体パネル12_sがPos.3に搬送・停止されるものの、既に打鋲が完了しているのでA/R3は稼働しない。
【0104】
次のTakt4において、Pos.1からの胴体パネル12_mがPos.2に搬送・停止され、A/R2で胴体パネル12_mの残り2分の1を打鋲し、胴体パネル12_mの打鋲が完了する。また、Pos.2からの胴体パネル12_bがPos.3に搬送・停止され、A/R3が胴体パネル12_bの残り3分の1を打鋲し、胴体パネル12_bの打鋲が完了する。
【0105】
次のTakt5において、Pos.2からの胴体パネル12_mがPos.3に搬送・停止されるものの、既に打鋲が完了しているのでA/R3は稼働しない。
【0106】
このように小、大、中の順番で胴体パネル12が搬送される
図15の例では、A/R24の稼働率は67%である。
【0107】
一方、
図16の例では、2台のA/R24が同時複数A/R処理を行う場合であり、
図15と同様に小、大、中の順で胴体パネル12が搬送経路14を搬送される。
【0108】
図16のTakt1において、Pos.1に小の胴体パネル12_sが搬送・停止され、停止時間内でA/R1が胴体パネル12_sの打鋲を完了する。
【0109】
次のTakt2において、Pos.1に大の胴体パネル12_bが搬送・停止され、停止時間内でA/R1が胴体パネル12_bの搬送方向上流側の3分の1を打鋲する。また、Pos.1からの胴体パネル12_sがPos.2に搬送・停止されるものの、既に打鋲が完了しているので、A/R2は、Pos.2で打鋲する胴体パネル12が無い。
A/R2は、Pos.2で打鋲する胴体パネル12が無いため、Pos.1に移動し、胴体パネル12_bの搬送方向下流側の3分の1を打鋲する。
【0110】
次のTakt3において、Pos.1に中の胴体パネル12_mが搬送・停止され、停止時間内にA/R1が胴体パネル12_mの全長の2分の1を打鋲する。また、Pos.1からの胴体パネル12_bがPos.2に搬送・停止され、A/R2が胴体パネル12_bの残り3分の1(全長の中央部分3分の1)を打鋲し、胴体パネル12_bの打鋲が完了する。
【0111】
次のTakt4において、Pos.1からの胴体パネル12_mがPos.2に搬送・停止され、A/R2で胴体パネル12_mの残り2分の1を打鋲し、胴体パネル12_mの打鋲が完了する。
【0112】
図16の例では、
図15の例よりも小、大、中の胴体パネル12の打鋲が完了するまでの工程が短く、かつA/R24の稼働率も向上する(稼働率100%)のでA/R24の台数も少なくて済む。
このように、本第2実施形態に係る生産設備10によれば、複数のA/R24によって一つの胴体パネル12の打鋲を行わせるので、A/R24の稼働率が向上し、形状が異なる複数の胴体パネル12を連続して打鋲する場合でも、胴体パネル12を効率良く打鋲できる。
【0113】
図17は、本第2実施形態に係る生産設備設計処理を行う場合に、情報処理装置50によって実行されるプログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
図17におけるステップ100〜114については
図6と同様なので、その説明を省略する。
なお、第2実施形態に係る生産設備設計処理は、複数種類の胴体パネル12の搬送順と共に、他の作業エリア30に移動して胴体パネル12の打鋲を行うA/R24の台数(以下「協調台数」という。)を決定する。
【0114】
まず、ステップ300では、協調台数N
ARが設定される。協調台数N
ARは初期値として1(N
B=1)が設定される。他の作業エリア30に移動するA/R24(以下「協調A/R」という。)は、一例として、胴体パネル12の搬送方向の最下流側の作業エリア30に対応するA/R24とされる。
【0115】
次のステップ302では、胴体パネル12の搬送順を設定する。
【0116】
次のステップ304では、ステップ110で算出した設定稼働時間、ステップ114で決定したA/R24の台数、ステップ300で設定した協調台数N
AR、及びステップ302で設定した胴体パネル12の搬送順に基づいて、A/Rシミュレーションを行う。
【0117】
次のステップ306では、全ての工程(Takt)においてA/R24が設定稼働時間内に胴体パネル12への打鋲が完了したか否かを判定する。ステップ306で肯定判定となった場合は、ステップ308へ移行する。
【0118】
ステップ308では、設定した協調台数N
AR及び胴体パネル12の搬送順で生産ラインが成立したとして、成立したA/Rシミュレーション結果をHDD58に記憶する。
【0119】
一方、ステップ306で否定判定となった場合は、ステップ310へ移行する。
ステップ310では、胴体パネル12の搬送順の全ての組み合わせについてA/Rシミュレーションが終了したか否かを判定し、肯定判定の場合はステップ312へ移行する。一方、否定判定の場合はステップ302へ移行し、それまでに設定した胴体パネル12の搬送順とは異なる搬送順を再設定し、A/Rシミュレーションを再び行う。
【0120】
ステップ312では、設定した協調台数N
ARと胴体パネル12の搬送順では成立解が無いため、協調台数N
ARを1つ増加する設定を行う(N
AR=N
AR+1)。なお、協調台数N
ARの増加に応じて、既に設定されている協調A/Rの上流側のA/R24が協調A/Rとして新たに設定される。
【0121】
ステップ312による設定が完了すると、ステップ302へ移行して胴体パネル12の搬送順を再び設定し、A/Rシミュレーションを再び行う。
【0122】
図18〜20は、A/Rシミュレーションが不成立となった場合の胴体パネル12の搬送順の一例である。なお、
図18〜20の例では、A/R24が3台設定され、A/R2がPos.1へ移動可能とされ、A/R3がPos.2へ移動可能とされている。
【0123】
図18は、A/R24毎に、各Taktで胴体パネル12(一例として13枚のパネル(PanelA〜M))の打鋲に要した時間(稼働時間)を示している。
図18に示されるように、Takt9では、A/R3がPos.3において胴体パネルGを打鋲するが、A/Rシミュレーションにより算出された稼働時間は402分であり、実質の稼働時間(設定稼働時間)である377分を超過している。
【0124】
図19は、胴体パネルA〜M毎に必要とする打鋲時間(必要打鋲時間)と、算出された打鋲時間(実打鋲時間)、及び必要打鋲時間と実打鋲時間との差(残作業)とを示した模式図である。
図19に示されるように、胴体パネルG以外の胴体パネル12は、全て必要打鋲時間と実打鋲時間が一致し、残作業が0であるものの、胴体パネルGは25分の残作業が生じている。
【0125】
図20は、A/R1〜A/R3毎の稼働時間を示した模式図である。A/R1及びA/R2は、A/Rシミュレーション結果の稼働時間が全て実質の稼働時間(377分)以内である。一方、A/R3のTakt9における稼働時間は、377分を超える。
【0127】
図21に示されるように、A/Rシミュレーションが成立しているため、実質の稼働時間を超える稼働時間となったA/R24のTaktはない。
【0128】
図22に示されるように、A/Rシミュレーションが成立しているため、全ての胴体パネル12は、全て必要打鋲時間と実打鋲時間が一致し、残作業が0分である。
【0129】
図23に示されるように、A/Rシミュレーションが成立しているため、全てのA/R24の稼働時間が実質の稼働時間(377分)以内である。
【0130】
以上説明したように、本第2実施形態に係る同時複数A/R処理は、胴体パネル12の打鋲に使用されていないA/R24を隣接する他の作業エリア30に移動させ、複数のA/R24が協調して一つの胴体パネル12の打鋲を行う。このため、同時複数A/R処理によれば、A/R24の稼働率が向上し、形状が異なる複数の胴体パネル12を連続して打鋲する場合でも、胴体パネル12を効率良く打鋲できる。
【0131】
また、A/R24が故障により打鋲できなくなった場合等に、隣接するA/R24が故障したA/R24に対応する作業エリア30に移動し、故障したA/R24の替わりに胴体パネル12の打鋲を行ってもよい。この場合、移動したA/R24は、移動先の作業エリア30での打鋲が終わると、再び自身に対応する作業エリア30へ戻り、そこで胴体パネル12の打鋲を行う。なお、A/R24が故障した場合は、故障したA/R24を用いない設定によって
図17に示される生産設備設計処理を行い、胴体パネル12の搬送順を再び決定する。すなわち、稼働できるA/R24の台数に見合った胴体パネルの生産レートとA/R24の台数を設定し、ステップ300〜312に係る処理(シミュレーション)を行い、胴体パネル12の搬送順を再び決定し、決定した搬送順に応じてA/R24を制御する。
【0132】
以上、本発明を、上記各実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記各実施形態に多様な変更又は改良を加えることができ、該変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。また、上記各実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【0133】
例えば、上記各実施形態では、被加工物12を航空機の胴体パネル12とし、搬送装置16をAGV16とし、加工装置24をA/R24とする形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、他のものとする形態としてもよい。また、複数の加工装置24は、全てが同じ種類でなく、異なる種類の加工装置24が混在していてもよいし、移動加工処理に寄与しない加工装置24が含まれてもよいし、加工装置24と加工装置24との間に、人間の手作業による加工が含まれてもよい。
【0134】
また、上記各実施形態で説明したプログラムの処理の流れも一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりしてもよい。