(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6563312
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】ガスタービンエンジンの抽気構造
(51)【国際特許分類】
F01D 17/00 20060101AFI20190808BHJP
F02C 9/18 20060101ALI20190808BHJP
F01D 25/14 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
F01D17/00 G
F02C9/18
F01D25/14
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-217813(P2015-217813)
(22)【出願日】2015年11月5日
(65)【公開番号】特開2017-89436(P2017-89436A)
(43)【公開日】2017年5月25日
【審査請求日】2018年8月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100086793
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅士
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(72)【発明者】
【氏名】寺内 晃司
(72)【発明者】
【氏名】上村 大助
(72)【発明者】
【氏名】池口 拓也
【審査官】
高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2011/142298(WO,A1)
【文献】
特開2004−3492(JP,A)
【文献】
特開2004−76726(JP,A)
【文献】
特開2010−59850(JP,A)
【文献】
特表2013−531159(JP,A)
【文献】
特表2013−520613(JP,A)
【文献】
特開平10−26353(JP,A)
【文献】
特開2005−171795(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 17/00
F02C 9/18
F01D 25/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンエンジンにおいて、圧縮機からの圧縮ガスを受け入れて燃焼器へ供給するチャンバから圧縮ガスを抽気する構造であって、
前記ガスタービンエンジンのタービンの外周を覆うタービンケーシングと、
前記タービンケーシングを囲繞し、このタービンケーシングとの間に前記チャンバに連通する抽気空間を形成するエンジンハウジングと、
前記エンジンハウジングに設けられて、前記抽気空間内の圧縮ガスを前記エンジンハウジングの外部へ導出する抽気ダクトと、
前記抽気空間における、前記抽気ダクトよりも上流側に配置されて前記抽気空間を前記チャンバから区画する環状の仕切り部材であって、この仕切り部材の上流側と下流側とを連通させる複数の連通孔を有する仕切り部材と、
を備える抽気構造。
【請求項2】
請求項1に記載の抽気構造において、前記仕切り部材は、軸心方向に沿った縦断面視で、径方向に延びる胴部と、この胴部の径方向両端からそれぞれ軸心方向に延びる外径側脚部および内径側脚部とを有し、前記胴部に前記複数の連通孔が形成されている抽気構造。
【請求項3】
請求項2に記載の抽気構造において、前記仕切り部材の前記外径側脚部および内径側脚部の少なくとも一方に、軸心方向に延びる複数のスリットが形成されている抽気構造。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の抽気構造において、前記仕切り部材が、前記タービンを前記エンジンハウジングに支持するタービン支持部材に取り付けられている抽気構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービンエンジンの圧縮機で圧縮されたガスをエンジン外部へ抽気するための構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンエンジンにおいて、一般に、圧縮機から燃焼器へ向かう圧縮空気をエンジンの外部へ抽気する抽気構造を設けることにより、部分負荷運転時にも燃焼温度を維持して、燃焼安定性を確保し、かつNOxのような大気汚染物質の排出を抑制することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/0011779号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
もっとも、ガスタービンエンジンにこのような抽気構造を設ける場合、燃焼器における燃焼を周方向に均一にし、安定した燃焼を実現するため、圧縮機から燃焼器へ向かう圧縮空気が周方向に偏って流れることを防止する必要がある。このため、通常は、エンジンのケーシングの外周部に、周方向に多数配置した抽気ダクトと、これら抽気ダクトで抽気された空気をまとめるマニホールドとを設ける必要があり、エンジン全体が大型化する。
【0005】
本発明の目的は、上記の課題を解決するために、ガスタービンエンジン内の空間や構成部材を利用してエンジン全体の大型化を回避しながら、エンジン内のガスの偏流を抑制して安定的な燃焼を確保できるガスタービンエンジンの抽気構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した目的を達成するために、本発明に係る抽気構造は、ガスタービンエンジンにおいて、圧縮機からの圧縮ガスを受け入れて燃焼器へ供給するチャンバから圧縮ガスを抽気する構造であって、前記ガスタービンエンジンのタービンの外周を覆うタービンケーシングと、前記タービンケーシング
を囲繞し、このタービンケーシングとの間に前記チャンバに連通する抽気空間を形成するエンジンハウジングと、前記エンジンハウジングに設けられて、前記抽気空間内の圧縮ガスを前記エンジンハウジングの外部へ導出する抽気ダクトと、前記抽気空間における、前記抽気ダクトよりも上流側に配置されて前記抽気空間を前記チャンバから区画する環状の仕切り部材であって、この仕切り部材の上流側と下流側とを連通させる複数の連通孔を有する仕切り部材と、を備えている。
【0007】
この構成によれば、チャンバ内の圧縮ガスは、仕切り部材に衝突して周方向に流れた後、仕切り部材の複数の連通孔から下流側へ抽気される。したがって、圧縮機から燃焼器へ向かう圧縮空気が周方向に偏って流れることが防止される。しかも、このような効果が、抽気空間をチャンバから区画する仕切り部材を設けることによって得られるので、ガスタービンエンジン全体の大型化を回避しながら、抽気時におけるエンジン内での圧縮ガスの周方向の偏流が抑制され、燃焼器において安定的な燃焼を確保することが可能となる。
【0008】
本発明の一実施形態において、前記仕切り部材に弾性を持たせる構造として、例えば、前記仕切り部材が、軸心方向に沿った縦断面視で、径方向に延びる胴部と、この胴部の径方向両端からそれぞれ軸心方向に延びる外径側脚部および内径側脚部とを有し、前記胴部に前記複数の連通孔が形成されていてもよい。さらには、前記仕切り部材の前記外径側脚部および内径側脚部の少なくとも一方に、複数の軸心方向のスリットが形成されていてもよい。この構成によれば、簡単な構造によって仕切り部材に径方向の弾性を持たせることができ、仕切り部材の連通孔以外の部分から圧縮ガスが下流側へ漏れることを効果的に防止できる。
【0009】
本発明の一実施形態において、前記仕切り部材が、
前記タービンを前記エンジンハウジングに支持するタービン支持部材に取り付けられていてもよい。この構成によれば、ガスタービンエンジンの既存の構成部品を有効に利用することにより、仕切り部材を設けることによる支持部材等の部品点数の増加を抑制することができる。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明に係るガスタービンエンジンの抽気構造によれば、エンジン内の空間や構成部材を利用してエンジン全体の大型化を回避しながら、エンジン内のガスの偏流を防止して安定的な燃焼を確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る抽気構造を備えるガスタービンエンジンの概略構成を示す部分破断側面図である。
【
図2】
図1のガスタービンエンジンの抽気構造周辺部分を拡大して示す縦断面図である。
【
図3】
図2のガスタービンエンジンの抽気構造に使用される仕切り部材を示す正面図である。
【
図4】
図2のガスタービンエンジンの抽気構造に使用される仕切り部材を後方から見た斜視図である。
【
図5】
図2のガスタービンエンジンの抽気構造に使用される仕切り部材の周辺部分を拡大して示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る実施形態を図面に従って説明するが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係る抽気構造を備えたガスタービンエンジン(以下、単にガスタービンと称する。)GEの一部を破断した側面図である。ガスタービンGEは、外部から導入した空気Aを圧縮機1で圧縮して燃焼器3に導き、燃焼器3内で燃料Fを圧縮空気CAとともに燃焼させ、得られた高温高圧の燃焼ガスGによりタービン5を駆動する。本実施形態では、複数のキャン型の燃焼器3が、ガスタービンGEの周方向に沿って等間隔に配置されている。なお、以下の説明において、ガスタービンGEの軸心C方向における圧縮機1側を「前方」と呼び、タービン5側を「後方」と呼ぶ場合がある。実施形態を構成する要素の名称に付する「前」,「後」も同様の意味である。また、以下の説明において、「軸心方向」,「周方向」および「径方向」とは、特に示した場合を除き、ガスタービンGEの軸心C方向,周方向および径方向を意味する。
【0014】
本実施形態では、圧縮機1として軸流型のものを用いている。この軸流型の圧縮機1で圧縮された圧縮空気CAは、圧縮機1の下流端部に接続するディフューザ9を通過した後、チャンバ11に流入する。チャンバ11は、ディフューザ9を介して圧縮機出口に連通する、燃焼器3の周囲に形成された空間であり、圧縮機1からの圧縮空気CAを受け入れて燃焼器3へ供給する。燃焼器3で発生した高温高圧の燃焼ガスGは、タービン5内に流入する。タービン5を駆動した燃焼ガスGは、タービン5の下流(後方)に接続された排気通路15からガスタービンGEの外部へ排出される。
【0015】
図2に示すように、タービン5は、多数の静翼19と、ガスタービンGEの回転部分を構成するロータ21の外周面に配置された多数の動翼23とを有している。タービン5の入口を形成する前端の第1段目の静翼19(以下、特に「第1段静翼19A」と呼ぶ場合がある。)以降の静翼19および動翼23の外周、つまりタービン5の外周がタービンケーシング25によって覆われている。本実施形態では、タービン5の外周を覆うタービンケーシング25がエンジンハウジング17の内側に連結および固定されており、タービンケーシング25に各静翼19が取付けられている。ガスタービンGE全体のハウジングであるエンジンハウジング17によって、タービンケーシング25が囲繞されている。本明細書では、エンジンハウジング17のうち、タービン5の外方に位置する部分をタービンハウジング部31と呼ぶ。本実施形態では、タービンハウジング部31の内周壁面31aは軸心方向にほぼ平行に延びる平坦な円筒面として形成されている。
【0016】
タービンケーシング25は、その前端から径方向外方に突設された連結フランジ部35を有している。第1段静翼19Aは、その前端部19Aaが、連結フランジ部35に周方向および径方向に位置決めされている。また、第1段静翼19Aは、エンジンハウジング17の内周面に設けられたフランジ(図示せず)に固定されたサポートリング41と連結フランジ部35によって軸心方向に位置決めされている。
【0017】
図2に示すように、タービンケーシング25は、後方に向かって拡径する形状であり、その後端部の最後端に、径方向外方に突設された後端フランジ45を有している。タービンケーシング25は、この後端フランジ45を介して、エンジンハウジング17のタービンハウジング部31の後端部31bに支持されている。各静翼19は、タービンケーシング25の内周部に設けられた係合機構に係合することにより、タービンケーシング25に支持されている。なお、タービンケーシング25がタービン5の静翼19を支持する構造は、上記で説明した例に限定されない。
【0018】
エンジンハウジング17のタービンハウジング部31と、その内側のタービンケーシング25との間に、チャンバ11に連通する抽気空間51が形成されている。抽気空間51が、ガスタービンGE内における、チャンバ11から圧縮空気CAを抽気する抽気路を形成する。エンジンハウジング17のタービンハウジング部31には、抽気空間51内の空気をエンジンハウジング17の外部へ導出する抽気ダクト53が設けられている。本実施形態では、抽気ダクト53は、タービンハウジング部31の周方向の1箇所のみに設けられている。また、図示の例では、抽気ダクト53は、タービンハウジング部31の、第3段静翼19に対応する軸心方向位置に設けられているが、抽気ダクト53の軸心方向位置はこの例に限定されない。
【0019】
抽気空間51は、エンジンハウジング17のタービンハウジング部31と、その内側のタービンケーシング25との間の空間において抽気ダクト53よりも前方に配置された、環状の仕切り部材55によってチャンバ11から区画されている。すなわち、仕切り部材55は、チャンバ11から圧縮空気CAを抽気する抽気路における、抽気ダクト53よりも上流側に配置されている。仕切り部材55によって、チャンバ11と抽気空間51とが軸心方向に区画され、仕切り部材55の下流側(後方)の抽気空間51から、抽気ダクト53へ圧縮空気CAが導出される。
【0020】
本実施形態における仕切り部材55は、より具体的には、軸心方向に沿った縦断面視で、径方向に延びる胴部61と、この胴部61の径方向両端からそれぞれ軸心方向に延びる外径側脚部63および内径側脚部65とを有している。換言すれば、仕切り部材55は、軸心方向に沿った縦断面視で、U字形状またはJ字形状に形成されている。本実施形態では、仕切り部材55は金属製の板状部材を曲げ加工することにより形成されており、胴部61の径方向両端部は、後方に向かって湾曲している。仕切り部材55において、上記の構造を有する外径側脚部63および内径側脚部65を設けたことにより、仕切り部材55は径方向に弾性を有している。
【0021】
図3に示すように、仕切り部材55には、この仕切り部材55の上流側と下流側とを連通させる複数の連通孔67が形成されている。本実施形態に係る仕切り部材55において、複数の連通孔67は、胴部61に形成されている。図示の例では、各連通孔67は円形孔として形成されているが、連通孔67の形状は円形に限定されない。また、複数の連通孔67は周方向に等間隔に配置されている。
【0022】
図4に示すように、仕切り部材55の外径側脚部63および内径側脚部65には、それぞれ、軸心方向の切込みであるスリット69が複数形成されている。図示の例では、外径側脚部63において、連通孔67と同数のスリット69が、周方向に互いに等間隔に形成されている。さらに、図示の例では、各スリット69が胴部61の連通孔67まで延びており、各連通孔67に開口している。一方、内径側脚部65において、外径側脚部63の隣合うスリット69,69の中間の各周方向位置に、1つずつスリット69が形成されている。
【0023】
スリット69は省略してもよいが、仕切り部材55の外径側脚部63および内径側脚部65の少なくとも一方の脚部にスリット69を形成することにより、仕切り部材55の径方向の弾性を大きくすることができる。本実施形態では、外径側脚部63および内径側脚部65のいずれにもスリット69を形成したが、仕切り部材55の外径側脚部63および内径側脚部65の一方のみにスリット69を形成してもよい。また、スリット69の数および配置は、図示の例に限定されず、適宜設定してよい。
【0024】
仕切り部材55に径方向の弾性を持たせることにより、仕切り部材55の連通孔67以外の部分から圧縮空気CAが下流側へ漏れることが防止され、圧縮空気CAの周方向の偏流を確実に抑制することができる。特に、
図2に示すように、仕切り部材55の内径側部分(本実施形態では内径側脚部65)が、高温となるタービン5の外周部に配置されているので、大きな熱膨張が生じる。このような環境においても、仕切り部材55が弾性を有することにより、仕切り部材55とエンジンハウジング17およびタービンケーシング25との接触が確保される。なお、仕切り部材55に径方向の弾性を持たせる構造は、上記の例に限定されない。
【0025】
仕切り部材55の外径側脚部63はエンジンハウジング17に接触しており、内径側脚部65がタービン支持部材であるタービンケーシング25に接触している。また、仕切り部材55の胴部61が、タービンケーシング25の連結フランジ部35に着脱自在に締結されている。
【0026】
図5に示すように、エンジンハウジング17のタービンハウジング部31の内周面には、径方向内側に突出する環状のハウジング嵌合面部71が設けられている。ハウジング嵌合面部71の内周面は、縦断面視で軸心方向にほぼ平行に形成されている。一方、仕切り部材55の外径側脚部63の外周面には、径方向外側に突出する環状の外径側嵌合面部73が設けられている。外径側嵌合面部73の外周面は、縦断面視で軸心方向にほぼ平行に形成されている。
【0027】
また、タービンケーシング25の外周面には、径方向外側に突出する環状のタービンケーシング嵌合面部75が設けられている。タービンケーシング嵌合面部75の外周面は、縦断面視で軸心方向にほぼ平行に形成されている。一方、仕切り部材55の内径側脚部65の内周面には、径方向内側に突出する環状の内径側嵌合面部77が設けられている。内径側嵌合面部77の内周面は、縦断面視で軸心方向にほぼ平行に形成されている。これら各部材に設けられた嵌合面部71〜77の全部または一部は省略してもよいが、嵌合面部71〜77を設けることにより、仕切り部材55とエンジンハウジング17およびタービンケーシング25との嵌合部分に隙間が生じることが、より確実に防止される。
【0028】
図3に示すように、仕切り部材55の胴部61には、周方向の複数箇所に連結部材を挿通させる挿通孔79が形成されている。
図5に示すように、仕切り部材55の胴部61は、周方向の複数箇所において、ボルトB3のような連結部材を胴部61の挿通孔79に挿通し、タービンケーシング25の連結フランジ部35に締結することにより、タービンケーシング25に取り付けられている。
【0029】
なお、本実施形態では、上述のように、仕切り部材55の胴部61および内径側脚部65がタービンケーシング25の第1段静翼19Aを覆う前端部に支持されている例を説明したが、仕切り部材55の支持構造は、これに限定されない。例えば、
図5に二点鎖線で示すように、仕切り部材55Aを若干後方に配置し、タービンケーシング25の第1段動翼23を覆う部分(またはこれより後方の部分)の外周面にフランジ(図示せず)を設けて、このフランジに仕切り部材55の胴部61をボルトによって締結することにより、仕切り部材55をタービンケーシング25に支持する構造としてもよい。また、仕切り部材55におけるタービン支持部材によって支持される部分が胴部61を含むことにより、安定的な支持が可能となるが、仕切り部材55は、必ずしも胴部61を介して支持される必要はなく、例えば内径側脚部65のみを介して支持されていてもよい。いずれの場合にも、仕切り部材55が、タービン5をエンジンハウジング17に支持するタービン支持部材として機能しているタービンケーシング25に取り付けられているので、ガスタービンGEの既存の構成部品を有効に利用することにより、仕切り部材55を設けることによる部品点数の増加を抑制することができる。
【0030】
本実施形態に係るガスタービンエンジンの抽気構造によれば、
図2に示すチャンバ11内の圧縮空気CAは、仕切り部材55に衝突して周方向に流れた後、仕切り部材55の複数の連通孔67から、仕切り部材55の下流側に形成された抽気空間51に流入する。その結果、チャンバ11内における圧縮空気CAの周方向の偏流が抑制されて、速度分布が均一化される。したがって、圧縮機1から燃焼器3へ向かう圧縮空気CAが周方向に偏って流れることが防止される。しかも、このような効果が、抽気空間51をチャンバ11から区画する仕切り部材55を設けることによって得られるので、ガスタービンエンジン全体の大型化を回避しながら、エンジン内での圧縮空気CAの周方向の偏流が抑制され、燃焼器3において安定的な燃焼を確保することが可能となる。
【0031】
抽気空間51内の圧縮空気CAは、抽気空間51から抽気ダクト53を通ってガスタービンGEの外部へ抽気される。上記の構成を有する仕切り部材55を設けることにより、複数の抽気ダクトを周方向に等間隔に設けなくても、ガスタービンGE内での圧縮空気CAの偏流が効果的に抑制されるので、本実施形態では、エンジンハウジング17に1つの抽気ダクト53のみを設けて、ガスタービンエンジン全体の大型化を抑制した例を示した。もっとも、エンジンハウジング17に設ける抽気ダクトの数は1つに限定されない。
【0032】
なお、本実施形態では、上述のように、仕切り部材55において複数の連通孔67を周方向に等間隔に配置しているが、例えば、複数の連通孔67を、抽気ダクト53の近傍となる周方向領域では連通孔67間の間隔が大きく、抽気ダクト53からより離れた周方向領域では連通孔67間の間隔が小さくなるように配置してもよい。また、本実施形態では、仕切り部材の複数の連通孔67の開口面積を同一としているが、連通孔67によって開口面積を異ならせ、例えば、抽気ダクト53の近傍となる周方向領域では連通孔67の開口面積を小さく、抽気ダクト53からより離れた周方向領域では連通孔67の開口面積を大きくしてもよい。このように構成することにより、仕切り部材51の上流側において圧縮空気CAの周方向の偏流がさらに効果的に抑制される。
【0033】
また、本実施形態では、抽気構造が適用されるガスタービンエンジンとして、空気を作動ガスとするガスタービンエンジンを例として説明したが、メタンガスのような空気以外の作動ガスを使用するガスタービンエンジンであってもよい。
【0034】
以上のとおり、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。したがって、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0035】
1 圧縮機
3 燃焼器
5 タービン
11 チャンバ
17 エンジンハウジング
25 タービンケーシング
51 抽気空間
53 抽気ダクト
55 仕切り部材
67 連通孔
69 スリット
CA 圧縮空気(圧縮ガス)
GE ガスタービンエンジン