特許第6563316号(P6563316)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6563316
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】グラフト共重合体
(51)【国際特許分類】
   C08F 255/00 20060101AFI20190808BHJP
【FI】
   C08F255/00
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-225739(P2015-225739)
(22)【出願日】2015年11月18日
(65)【公開番号】特開2016-108550(P2016-108550A)
(43)【公開日】2016年6月20日
【審査請求日】2018年4月23日
(31)【優先権主張番号】特願2014-242396(P2014-242396)
(32)【優先日】2014年11月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】399034220
【氏名又は名称】日本エイアンドエル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石垣 和紘
(72)【発明者】
【氏名】小山 晴正
(72)【発明者】
【氏名】牧野 誠
【審査官】 大久保 智之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−219558(JP,A)
【文献】 国際公開第1996/026230(WO,A1)
【文献】 国際公開第1997/002302(WO,A1)
【文献】 特開昭60−026072(JP,A)
【文献】 特開平10−036456(JP,A)
【文献】 特開昭59−048157(JP,A)
【文献】 特開2008−144091(JP,A)
【文献】 特開2011−136548(JP,A)
【文献】 特開2003−261721(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/126231(WO,A1)
【文献】 高分子,1997年,46巻11月号,833頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F255
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ショア硬度が40A〜85Aのオレフィン系重合体(a)30〜80重量部の存在下に芳香族ビニル系単量体(b)及び、芳香族ビニル系単量体(b)と共重合可能な他のビニル系単量体(c)の合計20〜70重量部((a)、(b)及び(c)の合計は100重量部)をグラフト重合して得られるグラフト共重合体であり、
オレフィン系重合体(a)の数平均換算粒子径が500〜4500μmであり、
他のビニル系単量体(c)としてシアン化ビニル系単量体を含み、
グラフト率が10重量%以上であるグラフト共重合体
【請求項2】
前記グラフト共重合体中のシアン化ビニル系単量体に基づく単量体単位の含有量が1〜70重量%である請求項1に記載のグラフト共重合体。
【請求項3】
オレフィン系重合体(a)40〜80重量部の存在下に芳香族ビニル系単量体(b)及び他のビニル系単量体(c)の合計20〜60重量部((a)、(b)及び(c)の合計は100重量部)をグラフト重合して得られる請求項1又は2に記載のグラフト共重合体。
【請求項4】
ショア硬度が35A〜95Aである請求項1〜3のいずれかに記載のグラフト共重合体。
【請求項5】
オレフィン系重合体(a)が、エチレンプロピレン系共重合体を含むことを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のグラフト共重合体。
【請求項6】
請求項1〜のいずれかに記載のグラフト共重合体とスチレン系樹脂との二層成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラフト共重合体であって、軟質かつスチレン系樹脂との接着強度に優れたグラフト共重合体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ABS樹脂を代表とするスチレン系樹脂は、優れた成形加工性と機械的特性バランスを有し、塗装性や電気絶縁性に優れていることから、車両内外装部品や建材、電気・電子機器、OA機器などの広範な分野で用いられている。近年では、樹脂製品に高級感を付与する目的で、皮革のような手触り感や風合いを実現するために、スチレン系樹脂で成形された表面に軟質系樹脂層を接着する技術が求められている。スチレン系樹脂に接着可能な軟質系樹脂として軟質PVC樹脂が挙げられるが、可塑剤を多量に添加する必要があり、可塑剤がブリードする問題があるとともに、焼却時にダイオキシンが発生する恐れがある等の環境問題がある。軟質PVC樹脂以外の軟質系樹脂として、例えばスチレン系エラストマー等のように軟質成分としてイソプレン、ブタジエン等のセグメントを持つ樹脂が提案されているが、ABS樹脂との接着強度が劣るという欠点があった。
【0003】
このような問題を解決する手段として、特許文献1では、オレフィン系樹脂、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、改質オレフィン系重合体および粘着付与剤を含有するオレフィン系樹脂組成物が開示されている。また、特許文献2では、ポリエステルブロック共重合体に特定のゴム質重合体を配合することにより、スチレン系樹脂等との熱接着性にも優れた熱可塑性エラストマー組成物およびそれを使用した成形体が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−309980号公報
【0005】
【特許文献2】特開2008−144091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の方法では、スチレン系樹脂等である基材との接着強度が必ずしも十分とは言えず、また、熱可塑性エラストマー組成物のショア硬度が高く、軟質性が不十分であった。よって、軟質かつスチレン系樹脂等との接着性に優れる材料が望まれている。
【0007】
本発明は、軟質かつスチレン系樹脂等との接着強度に優れる材料を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決するために鋭意検討した結果、軟質かつスチレン系樹脂等との接着性に優れる材料として、特定のオレフィン系重合体に特定のモノマーをグラフト重合することによって、課題を解決できることを見出し、本発明に至った。
【0009】
すなわち、本発明は、ショア硬度が30A以上95A未満のオレフィン系重合体(a)30〜80重量部の存在下に芳香族ビニル系単量体(b)及び、芳香族ビニル系単量体(b)と共重合可能な他のビニル系単量体(c)の合計20〜70重量部((a)、(b)及び(c)の合計は100重量部)をグラフト重合して得られるグラフト共重合体である。
【発明の効果】
【0010】
本発明のグラフト共重合体は、軟質かつスチレン系樹脂等との熱接着性に優れる材料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のグラフト共重合体につき詳細に説明する。
本発明のグラフト共重合体は、ショア硬度が30A以上95A未満のオレフィン系重合体(a)30〜80重量部の存在下に芳香族ビニル系単量体(b)及び、芳香族ビニル系単量体(b)と共重合可能な他のビニル系単量体(c)の合計20〜70重量部((a)、(b)及び(c)の合計は100重量部)をグラフト重合して得られるグラフト共重合体である。言い換えると、本発明のグラフト共重合体は、ショア硬度が30A以上95A未満のオレフィン系重合体(a)30〜80重量部と、芳香族ビニル系単量体(b)及び、芳香族ビニル系単量体(b)と共重合可能な他のビニル系単量体(c)の合計20〜70重量部((a)、(b)及び(c)の合計は100重量部)とがグラフト重合したグラフト共重合体である。
【0012】
本発明のグラフト共重合体に用いられるオレフィン系重合体(a)としては、例えば、エチレン系重合体、プロピレン系重合体、ブテン系重合体、4−メチル−1−ペンテン系重合体、エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体、これらの変性物、けん化物、水添物等が挙げられ、1種又は2種以上用いることができる。
【0013】
エチレン系重合体としては、エチレン単独重合体、エチレン・α−オレフィン共重合体、エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸エステル共重合体、エチレン・環状オレフィン共重合体等、エチレンに基づく単量体単位が主単位(通常、重合体を構成する全単量体単位を100モル%として、エチレンに基づく単量体単位の含有量が50モル%以上)の重合体を挙げることができる。
【0014】
エチレン単独重合体としてはポリエチレンが挙げられる。また、エチレン・α−オレフィン共重合体のα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ノネン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどが挙げられ、1種又は2種以上用いることができる。
【0015】
エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体の非共役ジエンとしては、ビニリデンノルボルネン、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン等が挙げられ、1種又は2種以上用いることができる。
【0016】
プロピレン系重合体としては、プロピレン単独重合体、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体、プロピレン・エチレン・1−ブテン共重合体、プロピレン・環状オレフィン共重合体など、プロピレンに基づく単量体単位が主単位(通常、重合体を構成する全単量体単位を100モル%として、プロピレンに基づく単量体単位の含有量が50モル%以上)の重合体をあげることができる。
【0017】
プロピレン単独重合体としては、ポリプロピレンが挙げられる。また、プロピレン・α−オレフィン共重合体のα−オレフィンとしては、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン等、炭素数4〜20のα−オレフィンが挙げられ、1種又は2種以上用いることができる。
【0018】
オレフィン系重合体(a)としては、軟質性の観点から、エチレンプロピレン系共重合体を含むことが好ましい。オレフィン系重合体(a)としてエチレンプロピレン系共重合体を含む場合、オレフィン系重合体(a)中のエチレンプロピレン系共重合体の含有量は、特に限定されないが、50〜100重量%が好ましく、より好ましくは60〜90重量%、さらに好ましくは70〜80重量%である。なお、「エチレンプロピレン系共重合体」は、エチレン及びプロピレンと、任意の単量体との共重合体であり、エチレンに基づく単量体単位及びプロピレンに基づく単量体単位が主単位(通常、重合体を構成する全単量体単位を100モル%として、エチレンに基づく単量体単位とプロピレンに基づく単量体単位の合計の含有量が50モル%以上)の重合体である。
【0019】
オレフィン系重合体(a)のショア硬度は、30A以上95A未満であり、好ましくは35A〜90A、より好ましくは40A〜85Aである。なお、本明細書において、ショア硬度Aは、JIS K7215(1986)に従い、タイプAデュロメータを用いて測定される。
【0020】
重合に使用するオレフィン系重合体(a)の形状やサイズに制限はない。本発明のグラフト共重合体におけるオレフィン系重合体(a)は、特に制限はないが、グラフト率をより高くする観点、接着強度の観点から下記に記載する方法で求まる数平均換算粒子径が、500〜4500μmであることが好ましく、700〜3500μmであることがより好ましく、1000〜2700μmであることが特に好ましい。数平均換算粒子径とは、1つの粒子を、粒子の最も長い対角線が高さ方向となるように、粒子が内接するように円筒に入れた場合において、その円筒の高さと直径を用いて[(高さ+直径)/2]で求め、10個の粒子の平均を求めた値である。なお、オレフィン系重合体(a)が略円筒状である場合は、その円筒の高さと直径を用いて[(高さ+直径)/2]で求め、10個の粒子の平均を求めた値を、数平均換算粒子径とすることができる。また、上記グラフト共重合体におけるオレフィン系重合体(a)の数平均換算粒子径は、グラフト重合に使用するオレフィン系重合体(a)の数平均換算粒子径と実質的に同じであるため、グラフト重合に使用するオレフィン系重合体(a)の数平均換算粒子径を上記グラフト共重合体におけるオレフィン系重合体(a)の数平均換算粒子径としてもよい。
【0021】
本発明に用いられるオレフィン系重合体(a)の製造方法には特に制限はなく、公知の方法で得ることが出来る。また、例えばオレフィン系重合体(a)として、住友化学株式会社製のエスプレンEPDM、エスポレックスTPEシリーズを入手することも出来る。
【0022】
オレフィン系重合体(a)にはショア硬度を調整する目的で必要に応じて鉱油等を配合することが出来る。鉱油等の混合方法には特に制限はないが、軟質性と接着性のバランスの観点から鉱油等の配合量はオレフィン系重合体(a)100重量部に対して、10〜100重量部であることが好ましい。
【0023】
オレフィン系重合体(a)の密度には特に制限はないが、軟質性の観点から800以上930未満(kg/m3)であることが好ましい。なお、密度は、JIS K7112に準拠して測定される。
【0024】
本発明のグラフト共重合体は、オレフィン系重合体(a)の存在下に、芳香族ビニル系単量体(b)、及び、芳香族ビニル系単量体(b)と共重合可能な他のビニル系単量体(c)をグラフト重合して得られるグラフト共重合体である。
【0025】
本発明のグラフト共重合体に用いられる芳香族ビニル系単量体(b)としては、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、ブロムスチレン等が挙げられ、1種又は2種以上用いることができる。特にスチレン、α−メチルスチレンが好ましい。
【0026】
芳香族ビニル系単量体(b)と共重合可能な他のビニル系単量体(c)としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル、フマロニトリル等のシアン化ビニル系単量体、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、4−t−ブチルフェニル(メタ)アクリレート、ブロモフェニル(メタ)アクリレート、ジブロモフェニル(メタ)アクリレート、2,4,6−トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、モノクロルフェニル(メタ)アクリレート、ジクロルフェニル(メタ)アクリレート、トリクロルフェニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系単量体などが例示され、それらはそれぞれ1種又は2種以上用いることができる。
【0027】
本発明のグラフト共重合体はオレフィン系重合体(a)30〜80重量部の存在下に芳香族ビニル系単量体(b)及び、芳香族ビニル系単量体(b)と共重合可能な他のビニル系単量体(c)の合計20〜70重量部((a)、(b)及び(c)の合計は100重量部)をグラフト重合して得られるグラフト共重合体である。
【0028】
オレフィン系重合体(a)が30重量部未満では軟質性に劣り、80重量部を超えると、スチレン系樹脂との接着性に劣る。オレフィン系重合体(a)は、35〜75重量部であることが好ましく、40〜70重量部であることがより好ましい。すなわち、芳香族ビニル系単量体(b)及び他のビニル系単量体(c)の合計は、25〜65重量部であることが好ましく、30〜60重量部であることがより好ましい。
【0029】
グラフト共重合体のグラフト率に特に制限はないが、軟質性と接着性の観点から、グラフト率は10%以上であることが好ましく、15%以上であることがより好ましい。なお、グラフト率は、後述のオレフィン系重合体(a)の含有量と、グラフト共重合体のジクロロメタンによる分別作業を行って求めたジクロロメタン不溶部の重量比率とを用いて、下記式2より求めることが出来る。
式2
グラフト率(%)=(ジクロロメタン不溶部重量比率(%)−オレフィン系重合体(a)の含有量(%))/オレフィン系重合体(a)の含有量(%)×100
【0030】
本発明のグラフト共重合体の製造方法には特に制限はなく、乳化重合、懸濁重合、塊状重合、溶液重合又はこれらの組み合わせの方法により得ることができるが、懸濁重合法を用いることが好ましい。
【0031】
本発明のグラフト共重合体中のオレフィン系重合体(a)の含有量は、特に限定されないが、10〜85重量%が好ましく、より好ましくは30〜80重量%、さらに好ましくは40〜75重量%である。なお、グラフト共重合体中のオレフィン系重合体(a)の含有量は、オレフィン系重合体は仕込み量の99%がグラフト共重合体中に含有すると仮定し、下記式1より求めることが出来る。
式1
オレフィン系重合体(a)の含有量(%)=(仕込みオレフィン系重合体量(部)×0.99)/グラフト共重合体重量(部)×100
【0032】
本発明のグラフト共重合体中の芳香族ビニル系単量体(b)と他のビニル系単量体(c)の合計の含有量は、特に限定されないが、1〜70重量%が好ましく、より好ましくは10〜65重量%、さらに好ましくは25〜60重量%である。
【0033】
芳香族ビニル系単量体(b)の使用量(すなわち、本発明のグラフト共重合体中の芳香族ビニル系単量体(b)に基づく単量体単位の含有量)は、特に限定されないが、1〜70重量%が好ましく、より好ましくは5〜50重量%、さらに好ましくは10〜40重量%である。
【0034】
他のビニル系単量体(c)の使用量(すなわち、本発明のグラフト共重合体中の他のビニル系単量体(c)に基づく単量体単位の含有量)は、特に限定されないが、1〜70重量%が好ましく、より好ましくは2〜50重量%、さらに好ましくは3〜30重量%である。
【0035】
芳香族ビニル系単量体(b)と他のビニル系単量体(c)の重量比は、特に限定されないが、前者:後者が1:99〜99:1が好ましく、より好ましくは30:70〜95:5、さらに好ましくは50:50〜85:15である。
【0036】
本発明のグラフト共重合体中のオレフィン系重合体(a)、芳香族ビニル系単量体(b)、及び上記他のビニル系単量体(c)の合計量(総量)は、特に限定されないが、50重量%以上(例えば、50〜100重量%)が好ましく、より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上、特に好ましくは95重量%以上である。
【0037】
本発明のグラフト共重合体のショア硬度は、特に限定されないが、35A〜95Aが好ましく、より好ましくは40A〜93A、さらに好ましくは50A〜90Aである。
【0038】
本発明のグラフト共重合体は単独で使用しても良いし、他の熱可塑性樹脂を配合して使用しても良い。
本発明のグラフト共重合体を配合する他の熱可塑性樹脂の種類に特に制限はないが、例えば、スチレン系樹脂;ポリメチルメタクリレート樹脂等のアクリル系樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリ乳酸樹脂等の生分解性樹脂;(変性)ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリオキシメチレン系樹脂、ポリスルフォン系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリフェニレン系樹脂、熱可塑性ポリウレタン系樹脂等のエンジニアリングプラスチックス等が挙げられ1種又は2種以上用いることができる。なかでもスチレン系樹脂及び/又はポリカーボネート樹脂を含むことが好ましい。スチレン系樹脂としてはゴム強化スチレン系樹脂、非ゴム強化スチレン系樹脂が例示される。
【0039】
ゴム強化スチレン系樹脂の具体例としては、ゴム強化ポリスチレン樹脂(HIPS樹脂)、アクリロニトリル・ブタジエン系ゴム・スチレン重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル・アクリル系ゴム・スチレン重合体(AAS樹脂)、メタクリル酸メチル・ブタジエン系ゴム・スチレン樹脂(MBS樹脂)、アクリロニトリル・エチレン−プロピレン系ゴム・スチレン重合体(AES樹脂)等が例示される。
【0040】
非ゴム強化スチレン系樹脂の具体例としては、スチレン重合体(PS樹脂)、スチレン・アクリロニトリル共重合体(AS樹脂)、α−メチルスチレン・アクリロニトリル共重合体(αMS−ACN樹脂)、メタクリル酸メチル・スチレン共重合体(MS樹脂)、メタクリル酸メチル・アクリロニトリル・スチレン共重合体(MAS樹脂)、スチレン・N−フェニルマレイミド共重合体(S−NPMI樹脂)、スチレン・N−フェニルマレイミド・アクリロニトリル共重合体(S−A−NPMI樹脂)等が例示される。
【0041】
ポリカーボネート樹脂としては、種々のジヒドロキシジアリール化合物とホスゲンとを反応させるホスゲン法、又はジヒドロキシジアリール化合物とジフェニルカーボネート等の炭酸エステルとを反応させるエステル交換法によって得られる重合体であり、代表的なものとしては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、;“ビスフェノールA”から製造されたポリカーボネート樹脂が挙げられる。
【0042】
上記ジヒドロキシジアリール化合物としては、ビスフェノールAの他に、ビス(4−ヒドロキシジフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−第3ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパンのようなビス(ヒドロキシアリール)アルカン類、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンのようなビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルエーテルのようなジヒドロキシジアリールエーテル類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルファイド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルファイドのようなジヒドロキシジアリールスルファイド類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシドのようなジヒドロキシジアリールスルホキシド類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホンのようなジヒドロキシジアリールスルホン類等が挙げられる。
【0043】
これらは単独又は2種類以上混合して使用されるが、これらの他に、ピペラジン、ジピペリジルハイドロキノン、レゾルシン、4,4'−ジヒドロキシジフェニル類等を混合しても良い。
【0044】
さらに、上記のジヒドロキシジアリール化合物と以下に示すような3価以上のフェノール化合物を混合使用しても良い。3価以上のフェノールとしてはフロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプテン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン、1,3,5−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)ベンゾール、1,1,1−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)エタン及び2,2−ビス−[4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル]プロパン等が挙げられる。なお、これらポリカーボネート樹脂を製造するに際し、ポリカーボネート樹脂の重量平均分子量は、通常10000〜80000であり、好ましくは15000〜60000である。分子量調整剤、触媒等を必要に応じて使用することが出来る。なお、上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、標準物質としてポリスチレンを用いて測定することができる。
【0045】
本発明のグラフト共重合体と他の熱可塑性樹脂は、グラフト共重合体50〜100重量部、他の熱可塑性樹脂0〜50重量部(グラフト共重合体と他の熱可塑性樹脂の合計は100重量部)となることが好ましい。軟質性およびスチレン系樹脂との接着強度のバランスの観点から、グラフト共重合体は50〜99重量部であることが好ましく、60〜90重量部であることがより好ましく、70〜80重量部であることが特に好ましい。
【0046】
本発明のグラフト共重合体は、本発明の目的を損なわない限りにおいて、目的に応じて樹脂の混合時、成形時等に顔料、染料、補強剤(タルク、マイカ、クレー、ガラス繊維等)、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、離型剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、無機および有機系抗菌剤等の公知の添加剤を配合することができる。
【0047】
本発明のグラフト共重合体は、上述の成分を混合することで得ることができる。混合するために、例えば、押出し機、ロール、バンバリーミキサー、ニーダー等の公知の混練装置を用いることができる。また、混合順序にも何ら制限はない。
【実施例】
【0048】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら制限されるものではない。なお、実施例中にて示す部および%は重量に基づくものである。
【0049】
オレフィン系重合体(a−1)
住友化学株式会社製、商品名「ESPOLEX 820」(α−オレフィン樹脂、エチレンプロピレン系ゴム混合物)
ショア硬度:78A
密度:880(kg/cm3
数平均換算粒子径:3800μm
オレフィン系重合体(a−2)
住友化学株式会社製、商品名「ESPOLEX WT485A」(α−オレフィン樹脂、エチレンプロピレン系ゴム、鉱油混合物)
ショア硬度:60A
密度:880(kg/m3
数平均換算粒子径:3600μm
【0050】
グラフト共重合体の製造
グラフト共重合体(A−1)
100Lの耐圧容器に脱イオン水500部、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール0.2部、硫酸マグネシウム1.0部、オレフィン系重合体(a−1)100部を仕込み、攪拌しつつ槽内の窒素置換を行った。その後、スチレン34部、アクリロニトリル16部、tert−ブチルパーオキシピバレート(B(PV) 化薬アクゾ(株) 純分70%)1.8部、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.15部、1,4−ベンゾキノン0.08部と脱イオン水50部を仕込み槽内の窒素置換を行った。槽内温度を85℃まで昇温後、85℃になってから1時間反応を継続させた。反応終了後、槽内温度を40℃まで冷却し、回収・水洗・乾燥を行うことでグラフト共重合体(A−1)を得た。また、下記の方法にてオレフィン系重合体(a−1)の含有量とグラフト共重合体(A−1)のグラフト率を求めた。
【0051】
グラフト共重合体のオレフィン系重合体含有量の測定
グラフト共重合体(A−1)は乾燥後に136部得られた。オレフィン系重合体(a−1)は仕込み量の99%がグラフト共重合体中に含有すると仮定することで、グラフト共重合体(A−1)のオレフィン系重合体含有量は下記式1より求めることが出来る。
式1
オレフィン系重合体含有量(%)=(仕込みオレフィン系重合体量(部)×0.99)/グラフト共重合体重量(部)×100
=(100×0.99)/136×100
=72.8(%)
【0052】
グラフト率の測定
グラフト共重合体(A−1)をジクロロメタンを用い分別作業を行うことでジクロロメタン不溶部の重量比率を求めたところ84.8%であった。オレフィン系重合体(a−1)はジクロロメタン不溶部に存在するので、グラフト率は下記式2より求めることが出来る。
式2
グラフト率(%)=(ジクロロメタン不溶部重量比率(%)−オレフィン系重合体含有量(%))/オレフィン系重合体含有量(%)×100
=(84.8−72.8)/72.8×100
=16.5(%)
【0053】
スチレン系樹脂
日本エイアンドエル株式会社製、商品名「クララスチック GA−501」(ABS樹脂)
【0054】
実施例1、比較例1〜2
グラフト共重合体、スチレン系樹脂、及びオレフィン系重合体それぞれについて、シリンダー温度230℃、熱板金型を設置した射出成形機を用い、射出成形することでリブ付試験片を作成した。得られた試験片を用いて接着強度評価を行った。評価方法を以下に示す。
【0055】
軟質性の評価
上記で得られたグラフト共重合体のショア硬度AをJIS K7215(1986)に従って、タイプAデュロメータを用いて測定した。ショア硬度Aが低いほど軟質性に優れる。
【0056】
接着強度
上記方法により縦147mm×横30mm×厚さ3mm(リブ高さ:スチレン系樹脂試験片2mm、グラフト共重合体及びオレフィン系重合体試験片10mm)の試験片を作製後、スチレン系樹脂試験片にグラフト共重合体試験片又はオレフィン系重合体試験片を接着させる。接着方法は、220℃に設定した熱板接着試験機に各試験片を10秒間押し当て、溶融させた後、ヒーターから離し、瞬時にリブ同士を重ね合わせ10秒間接着させる。
次に、接着させた試験片を引張試験機(島津製作所AGS−5kNG)にて試験力5kN、引張速度1.0mm/minの条件で引張強度を測定し、これを接着強度とした。また、熱板接着試験機の設定温度を240℃、260℃に変更して同様に引張強度を測定した。評価結果を表1に示す。
【0057】
【表1】
【0058】
表1に示すように、比較例1〜2は、グラフト重合していないオレフィン系重合体(a)を用いた例であり、スチレン系樹脂とは接着しなかった。
【産業上の利用可能性】
【0059】
以上のように、本発明のグラフト共重合体は、軟質かつスチレン系樹脂等との接着強度に優れるため、例えばスチレン系樹脂等の硬質樹脂の表面に二層成形することにより、軟質で実用的な接着強度を有する成形品を得ることができ、はさみ、ドライバー、歯ブラシ、シェーバー、マウス等に使用する各種グリップ;建築物の扉、窓枠などに使用するシーリング用パッキン;家電用品等に使用する各種スイッチやつまみ;家電用品等に使用するハウジングの足;巾木の緩衝材;インストルメントパネル、センターパネル、センターコンソールボックス、ドアトリム、ピラー、アシストグリップ、ハンドル、エアバックカバー等の自動車内装部品等、市場のニーズに合わせて多彩な用途に使用することができる。