特許第6563321号(P6563321)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6563321
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】電動機支持機構、圧縮機、および過給機
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/00 20060101AFI20190808BHJP
   F02B 37/10 20060101ALI20190808BHJP
   F02B 39/00 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
   H02K5/00 A
   F02B37/10 Z
   F02B39/00 G
   F02B39/00 T
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-236725(P2015-236725)
(22)【出願日】2015年12月3日
(65)【公開番号】特開2017-101629(P2017-101629A)
(43)【公開日】2017年6月8日
【審査請求日】2018年7月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(72)【発明者】
【氏名】白石 啓一
(72)【発明者】
【氏名】平川 一朗
【審査官】 服部 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−169073(JP,A)
【文献】 特開2005−269751(JP,A)
【文献】 特開2000−333411(JP,A)
【文献】 特開2015−158161(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/00
F02B 37/10
F02B 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
取込口から流入する流体を圧縮する圧縮部と、該圧縮部を収容するケーシング部と、前記圧縮部の回転軸に連結される駆動軸を有する電動機とを備える圧縮機の電動機支持機構であって、
前記ケーシング部の前記取込口側の端部に取り付けられるとともに前記回転軸に沿って延びる軸線回りに円筒状に形成された円筒状部材と、
前記円筒状部材の内周面の複数箇所に連結され、該内周面から前記軸線に向けた径方向に延びる複数の支持部材と、
前記軸線回りの周方向に隣接して配置される一対の前記支持部材を連結する連結部材と、を備え、
前記複数の支持部材は、前記径方向の前記軸線側の端部を前記電動機の外周面の複数箇所に連結することにより前記電動機を前記軸線上に支持する電動機支持機構。
【請求項2】
前記連結部材は、前記周方向に延びる板状に形成されるとともに前記周方向の一端が前記一対の支持部材の一方に連結されかつ前記周方向の他端が前記一対の支持部材の他方に連結される請求項1に記載の電動機支持機構。
【請求項3】
隣接した前記一対の支持部材の前記周方向の間隔が最も長くなる第1領域に前記連結部材を配置せず、隣接した前記一対の支持部材の前記周方向の間隔が前記第1領域より短くなる他の領域に前記連結部材を配置した請求項2に記載の電動機支持機構。
【請求項4】
前記第1領域を形成する前記一対の支持部材は、前記軸線回りに120°以上かつ180°以下の角度間隔を空けて配置されている請求項3に記載の電動機支持機構。
【請求項5】
前記連結部材は、前記周方向に沿って延びる板状に形成されており、
前記連結部材は、前記径方向において前記円筒状部材の前記内周面よりも前記電動機の外周面に近接した位置に配置されている請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の電動機支持機構。
【請求項6】
前記圧縮機の前記取込口側に、外部から吸入した流体を前記取込口へ導くとともに前記圧縮機で発生する騒音のレベルを低下させるサイレンサが配置されており、
前記円筒状部材は、前記ケーシング部の前記取込口側の端部に取り付けられる第1フランジ部と、前記サイレンサの前記取込口側の端部に取り付けられる第2フランジ部とを有する請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の電動機支持機構。
【請求項7】
前記複数の支持部材は、前記電動機が前記円筒状部材よりも前記軸線方向に沿って前記取込口から遠い位置に配置されるように前記電動機を支持する請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の電動機支持機構。
【請求項8】
前記圧縮部と、
前記ケーシング部と、
前記電動機と、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の電動機支持機構と、を備えた圧縮機。
【請求項9】
請求項8に記載の圧縮機と、
前記軸線回りに回転するとともに前記圧縮部の前記回転軸に連結されるタービンと、を備える過給機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機を支持する電動機支持機構、圧縮機、および過給機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気を圧縮して内燃機関の燃焼用空気として燃焼室内へ供給する過給機が知られている。過給機は、例えば舶用ディーゼル機関や発電用ディーゼル機関のような2ストローク低速機関等においても広く使用されている。このような過給機は、燃焼用空気を圧縮する圧縮機と圧縮機の駆動源になるタービンとがロータ軸を介して連結され、ケーシング内に収納されて一体に回転する。タービンは、例えば、内燃機関から排出される排ガスを駆動源として駆動される。
【0003】
過給機の一種として、ロータ軸に電動機を接続したハイブリッド過給機が知られている(例えば、特許文献1参照)。このハイブリッド過給機は、通常の過給機と同様に空気を圧縮して燃焼用空気として内燃機関の燃焼室内へ供給するのに加え、内燃機関から排出される余剰の排ガスによりロータ軸を駆動して電動機による発電を行うものである。
また、過給機の一種として、ロータ軸にモータを接続した電動アシスト過給機が知られている(例えば、特許文献2参照)。この電動アシスト過給機は、ハイブリッド過給機に用いられる電動発電機の発電機能を省略し、電動機能に絞ることでモータを小型化したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4247217号公報
【特許文献2】特開2015−158161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示される過給機においては、コンプレッサ部の上流側に配置された消音器(サイレンサ)に設けられたシェルハウジングに電動機を収容している。電動機がシェルハウジングに収容されているため、電動機で発生する熱はシェルハウジングの内部に蓄積されやすい。そのため、電動機を十分に冷却するためには、冷却水循環機構等の別途の冷却機構を設ける必要がある。
【0006】
また、特許文献2に開示される過給機において、モータのハウジングは、4つのサポート部材を介して空気案内ケーシングに支持されている。しかしながら、サポート部材はモータロータの回転中心に向けて延びておらず、かつ4つのサポート部材はそれぞれ単独でモータハウジングの4箇所を支持している。そのため、特許文献2に開示されるサポート部材によるモータの支持構造には改善の余地がある。
【0007】
本発明は、このような事情を鑑みてなされたものであり、圧縮部の回転軸に沿って延びる軸線上に電動機を確実に支持するとともに冷却機構を設けることなく電動機を十分に冷却することが可能な電動機支持機構、それを備えた圧縮機、および過給機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を採用する。
本発明の一態様に係る電動機支持機構は、取込口から流入する流体を圧縮する圧縮部と、該圧縮部を収容するケーシング部と、前記圧縮部の回転軸に連結される駆動軸を有する電動機とを備える圧縮機の電動機支持機構であって、前記ケーシング部の前記取込口側の端部に取り付けられるとともに前記回転軸に沿って延びる軸線回りに円筒状に形成された円筒状部材と、前記円筒状部材の内周面の複数箇所に連結され、該内周面から前記軸線に向けた径方向に延びる複数の支持部材と、前記軸線回りの周方向に隣接して配置される一対の前記支持部材を連結する連結部材と、を備え、前記複数の支持部材は、前記径方向の前記軸線側の端部を前記電動機の外周面の複数箇所に連結することにより前記電動機を前記軸線上に支持する。
【0009】
本発明の一態様にかかる電動機支持機構によれば、圧縮部を収容するケーシング部の取込口側の端部に円筒状部材が取り付けられている。この円筒状部材は圧縮部の回転軸に沿って延びる軸線回りに円筒状に形成されているため、円筒状部材の内周面は軸線から等距離の位置に配置される。また、円筒状部材の内周面の複数箇所には、径方向に延びる複数の支持部材が連結されており、複数の支持部材の軸線側の端部が電動機の外周面の複数箇所に連結されている。そのため、電動機は、その外周面に直交する径方向に突き当てられる複数の支持部材によって軸線上に確実に支持される。
また、円筒状部材がケーシング部の取込口側の端部に取り付けられ、かつ電動機がその周囲の空間で流体が流通可能となるように複数の支持部材によって支持されている。圧縮部の取込口へ流入する流体は、取込口の上流側で電動機の外周面に沿って流れるため、電動機の外周面が流体の流通によって冷却される。
また、軸線回りの周方向に隣接して配置される一対の支持部材が連結部材により連結されるため、隣接して配置される一対の支持部材による電動機の支持をより確実に行うことができる。
【0010】
このように、本発明の一態様にかかる電動機支持機構によれば、圧縮部の回転軸に沿って延びる軸線上に電動機を確実に支持するとともに冷却機構を設けることなく電動機を十分に冷却することが可能な電動機支持機構を提供することができる。
【0011】
本発明の一態様に係る電動機支持機構においては、前記連結部材は、前記周方向に延びる板状に形成されるとともに前記周方向の一端が前記一対の支持部材の一方に連結されかつ前記周方向の他端が前記一対の支持部材の他方に連結される構成であってもよい。
本構成の電動機支持機構によれば、軸線回りの周方向に隣接して配置される一対の支持部材が周方向に延びる板状に形成される連結部材によって支持される。そのため、隣接して配置される一対の支持部材による電動機の支持を周方向に沿って確実に行うことができる。
【0012】
上記構成に係る電動機支持機構においては、隣接した前記一対の支持部材の前記周方向の間隔が最も長くなる第1領域に前記連結部材を配置せず、隣接した前記一対の支持部材の前記周方向の間隔が前記第1領域より短くなる他の領域に前記連結部材を配置した形態としてもよい。
このようにすることで、隣接した一対の支持部材の前記周方向の間隔が最も長くなる第1領域を介して、取込口の上流側から取込口へ向けて作業者が手を延ばすことが容易となる。そのため、作業者が電動機支持機構よりも取込口側に配置される電動機の駆動軸および圧縮部の回転軸の連結部分を連結する作業を容易に行うことができる。
【0013】
上記形態に係る電動機支持機構において、前記第1領域を形成する前記一対の支持部材は、前記軸線回りに120°以上かつ180°以下の角度間隔(θ1)を空けて配置されていてもよい。
このようにすることで、第1領域を形成する一対の支持部材が周方向に十分な角度間隔を空けて配置された状態とし、作業者による連結部分の作業を更に容易とすることができる。
【0014】
本発明の一態様に係る電動機支持機構において、前記連結部材は、前記周方向に沿って延びる板状に形成されており、前記連結部材は、前記径方向において前記円筒状部材の前記内周面よりも前記電動機の外周面に近接した位置に配置されているものであってもよい。
このようにすることで、周方向に沿って延びる連結部材が隣接する一対の支持部材の表面に直交する方向に突き当てられるため、一対の支持部材が連結部材によってより確実に支持される。また、連結部材が一対の支持部材を電動機の外周面に近接した位置で支持するため、より確実に電動機を支持することができる。
【0015】
本発明の一態様に係る電動機支持機構において、前記圧縮機の前記取込口側に、外部から吸入した流体を前記取込口へ導くとともに前記圧縮機で発生する騒音のレベルを低下させるサイレンサが配置されており、前記円筒状部材は、前記ケーシング部の前記取込口側の端部に取り付けられる第1フランジ部と、前記サイレンサの前記取込口側の端部に取り付けられる第2フランジ部とを有するものであってもよい。
このようにすることで、円筒状部材の軸線方向の両端部がケーシング部とサイレンサにそれぞれ支持されるため、円筒状部材の軸線方向の位置を確実に固定することができる。
【0016】
本発明の一態様に係る電動機支持機構において、前記複数の支持部材は、前記電動機が前記円筒状部材よりも前記軸線方向に沿って前記取込口から遠い位置に配置されるように前記電動機を支持するものであってもよい。
このようにすることで、電動機が、圧縮される流体が流入する取込口から遠い位置に配置されるため、取込口へ流入する流体の流れが電動機によって妨げられる不具合を抑制することができる。
【0017】
本発明の一態様に係る圧縮機は、圧縮部と、前記ケーシング部と、前記電動機と、上述のいずれかに記載の電動機支持機構と、を備えたものである。
本発明の一態様に係る圧縮機によれば、圧縮部の回転軸に沿って延びる軸線上に電動機を確実に支持するとともに冷却機構を設けることなく電動機を十分に冷却することが可能である。
【0018】
本発明の一態様に係る過給機は、上述した圧縮機と、前記軸線回りに回転するとともに前記圧縮部の前記回転軸に連結されるタービンと、を備えるものである。
本発明の一態様に係る過給機によれば、圧縮部の回転軸に沿って延びる軸線上に電動機を確実に支持するとともに冷却機構を設けることなく電動機を十分に冷却することが可能である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、圧縮部の回転軸に沿って延びる軸線上に電動機を確実に支持するとともに冷却機構を設けることなく電動機を十分に冷却することが可能な電動機支持機構、それを備えた圧縮機、および過給機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態の過給機を示す縦断面図である。
図2図1に示す過給機の要部拡大図である。
図3図2に示す電動機の縦断面図である。
図4図2に示す過給機のA−A矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態の過給機について図面を参照して説明する。
本実施形態の過給機100は、船舶に用いられる舶用ディーゼル機関(内燃機関)に供給する気体(例えば、空気)を一定圧力(例えば、大気圧)以上に高めて、舶用ディーゼル機関の燃焼効率を高める装置である。
図1に示すように、本実施形態の過給機100は、遠心圧縮機10と、タービン20と、サイレンサ30とを備えている。遠心圧縮機10とタービン20とは、それぞれロータ軸40を介して連結されている。
【0022】
遠心圧縮機10は、過給機100の外部から流入する気体を圧縮し、舶用ディーゼル機関を構成するシリンダライナ(図示略)の内部と連通する掃気トランク(図示略)に圧縮した気体(以下、圧縮気体という。)を供給する装置である。
【0023】
タービン20は、タービンハウジング21と、タービン翼22と、タービンディスク23と、タービンノズル24とを備えている。タービンハウジング21は、軸線X回りに配置される中空の筒状部材であり、その内部にタービン翼22と、タービンディスク23と、タービンノズル24とを収容している。タービンハウジング21には、図1の下方に矢印で示す方向に沿って舶用ディーゼル機関から排出される排ガスが流入する。
【0024】
タービンハウジング21に導かれた排ガスは、タービンノズル24を通過し、タービン翼22に導かれる。タービン翼22は、ロータ軸40に固定された円板状のタービンディスク23の外周面に軸線回りに一定間隔で取り付けられている。タービンディスク23には、静圧膨張した排ガスがタービン翼22を通過することによって軸線X回りの回転力が与えられる。この回転力は、ロータ軸40を回転させる動力となり、ロータ軸40に連結された羽根車11を軸線X回りに回転させる。タービン翼22を通過した排ガスは、図1の上方に矢印で示す方向に沿って排出される。
【0025】
サイレンサ30は、遠心圧縮機10の取込口11a側に配置されており、外部から吸入した気体を取込口11aへ導くとともに遠心圧縮機10内で発生する騒音のレベルを低下させる装置である。図1に示すように、サイレンサ30は、軸線Xに直交する方向から流入する気体を、遠心圧縮機10へ導く流路を形成する。この流路の周囲には消音材31が配置されている。この消音材31によって、遠心圧縮機10内で発生する騒音の一部が吸収され、騒音のレベルが低下する。
【0026】
次に、本実施形態の遠心圧縮機10について、より詳細に説明する。
図1および図2に示すように、遠心圧縮機10は、羽根車(圧縮部)11と、空気案内ケーシング(ケーシング部)12と、ディフューザ部13と、電動モータ(電動機)14と、電動モータ支持機構(電動機支持機構)15と、スクロール部16とを備えている。
【0027】
図1に示すように、羽根車11は、軸線Xに沿って延びるロータ軸40に取り付けられており、ロータ軸40が軸線X回りに回転するのに伴って、軸線X回りに回転する。羽根車11は、軸線X回りに回転することにより、取込口11aから流入する気体を圧縮して吐出口11bから吐出する。
【0028】
羽根車11は、ハブ11cと、ハブ11cの外周面上に取り付けられるブレード11dと、ハブ11cの中心に配置されてロータ軸40に取り付けられる回転軸11eとを備える。羽根車11には、ハブ11cの外周面と空気案内ケーシング12の内周面により形成される空間が設けられており、この空間が複数枚のブレード11dにより複数の空間に仕切られている。そして、羽根車11は、軸線X方向に沿って取込口11aから流入する気体に径方向の遠心力を与えて軸線X方向に直交した方向(羽根車11の径方向)に吐出させ、吐出口11bへ吐出された圧縮気体をディフューザ部13に流入させる。
【0029】
空気案内ケーシング12は、羽根車11を収容するとともにロータ軸40の軸線X方向に沿って延在する。空気案内ケーシング12は、羽根車11とともに、軸線Xに沿って取込口11aから流入する気体を、軸線Xに直交する径方向に案内して吐出口11bへ導く流路を形成する。
【0030】
ディフューザ部13は、吐出口11bから吐出された圧縮気体をスクロール部16へ導く部材である。ディフューザ部13は、羽根車11の吐出口11bから吐出された圧縮気体の流速を減速させることにより、圧縮気体に付与された運動エネルギー(動圧)を圧力エネルギー(静圧)に変換する。ディフューザ部13を通過する際に流速が減速された圧縮気体は、ディフューザ部13と連通したスクロール部16に流入する。スクロール部16に流入した圧縮気体は、吐出配管(図示略)へと吐出される。
【0031】
スクロール部16は、吐出口11bから吐出された圧縮気体が流入するとともに、圧縮気体に付与された運動エネルギー(動圧)を圧力エネルギー(静圧)に変換する装置である。スクロール部16は、空気案内ケーシング12よりも軸線X方向に直交する径方向の外周側に配置されている。
【0032】
次に、電動モータ14について説明する。
本実施形態の電動モータ14は、舶用ディーゼル機関(主機関)が低負荷で運転され、舶用ディーゼル機関から排出される排ガスが過給機に十分な過給能力を与えられない場合に、電力により遠心圧縮機10の回転軸11eを回転させて過給能力を加勢(アシスト)するために用いられる電動機である。
また、本実施形態の電動モータ14は、舶用ディーゼル機関(主機関)から余剰の排ガスが排出される場合には、排ガスによって回転するタービン20に連結されるロータ軸40を介してロータを回転させ、発電を行って排ガスのエネルギを電力として回収することも可能な装置である。
【0033】
なお、以上の説明において、本実施形態の電動モータ14は、過給能力を加勢するアシスト機能と排ガスのエネルギを用いて発電を行う発電機能の双方を備えるものとしたが、他の態様であってもよい。例えば、電動モータ14は、発電機能を備えず、アシスト機能のみを備える態様であってもよい。
【0034】
図3の縦断面図に示すように、電動モータ14は、ロータ14aと、ステータ14bと、ロータ14aおよびステータ14bを収容するハウジング14cと、ロータ14aの先端および後端をハウジング14c内に保持する一対の軸受部14d,14eと、ロータ14aに連結される駆動軸14fとを備える。
なお、図3の縦断面図は、後述する図4に示す過給機のB−B矢視断面図となっている。
【0035】
ロータ14aは、軸線Xに沿って延びるとともに外周面に永久磁石を備える円柱状に形成される部材である。ロータ14aの軸線Xに沿った両端はそれぞれ一対の軸受部14d,14eによりハウジング14cに対して支持されている。
ステータ14bは、円筒形状のハウジング14c内に収容されている。ステータ14bの中空部には、軸線X上に配置されるロータ14aがステータ14bに対して非接触の状態で配置されている。
【0036】
ハウジング14cは、軸線Xに沿って延びる円筒状に形成される部材である。ハウジング14cの内周面にはステータ14bが固定されている。ハウジング14cの外周面14gの複数箇所に締結穴14hが形成されている。ハウジング14cは、電動モータ支持機構15のストラット15bに形成された貫通穴に締結ボルト14iを挿入して締結穴14hに締結することにより、電動モータ支持機構15に支持された状態となる。
駆動軸14fは、ロータ14aの取込口11a側の端部に取り付けられる部材である。駆動軸14fは、締結ボルト14jによって羽根車11の回転軸11eに連結されている。
【0037】
舶用ディーゼル機関(主機関)が低負荷で運転される際に電動モータ14を、過給能力を加勢(アシスト)するために用いる場合、制御装置(図示略)は、ステータ14bへ電力を供給してロータ14aを軸線X回りに回転させる。これにより、ロータ14aの回転が駆動軸14fを介して羽根車11の回転軸11eに伝達され、遠心圧縮機10による過給能力が増加する。
【0038】
次に、電動モータ14を支持する電動モータ支持機構15について説明する。
図2に示すように、電動モータ支持機構15は、羽根車11の回転軸11eに沿って延びる軸線X回りに円筒状に形成された円筒状部材15aと、円筒状部材15aの内周面15dの複数箇所に連結される複数のストラット15bとを備える。
また、図4に示すように、電動モータ支持機構15は、隣接する一対のストラット15bを軸線X回りの周方向に沿って連結する連結部材15cを備える。
【0039】
図2に示すように、円筒状部材15aは、空気案内ケーシング12の取込口11a側の端部に取り付けられる第1フランジ部15eと、サイレンサ30の取込口11a側の端部に取り付けられる第2フランジ部15fとを有する。
第1フランジ部15eと空気案内ケーシング12とは、軸線X回りの複数箇所で締結ボルト15gにより締結されている。また、第2フランジ部15fとサイレンサ30とは、軸線X回りの複数箇所で締結ボルト15hにより締結されている。
【0040】
図4図2に示す過給機のA−A矢視断面図)に示すように、ストラット15bは、円筒状部材15aの内周面15dから軸線Xに向けた径方向に延びるように内周面15dに連結されている。
図4に示すストラット15bは、溶接により円筒状部材15aの内周面15dに取り付けられたものであるが、円筒状部材15aとストラット15bとを鋳造により一体に成形するようにしてもよい。
なお、図4においては、電動モータ14の内部構造の図示を省略している。
【0041】
図4に示すように、複数のストラット15bは、軸線X回りの周方向に直交する径方向の軸線X側の端部を電動モータ14の外周面14gの複数箇所に締結ボルト14i締結することにより、電動モータ14を軸線X上に支持している。
図2に示すように、複数のストラット15bは、電動モータ14が円筒状部材15aよりも軸線X方向に沿って取込口11aから遠い位置に配置されるように電動モータ14を支持している。
【0042】
電動モータ14を電動モータ支持機構15へ取り付ける場合、作業者は、電動モータ14の駆動軸14fの中心が軸線X上に配置されるように、電動モータ14の外周面14gに締結ボルト14iを締結する。作業者は、締結ボルト14iの締結穴14hへの締結状態を調整するとともに、必要に応じてストラット15bと電動モータ14の外周面14gとの間に締結ボルト14iが貫通するスペーサ(図示略)を挟むことにより、電動モータ14の位置を調整する。
【0043】
図4に示すように、円筒状部材15aの内周側の空間は、複数のストラット15bにより、領域AR1,AR2,AR3,AR4の4つの領域に仕切られている。
図4に示す領域AR2,AR3,AR4においては、周方向に隣接する一対のストラット15bは、連結部材15cにより連結されている。
連結部材15cは、図2に示すように、軸線X方向に延びる板状に形成されている。また、図4に示すように、連結部材15cは、軸線X回りの周方向に延びる板状に形成されるとともに周方向の一端が一対のストラット15bの一方に連結されかつ周方向の他端が一対のストラット15bの他方に連結されている。
【0044】
図4に示すように、連結部材15cは、隣接した一対のストラット15bの周方向の間隔がθ1で最も長くなる領域AR1(第1領域)には配置されていない。一方で、領域AR1での一対のストラット15bの周方向の間隔よりも周方向の間隔が短くなる他の領域(周方向の間隔がθ2となる領域AR2,周方向の間隔がθ3となる領域AR3,周方向の間隔がθ4となる領域AR4)には連結部材15cが配置されている。
【0045】
隣接した一対のストラット15bの周方向の間隔がθ1で最も長くなる領域AR1に連結部材15cを配置していないのは、作業者による作業性を考慮してのことである。
すなわち、隣接した一対のストラット15bの周方向の間隔が最も長くなる領域AR1を介して、取込口11aの上流側から取込口11aへ向けて作業者が手を延ばすことが容易となる。そのため、作業者が電動モータ支持機構15よりも取込口11a側に配置される電動モータ14の駆動軸14fおよび羽根車11の回転軸11eの連結部分を連結する作業を容易に行うことができる。
【0046】
隣接した一対のストラット15bの周方向の間隔がθ1で最も長くなる領域AR1におけるθ1の値は、例えば、120°以上かつ180°以下の角度間隔とするのが望ましい。
【0047】
図4に示すように、連結部材15cは、周方向に沿って延びる板状に形成されている。また、連結部材15cは、径方向において円筒状部材15aの内周面15dよりも電動モータ14の外周面14gに近接した位置に配置されている。連結部材15cを外周面14gに近接させているのは、連結部材15cの位置を気体の流れの主流から離れた位置としかつ連結部材15cの軸線X回りの周方向の長さを短くして、内周面15dと外周面14gとの間を通過する気体に与える抵抗を小さくするためである。
【0048】
なお、連結部材15cは電動モータ14の外周面14gに近接して配置されるものの、外周面14gから一定距離を隔てて配置されている。これは、電動モータ14の外周面14gに形成される冷却フィン14k(図4参照)との接触を避けるためである。
【0049】
冷却フィン14kは、電動モータ14の外周面14gの複数箇所に形成されるものであり、軸線Xに沿って延びるように形成されている。冷却フィン14kを電動モータ14の外周面14gに形成して流体との接触面積を増大させることにより、流体による電動モータ14の冷却効率を高めることができる。
【0050】
次に、本実施形態の電動モータ支持機構15が奏する作用および効果について説明する。
本実施形態の電動モータ支持機構15によれば、羽根車11を収容する空気案内ケーシング12の取込口11a側の端部に円筒状部材15aが取り付けられている。この円筒状部材15aは羽根車11の回転軸11eに沿って延びる軸線X回りに円筒状に形成されているため、円筒状部材15aの内周面15dは軸線Xから等距離の位置に配置される。
【0051】
また、円筒状部材15aの内周面15dの複数箇所には、径方向に延びる複数のストラット15bが連結されており、複数のストラット15bの軸線X側の端部が電動モータ14の外周面14gの複数箇所に連結されている。そのため、電動モータ14は、その外周面14gに直交する径方向に突き当てられる複数のストラット15bによって軸線X上に確実に支持される。
【0052】
また、円筒状部材15aが空気案内ケーシング12の取込口11a側の端部に取り付けられ、かつ電動モータ14がその周囲の空間で気体が流通可能となるように複数のストラット15bによって支持されている。羽根車11の取込口11aへ流入する気体は、取込口11aの上流側で電動モータ14の外周面14gに沿って流れるため、電動モータ14の外周面14gが気体の流通によって冷却される。
【0053】
このように、本実施形態の電動モータ支持機構15によれば、羽根車11の回転軸11eに沿って延びる軸線X上に電動モータを確実に支持するとともに冷却機構を設けることなく電動モータ14を十分に冷却することが可能な電動モータ支持機構15を提供することができる。
【0054】
本実施形態の電動モータ支持機構15は、軸線X回りの周方向に隣接して配置される一対のストラット15bを連結する連結部材15cを備え、連結部材15cは、軸線X方向に延びる板状に形成されるとともに周方向の一端が一対のストラット15bの一方に連結されかつ周方向の他端が一対のストラット15bの他方に連結される。
このような電動モータ支持機構15によれば、軸線X回りの周方向に隣接して配置される一対のストラット15bが連結部材15cによって周方向に沿って支持される。そのため、隣接して配置される一対のストラット15bの剛性が高まって電動モータ14の振動や芯ずれが防止され、複数のストラット15bによる電動モータ14の支持をより確実に行うことができる。
【0055】
また、本実施形態の電動モータ支持機構15は、隣接した一対のストラット15bの周方向の間隔が最も長くなる領域AR1に連結部材15cを配置せず、隣接した一対のストラット15bの周方向の間隔が領域AR1より短くなる他の領域に連結部材15cを配置した。
このようにすることで、隣接した一対のストラット15bの周方向の間隔が最も長くなる領域AR1を介して、取込口11aの上流側から取込口11aへ向けて作業者が手を延ばすことが容易となる。そのため、作業者が電動モータ支持機構15よりも取込口11a側に配置される電動モータ14の駆動軸14fおよび羽根車11の回転軸11eの連結部分を連結する作業を容易に行うことができる。
【0056】
また、本実施形態の電動モータ支持機構15において、領域AR1を形成する一対のストラット15bは、軸線X回りに120°以上かつ180°以下の角度間隔θ1を空けて配置されているのが望ましい。
このようにすることで、領域AR1を形成する一対のストラットが周方向に十分な角度間隔を空けて配置された状態とし、作業者による連結部分の作業を更に容易とすることができる。
【0057】
また、本実施形態の電動モータ支持機構15において、連結部材15cは、周方向に沿って延びる板状に形成されており、連結部材15cは、径方向において円筒状部材15aの内周面15dよりも電動モータ14の外周面14gに近接した位置に配置されている。
このようにすることで、周方向に沿って延びる連結部材15cが隣接する一対のストラット15bの表面に直交する方向に突き当てられるため、一対のストラット15bが連結部材15cによってより確実に支持される。また、連結部材15cが一対のストラット15bを電動モータ14の外周面14gに近接した位置で支持するため、より確実に電動モータ14を支持することができる。
【0058】
また、本実施形態の電動モータ支持機構15において、羽根車11の取込口11a側に、外部から吸入した気体を取込口11aへ導くとともに羽根車11で発生する騒音のレベルを低下させるサイレンサ30が配置されており、円筒状部材15aは、空気案内ケーシング12の取込口11a側の端部に取り付けられる第1フランジ部15eと、サイレンサ30の取込口11a側の端部に取り付けられる第2フランジ部11fとを有する。
このようにすることで、円筒状部材15aの軸線X方向の両端部が空気案内ケーシング12とサイレンサ30にそれぞれ支持されるため、円筒状部材15aの軸線X方向の位置を確実に固定することができる。
【0059】
また、本実施形態の電動モータ支持機構15において、複数のストラット15bは、電動モータ14が円筒状部材15aよりも軸線X方向に沿って取込口11aから遠い位置に配置されるように電動モータ14を支持する。
このようにすることで、電動モータ14が、圧縮される気体が流入する取込口11aから遠い位置に配置されるため、取込口11aへ流入する気体の流れが電動モータ14によって妨げられる不具合を抑制することができる。
【符号の説明】
【0060】
10 遠心圧縮機
11 羽根車(圧縮部)
11a 取込口
11e 回転軸
12 空気案内ケーシング(ケーシング部)
14 電動モータ(電動機)
14a ロータ
14f 駆動軸
14g 外周面
15 電動モータ支持機構(電動機支持機構)
15a 円筒状部材
15b ストラット(支持部材)
15c 連結部材
15d 内周面
15e 第1フランジ部
15f 第2フランジ部
20 タービン
30 サイレンサ
40 ロータ軸
100 過給機
AR1,AR2,AR3,AR4 領域
X 軸線
図1
図2
図3
図4