(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
表面処理されるアルミニウム材の電極と、対電極と、前記アルミニウム材電極に結線された導電材とを用い、pH9〜13で液温35〜85℃であり、かつ、溶存アルミニウム濃度が5ppm以上1000ppm以下のアルカリ性水溶液を電解溶液とし、周波数10〜100Hz、電流密度4〜50A/dm2及び電解時間5〜60秒間の条件で交流電解処理することにより、対電極に対向する前記アルミニウム材表面に多孔性酸化皮膜を形成するとともに、アルミニウム材電極と結線された導電材に対向する前記アルミニウム材表面に不定形で単層構造を有する耐食性酸化皮膜を同時に形成することを特徴とする表面処理アルミニウム材の製造方法。
前記表面処理されるアルミニウム材の電極と、対電極が共に平板状であり、電解溶液中の前記アルミニウム材電極に結線された導電材の面積は、耐食性酸化皮膜を形成させたい面積の80〜150%であり、前記導電材とアルミニウム材との距離が1〜50mmである、請求項4に記載の表面処理アルミニウム材の製造方法。
前記アルミニウム材電極の一方の面側にこの面と対向するように導電材を配置し、アルミニウム材電極の他方の面側にこの面と対向するように対電極を配置することにより、アルミニウム材電極の前記一方の面に耐食性酸化皮膜が形成され、前記他方の面に多孔性酸化皮膜が形成される、請求項4〜6のいずれか一項に記載の表面処理アルミニウム材の製造方法。
前記アルミニウム材電極の他方の面側にこの面と対向するように対電極を配置し、当該他方の面と対電極との間において、アルミニウム材電極の他方の面の一部と対向するように導電材を配置し、アルミニウム材電極の他方の面の前記一部と相補的な他の部位と対向するように前記対電極を配置することにより、アルミニウム材電極の他方の面の前記一部に耐食性酸化皮膜が形成され、アルミニウム材電極の前記他の部位に多孔性酸化皮膜が形成される、請求項4〜6のいずれか一項に記載の表面処理アルミニウム材の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような従来技術では、アルミニウム材に直接結線して電解処理を行うことから、アルミニウム材自体が電極となる。よって、表面処理は、アルミニウム材が電解溶液に触れている領域全体に施される。
【0008】
アルミニウム材の一部分に樹脂密着性を付与する表面処理を施す際には、処理を施さない表面部分をマスキングテープ等で被覆する。被覆がされていない部分には表面処理が施されるので、樹脂密着性が向上する。しかしながら、表面処理後に被覆を取り外した部分は表面処理が施されていないため、樹脂密着性が付与されないことは所望の通りであるが、耐食性が得られないという不都合がある。
【0009】
この場合には、アルミニウム材の表面の一部分に、樹脂密着性を向上させる表面処理が施された後、表面処理が施されていない部分に、耐食性を付与させる表面処理を行う必要がある。そこで、樹脂密着性を向上させる表面処理が施された部分を再度被覆し、2回目の表面処理を行うことになる。そのため、2回の被覆をすることによるコスト高を招くだけでなく、2回目の表面処理を行う工程が別に必要となるために生産性が低下するという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく検討を重ねた結果、耐食性酸化皮膜を特定の部分にのみに形成し、かつ、耐食性酸化皮膜を形成させていない部分には、密着性を有する多孔性酸化皮膜が形成されている表面処理アルミニウム材、ならびに、これら耐食性酸化皮膜と多孔性酸化皮膜とを同時に形成する表面処理アルミニウム材の製造方法を見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は請求項1において、アルミニウム材と、その表面の一部に形成された
不定形で単層構造を有する耐食性酸化皮膜と、前記アルミニウム材表面の耐食性酸化皮膜が形成されていない部位に形成された多孔性酸化皮膜とを含み、前記耐食性酸化皮膜は、10〜100nmの厚さを有し、FT−IR分析によるピーク吸収波数をb(cm
−1)とし、ピーク吸収波数bにおけるピーク吸収率をa(%)とした際に、1≦a≦95、かつ、b≧3a+710の関係を満たし、前記多孔性酸化皮膜は表面側に形成された厚さ20〜500nmのポーラス型アルミニウム酸化皮膜層と素地側に形成された厚さ3〜30nmのバリア型アルミニウム酸化皮膜層とから成り、前記ポーラス型アルミニウム酸化皮膜層には直径5〜30nmの小孔が形成されており、アルミニウム材表面に形成された多孔性酸化皮膜全体において、前記ポーラス型アルミニウム酸化皮膜層とバリア型アルミニウム酸化皮膜層との合計厚さの変動幅が、当該合計厚さの算術平均値の±50%以内であることを特徴とする表面処理アルミニウム材とした。
【0012】
本発明は請求項2では請求項1において、前記ピーク吸収波数b(cm
−1)が、Al−Oの最も強い伸縮振動に起因するピークの波数であり、720≦b≦995の範囲に現れるものとした。
【0013】
本発明は請求項3では請求項1又は2において、前記ポーラス型アルミニウム酸化皮膜層の見かけ上の表面積に対する小孔の全孔面積の比が25〜75%であるものとした。
【0014】
本発明は請求項4において、表面処理されるアルミニウム材の電極と、対電極と、前記アルミニウム材電極に結線された導電材とを用い、pH9〜13で液温35〜85℃であり、かつ、溶存アルミニウム濃度が5ppm以上1000ppm以下のアルカリ性水溶液を電解溶液とし、周波数10〜100Hz、電流密度4〜50A/dm
2及び電解時間5〜60秒間の条件で交流電解処理することにより、対電極に対向する前記アルミニウム材表面に多孔性酸化皮膜を形成するとともに、アルミニウム材電極と結線された導電材に対向する前記アルミニウム材表面に
不定形で単層構造を有する耐食性酸化皮膜を同時に形成することを特徴とする表面処理アルミニウム材の製造方法とした。
【0015】
本発明は請求項5では請求項4において、前記表面処理されるアルミニウム材の電極と、対電極が共に平板状であり、電解溶液中の前記アルミニウム材電極に結線された導電材の面積は、耐食性酸化皮膜を形成させたい面積の80〜150%であり、前記導電材とアルミニウム材との距離が1〜50mmであるものとした。
【0016】
本発明は請求項6では請求項4又は5において、前記アルミニウム材電極に結線された導電材がステンレス鋼材又は銅材からなるものとした。
【0017】
本発明は請求項7では請求項4〜6のいずれか一項において、前記アルミニウム材電極の一方の面側にこの面と対向するように導電材を配置し、アルミニウム材電極の他方の面側にこの面と対向するように対電極を配置することにより、アルミニウム材電極の前記一方の面に耐食性酸化皮膜が形成され、前記他方の面に多孔性酸化皮膜が形成されるものとした。
【0018】
本発明は請求項8では請求項4〜6のいずれか一項において、前記アルミニウム材電極の他方の面側にこの面と対向するように対電極を配置し、当該他方の面と対電極との間において、アルミニウム材電極の他方の面の一部と対向するように導電材を配置し、アルミニウム材電極の他方の面の前記一部と相補的な他の部位と対向するように前記対電極を配置することにより、アルミニウム材電極の他方の面の前記一部に耐食性酸化皮膜が形成され、アルミニウム材電極の前記他の部位に多孔性酸化皮膜が形成されるものとした。
【発明の効果】
【0019】
本発明によって、表面の一部に耐食性酸化皮膜が形成されており、耐食性酸化皮膜が形成されていない部位には、密着性を有する多孔性酸化皮膜が形成されていることを特徴とする表面処理アルミニウム材及びその製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の詳細を順に説明する。
図1に示すように、本発明に係る表面処理アルミニウム材1の表面の一部には、耐食性酸化皮膜3が形成されている。また、
図2に示すように、耐食性酸化皮膜3が形成されていないアルミニウム材2の表面の部位には、多孔性酸化皮膜4が形成されている。
【0022】
A.アルミニウム材について
本発明に用いるアルミニウム材としては、純アルミニウム又はアルミニウム合金が用いられる。アルミニウム合金の成分には特に制限無く、JISに規定される合金をはじめとする各種合金を使用することができる。形状としては特に制限されるものではないが、安定して処理皮膜を形成できることから平板状のものが好適に用いられる。
【0023】
B.アルミニウム材表面の耐食性酸化皮膜構造について
図1に示すように、本発明に用いるアルミニウム材2の表面の一部には、厚さが10〜100nm、好ましくは20〜80nmの不定形の耐食性酸化皮膜3が形成される。この耐食性酸化皮膜3は単層構造の皮膜である。単層構造ではない複層構造の場合には、表層と中間層の間ですき間腐食が発生するため、十分な耐食性を示さない。また、アルミニウム材2の全面に耐食性酸化皮膜3を形成させることもできる。耐食性酸化皮膜3の厚さが10nm未満の場合には、十分な耐食性が得られない。一方、100nmを超える場合には、耐食性酸化皮膜厚さの制御が困難となり処理ムラが発生する。
【0024】
この耐食性酸化皮膜3の膜質はFT‐IR(フーリエ変換式赤外分光光度計)により分析した際の、赤外吸収スペクトルのピーク吸収波数b(cm
−1)ならびに、当該ピーク吸収波数におけるベースラインからのピーク吸収率(a%)によって特徴付けられる。ここで、ピーク吸収波数b(cm
−1)とは、Al−Oの最も強い伸縮振動に起因するピークの吸収波数をいう。なお、ピーク吸収波数b(cm
−1)は、通常、720≦b≦995の範囲に現れる。
【0025】
本発明で用いる耐食性酸化皮膜においては、FT‐IRによって分析した際の上記ピーク吸収率a(%)を1≦a≦95、好ましくは2≦a≦75と規定する。このピーク吸収率が1%未満では、耐食性酸化皮膜の厚さが10nm未満となり耐食性が不足する。このピーク吸収率が95%を超えると、耐食性酸化皮膜の厚さが100nmを超え、耐食性酸化皮膜厚さの制御が困難となり処理ムラが起こり易い。更に本発明では、ピーク吸収率a(%)とピーク吸収波数b(cm
−1)は、b≧3a+710、好ましくはb≧3a+720の関係を満たす。この関係を満たさない場合には、耐食性酸化皮膜の皮膜形状が多孔質形状になるため、耐食性が低下してしまう。
【0026】
C.アルミニウム材表面の多孔性酸化皮膜構造について
耐食性酸化皮膜が形成されていない部位のアルミニウム材表面には、
図2に示すように、多孔性酸化皮膜4が形成されている。多孔性酸化皮膜4は、アルミニウム材2の素地側のバリア型アルミニウム酸化皮膜層41と、表層側のポーラス型アルミニウム酸化皮膜層42とから構成される。
【0027】
C−1.ポーラス型アルミニウム酸化皮膜層
ポーラス型アルミニウム酸化皮膜層42の厚さは、20〜500nmである。20nm未満では厚さが十分でないため、後述する小孔構造の形成が不十分になり易く接着力や密着力が低下する。一方、500nmを超えると、ポーラス型アルミニウム酸化皮膜層自体が凝集破壊し易くなり接着力や密着力が低下する。ポーラス型アルミニウム酸化皮膜層42の厚さは、好ましくは30〜400nmである。
【0028】
また、ポーラス型アルミニウム酸化皮膜層42は、その表面から深さ方向に向かう小孔420を備える。小孔420の直径は5〜30nmであり、好ましくは10〜20nmである。この小孔は、樹脂層や接着剤などとアルミニウム酸化皮膜との接触面積を増大させ、その接着力や密着力を増大させる効果を発揮するものである。小孔の直径が5nm未満であると、接触面積が不足するため十分な接着力や密着力が得られない。一方、小孔の直径が30nmを超えると、ポーラス型アルミニウム酸化皮膜層全体が脆くなって凝集破壊を生じ接着力や密着力が低下する。
【0029】
ポーラス型アルミニウム酸化皮膜層の表面積に対する小孔の全孔面積の比については、特に制限されるものではない。ポーラス型アルミニウム酸化皮膜層の見かけ上の表面積(表面の微小な凹凸等を考慮せず、長さと幅の乗算で表される面積)に対する小孔の全孔面積の比として、25〜75%が好ましい。25%未満では、接触面積が不足して十分な接着力や密着力が得られない場合がある。一方、75%を超えると、ポーラス型アルミニウム酸化皮膜層全体が脆くなって凝集破壊を生じ接着力や密着力が低下する場合がある。
【0030】
C−2.バリア型アルミニウム酸化皮膜層
バリア型アルミニウム酸化皮膜層41とは、厚さ3〜30nmの緻密な酸化皮膜である。厚さが3nm未満では、介在層としてポーラス型アルミニウム酸化皮膜層4とアルミニウム素地2との結合に十分な結合力を付与することができず、特に、高温・多湿等の過酷環境における結合力が不十分となる。一方、30nmを超えると、その緻密性ゆえにバリア型アルミニウム酸化皮膜層3が凝集破壊し易くなり、かえって接着力や密着力が低下する。なお、バリア型アルミニウム酸化皮膜層41の厚さは、好ましくは5〜25nmである。
【0031】
C−3.多孔性酸化皮膜の全体厚さの変動幅
多孔性酸化皮膜4全体の厚さ、すなわち、C−1に記載のポーラス型アルミニウム酸化皮膜層42とC−2に記載のバリア型アルミニウム酸化皮膜層41との厚さの合計は、多孔性酸化皮膜4が形成されたいかなる場所で測定しても、その変動幅が±50%以内でなければならず、好ましくは±20%以内である。すなわち、アルミニウム材表面における任意の複数箇所(10箇所以上が望ましく、これら各箇所においても10点以上の測定点とするのが望ましい)で測定した多孔性酸化皮膜全体厚さの算術平均値をT(nm)とした場合、これら複数測定箇所の全てにおける多孔性酸化皮膜全体厚さが(0.5×T)〜(1.5×T)の範囲にある必要がある。(0.5×T)未満の箇所が存在すると、その箇所の多孔性酸化皮膜がその周囲より薄くなる。そうすると、この薄い箇所では、接着すべき接着剤や密着すべき樹脂層などと多孔性酸化皮膜との間に隙間が生じ易くなり、十分な接触面積を確保できずに接着力や密着力が低下する。
【0032】
一方、(1.5×T)を超える箇所が存在すると、その箇所の多孔性酸化皮膜が周囲の周囲より厚くなる。そうすると、この厚い箇所では、密着すべき樹脂層などからの応力が集中し、多孔性酸化皮膜での凝集破壊を誘発して接着力や密着力が低下する。
【0033】
なお、上記のような多孔性酸化皮膜の全体厚さが薄い箇所や厚い箇所では、周囲と比較して光学的特性が異なるため、茶褐色や白濁色といった色調の変化として目視可能な場合がある。
【0034】
D.アルミニウム材の製造方法について
以上のような条件を満たした耐食性酸化皮膜と多孔性酸化皮膜を表面に備えた表面処理アルミニウム材を製造するための一つの方法として、表面処理されるアルミニウム材の電極と、アルミニウム材に結線されてアルミニウム材表面近傍に設置される導電材と、対電極として後述の材質の電極とを用い、pH9〜13で液温35〜85℃であり、かつ、溶存アルミニウム濃度が5ppm以上1000ppm以下のアルカリ性水溶液を電解溶液とし、周波数10〜100Hz、電流密度4〜50A/dm
2及び電解時間5〜60秒間の条件で交流電解処理することにより、導電材に対向するアルミニウム材表面の部位には耐食性酸化皮膜が形成され、対電極に対向するアルミニウム材表面の部位には多孔性酸化皮膜が形成される方法を挙げることができる。なお、アルミニウム材の全表面を導電材に対向させることで、その表面に耐食性酸化皮膜のみを形成させることもできる。
【0035】
本発明に係る表面処理アルミニウム材は、表面処理されるアルミニウム材の電極と、アルミニウム材の電極に結線された導電材と、対電極とを用いて、交流電解処理を行う。表面処理されるアルミニウム材の電極に結線された導電材は、電解溶液中において、耐食性酸化皮膜を形成させたいアルミニウム材の表面部分の近傍に、当該表面部分に対向するように配置される。導電材が対向していないアルミニウム材の表面部分には、多孔性酸化皮膜が形成される。また、電解溶液中において、アルミニウム材と対向する導電材の面積は、耐食性酸化皮膜を形成させたいアルミニウム材の面積の80〜150%であり、好ましくは90〜130%である。また、アルミニウム材と対向する導電材の距離は1〜50mmである。導電材の面積が耐食性酸化皮膜を形成させたいアルミニウム材の面積の80%未満では、耐食性酸化皮膜を形成させたい部分に多孔性酸化皮膜が形成されてしまう場合があり、150%を超えると、多孔性酸化皮膜を形成させたい部分にも耐食性酸化皮膜が形成してしまう場合がある。アルミニウム材と対向する導電材の距離が1mm未満では、導電材と、対向するアルミニウム材との間で電解溶液の対流が起こり難く、耐食性酸化皮膜の処理ムラが発生し易い。一方、この距離が50mmを超えると、導電材と対向するアルミニウム材との間隔が広過ぎるために、アルミニウム材の全面に多孔性酸化皮膜が形成されてしまう。
【0036】
交流電解処理工程において、電解溶液として用いるアルカリ性水溶液は、りん酸ナトリウム、りん酸水素カリウム、ピロりん酸ナトリウム、ピロりん酸カリウム及びメタりん酸ナトリウム等のりん酸塩;水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸塩;水酸化アンモニウム;或いは、これらの混合物の水溶液を用いることができる。後述するように電解溶液のpHを特定の範囲に保つ必要があることから、バッファー効果の期待できるりん酸塩系物質を含有するアルカリ水溶液を用いるのが好ましい。このようなアルカリ性水溶液に含まれるアルカリ成分の濃度は、電解溶液のpHが所望の値になるように適宜調整されるが、通常、1×10
−4〜1モル/リットル、好ましくは1×10
−3〜0.8モル/リットルである。なお、これらのアルカリ性水溶液には、汚れ除去能力の向上のために界面活性剤を添加してもよい。
【0037】
電解溶液のpHは9〜13とする必要があり、9.5〜12とするのが好ましい。pHが9未満の場合には、電解溶液のアルカリエッチング力が不足するため多孔性酸化皮膜が不定形皮膜となり所定のポーラス型アルミニウム酸化皮膜層及びバリア型アルミニウム酸化皮膜層の形成が不完全になる。また、pHが9未満では、耐食性酸化皮膜の厚さ制御が困難となり、処理ムラが発生し易くなる。一方、pHが13を超えると、アルカリエッチング力が過剰になるため酸化皮膜層が成長し難くなり、所望の多孔性酸化皮膜形成が阻害される。
【0038】
電解溶液温度は35〜85℃とする必要があり、40〜70℃とするのが好ましい。電解浴温度が35℃未満の場合には、アルカリエッチング力が不足するため多孔性酸化皮膜の形成が不完全となる。一方、85℃を超えるとアルカリエッチング力が過剰になるため、多孔性酸化皮膜及び耐食性酸化皮膜の形成が阻害される。
【0039】
電解溶液に含有される溶存アルミニウム濃度は、5ppm以上1000ppm以下とする必要があり、10ppm以上500ppm以下とするのが好ましい。溶存アルミニウム濃度が5ppm未満の場合は、電解反応初期における酸化皮膜の形成反応が急激に生起するため、局部的に厚い多孔性酸化皮膜が形成されてしまう上、耐食性酸化皮膜にムラが生じてしまう。一方、溶存アルミニウム濃度が1000ppmを超える場合は、電解溶液の粘度が増大して電解工程においてアルミニウム材表面付近の均一な対流が妨げられるのと同時に、溶存アルミニウムが多孔性酸化皮膜形成を抑制する方向に作用する。その結果、局部的に薄い多孔性酸化皮膜が形成されることになる。溶存アルミニウムの濃度が上記範囲から外れると、アルミニウム材表面に形成された多孔性酸化皮膜全体において、前記ポーラス型アルミニウム酸化皮膜層とバリア型アルミニウム酸化皮膜層との合計厚さの変動幅を、この合計厚さの算術平均値の±50%以内にすることが困難となる。その結果、得られる多孔性酸化皮膜の接着力・密着力の低下を招く。
【0040】
用いる周波数は10〜100Hzである。10Hz未満では、電気分解としては直流的要素が高まる結果、ポーラス型アルミニウム酸化皮膜層の形成が進行せず、緻密構造となってしまう。一方、100Hzを超えると、陽極と陰極の反転が速すぎるため、酸化皮膜全体の形成が極端に遅くなり、多孔性酸化皮膜及び耐食性酸化皮膜ともに、所定の厚さを得るには極めて長時間を要することになる。なお、用いる周波数は20〜80Hzとするのが好ましい。
【0041】
電流密度は4〜50A/dm
2とする必要がある。電流密度が4A/dm
2未満では、多孔性酸化皮膜のうち、バリア型アルミニウム酸化皮膜層のみが優先的に形成されるためにポーラス型アルミニウム酸化皮膜層が得られない。一方、50A/dm
2を超えると、電流が過大になるため多孔性酸化皮膜及び耐食性酸化皮膜の厚さ制御が困難となり処理ムラが起こり易い。なお、電流密度は5〜30A/dm
2とするのが好ましい。
【0042】
電解時間は5〜60秒とする必要がある。5秒未満の処理時間では、多孔性酸化皮膜の形成が急激過ぎるため、ポーラス型アルミニウム酸化皮膜層が十分に形成されず、不定形のアルミニウム酸化物から構成される酸化皮膜となってしまう。一方、60秒を超えると、酸化皮膜が再溶解するために耐食性酸化皮膜層が十分に形成されず、生産性も低下するため好ましくない。なお、電解時間は10〜50秒とするのが好ましい。
【0043】
交流電解処理に使用する一対の電極のうち一方の電極は、電解処理によって表面処理されるべきアルミニウム材である。他方の対電極としては、例えば、黒鉛、アルミニウム、チタン電極等の公知の電極を用いることができるが、電解溶液のアルカリ成分や温度に対して劣化せず、導電性に優れ、更に、それ自身が電気化学的反応を起こさない材質のものを使用する必要がある。このような点から、対電極としては黒鉛電極が好適に用いられる。これは、黒鉛電極が化学的に安定であり、かつ、安価で入手が容易であることに加え、黒鉛電極に存在する多くの気孔の作用により交流電解工程において電気力線が適度に拡散するため、多孔性酸化皮膜及び耐食性酸化皮膜が共により均一になり易いためである。
【0044】
電解処理によって、アルミニウム材に耐食性酸化皮膜を形成させる部分に結線される導電材は、アルミニウム材より電極電位が貴である必要がある。アルミニウム材より電極電位が貴な導電材をアルミニウム材と結線し、アルミニウム材の近傍に設置して電解することで、交流電解におけるカソード反応を導電材表面で起こさせ、アノード反応をアルミニウム材および導電材表面で起こすことができる。よって、アルミニウム材表面にはアノード反応による耐食性酸化皮膜が形成する。アルミニウム材より電極電位が貴な導電材は、例えば、金、白金、銅、鉄、ステンレス鋼、ニッケル等であるが、本発明においては、ステンレス鋼または銅が好適に用いられる。これは、アルカリ溶液中での耐食性に優れ、安価でかつ加工がしやすいためである。
【0045】
本発明においては、電解処理されるべきアルミニウム材及び対電極には共に平板状のものを用い、対向するアルミニウム材と対電極の対向面同士の寸法をほぼ同一として、両電極を静止状態で電解操作を行なうのが好ましい。
図3に示すように、対電極5を用意し、対電極板5と対向するように表面処理されるアルミニウム材2の表面を、対電極5の表面と平行になるように設置することが好ましい。なお、図中7は交流電源、図中8は電解溶液である。
【0046】
平板状の電解処理されるアルミニウム材2と結線された導電材6の形状は、平板状である必要はなく、網状や多穴状であってもよい。
図3に示すように、例えば、表面処理されるアルミニウム材2の一方の面(図中左側の面)側に、この面と対向するように導電材6を配置し、アルミニウム材2の他方の面(図中右側の面)側に、この面と対向するように対電極5を配置して交流電解を行うことにより、アルミニウム材2の上記一方の面に耐食性酸化皮膜が形成され、上記他方の面に多孔性酸化皮膜を形成させることができる。
【0047】
図3の場合に替わって
図4に示すように、表面処理されるアルミニウム材2の他方の面(図中右側の面)と、この面に対応する対電極5との間に導電材6を配置することもできる。この場合には、アルミニウム材2の他方の面の一部(図中の上側半分)を導電材6と対向させ、アルミニウム材2の他方の面の他の部位(図中の下側半分)は導電材6ではなく対電極5と対向させる。このような配置で交流電解を行うことにより、導電材6と対向するアルミニウム材の他方の面の一部に耐食性酸化皮膜が形成され、導電材6ではなく対電極5と対するアルミニウム材における他方の面の他の部位に多孔性酸化皮膜が形成され、アルミニウム材2の同一面に耐食性酸化皮膜と多孔性酸化皮膜を形成することができる。また、
図4において、アルミニウム材2の他方の面の一部(図中の下側半分)を導電材6と対向させ、アルミニウム材2の他方の面の他の部位(図中の上側半分)は導電材6ではなく対電極5と対向させるように配置することにより、前記他方の面の一部に耐食性酸化皮膜を形成し、前記他方の面の他の部位に多孔性酸化皮膜を形成してもよい。
【0048】
更に、アルミニウム材2の他方の面の一部として導電材6と対向させる部分は、任意の形状、大きさ及び位置とすることができる。そして、アルミニウム材2の他方の面の他の部位として対電極5と対向させる部位は、他方の面において前記一部と相補的な部分とすることができる。
【0049】
本発明における多孔性酸化皮膜と耐食性酸化皮膜の構造観察と厚さの測定には、透過型電子顕微鏡(TEM)による断面観察が好適に用いられる。具体的には、多孔性酸化皮膜及び耐食性酸化皮膜の厚さ、ならびに、多孔性酸化皮膜層の小孔の直径は、ウルトラミクロトーム等により薄片に加工し、TEM観察することによって測定できる。
【実施例】
【0050】
以下、実施例および比較例に基づいて、本発明における好適な実施の形態を説明する。
【0051】
電解処理されるアルミニウム材として、縦500mm×横500mm×板厚1.0mmのJIS5052の平板を使用した。このアルミニウム板を一方の電極に用い、対電極には、縦500mm×横550mm×板厚2.0mmの黒鉛板又はチタン板を用いた。実施例1〜23及び比較例1〜13では、
図3に示すように、対電極5とアルミニウム材2を互いに平行になるように配設した。アルミニウム合金板2の対電極5とは反対側の面の近傍には、導電材6を配置し、アルミニウム合金板2の導電材6側の全面に耐食性酸化皮膜を、対電極側全面に多孔性酸化皮膜を形成させた。なお、実施例24では、
図4に示すように、アルミニウム材2の表面他方の面(図中右側の面)の一部(図中の上側半分)を導電材と対向させ、アルミニウム材2の表面他方の面の他の部位(図中の下側半分)は導電材6ではなく対電極5と対向させるように配設し、アルミニウム材2の同一面に耐食性酸化皮膜と多孔性酸化皮膜を形成させた。
【0052】
導電材には、実施例1〜14、18〜21及び比較例1〜13では、縦500mm×横500mm×板厚0.5mmのSUS304ステンレス鋼板を使用した。実施例15では、縦500mm×横500mm×板厚0.5mmの銅板を使用した。実施例16では、縦500mm×横500mm、線経0.5mm、空間率64.5%、10メッシュのSUS304ステンレス鋼金網を使用した。実施例17では、縦500mm×横500mm、孔径6mm、孔間距離(ピッチ)8mmのSUS304ステンレス鋼パンチングメタルを使用した。実施例22では、縦480mm×横480mm×板厚0.5mmのSUS304ステンレス鋼板を使用した。実施例23では、縦570mm×横570mm×板厚0.5mmのSUS304ステンレス鋼板を使用した。実施例24では、縦250mm×横500mm×板厚0.5mmのSUS304ステンレス鋼板を使用した。なお、導電材とアルミニウム合金板との距離は、実施例1〜17、22〜24及び比較例1〜13では5mmとした。実施例18では2mmとし、実施例19では45mmとし、実施例20では0.5mmとし、実施例21では55mmとした。なお、表1に示した、アルミニウム材の面積に対する導電材の面積比において、導電材の面積は空間部を無視した縦横の長さから求めた。
【0053】
電解溶液には、表1に示すpHと温度及び溶存アルミニウム濃度を有するピロりん酸ナトリウムを主成分とする、アルカリ性水溶液を使用した。なお、0.1モル/リットルのNaOH水溶液で電解溶液のpHを調整した。アルカリ性水溶液のアルカリ成分濃度は0.1モル/リットルとした。更に、表1に示す交流電解処理条件で電解処理を実施し、アルミニウム板の一方の表面に耐食性酸化皮膜を形成し、他方の表面に多孔性酸化皮膜を形成した表面処理アルミニウム材の供試材を作製した。
【0054】
【表1】
【0055】
[耐食性酸化皮膜の厚さ測定]
以上のようにして作製した供試材に対し、TEMにより耐食性酸化皮膜の断面観察を実施した。具体的には、耐食性酸化皮膜の厚さを測定し、更に、耐食性酸化皮膜の構造(皮膜層が単層構造であるか否か)を観察した。耐食性酸化皮膜の厚さの測定、ならびに、耐食性酸化皮膜の構造の観察のために、ウルトラミクロトームを用いて供試材から断面観察用薄片試料を作製した。次に、この薄片試料において観察視野(1μm×1μm)中の任意の100点を選択してTEM断面観察により、耐食性酸化皮膜の厚さの測定、ならびに、耐食性酸化皮膜が単層構造でるか否かを観察した(単層構造の場合を○、単層構造でない場合を×とした)。耐食性酸化皮膜の厚さが10〜100nmであり、かつ、耐食性酸化皮膜が単層構造である場合の評価が合格(○)とし、耐食性酸化皮膜の厚さが10〜100nmの範囲にない場合及び耐食性酸化皮膜が単層構造でない場合の少なくともいずれかの場合の評価を不合格(×)とした。以上の結果を、表2に示す。
【0056】
【表2】
【0057】
[多孔性酸化皮膜の膜厚測定]
多孔性酸化皮膜層においても、TEMにより断面観察を実施した。具体的には、多孔性酸化皮膜層におけるポーラス型アルミニウム酸化皮膜層及びバリア型アルミニウム酸化皮膜層の厚さ、ならびに、多孔性酸化皮膜層の小孔の直径を測定した。これらを測定するために、ウルトラミクロトームを用いて供試材から断面観察用薄片試料を作製した。次に、この薄片試料において観察視野(1μm×1μm)中の任意の100点を選択してTEM断面観察により、多孔性酸化皮膜層におけるポーラス型アルミニウム酸化皮膜層及びバリア型アルミニウム酸化皮膜層の厚さ、多孔性酸化皮膜層の小孔の直径を各点で測定した。このようにして測定した100点のポーラス型アルミニウム酸化皮膜層及びバリア型アルミニウム酸化皮膜層の合計厚さの最大値、最小値及び算術平均値を求めた。また、ポーラス型アルミニウム酸化皮膜層とバリア型アルミニウム酸化皮膜層との合計厚さの変動幅が算術平均値の±50%以内にあるか否かについても調べた。具体的には、算術平均値をT(nm)とした場合に、最大値及び最小値を含めた全ての合計厚さが(0.5×T)〜(1.5×T)の範囲にある場合を合格(○)とし、範囲にない場合を不合格(×)とした。なお、実施例24では、対電極と対向する側の面を用いた。以上の結果を、表2に示す。
【0058】
[耐食性酸化皮膜の耐食性評価]
各供試材から、長さ50mmで幅50mmに切断したものを10枚用意した。耐食性試験は、塩水噴霧試験方法(JIS Z 2371)に記載のCASS試験によって行った。得られた陽極酸化処理品をCASS試験にかけて3時間後に取出し、耐食性酸化皮膜における腐食面積を測定して腐食面積率の評価を行った。ここで、腐食面積率(%)とは、[(腐食面積)/(耐食性酸化皮膜の全面積)]×100とした。
○:腐食面積率が10%未満のもの
△:腐食面積率が10%以上50%未満のもの
×:腐食面積率が50%以上のもの
結果を表3に示す。同表には、10個の試験片のうちの上記○、△、×の個数をそれぞれ示すが、全てが○の場合を合格、それ以外を不合格と判定した。
【0059】
【表3】
【0060】
[耐食性酸化皮膜の膜質評価]
FT−IRにより、耐食性酸化皮膜のピーク吸収波数b(cm
−1)と、ピーク吸収波数bにおけるピーク吸収率a(%)を測定した。FT−IRのディテクター(検出器)は、測定可能な波数が広範囲(400〜4000cm
−1)のものを使用した、試料面積は、30mm×50mmとした。結果を表3に示す。同表には、ピーク吸収率a(%)とピーク吸収波数b(cm
−1)が、1≦a≦95、かつ、ピーク吸収率a(%)及びピーク吸収波数b(cm
−1)の関係がb≧3a+710を満たす場合を合格(○)とし、範囲にない場合を不合格(×)とした。
【0061】
[多孔性酸化皮膜の接着剤接着性評価]
供試材から、長さ50mmで幅25mmに切断したものを2枚用意した。これら2枚の供試材同士を全幅方向に沿って接着幅10mmをもって、多孔性酸化皮膜の形成面同士を重ね合わせ、市販の2液型エポキシ接着剤(主剤=変性エポキシ樹脂、硬化剤=変性ポリイミド、重量混合比=主剤100/硬化剤100)によって重ね合わせ部分を接着して、せん断試験片を作製した。2枚の供試材の長さ方向の端部を引張試験機により10mm/分の速度にて長さ方向に沿って反対向きに引張り、その荷重(せん断応力に換算)と剥離状態によって接着剤接着性を下記の基準で評価した。なお、せん断試験片は10組の試験片を作製して、それぞれについて評価した。なお、実施例24では、対電極と対向する側の面を用いた。
○:せん断応力が20N/mm
2以上で、かつ、接着剤層自身が凝集破壊した状態
△:せん断応力が20N/mm
2以上であるものの、接着剤層と供試材が界面剥離した状態
×:せん断応力が20N/mm
2未満で、かつ、接着剤層と供試材が界面剥離した状態
結果を表3に示す。同表には、10組の試験片のうちの上記○、△、×の組数をそれぞれ示すが、全てが○の場合を合格、それ以外を不合格と判定した。
【0062】
[多孔性酸化皮膜の塗膜密着性評価]
上記供試材の多孔性酸化皮膜側の表面に大日本塗料(株)製「Vフロン#2000」を塗布しこれを乾燥して(160℃,20分)、30μmの厚さの樹脂塗膜を形成した密着性試験片を作製した。JIS−K5600−5−6に準拠した方法で、この密着性試験片の樹脂塗膜にカッターナイフを用いて1mm角の碁盤目カットを入れた。次いで、試験片に125℃で30分のレトルト浸漬処理を施した後に、直ちに処理液から取り出して水分をふき取った。この試験片に対して、透明感圧付着テープによる剥離試験を実施した。塗膜残存率によって密着性を下記の基準で評価した。なお、密着性試験片は同じ供試材から10個の試験片を作製して、それぞれについて評価した。なお、実施例24では、対電極と対向する側の面を用いた。
○:塗膜残存率が100%のもの
△:塗膜残存率が75%以上100%未満のもの
×:塗膜残存率が75%未満のもの
結果を表3に示す。同表には、10個の試験片のうちの上記○、△、×の個数をそれぞれ示すが、全てが○の場合を合格、それ以外を不合格と判定した。
【0063】
[総合評価]
耐食性酸化皮膜の耐食性評価と膜質評価、ならびに、多孔性酸化皮膜の接着剤接着性評価と塗膜密着性評価の全てが合格であったものの総合評価を合格とし、これら各評価の少なくともいずれか一つが不合格のものの総合評価を不合格とした。
【0064】
表2、3に示すように、実施例1〜24では、本発明要件を満たすため、耐食性酸化皮膜の耐食性及び膜質が良好であり、かつ、多孔性酸化皮膜の接着剤接着性及び塗膜密着性が良好であり、総合評価が合格であった。一方、比較例1〜13では本発明要件を満たしていないため、上記各評価の少なくとも一つが不合格であり、総合評価が不合格となった。
【0065】
具体的には、比較例1では、交流電解における電解溶液のpHが低過ぎたため、アルカリエッチング力が不足した。そのため、ポーラス型アルミニウム酸化皮膜層における小孔の直径が不足し、バリア型アルミニウム酸化皮膜層の厚さが厚くなり、多孔性酸化皮膜厚さの変動幅が大きくなった。その結果、多孔性酸化皮膜の接着剤接着性及び塗膜密着性が不合格となり、総合評価が不合格となった。
【0066】
比較例2では、交流電解における電解溶液のpHが高過ぎたため、アルカリエッチングが過剰に起こった。そのため、耐食性酸化皮膜の厚さが不足し、ポーラス型アルミニウム酸化皮膜層の厚さが不足し小孔の直径が大きくなり、またバリア型アルミニウム酸化皮膜層の厚さが不足した。その結果、耐食性酸化皮膜の耐食性が不合格となり、ならびに、多孔性酸化皮膜の接着剤接着性及び塗膜密着性が不合格となり、総合評価が不合格となった。
【0067】
比較例3では、交流電解における電解溶液の温度が低過ぎたため、アルカリエッチング力が不足した。そのため、バリア型アルミニウム酸化皮膜層の厚さが厚くなった。また、ポーラス型アルミニウム酸化皮膜層の小孔の直径が小さくなった。その結果、多孔性酸化皮膜の接着剤接着性及び塗膜密着性が不合格となり、総合評価が不合格となった。
【0068】
比較例4では、交流電解における電解溶液の温度が高過ぎたため、アルカリエッチングが過剰に起こった。そのため、耐食性酸化皮膜の厚さ、ならびに、ポーラス型アルミニウム酸化皮膜層及びバリア型アルミニウム酸化皮膜層の厚さが不足した。その結果、耐食性酸化皮膜の耐食性及び膜質が不合格となり、ならびに、多孔性酸化皮膜の接着剤接着性及び塗膜密着性が不合格となり、総合評価が不合格となった。
【0069】
比較例5では、交流電解の電解溶液中に溶存アルミニウムが存在していなかった。そのため、電解反応初期における多孔性酸化皮膜の形成反応が急激に生起し、多孔性酸化皮膜厚さの変動幅が大きくなった。また、耐食性酸化皮膜の形成も不均一となり、厚さが不足した。その結果、耐食性酸化皮膜の耐食性及び膜質が不合格となり、ならびに、多孔性酸化皮膜の接着剤接着性及び塗膜密着性が不合格となり、総合評価が不合格となった。
【0070】
比較例6では、交流電解の電解溶液中に多量の溶存アルミニウムが存在した。そのため、バリア型アルミニウム酸化皮膜層の形成が不均一となり局所的に厚い部分が形成し、ポーラス型アルミニウム酸化皮膜層の小孔の直径が小さくなった。更に多孔性酸化皮膜厚さの変動幅が大きくなった。その結果、多孔性酸化皮膜の接着剤接着性及び塗膜密着性が不合格となり、総合評価が不合格となった。
【0071】
比較例7では、交流電解における周波数が低過ぎたため、電流の直流成分が強くなった。そのため、ポーラス型アルミニウム酸化皮膜層の形成が抑制されて厚さが不足した。その結果、多孔性酸化皮膜の接着剤接着性及び塗膜密着性が不合格となり、総合評価が不合格となった。
【0072】
比較例8では、交流電解における周波数が高過ぎたため、耐食性酸化皮膜及びポーラス型アルミニウム酸化皮膜層の形成が抑制されて、それぞれの厚さが不足した。その結果、耐食性酸化皮膜の耐食性及び膜質が不合格となり、ならびに、多孔性酸化皮膜の接着剤接着性及び塗膜密着性が不合格となり、総合評価が不合格となった。
【0073】
比較例9では、交流電解における電流密度が低過ぎたため、耐食性酸化皮膜及びポーラス型アルミニウム酸化皮膜層の形成が抑制されて、それぞれの厚さが不足した。その結果、耐食性酸化皮膜の耐食性及び膜質が不合格となり、ならびに、多孔性酸化皮膜の接着剤接着性及び塗膜密着性が不合格となり、総合評価が不合格となった。
【0074】
比較例10では、交流電解における電流密度が高過ぎたため、多孔性酸化皮膜及び耐食性酸化皮膜の形成が不均一になった。そのため、耐食性酸化皮膜の厚さ、ならびに、ポーラス型アルミニウム酸化皮膜層及びバリア型アルミニウム酸化皮膜層の厚さが厚くなった。また、多孔性酸化皮膜厚さの変動幅が大きくなった。その結果、耐食性酸化皮膜の耐食性及び膜質が不合格となり、ならびに、多孔性酸化皮膜の接着剤接着性及び塗膜密着性が不合格となり、総合評価が不合格となった。
【0075】
比較例11では、交流電解における電解時間が短過ぎたため、耐食性酸化皮膜の厚さ、ならびに、ポーラス型アルミニウム酸化皮膜層の厚さが不足した。また、多孔性酸化皮膜厚さの変動幅が大きくなった。その結果、耐食性酸化皮膜の耐食性及び膜質が不合格となり、ならびに、多孔性酸化皮膜の接着剤接着性及び塗膜密着性が不合格となり、総合評価が不合格となった。
【0076】
比較例12では、交流電解における電解時間が長過ぎたため、多孔性酸化皮膜の形成が進み過ぎた。そのため、ポーラス型アルミニウム酸化皮膜層及びバリア型アルミニウム酸化皮膜層の厚さが厚くなった。その結果、多孔性酸化皮膜の接着剤接着性及び塗膜密着性が不合格となり、総合評価が不合格となった。
【0077】
比較例13では、交流電解の電解溶液中に溶存アルミニウムが5ppm未満であった。そのため、電解反応初期における多孔性酸化皮膜の形成反応が急激に生起し、多孔性酸化皮膜厚さの変動幅が大きくなった。また、耐食性酸化皮膜の形成も不均一となり、厚さが不足した。その結果、耐食性酸化皮膜の耐食性が不合格となり、ならびに、多孔性酸化皮膜の接着剤接着性及び塗膜密着性が不合格となり、総合評価が不合格となった。