(54)【発明の名称】繊維性基材を含浸するための液体(メタ)アクリルシロップ及びこれらの製造方法、繊維性基材を含浸するための方法、及びこのプレ含浸基材の重合の後に製造された複合材料
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
可撓性の性質を有する前記巨大分子ブロックが、少なくとも70質量%のブチルアクリレートを含むことを特徴とする、請求項1から3の何れか一項に記載の液体(メタ)アクリル含浸シロップ。
前記巨大分子ブロックが、70/30から90/10のブチルアクリレート/スチレン質量比におけるブチルアクリレート及びスチレンから調製されることを特徴とする、請求項1から4の何れか一項に記載の液体(メタ)アクリル含浸シロップ。
前記ブロックコポリマーが、制御されたラジカル重合(CRP)によって又はアニオン性重合によって得られることを特徴とする、請求項6に記載の液体(メタ)アクリル含浸シロップを調製するための方法。
前記(メタ)アクリルポリマーが、メチルメタクリレート(MMA)のホモポリマー若しくはコポリマー又はこれらの混合物であることを特徴とする、請求項1に記載の液体(メタ)アクリル含浸シロップ。
前記(メタ)アクリルモノマーが、アクリル酸、メタクリル酸、アルキルアクリルモノマー及びアルキルメタクリルモノマー、並びにこれらの混合物から選択され、前記アルキル基が1から22個の直鎖、分岐状又は環状炭素を含有することを特徴とする、請求項1に記載の液体(メタ)アクリル含浸シロップ。
熱可塑性(メタ)アクリルマトリックス及び強化材として使用される繊維性基材を含むポリマー性複合材料であって、ここで前記繊維性基材は長繊維からなり、前記複合材料は、熱可塑性(メタ)アクリルマトリックスが、請求項1から6及び8から12の何れか一項に記載の液体(メタ)アクリル含浸シロップでプレ含浸された繊維性基材の重合後に得られることを特徴とする、複合材料。
前記部品が、自動車部品、船部品、列車部品、スポーツ物品、飛行機又はヘリコプター部品、宇宙船又はロケット部品、太陽光発電モジュール部品、風力タービン部品、家具部品、建設又は建築部品、電話又は携帯電話部品、コンピュータ又はテレビ部品、プリンタ又はコピー機部品である、請求項20に記載の部品。
【発明を実施するための形態】
【0024】
第1の態様によれば、本発明は、繊維性基材を含浸するための液体(メタ)アクリルシロップに関し、この繊維性基材は長繊維からなり、このシロップは:
a)(メタ)アクリルポリマー、
b)(メタ)アクリルモノマー、
c)0℃未満のガラス転移温度を有し、この(メタクリル)モノマーに可溶性の可撓性の性質を有する巨大分子ブロックからなるエラストマー性ドメイン
を含み、この液体(メタ)アクリルシロップは、10mPa.s〜10000mPa.s、好ましくは50mPa.s〜5000mPa.s、有利なことには100mPa.s〜1000mPa.sの動的粘度を有する。
【0025】
別の態様によれば、シロップ中の巨大分子ブロックの含有量は、1重量%〜40重量%、好ましくは2重量%〜25重量%、有利なことには5重量%〜15重量%である。
【0026】
使用される場合に、用語「繊維性基材」は、ストリップ、ラップ、ブレイド、ロック又はピースの形態であってもよい布地、フェルト又は不織布を指す。
【0027】
使用される場合、用語「(メタ)アクリル」は、アクリル又はメタクリルモノマーのいずれかのタイプを指す。
【0028】
使用される場合、用語「PMMA」は、メチルメタクリレート(MMA)のホモポリマー及びコポリマーを指し、PMMA中のMMAの重量比は、MMAコポリマーについて少なくとも70重量%である。
【0029】
使用される場合、用語「モノマー」は、重合を行うことができる分子を指す。
【0030】
使用される場合、用語「重合」は、モノマー又はモノマーの混合物をポリマーに転化するプロセスを指す。
【0031】
使用される場合、用語「熱可塑性ポリマー」は、加熱した場合に液体になる又はさらに液状になる若しくは粘稠性が低下し、熱及び圧力の適用によって新しい形状になり得るポリマーを指す。
【0032】
使用される場合、用語「熱硬化性ポリマー」は、硬化によって溶融不可能で、不溶性のポリマーネットワークに必然的に変化する軟質、固体又は粘稠状態のプレポリマーを指す。
【0033】
使用される場合、用語「ポリマー複合体」は、いくつかの異なる相ドメインを含む多成分材料を指し、これらの相ドメインのうち、少なくとも1つのタイプは、連続相であり、少なくとも1つの構成成分はポリマーである。
【0034】
使用される場合、用語「混和性」は、均質相を形成するために、完全に共に混合する2つの化合物の能力を指す。
【0035】
使用される場合、用語「可溶性」は、均質相を有する溶液を形成するために、溶媒として既知の液体中に混合する固体の能力を指す。
【0036】
用語「剛性」は、繊維で強化されてもよい熱可塑性又は熱硬化性材料の場合に、標準ISO527に従う引張試験を指す。
【0037】
用語「弾力」は、繊維で強化されていない材料の場合に標準ISO179に従って非ノッチCharpy衝撃を指す。
【0038】
用語「クラック耐性」は、繊維で強化されていない材料の場合に標準ISO13586に従ってノッチ付き試料における試験を指す。
【0039】
複合部品に関して、それは、複合材料からなるパネル、蓋又はシェルあるいは飛行機、船(船体及びブリッジ)、電車車両(ハッチ、バルクヘッド、エンクロージャ)及び自動車車両部品(車体、フード、ドア)である。
【0040】
(メタ)アクリルモノマーに関して、モノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、アルキルアクリルモノマー、アルキルメタクリルモノマー及びこれらの混合物から選択される。
【0041】
好ましくは、モノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、アルキルアクリルモノマー、アルキルメタクリルモノマー及びこれらの混合物から選択され、このアルキル基は、1〜22個の直鎖、分岐又は環状炭素を含有し;このアルキル基は、好ましくは1〜12個の直鎖、分岐又は環状炭素を含有する。
【0042】
有利なことには、(メタ)アクリルモノマーは、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メタクリル酸、アクリル酸、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルアクリレート及びイソボルニルメタクリレート、及びこれらの混合物から選択される。
【0043】
より有利なことには、(メタ)アクリルモノマーは、メチルメタクリレート、イソボルニルアクリレート及びアクリル酸、及びこれらの混合物から選択される。
【0044】
好ましい実施形態によれば、モノマーの少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%は、メチルメタクリレートである。
【0045】
より好ましい実施形態によれば、モノマーの少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%、より好ましくは少なくとも70重量%、有利なことには少なくとも80重量%及びさらにより有利なことには90重量%は、メチルメタクリレートとイソボルニルアクリレート及び/又はアクリル酸との混合物である。
【0046】
(メタ)アクリルポリマーに関して、ポリアルキルメタクリレート又はポリアルキルアクリレートを挙げることができる。好ましい実施形態によれば、(メタ)アクリルポリマーはポリメチルメタクリレート(PMMA)である。
【0047】
用語「PMMA」は、メチルメタクリレート(MMA)ホモポリマー又はコポリマー又はこれらの混合物を指す。
【0048】
1つの実施形態によれば、メチルメタクリレート(MMA)ホモポリマー又はコポリマーは、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、有利なことには少なくとも90%、より有利なことには少なくとも95重量%のメチルメタクリレートを含む。
【0049】
別の実施形態によれば、PMMAは、MMAの少なくとも1つのホモポリマー及び少なくとも1つのコポリマーの混合物、又は異なる平均分子量を有するMMAの少なくとも2つのホモポリマー又は2つのコポリマーの混合物、あるいはMMAと異なるモノマー組成物との少なくとも2つのコポリマーの混合物である。
【0050】
メチルメタクリレート(MMA)のコポリマーは、70重量%〜99.7重量%のメチルメタクリレート、及び0.3重量%〜30重量%の、メチルメタクリレートと共重合できる少なくとも1つのエチレン性不飽和を含有する少なくとも1つのモノマーを含む。
【0051】
これらのモノマーは周知であり、特にアクリル酸及びメタクリル酸、及びアルキル(メタ)アクリレート(ここでアルキル基は、1〜12個の炭素原子を含有する)を挙げることができる。例として、メチルアクリレート及びエチル、ブチル又は2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートを挙げることができる。好ましくは、コモノマーは、アルキル基が1〜4個の炭素原子を含有するアルキルアクリレートである。
【0052】
好ましい実施形態によれば、メチルメタクリレート(MMA)のコポリマーは、80重量%〜99.7重量%、有利なことには90重量%〜99.7重量%、より有利なことには90重量%〜99.5重量%のメチルメタクリレート、並びに0.3重量%〜20重量%、有利なことには0.3重量%〜10重量%、より有利なことには0.5重量%〜10重量%の、メチルメタクリレートと重合できる少なくとも1つのエチレン性不飽和を含有する少なくとも1つのモノマーを含む。好ましくは、コモノマーは、メチルアクリレート及びエチルアクリレート、及びこれらの混合物から選択される。
【0053】
(メタ)アクリルポリマーの重量平均分子質量は、高くなければならず、50000g/molを超える、好ましくは100000g/molを超えるべきである。
【0054】
重量平均分子質量は、サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)又はゲル透過クロマトグラフィ(GPC)によって測定されてもよい。
【0055】
(メタ)アクリルポリマーは、(メタ)アクリルモノマー中に又は(メタ)アクリルモノマーの混合物中に完全に可溶性である。それは、(メタ)アクリルモノマー又は(メタ)アクリルモノマーの混合物の粘度を増大できる。得られた溶液は、一般に「シロップ」又は「プレポリマー」と呼ばれる。液体(メタ)アクリルシロップの動的粘度値は、10mPa.s〜10000mPa.s、好ましくは50mPa.s〜5000mPa.s、有利なことには100mPa.s〜1000mPa.sである。シロップの粘度は、レオメータ又は粘度計を用いて容易に測定できる。動的粘度は、25℃にて測定される。液体(メタ)アクリルシロップは、ニュートン挙動を有し、剪断減粘性を示さないことを意味し、結果として動的粘度は、レオメータにおける剪断又は粘度計におけるスピンドルの速度に独立している。得られたシロップのこうした粘度は、繊維性基材の繊維の正確な含浸を可能にする。
【0056】
有利なことには、液体(メタ)アクリルシロップは、さらなる任意添加溶媒を含有しない。
【0057】
巨大分子ブロックに関して、それらは、標準ISO11357−2に従って示差走査熱量測定(DSC)によって測定され、Tgとして記述される0℃未満のガラス転移温度を有する。
【0058】
好ましくは、可撓性の性質を有する巨大分子ブロックは、0℃未満のガラス転移温度を有する少なくとも1つのブロックを含有するブロックコポリマーの一部を形成する。
【0059】
ブロックコポリマーは、熱可塑性ブロックコポリマーから選択され得る。有利なことには、ブロックコポリマーは非晶質である。より有利なことには、ブロックコポリマーは、半結晶性又は結晶性ブロックを含まない。
【0060】
最も好ましくは熱可塑性ブロックコポリマーは、アクリルブロックを含有する熱可塑性コポリマーである。これは、アクリルブロックを含有する熱可塑性コポリマーに含有するモノマーの少なくとも50重量%がアルキル(メタ)アクリレートモノマーであることを意味する。
【0061】
ブロックコポリマーは、制御されたラジカル重合(CRP)によって、又はアニオン性重合によって得られ得る;最も適切なプロセスは、製造されるべきコポリマーのタイプに依存して、選択される。
【0062】
それは、好ましくは、(A)
nBタイプのブロックコポリマーについては、特にニトロキシドの存在下でのCRPであり、ABAタイプの構造についてはアニオン性又はニトロキシド系ラジカル重合である。
【0063】
さらに、0℃未満のガラス転移温度を有する可撓性の性質を有する巨大分子ブロックの数平均分子量は、10000g/molを超える、好ましくは30000g/molを超える、好ましくは60000g/molを超える、有利なことには120000g/molを超えるが、500000g/mol未満である。多分散性は、1.5〜2.5である。
【0064】
巨大分子ブロックは、以下から選択される1つ以上のモノマーから調製される:
・式CH
2=CH−C(=O)−O−R
1(式中、R
1は、水素原子、又はハロゲン原子
若しくはヒドロキシル
、アルコキシ、シアノ、アミノ若しくはエポキシ基で置換されてもよい直鎖、環状又は分岐状C
1−C
40アルキル
基を示す)のアクリルモノマー、例えばアクリル酸、メチル、エチル、プロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、2−エチルヘキシル又はグリシジルアクリレート、ヒドロキシアルキルアクリレート又はアクリロニトリル);
・式CH
2=C(CH
3)−C(=O)−O−R
2(式中、R
2は、水素原子、又はハロゲン原子
若しくはヒドロキシル
、アルコキシ、シアノ、アミノ若しくはエポキシ基で置換されてもよい直鎖、環状又は分岐状C
1−C
40アルキル
基を示す)のメタクリルモノマー、例えばメタクリル酸、メチル、エチル、プロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、2−エチルヘキシル又はグリシジルメタクリレート、ヒドロキシアルキルメタクリレート又はメタクリロニトリル;
・ビニル芳香族モノマー、例えばスチレン、置換スチレン、α−メチルスチレン、モノクロロスチレン又はtert−ブチルスチレン。
【0065】
巨大分子ブロックは、ジエンから調製されない。当業者は、巨大分子ブロックの全体のTgを調整するために、これらのモノマーを如何にして組み合わせるかを理解している。0℃未満のTgを有する巨大分子ブロックを得るために、0℃未満のTgを有する少なくとも1つのモノマー、例えばブチルアクリレート又は2−エチルヘキシルアクリレートを使用する必要がある。
【0066】
巨大分子ブロックは、0℃未満のTgを有するモノマー、例えばブチルアクリレート又は2−エチルヘキシルアクリレートだけで構成されてもよい。巨大分子ブロックはまた、少なくとも1つのアルキルアクリレート及びビニル芳香族モノマーで構成されてもよい。
【0067】
好ましくは、可撓性の性質を有する巨大分子ブロックは、ブチルアクリレートを少なくとも70質量%まで含む。
【0068】
有利なことには、巨大分子ブロックは、70/30〜90/10、好ましくは75/25〜85/15のブチルアクリレート/スチレン質量比にてブチルアクリレート及びスチレンで構成される。
【0069】
巨大分子ブロックは、巨大分子ブロックを形成することが意図されるモノマーと、一般式Z(−T)
n(式中、Zは多価基を示し、Tはニトロキシドを示し、nは2以上の整数である)のアルコキシアミンを混合することによって調製される。
【0070】
アルコキシアミンに関して、それは、一般式Z(−T)
n(Zは多価基を示し、Tはニトロキシドを示し、nは2を超える整数、好ましくは2〜10、有利なことには2〜8である)によって記載される。
【0071】
nは、アルコキシアミンの官能性を表し、すなわち以下の機構に従うアルコキシアミンによって放出され得るニトロキシドラジカルTの数を表す:
この反応は熱活性化される。モノマーの存在下、活性化されたアルコキシアミンは、重合を開始する。以下のスキームは、n=2であるアルコキシアミンに基づくコポリマーポリM2−ポリM1−ポリM2の調製を示す。モノマーM1は、アルコキシアミンの活性化後にまず重合され、一旦ブロックポリM1が完了したら、次いでモノマーM2が重合される:
ブロックコポリマーの調製の原理は、n>2について有効なままである。
【0072】
Zは、多価基、すなわち活性化後にいくつかのラジカル部位を放出できる基を示す。問題の活性化は、共有結合Z−Tの開裂によって生じる。
【0073】
例として、Zは以下の基(I)〜(VIII)から選択されてもよい:
式中、R
3及びR
4は、同一又は異なっていてもよく、1〜10個の範囲の多数の炭素原子を含有する直鎖又は分岐状アルキルラジカル、ハロゲン原子、例えばF、Cl又はBrで、又は1〜4個の範囲の多数の炭素原子を含有する直鎖又は分岐状アルキルラジカルで、又は代わりにニトロ、アルコキシ、アリールオキシ、カルボニル又はカルボキシルラジカルで置換されてもよいフェニル又はチエニルラジカル;ベンジルラジカル、3〜12個の範囲の多数の炭素原子を含有するシクロアルキルラジカル、1つ以上の不飽和を含むラジカルを表し;Bは、1〜20個の範囲の多数の炭素原子を含有する直鎖又は分岐状アルキレンラジカルを表し;mは、1〜10の範囲の整数である;
式中R
5及びR
6は、同一又は異なっていてもよく、ハロゲン原子、例えばF、Cl又はBrで置換されてもよい、又は代わりに1〜4個の範囲の多数の炭素原子を含有する直鎖又は分岐状アルキルラジカルを有する又は代わりにニトロ、アルコキシ、アリールオキシ、カルボニル又はカルボキシルラジカルを有するアリール、ピリジル、フリル又はチエニルラジカルを表し;Dは、1〜6個の範囲の多数の炭素原子を含有する直鎖又は分岐状アルキレンラジカル、フェニレンラジカル又はシクロアルキレンラジカルを表し;pは1〜10の範囲の整数である;
式中、R
7、R
8及びR
9は、同一又は異なっていてもよく、式(I)のR
3及びR
4と同じ意味を有し、q、r及びsは1〜10の範囲の整数である;
式中、R
10は式(II)のR
5及びR
6と同じ意味を有し、tは1〜4の範囲の整数であり、uは2〜6の整数である(芳香族基は置換される);
式中、R
11は、式(IV)のラジカルR
10と同じ意味を有し、vは2〜6の整数である;
式中、R
12、R
13及びR
14は、同一又は異なっていてもよく、ハロゲン原子、例えばCl又はBrで、又は代わりに1〜10個の範囲の多数の炭素原子を含有する直鎖又は分岐状アルキルラジカルで置換されてもよいフェニルラジカルを表し;Wは酸素、硫黄又はセレニウム原子を表し、wは0又は1に等しい;
式中、R
15は、式(I)のR
3と同じ意味を有し、R
16は、式(II)のR
5又はR
6と同じ意味を有する;
式中、R
17及びR
18は、同一又は異なっていてもよく、水素原子又は1〜10個の範囲の多数の炭素原子を含有する直鎖又は分岐状アルキルラジカル、ハロゲン原子又はヘテロ原子で置換されてもよいアリールラジカルを表す。
【0074】
Tは、ニトロキシドを示し、これは基=N−O
・、すなわち不対電子が存在する基を保持する安定なフリーラジカルである。用語「安定なフリーラジカル」は、大気空気及び湿分に対して持続的で非反応性であり、大部分のフリーラジカルよりも相当長い時間取扱い及び貯蔵できるラジカルを示す(この点において、Accounts of Chemical Research 1976,9,13−19を参照のこと)。故に安定なフリーラジカルは、寿命が短い(数ミリ秒から数秒)フリーラジカル、例えば通常の重合開始剤、例えば過酸化物、ヒドロペルオキシド又はアゾ開始剤から誘導されるフリーラジカルとは異なる。重合開始フリーラジカルは、重合を促進する傾向がある一方で、安定なフリーラジカルは、一般に重合を遅延させる傾向がある。フリーラジカルは、重合開始剤ではない場合、及び本発明の通常の条件下で、ラジカルの平均寿命が少なくとも1分である場合、本発明の意味内で安定であるということができる。
【0075】
Tは、以下の構造によって表される:
式中、R
19、R
20、R
21、R
22、R
23及びR
24は:
−直鎖又は分岐状C
1−C
20、好ましくはC
1−C
10アルキル、例えば置換又は非置換メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル、イソブチル、tert−ブチル又はネオペンチル、
−置換又は非置換C
6−C
30アリール、例えばベンジル、アリール(フェニル)、
−飽和C
1−C
30環状物からの基を示し、式中、基R
19及びR
22は、置換されてもよい環状構造R
19−CNC−R
22の一部を形成してもよく、これは以下から選択されてもよい:
式中、xは1〜12の整数を示す。
【0076】
例として、使用は以下のニトロキシドで製造されてもよい:
【0077】
式(X)のニトロキシドは、特に好ましくは本発明の文脈において使用される:
R
a及びR
bは、1〜40個の炭素原子を保持する同一又は異なるアルキル基を示し、環を形成するために共に連結されてもよく、ヒドロキシル、アルコキシ又はアミノ基で置換されてもよい、
R
Lは、16g/molを超える、好ましくは30g/molを超えるモル比を用いて一価の基を示す。基R
Lは、例えば40〜450g/molのモル質量を有していてもよい。それは、好ましくは一般式(XI)のリン保持基である:
式中、X及びYは、同一又は異なっていてもよく、アルキル、シクロアルキル、アルコキシル、アリールオキシル、アリール、アラルキルオキシル、ペルフルオロアルキル及びアラルキルラジカルから選択されてもよく、1〜20個の炭素原子を含んでいてもよく;X及び/又はYはまた、ハロゲン原子、例えば塩素、臭素又はフッ素原子であってもよい。
【0078】
有利なことには、R
Lは、以下の式のホスホネート基である:
式中、R
c及びR
dは、同一又は異なるアルキルであり、連結されてもよく、1〜40個の置換又は非置換であってもよい炭素原子を含む環を形成する。
【0079】
基R
Lはまた、少なくとも1つの芳香族環、例えばフェニルラジカル又はナフチルラジカルを含んでいてもよく、これは、例えば1〜10個の炭素原子を含む1つ以上のアルキルラジカルで置換される。
【0080】
式(X)のニトロキシドは、(メタ)アクリルモノマーのラジカル重合の良好な制御を得ることができるので、好ましい。故に式(X)のニトロキシドを保持する式(XIII)のアルコキシアミンが好ましい:
式中:
Zは、多価基を示し、nは、1以上の整数である;
R
a及びR
bは、1〜40個の炭素原子を保持する同一又は異なるアルキル基を示し、共に連結して環を形成してもよく、ヒドロキシル、アルコキシ又はアミノ基で置換されてもよい;
R
Lは、16g/molを超える、好ましくは30g/molのモル質量を有する一価基を示す。基R
Lは、例えば40〜450g/molのモル質量を有していてもよい。それは、好ましくは一般式(XIV)のリン保持基である:
(XIV)
式中、X及びYは、同一又は異なっていてもよく、アルキル、シクロアルキル、アルコキシル、アリールオキシル、アリール、アラルキルオキシル、ペルフルオロアルキル及びアラルキルラジカルから選択されてもよく、1〜20個の炭素原子を含んでいてもよく;X及び/又はYはまた、ハロゲン原子、例えば塩素、臭素又はフッ素原子であってもよい。
【0081】
有利なことには、R
Lは式(XV)のホスホネート基である:
(XV)
式中、R
c及びR
dは、同一又は異なるアルキルであり、連結されてもよく、1〜40個の置換又は非置換であってもよい炭素原子を含む環を形成する。
【0082】
基R
Lはまた、少なくとも1つの芳香族環、例えばフェニルラジカル又はナフチルラジカルを含んでいてもよく、これは、例えば1〜10個の炭素原子を含む1つ以上のアルキルラジカルで置換される。
【0083】
アルコキシアミン(XIII)によって保持されてもよい式(X)のニトロキシドの例として:
−N−tert−ブチル−1−フェニル−2−メチルプロピルニトロキシド、
−N−(2−ヒドロキシメチルプロピル)−1−フェニル−2−メチルプロピルニトロキシド、
−N−tert−ブチル−1−ジベンジルホスホノ−2,2−ジメチルプロピルニトロキシド、
−N−tert−ブチル−1−ジ(2,2,2−トリフルオロエチル)ホスホノ−2,2−ジメチルプロピルニトロキシド、
−N−tert−ブチル[(1−ジエチルホスホノ)−2−メチルプロピル]ニトロキシド、
−N−(1−メチルエチル)−1−シクロヘキシル−1−(ジエチルホスホノ)ニトロキシド、
−N−(1−フェニルベンジル)−[(1−ジエチルホスホノ)−1−メチルエチル]ニトロキシド、
−N−フェニル−1−ジエチルホスホノ−2,2−ジメチルプロピルニトロキシド、
−N−フェニル−1−ジエチルホスホノ−1−メチルエチルニトロキシド、
−N−(1−フェニル−2−メチルプロピル)−1−ジエチルホスホノメチルエチルニトロキシド、
−又は代わりに以下の式のニトロキシドを挙げることができる:
【0084】
式(XVI)のニトロキシドは、特に好ましい:
(XVI)
それは、単純化のために一般にSG1として既知のN−tert−ブチル−1−ジエチルホスホノ−2,2−ジメチルプロピルニトロキシドである。
【0085】
アルコキシアミン(I)、特にアルコキシアミン(XIII)は、例えばUS5910549又はFR99/04405に記載される方法を介して調製されてもよい。使用されてもよい1つの方法は、ニトロキシドを有する炭素系ラジカルをカップリングすることからなる。カップリングは、D.Gresztaら,Macromolecules 1996,29,7661−7670によって記載されるように、ATRAタイプ(原子移動ラジカル付加)の反応に従って、有機金属システム、例えばCuX/リガンド(X=Cl又はBr)の存在下、ハロゲン化誘導体から出発して行われてもよい。
【0086】
本発明の文脈に使用され得るアルコキシアミンは以下に表される:
ジアミン:
トリアミン
ジアミンが好ましくは使用される。
【0087】
式(I)に対応するいくつかのアルコキシアミン、特に式(XIII)のいくつかのアルコキシアミンを組み合わせることは、本発明の文脈から逸脱するものではない。故にこれらの混合物は、例えばn1結合ニトロキシドを含有するアルコキシアミン及びn2結合ニトロキシドを含有するアルコキシアミンを含んでもよく、n1はn2と異なる。それはまた異なるニトロキシドを保持するアルコキシアミンの組み合わせであってもよい。
【0088】
10mPa.s〜10000mPa.s、好ましくは50mPa.s〜5000mPa.s、有利なことには100mPa.s〜1000mPa.sの(メタ)アクリルシロップの動的粘度を保持し、こうして繊維性基材の良好な含浸を可能にするために、(メタ)アクリルシロップの種々の化合物は、以下の質量パーセンテージで組み込まれる。
【0089】
液体(メタ)アクリルシロップ中の(メタ)アクリルモノマーは、総液体(メタ)アクリルシロップの少なくとも30重量%、好ましくは少なくとも40重量%、有利なことには少なくとも50重量%、より有利なことには少なくとも70重量%の割合で存在する。
【0090】
液体(メタ)アクリルシロップの(メタ)アクリルポリマーは、総液体(メタ)アクリルシロップの少なくとも1重量%、好ましくは5重量%、有利なことには少なくとも8重量%、より有利なことには少なくとも10重量%の割合で存在する。
【0091】
液体(メタ)アクリルシロップ中の(メタ)アクリルポリマーは、総液体(メタ)アクリルシロップの50重量%以下、好ましくは40重量%以下、有利なことには35重量%以下、より有利なことには30重量%以下の割合で存在する。
【0092】
実際、液体(メタ)アクリル含浸シロップは:
a)10重量%〜30重量%の(メタ)アクリルポリマー、
b)30重量%〜89重量%の(メタ)アクリルモノマー、
c)1重量%〜40重量%の巨大分子ブロックを含む。
【0093】
(メタ)アクリル含浸シロップを製造するためのプロセスに関して、それは以下の工程を含む:
【0094】
第1の工程の間、巨大分子ブロックは、アルコキシアミンZ(−T)
n及び巨大分子ブロックを形成することが意図されるモノマーを混合し、得られた混合物をアルコキシアミンを活性化するのに十分な温度に加熱することによって調製される。
【0095】
重合の良好な制御を確実にするためにニトロキシドを混合物に添加することも可能である。添加されるさらなるニトロキシドは、アルコキシアミンに保持されるものと同一であってもよく、又は異なっていてもよい。アルコキシアミンに対して添加されるニトロキシドのモル割合は、0〜20%、好ましくは0〜10%である。
【0096】
転化率は、10%〜100%の範囲であってもよい。しかし、好ましくは重合は、50%〜100%、有利なことには50%〜80%の転化率で停止される。
【0097】
この工程は、閉じた反応器又は開放反応器、例えばピストンタイプの反応器において行われてもよい。好ましくは、それは閉じた反応器である。巨大分子ブロックは、80〜150℃、好ましくは80〜130℃の温度で調製される。この温度は、アルコキシアミン及び使用されるモノマーに連結される。重合時間は、30分から8時間の範囲、好ましくは1〜8時間、有利なことには2〜6時間の範囲であってもよい。酸素の存在を回避することが好ましい。こうするために、反応混合物は、一般に減圧下で脱気され、反応器を、試薬の導入の後に窒素又はアルゴンでフラッシュすることによって不活性化する。
【0098】
この第1の工程の後、巨大分子ブロックが得られ、未消費モノマーと混合されてもよい。後者のモノマーは、80℃未満の温度にて減圧下での蒸留によって除去されてもよい。
【0099】
第2の工程の間、第1の工程の後で得られた巨大分子ブロックを、(メタ)アクリル含浸シロップを得るために(メタ)アクリルモノマー及び(メタ)アクリルポリマーと混合する。
【0100】
巨大分子ブロックは、溶液又は均質混合物を形成するために(メタ)アクリルモノマーに可溶性である。それらは、0℃未満のガラス転移温度Tgを有する直鎖であり、そのため(メタ)アクリルシロップの粘度を妨害しない。
【0101】
巨大分子ブロックは非常に可溶性であり、シロップの粘度を妨害しないので、高含有量、典型的には5重量%〜40重量%でシロップに組み込まれることができる。こうした巨大分子ブロックの含有量により、シロップの重合後に、非常に良好な衝撃強度を有するポリマーマトリックスを得ることができる。
【0102】
繊維性基材を含浸するためのプロセスに関して、それは、繊維性基材を、工程2の終わりに得られた液体(メタ)アクリルシロップで含浸する工程を含む。この含浸工程は、閉じたモールドで行われる。
【0103】
所与の温度において液体(メタ)アクリルシロップの粘度が、含浸プロセスにとってわずかに高過ぎる場合、繊維性基材の十分な湿潤及び正確で完全な含浸のために、より液体のシロップになるように、シロップを加熱できる。
【0104】
繊維性基材に関して、ストリップ、ラップ、ブレイド、ロック又はピースの形態であってもよい布地、フェルト又は不織布を挙げることができる。繊維性材料は、種々の形態及び寸法を、一次元、二次元又は三次元のいずれかで有していてもよい。繊維性基材は、1つ以上の繊維のアセンブリを含む。繊維が連続である場合、これらのアセンブリは布地を形成する。
【0105】
一次元形態は、直鎖の長繊維に対応する。繊維は不連続又は連続であってもよい。繊維は、連続フィラメントの形態で互いにランダムに又は平行に配列されてもよい。繊維は、繊維の長さと直径との比であるアスペクト比によって規定される。本発明に使用される繊維は、長繊維又は連続繊維である。繊維は、少なくとも1000、好ましくは少なくとも1500、より好ましくは少なくとも2000、有利なことには少なくとも3000、より有利なことには少なくとも5000、さらにより有利なことには少なくとも6000、さらにより有利なことには少なくとも7500、最も有利なことには少なくとも10000のアスペクト比を有する。
【0106】
二次元の形態は、不織布又は織布繊維性マット又は強化材又は繊維束(ブレイドされていてもよい)に対応する。二次元形態が特定の厚さを有する、結果として原理上第3の寸法を有する場合であっても、それは本発明に従って二次元として考慮される。
【0107】
三次元形態は、例えば不織布繊維性マット又は強化材、又はスタックした若しくは折り畳んだ繊維束又はこれらの混合物、三次元での二次元形態のアセンブリに対応する。
【0108】
繊維性材料の起源は天然又は合成であってもよい。天然材料としては、植物繊維、木材繊維、動物繊維又は鉱物繊維を挙げることができる。
【0109】
天然繊維は、例えばサイザル、ジュート、麻、亜麻、綿、ココナッツ繊維及びバナナ繊維である。動物繊維は、例えば羊毛又は毛髪である。
【0110】
合成材料としては、熱硬化性ポリマーの繊維、熱可塑性ポリマーの繊維又はこれらの混合物から選択されるポリマー繊維を挙げることができる。
【0111】
ポリマー性繊維は、ポリアミド(脂肪族又は芳香族)、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂及びビニルエステルからなってもよい。
【0112】
鉱物繊維はまた、ガラス繊維、特にE、R又はS2タイプの繊維、炭素繊維、ボロン繊維又はシリカ繊維から選択されてもよい。
【0113】
本発明の繊維性基材は、植物繊維、木材繊維、動物繊維、鉱物繊維、合成ポリマー性繊維、ガラス繊維及び炭素繊維及びこれらの混合物から選択される。好ましくは繊維性基材は鉱物繊維から選択される。
【0114】
繊維性基材の繊維は、0.005μm〜100μm、好ましくは1μm〜50μm、より好ましくは5μm〜30μm、有利なことには10μm〜25μmの直径を有する。
【0115】
好ましくは、本発明の繊維性基材の繊維は、繊維性基材の、一次元形態については連続繊維(長繊維についてはアスペクト比が必ずしもあてはまらないことを意味する)、又は二次元若しくは三次元形態については長繊維若しくは連続繊維から選択される。
【0116】
さらなる態様によれば、本発明は、熱可塑性(メタ)アクリルマトリックス及び強化材として使用される繊維性基材を含むポリマー性複合材料に関し、ここで繊維性基材は長繊維からなり、この複合材料は、熱可塑性(メタ)アクリルマトリックスが、この液体(メタ)アクリルシロップでプレ含浸されたこの繊維性基材の重合後に得られることを特徴とする。
【0117】
本発明の別の態様は、以下の工程を含む、複合部品を製造するためのプロセスである:
a)繊維性基材を液体(メタ)アクリルシロップで含浸する工程、
b)この繊維性基材を含浸した液体(メタ)アクリルシロップを重合する工程。
【0118】
工程a)の繊維性基材の含浸は、好ましくは閉じたモールドで行われる。
【0119】
有利なことには、工程a)及び工程b)は、同じ閉じたモールドで行われる。
【0120】
(メタ)アクリルシロップの重合時、巨大分子は、B(−A)nブロックを保持するコポリマーを生じる。このコポリマーは、巨大分子によって形成されたブロックB、及びn個のアームA(nは2を超える、好ましくは2〜10、有利なことには2〜8の整数である)からなる。アームAは、シロップの重合の間に形成を行う(メタ)アクリルポリマーPMMAによって形成される。本発明の文脈において、それは、この場合、n=2(1つの中央ブロック及び2つのアーム)を有するトリブロックコポリマーであってもよい。トリブロックコポリマーの例として、それらは以下であってもよい:
PMMA−b−ポリ−n−ブチルアクリレート−b−PMMA
PMMA−b−ポリ(n−ブチルアクリレート−co−スチレン)−b−PMMA
PMMA−b−ポリ(イソブチルアクリレート−co−スチレン)−b−PMMA
bは、ブロックコポリマーを示すために使用される記号であり、coは統計学的コポリマーを示すために使用される記号である。
【0121】
重合後、ナノ構造化複合材料で製造される機械的部品又は構造要素が、次いで得られ、その熱可塑性マトリックスは、衝撃に対して強化され、非常に良好な衝撃強度を有する。
【0122】
複合部品を製造するためのプロセスに関して、種々のプロセスが機械的部品を調製するために使用できる。注入、真空バッグ成形、圧力バッグ成形、オートクレーブ成形、樹脂トランスファ成形(RTM)、反応注入成形(RIM)、強化反応注入成形(R−RIM)及びこれらの変形種、プレス成形又は圧縮成形を挙げることができる。
【0123】
複合部品を製造するための好ましい製造プロセスは、液体(メタ)アクリルシロップを、モールド、より好ましくは閉じたモールド中の繊維性基材の含浸によって繊維性基材に移すプロセスに従うものである。
【0124】
有利なことには、繊維性材料の含浸工程は、閉じたモールドで行われる。
【0125】
最も有利なことには、複合部品の製造プロセスは、樹脂トランスファ成形及び注入から選択される。
【0126】
すべてのプロセスは、モールドでの重合工程の前に繊維性基材を液体(メタ)アクリルシロップで含浸する工程を含む。
【0127】
この繊維性基材を含浸する液体(メタ)アクリルシロップの重合工程は、同じモールドでの含浸工程の後に行われる。
【0128】
樹脂トランスファ成形は、複合材料の両方の表面を形成する2サイドモールド設定を用いるプロセスである。下方サイドは硬質モールドである。上方サイドは、硬質又は可撓性モールドであってもよい。可撓性モールドは、複合材料、シリコーン又は押出ポリマーフィルム、例えばナイロンから製造できる。2つのサイドは共に合わさってモールドキャビティを形成する。樹脂トランスファ成形の区別できる特徴は、このキャビティに繊維性基材を配置し、液体(メタ)アクリルシロップの導入の前にモールドセットを閉じる。樹脂トランスファ成形は、モールドキャビティ中の繊維性基材に液体(メタ)アクリルシロップを導入する機構が異なる多数の変形種を含む。これらの変形種は、真空注入から真空支援型樹脂トランスファ成形(VARTM)にまで及ぶ。このプロセスは、室温又は高温で行われてもよい。
【0129】
注入プロセスを用いて、液体(メタ)アクリルシロップは、ポリマー性複合材料を調製するためのこのプロセスにとって適切な粘度を有していなければならない。液体(メタ)アクリルシロップは、適度な真空を適用することによって特別なモールド中にある繊維性基材に吸引される。
【0130】
繊維性基材は、注入され、液体(メタ)アクリルシロップによって完全に含浸される。
【0131】
このプロセスの1つの利点は、複合体中の繊維性材料の量が多いことである。
【0132】
こうして製造された複合部品の使用に関して、自動車用途、海洋用途、鉄道用途、スポーツ、航空及び航空宇宙用途、太陽光発電用途、コンピュータ関連用途、電気通信用途、及び風力エネルギー用途を挙げることができる。
【0133】
複合部品は、特に自動車部品、船部品、列車部品、スポーツ物品、飛行機又はヘリコプター部品、宇宙船又はロケット部品、太陽光発電モジュール部品、風力タービン部品、家具部品、建設又は建築部品、電話又は携帯電話部品、コンピュータ又はテレビ部品、プリンタ又はコピー機部品である。
【0134】
熱可塑性の複合部品のリサイクルに関して、熱可塑性ポリマーの粉砕又は解重合によって行われてもよい。
【0135】
粉砕は、より小さい部品片を得るために、機械的に行われる。部品が熱可塑性ポリマーを含むので、このポリマーは加熱されることができ、リサイクルされた対象物を得るために、特定限度内においてサイド部品片が変換される。
【0136】
好ましくは熱可塑性複合部品は、加熱されて、PMMA熱分解又は熱分解を行い、モノマーとしてメチルメタクリレートを回収する。
【0137】
有利なことには、ポリマーに存在するMMAの少なくとも50重量%は熱分解によって回収される。
【0138】
この部品を、少なくとも200℃及び400℃以下の温度にする。
【0139】
故に本発明の最終的な主題は、特にメタクリルポリマーがメチルメタクリレートのホモポリマー及び/又はコポリマーである場合に、機械的及び/又は構造部品を製造するための、本発明に従う含浸プロセス又は製造プロセスの使用に関し、これらの部品は、(熱分解を介する)熱解重合によって、少なくとも50%のモノマー、特にメチルメタクリレート(MMA)によってリサイクル可能であり、好ましくは回収される。
【実施例】
【0140】
実施例1:
第1の工程−衝撃添加剤の調製:ブチルアクリレート及びスチレンに基づく巨大分子ブロックの調製
【0141】
以下を、インペラスターラー、油の循環により加熱するためのジャケット及び真空/窒素入口を備えた2リットル金属反応器に導入する:
・616gのブチルアクリレート
・84gのスチレン
・2.4gのDIAMISジアルコキシアミン(94%純度及び0.35%の遊離SG1)、すなわち2.3gの純粋なDIAMS
・0.09gの85%純度のSG1(すなわち0.077gの純粋SG1)、これはDIAMSによって保持されるアルコキシ官能性あたり5mol%過剰を表し、DIAMSに既に存在する0.35%の遊離SG1を考慮する。
【0142】
試薬の導入後、反応混合物を3つの真空/窒素フラッシュを介して脱気する。次いで反応器を閉じ、撹拌(50rpm)及び加熱(公称温度:125℃)を続いて開始する。反応混合物の温度は、約30分で113℃に到達する。圧力は、約1.5barにて安定化する。反応器温度は、522分間115℃の段階で維持される。冷却後、67%の固形分含有量を有する608gの混合物を回収する。次いで過剰のブチルアクリレートは、3時間、減圧下で70℃での蒸発によって除去され、700gのメチルメタクリレートMMAと交換される。こうして「ストリップされた」マクロラジカルのMMAにおける37%の溶液1110g(その過剰のブチルアクリレートを含まない)を回収する。得られたマクロラジカルのブチルアクリレート/スチレン重量比は83/17である。巨大分子ブロックのGPCによる分析は以下の結果を示す:M
n:120000g/mol;M
w:252000g/mol;多分散性:2.1。
工程2:含浸シロップの調製
【0143】
シロップは、22重量%のPMMA(Altuglas International社からのBS520,コモノマーとしてエチルアクリレートを含むMMAのコポリマー)を88重量%のメチルメタクリレート中に溶解させることによって調製し、これをMEHQ(ヒドロキノンモノエチルエーテル)で安定化させる。工程1において予め調製された8重量%の巨大分子ブロックをこのシロップに組み込む。シロップは、Brookfield社からのコーン/プレートレノメータを用いて室温(25℃)にて測定される325mPa.sの動的粘度を有する。シロップは、繊維性基材としてガラスクロスを含む閉じたモールドに注入する。
工程3:複合部品の製造
【0144】
30cm×20cmで計測した8個のガラスクロス(ガラスE,Hexcel社からのHexForce(登録商標)01717 820 TF970クロス外装(160g/m
2の公称重量)を、複合部品2mm厚さを得るためにモールドとして作用するガラスプレートにおいて折り畳んだ。
【0145】
先に調製された含浸シロップを、布地を通してシロップを移すための真空ポンプによって注入した。シートを、3分間の注入によって含浸し、100mm/分での注入を進めた。注入により含浸されたシートを、71℃で8時間オーブンに入れ、125℃で30分間の追加の加熱工程を、PMMAの重合を終了させるために行った(実質的に100%のモノマー転化度を達成する)。
【0146】
ポリマー複合体は、完全な重合及びモールド離型の後の種々の注入フィルムの分離により回収した。
【0147】
プレート形態の複合部品がモールドから得られる。
【0148】
プレートは、繊維性基材に対する良好な接着を示す。
【0149】
使用後、シート形態の複合部品は、加熱及び解重合によってリサイクルできる。
【0150】
実施例2(本発明外)
第1の工程:含浸シロップの調製
【0151】
シロップは、325ppmのAIBN(アゾビスイソブチロニトリル)及び35ppmのテルピノレン(1,4−パラ−メンタジエン)の存在下、メチルメタクリレート(MMa)中に25重量%のポリメチルメタクリレート(Altuglas社からのPMMA V825)を溶解させることによって調製した。溶解は、25℃にて室温で48時間行った。シロップ溶液の粘度は、室温(25℃)で、Brookfield社からのコーン/プレートレオメータを用いて測定した場合に513mPa.sであった。
第2工程;複合部品の製造
【0152】
30cm×20cmで計測した8個のガラスクロス(ガラスE,Hexcel社からのHexForce(登録商標)01717 820 TF970クロス外装(160g/m
2の公称重量)を、複合部品2mm厚さを得るためにモールドとして作用するガラスプレートにおいて折り畳んだ。
【0153】
形成されたプレポリマーシロップを、クロスを通してシロップを移すための真空ポンプによって注入した。シートを、3分間の注入によって含浸し、100mm/分での注入を進めた。注入によって含浸されたシートを、60℃で4時間オーブンに入れ、125℃で30分間の追加の加熱工程を、PMMAの重合を終了させるために行った(実質的に100%のモノマー転化度を達成する)。
【0154】
ポリマー複合体は、完全な重合及びモールド離型の後の種々の注入フィルムの分離により回収した。
比較試験:実施例1及び2に調製された複合プレートの衝撃特徴:迅速な曲げ試験
【0155】
ブレースとして支持された多層構造は、一定速度にて、スパンの中心において曲げに供される。この試験の間、試料に適用された荷重が測定される。
【0156】
図1は、行われた曲げ試験の図である。曲げ試験は、MTS−831サーボ式油圧機にて一定速度で行われる。力Fは、569.4NのレンジストライカーPのノーズにおいて埋め込まれた圧電セルを用いて測定される。ストレスの間の試料Eの移動は、50mmレンジの油圧ジャッキにおけるL.V.D.Tセンサによって測定される。
試料の調製
【0157】
以下の寸法に対応するバーを、多相構造を模倣する圧縮プレートからのデジタルCharlyrobot CRAブランドの成形機を用いてサンプリングする。
【0158】
サンプリングプレートの選択は、薄層の表面状態に従って視覚的に行われる。6個のバーをプレート毎に切断する。
【0159】
ミリメートル単位の試料Eの寸法は以下である:
−長さ:l=80±0.2
−幅:b=10.0±0.2
−厚さ:h=各バーについての測定
標準ISO179の定義に従うフラット位置
テスト条件
【0160】
スパンL、支持体Sにおけるベアリング間の距離は、L=62mmに設定する。
【0161】
適用される応力速度は1m/sである。
【0162】
試験中、力F(Nで表される)及びストライカーの変位(mm)を記録する。
【0163】
実験曲線から、試料の破壊点までの変位の関数として力曲線の下での面積を計算する。この面積は、ジュールで表され、荷重中のシステムに供給されるエネルギーを表す。
【0164】
Reとして記述される曲げ強度は、kJ/m
2で表されるバーの中央直線セクションに対する破壊エネルギーである。
本発明に従う実施例1はRe=30.7±4.6kJ/m
2
本発明外の実施例2はRe=18.9±7.1kJ/m
2