特許第6563344号(P6563344)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6563344インキ組成物、フィルムシート、及び包装材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6563344
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】インキ組成物、フィルムシート、及び包装材料
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/102 20140101AFI20190808BHJP
   C09D 11/037 20140101ALI20190808BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20190808BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20190808BHJP
   B65D 65/42 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
   C09D11/102
   C09D11/037
   B32B27/40
   B32B27/20 A
   B65D65/42 C
【請求項の数】7
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-8166(P2016-8166)
(22)【出願日】2016年1月19日
(65)【公開番号】特開2017-128643(P2017-128643A)
(43)【公開日】2017年7月27日
【審査請求日】2018年4月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002820
【氏名又は名称】大日精化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098707
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 利英子
(74)【代理人】
【識別番号】100135987
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 重慶
(74)【代理人】
【識別番号】100161377
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100168033
【弁理士】
【氏名又は名称】竹山 圭太
(72)【発明者】
【氏名】夏井 智之
(72)【発明者】
【氏名】石井 直樹
(72)【発明者】
【氏名】粟屋 勝文
【審査官】 櫛引 智子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−160950(JP,A)
【文献】 特開昭56−030475(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
易接着処理が施されていないプラスチック基材に適用するインキ組成物であって、
ポリウレタン樹脂、数平均分子量が1,000〜10,000である熱可塑性飽和共重合ポリエステル樹脂、溶剤、及びポリイソシアネートを含有し、
前記ポリウレタン樹脂の固形分としての含有量が、前記インキ組成物の全固形分中、30〜70質量%であるインキ組成物。
【請求項2】
前記ポリウレタン樹脂と前記ポリエステル樹脂の固形分比率が質量基準で99:1〜80:20である請求項1に記載のインキ組成物。
【請求項3】
更に着色剤として少なくとも顔料又は染料を含有する請求項1又は2に記載のインキ組成物。
【請求項4】
前記顔料として遮光性粒子を含有する請求項3に記載のインキ組成物。
【請求項5】
易接着処理が施されていないフィルム状又はシート状のプラスチック基材に、請求項1〜4のいずれか1項に記載のインキ組成物から形成されたインキ層を備える、フィルムシート。
【請求項6】
前記プラスチック基材がポリエチレンテレフタレートフィルムである請求項5に記載のフィルムシート。
【請求項7】
請求項5又は6に記載のフィルムシートを備える包装材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック基材に用いられるインキ組成物、及び該インキ組成物を使用したフィルムシート、並びに該フィルムシートを備える包装材料に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック基材に対する印刷や塗装等によるインキの塗布は様々な分野で行われており、プラスチック基材の形態としてもフィルム、シート、及び成形体等の様々な形態がある。ポリエステル等のプラスチック基材については、一般的にはインキの密着性が劣ることから、そのプラスチック基材に対して、インキが密着し易いような表面処理(易接着処理)を行った後にインキの塗布が行われている。易接着処理には、コロナ放電処理、プラズマ処理、ブラスト処理、及びオゾン処理等の表面改質処理や、プライマー処理等の表面コートがある(例えば特許文献1及び2参照)。
【0003】
例えば特許文献1には、所定のバインダー樹脂、着色剤及び芳香族有機溶剤以外の有機溶剤を主成分とする軟包装用ラミネートインキ組成物に関する発明が開示され、その実施例では、コロナ処理ナイロンフィルム及びコロナ処理ポリエチレンテレフタレートフィルムの使用が記載されている。また、例えば特許文献2には、所定の顔料、所定のポリウレタン樹脂、及び溶剤を含有する耐光性包材用インキ組成物に関する発明が開示され、その実施例では、コロナ処理ポリエチレンテレフタレートフィルムの使用が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−298618号公報
【特許文献2】特開2012−136582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
プラスチック基材に対する易接着処理として多く使用されているコロナ放電処理は、処理対象(プラスチック基材)の表面に対して、比較的(プラズマ処理よりも)深く表面処理される。そのため、例えば厚さ15μm以下、さらには8μm未満といった薄いフィルムにコロナ放電処理を行うと穴が開きやすいことから、そのような薄いフィルムにはコロナ放電処理を実質使用できないといった実情がある。また、プラスチック基材に易接着処理を行うことは、その分コストがかかるため、易接着処理が施されていないプラスチック基材に対しても良好に密着するインキが望まれているという実情がある。
【0006】
本発明者らは、前述の実情に鑑みて、易接着処理が施されていないプラスチック基材に良好に密着するインキについて、鋭意研究を重ねた。その結果、本発明者らは、インキ中のバインダー樹脂成分としてポリエステル樹脂を用いれば、プラスチック基材に良好に密着するインキ層が得られるが、インキ層中にインキに使用された溶剤が多く残り、その残留溶剤量が多いことにより、インキ層の耐ブロッキング性の悪化や臭気が残るなどの弊害が起きることに気が付いた。この弊害は、プラスチック基材が他のフィルム等と共にラミネートされる場合に特に問題となりやすい。
【0007】
そこで、本発明は、易接着処理がされていないプラスチック基材に対しても良好に密着し、かつ残留溶剤の少ないインキ層を形成し得るインキ組成物、及び該インキ組成物を使用したフィルムシート、並びに該フィルムシートを備える包装材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明によれば、以下に示すインキ組成物が提供される。
[1]プラスチック基材に適用するインキ組成物であって、ポリウレタン樹脂、数平均分子量が1,000〜10,000であるポリエステル樹脂、及びポリイソシアネートを含有するインキ組成物。
[2]前記ポリウレタン樹脂と前記ポリエステル樹脂の固形分比率が質量基準で99:1〜80:20である前記[1]に記載のインキ組成物。
[3]更に着色剤として少なくとも顔料又は染料を含有する前記[1]又は[2]に記載のインキ組成物。
[4]前記顔料として遮光性粒子を含有する前記[3]に記載のインキ組成物。
【0009】
また、本発明によれば、以下に示すフィルムシートが提供される。
[5]フィルム状又はシート状のプラスチック基材に、前記[1]〜[4]のいずれかに記載のインキ組成物から形成されたインキ層を備える、フィルムシート。
[6]前記プラスチック基材がポリエチレンテレフタレートフィルムである前記[5]に記載のフィルムシート。
【0010】
さらに、本発明によれば、以下に示す包装材料が提供される。
[7]前記[5]又は[6]に記載のフィルムシートを備える包装材料。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、プラスチック基材に易接着処理がされていなくても、その基材に対して良好に密着し、かつ残留溶剤の少ないインキ層を形成し得るインキ組成物を提供することができる。また、本発明によれば、そのインキ組成物を使用したフィルムシート、及びそのフィルムシートを備える包装材料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0013】
[インキ組成物]
本発明の一実施形態に係るインキ組成物は、プラスチック基材に適用するもの(プラスチック基材用インキ組成物)であり、ポリウレタン樹脂、数平均分子量が1,000〜10,000であるポリエステル樹脂、及びポリイソシアネートを含有する。そのため、このインキ組成物は、易接着処理がなされたプラスチック基材(易接着処理のプラスチック基材)に対しても、易接着処理がなされていないプラスチック基材(非易接着処理のプラスチック基材)に対しても、良好な密着性を示すインキ層を形成することができる。なお、本明細書において、「易接着処理」とは、コロナ放電処理、ブラスト処理、プラズマ処理、オゾン処理(紫外線処理)及びフレーム処理、並びにプライマー処理等の公知の易接着処理を指す。
【0014】
本実施形態に係るインキ組成物に含有されるポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、及びポリイソシアネートは、それぞれ一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができ、また、それぞれ市場から入手してそのまま使用することもできる。インキ組成物は、次に述べるポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、及びポリイソシアネートをバインダー樹脂の成分として含有することができる。バインダー樹脂は、インキ組成物の被着体であるプラスチック基材に対して、インキ組成物から形成されるインキ層として固着させる働きを担う成分である。
【0015】
<ポリウレタン樹脂>
インキ組成物に含有されるポリウレタン樹脂は、例えばジイソシアネート化合物とポリオール化合物との反応によりウレタンプレポリマーを合成し、これに必要に応じて鎖伸長剤、反応停止剤を反応させて得られる。ジイソシアネート化合物、ポリオール化合物、鎖伸長剤、及び反応停止剤は、それぞれ従来から使用されている公知のものを使用することができる。
【0016】
ジイソシアネート化合物としては、例えば、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、及び脂環族ジイソシアネート等を挙げることができる。
【0017】
芳香族ジイソシアネートの具体例としては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、キシレン−1,4−ジイソシアネート、キシレン−1,3−ジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4−ジフェニルエーテルジイソシアネート、2−ニトロジフェニル−4,4−ジイソシアネート、2,2−ジフェニルプロパン−4,4−ジイソシアネート、3,3−ジメチルジフェニルメタン−4,4−ジイソシアネート、4,4−ジフェニルプロパンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ナフチレン−1,4−ジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、及び3,3−ジメトキシジフェニル−4,4−ジイソシアネート等を挙げることができる。脂肪族ジイソシアネートの具体例としては、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、及びリジンジイソシアネート等を挙げることができる。脂環族ジイソシアネートの具体例としては、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、水添化トリレンジイソシアネート、水添化キシレンジイソシアネート、及び水添化ジフェニルメタンジイソシアネート等を挙げることができる。これらのジイソシアネート化合物は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0018】
ポリオール化合物としては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、及びポリエーテルポリオール等を挙げることができる。ポリオール化合物は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0019】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、多価カルボン酸類と、多価アルコール類又は第2〜3級アミン類との脱水重縮合反応で得られる、ポリエステルポリオール又はポリエステルアミドポリオールが挙げられる。多価カルボン酸類の具体例としては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロオルソフタル酸、及びナフタレンジカルボン酸、及びトリメリット酸等のポリカルボン酸、並びにそれらの酸エステル、及びそれらの酸無水物等が挙げられ、これらのうちの一種以上を用いることができる。多価アルコール類の具体例としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキシド又はプロピレンオキシド付加物、トリメチロールプロパン、グリセリン、及びペンタエリスリトール等の低分子アルコール化合物、並びにモノエタノールアミン及びジエタノールアミン等の低分子アミノアルコール化合物等が挙げられ、これらのうちの一種以上を用いることができる。第2〜3級アミン類の具体例としては、ヘキサメチレンジアミン、キシリレンジアミン、及びイソホロンジアミン等の低分子アミン化合物等が挙げられ、これらのうちの一種以上を用いることができる。また、ポリエステルポリオールとしては、例えば、低分子アルコール化合物及び低分子アミノアルコール化合物等を開始剤として、ε−カプロラクトン及びγ−バレロラクトン等の環状エステル(ラクトン)モノマーを開環重合して得られるラクトン系ポリエステルポリオールを用いることもできる。
【0020】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、ポリエステルポリオールの合成に用いられる低分子アルコール化合物とホスゲンとの脱塩酸反応で得られるもの、前記低分子アルコール化合物と、ジエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、及びジフェニルカーボネート等とのエステル交換反応で得られるものが挙げられる。
【0021】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエステルポリオールの合成に用いられる低分子アルコール化合物、低分子アミン化合物及び低分子アミノアルコール化合物、並びにフェノール類等を開始剤として、エチレンオキシド、プロピレンオキシド及びブチレンオキシド等のアルキレンオキシド、並びにテトラヒドロフラン等を開環重合させたポリオキシエチレンポリオール、ポリオキシプロピレンポリオール、ポリテトラメチレンエーテルポリオール、及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオール等が挙げられる。さらに、前述のポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールを開始剤とするポリエステルエーテルポリオールが挙げられる。
【0022】
鎖伸長剤としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、及びヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン類、イソホロンジアミン及び4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン等の脂環式ジアミン類、トルイレンジアミン等の芳香族ジアミン類、キシレンジアミン等の芳香脂肪族ジアミン類、N−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N−(2−ヒドロキシエチル)プロピレンジアミン、及びN,N’−ジ(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン等の水酸基を有するジアミン類、並びにエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、及びトリエチレングリコール等のジオール化合物が例示できる。更に、ポリウレタン樹脂がゲル化しない範囲で、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のポリアミン類を併用することができる。
【0023】
反応停止剤としては、n−プロピルアミン及びn−ブチルアミン等のモノアルキルアミン類、ジ−n−ブチルアミン等のジアルキルアミン類、モノエタノールアミン及びジエタノールアミン等のアルカノールアミン類、並びにエタノール等のモノアルコール類等を例示することができる。
【0024】
ポリウレタン樹脂の製造には、上記材料を用いて、公知のポリウレタン樹脂の製造方法をそのまま使用できる。ポリウレタン樹脂としては、重量平均分子量(Mw)が5,000〜100,000のものが好ましく、より好ましくは10,000〜60,000である。ポリウレタン樹脂のMwが5,000以上であることにより、インキ組成物から形成されるインキ層の皮膜凝集力を高め易く、耐摩耗性及び耐熱水性等の耐性を得られ易い。この観点から、ポリウレタン樹脂のMwは、7,000以上がより好ましく、さらに好ましくは10,000以上である。一方、ポリウレタン樹脂のMwが100,000以下であることにより、溶剤に対して溶解し易く、インキ(インキ組成物)の流動性が良好となり、良好に塗布することが可能となる。この観点から、ポリウレタン樹脂のMwは、80,000以下であることがより好ましく、さらに好ましくは60,000以下である。なお、ポリウレタン樹脂を構成する成分の分子量や化学構造、当量比が異なると、得られるポリウレタン樹脂の硬さも異なることから、これら成分を適宜組み合わせることによって、インキ層の基材に対する密着性や耐ブロッキング性を調節することが可能である。本明細書において、ポリウレタン樹脂のMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定される値である。この測定は、東ソー社製のTSKgel SuperHZM−Hカラム(6.0nmI.D.×150mm)を2本直列に接続し、移動相(溶媒)としてTHF(テトラヒドロフラン)を用い、カラム温度40℃、流速0.3mL/分にて行うことができ、標準試料に純正のポリスチレンを使用して検量線を作成し、重量平均分子量を算出することができる。
【0025】
ポリウレタン樹脂の含有量(配合量)は、特に限定されないが、残留溶剤量の少ないインキ層を得る観点から、インキ組成物における溶剤量を除いた全固形分中のポリウレタン樹脂の固形分として、20〜80質量%が好ましく、より好ましくは30〜70質量%、さらに好ましくは40〜60質量%である。また、インキ組成物の全質量中のポリウレタン樹脂の含有量(配合量)は、適用する塗布方法に応じてインキ組成物を良好に塗布できれば特に限定されないが、例えばグラビアインキとしてグラビア印刷法を好適に利用できる観点から、ポリウレタン樹脂の固形分として、1〜30質量%が好ましく、より好ましくは5〜25質量%、さらに好ましくは7〜20質量%である。
【0026】
<ポリエステル樹脂>
インキ組成物に含有されるポリエステル樹脂は、多価カルボン酸及び/又はその無水物と、単量体としてのポリオールとが共重合してなるエステル結合を主鎖中に有する重合体である。
【0027】
多価カルボン酸及びその無水物の具体例としては、マロン酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、コハク酸、グルタル酸、ヘキサクロロエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、エンドメチレンヘキサヒドロフタル酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、デカジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、トリメシン酸、及びシクロペンタンジカルボン酸等、並びにこれらの無水物が挙げられる。これらの多価カルボン酸及びその無水物は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0028】
一方、ポリエステル樹脂に使用できるポリオールの具体例としては、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、及びポリエチレングリコール等のポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、グリセリン、グリセリンモノアリルエーテル、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、及びペンタエリスリトール等が挙げられる。これらのポリオールは、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0029】
ポリエステル樹脂の合成に使用されるポリオール及び多価カルボン酸等の各成分の組み合わせは特に限定されず、ポリエステル樹脂は、一種類の組み合わせに係る重合体であってもよいし、複数種類の組み合わせに係る重合体であってもよい。
【0030】
ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)は、1,000〜10,000であり、好ましくは1,000〜9,000、より好ましくは1,000〜8,000である。Mnが1,000未満のポリエステル樹脂を用いると、バインダー樹脂としての役割を果たし難い。Mnが10,000を超えるポリエステル樹脂を用いると、ポリウレタン樹脂との相溶性が悪くなり、混合した際にゲル化を起こす場合がある。その結果、プラスチック基材とインキ層との間の密着性が低下する場合がある。一方、Mnが1,000〜10,000のポリエステル樹脂は、インキ組成物において、ポリウレタン樹脂と混合した際にゲル化を生じない。Mnが1,000〜10,000のポリエステル樹脂に由来する構造がインキ組成物から形成されるインキ層内に存在することで、そのインキ層は、非易接着処理の基材(非易接着処理PETフィルム等)に対しても良好に密着することができる。なお、本明細書において、ポリエステル樹脂のMnは、蒸気圧浸透法(VPO法)又はGPCにて測定することができる値である。Mnが1,000〜10,000のポリエステル樹脂の市販品としては、例えば、ユニチカ社製のエリーテル(登録商標)シリーズ、東洋紡社製のバイロン(登録商標)シリーズを使用することができる。これら市販品のうち、前者のMnはVPO法で測定することができ、後者のMnは移動相(溶媒)としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いたGPCによって測定することができる。
【0031】
インキ組成物がポリエステル樹脂を含有せず、かつポリウレタン樹脂を含有する場合では、非易接着処理のプラスチック基材(非易接着処理PETフィルム等)に対する密着性が劣る。これに対して、インキ組成物がポリウレタン樹脂と数平均分子量1,000〜10,000のポリエステル樹脂とを組み合わせて含有することで、易接着処理がなされていないプラスチック基材に対しても良好な密着性を示すインキ層を得ることができる。
【0032】
また、インキ組成物がポリウレタン樹脂に由来する構造を含有しない場合、インキ組成物から形成されるインキ層中に溶剤が非常に多く残り、インキ層の耐ブロッキング性の悪化や臭気が残るなどの弊害がある。これに対して、インキ組成物がポリウレタン樹脂と数平均分子量1,000〜10,000のポリエステル樹脂とを組み合わせて含有することで、インキ組成物から形成されるインキ層中の残留溶剤量を抑えることができる。インキ組成物から形成されるインキ層中の残留溶剤量をより少なくする観点から、ポリウレタン樹脂とポリエステル樹脂の固形分比率は、質量基準で99:1〜80:20であることが好ましく、より好ましくは98:2〜80:20である。ポリウレタン樹脂の固形分/ポリエステル樹脂の固形分では、質量基準で99〜4であることが好ましく、より好ましくは80〜4、さらに好ましくは49〜4である。
【0033】
ポリエステル樹脂の含有量(配合量)は、特に限定されないが、プラスチック基材に対して良好に密着するインキ層を得る観点から、インキ層を形成するインキ組成物における溶剤量を除いた全固形分中のポリエステル樹脂の固形分として、0.1〜30質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜20質量%、さらに好ましくは1〜10質量%である。また、インキ組成物の全質量中のポリエステル樹脂の含有量(配合量)は、適用する塗布方法に応じてインキ組成物を良好に塗布できれば特に限定されないが、例えばグラビアインキとしてグラビア印刷法を好適に利用できる観点から、ポリエステル樹脂の固形分として、0.05〜15質量%が好ましく、より好ましくは0.08〜10質量%、さらに好ましくは0.1〜5質量%である。
【0034】
<ポリイソシアネート>
前述の通り、インキ組成物には、硬化剤としてポリイソシアネートを含有することが必須である。インキ組成物の成分として、前述のポリウレタン樹脂及びポリエステル樹脂と組み合わせてポリイソシアネートを用いることにより、プラスチック基材とインキ層との間の密着性が向上する。また、インキ組成物がポリイソシアネートを含有することで、インキ組成物から形成されるインキ層において架橋構造が導入され、それに伴い、インキ層の耐熱性及び耐溶剤性の向上効果が期待できる。
【0035】
硬化剤として用いるポリイソシアネートとしては、例えば、芳香族系ポリイソシアネート、芳香脂肪族系ポリイソシアネート、脂環族系ポリイソシアネート及び脂肪族系ポリイソシアネート等を挙げることができる。
【0036】
芳香族系ポリイソシアネートとしては、例えば、m−又はp−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、4,4’−、2,4’−又は2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4−又は2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、及び4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート等を挙げることができる。
【0037】
芳香脂肪族系ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−又は1,4−キシリレンジイソシアネート(XDI)、1,3−又は1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等を挙げることができる。
【0038】
脂環族系ポリイソシアネートとしては、例えば、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート;IPDI)、4,4’−、2,4’−又は2,2’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、及び1,3−又は1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(水添XDI)等を挙げることができる。
【0039】
脂肪族系ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−、2,3−又は1,3−ブチレンジイソシアネート、及び2,4,4−又は2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0040】
インキ組成物に含有されるポリイソシアネートとしては、1分子中にイソシアネート基を3つ以上有する3官能以上のポリイソシアネートを用いることもでき、3官能のポリイソシアネートが好ましい。3官能のポリイソシアネートを使用すれば、2官能のものに比べて、充分な架橋構造が得られ、耐溶剤性の向上効果がより期待できる。3官能のポリイソシアネートとしては、例えば、前述の各ポリイソシアネート(ジイソシアネート)の誘導体、トリフェニルメタントリイソシアネート、及び1−メチルベンゾール−2,4,6−トリイソシアネート等を挙げることができる。これらのうち、より好適な前述の各ポリイソシアネートの誘導体としては、例えば、アダクト変性体、ビューレット変性体、及びヌレート変性体等が挙げられる。なお、ポリイソシアネートは、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0041】
ポリイソシアネートの含有量(配合量)は、特に限定されないが、ポリイソシアネートの配合による効果を得る観点から、インキ層を形成するインキ組成物における溶剤量を除いた全固形分中のポリイソシアネートの固形分として、1〜50質量%が好ましく、より好ましくは5〜40質量%である。また、インキ組成物の全質量中のポリイソシアネートの含有量(配合量)は、適用する塗布方法に応じてインキ組成物を良好に塗布できれば特に限定されないが、例えばグラビアインキとしてグラビア印刷法を好適に利用できる観点から、ポリイソシアネートの固形分として、例えば0.1〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜15質量%、さらに好ましくは1〜10質量%である。
【0042】
<着色剤>
インキ組成物には、着色剤が含有されていてもよい。インキ組成物は着色剤として少なくとも顔料又は染料を含有することが好ましい。インキ組成物に着色剤が含有されていることで、そのインキ組成物から形成されるインキ層を着色することができる。着色剤としては、公知の顔料及び染料等を使用することができ、顔料及び染料のいずれか一方又は両方を使用することができる。顔料としては、例えば紺青、群青、ベンガラ、鉄黒、及び黄色酸化鉄等の有色無機顔料、モノアゾ系顔料、ジスアゾ系顔料、縮合アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、アンスラキノン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、及びピロロピロール系顔料等の有色有機顔料、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉛、及び硫化亜鉛等の白色顔料、アルミペースト等の銀色顔料、並びにカーボンブラック、アゾメチンアゾ系、及びペリレン系顔料等の黒色顔料等を使用することができる。
【0043】
インキ組成物には、前記顔料として、遮光性粒子が含有されていてもよい。ここで「遮光性粒子」とは、インキ組成物から形成されるインキ層に遮光性を付与する粒子状物をいう。遮光性粒子を含有するインキ組成物は、遮光インキ層の形成に用いることができる。
その遮光インキ層をフィルム状又はシート状のプラスチック基材に設けることで、遮光性のフィルムシートを得ることもできる。
【0044】
遮光性粒子としては、インキ組成物から形成されるインキ層に遮光性を付与できるものであれば、特に限定されず、例えば前述の着色剤と同様の公知の顔料を使用することもできる。また、遮光性粒子としては、金属粒子、金属酸化物粒子、及びそれらの二以上を複合化した複合粒子等を使用することもできる。金属粒子としては、例えば金、銀、銅、パラジウム、ニッケル、及びアルミニウムのうちのいずれか一つ、並びにそれら金属粒子の二以上を合金化した合金粒子を挙げることができる。金属酸化物粒子としては、例えば銅、錫、タングステン、及びチタンのいずれかの金属酸化物粒子を挙げることができる。
【0045】
遮光性粒子としては、カーボンブラック、アルミニウム、及び銀等が好ましく、前述のカーボンブラック等の黒色顔料を好適に用いることができる。黒色顔料の中でも、隠蔽性に優れた黒色の遮光インキ層を形成できること、さらには分散性やコストの観点から、遮光性粒子として、カーボンブラックを使用することがより好ましい。遮光インキ層を形成するインキ組成物中のカーボンブラックの含有量は、インキ層に充分な遮光性が得られるように適宜調整することができる。インキ層に充分な遮光性を得る観点から、インキ組成物中のカーボンブラックの含有量は、例えば2質量%以上が好ましく、より好ましく5質量%以上である。また、インキ組成物中のカーボンブラックの含有量の上限は特に限定されないが、多過ぎれば無駄にコストが高くなることから、また、インキ組成物の流動性を保つ観点から、30質量%以下が好ましく、より好ましくは20質量%以下である。
【0046】
<溶剤>
インキ組成物には、溶剤が含有されていてもよい。溶剤としては、特に限定されないが、例えばケトン系溶剤、炭化水素系溶剤、及びエステル系溶剤等が好ましい。ケトン系溶剤の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、及びジアセトンアルコール等を挙げることができる。炭化水素系溶剤の具体例としては、トルエン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、及びエチルシクロペンタン等を挙げることができる。エステル系溶剤の具体例としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、及び酢酸ブチル等を挙げることができる。
【0047】
溶剤としては、前述の溶剤に相溶する溶剤を用いてもよい。そのような溶剤として、例えばアルコール系溶剤、及びグリコールエーテル系溶剤を用いることができる。アルコール系溶剤としては、例えばメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、イソプロピルアルコール、及び各種ブタノール等を挙げることができる。グリコールエーテル系溶剤としては、例えばエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、及びプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等を挙げることができる。インキ組成物が含有できる各溶剤は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。また、溶剤として、印刷適性に応じて水とアルコール系溶剤を適宜組み合わせることで水系インキを設計することも可能である。
【0048】
<その他添加剤>
インキ組成物には、本発明の目的を妨げない範囲で、可塑剤、艶消し剤、沈降防止剤、レベリング剤、消泡剤、顔料分散剤、及びシランカップリング剤等の添加剤が含有されていてもよい。
【0049】
[インキ組成物の製造方法]
インキ組成物の製造方法は特に限定されない。例えば、インキ組成物として必須成分である、前述のポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、及びポリイソシアネートを含有し、かつ、必要に応じて、その他の樹脂成分、前述の着色剤、及び溶剤等を含有する混合物を調製することで、インキ組成物を製造することができる。
【0050】
本実施形態のインキ組成物の製造方法は、前述のポリウレタン樹脂及びポリエステル樹脂を含有する混合物を調製する工程(調製工程)を含むことが好ましい。この調製工程において調製する混合物は、インキ組成物として必須成分であるポリウレタン樹脂及びポリエステル樹脂を含有するが、前述のポリイソシアネートを含有しないことが好ましい。また、調製工程において調製する混合物は、前述の着色剤及び溶剤を含有することが好ましく、必要に応じて、前述のポリウレタン樹脂及びポリエステル樹脂以外のその他の樹脂成分を含有していてもよい。
【0051】
インキ組成物の製造方法は、インキ組成物に着色剤(顔料)が含有されている場合、調製工程において又は調製工程後に、着色剤(顔料)の粒子を所望の粒径まで細かく分散させる工程(分散工程)を含むことが好ましい。この分散工程では、例えばペイントシェーカー、ボールミル、アトライター、サンドミル、ビーズミル、ダイノミル、ロールミル、超音波ミル、及び高圧衝突分散機等の各種分散機を用いることができる。分散工程では、一種の分散機を使用して一回又は複数回分散処理してもよいし、二種以上の分散機を併用して複数回分散処理してもよい。
【0052】
インキ組成物の製造方法は、調製工程後の混合物又は分散工程後の分散液を希釈溶剤で所望の粘度に希釈する工程(希釈工程)を含むことが好ましい。この希釈工程により、インキ組成物を、インキ組成物の粘度が塗布方法に応じた粘度になるまで溶剤で希釈して、目的のインキ組成物を得ることができる。
【0053】
さらにこの製造方法では、調製工程後の混合物又は分散工程後の分散液に、前述のポリイソシアネートを添加することが好ましく、この添加を希釈工程において、又は希釈工程後に行うことがより好ましい。これにより、インキ組成物を塗布する際(塗布する直前)にポリイソシアネートが混合され、ポリイソシアネートと、ポリウレタン樹脂やポリエステル樹脂との反応が進行することによる顕著な粘度増加が生じる前に、プラスチック基材にインキ組成物を塗布することが可能である。こうした製造上の観点から、前述のインキ組成物は、キットの形態(インキ組成物キット)とすることも好ましい。この場合、ポリウレタン樹脂及びポリエステル樹脂と、ポリイソシアネートとを分けて、ポリウレタン樹脂及びポリエステル樹脂を含有する樹脂含有組成物と、ポリイソシアネートを含有する硬化剤含有組成物とを備えるインキ組成物キットとすることができる。また、この場合、必要に応じて用いられる、前述のその他の樹脂成分、着色剤、及び溶剤等は、樹脂含有組成物に含有されていることが好ましい。
【0054】
以上詳述した本実施形態のインキ組成物は、ポリウレタン樹脂、数平均分子量が1,000〜10,000であるポリエステル樹脂、及びポリイソシアネートを含有するため、非易接着処理プラスチック基材に対しても良好に密着し、かつ残留溶剤量が少ないインキ層を形成することができる。そのため、このインキ組成物を使用して、フィルム状又はシート状のプラスチック基材に当該インキ組成物から形成されたインキ層を設ければ、耐ブロッキング性があり、かつ臭気の問題がないフィルムシートを得ることができる。これらの利点から、本実施形態のインキ組成物は、裏刷り用グラビアインキとして好適に用いることができ、より好適には裏刷りラミネート用グラビアインキとして、さらに好適には包装用裏刷りラミネート用グラビアインキとして用いることができる。
【0055】
また、本実施形態のインキ組成物は、上述の通り、プラスチック基材に対して良好に密着するため、プラスチック基材として、非易接着処理のプラスチック基材を使用することもできる。非易接着処理のプラスチック基材を用いることで、その基材に対する易接着処理にかかる費用が無いため、そのインキ組成物を適用したプラスチック基材を用いた製品の製造コストを抑えることが可能である。
【0056】
[プラスチック基材]
本実施形態に係るインキ組成物は、様々なプラスチック基材に適用することができる。そのプラスチック基材の形態としては、特に限定されず、例えばフィルム状、シート状、及び成形体を挙げることができる。これらの形態のうち、フィルム状又はシート状が好適であり、フィルム状がより好適である。
【0057】
インキ組成物を適用できるプラスチック基材の材質としては、特に限定されず、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル、ポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン、並びにポリスチレン(PS)、ポリカーボネート(PC)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、及びセルロース類等を挙げることができる。
【0058】
プラスチック基材は、易接着処理がなされていても、易接着処理がなされていなくてもよい。上記プラスチック基材の中でも、易接着処理がなされていなくても、インキ組成物がより良好に密着しやすいことから、PETフィルムがより好ましい。インキ組成物は、易接着処理PETフィルムに対しても、非易接着処理PETフィルムに対しても、良好な密着性を示すため、易接着処理の有無を適宜選択すればよい。非易接着処理PETフィルムを使用した場合、易接着処理にかかるコストを削減することができるため、さらに好ましい。
【0059】
フィルム状のプラスチック基材(プラスチックフィルム)の厚さとしては、特に限定されないが、例えば、1〜50μmが好ましく、より好ましくは2〜30μm、さらに好ましくは2〜25μmである。また、前述のインキ組成物から形成されるインキ層は、非易接着処理のプラスチック基材に対しても良好に密着することから、コロナ処理等の易接着処理を施すことが困難であるような厚さ15μm以下や厚さ10μm以下のプラスチックフィルムも好適であり、さらには厚さ8μm未満のプラスチックフィルムも好適である。
【0060】
[フィルムシート]
本発明の一実施形態に係るフィルムシートは、前述のフィルム状又はシート状のプラスチック基材に、前述のインキ組成物から形成されたインキ層を備える。これらのフィルムシートは、後述する包装材料としての使用に好適である。なお、本明細書において、「フィルムシート」という文言は、フィルム及びシートの両方が含まれることを意味する。
【0061】
フィルムシートにおけるプラスチック基材は、特に限定されないが、非易接着処理においても使用できるポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用いることがより好ましい。
【0062】
フィルムシートにおいて、インキ層は、プラスチック基材の一方の面において、略全面に設けられていてもよく、一部分に設けられていてもよい。また、インキ層は、プラスチック基材の一方の面(片面)に設けられていてもよく、両面に設けられていてもよい。フィルムシートを包装材料として好適に利用できる観点から、インキ層は、プラスチック基材の片面(裏面)に設けられていることが好ましい。
【0063】
フィルム状又はシート状のプラスチック基材へのインキ組成物の塗布方法は、特に限定されず、目的に応じて公知の各種の印刷方法及びコーティング方法等の様々な塗布方法を用いることができる。印刷手法としては、例えばグラビア印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、凸版印刷法、及びスクリーン印刷法等を挙げることができる。コーティング方法としては、例えばグラビアコーター、コンマコーター、ロールコーター、エアガン塗装、及び浸漬塗装等を挙げることができる。
【0064】
前述の塗布方法の中では、印刷方法が好ましく、プラスチック基材として好適なPETフィルムに対して低コストで大量生産が可能である観点から、グラビア印刷法がより好ましい。そのため、フィルムシートとしては、前述のフィルム状又はシート状のプラスチック基材に、前述のインキ組成物を印刷して形成されたインキ層を備える印刷フィルムシート(印刷フィルム又は印刷シート)が好ましい。
【0065】
本実施形態のフィルムシートは、インキ層の表面上、及び/又はインキ層が設けられた面とは反対側のプラスチック基材表面上に、粘着剤層を備えていてもよい。フィルムシートが粘着剤層を備えることで、フィルムシートを被着対象に貼着して使用することができる。また、フィルムシートは、一般的なラミネート用接着剤を介し、ドライラミネート法により、プラスチック基材の説明で述べたポリオレフィンやポリエステル等のシーラントフィルム、若しくはアルミニウム箔又はアルミニウム蒸着フィルム等を積層させ、ラミネートフィルムシートとすることもできる。
【0066】
以上述べた本実施形態のフィルムシートは、前述のインキ組成物により、プラスチック基材に良好に密着し、かつ残留溶剤量の少ないインキ層を備えるため、耐ブロッキング性の悪化や臭気が残るなど弊害がない。そのため、このフィルムシートは、例えば包装材料、加飾材料、光学材料、電気・電子材料、及び電池材料等の様々な用途に利用することができる。フィルムシートは、各種用途における粘着テープや、食品、医薬品及び医療材等を包装する包装材料としてより好適に利用することができる。また、本実施形態のフィルムシートにおけるプラスチック基材に非易接着処理PETフィルムを用いることで、その基材に対する易接着処理にかかる費用が無いため、そのPETフィルムに良好に密着したインキ層を備えるフィルムシートを安価に得ることも可能である。
【0067】
[包装材料]
本発明の一実施形態に係る包装材料は、前述のフィルムシートを備える。この包装材料は、前述のフィルムシートから形成することができる。包装材料の形態は、特に限定されず、例えば袋状、箱状、パウチ状、及びパック状等の種々の形態を採用することができる。また、フィルムシートを用いた包装材料の製造には、包装材料の形態とするために、接着剤による接着やヒートシール等の種々のシール方法を用いることができる。包装材料の用途も特に限定されず、例えば食品、医薬品、医療材、化学品、及び電気・電子部品等の包装材料として利用することができる。
【実施例】
【0068】
以下、本発明を実施例及び比較例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0069】
<ポリエステル樹脂A〜Dの調製>
(ポリエステル樹脂Aの調製)
ユニチカ社製の熱可塑性飽和共重合ポリエステル樹脂である商品名「エリーテル(登録商標)UE−3320」(Mn1,800)30部に対して、メチルエチルケトン35部、トルエン35部を加え、溶解釜にて40℃で2時間攪拌し、固形分30%のポリエステル樹脂溶液Aを得た。
【0070】
(ポリエステル樹脂Bの調製)
ユニチカ社製の熱可塑性飽和共重合ポリエステル樹脂である商品名「エリーテル(登録商標)UE−3380」(Mn8,000)30部に対して、メチルエチルケトン35部、トルエン35部を加え、溶解釜にて40℃で2時間攪拌し固形分30%のポリエステル樹脂溶液Bを得た。
【0071】
(ポリエステル樹脂Cの調製)
ユニチカ社製の熱可塑性飽和共重合ポリエステル樹脂である商品名「エリーテル(登録商標)UE−9800」(Mn13,000)30部に対して、メチルエチルケトン35部、トルエン35部を加え、溶解釜にて40℃で2時間攪拌し固形分30%のポリエステル樹脂溶液Cを得た。
【0072】
(ポリエステル樹脂Dの調製)
ユニチカ社製の熱可塑性飽和共重合ポリエステル樹脂である商品名「エリーテル(登録商標)UE−3210」(Mn:20,000)30部に対して、メチルエチルケトン35部、トルエン35部を加え、溶解釜にて40℃で2時間攪拌し固形分30%のポリエステル樹脂溶液Dを得た。
【0073】
<インキ組成物の製造>
(実施例1:墨インキAの製造)
固形分30%のポリウレタン樹脂溶液(日立化成社製、商品名「TA21−124X」、Mw:50,100、溶剤:メチルエチルケトン(24.5%)/酢酸エチル(35%)/イソプロピルアルコール(10.5%))を40部、ポリエステル樹脂溶液Aを1部、メチルエチルケトンを20部、酢酸エチルを10部、トルエンを10部、イソプロピルアルコールを10部、及びカーボンブラック(三菱化学社製、商品名「MA−11」、後記実施例2〜5及び比較例1〜4においても同じ。)を10部配合し、ダイノミルで分散し、墨インキaを得た。この墨インキaに、3官能のポリイソシアネート系硬化剤(大日精化工業社製、商品名「ラミック Bハードナー」、HDI誘導体、固形分:30%)を5部添加し、その後、希釈溶剤としてメチルエチルケトン/トルエン/イソプロピルアルコールの混合溶剤(体積比:5/3/2、大日精化工業社製、商品名「ラミック F No.2溶剤(S)」)を30部添加して、墨インキAを得た。
【0074】
(実施例2:墨インキBの製造)
実施例1で使用した固形分30%のポリウレタン樹脂溶液を33部、ポリエステル樹脂溶液Aを7部、メチルエチルケトンを20部、酢酸エチルを10部、トルエンを10部、イソプロピルアルコールを10部、及びカーボンブラックを10部配合し、ダイノミルで分散し、墨インキbを得た。この墨インキbに、実施例1で使用したポリイソシアネート系硬化剤を5部添加し、その後、実施例1で使用した希釈溶剤を30部添加して、墨インキBを得た。
【0075】
(実施例3:墨インキCの製造)
実施例1で使用した固形分30%のポリウレタン樹脂溶液を40部、ポリエステル樹脂溶液Bを1部、メチルエチルケトンを20部、酢酸エチルを10部、トルエンを10部、イソプロピルアルコールを10部、及びカーボンブラックを10部配合し、ダイノミルで分散し、墨インキcを得た。この墨インキcに、実施例1で使用したポリイソシアネート系硬化剤を5部添加し、その後、実施例1で使用した希釈溶剤を30部添加して、墨インキCを得た。
【0076】
(実施例4:墨インキDの製造)
実施例1で使用した固形分30%のポリウレタン樹脂溶液を33部、ポリエステル樹脂溶液Bを7部、メチルエチルケトンを20部、酢酸エチルを10部、トルエンを10部、イソプロピルアルコールを10部、及びカーボンブラックを10部配合し、ダイノミルで分散し、墨インキdを得た。この墨インキdに、実施例1で使用したポリイソシアネート系硬化剤を5部添加し、その後、実施例1で使用した希釈溶剤を30部添加して、墨インキDを得た。
【0077】
(実施例5:墨インキEの製造)
実施例1で使用した固形分30%のポリウレタン樹脂溶液を25部、ポリエステル樹脂溶液Bを15部、メチルエチルケトンを20部、酢酸エチルを10部、トルエンを10部、イソプロピルアルコールを10部、及びカーボンブラックを10部配合し、ダイノミルで分散し、墨インキeを得た。この墨インキeに、実施例1で使用したポリイソシアネート系硬化剤を5部添加し、その後、実施例1で使用した希釈溶剤を30部添加して、墨インキEを得た。
【0078】
(比較例1:墨インキFの製造)
実施例1で使用した固形分30%のポリウレタン樹脂溶液を40部、メチルエチルケトンを20部、酢酸エチルを10部、トルエンを10部、イソプロピルアルコールを10部、及びカーボンブラックを10部配合し、ダイノミルで分散し、墨インキfを得た。この墨インキfに、実施例1で使用したポリイソシアネート系硬化剤を5部添加し、その後、実施例1で使用した希釈溶剤を30部添加して、墨インキFを得た。
【0079】
(比較例2:墨インキGの製造)
実施例1で使用した固形分30%のポリウレタン樹脂溶液を40部、ポリエステル樹脂溶液Cを10部、メチルエチルケトンを20部、酢酸エチルを10部、トルエンを10部、イソプロピルアルコールを10部、及びカーボンブラックを10部配合し、ダイノミルで分散し、墨インキgを得た。この墨インキgに、実施例1で使用したポリイソシアネート系硬化剤を5部添加し、その後、実施例1で使用した希釈溶剤を30部添加して、墨インキGを得た。
【0080】
(比較例3:墨インキHの製造)
実施例1で使用した固形分30%のポリウレタン樹脂溶液を40部、ポリエステル樹脂溶液Bを1部、メチルエチルケトンを20部、酢酸エチルを10部、トルエンを10部、イソプロピルアルコールを10部、及びカーボンブラックを10部配合し、ダイノミルで分散し、墨インキhを得た。この墨インキhに、ポリイソシアネート系硬化剤を添加せず、実施例1で使用した希釈溶剤を30部添加して、墨インキHを得た。
【0081】
(比較例4:墨インキIの製造)
ポリエステル樹脂溶液Dを40部、メチルエチルケトンを20部、酢酸エチルを10部、トルエンを20部、及びカーボンブラックを10部配合し、ダイノミルで分散し、墨インキiを得た。この墨インキiに、実施例1で使用したポリイソシアネート系硬化剤を5部添加し、その後、希釈溶剤としてメチルエチルケトン/トルエンの混合溶剤(体積比:1/1、大日精化工業社製、商品名「アルミック No.18 No.2溶剤」)を40部添加して、墨インキIを得た。
【0082】
実施例1〜5で製造した墨インキA〜Eの配合を表1に示し、比較例1〜4で製造した墨インキF〜Iの配合を表2に示す。
【0083】
【0084】
【0085】
<フィルムシートの製造>
(実施例6:印刷フィルム1の製造)
フィルム状のプラスチック基材としてポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(フタムラ化学社製、品種「FE2000」、厚さ12μm、両面ともコロナ処理無。)を用いた。このPETフィルムの一方の面(基材表面)に、実施例1で製造した墨インキAを、塗布量が1g/m2−dryになるように、グラビア印刷法で1回刷りを行い、その後40℃にて3日エージングした。このようにして、PETフィルムの片面に墨インキAから形成されたインキ層を備える印刷フィルム1を製造した。
【0086】
(実施例7:印刷フィルム2の製造)
実施例7では、実施例6で使用した墨インキAを実施例2で製造した墨インキBに変更した以外は実施例6と同様の方法にて、PETフィルムの片面に墨インキBから形成されたインキ層を備える印刷フィルム2を製造した。
【0087】
(実施例8:印刷フィルム3の製造)
実施例8では、実施例6で使用した墨インキAを実施例3で製造した墨インキCに変更した以外は、実施例6と同様の方法にて、PETフィルムの片面に墨インキCから形成されたインキ層を備える印刷フィルム3を製造した。
【0088】
(実施例9:印刷フィルム4の製造)
実施例9では、実施例6で使用した墨インキAを実施例4で製造した墨インキDに変更した以外は、実施例6と同様の方法にて、PETフィルムの片面に墨インキDから形成されたインキ層を備える印刷フィルム4を製造した。
【0089】
(実施例10:印刷フィルム5の製造)
実施例10では、実施例6で使用した墨インキAを実施例5で製造した墨インキEに変更した以外は、実施例6と同様の方法にて、PETフィルムの片面に墨インキEから形成されたインキ層を備える印刷フィルム5を製造した。
【0090】
(比較例5〜8:印刷フィルム6〜9の製造)
比較例5〜8では、実施例6で使用した墨インキAを、それぞれ比較例1〜4で製造した墨インキF〜Iに変更した以外は、実施例6と同様の方法にて、それぞれ印刷フィルム6〜9を製造した。
【0091】
実施例6〜10及び比較例5〜8で製造した印刷フィルム1〜9におけるインキ層に使用した墨インキを表3に示す。
【0092】
【0093】
実施例6〜10及び比較例5〜8で製造した印刷フィルム1〜9について、以下の物性評価を行った。その結果を後記表4及び表5に示す。
【0094】
<密着性試験>
印刷フィルム1〜9にニチバン社製セロハンテープ18mm幅を押し付け、その後、強剥離し、インキ層が剥がれるかどうか目視にて確認することで、プラスチック基材(非易接着PETフィルム)に対するインキ層の密着性試験を行った。インキ層が剥がれなかった印刷フィルムを表中「○」と示して密着性が良好であると評価し、インキ層が剥がれた印刷フィルムを表中「×」と示して密着性が乏しいと評価した。
【0095】
<残留溶剤測定>
島津製作所社製パーソナルガスクロマトグラフGC−8A(カラム;PEG600、検出器;FID、カラム温度;70℃)を用いて、印刷フィルム1〜9の残留溶剤量を測定した。測定方法は、軟包装衛生協議会編集「軟包装材料の製造に関する管理機器マニュアル」に記載の残留溶媒測定法に準拠した。残留溶剤量が合計で5mg/m2未満であった印刷フィルムを表中「A」と示して残留溶剤量が非常に少ないと評価した。残留溶剤量が5mg/m2以上15mg/m2未満であった印刷フィルムを表中「B」と示して残留溶剤量が少ないと評価した。残留溶剤量が15mg/m2以上であった印刷フィルムを表中「C」と示して残留溶剤量が多いと評価した。
【0096】
【0097】
【0098】
実施例6〜10で得られた印刷フィルム1〜5は表4に示したとおり、非コロナ処理ポリエチレンテレフタレートフィルムへの密着性に優れ、残留溶剤量が少ないことが確認された。実施例6〜9で得られた印刷フィルム1〜4では、インキ層に使用したポリウレタン樹脂とポリエステル樹脂の固形分比率が99:1〜80:20の範囲内であったため、残留溶剤量をさらに少なくできたことが確認された。
【0099】
一方、比較例5で得た印刷フィルム6は、そのインキ層にポリエステル樹脂を用いなかったため、基材に対するインキ層の密着性が乏しかった。比較例6で得た印刷フィルム7では、そのインキ層に使用したポリエステル樹脂Cの数平均分子量が高かったためにポリウレタン樹脂と相溶せずゲル化を起こしたため、基材に対するインキ層の密着性が乏しい結果となった。比較例7で得た印刷フィルム8では、そのインキ層にポリイソシアネートを用いなかったために、基材に対する印刷層の密着性が乏しいという結果になった。また、比較例8で得た印刷フィルム9では、そのインキ層にポリウレタン樹脂を配合していないインキIを用いたため、残留溶剤量が非常に多い結果となった。
【0100】
<ラミネートフィルムの製造>
(実施例11)
次に、実施例6で製造した印刷フィルム1のインキ層側の面にドライ剤を3g/m2の量にて塗布し、乾燥させた。その後、ドライラミネート機(ニップロール温度80℃)を用いて、印刷フィルム1とシーラントフィルムとを貼り合わせ、40℃で72時間エージングし、ラミネートフィルム1を得た。前記ドライ剤としては、セイカボンドE372(大日精化工業社製のドライ剤)17質量部に対してセイカボンドC−76(大日精化工業社製のドライ剤用硬化剤)2質量部を混合し、その後、酢酸エチルを用いて全固形分を30%になるように希釈して作製したものを用いた。シーラントフィルムとしては、トレファンZK−93KM(東レフィルム加工社製の無延伸ポリプロピレンフィルム、フィルム厚さ70μm)を使用した。
【0101】
(実施例12〜15)
実施例12〜15では、実施例11で使用した印刷フィルム1を、それぞれ実施例7〜10で製造した印刷フィルム2〜5に変更した以外は、実施例11と同様の方法にて、それぞれラミネートフィルム2〜5を得た。
【0102】
<ラミネート強度測定>
上記の各ラミネートフィルムを15mm幅にカットし、T型剥離試験により、ラミネート強度を測定した。測定には、テンシロン万能試験機RTG−1225(AND社製)を使用した。ラミネート強度が1N/15mm以上の場合には「〇」と評価して、ラミネート強度が十分であると評価した。ラミネート強度が1N/15mm未満の場合には「×」と評価して、ラミネート強度が不十分であると評価した。
【0103】
【0104】
表6に示したとおり、非コロナ処理PETフィルムを使用していても、ラミネート強度は1N/15mm以上と実用レベルであった。したがって、コロナ処理などの易接着処理にかかる費用を抑えることができるため、安価なラミネートフィルムを作製することが可能である。こうした結果から、実施例11〜15で得られたラミネートフィルム1〜5は、包装材料として好適に利用することができるのみならず、各種用途のフィルムシートとして好適に利用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明の一実施形態に係るインキ組成物は、例えば食品、医薬品、医療材、化学品、及び電気・電子部品等を内包する包装材料を構成するフィルムシートに好適に利用することができる。