特許第6563359号(P6563359)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 新電元工業株式会社の特許一覧

特許6563359組合せボビン、トランス、および共振型コンバータ
<>
  • 特許6563359-組合せボビン、トランス、および共振型コンバータ 図000002
  • 特許6563359-組合せボビン、トランス、および共振型コンバータ 図000003
  • 特許6563359-組合せボビン、トランス、および共振型コンバータ 図000004
  • 特許6563359-組合せボビン、トランス、および共振型コンバータ 図000005
  • 特許6563359-組合せボビン、トランス、および共振型コンバータ 図000006
  • 特許6563359-組合せボビン、トランス、および共振型コンバータ 図000007
  • 特許6563359-組合せボビン、トランス、および共振型コンバータ 図000008
  • 特許6563359-組合せボビン、トランス、および共振型コンバータ 図000009
  • 特許6563359-組合せボビン、トランス、および共振型コンバータ 図000010
  • 特許6563359-組合せボビン、トランス、および共振型コンバータ 図000011
  • 特許6563359-組合せボビン、トランス、および共振型コンバータ 図000012
  • 特許6563359-組合せボビン、トランス、および共振型コンバータ 図000013
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6563359
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】組合せボビン、トランス、および共振型コンバータ
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/32 20060101AFI20190808BHJP
   H01F 27/30 20060101ALI20190808BHJP
   H02M 3/28 20060101ALI20190808BHJP
   H01F 30/10 20060101ALI20190808BHJP
   H01F 27/24 20060101ALI20190808BHJP
   H01F 5/02 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
   H01F27/32 150
   H01F27/30 130
   H02M3/28 Q
   H02M3/28 Z
   H01F30/10 M
   H01F30/10 H
   H01F30/10 E
   H01F27/24 H
   H01F5/02 G
【請求項の数】15
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-68711(P2016-68711)
(22)【出願日】2016年3月30日
(65)【公開番号】特開2017-183524(P2017-183524A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2018年7月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137523
【弁理士】
【氏名又は名称】出口 智也
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100152205
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 昌司
(72)【発明者】
【氏名】石井 康大
(72)【発明者】
【氏名】大葉 育
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 定勝
【審査官】 木下 直哉
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭56−040630(JP,U)
【文献】 実開昭54−098529(JP,U)
【文献】 実公昭51−037129(JP,Y1)
【文献】 特開2011−054416(JP,A)
【文献】 特開2010−251672(JP,A)
【文献】 特開2004−311692(JP,A)
【文献】 特開平07−302720(JP,A)
【文献】 特開2009−142088(JP,A)
【文献】 実開昭53−037019(JP,U)
【文献】 実開昭52−113220(JP,U)
【文献】 英国特許出願公開第01529136(GB,A)
【文献】 特開平9−115745(JP,A)
【文献】 特開平7−220935(JP,A)
【文献】 実開平2−60208(JP,U)
【文献】 実開昭48−99411(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/32
H01F 27/30
H01F 27/24
H01F 30/10
H01F 5/02
H02M 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のボビンと、前記第1のボビン上に重ね合わせることが可能な第2のボビンとを備え、
前記第1のボビンは、
第1の筒部と、
前記第1の筒部の外周から径方向に延在する第1の上側鍔部と、
前記第1の上側鍔部の下側に設けられ、前記第1の筒部の外周から径方向に延在する第1の下側鍔部と、
前記第1の上側鍔部の外縁部から前記第1の筒部の中心軸方向に沿って上方に延在するセパレート部と、を有し、
前記第2のボビンは、
第2の筒部と、
前記第2の筒部の外周から径方向に延在する第2の上側鍔部と、
前記第2の上側鍔部の下側に設けられ、前記第2の筒部の外周から径方向に延在する第2の下側鍔部と、
前記第2の上側鍔部の一端から前記第2の筒部の中心軸方向に沿って上方に延在する第1の脚部と、を有し、
前記第2のボビンが前記第1のボビン上に重ね合わされた重ね合わせ状態において、前記第2の筒部の径方向領域の少なくとも一部は、前記セパレート部により前記第2の下側鍔部から前記第2の上側鍔部にわたって覆われ
前記第1の脚部は、前記重ね合わせ状態において前記セパレート部の被係合部と係合する係合部を有することを特徴とする組合せボビン。
【請求項2】
前記第2のボビンは、前記第2の上側鍔部の他端から前記中心軸方向に沿って上方に延在する第2の脚部をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の組合せボビン。
【請求項3】
第1のボビンと、前記第1のボビン上に重ね合わせることが可能な第2のボビンとを備える組合せボビンであって、
前記第1のボビンは、
第1の筒部と、
前記第1の筒部の外周から径方向に延在する第1の上側鍔部と、
前記第1の上側鍔部の下側に設けられ、前記第1の筒部の外周から径方向に延在する第1の下側鍔部と、
前記第1の上側鍔部の外縁部から前記第1の筒部の中心軸方向に沿って上方に延在するセパレート部と、を有し、
前記第2のボビンは、
第2の筒部と、
前記第2の筒部の外周から径方向に延在する第2の上側鍔部と、
前記第2の上側鍔部の下側に設けられ、前記第2の筒部の外周から径方向に延在する第2の下側鍔部と、を有し、
前記第2のボビンが前記第1のボビン上に重ね合わされた重ね合わせ状態において、前記第2の筒部の径方向領域の少なくとも一部は、前記セパレート部により前記第2の下側鍔部から前記第2の上側鍔部にわたって覆われ、
前記第2のボビンは、前記第2の上側鍔部の一端から前記第2の筒部の中心軸方向に沿って上方に延在する第1の脚部と、前記第2の上側鍔部の他端から前記中心軸方向に沿って上方に延在する第2の脚部とをさらに有し、
前記第1の脚部および/または前記第2の脚部の上端には、前記組合せボビンを回路基板の搭載位置に位置決めするための突起部が設けられていることを特徴とする組合せボビン。
【請求項4】
前記重ね合わせ状態において、前記第2の下側鍔部は前記第1のボビンの前記第1の上側鍔部と重なることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の組合せボビン。
【請求項5】
前記セパレート部には、前記第1の筒部に巻回される巻線から引き出されたリード線を前記第2のボビンの上方側に通すためのガイド部が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の組合せボビン。
【請求項6】
前記第2の脚部には、前記第2の筒部に巻回される巻線から引き出されたリード線を前記第2のボビンの上方側に通すためのガイド部が設けられていることを特徴とする請求項2または3に記載の組合せボビン。
【請求項7】
前記第2の筒部の外周面の周長が前記第1の筒部の外周面の周長と異なることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の組合せボビン。
【請求項8】
前記第2の筒部の外周面の周長が前記第1の筒部の外周面の周長よりも短いことを特徴とする請求項7に記載の組合せボビン。
【請求項9】
上下に重ね合わされた前記第1のボビンおよび第2のボビンを左右から挟み込んで、前記第1のボビンおよび第2のボビンが分離しないように固定する一対のクランプ部材をさらに備えることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の組合せボビン。
【請求項10】
前記クランプ部材は、
重ね合わされた前記第1のボビンおよび第2のボビンの側面を覆う被覆部と、
前記被覆部の上端から内側に向かって延在する上側挟込部と、
前記被覆部の下端から内側に向かって延在する下側挟込部と、
を有し、
前記上側挟込部には、第1の貫通孔が設けられ、前記下側挟込部には、第2の貫通孔が設けられ、前記第2の上側鍔部に設けられた第1の突部が前記第1の貫通孔に弾発的に係合し、前記第1の下側鍔部に設けられた第2の突部が前記第2の貫通孔に弾発的に係合することを特徴とする請求項9に記載の組合せボビン。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の組合せボビンと、
前記第1の筒部に巻回された第1の巻線と、
前記第2の筒部に巻回された第2の巻線と、
前記第1の巻線と前記第2の巻線との間の磁路を形成するコアとを備えることを特徴とするトランス。
【請求項12】
前記コアは、
前記第1のボビンの下側に配置された第1コア部と、前記第1コア部から立設され前記第1のボビンの側面に配置された第2コア部と、前記第1コア部から立設され、前記第1の筒部内に挿入された第3コア部とを有する下側コアと、
前記第2のボビンの上側に配置された第4コア部と、前記第4コア部から立設され前記第2のボビンの側面に配置され、前記第2コア部に当接する第5コア部と、前記第4コア部から立設され、前記第2の筒部内に挿入された第6コア部とを有する上側コアと、を有し、
前記第3コア部と前記第6コア部との間にはギャップが設けられていることを特徴とする請求項11に記載のトランス。
【請求項13】
前記第3コア部と前記第6コア部との間に設けられたギャップの長さは、前記第1の上側鍔部と前記第2の下側鍔部の厚さの和よりも小さいことを特徴とする請求項12に記載のトランス。
【請求項14】
複数の半導体スイッチを有し、入力した直流電力を交流電力に変換して出力するブリッジ回路と、
請求項11〜13のいずれかに記載のトランスであって、前記第1の巻線が前記ブリッジ回路の出力端子に接続された、トランスと、
前記第1の巻線と前記ブリッジ回路の間に設けられた共振コンデンサと、
前記トランスの前記第2の巻線に発生した電圧を整流および平滑する整流平滑部と、
を備えることを特徴とする共振型コンバータ。
【請求項15】
前記第1の上側鍔部の下面と前記第2の下側鍔部の上面との間の距離は、前記トランスの漏れインダクタンスが共振周波数に応じた値になるように決められていることを特徴とする請求項14に記載の共振型コンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組合せボビン、トランス、および共振型コンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンバータの一種として共振型コンバータが知られている。この共振型コンバータでは、トランスの漏れインダクタンスと、トランスの1次巻線に接続された共振コンデンサとの共振を利用して1次巻線に流れる電流を正弦波に近づけることで、ノイズの低減や変換効率の向上を図っている。また、電流共振型コンバータのトランスでは、1次巻線と2次巻線との距離を大きくして結合係数を小さくすることで、意図的に漏れインダクタンスを大きくしている。このような電流共振型コンバータは、例えばプラグインハイブリッド車両(PHV)に搭載される充電器など、各種の製品に適用される。
【0003】
ところで、電流共振型コンバータ等のスイッチング電源に用いられるトランスでは、従来、図12に示すように、ボビン300が用いられている。このボビン300は、巻軸310と、巻軸310の下端に設けられた鍔部320と、巻軸310の上端に設けられた鍔部340と、巻軸310の中間に設けられた鍔部330とを有する。1次巻線410は、鍔部320と鍔部330により仕切られた筒部に巻回され、2次巻線420は、鍔部330と鍔部340により仕切られた筒部に巻回されている。1次巻線410から引き出されたリード線411は、鍔部330で曲げられた後、2次巻線420の側方を通過し回路基板(図示せず)に電気的に接続される。
【0004】
なお、特許文献1には、上記のボビン200と同様の構成を有するボビンに2つのコイルが巻回されたトランスが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−147994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のボビン300では、図12に示すように、巻軸310の中間に設けられた鍔部330を高く形成することで、1次巻線410と2次巻線420との間で必要とされる空間距離Dを確保している。しかしながら、必要な空間距離ないし沿面距離が大きくなるにつれて、ボビンのサイズ(外径)も大きくなってしまう。
【0007】
本発明は、上記の技術的認識に基づいてなされたものであり、その目的は、ボビンのサイズを大きくすることなく必要な沿面距離を確保することが可能な組合せボビン、トランスおよび共振型コンバータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る組合せボビンは、
第1のボビンと、前記第1のボビン上に重ね合わせることが可能な第2のボビンとを備え、
前記第1のボビンは、
第1の筒部と、
前記第1の筒部の外周から径方向に延在する第1の上側鍔部と、
前記第1の上側鍔部の下側に設けられ、前記第1の筒部の外周から径方向に延在する第1の下側鍔部と、
前記第1の上側鍔部の外縁部から前記第1の筒部の中心軸方向に沿って上方に延在するセパレート部と、を有し、
前記第2のボビンは、
第2の筒部と、
前記第2の筒部の外周から径方向に延在する第2の上側鍔部と、
前記第2の上側鍔部の下側に設けられ、前記第2の筒部の外周から径方向に延在する第2の下側鍔部と、を有し、
前記第2のボビンが前記第1のボビン上に重ね合わされた重ね合わせ状態において、前記第2の筒部の径方向領域の少なくとも一部は、前記セパレート部により前記第2の下側鍔部から前記第2の上側鍔部にわたって覆われることを特徴とする。
【0009】
また、前記組合せボビンにおいて、
前記重ね合わせ状態において、前記第2の下側鍔部は前記第1のボビンの前記第1の上側鍔部と重なるようにしてもよい。
【0010】
また、前記組合せボビンにおいて、
前記セパレート部には、前記第1の筒部に巻回される巻線から引き出されたリード線を前記第2のボビンの上方側に通すためのガイド部が設けられていてもよい。
【0011】
また、前記組合せボビンにおいて、
前記第2のボビンは、前記第2の上側鍔部の一端から前記第2の筒部の中心軸方向に沿って上方に延在する第1の脚部と、前記第2の上側鍔部の他端から前記中心軸方向に沿って上方に延在する第2の脚部とをさらに有してもよい。
【0012】
また、前記組合せボビンにおいて、
前記第2の脚部には、前記第2の筒部に巻回される巻線から引き出されたリード線を前記第2のボビンの上方側に通すためのガイド部が設けられていてもよい。
【0013】
また、前記組合せボビンにおいて、
前記第1の脚部は、前記重ね合わせ状態において前記セパレート部の被係合部と係合する係合部を有してもよい。
【0014】
また、前記組合せボビンにおいて、
前記第1の脚部および/または前記第2の脚部の上端には、前記組合せボビンを回路基板の搭載位置に位置決めするための突起部が設けられていてもよい。
【0015】
また、前記組合せボビンにおいて、
前記第2の筒部の外周面の周長が前記第1の筒部の外周面の周長と異なるようにしてもよい。
【0016】
また、前記組合せボビンにおいて、
前記第2の筒部の外周面の周長が前記第1の筒部の外周面の周長よりも短いようにしてもよい。
【0017】
また、前記組合せボビンにおいて、
上下に重ね合わされた前記第1のボビンおよび第2のボビンを左右から挟み込んで、前記第1のボビンおよび第2のボビンが分離しないように固定する一対のクランプ部材をさらに備えてもよい。
【0018】
また、前記組合せボビンにおいて、
前記クランプ部材は、
重ね合わされた前記第1のボビンおよび第2のボビンの側面を覆う被覆部と、
前記被覆部の上端から内側に向かって延在する上側挟込部と、
前記被覆部の下端から内側に向かって延在する下側挟込部と、
を有し、
前記上側挟込部には、第1の貫通孔が設けられ、前記下側挟込部には、第2の貫通孔が設けられ、前記第2の上側鍔部に設けられた第1の突部が前記第1の貫通孔に弾発的に係合し、前記第1の下側鍔部に設けられた第2の突部が前記第2の貫通孔に弾発的に係合するようにしてもよい。
【0019】
本発明に係るトランスは、
本発明に係る組合せボビンと、
前記第1の筒部に巻回された第1の巻線と、
前記第2の筒部に巻回された第2の巻線と、
前記第1の巻線と前記第2の巻線との間の磁路を形成するコアとを備えることを特徴とする。
【0020】
また、前記トランスにおいて、
前記コアは、
前記第1のボビンの下側に配置された第1コア部と、前記第1コア部から立設され前記第1のボビンの側面に配置された第2コア部と、前記第1コア部から立設され、前記第1の筒部内に挿入された第3コア部とを有する下側コアと、
前記第2のボビンの上側に配置された第4コア部と、前記第4コア部から立設され前記第2のボビンの側面に配置され、前記第2コア部に当接する第5コア部と、前記第4コア部から立設され、前記第2の筒部内に挿入された第6コア部とを有する上側コアと、を有し、
前記第3コア部と前記第6コア部との間にはギャップが設けられていてもよい。
【0021】
また、前記トランスにおいて、
前記第3コア部と前記第6コア部との間に設けられたギャップの長さは、前記第1の上側鍔部と前記第2の下側鍔部の厚さの和よりも小さいようにしてもよい。
【0022】
本発明に係る共振型コンバータは、
複数の半導体スイッチを有し、入力した直流電力を交流電力に変換して出力するブリッジ回路と、
本発明に係るトランスであって、前記第1の巻線が前記ブリッジ回路の出力端子に接続された、トランスと、
前記第1の巻線と前記ブリッジ回路の間に設けられた共振コンデンサと、
前記トランスの前記第2の巻線に発生した電圧を整流および平滑する整流平滑部と、
を備えることを特徴とする。
【0023】
また、前記共振型コンバータにおいて、
前記第1の上側鍔部の下面と前記第2の下側鍔部の上面との間の距離は、前記トランスの漏れインダクタンスが共振周波数に応じた値になるように決められていてもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る組合せボビンでは、第2のボビンが第1のボビン上に重ね合わされた重ね合わせ状態において、第2の筒部の径方向領域の少なくとも一部は、第1のボビンに設けられ、第1の上側鍔部の外縁部から第1の筒部の中心軸方向に沿って上方に延在するセパレート部により、第2の下側鍔部から第2の上側鍔部にわたって覆われる。よって、本発明によれば、ボビンのサイズを大きくすることなく、必要な沿面距離を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】(a)は実施形態に係る上側ボビン20の斜視図であり、(b)は実施形態に係る下側ボビン10の斜視図である。
図2】重ね合わせられていない状態における、下側ボビン10および上側ボビン20の縦断面図である。
図3】脚部24側から見た、実施形態に係る組合せボビン1の斜視図である。
図4】脚部25側から見た、実施形態に係る組合せボビン1の斜視図である。
図5】実施形態に係る組合せボビン1の縦断面図である。
図6】1次巻線41および2次巻線42が巻回された組合せボビン1の縦断面図である。
図7】実施形態に係るクランプ部材30の斜視図である。
図8】2枚のクランプ部材30が装着された組合せボビン1の斜視図である。
図9】実施形態に係るトランス120の縦断面図である。
図10】コアギャップG1,G2,G3ごとに巻線間距離Lと漏れインダクタンスLrの関係を示すグラフである。
図11】実施形態に係る共振型コンバータ100の回路図である。
図12】従来のボビン300を有するトランスの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。なお、各図において同等の機能を有する構成要素には同一の符号を付している。
【0027】
<組合せボビン>
本発明の実施形態に係る組合せボビン1について、図1図8を参照して説明する。なお、図2および図6は、図1に示す長軸方向に沿う縦断面図である。図5は、図1に示す短軸方向に沿う縦断面図である。
【0028】
組合せボビン1は、下側ボビン10(第1のボビン)と、この下側ボビン10上に重ね合わせることが可能な上側ボビン20(第2のボビン)とを備えている。なお、以下の説明において、図3図6に示すように上側ボビン20が下側ボビン10上に重ね合わされた状態を単に「重ね合わせ状態」ともいう。
【0029】
まず、下側ボビン10について説明する。下側ボビン10は、図1(b)および図2に示すように、筒部11(第1の筒部)と、上側鍔部12(第1の上側鍔部)と、下側鍔部13(第1の下側鍔部)と、セパレート部14とを有する。筒部11は、図6に示すように、1次巻線41(第1の巻線)が巻回される部分である。上側鍔部12は、筒部11の外周から径方向に延在する。下側鍔部13は、上側鍔部12の下側に設けられ、筒部11の外周から径方向に延在する。本実施形態では、上側鍔部12は筒部11の上端に設けられ、下側鍔部13は筒部11の下端に設けられている。なお、上側鍔部12が筒部11の途中(例えば筒部11の上端より少し下の位置)に設けられてもよい。
【0030】
図2図5および図6に示すように、下側鍔部13には2つの突部13a(第2の突部)が設けられている。この突部13aは、後述のクランプ部材30の貫通孔33aと係合する。
【0031】
セパレート部14は、図1(b)および図2に示すように、上側鍔部12の外縁部から筒部11の中心軸方向に沿って上方に延在するように設けられている。本実施形態では、セパレート部14は、上側鍔部12の全周にわたって設けられており、スカート状に形成されている。なお、セパレート部14は、1次巻線41のリード線41aが通過する部分にのみ設けられてもよい。
【0032】
図3に示すように、セパレート部14には、2つのガイド部14aが設けられている。より詳しくは、セパレート部14のうち、下側鍔部23から上側鍔部22にわたって筒部21を覆うセパレート部14の部分に、ガイド部14aが設けられている。このガイド部14aは、図6に示すように、1次巻線41から引き出されたリード線41aを、上側ボビン20の上方側(すなわち、回路基板側)に通すために設けられている。なお、ガイド部14aの数は2つに限られず1つであってもよい。
【0033】
また、図1(b)に示すように、セパレート部14には、上側ボビン20の係合部24aと係合する被係合部14bが設けられている。
【0034】
次に、上側ボビン20について説明する。上側ボビン20は、図1(a)および図2に示すように、筒部21(第2の筒部)と、上側鍔部22(第2の上側鍔部)と、下側鍔部23(第2の下側鍔部)とを有する。筒部21は、図6に示すように、2次巻線42(第2の巻線)が巻回される部分である。上側鍔部22は、筒部21の外周から径方向に延在する。下側鍔部23は、上側鍔部22の下側に設けられ、筒部21の外周から径方向に延在する。本実施形態では、上側鍔部22は筒部21の上端に設けられ、下側鍔部23は筒部21の下端に設けられている。なお、下側鍔部23が筒部21の途中(例えば筒部21の下端より少し上の位置)に設けられてもよい。
【0035】
上側ボビン20は、図1(a)および図2に示すように、脚部24(第1の脚部)および脚部25(第2の脚部)をさらに有する。脚部24は、上側鍔部22の一端から筒部21の中心軸方向に沿って上方に延在し、脚部25は、上側鍔部22の他端から筒部21の中心軸方向に沿って上方に延在する。本実施形態では、脚部24と脚部25は互いに平行になるように配置されている。組合せボビン1を用いた後述のトランス120が回路基板上に実装される際、脚部24,25が回路基板(図示せず)上に配置され、トランス120を支持することとなる。
【0036】
図1(a)および図3に示すように、脚部24は、重ね合わせ状態においてセパレート部14の被係合部14bと係合する係合部24aを有する。本実施形態では、凸状の係合部24aが凹状の被係合部14bに嵌合する。
【0037】
図1(a)および図2に示すように、脚部25の上端には、組合せボビン1を回路基板の搭載位置に位置決めするための突起部25bが設けられている。組合せボビン1が回路基板上に搭載される際、この突起部25bが回路基板の位置決め孔に挿入されることとなる。なお、脚部24の上端にも、組合せボビン1を回路基板の搭載位置に位置決めするための突起部が設けられていてもよい。一般的に言えば、このような搭載位置に位置決めするための突起部が、脚部24および脚部25の少なくともいずれか一方の上端に設けられる。
【0038】
図1(a)および図6に示すように、脚部25には、筒部21に巻回される2次巻線42から引き出されたリード線42aを上側ボビン20の上方側(すなわち、回路基板側)に通すためのガイド部25aが設けられている。なお、ガイド部25aの数は2つに限られず1つであってもよい。
【0039】
図1(a)および図2等に示すように、上側鍔部22には2つの突部22a(第1の突部)が設けられている。この突部22aは、後述のクランプ部材30の貫通孔32a(第1の貫通孔)と係合する。
【0040】
なお、本実施形態では、筒部11および筒部21の横断面形状は長円形であるが、これに限られるものではなく、その他の形状(正円、楕円等)であってもよい。
【0041】
また、本実施形態では、図5および図6に示すように、筒部11と筒部21の外周面の周長が同じである(すなわち、筒部の横断面形状・大きさが同じ)が、これに限られない。すなわち、筒部11と筒部21とで、外周面の周長が異なるようにしてもよい。例えば、筒部21の外周面の周長が筒部11の外周面の周長よりも短くなるようにしてもよい。これにより、上側ボビン20の高さを増やすことなく、2次巻線42の巻数を増やすことができる。
【0042】
本実施形態に係る組合せボビン1は、図8に示すように、一対のクランプ部材30をさらに備えている。一対のクランプ部材30は、上下に重ね合わされた下側ボビン10および上側ボビン20を左右から挟み込んで、下側ボビン10および上側ボビン20が分離しないように固定する。
【0043】
クランプ部材30は、図7に示すように、被覆部31と、上側挟込部32と、下側挟込部33とを有する。被覆部31は、図8に示すように、重ね合わされた下側ボビン10および上側ボビン20の側面を覆う。本実施形態では、被覆部31は、セパレート部14の形状に沿って湾曲している。上側挟込部32は、被覆部31の上端から内側に向かって延在しており、この上側挟込部32には貫通孔32a(第1の貫通孔)が設けられている。下側挟込部33は、被覆部31の下端から内側に向かって延在しており、この下側挟込部33には貫通孔33a(第2の貫通孔)が設けられている。
【0044】
上側鍔部22の突部22aがクランプ部材30の貫通孔32aに弾発的に係合し、下側鍔部13の突部13aがクランプ部材30の貫通孔33aに弾発的に係合することにより、クランプ部材30は、重ね合わされた下側ボビン10および上側ボビン20が分離しないように固定する。
【0045】
以上、本実施形態に係る組合せボビン1について説明した。
【0046】
本実施形態に係る組合せボビン1では、図6に示すように、重ね合わせ状態において筒部21の径方向領域の少なくとも一部は、セパレート部14により下側鍔部23から上側鍔部22にわたって覆われる。ここで、セパレート部14により覆われる筒部21の径方向領域は、具体的には、下側ボビン10に巻回された1次巻線41から引き出されたリード線41aが通る部分(ガイド部14aが設けられた部分)である。これにより、本実施形態によれば、ボビン(組合せボビン1)のサイズを大きくすることなく、必要な沿面距離を確保することができる。
【0047】
さらに、本実施形態に係る組合せボビン1では、図5および図6に示すように、重ね合わせ状態において、上側ボビン20の下側鍔部23が下側ボビン10の上側鍔部12と重なり、上側鍔部12と下側鍔部23の厚さの和は1次巻線41と2次巻線42との間の距離(巻線間距離L)となる。換言すれば、巻線間距離Lは、上側鍔部12と下側鍔部23の厚さの和となる。後述のトランス120の漏れインダクタンスは、この和の値により調整することができる。より一般的に言えば、上側鍔部12の下面と下側鍔部23の上面との間の距離を変えることにより、トランス120の漏れインダクタンスを調整することができる。したがって、トランス120の適用製品が変わった場合、上側ボビン20と下側ボビン10のうちいずれか一方のみを新規に作製すればよい。よって、本実施形態に係る組合せボビン1によれば、適用製品の特性に応じて柔軟に対応することができる。
【0048】
また、本実施形態に係る組合せボビン1では、下側ボビン10および上側ボビン20のいずれも、巻線が巻回される筒部の上下両端に鍔部を有する。このため、重ね合わせ状態でなくとも、筒部に巻回された巻線(1次巻線41、2次巻線42)を固定することができる。すなわち、巻線が巻回された状態であっても、下側ボビン10または上側ボビン20単体で(下側ボビン10および上側ボビン20を重ね合わせることなく)取り扱うことができる。例えば、巻線が巻回された下側ボビン10または上側ボビン20を単体で搬送したり保管したりすることができる。
【0049】
<組合せボビンを用いたトランス>
次に、上記の組合せボビン1を用いたトランス120について、図9を参照して説明する。
【0050】
本実施形態に係るトランス120は、図9に示すように、組合せボビン1(下側ボビン10、上側ボビン20、クランプ部材30)と、筒部11に巻回された1次巻線41と、筒部21に巻回された2次巻線42と、1次巻線41と2次巻線42との間の磁路を形成するコア50とを備えている。
【0051】
コア50は、下側コア51および上側コア52を有している。本実施形態では、コア50は、図9に示すように、いずれもE形の下側コア51と上側コア52を組み合わせたものである。
【0052】
下側コア51は、コア部51a(第1コア部)と、コア部51aの両端から立設された2つのコア部51b(第2コア部)と、コア部51aの中央部分から立設されたコア部51c(第3コア部)を有する。コア部51aは、下側ボビン10の下側に配置されている。本実施形態では、クランプ部材30の下側挟込部33が板状のコア部51aに接している。コア部51bは、下側ボビン10の側面に配置されている。本実施形態では、コア部51bはクランプ部材30の被覆部31に接している。コア部51cは、筒部11内に挿入されており、筒部11に巻回された1次巻線41を貫通する。
【0053】
上側コア52は、コア部52a(第4コア部)と、コア部52aの両端から立設されたコア部52b(第5コア部)と、コア部52aの中央部分から立設されたコア部52c(第6コア部)とを有する。コア部52aは、上側ボビン20の上側に配置されている。本実施形態では、クランプ部材30の上側挟込部32が板状のコア部52aに接している。コア部52bは、上側ボビン20の側面に配置されており、下側コア51のコア部51bに当接している。コア部52cは、筒部21内に挿入されており、筒部21に巻回された2次巻線42を貫通する。
【0054】
また、図9に示すように、コア部51cとコア部52cとの間には、ギャップGが設けられている。本実施形態では、このギャップGの長さは、上側鍔部12と下側鍔部23の厚さの和(巻線間距離L)よりも小さい。
【0055】
図10に示すように、トランス120の漏れインダクタンスLrは、巻線間距離L(本実施形態では1〜6mm)にほぼ比例して大きくなる。この関係を利用すれば、上側鍔部12と下側鍔部23の厚さの和を調整することにより所望の漏れインダクタンスLrを得ることができる。漏れインダクタンスLrは、図10に示すように、コア部51cとコア部52cとの間のギャップGの長さ(G1=0.5mm,G2=0.25mm,G3=0.1mm)にはあまり依存しない。
【0056】
なお、上記のトランス120では、下側ボビン10の筒部11に1次巻線41が巻回され、上側ボビン20の筒部21に2次巻線42が巻回されていたが、これとは反対に、下側ボビン10の筒部11に2次巻線42が巻回され、上側ボビン20の筒部21に1次巻線41が巻回されてもよい。
【0057】
<共振型コンバータ>
次に、上記のトランス120を用いた共振型コンバータ100について、図11を参照して説明する。
【0058】
本実施形態に係る共振型コンバータ100は、電流共振型コンバータであって、図11に示すように、ブリッジ回路110と、トランス120と、共振コンデンサCrと、整流平滑部130とを備えている。共振型コンバータ100は、直流電源Vinから直流電力を入力し、電力変換により得られた直流電力を負荷RLに出力するように構成されている。
【0059】
ブリッジ回路110は、直流電源Vinから入力した直流電力を交流電力に変換してトランス120に出力する。このブリッジ回路110は、複数の半導体スイッチQ1,Q2,Q3,Q4を有する。半導体スイッチQ1,Q2,Q3,Q4は、フルブリッジ回路を構成する。なお、半導体スイッチQ1〜Q4の種類は、特に限定されるものではないが、本実施形態では、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)である。また、図11中のダイオードD1,D2,D3,D4は還流ダイオードである。半導体スイッチQ1〜Q4がパワーMOSFETである場合、ダイオードD1,D2,D3,D4は内蔵ダイオード(ボディダイオード)である。
【0060】
トランス120は、1次巻線41がブリッジ回路110の出力端子に接続されている。本実施形態では、1次巻線41の一端は、半導体スイッチQ1のエミッタと半導体スイッチQ2のコレクタとの間の接続点N1に接続されている。1次巻線41の他端は、半導体スイッチQ3のエミッタと半導体スイッチQ4のコレクタとの間の接続点N2に共振コンデンサCrを介して接続されている。
【0061】
共振コンデンサCrは、漏れインダクタンスLrおよび励磁インダクタンスLmとともに共振回路を構成する。共振コンデンサCrは、ブリッジ回路110とトランス120(1次巻線41)との間に設けられる。本実施形態では、共振コンデンサCrは、図11に示すように、接続点N2と1次巻線41(の他端)との間に設けられている。なお、共振コンデンサCrは、接続点N1と1次巻線41(の一端)との間に設けられてもよい。
【0062】
整流平滑部130は、トランス120の2次巻線42に発生した電圧(交流電圧)を整流および平滑するように構成されている。具体的には、整流平滑部130は、ダイオードD5,D6,D7,D8から構成されるブリッジダイオードと、このブリッジダイオードの出力端に接続された平滑コンデンサCとを有している。
【0063】
共振型コンバータ100において、上側鍔部12と下側鍔部23の厚さの和(巻線間距離L)は、トランス120の漏れインダクタンスLrが共振周波数に応じた値になるように決められている。このように、本実施形態によれば、上側鍔部12と下側鍔部23の厚さの和(より一般的に言えば、上側鍔部12の下面と下側鍔部23の上面との間の距離)を変えることにより、共振型コンバータ100の共振周波数を調整することができる。
【0064】
上記の記載に基づいて、当業者であれば、本発明の追加の効果や種々の変形を想到できるかもしれないが、本発明の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではない。異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。特許請求の範囲に規定された内容及びその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更及び部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 組合せボビン
10 下側ボビン(第1のボビン)
11,21 筒部
12,22 上側鍔部
13,23 下側鍔部
13a,22a 突部
14 セパレート部
14a ガイド部
14b 被係合部
20 上側ボビン(第2のボビン)
24,25 脚部
24a 係合部
25a ガイド部
25b (位置合せ用の)突起部
30 クランプ部材
31 被覆部
32 上側挟込部
33 下側挟込部
32a,33a 貫通孔
41 1次巻線
41a,42a リード線
42 2次巻線
50 コア
51 下側コア
51a,51b,51c,52a,52b,52c コア部
52 上側コア
100 共振型コンバータ
110 ブリッジ回路
120 トランス
130 整流平滑部
D 空間距離
G (コアの)ギャップ
L 巻線間距離
N1,N2 接続点
RL 負荷
Vin 直流電源
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12