特許第6563361号(P6563361)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6563361リチウムイオン二次電池用負極の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6563361
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】リチウムイオン二次電池用負極の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/1397 20100101AFI20190808BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20190808BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20190808BHJP
   C01B 32/963 20170101ALI20190808BHJP
【FI】
   H01M4/1397
   H01M4/66 A
   H01M4/58
   C01B32/963
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-91644(P2016-91644)
(22)【出願日】2016年4月28日
(65)【公開番号】特開2017-199629(P2017-199629A)
(43)【公開日】2017年11月2日
【審査請求日】2018年2月15日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成27年11月10日発行の「第56回電池討論会講演要旨集」に掲載
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成27年11月11−13日に愛知県産業労働センターWINC AICHIで開催された「第56回電池討論会」で発表
(73)【特許権者】
【識別番号】390010227
【氏名又は名称】株式会社三五
(74)【代理人】
【識別番号】100108671
【弁理士】
【氏名又は名称】西 義之
(72)【発明者】
【氏名】大福 誠
【審査官】 宮田 透
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0107693(US,A1)
【文献】 特開2013−065496(JP,A)
【文献】 特開2007−188873(JP,A)
【文献】 米国特許第08734674(US,B1)
【文献】 M.Shiratani et al.,SiC Nanoparticle Composite Anode for Li-ion Batteries,MRS SYMPOSIUM PROCEEDINGS,Materials Research Society,2014年,Vol.1678,pp.7-12,DOI:10.1557/opl.2014.742
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/36− 4/62
H01M 4/13− 4/1399
H01M 10/05−10/0587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ化学蒸着法によって原料ガスを分解して炭素とケイ素を同時に負極集電体基板面に堆積する方法において、高周波放電を用い、シリコンを構成元素として含む原料ガスと炭素を構成元素として含む原料ガスとの混合ガス、または、シリコン元素及び炭素元素を含む原料物質を原料ガスとして用い、基板の加熱温度を850℃未満として、堆積物の15質量%以上が非晶質炭化ケイ素からなり、活物質として作用する薄膜を堆積することを特徴とするリチウムイオン二次電池用負極の製造方法。
【請求項2】
シリコン成分の原料ガスとして塩化ケイ素ガス又は水素化ケイ素ガス、炭素成分の原料ガスとして炭素原子数が1〜6のアルカンガスを用いることを特徴とする請求項1記載のリチウムイオン二次電池用負極の製造方法。
【請求項3】
Si成分の原料ガスとして四塩化ケイ素ガス、C成分の原料ガスとしてメタンを用いることを特徴とする請求項1記載のリチウムイオン二次電池用負極の製造方法。
【請求項4】
前記薄膜の厚みが100nm〜10μmであることを特徴とする請求項1記載のリチウムイオン二次電池用負極の製造方法。
【請求項5】
前記集電体基板がステンレス鋼からなることを特徴とする請求項1記載のリチウムイオン二次電池用負極の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波プラズマ法を用いるリチウムイオン二次電池用負極の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やノートブック型パーソナルコンピュータ等のモバイル型の電子機器が情報社会の重要な役割を果たしている。これらの電子機器は長時間駆動が求められており、必然的に駆動電源である二次電池の高エネルギー密度化が望まれてきた。
【0003】
これらの電子機器や車両等の搬送機器の電源として、軽量で高エネルギー密度が得られるリチウムイオン二次電池の高性能化が求められている。リチウムイオン二次電池は、リチウム塩を非水溶媒に溶解させた電解液やリチウム固体電解質が負極活物質と正極活物質との間に挟まれた構造とされており、負極活物質と正極活物質との間をリチウムイオンが行き来することによって充電及び放電が行われている。
【0004】
リチウムイオン二次電池用の負極活物質として、従来、グラファイトが用いられているが、結晶子サイズがミクロンオーダーと大きく、高速充放電には適さない。理論的にはカーボン系負極材料以上の充放電容量が得られるシリコン、シリコンを主体とする合金、シリコン酸化物等が負極材料として注目されている。シリコンはリチウムと合金化するため負極活物質として用いることができ、しかも、グラファイトと比べてリチウムを多く取り込むことができることから、電池の高容量化を期待できるからである(例えば、非特許文献1、特許文献1、2)。
【0005】
シリコンの炭化物であるSiCは、従来、電気化学的に不活性でありリチウムイオンを挿入放出せず容量を持たないと考えられていた(特許文献3)。しかし、SiC表面を黒鉛化するとリチウムの挿入が可能になり負極として使用できることが報告されている(非特許文献2、3、特許文献4)。また、Si中にCや,Nが非平衡的に存在した相の化合物を銅箔集電体表面にCVD法等で1〜30μmの厚みで堆積した負極材を用いる非水電解液2次電池に係る発明(特許文献5,6)や、SiCx(0.25≦x≦0.95)で示される非晶質のSi含有化合物の表面に非晶質炭素層を形成した負極活物質に関する発明(特許文献7)が特許出願されている。
【0006】
また、シリコンナノ粒子と炭素をプラズマ成膜法で複合したリチウムイオン二次電池用のSiCナノ粒子複合物フィルム負極について報告されている(非特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−077529号公報
【特許文献2】特開2007−194204号(特許第4671950号)公報
【特許文献3】特開平11−339796号公報
【特許文献4】米国特許8734674号明細書
【特許文献5】特開2006−128067号(特許第4972880号)公報
【特許文献6】特開2007−188873号(特許第4899841号)公報
【特許文献7】特開2012−64565号(特許第5669143号)公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Uday Kasavajjula,et al.,"Nano-and bulk-silicon-based insertion anodes for lithium-ion secondary cells",Journal of Power Sources,163,(2007),1003-1039
【非特許文献2】T.Sri Devi Kumari,et al.,"Nano silicon carbide:a new lithium-insertion anode material on the horizonRSC.Adv.,2013,3,15028-15034
【非特許文献3】M.Shiratani et al.,"SiC nanoparticle Composite Anode for Li-ion Batteries",Mater.Res.Soc.Symp.Proc.Vol.1678,DOI:10.1557/opl.2014.742
【非特許文献4】X. Chang et al.,"Direct plasma deposition of amorphous Si/C nanocomposites as high performance anodes for lithium ion batteries",J.Mater.Chem.A,2015,3,3522-3528
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
高容量化とサイクル寿命を両立させた負極材料の開発はリチウムイオン二次電池の性能を高めるのに重要である。シリコンを負極活物質として用いるには、充放電による体積変化を吸収するための機構が必要である。また、Siは導電性がないため集電体との導電パスを確保するために炭素等の導電性を持つ導電助剤との混合が必要となる。
【0010】
前記特許文献5に記載されている負極活物質は、SiCx(0.25≦x≦0.95)で示される非平衡組織の非晶質SiCを含み全体重量に対して5〜20重量%の非晶質炭素からなる炭素層を表面に含むものであり、実質的には非晶質炭素を活物質とするものであり、このような構造の活物質を作製するために、2源スパッタ装置とSiターゲットおよびCターゲットを使用してスパッタリングにより厚さは2μmの活物質層を形成している。ここで特定された構造の活物質を作製するには、2源スパッタ装置のような手段を用いる必要があり、作製するのが困難である。
【0011】
本発明は、シリコン及び炭素を活物質として利用する負極を比較的簡単で安価な製造方法で提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、高周波プラズマCVD法を用いて特定の条件で成膜した非晶質SiCを主成分とするSi−C複合膜が活物質として作用することを見出した。
【0013】
すなわち、本発明は、(1)プラズマ化学蒸着法によって原料ガスを分解して炭素とケイ素を同時に負極集電体基板面に堆積する方法において、高周波放電を用い、シリコンを構成元素として含む原料ガスと炭素を構成元素として含む原料ガスとの混合ガス、または、シリコン元素及び炭素元素を含む原料物質を原料ガスとして用い、基板の加熱温度を850℃未満として、堆積物の15質量%以上が非晶質炭化ケイ素からなり、活物質として作用する薄膜を堆積することを特徴とするリチウムイオン二次電池用負極の製造方法、である。
【0014】
また、本発明は、(2)シリコン成分の原料ガスとして塩化ケイ素ガス又は水素化ケイ素ガス、炭素成分の原料ガスとして炭素原子数が1〜6のアルカンガスを用いることを特徴とする上記(1)のリチウムイオン二次電池用負極の製造方法、である。
【0015】
また、本発明は、(3)シリコン成分の原料ガスとして四塩化ケイ素ガス、炭素成分の原料ガスとしてメタンを用いることを特徴とする上記(1)のリチウムイオン二次電池用負極の製造方法、である。
【0016】
また、本発明は、(4)前記薄膜の厚みが100nm〜10μmであることを特徴とする上記(1)のリチウムイオン二次電池用負極の製造方法、である。
【0017】
また、本発明は、(5)前記集電体基板がステンレス鋼からなることを特徴とする上記(1)のリチウムイオン二次電池用負極の製造方法、である。
【0018】
従来の技術は、Siのナノ粒子化や炭素の非晶質化を目的としたものが多く、できるだけSiCの形成を抑制するものであったが、本発明は形成されやすいSiCをそのまま利用できるようにした。
【発明の効果】
【0019】
本発明の二次電池用負極の製造方法は、従来の導電助剤やバインダを用いた負極作製プロセスのような複雑な工程が不要になり、高周波プラズマCVD法という気相から低温高速で比較的薄い均一なSiC膜を集電体基板面に形成するだけでよく、工程の簡略化、コストの低減化ができ、歩留まりの高い負極を提供できる。また、Siとは異なり充放電により体積変化の小さな活物質層を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施例1で作製した負極のX線光電分光法(XPS)の測定結果を示すグラフである。
図2】実施例1で作製したハーフセルの初期充放電特性の測定結果を示すグラフである。
図3】実施例2で作製したハーフセルの初期充放電特性の測定結果を示すグラフである。
図4】実施例1,2で作製したハーフセルのサイクル特性を示すグラフである。
図5】実施例3で作製したハーフセルの初期充放電特性の測定結果を示すグラフである。
図6】実施例3で作製したフルセルの初期充放電特性の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明において、負極集電体としては、導電性がよく安価な銅系材料、ニッケル系材料、耐食性が高いステンレス鋼が挙げられる。ステンレス鋼は通常不動態皮膜により活物質層との間の接触抵抗が増大してしまう問題があり耐食性と表面接触抵抗の両方に優れた鋼種類を用いることが望ましい。
【0022】
本発明は、高周波プラズマ化学気相蒸着(PECVD)法で非晶質SiC薄膜を集電体基板表面に堆積する。通常、プラズマ化学気相蒸着法に用いられるプラズマは、無線周波数(10kHz〜20 MHz)またはマイクロ波(0.1〜10GHz)が使用されるが、高周波プラズマは非晶質SiCの堆積に適している。
【0023】
一般に気相から薄膜を堆積する場合、基板上に核が多数形成され、その核が互いに接触して島状、柱状構造となる。基板温度や原料ガス組成などの条件により結晶膜が形成される。従来、化学量論組成のSiC(Si:C=1:1の炭化ケイ素)はLiイオンに不活性でリチウムイオンを挿入放出せず、容量を持たないので、Si/C複合負極の製造の際はできるだけSiCを含まないようにするか、非平衡組成のSiCを形成するようにしている。しかし、本発明の方法で形成される非晶質SiC薄膜層は活物質として作用する。その機構は明確ではないが、非晶質SiCに遊離の炭素が介在して緻密ではなく柱状の隙間がある構造になり、リチウムイオンが挿入される空隙が形成されるのではないかと推測される。
【0024】
以下に、負極集電体基板面に非晶質SiCを形成する方法を示す。非晶質SiC膜は、高周波プラズマCVD装置のチャンバー内に、Si成分の供給源及びC成分の供給源となる原料ガスをキャリアーガスとともに供給し、原料ガスを分解してSi原子及びC原子を同時に集電体表面に堆積させて成膜する。
【0025】
高周波プラズマCVD(PECVD)において、集電体基板の加熱温度
を850℃未満〜100℃程度とし、特定の原料ガスを用いると多結晶ではなく非晶質構造を有する炭化ケイ素膜を形成することができる。基板の加熱温度が900℃以上にすると成長するSiCは単結晶である。基板温度は高周波コイル7の高周波磁場のエネルギーにより調整可能である。高周波プラズマCVDは、周波数13.56MHzの高周波による放電を用いる方法であり、小さい圧縮応力の非晶質SiC薄膜形成が可能である。低周波(380KHz)を用いると大きな圧縮応力の緻密な膜となる。
【0026】
炭化ケイ素の形成用の原料ガスとしては、一般にシラン、ジシラン、ジクロルシラン、トリクロロシラン等の水素化ケイ素ガスとメタン、エタンまたはプロパンのような炭素原子数が1〜6のアルカン及び水素の混合ガスとを用いるSi−C−H系ガス、四塩化ケイ素、六塩化二ケイ素などの塩化ケイ素ガスとメタン、エタンまたはプロパンのような炭素原子数が1〜6のアルカン及び水素の混合ガスとを用いるSi−C−Cl−H系ガスが用いられる。しかし、プラズマ中の反応により非晶質SiCを形成できる原料であればよく、これらのガスに限られない。
【0027】
Si原料としては、Siを含む溶液を気化させて原料ガスとしてもよい。また、Siを含む原料物質中にCを含むSi(C2 34、Si(C494 、Si(OC2 54 等の有機シランであればそれを原料ガスとしてもよい。キャリアーガスとしては、水素、アルゴン等を用いても良い。
【0028】
高周波プラズマCVD法により非晶質SiC膜を堆積する好ましい条件は下記のとおりである。混合ガスの流量は装置依存性があるため、装置に応じて適宜選択する必要があるが、通常10sccm〜500sccm程度を目処とする。集電体基板温度は、850℃未満とする。室温でも非晶質膜を堆積することができるが堆積速度が低下するので好ましくは100℃以上、さらに好ましくは600℃以上とする。チャンバー内のプロセス圧を0.05〜0.5torr(6.7〜66.7Pa)、印加高周波出力を50〜500W程度、印加高周波周波数を13.56MHz、電極から集電体基板までの距離を20〜80mm程度として、15分〜2時間程度堆積させるとよい。また、高周波プラズマCVD法における集電体基板側のバイアスは−100V〜0Vが好ましい。
【0029】
上記方法によると膜の全量に対して非晶質SiCが15質量%以上のSi−C系複合膜が形成される。膜中のSi成分のうち66〜90%がSiCとして存在している。この複合膜は、通常、100nm〜10μm、好ましくは300nm〜1000nm、特に好ましくは300nm〜600nmの厚みに堆積する。
【0030】
本発明の製造方法によればハーフセルで負極容量が1000mAh/g程度、 サイクル特性が500サイクル後に初期容量からの低下率が10%未満の優れた特性が得られる。
【0031】
本発明の方法で製造した負極は、リチウムイオン二次電池用の構成要素として用いることができる。すなわち、本発明の負極と、リチウムイオンの化合物等を活物質とする正極と、この正負極間に配置される電解液と、正負極間を隔離するセパレータと、から二次電池を形成することができる。電解液の有機溶媒と電解質、正極、セパレータ、並びにこの二次電池を構成する外容器の構造や大きさ等については、特に制限はなく、従来公知のものを用いることができる。
【0032】
前記正極集電体は、例えば、アルミニウム、ニッケル又はステンレス鋼などでよい。セパレータは、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)などのポリオレフィン製の多孔質膜、セラミック製の多孔質膜でよい。
【0033】
非水有機溶媒は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート及びエチルメチルカーボネートが好適である。電解液の難燃性を向上させるためにフルオロエーテルを用いてもよい。非水有機溶媒は有機珪素化合物などの添加剤を含有してもよい。
【0034】
かかる二次電池に具備される電解質としては、リチウムイオンを伝導する性質を有する各種材料を特に限定なく使用することができる。ここに開示される技術は、液状の電解質(電解液)を備える電池にも固体電解質を備える電池にも適用可能である。固体電解質(典型的には、無機材料からなる固体電解質)を備える電池への適用がより好ましい。このような固体電解質は、一種のみを使用してもよく、組成の異なる二種以上の固体電解質を併用(例えば混合して使用)してもよい。
【実施例1】
【0035】
(負極の作製) 集電体として用いるステンレス鋼箔(フェライト系ステンレス SUS430,50mm×50mm、厚さ50μm)にプラズマCVD装置(株式会社広島製)を用いて原料ガスを分解しSiと炭素を同時に成膜し、非晶質SiC膜を形成した。Si成分の原料ガスとして四塩化ケイ素(SiCl4)ガスを用い、C成分の原料ガスとしてメタン(CH4)ガスを用い、流量(sccm)比にてSiCl4ガス:CH4:H2=6:36:8とした。成膜温度750℃、圧力16.7Pa、RF出力200W、成膜時間90分、で成膜した。
【0036】
均一で緻密な約500nmの膜が形成された。図1に、XPSスペクトル(si2p)を示す。膜の組成は質量%でC:O:Si=73:4:23であった。単体のSiに対応するピーク99.3eVは確認できず、Siは約90%がSiC(炭化物)にて存在していることが分った。また、結晶性を確認するために電子線回折像を取得したが、明確な回折パターンは確認されず非晶質であった。
【0037】
上記の方法で形成した負極でハーフセル(2032コインセル)を作製して負極特性を評価した。負極サイズをφ16mmとし、対極をLi金属とし、電解液は1mol/L LiPF6,EC:DMC(1:2v/v%)(添加剤なし)、セパレータはPP系で厚さ25μm、評価温度25℃一定(恒温槽)とした。図2に、初期充放電特性を示す。初期10サイクルは0.1Cの充放電レートにて初期性能を評価し、その後、1Cレートにてサイクル特性を評価した。1サイクル目の容量(初期容量)は1018mAh/gであり、5サイクル目は1163mAh/gであった。
【実施例2】
【0038】
Si成分の原料ガスとしてヘキサメチルジシロキサンを気化させたガスを用い、C成分の原料ガスとしてメタン(CH4)ガスを用い、流量(sccm)比で気化ガス:CH4:H2=16:12:12とし、RF出力400W、成膜時間45分とした以外は実施例1と同条件で成膜した。均一で緻密な約500nmの膜が形成された。膜は非晶質であり、膜の組成は質量%でC:O:Si=67:12:21であった。Siは約66%がSiC(炭化物)にて存在していることが分った。
【0039】
上記の方法で形成した負極でハーフセルを作製して実施例1と同じ条件で負極特性を評価した。結果の初期充放電特性を図3に示す。1サイクル目の容量(初期容量)は961mAh/gであり、8サイクル目は956mAh/gであった。
【0040】
実施例1,2の充放電モード:CC−CV,カットオフ電圧:0.02−2.1V,1Cレートでのサイクル特性を図4に示す。500サイクル後、実施例1は982mAh/gの高容量であり、容量低下率は6.7%であった。実施例2は767mAh/gの高容量であり、容量低下率は1.7%であった。
【実施例3】
【0041】
Si成分の原料ガスとして四塩化ケイ素(SiCl4)ガスを用い、C成分の原料ガスとしてメタン(CH4)ガスを用い、流量(sccm)比にてSiCl4ガス:CH4:H2=6:48:12とした。成膜温度750℃、圧力20Pa、RF出力150W、成膜時間60分、で成膜した。
【0042】
上記の方法で形成した負極でハーフセルを作製して実施例1と同じ条件で負極特性を評価した。結果を図5に示す。1サイクル目の容量(初期容量)は1127mAh/gであり、5サイクル目は1190mAh/gであった。
【0043】
上記の方法で形成した負極でフルセル(2032コインセル)を作製して負極特性を評価した。負極サイズをφ16mmとし、対極をコバルト酸リチウムとし、電解液は1mol/L LiPF6,EC:DMC(1:2v/v%)(添加剤なし)、セパレータはPP系で厚さ25μm、評価温度25℃一定(恒温槽)とした。図6に、初期充放電特性を示す。初期6サイクルは0.1Cの充放電レートにて初期性能を評価した。1サイクル目の容量(初期容量)は910mAh/gであり、6サイクル目は1595mAh/gであった。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、リチウムイオン電池の負極としてケイ素と炭素を利用する新たな製造方法としての進展が期待される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6