特許第6563388号(P6563388)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6563388弁を設計する方法および弁を製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6563388
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】弁を設計する方法および弁を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   F16K 3/26 20060101AFI20190808BHJP
【FI】
   F16K3/26 A
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-521732(P2016-521732)
(86)(22)【出願日】2014年10月6日
(65)【公表番号】特表2016-540161(P2016-540161A)
(43)【公表日】2016年12月22日
(86)【国際出願番号】FR2014052530
(87)【国際公開番号】WO2015052423
(87)【国際公開日】20150416
【審査請求日】2017年9月6日
(31)【優先権主張番号】1359794
(32)【優先日】2013年10月9日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】516227272
【氏名又は名称】サフラン・エアクラフト・エンジンズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ル・ゴニデック,セルジュ・ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ユエ,バランタン
(72)【発明者】
【氏名】カロン,アントニー
(72)【発明者】
【氏名】バール,ウィリアム
【審査官】 松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0085951(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0302259(US,A1)
【文献】 特開平04−136568(JP,A)
【文献】 特開2007−162788(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 3/00 − 3/36
F16K 5/00 − 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流れ断面(S)の流体流れオリフィス(36)を呈する弁(12)を設計する設計方法であって、前記断面は弁の弁部材(30)の位置に依存し、前記弁部材の位置は弁に適用されたコマンドによって制御され、方法は、
a)弁の流れ断面の望ましい変動関係(S*)を決定するステップであって、そこでは、弁の流れ断面の望ましい変動関係(S*)が、少なくとも時間間隔(Δt)にわたって、弁の流れ断面(S)の望ましい変動を、時間の関数として定義しているものである、当該ステップと、
b)弁部材が前記間隔の間に従うことが望ましい、所定の移動関係(P(t))を設定するステップと、
c)弁部材が前記間隔の間に前記所定の移動関係(P(t))にしたがって移動したならば、流れ断面(S(t))が、前記時間間隔の間の各瞬間(t)で、その瞬間に望まれる、所望の流れ断面(S*(t))に等しくなるように、前記流体流れオリフィスの形状を定義するステップと、
を備える設計方法。
【請求項2】
前記移動関係が定速移動関係である、請求項1に記載の設計方法。
【請求項3】
弁がその一部を形成するシステムのパラメータについて流体流量の所望の変動関係(F*)が設定され、パラメータの前記所望の変動関係(F*)の関数として前記弁の断面に望ましい変動関係(S*)が決定される、請求項1または2に記載の設計方法。
【請求項4】
前記弁の断面に望ましい変動関係(S*)および弁がその一部を形成するシステムのパラメータに所望の変動関係(F*)の両方が、計算によって一緒に決定される、請求項1または2に記載の設計方法。
【請求項5】
システムの前記パラメータが前記弁の流量である、請求項3または4に記載の設計方法。
【請求項6】
弁を製造する方法であって、方法が、請求項1から5のいずれか一項に記載の弁設計方法を用いて弁を設計するステップを含み、このようにして設計された弁を製造するステップが続く、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁に適用されたコマンドが、弁部材を通る流体の流量を制御可能とするように、可変断面の前記流体の流通路を呈する弁に適用可能な、制御可能な弁を設計する方法に関する。より正確には、弁に適用されたコマンドは、本明細書においてより簡単に「流れ断面」と称される、弁を通る流れ断面の面積を制御することを、可能にする。
【背景技術】
【0002】
用語「弁部材」は本明細書において、弁の流れ断面を修正するために移動することが可能な、すなわち弁が配置されているパイプ内の流体の流れを促進、または反対に阻害するように移動することが可能な、いずれかの器械部材または1組の機械部品を包含するために、広く用いられる。弁部材はこのため、フラップ、スライド、プラグなどの形状であってもよい。
【0003】
中に流体が流れるシステムを設計するとき、通常は、可能であれば、一般的にはあまり高額ではないので、標準的な部品、具体的には機械部品を利用することが、望ましい。
【0004】
このためこのようなシステムは、比較的標準的な弁を組み込んでいる。
【0005】
さらに、システムを設計するとき、予測される様々な状況下でシステムが取ることになる挙動が知られており、または可能であれば事前に決定される。
【0006】
このような状況下では、システムを構成し(アクチュエータ、弁などの調整手段、モータ、ポンプなど)、システムの違いを調節する動作を有する、様々な能動部品にとって望ましい応答関係を定義することが、一般的である。具体的には、予測される状況下で、検討される部品に適用される、またはこれにより実行される作用の値にとって望ましい時間関数として変動を定義し、望ましい挙動を呈するようにシステムに適用される必要のある応答関係が、このようにして定義される。
【0007】
一例として、調査対象のシステムが制御可能な弁を含む場合、様々な状況下で弁にとって望ましい応答関係を定義することが、適切である。このような弁の応答関係は、時間関数として弁のオリフィスに流れ断面値を付与する関数である。
【0008】
弁が望ましい応答を実行する(すなわち、様々な望ましい値を連続して取るように弁の流れ断面が変動する)ことを保証するために、一般的に電子カードまたはコンピュータによって構成された電子制御ユニットを含む制御手段を提供することが一般的であり、制御ユニットによって弁の制御関係が適用されるときに、流れ断面が望ましい応答関係に従うように、弁の制御関係が決定される。
【0009】
このような設計方法は、比較的複雑な制御手段を使用することによってシステムの様々な能動部品を制御する必要性を生じるという不都合を呈する。
【0010】
具体的には、たとえば線形タイプまたは対数タイプであってもよい従来の標準プロファイルを前提にすると、弁部材の移動関係自体が複雑になるので、ある程度の複雑さを呈するように制御する必要がある;さらに、特定の状況において、高い精度、および/または高い加速度、および/または高度なトルクまたは力を持って弁部材の位置を制御する必要があるかも知れず、これら様々な状況のすべては、制御手段、およびより具体的には位置サーボ制御の費用および複雑さの増加をもたらす。
【0011】
これにより、システムの総費用が最適化されない事態を招く。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、上述の不都合を解決することである。
【0013】
本発明の目的は、可変断面(S)の流体流れオリフィスを呈する弁を設計する設計方法を定義することであり、前記断面は弁部材の位置に依存し、前記弁部材の位置は、弁に簡単なコマンドを適用することによって制御される。上記の定義における用語「流れオリフィス」は、弁が単一の流体流れ開口を呈する状況、および流体の流れを通すための複数の開口を呈する状況の、両方に及ぶ。
【0014】
本発明の目的は、その弁部材が、所定の移動関係、たとえば一定の速度で弁部材を移動させるなど、特に実施しやすい移動関係に従って移動したとしても、特定の所定状況下で、所定の変動関係と等しいその流れ断面の変動の関係性を呈する弁を、弁設計方法が取得できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
これらの目的を達成するため、本発明の弁設計方法は、以下のステップを備える:
a)一般的にはコンピュータ計算により、弁の流れ断面の望ましい変動関係(S*(t))を決定し、少なくとも時間間隔(Δt)にわたって、時間関数として弁の流れ断面(S)における望ましい変動を定義する、ステップと、
b)弁部材が前記間隔の間に従うことが望ましい所定の移動関係(P(t))を設定するステップと、
c)前記所定移動関係に従って前記間隔の間に弁部材が移動する場合に、前記時間間隔の間の各瞬間(t)において、流れ断面(S(t))がその瞬間に望ましい断面(S*(t))と等しいままとなるように、前記流体流れオリフィスの形状を定義するステップ。
【0016】
弁の流れ断面の望ましい変動関係S*(t)を決定するステップa)は好ましくは、たとえばタイムソルバを用いて、物理的シミュレーションモデルに基づいて、数理最適化法によって、実行される。
【0017】
ステップc)は具体的にはコンピュータによって実行されてもよい。
【0018】
変動関係S*(t)は好ましくは、弁がその一部を形成するシステムにおいて、変動関係S*(t)が、システムの少なくとも1つの動作モードにおいて弁の選択の変動にとって望ましい関係となるように、選択される。
【0019】
移動関係は一次関数であってもよい(X=at+bのタイプであって、aおよびbは定数であり、tは時間を表し、Xは位置(具体的には軸位置または角度位置)である)。
【0020】
これはまた、上記で定義された一次関数以外の関数であってもよい。
【0021】
流体流れオリフィスの形状を定義するために、一例として、検討される時間間隔の最初の瞬間に弁部材の対応する位置における弁の流れ断面の面積を決定することが、可能である;その後、検討される間隔にわたって漸進的に時間パラメータが変動する可能性があり、各瞬間において弁の流れ断面が望ましい断面と等しいままとなるように、この時間間隔の間に弁部材によって採用される様々な位置について弁の様々な対応する流れ断面が連続して決定される。
【0022】
本発明により、弁部材の移動が所定の制御関係に従うように、システム設計段階の間に制御弁が設計される。このため、移動関係は十分に単純になるように選択され、これにより、弁の制御手段の複雑さを低減することができる。たとえば、移動関係は、一定速度での移動の関係性であってもよい。
【0023】
方法を実施することで、変則的な、すなわち標準的ではない流体流れオリフィスを呈する弁の作成につながる。このため、流体流れオリフィスの形状(すなわち、オリフィスの縁または出口の形状)は、従来の幾何形状である必要もなければ、複数の従来の幾何形状の組み合わせである必要もなく、ここで「従来の幾何形状」は、円、楕円、直線、および放物線を含む。したがって上記の意味での従来の幾何形状は、具体的には多角形を含む。このような従来の形状は一般的に、流れ断面が線形または放物線形となるように変化する必要があるときはいつも使用される。
【0024】
具体的には、流体流れオリフィスの形状(すなわち、オリフィスの縁または外形)は、従来の幾何形状である必要もなければ、従来の幾何形状の最大10箇所の組み合わせである必要もなく、ここで従来の幾何形状は、円、楕円、直線、および放物線である。
【0025】
弁の流れ断面に望ましい変動関係は、具体的には計算によって得られるが、これは様々なやり方で行われることが可能である。
【0026】
一実施例において、弁がその一部を形成するシステムのパラメータについて、望ましい変動関係(F*(t))が設定される;次に弁の断面に望ましい変動関係(S*(t))が、パラメータの望ましい変動関係(F*(t))に応じて決定される。
【0027】
別の実施例において、弁の断面に望ましい変動関係を決定するために、弁の断面に望ましい変動関係(S*(t))、および弁がその一部を形成するシステムのパラメータに望ましい変動関係(F*(t))が、計算によって一緒に決定される。
【0028】
この計算は一般的に、システムの動作のシミュレーションを含む。
【0029】
弁の断面に望ましい変動関係S*はその後、システムが望ましい機能または挙動を呈することができるようにする変動関係(または最適な変動関係)として、決定される。
【0030】
必要であれば、この計算は、上流に位置するシステムの部分と弁に対して下流に位置するシステムの部分との相互作用を考慮に入れる;これらの相互作用は場合により、弁が組み込まれるパイプ内の圧力および/または流量に影響を及ぼす可能性がある。
【0031】
望ましい変動関係が設定されるシステムパラメータは、具体的には弁の流量、すなわち弁が中に配置されるパイプ内の流量であってもよい。
【0032】
このパラメータはより一般的には、弁の断面がそのパラメータに影響を及ぼすのであれば、システムのいずれのパラメータであってもよい。
【0033】
本発明は当然ながら、弁を製造する方法であって、上記で定義された弁設計方法によって弁を設計するステップに続いて、このようにして設計された弁を製造するステップを含む、方法にも及ぶ。
【0034】
本発明はまた弁装置も提案し、これは、
・可変断面(S)の流体流れオリフィスを呈する弁であって、前記断面は弁の弁部材の位置に依存する、弁と、
・前記弁部材の位置を制御するのに適したアクチュエータと、を備え、
弁装置は、
・アクチュエータはある時間間隔にわたって一定の速度で弁部材を駆動するのに適しており、
・流れオリフィスの断面は、アクチュエータが前記時間間隔にわたって一定の速度で前記弁部材を駆動するときに非線形に変化し、
・流体流れオリフィスの形状は、従来の幾何形状ではなく、従来の幾何形状の部分の組み合わせでもなく、従来の幾何形状は円、楕円、直線、または放物線であることを、特徴とする。
【0035】
流体流れオリフィスの形状は、具体的にはその縁、またはその外形の形状である。
【0036】
非限定例として示される2つの実施形態の以下の詳細な説明を読むと、本発明がよく理解され、その利点がより明らかとなる。説明は、以下の添付図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明の弁装置の軸断面の線図である。
図2】本発明の一実施形態における弁装置の弁部材の斜視図である。
図3A】本発明の弁装置におけるアクチュエータの流量変動の望ましい関係を示すグラフである。
図3B】本発明の弁装置におけるアクチュエータの流れ断面の望ましい応答関係を示すグラフである。
図3C】本発明の弁装置におけるアクチュエータの移動関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明の方法によって得られる装置の例、および本発明の方法の例示的実施例が、ロケットエンジン7およびこれに燃料を供給する手段によって構成されるシステム5を設計することに関して、説明される。これらの手段は、エンジンの供給オリフィスに接続された供給パイプ14の中に燃料を送達するためにポンプ9がそこから燃料を吸引する、液体燃料タンク8を備える。
【0039】
エンジンへの供給を調整するための弁装置10は、パイプ14上に配置されている。
【0040】
装置は、エンジン7への燃料の供給を調整するのに役立つ調整弁である、弁12を備える。
【0041】
このため弁12は、特定量のインピーダンスを呈する上流の燃料供給手段(タンク8およびポンプ9)と、(流体の流れに対して)同様に特定量のインピーダンスを呈する、下流のエンジン7とを備える、燃料回路内に挿入される。上流の供給手段および下流のエンジン7は、燃料回路によってのみならず、図示されないその他の接続(機械的、流体流動など)によっても、互いに結合されている。
【0042】
本発明の弁装置10は、図1に示されている。
【0043】
装置は、弁12と、弁を作動させるのに役立つ電気モータによって特に構成されているアクチュエータ16と、を備える。
【0044】
弁12は主に、パイプ14の2つの部分14Aおよび14Bの間に挿置される弁体20によって、および弁体20内に収容された弁部材30によって、構成されている。
【0045】
弁体20は一般的に、パイプ部分14Aおよび14Bを相互接続するためにその中に形成された穴22を有する直方体の形状である。穴22は、パイプ14の軸Xに沿って延在する。
【0046】
この穴は、特定の構成を呈する:上流端(図1の左側)において、これは拡大された直径D1の上流部分22Aを含み、その下流端では直径Dの下流部分22Cを含み、下流部分の直径は、弁部材20の外径と実質的に等しい。穴22の下流部分22Cの中で弁部材20が摺動できるようにするため、十分なクリアランスが提供される。
【0047】
2つの穴部分22Aおよび22Cは、穴22の直径が値D1から値Dまで連続的に通過できるようにする、実質的に円錐台形状の穴部分22Bによって、互いに接続されている。
【0048】
弁部材30は全体的に外径Dを有する円形断面の円筒形チューブの形状であり、これは壁32によってその末端の1つにおいて閉鎖している。
【0049】
加えて、これは、全体的に三角形の(しかし正確な三角形ではない)形状のその円筒壁34内の2つの対向する開口36を含み、弁部材の外側から内側に向かって流体が流れるようにしている。
【0050】
さらに、弁部材30の円筒壁34の外表面領域には縦溝が設けられ、この縦溝は、ラック38を形成するように、軸Xに対して直角に延在する。ラック38は、歯車40の歯と噛み合うように設計されている。歯車はそれ自体、モータ16の駆動シャフトに接続された出口部材を構成する歯車42によって、回転駆動させられる。
【0051】
このため、モータ16が動作して歯車42および結果的に歯車40を回転させるとき、これは軸Xに沿って移動するように弁部材30を駆動する。弁部材30のアクチュエータとして、モータ16はこうして軸Xに沿って弁部材30の位置を制御する。
【0052】
弁12は、パイプ14の中を流れる流体の流量を、以下のように調整するのに役立つ。
【0053】
パイプ14の上流部分14Aから来る流体が穴22の上流部分22Aを介して弁体20の中に侵入するとき(矢印A)、これは弁部材30内の開口36を通じて流れることによってのみ、パイプ14の下流部分14Bに到達することができる。
【0054】
結果的に、開口36は弁12の流体流れオリフィスを構成し、様々な開口36(この例では2つある)の総面積は弁12の流れ断面を構成し、この断面は穴22の下流部分22Cの壁によって閉鎖されないことを前提とする。
【0055】
弁12の設計は選択的に、上述のものとは反対の方向に流れる流体とともに装置10を使用可能とすることが、観察されるはずである(流体は部分14Bから入り、弁部材30の円筒部分34を通り、その後、穴22の下流部分22Aおよびパイプ部分14Aを介して流体を排出できるように、2つの開口36を通る)。
【0056】
本発明の弁を設計する方法の一例は、2つの可能な実施例を用いてシステム5を設計することに関して、以下に説明される。
【0057】
ロケットエンジン7およびその2つの供給手段を設計するとき、当然ながら、様々な部品を最適化すること、ならびにその様々な動作モードを考慮に入れながら、特にエンジンの始動段階の間にこれを行うことが、適切である。
【0058】
具体的には、パイプ14を介してエンジン7に供給する流体の流量によって構成されるパラメータの変動を調整する試みがなされている。
【0059】
ロケットエンジンを始動するとき、この流体流量は最初はゼロであり、これは安定した条件下でエンジンが燃料を消費する流量である流量値Fmaxまで増加する。
【0060】
エンジンの始動を最適化するために、流体流量は、所定の望ましいプロファイルに従いながら、瞬間tと瞬間tとの間の時間間隔にわたって進行するように値Fmaxまで増加することが、望ましい。
【0061】
本発明の設計方法の第1の実施例において、望ましい変動関係F*(t)はまず、時間間隔[t,t]にわたって、調整することが望ましいシステムのパラメータ、すなわち流量について、設定される。
【0062】
選択された関係F*は、図3Aに示されている。
【0063】
次にエンジン用の燃料供給弁12が設計される。すると、調整するように設計されておりシステムのパラメータ、すなわちパイプ内の流体の流量を変動関係F*に従って変動させることを保証するように弁を定義することは、困難を伴う。
【0064】
望ましい変動関係F*から始まって、次に弁12の断面Sについて、望ましい変動関係S*が計算される。
【0065】
この計算により、エンジンを始動している間、流れ断面が瞬間tにおけるゼロ値(弁部材30は閉鎖)から瞬間tにおける値Smaxまでの通過時に関係F*(t)に従いながら、ゼロ値を有する流量Fから値Fmaxまで上昇させられるようにする、弁12の望ましい応答関係S*(t)を定義できるようにする。
【0066】
関数S*を求めるために、研究対象のシステム5全体の動作がシミュレートされ、すなわち弁より上流に位置するシステムの上流部分5U(図1)、弁より下流に位置するシステムの下流部分5D、および該当する場合には、システムのこれら2つの部分の間の相互作用(矢印I)が、シミュレートされる。
【0067】
弁12の望ましい応答関係S*はその後、開始データとして取られる、変動関係F*に従って流量を変動させることが可能な機能、またはこのような機能のうちの1つとして、特定される。
【0068】
本発明の設計方法の第2の実施例において、弁の中の望ましい流量変動関係F*は、事前に、すなわち弁の流れ断面の変動の関係性を決定する前には、設定または計算されない。
【0069】
反対に、この第2の実施例では、システム5の動作は、弁の断面(S)の変動、および調整することが望ましいパラメータ、すなわちこの例において具体的には流量の変動F(t)の両方と一緒に考慮されるように、シミュレートされる。
【0070】
次にシミュレーションは、十分な(または望ましいと思われる)システム5の動作モードを定義するために、使用される。その後関数S*およびF*は、それぞれ弁の流れ断面、およびシステムのこの動作モードに対応する調整すべきパラメータ、すなわち流量の、変動関係として定義される。
【0071】
弁12の定義を続けるために、次に弁部材の移動についての関係が選択される;とりわけこの関係は、アクチュエータに対する制約(費用、複雑さ)を最小限に抑えるように、選択される。
【0072】
最後に、弁部材について選択された移動関係P(t)に基づいて、および断面S*(t)にとって望ましい変動関係に基づいて、弁部材30の開口36の形状が定義される。
【0073】
これを行うために、弁部材の大部分が穴部分22Cの内側に位置する初期位置Pが、(軸Xに沿って)弁部材30について設定される。
【0074】
弁部材の大部分が穴部分22Aの内側に位置する最終位置Pもまた、弁部材30について選択される。
【0075】
その後、弁部材30に移動関係P(t)が付与される。現在記載されている例では、図3に示されるように、特に単純な移動関係P(t)、すなわち一定速度での移動を伴う関係を有するように、決定されている。弁部材の位置P(t)は、瞬間tAおよびtBの間の初期位置(縦座標P)と最終位置(縦座標P)との間で、時間関数として直線的に変動する。
【0076】
その後弁部材の開口36の形状が計算可能である。
【0077】
これを行うために、時間変数(t)が、方程式系から削除される:
【数1】
ここでSは弁の流れ断面(すなわち、2つの開口36の総面積)、およびXは軸Xに沿った弁部材30の部分である。
【0078】
2つの関数SおよびXは、時間関数として、すなわちそれぞれS*(t)およびP(t)として、表される。検討される任意の瞬間tにおけるSおよびPの値は、関係S=f(X)を得るように関連付けられる。
【0079】
すると2つの開口36の各々について、軸Xに沿ったその位置の関数としてその幅Lを推測することが可能となる。表面積S(X)は、
【数2】
の関係によって、幅Lと関連付けられる。
【0080】
この関係を微分することにより、以下が得られる。
【数3】
【0081】
こうして上記の計算は、軸Xに沿った位置の関数として開口の幅を指定する関数Lによってこの例で定義されるように、開口36のプロファイルを取得できるようにする。
【0082】
図3に示される種類の関数S*を用いると、関数Lは横座標Xの一次関数ではない(より正確にはアフィン関数ではない)。
【0083】
有利なことに、このように開口36は定義された形状を有するので、弁部材30が軸Xに沿って一定速度で移動するとき、弁12の流れ断面Sは望ましい応答関係S*(t)の適用において変動し、結果的に望ましい変動関係F*(t)の適用において流量が上下する。
【0084】
このように本発明の方法を用いると、開口36(弁12の流れオリフィスを表す)を定義すること、および弁12を定義することができるようになり、弁部材は、弁部材30を駆動するモータ16が特に単純な関数、すなわち一定速度での移動の関係を用いて有利に制御されることを可能にしながら、流量の望ましい変動(関数F*)を実現可能とするプロファイルを有する。結果的に、弁12のような弁を使用することで、モータ16を制御し、ひいてはシステム5を制御する手段を、大幅に簡素化することを可能にする。
【0085】
図2は、弁の望ましい応答関係に対応する、本発明の弁部材の開口136の別の可能なプロファイルを示すが、この関係は上述の関数S*以外のものである。
【0086】
最後に、本例において、弁12の弁部材は軸に沿って移動し、その位置は軸位置である。本発明は、特にその位置が角度によって定義される回転的な弁部材を有する弁に、等しく適用可能である。
図1
図2
図3A
図3B
図3C