特許第6563401号(P6563401)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ニューテック・ベンチャーズの特許一覧

<>
  • 特許6563401-放射性ヨウ素化化合物 図000090
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6563401
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】放射性ヨウ素化化合物
(51)【国際特許分類】
   C07D 207/404 20060101AFI20190808BHJP
   C07D 207/448 20060101ALI20190808BHJP
   C07D 251/16 20060101ALI20190808BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20190808BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20190808BHJP
   C07B 59/00 20060101ALN20190808BHJP
   A61K 49/04 20060101ALN20190808BHJP
   A61K 31/4015 20060101ALN20190808BHJP
   A61K 31/53 20060101ALN20190808BHJP
【FI】
   C07D207/404
   C07D207/448
   C07D251/16 B
   A61P35/00
   A61P9/00
   !C07B59/00
   !A61K49/04 210
   !A61K31/4015
   !A61K31/53
【請求項の数】33
【全頁数】62
(21)【出願番号】特願2016-544437(P2016-544437)
(86)(22)【出願日】2015年1月2日
(65)【公表番号】特表2017-502971(P2017-502971A)
(43)【公表日】2017年1月26日
(86)【国際出願番号】US2015010048
(87)【国際公開番号】WO2015147950
(87)【国際公開日】20151001
【審査請求日】2017年12月28日
(31)【優先権主張番号】61/923,541
(32)【優先日】2014年1月3日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512259123
【氏名又は名称】ニューテック・ベンチャーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】スティーヴン・ディマグノ
(72)【発明者】
【氏名】バオ・フ
【審査官】 東 裕子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−532524(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0004417(US,A1)
【文献】 国際公開第2013/003734(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
(式中、
Arはアリール又はヘテロアリール環系であり、
はヨウ素の放射性同位体である)
の化合物の製造方法であって、
(a)化合物MI(Mは対カチオンである)及び式(2):
【化2】
(式中、
ArはArと比較して電子豊富なアリール又はヘテロアリール環系であり;
Yは脱離基であり;
Arは上で定義したとおりである)
の化合物を含む混合物を反応させる工程;及び
(b)工程(a)からの反応混合物を加熱する工程、
を含み、ヨウ素の放射性同位体の比放射能が少なくとも10mCi/mgである、方法
【請求項2】
工程(a)における反応混合物がさらに溶媒を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記溶媒が非プロトン性溶媒である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記溶媒が、極性溶媒、非極性溶媒、又はそれらの混合物を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記溶媒が極性溶媒である、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記溶媒が非極性溶媒である、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記溶媒を工程(b)の前に反応混合物から除去する、請求項2〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程(b)における反応混合物がさらに溶媒を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記溶媒が非極性溶媒である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
Ar−Hがベンゼンより容易に酸化される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
Arが、ゼロより小さなハメットσ値を有する少なくとも1つの置換基で置換されている、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記置換基が、-(C1-C10)アルキル、-(C1-C10)ハロアルキル、-(C2-C10)アルケニル、-(C2-C10)アルキニル、-O-(C1-C10)アルキル、-C(O)-O-(C1-C10)アルキル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ヨウ素の放射性同位体が、123I、124I、125I、及び131Iからなる群から選択される、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
Ar
【化3】
(式中、R、R、R、R、及びRは独立に、H、-(C1-C10)アルキル、-(C1-C10)ハロアルキル、-(C2-C10)アルケニル、-(C2-C10)アルキニル、-O-(C1-C10)アルキル、-C(O)-O-(C1-C10)アルキル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択され、あるいはR、R、R、R、及びRの2つ以上が一緒になって、縮合したアリール又はヘテロアリール環系を形成する)
である、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
Arが、フェニルアラニン誘導体、チロシン誘導体、トリプトファン誘導体、ヒスチジン誘導体、及びエストラジオール誘導体からなる群から選択される、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
Arが以下のものからなる群から選択される、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法:
【化4】
(式中、各Xは独立に保護基である)。
【請求項17】
Arが以下のものからなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
【化5】
【請求項18】
前記非極性溶媒が、ベンゼン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、エチルベンゼン、四塩化炭素、ヘキサン、シクロヘキサン、フルオロベンゼン、クロロベンゼン、ニトロベンゼン、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項4、6、又は7に記載の方法。
【請求項19】
前記非極性溶媒がトルエンを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
工程(b)における加熱が、25℃〜250℃の範囲の温度に加熱することを含む、請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
加熱を1〜12時間の間行う、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
加熱を、フラッシュ熱分解法、従来の加熱方法、又はマイクロ波法によって達成する、請求項1〜21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記極性溶媒が、アセトニトリル、アセトン、ジクロロメタン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、1,2-ジフルオロベンゼン、ベンゾトリフルオライド、ジメトキシエタン、ジグリム、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項24】
Yが、トリフレート、メシレート、ノナフレート、ヘキサフレート、トシレート、ノシレート、ブロシレート、パーフルオロアルキルスルホネート、テトラフェニルボレート、ヘキサフルオロホスフェート、トリフルオロアセテート、テトラフルオロボレート、パークロレート、パーフルオロアルキルカルボキシレート、及びクロライドからなる群から選択される、請求項1〜23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
Mが、リチウム、カリウム、ナトリウム、セシウム;リチウム、ナトリウム、カリウム、又はセシウムとクリプタンド又はクラウンエーテルとの錯体;四置換アンモニウムカチオン、及びホスホニウムカチオンからなる群から選択される、請求項1〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
式(2)の化合物が以下のものからなる群から選択される、請求項1〜25のいずれか一項に記載の方法:
【化6】
【化7】
【化8】
(式中、各Yは独立に上で定義した脱離基であり、各Xは独立に保護基である)。
【請求項27】
式(2)の化合物が以下のものからなる群から選択される、請求項26に記載の方法。
【化9】
【化10】
【化11】
【請求項28】
式(1)の化合物が以下のものからなる群から選択される、請求項1〜25のいずれか一項に記載の方法:
【化12】
【化13】
(式中、各Xは独立に保護基である)。
【請求項29】
式(1)の化合物が以下のものからなる群から選択される、請求項28に記載の方法。
【化14】
【化15】
【請求項30】
下記式(3):
【化16】
(式中、
ArはArと比較して電子豊富であるアリール又はヘテロアリール環系であり;
Arはアリール又はヘテロアリール環系であり;
はヨウ素の放射性同位体である)
の化合物であって、ヨウ素の放射性同位体の比放射能が少なくとも10mCi/mgである、化合物
【請求項31】
式(3)の化合物が以下のものからなる群から選択される、請求項3に記載の化合物:
【化17】
【化18】
(式中、各Yは独立に上で定義した脱離基であり、各Xは独立に保護基である)。
【請求項32】
式(3)の化合物が以下のものからなる群から選択される、請求項3に記載の化合物。
【化19】
【化20】
【化21】
【請求項33】
下記式(1):
【化22】
(式中、
Arはアリール又はヘテロアリール環系であり;
Iはヨウ素の放射性同位体である)
の化合物を製造する方法であって、
下記式(3):
【化23】
(ArはArと比較して電子豊富なアリール又はヘテロアリール環系であり、
Arは上で定義したとおりである)
の化合物を加熱する工程を含み、ヨウ素の放射性同位体の比放射能が少なくとも10mCi/mgである、方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2014年1月3日に出願した米国仮出願番号No. 61/923,541号に対する優先権を主張し、その全体を参照により本明細書に援用する。
【0002】
連邦政府により援助された研究又は開発
この発明は国立衛生研究所によって授与された助成No. NIBIB R01EB0155365のもとでの政府の援助によりなされた。
【0003】
技術分野
本明細書の開示は、アリール化ヨウ素(aryl iodine)の合成に、例えば、造影及び治療のためのヨウ素標識された化合物の調製に有用な反応剤及び方法に関連する。ここで提供する反応剤及び方法は、芳香族化合物、ヘテロ芳香族化合物、アミノ酸、ヌクレオチド、ポリペプチド、及び合成化合物を含めた広範囲の化合物を入手するために用いることができる。
【背景技術】
【0004】
メタヨウ化ベンジルグアニジン(MIBG)は、ノルエピネフリンの機能性類縁体である。それは組織に吸収されて、多量のノルエピネフリン輸送体を発現させる。そのような組織には、正交感神経支配の臓器、例えば、その由来が神経堤又は神経内分泌細胞である、心臓及び腫瘍が含まれる。MIBGは、副腎髄質を造影するために1970年代に最初に開発された。食品医薬品局は、1994年に腫瘍造影剤として131I-MIBG、すなわちヨーベングアンを認可し、123I-MIBGすなわちAdreView(登録商標)を2008年に腫瘍造影用に認可した。放射性ヨウ素化MIBGの市販されている配合は、多量の添加された担体を含んでおり(131I-MIBGの比放射能(SA)= 1 mCi/μmol、AdreView(登録商標)123I-MIBG: SA = 1 mCi/mmol)、なぜならそれらの合成は、比較的多量の、標識されていない「冷たい」127I-MIBGの同位体交換に頼っているからである。「冷たい」MIBGは、ノルエピネフリン輸送体(NET)に結合することについて放射性標識されたMIBGと競合し、交感神経支配の組織、例えば、心臓及び神経内分泌腫瘍による取り込みの低下をもたらす。このことは、131I-MIGBの治療用量にとって特に問題である。低い比放射能MIBGは、腫瘍細胞における取り込みプロセスを飽和させるより大きな潜在力を有し、これがより小さな有効性の放射線治療につながる。さらに、低い比放射活性の131I-MIBGの治療用量において多量の生体アミン127I-MIBGを投与することには薬理学的影響が伴い、薬剤の副作用を軽減するために、自動化された遅い輸注(約1時間)によって行われなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2013/184484号
【特許文献2】国際公開第2013/003734号
【特許文献3】国際公開第2010/048170号
【特許文献4】米国特許出願公開第2007/0092441号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】H. Sun, B. Wang及びS. G. DiMango, Chemistry Today, 2008, 26, 4-6
【非特許文献2】H. Sun及びS. G. DiMango, Angew. Chem. Int. Ed. 2006, 45, 2720-2725
【非特許文献3】Chum, J-H及びPike, V. W. Eur. J. Org. Chem. (2012) 4541-4547
【非特許文献4】Corwin, Hansch, A. Leo, R. W. Taft, Chem. Rev., 1991, 91(2), pp. 165-195
【非特許文献5】Greene, T. W.; Wuts, P. G. M. Protective Groups in Organic Synthesis, 2nd ed.; Wiley: New York, 1991
【非特許文献6】Comprehensive Organic Transformations - A Guide to Functional Group Transformations」, R C Larock, Wiley-VCH (1999又はそれより前の版)
【非特許文献7】Science of Synthesis, Volume 31a, 2007(Houben-Weyl, Thieme)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
まとめ
本明細書では、ジアリールヨードニウム化合物及び中間体を用いて置換アリール及びヘテロアリール環系を調製する方法を提供する。例えば、本明細書で提供するジアリールヨードニウム塩及びヨウ化ジアリールヨードニウムは、分解して放射性標識されたヨウ化アリールを調製することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
いくつかの態様では、式(I):
【化1】
(式中、
Arはアリール又はヘテロアリール環系であり、
はヨウ素の放射性同位体である)
の化合物を作る方法は、
(a)化合物MI(Mは対カチオンである)及び式(2):
【化2】
(式中、
Arは、Arと比較して電子豊富(electron-rich)なアリール又はヘテロアリール環系であり;
Yは脱離基であり;
Arは上で定義したとおりである)
の化合物を含む混合物を反応させる工程;及び
(b)工程(a)からの反応混合物を加熱する工程、
を含む。
【0009】
いくつかの態様では、工程(a)における反応混合物はさらに溶媒を含む。例えば、溶媒は非プロトン性溶媒(例えば、極性溶媒、非極性溶媒、又はそれらの混合物)であることができる。
【0010】
いくつかの態様では、ヨウ素の放射性同位体の比放射能は少なくとも約10 mCi/mgである。
【0011】
本明細書では、式(3):
【化3】
(式中、
ArはArと比較して電子豊富(electron-rich)であるアリール又はヘテロアリール環系であり;
Arはアリール又はヘテロアリール環系であり;
はヨウ素の放射性同位体である)
の化合物も提供する。
【0012】
そのような化合物の非限定的な例には以下のものが含まれる。
【化4】
【化5】
【化6】
式中、各Yは独立に上で定義した脱離基であり、
各Xは独立に保護基である。
【0013】
いくつかの態様では、式(3)の化合物は以下のものからなる群から選択することができる。
【化7】
【化8】
【0014】
また、本明細書では、式(1):
【化9】
(式中、
Arはアリール又はヘテロアリール環系であり;
Iはヨウ素の放射性同位体である)
の化合物を作る方法を提供し、
その方法は、式(3):
【化10】
(ArはArと比較して電子豊富なアリール又はヘテロアリール環系であり、
Arは上で定義したとおりである)
の化合物を加熱する工程を含む。
【0015】
この開示は、式(2)の化合物を含むキットをさらに提供する。いくつかの態様では、このキットは、精製された溶媒をさらに含む。いくつかの態様では、キットは1個以上のクロマトグラフィーカートリッジをさらに含む。いくつかの態様では、キットは酸性試薬をさらに含む。
【0016】
別段の規定がない限り、ここで用いられる全ての技術用語及び科学用語は、この発明が属する技術分野の当業者によって通常理解されているものと同じ意味を有する。方法及び物質は本発明に用いるためにここに記載されており、当技術分野で公知のその他の適切な方法も使用できる。物質、方法、及び例示は説明のためのみのものであり、限定することを意図していない。ここで言及した全ての刊行物、特許出願、特許、配列、データベース登録物、及びその他の参照物は、その全体を参照により本明細書に援用する。矛盾がある場合には、定義を含めて本明細書が優先する。
【0017】
本発明のその他の特徴及び利点は、以下の詳細な記載及び図面、並びに特許請求の範囲から明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、ジアリールヨードニウム塩のヨウ素化を、フッ素化、塩素化、及び臭素化と比較した代表的なH NMRスペクトルを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
定義
別段の規定がない限り、本明細書で用いられる全ての技術用語及び科学用語は、本明細書における開示が属する技術分野の当業者によって通常理解されているものと同じ意味を有する。全ての特許、特許出願、刊行された特許出願、及びその他の刊行物はその全体を参照により援用する。ここで、ある用語について複数の定義がある場合には、この節における定義が、別段の言及がない限り有効である。
【0020】
本明細書で用いる場合、文脈が明らかに別のことを述べていない限り、単数形は複数指示も含む。
【0021】
用語「Cx−yアルキル」は、置換又は非置換の飽和炭化水素基をいい、それには鎖中にx〜y個の炭素を含む直鎖アルキル及び分岐鎖アルキル基が含まれ、ハロアルキル基、例えばトリフルオロメチル基及び2,2,2-トリフルオロエチルなどが含まれる。用語「C2−yアルケニル」及び「C2−yアルキニル」は、上述したアルキルに長さ及び可能な置換において類似する置換又は非置換の不飽和脂肪族基をいうが、それはそれぞれ少なくとも1つの二重結合又は三重結合を含む。いくつかの態様では、アルキル、アルケニル、及び/又はアルキニル基は、ハロゲン、例えばフッ素で置換されて、結果として「ハロアルキル」の生成をもたらすことができる。
【0022】
一般に、用語「アリール」は、芳香族性を有し、5〜14個の炭素原子をもつ環(例えば、5及び6員単環式芳香族基、例えばベンゼン及びフェニル)を包含する。さらに、用語「アリール」は、多環式アリール基、例えば、三環式、二環式のもの、例えば、ナフタレン及びアントラセンを含む。アリール基は置換されているか、非置換であることができる。
【0023】
用語「ヘテロアリール」は、芳香族性を有し、5〜14個の原子をもち、1〜4個のヘテロ原子を有する環(例えば、5及び6員単環式芳香族基)を含む基、例えば、ピロール、フラン、チオフェン、チアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、ピラゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、及びピリミジンなどを包含する。さらに、用語「ヘテロアリール」は、多環式ヘテロアリール基、例えば、三環式、二環式のもの、例えば、ベンゾオキサゾール、ベンゾジオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチオフェン、メチレンジオキシフェニル、キノリン、イソキノリン、ナフチリジン、インドール、ベンゾフラン、プリン、ベンゾフラン、デアザプリン、インダゾール、又はインドリジンを包含する。ヘテロアリール基は置換又は非置換であることができる。
【0024】
本明細書で用いる場合、用語「炭素環(カルボサイクル)」、「炭素環式(カルボシクリル)」、及び「シクロアルキル」は、環の各原子が炭素である、3〜7員非芳香族の置換又は非置換の環をいう。用語「炭素環」、「炭素環式」、「シクロアルキル」は、2つ以上の環を有し、2つ以上の炭素が2つの隣接した環に共有されており、それらの環の少なくとも1つが炭素環式である、たとえば、別の環はシクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、及び/又はヘテロ環(heterocyclyl)である多環式システムを包含する。炭素環には、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘキシルメチル、及び4-メチルシクロヘキシルが含まれる。多環式炭素環の例には、ビシクロ[2.2.1]ヘプタニル、ノルボルニル、及びアダマンチルが含まれる。
【0025】
用語「ヘテロ環式(ヘテロシクリル)」又は「ヘテロ環式基」は、置換又は非置換の非芳香族の3〜10員環構造、例えば、3〜7員環であって、その環構造が1〜4個のヘテロ原子を含むものをいう。用語「ヘテロ環式」又は「ヘテロ環式基」はまた、2つ以上の環を有し、2つの隣接する環に2つ以上の炭素原子が共有されており、それらの環の少なくとも1つがヘテロ環式であり、例えば、他の環がシクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、及び/又はヘテロ環であることができる多環式システムも包含する。ヘテロ環式基は、例えば、ピペリジン、ピペラジン、ピロリジン、モルホリン、ラクトン、ラクタムなどを包含する。
【0026】
用語「置換(された、されている)」は、別の基に結合する「置換基」として、原子又は複数の原子からなる基が式の上で水素に置き換わっていることを意味する。アリール及びヘテロアリール基については、用語「置換(された、されている)」は、別段の表示がない限り、任意のレベルの置換、すなわち、モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタ置換(そのような置換が許容される場合)をいう。置換基は独立に選択され、置換は任意の化学的に置換可能な位置であってよい。置換基は、例えば、アルキル、ハロゲン、ヒドロキシル、カルボニル(例えば、カルボニル、アルコキシカルボニル、ホルミル、又はアシル)、チオカルボニル(例えば、チオエステル、チオアセテート、又はチオホルメート)、アルコキシ、ホルホリル、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、アミノ、アミド、アミジン、イミン、シアノ、ニトロ、アジド、スルフヒドリル、アルキルチオ、サルフェート、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、スルホニル、カルボシクリル、ヘテロシクリル、アラルキル、ヘテロアラルキル、又は芳香族もしくはヘテロ芳香族基を包含することができる。適切な場合には、炭化水素鎖上に置換した基はそれ自体が置換されていることができることが、当業者によって理解される。
【0027】
本明細書で提供する化合物は、様々な立体化学的形態及び互変異性体を包含することができる。これら化合物はまたジアステレオマー並びに光学異性体、例えば、ラセミ混合物を含めたエナンチオマーの混合物、並びに個別のエナンチオマー及びジアステレオマーも包含し、これらは特定の化合物における構造上の非対称性の結果として生じる。個々の異性体の分離又は個々の異性体の選択的合成は、当業者に周知の様々な方法を適用することによって達成される。
【0028】
本明細書で用いる場合、用語「電子豊富(electron rich)」は、対照とする環系と比較してより容易に酸化されるアリール又はヘテロアリール環系をいう。いくつかの態様では、電子豊富な環系は、ベンゼンと比べてより容易に酸化される。いくつかの態様では、アリール又はヘテロアリール環系は、ゼロより小さなハメットσ値を有する1つ以上の置換基で置換されていることができる。
【0029】
置換されたアリール及びヘテロアリール環系を調製する方法
本明細書では、ジアリールヨードニウム化合物及び中間体を用いて、置換されたアリール及びヘテロアリール環系を調製する方法を提供する。例えば、ジアリールヨードニウム塩及びヨウ化ジアリールヨードニウムは、ここで規定するように、分解して、放射性標識されたヨウ化アリールを調製することができる。
【0030】
ジアリールヨードニウム塩を用いてフッ素化化合物を調製する方法は、国際公開第2013/184484号、国際公開第2013/003734号、及び国際公開第2010/048170号に記載されている。
【0031】
フルオリドは、最も単純な単項のフッ素アニオンであり、一方、複数のフッ素同位体が知られているが、19Fのみが安定である。放射性同位体18Fは109.8分の半減期を有し、放射性壊変時に陽電子(ポジトロン)を放出する。構造的に、またある程度化学的に、フルオリドイオンはヒドロキシドイオンに似ている。フルオリドは、比較的弱い酸の共役塩基であり、したがって、ハードな求核剤である。それは最も小さなモノアニオンなので、フルオリドは、強く高いイオン性の結合を特徴とする塩を形成する。さらに、フルオリドは、他の原子と特別に強い共有結合を形成し、例えば、フッ化メチル中のC−F結合のエネルギーは約115Kcal/molであるのに対して、ヨウ化メチル中のC−I結合は約58kcal/molである。ジアリールヨードニウム塩中のフルオリドの高い反応性は、I(III)カチオンとの強いイオン対生成エネルギーと、生成物中の芳香族C−F結合の高い強度の組み合わせから生じる。F原子の小さなサイズと高い電気陰性度は、フルオリドとその他のハロゲンの間の相違点の多くの原因である。フルオリドに対するイオン対生成エネルギーは、その他のハロゲンのものよりも大きく、これらのイオン対生成相互作用は、溶液中におけるフルオリド転移がかかわる反応の速度論及び熱力学を決定する主要因である(「弱く配位した」フルオリド塩のイオン対形成(Ion pairing of “weakly-coordinated” fluoride salts), H. Sun, B. Wang及びS. G. DiMango, Chemistry Today, 2008, 26, 4-6;室温での求核的芳香族フッ素化:実験的及び理論的研究(Room-Temperature Nucleophilic Aromatic Fluorination: Experimental and Theoretical Studies), H. Sun及びS. G. DiMango, Angew. Chem. Int. Ed. 2006, 45, 2720-2725)。フルオリドの高い電気陰性度も、それが一般的には還元剤として作用しないことを意味しており、なぜなら、フルオリドの標準還元電位(−2.87V)は、ほとんど全ての化学酸化剤の範囲を超えているからである(Fは特別に強い酸化剤である)。
【0032】
アイオダイドは、最も大きな単原子アニオンの一つである。それは約206ピコメートルの半径と決定されている。比較のため、より軽いハライドはかなり小さく、ブロマイド(196pm)、クロライド(181pm)、及びフルオリド(133pm)である。一つには、その大きさにより、アイオダイドはほとんどの元素と比較的弱い結合を形成する。それは、強酸の共役塩基であり、したがって、他のハロゲンを含めてその他の求核剤よりもずっと弱く結合する傾向がある(Chum, J-H及びPike, V. W. Eur. J. Org. Chem. (2012) 4541-4547を参照されたい)。ヨウ素(Iodine)はしかしその他のハロゲンよりもずっと強い還元剤であり、そのためヨード(iodo)及びジアリールヨードラジカルをより形成しやすい。
【0033】
本明細書では、式(I):
【化11】
(式中、
Arはアリール又はヘテロアリール環系であり、
はヨウ素の放射性同位体である)
の化合物を作る方法を提供し、
この方法は、
(a)化合物MI(Mは対カチオンである)及び式(2):
【化12】
(式中、
ArはArと比較して電子豊富(electron-rich)なアリール又はヘテロアリール環系であり;
Yは脱離基であり;
Arは上で定義したとおりである)
の化合物を含む混合物を反応させる工程;及び
(b)工程(a)からの反応混合物を加熱する工程、
を含む。
【0034】
さらに、本明細書では、式(1):
【化13】
(式中、
Arはアリール又はヘテロアリール環系であり、
はヨウ素の放射性同位体である)
の化合物を作る方法を提供し、
この方法は、式(3):
【化14】
(式中、
ArはArと比較して電子豊富(electron-rich)であるアリール又はヘテロアリール環系であり;
Arは上で定義したとおりである)
の化合物を加熱する工程を含む。
【0035】
上の態様のいずれかにおいて、ヨウ素の放射性同位体は、123I、124I、125I、131I及びそれらの混合物からなる群から選択できる。いくつかの態様では、ヨウ素の放射性同位体は123Iである。いくつかの態様では、ヨウ素の放射性同位体は124Iである。いくつかの態様では、ヨウ素の放射性同位体は125Iである。いくつかの態様では、ヨウ素の放射性同位体は131Iである。
【0036】
いくつかの態様では、ヨウ素の放射性同位体の比放射能は少なくとも約10mCi/mgである。いくつかの態様では、ヨウ素の放射性同位体の比放射能は約1Ci/mgより大きい。いくつかの態様では、比放射能は約10Ci/mgより大きい。
【0037】
Yは任意の好適な脱離基である。いくつかの態様では、Yは弱く配位するアニオン(すなわち、ヨウ素と弱くしか配位しないアニオン)である。例えば、Yは強酸の共役塩基、例えば、共役酸(H−Y)のpKaが約1未満であるアニオンであることができる。例えば、Yはトリフレート、メシレート、ノナフレート、ヘキサフレート、トルエンスルホネート(トシレート)、ニトロフェニルスルホネート(ノシレート)、ブロモフェニルスルホネート(ブロシレート)、パーフルオロアルキルスルホネート(例えば、パーフルオロC2−10アルキルスルホネート)、テトラフェニルボレート、ヘキサフルオロホスフェート、トリフルオロアセテート、パーフルオロアルキルカルボキシレート、テトラフルオロボレート、パークロレート、ヘキサフルオロスチベート、ヘキサクロロスチベート、及びクロライドであることができる。いくつかの態様では、わずかにより塩基性の脱離基、例えば、アセテート、トリフレート、又はベンゾエートを用いてもよい。
【0038】
対イオンMは、アイオダイドに対して任意の適切なカチオンであることができる。Mの選択は、当業者の知識内で容易である。例えば、Mは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、及び遷移金属塩、例えば例として、カルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、及び亜鉛の塩から選択することができる。金属カチオンはまた、クリプタンド又はクラウンエーテルと錯化して、それらの溶解性を高め、かつアイオダイド基を不安定化させることができる。Mはまた、四級化アミン、例えば、N,N′ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルミン(N−メチルグルカミン)、及びプロカインから誘導された四級化アミンから作られる有機塩を包含することができる。いくつかの態様では、Mは、クリプタンド又はクラウンエーテルと組み合わせたリチウム、ナトリウム、カリウム、又はセシウム、四置換アンモニウムカチオン、又はホスホニウムカチオンであることができる。様々なアイオダイド源を、ここで提供するように、フッ素化されたアリール及びヘテロアリール化合物の調製に用いることができ、それには、LiI、NaI、KI、CsI、ヨウ化テトラブチルアンモニウム、及びヨウ化テトラメチルアンモニウムが含まれるがそれらには限定されない。いくつかの態様ではアイオダイド塩(ヨウ化物塩)は水溶液で得られる。いくつかの態様では、原料の放射性アイオダイド塩は添加剤、例えば、水酸化ナトリウムを含む。特定の例では、アイオダイド源の選択は、式(2)の化合物に存在する官能基に左右される。
【0039】
いくつかの態様では、Ar−Hは、ベンゼンよりも容易に酸化される。例えば、Arは、ゼロより小さなハメットσ値を有する少なくとも1つの置換基で置換されていることができる(例えば、「ハメット置換基定数及び共鳴及び場のパラメータの概説」“A survey of Hammett substituent constants and resonance and field parameters”, Corwin, Hansch, A. Leo, R. W. Taft, Chem. Rev., 1991, 91(2), pp. 165-195を参照されたい)。いくつかの態様では、置換基は、-(C1-C10)アルキル、-(C1-C10)ハロアルキル、-(C2-C10)アルケニル、-(C2-C10)アルキニル、-O-(C1-C10)アルキル、-C(O)-O-(C1-C10)アルキル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択される。
【0040】
Arの例は:
【化15】
(式中、R、R、R、R、及びRは独立に、H、-(C1-C10)アルキル、-(C1-C10)ハロアルキル、-(C2-C10)アルケニル、-(C2-C10)アルキニル、-O-(C1-C10)アルキル、-C(O)-O-(C1-C10)アルキル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択され、あるいはR、R、R、R、及びRの2つ以上が一緒になって縮合アリール又はヘテロアリール環系を形成する)
を包含する。
【0041】
いくつかの態様では、Arは固体支持体で置換されていることができる。「固体支持体」は、上記方法に用いられる任意の溶媒に不溶であるが、共有結合されること(例えば、Arと直接あるいは連結基を介して)ができる任意の好適な固体相支持体であることができる。好適な固体支持体の例には、ポリスチレン(これはブロックグラフト化、例えばポリエチレングリコールとブロックグラフト化されていてもよい)、ポリアクリルアミド、又はそのようなポリマーで被覆されたポリプロピレンもしくはガラスもしくはシリコンが含まれる。固体支持体は、小さな孤立した粒子、例えば、ビーズ又はピンの形態であること、あるいは反応容器、例えば、カートリッジ又は微細加工された容器の内表面上のコーティングとして存在することができる。例えば、米国特許出願公開第2007/0092441号公報を参照されたい。
【0042】
いくつかの態様では、連結基の使用によって、固体支持体がArに共有結合されている。「連結基」は、Arを固体支持体構造から空間的に離して、反応性を最大化させるように働く任意の適切な有機基であることができる。例えば、連結基は、合成の容易さのために、例えばアミドエーテル又はスルホンアミド結合を介して固体支持体に結合されたC1-C20アルキル又はC1-C20アルコキシを含むことができる。連結基は、ポリエチレングリコール(PEG)連結基であることもできる。そのような連結基の例は、固相化学分野の当業者には周知である。
【0043】
ここに記載した方法は、様々なアリール及びヘテロアリール環系とともに用いることができる。当業者によって良く理解されているように、ここに記載したアリール及びヘテロアリール環系の効果的な求核置換を行うためには、ArよりもArがより容易に酸化される(すなわち、より電子豊富である)ことが必要である。しかし、その限度内において、Ar基は、ヨウ素の放射性同位体による置換が望ましい任意のアリール又はヘテロアリール環系であることができる。例えば、Arは、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、又はヒスチジン誘導体、及びエストラジオール誘導体であることができる。
【0044】
いくつかの態様では、Arは以下のものから選択できる。
【化16】
【化17】
上記式中、各Xは独立に保護基である。
【0045】
例えば、Arは以下のものからなる群から選択することできる。
【化18】
【化19】
【0046】
保護基は、所望しない化学変換から潜在的反応性官能基を保護する一時的な置換基であることができる。用いられる具体的な保護基の選択は、当業者に周知である。多くの考慮によって保護基の選択を決定することができ、それには保護される官能基、分子に存在するその他の官能基、合成経路の各段階における反応条件、分子に存在するその他の保護基、保護基を除去するために必要な条件に対する官能基の耐性、及び本明細書に示す化合物の熱分解のための反応条件、が含まれるがそれらに限定されない。保護基の化学の分野は概説されている(Greene, T. W.; Wuts, P. G. M. Protective Groups in Organic Synthesis, 2nd ed.; Wiley: New York, 1991)。
【0047】
例えば、アミンのための保護基は、t-ブトキシカルボニル(BOC)、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)、2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル(Troc)、2-(4-トリフルオロメチルフェニルスルホニル)エトキシカルボニル(Tsc)、1-アダマンチルオキシカルボニル(Adoc)、2-アダマンチルカルボニル(2-Adoc)、2,4-ジメチルペンタ-3-イルオキシカルボニル(Doc)、シクロヘキシルオキシカルボニル(Hoc)、1,1-ジメチル-2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル(TcBOC)、ビニル、2-クロロエチル、2-フェニルスルホニルエチル、アリル、ベンジル、2-ニトロベンジル、4-ニトロベンジル、ジフェニル-4-ピリジルメチル、N′,N′-ジメチルヒドラジニル、メトキシメチル、t-ブトキシメチル(Bum)、ベンジルオキシメチル(BOM)、又は2-テトラヒドロピラニル(THP)を包含するがこれらに限定されない。
【0048】
カルボン酸は、その他の基のなかでも、それらのアルキル、アリル、又はベンジルエステルとして保護することができる。
【0049】
アルコールは、エステルとして、例えば、アセチル、ベンゾイル、又はピバロイルエステルとして、あるいはエーテルとして保護できる。アルコールのためのエーテル保護基の例には、アルキル、アリル、ベンジル、メトキシメチル(MOM)、t-ブトキシメチル、テトラヒドロピラニル(THP)、p-メトキシベンジル(PMB)、トリチル、及びメトキシエトキシメチル(MEM)が包含されるがこれらに限定されない。
【0050】
いくつかの態様では、保護基は酸に不安定な保護基である。
【0051】
いくつかの態様では、保護基は塩基に不安定な保護基である。
【0052】
いくつかの態様では、保護基は酸に不安定な保護基であって、保護基は全ての合成工程の最後に酸性の脱保護条件下で容易に除去することができる。
【0053】
ここに提供する方法は、溶媒(例えば、非プロトン性溶媒)の存在下で実施することができる。例えば、反応は、極性溶媒、非極性溶媒、又はそれらの混合物の存在下で行うことができる。いくつかの態様では、工程(a)における反応混合物は、ここに記載したように非プロトン性溶媒をさらに含む。いくつかの態様では、溶媒は極性溶媒を含む。いくつかの態様では、溶媒は、工程(b)の前に反応混合物から除去される。いくつかの態様では、工程(b)における反応混合物は溶媒(例えば、非プロトン性溶媒)をさらに含む。いくつかの態様では、溶媒は非極性溶媒を含む。
【0054】
いくつかの態様では、上記方法は、極性溶媒中で化合物MI(Mは対イオンである)と式(2)の化合物を反応させる工程を含むことができる。極性溶媒は、反応の終了の後で、反応混合物から除去することができる。残った混合物を次に非極性溶媒と混ぜ、加熱して式(1)の化合物を製造することができる。
【0055】
いくつかの態様では、上記方法は、非極性溶媒、化合物MI、及び式(2)の化合物を含む混合物を加熱する工程を含むことができる。例えば、上記方法は、非極性溶媒及び極性溶媒、化合物MI、及び式(2)の化合物を含む混合物を加熱する工程を含むことができる。いくつかのそのような態様では、非極性溶媒はトルエンを含み、極性溶媒はアセトニトリルを含む。
【0056】
いくつかの態様では、MI及び式(2)の化合物の反応混合物の非極性溶液は、加熱前にろ過することができる。ろ過工程は、反応混合物中に残っている不溶性物質(例えば、不溶性塩)を除去することができる。いくつかの態様では、溶媒は、加熱する前に濾液から除去することができる(すなわち、残留物を希釈せずに加熱することができる)。
【0057】
さらなる態様では、MI及び式(2)の化合物の反応混合物の非極性溶液を加熱の前にろ過することができ、非極性溶媒を除去(例えば、蒸発によって)することができ、その試料の加熱を別の溶媒中で行うことができる。
【0058】
いくつかの態様では、クロマトグラフィーによって、極性又は非極性溶液中のMI及び式(2)の化合物の反応混合物の溶液から、混入している塩が除去される。例えば、混入している塩を、サイズ排除、ゲル浸透、逆相、又はその他のクロマトグラフ法によって、加熱する前に除去することができる。
【0059】
非極性溶媒は、約10未満の誘電率を有する任意の溶媒であることができる。非極性溶媒の例には、ベンゼン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、エチルベンゼン、四塩化炭素、ヘキサン、シクロヘキサン、フルオロベンゼン、クロロベンゼン、ニトロベンゼン、及びそれらの混合物が包含される。いくつかの態様では、非極性溶媒はトルエンを含む。
【0060】
極性溶媒は約10より大きな誘電率を有する溶媒である。極性溶媒の例には、アセトニトリル、アセトン、ジクロロメタン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、1,2-ジフルオロベンゼン、ベンゾトリフルオライド、ジメトキシエタン、ジグリム、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、及びそれらの混合物が包含される。いくつかの態様では、非プロトン性溶媒はアセトニトリルを含む。
【0061】
いくつかの態様では、非プロトン性溶媒は、極性溶媒と非極性溶媒の混合物である。理論には束縛されないが、反応は、非極性溶媒の存在下でより速く進行し、その一方で極性溶媒は様々な反応原料の溶解性を保つことを助けると考えられる。いくつかの態様では、非プロトン性溶媒は極性溶媒と非極性溶媒の混合物であり、この混合物は、約95%の極性溶媒と約5%の非極性溶媒、約90%の極性溶媒と約10%の非極性溶媒、約85%の極性溶媒と約15%の非極性溶媒、約80%の極性溶媒と約20%の非極性溶媒、約75%の極性溶媒と約25%の非極性溶媒、約70%の極性溶媒と約30%の非極性溶媒、約65%の極性溶媒と約35%の非極性溶媒、約60%の極性溶媒と約40%の非極性溶媒、約55%の極性溶媒と約45%の非極性溶媒、約50%の極性溶媒と約50%の非極性溶媒、約45%の極性溶媒と約55%の非極性溶媒、約60%の極性溶媒と約40%の非極性溶媒、約55%の極性溶媒と約45%の非極性溶媒、約45%の極性溶媒と約55%の非極性溶媒、約40%の極性溶媒と約60%の非極性溶媒、約35%の極性溶媒と約65%の非極性溶媒、約30%の極性溶媒と約70%の非極性溶媒、約25%の極性溶媒と約75%の非極性溶媒、約20%の極性溶媒と約80%の非極性溶媒、約15%の極性溶媒と約85%の非極性溶媒、約10%の極性溶媒と約90%の非極性溶媒、又は約5%の極性溶媒と約95%の非極性溶媒から構成される。いくつかの態様では、非プロトン性溶媒は、約5〜約20%の極性溶媒と約80%〜約95%の非極性溶媒を有する混合物である。例えば、この混合物は約10%の極性溶媒と約90%の非極性溶媒を含むことができる。いくつかの態様では、極性溶媒はアセトニトリルであり、非極性溶媒はトルエンである。
【0062】
加熱は慣用手段(例えば、加熱浴、オーブン、ヒートガン、ホットプレート、ブンゼンバーナー、加熱マントルなど)により、マイクロ波の使用により、又はフラッシュ熱分解により達成することができる。一般的には、反応混合物を約25℃〜約250℃(例えば、約80℃〜約200℃、100℃〜約200℃、約120℃〜約170℃、約120℃〜約160℃、約120℃〜約150℃、及び約130℃〜約150℃)の範囲の温度に加熱する。いくつかの態様では、反応混合物を約140℃に加熱する。加熱は、反応を完了させるために必要な任意の時間であることができる。例えば、加熱は、約1秒〜約12時間(例えば、約2秒、約5秒、約10秒、約30秒、約1分、約90秒、約2分、約3分、約5分、約8分、約10分、約12分、約15分、約20分、約25分、約30分、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約6時間、約8時間、約10時間、及び約12時間)であることができる。
【0063】
いくつかの態様では、式(2)の化合物は以下のものからなる群から選択される。
【化20】
【化21】
式中、各Yは独立に上で定義した脱離基であり、各Xは独立に保護基である。
【0064】
例えば、式(2)の化合物は以下のものからなる群から選択することができる。
【化22】
【化23】
【0065】
いくつかの態様では、式(1)の化合物は以下のものからなる群から選択される。
【化24】
【化25】
式中、各Xは独立に保護基である。
【0066】
例えば、式(1)の化合物は以下のものからなる群から選択することができる。
【化26】
【化27】
【0067】
式(3)の化合物の非限定的な例には以下のものが含まれる。
【化28】
【化29】
【化30】
式中、各Yは独立に上で定義した脱離基であり、各Xは独立に保護基である。
【0068】
いくつかの態様では、式(3)の化合物は以下のものからなる群から選択される。
【化31】
【化32】
【化33】
【0069】
化合物
ジアリールヨードニウム化合物、例えば、式(2)及び(3)の化合物をここでさらに提示する。式(2)及び(3)のジアリールヨードニウム化合物は、当業者に公知の様々な方法を使用して、市販されている出発物質から調製することができる。化合物を合成するために用いる方法は、Arの電気的特性及びArに存在する官能基に左右される。Arに存在する潜在的反応性の官能基は、ジアリールヨードニウム化合物の合成の前に保護基を用いてマスキングすることができる。ジアリールヨードニウム化合物を調製するために用いる具体的な方法は、当業者に容易に明らかになる。例えば、化合物は、スキーム2に示すように下の一般反応を用いて作ることができる。
【0070】
【化34】
【0071】
受容性基上に敏感な官能基を有する化合物については、より共有結合性の(より安定な)C−M結合を特徴とする有機金属反応剤を用いることができる。例えば、スズ、ホウ素、及び亜鉛を含む有機金属化合物。官能基が相容れないということがない場合は、より塩基性の有機金属反応剤(有機リチウム、グリニャールなど)を用いてジアリールヨードニウム塩を調製することができる。
【0072】
当業者は、ここに規定した化合物を得ることを可能にする記載した方法の変形及び代替法に気が付くであろう。
【0073】
また、記載した特定の方法の範囲内で、用いる合成工程の順序は変わることができ、とりわけ、具体的な反応物質に存在する他の官能基の性質、鍵となる中間体の入手容易性、及び(もしあれば)採用すべき保護基の戦略などの因子に左右されることも、当業者によって理解されるだろう。明らかに、そのような因子もまた、上記合成工程において用いるための反応剤の選択に影響を及ぼすだろう。
【0074】
当業者は、記載した上記ジアリールヨードニウム化合物は、ここに記載した方法以外の方法により、ここに記載した方法の採用により、及び/又は当分野において公知の、例えば米国特許出願公開第2007/0092441号公報の方法を採用することにより、あるいは標準的な教科書、例えば、「Comprehensive Organic Transformations - AGuide to Functional Group Transformations」, R C Larock, Wiley-VCH (1999又はそれより前の版)、及びScience of Synthesis, Volume 31a, 2007(Houben-Weyl, Thieme)を用いることにより、作ることができることを理解するだろう。
【0075】
下の例において例示したように、特定のヨウ化ジアリールヨードニウムはスキーム1に示したようにして調製することができる。
【化35】
【0076】
ここで言及する合成変換方法は例示のみのためであり、それらは所望する化合物が効率的に組み立てられるようにするために、様々な異なる順序で実施することができることが理解されるべきである。熟練した化学者は、彼の判断を鍛え、所定の目的化合物の合成のために最も効率的な反応の順序に熟練するだろう。
【0077】
キット
本明細書ではキットも提供する。一般的には、キットは、投与する前にここで提示したようにして式(1)の化合物を調製するために用いられる。いくつかの態様では、キットは、式(2)の化合物を含む。いくつかの態様では、キットは、精製した溶媒(例えば、実質的に無水の溶媒)をさらに含むことができる。いくつかの態様では、キットは、1〜4個のクロマトグラフィーカートリッジ(例えば、投与の前に最終的な放射性ヨウ素化化合物を精製するため)をさらに含むことができる。いくつかの態様では、キットは、酸性試薬(例えば、式(2)の化合物中に組み込まれた保護基を除去するため)をさらに含むことができる。特定の態様では、キットは、1つ以上の送達システム、例えば、ここで提示した式(I)の化合物を送達又は投与するための送達システム、及びそのキットを使用するための指示書(例えば、式(1)の化合物を調製するための指示書)を含むことができる。
【実施例】
【0078】

本発明を以下の例においてさらに説明するが、これらは特許請求の範囲にかかる発明の範囲を限定しない。
【0079】
〔例1:N-(3-ヨードベンジル)マレイミドの調製〕
【化36】
【0080】
ジイソプロピルアゾジカルボキシレート(DIAD)(12 mmol, 2.43 g, 2.40 mL, 1.2当量)を、100 mLのTHF中の3-ヨードベンジルアルコール(10 mmol, 2.34 g, 1.0当量)、PPh3(11 mmol, 2.88 g, 1.1当量)、及びマレイミド(11 mmol, 1.07 g, 1.1当量)の溶液に、1時間にわたって添加した。得られた黄色い溶液を夜通し撹拌した後、溶媒を除去し、残留物をシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル = 1:5、Rf = 0.3)によって精製し、ヘキサンで洗って、1.79 g(57%)の生成物を白色固体として得た。
1H NMR (CD3CN, 400 MHz): δ7.64 (d, J = 1.6 Hz, 1H), 7.63 (d, J = 9.6 Hz, 1H), 7.27 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 7.09 (t, J = 7.6 Hz, 1H), 6.78 (s, 6H), 4.56 (s, 2H)。
【0081】
〔例2:[3-((2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)メチル)フェニル]-(4’-メトキシフェニル)ヨードニウム トリフレートの調製〕
【化37】
【0082】
N2で満たしたグローブボックス中で、50 mLの無水CH3CN中のTMSOAc(10.4 mmol, 1.37 g, 2.6当量)の溶液を、50 mLの無水CH3CN中のSelectfluor(登録商標)(5.2 mmol, 1.84 g, 1.3当量)の溶液に滴下により添加した。次に、得られた無色の混合物を、無水CH3CN(150 mL)中のN-(3-ヨードベンジル)マレイミド(4 mmol, 1.25 g, 1.0当量)の溶液に滴下により添加した。得られた溶液を室温で1日撹拌した後、カリウム4-メトキシフェニルトリフルオロボレート(856 mg, 4 mmol, 1.0当量)を添加した。その後直ちに、50.0 mLの無水CH3CN中のTMSOTf(764 mg, 3.4 mmol, 0.8当量)の溶液を滴下法によって添加し、混合物を室温で30分間置いておいた。アセトニトリルを減圧下で除去した。脱イオン水(200 mL)を、残った固体に添加し、混合物をCH2Cl2で抽出した(3×50 mL)。一緒にした有機層を水(50 mL)で洗い、得られた水層をCH2Cl2(50 mL×2)で再び抽出した。一緒にした有機抽出液を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、ろ過し、溶媒をロータリーエバポレーターによって除去した。この化合物を1 mLアセトニトリル/水(体積で9:1)溶液に溶かし、Amberlite IRA-400イオン交換カラム(トリフレート対イオン(カウンターイオン))に上から下へゆっくり通過させた。減圧下で溶媒を除去した後、透明な残留物をEtOAcで洗って有機不純物を除去することにより、精製したヨードニウムトリフレート生成物(1.06 g, 47%)を得た。
1H NMR (CD3CN, 400 MHz): δ7.98 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.90 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.86 (s, 1H), 7.58 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 7.47 (t, J = 8.0 Hz, 1H), 7.07 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 6.83 (s, 2H), 4.64 (s, 2H), 3.85 (s, 3H); 19F NMR (CD3CN, 376 MHz): δ -79.3 (s, 3F)。
【0083】
〔例3:[4-((2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)メチル)フェニル]-(4’-メトキシフェニル)ヨードニウム トリフレートの調製〕
【化38】
【0084】
この化合物は、例2に記載したものと同じ方法を用いて、N-(4-ヨードベンジル)マレイミドから調製した。A(3 mmolスケールの反応で910 mgの生成物が得られた(53%)。
1H NMR (CD3CN, 400 MHz): δ7.99 (d, J = 9.2 Hz, 2H), 7.97 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.40 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.05 (d, J = 9.2 Hz, 2H), 6.80 (s, 2H), 4.67 (s, 2H), 3.84 (s, 3H); 19F NMR (CD3CN, 376 MHz): δ -79.3 (s, 3F)。
【0085】
〔例4:4-(4-ヨードベンジル)安息香酸の調製〕
【化39】
【0086】
アルミニウムホイルで光を遮った500 mL丸底フラスコ中で、CH3CN(100 mL)中の4-ベンジル安息香酸(1.06 g, 5 mmol, 1.0当量)、NIS(1.24 g, 5.5 mmol, 1.1当量)、及びYb(OTf)3(310 mg, 0.50 mmol, 0.1当量)の撹拌溶液を75〜80℃に12時間加熱した。12時間後、NISの追加分(0.56 g, 2.5 mmol, 0.5当量)を追加して、反応を完了させた。さらに1時間後、溶媒をロータリーエバポレーターで除去し、残留物を水と酢酸エチルの間に分配させた。混合物を酢酸エチルで抽出し(3×50 mL)、一緒にした有機抽出液を水で洗い、MgSO4上で乾燥させ、ろ過した。溶媒をロータリーエバポレーターで除去し、残留物をシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル = 1:1、Rf = 0.2)によって精製して、4-(4-ヨードベンジル)安息香酸を白色固体として得た(1.28 g, 76%)。
1H NMR (CD3CN, 400 MHz): δ 7.91 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.65 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.31 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.03 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 3.99 (s, 2H)。
【0087】
〔例5:2,5-ジオキソピロリジン-1-イル 4-(4-ヨードベンジル)ベンゾエートの調製〕
【化40】
【0088】
4-(4-ヨードベンジル)安息香酸(3.8 mmol, 1.28 g, 1.0当量)及びN-ヒドロキシコハク酸イミド(5.7 mmol, 0.66 g, 1.5当量)を無水CH2Cl2(20 mL)に溶かした。混合物を0℃に冷やした後、10 mLのCH2Cl2に溶かしたN,N'-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC, 5.7 mmol, 1.18 g, 1.5当量)を滴下により添加した。混合物を12時間、室温で撹拌し、ろ過して、沈殿したN,N'-ジシクロヘキシル尿素を除去した。残留物を追加のCH2Cl2で洗い、一緒にした濾液を減圧下で蒸発させた。残留物をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル = 1:5、Rf = 0.6)によって精製した。イソプロパノール又はトルエン/ヘキサンを用いた再結晶により、表題化合物を無色固体として得た(0.60 g, 36%)。
1H NMR (CD3CN, 400 MHz): δ 8.04 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.67 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.42 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.04 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 4.05 (s, 2H), 2.83 (s, 4H)。
【0089】
〔例6:[4-(4-(((2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)オキシ)カルボニル)ベンジル)フェニル]- ]-(4’-メトキシフェニル)ヨードニウム トリフレートの調製〕
【化41】
【0090】
N2で満たしたグローブボックス中で、20 mLの無水CH3CN中のTMSOAc(3.90 mmol, 516 mg, 2.6当量)の溶液を、20 mLの無水CH3CN中のSelectfluor(登録商標)(1.95 mmol, 691 mg, 1.3当量)の溶液に滴下により添加した。得られた無色の混合物を次に40 mLの無水CH3CN中の2,5-ジオキソピロリジン-1-イル 4-(4-ヨードベンジル)ベンゾエート(1.5 mmol, 653 mg, 1.0当量)の溶液にゆっくり添加した(滴下による)。混合物を室温で2日撹拌し、その後、カリウム4-メトキシフェニルトリフルオロボレート(320 mg, 1.5 mmol, 1.0当量)を添加した。その後直ちに、20.0 mLの無水CH3CN中のTMSOTf(267 mg, 1.2 mmol, 0.8当量)の溶液をゆっくり(滴下により)添加し、混合物を室温に30分間置いておいた。アセトニトリルをロータリーエバポレーターによる蒸発によって除去し、100 mLの脱イオン水を添加し、混合物をCH2Cl2で抽出した(3×30 mL)。一緒にした有機抽出液を水(50 ml)で洗い、水層をCH2Cl2で再び抽出した(2×50 mL)。一緒にした有機抽出液を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、ろ過し、減圧下で濃縮した。残留物をメチルt-ブチルエーテル(MTBE)で洗った。この化合物を1 mLのアセトニトリル/水(体積で9:1)溶液に溶かし、Amberlite IRA-400イオン交換カラム(トリフラート対イオン)に上から下へゆっくり通過させた。減圧下で溶媒を除去した後、無色の残留物をペンタンで洗うことによって有機不純物を除去して、精製されたヨードニウムトリフラート生成物を得た(540 mg, 52%)。
1H NMR (CD3CN, 400 MHz): δ 8.05 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.99 (d, J = 9.2 Hz, 2H), 7.95 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.42 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.38 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.05 (d, J = 9.2 Hz, 2H), 4.16 (s, 2H), 3.83 (s, 3H), 2.84 (s, 4H); 19F NMR (CD3CN, 376 MHz): δ -79.3 (s, 3F)。
【0091】
〔例7:5-ベンジル-1,3-ジメチル-[1,3,5]トリアジナン-2-オンの調製〕
【化42】
【0092】
ベンジルアミン(5 mL, 45.8 mmol)、ホルムアルデヒド(37% w/w溶液, 7.5 mL, 91.6 mmol)、及びN,N’-ジメチル尿素(4.03 g, 45.8 mmol)を、還流コンデンサを備えた反応フラスコ中で混合し、窒素雰囲気下で100℃に16時間加熱した。それを室温まで冷やした後、反応混合物を水(50 mL)で失活させ、CH2Cl2(50 mL×2)で抽出した。一緒にした有機層をブラインで洗い、無水Na2SO4上で乾燥させ、ろ過し、濃縮した。残留物をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル, 溶出液としてEtOH)によって精製して、無色固体として単離された5-ベンジル-1,3-ジメチル-[1,3,5]トリアジナン-2-オン(8.28 g, 82%収率)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.40-7.27 (m, 5 H), 4.12 (s, 4 H), 3.93 (s, 2 H), 2.86 (s, 6 H)。
【0093】
〔例8:1,3-ジメチル-[1,3,5]トリアジナン-2-オンの調製〕
【化43】
【0094】
5-ベンジル-1,3-ジメチル-[1,3,5]トリアジナン-2-オン(3.25 g, 14.8 mmol)をEtOH(90 mL)に溶かした。この溶液に、Pd/C(10%)(500 mg)を添加し、得られた混合物をH2(750 psi)下で65℃に7日間加熱した。混合物を室温まで冷やした後、セライトを通してその懸濁液をろ過し、溶離液をロータリーエバポレーターで濃縮して、無色固体として単離された1,3-ジメチル-[1,3,5]トリアジナン-2-オン(1.80 g, 94%収率)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 4.14 (s, 4 H), 2.84 (s, 6 H), 2.52 (brs, 1 H)。
【0095】
【化44】
【0096】
〔例9:tert-ブチル (イミノ(1H-ピラゾール-1-イル)メチル)カルバメートの調製〕
【化45】
【0097】
アセトン(45 mL)中のジ-tert-ブチルジカーボネート(13.4 g, 61.5 mmol)の溶液に、1H-ピラゾール-1-カルボキサミジン塩酸塩(9.0 g, 61.5 mmol, 1.0当量)及び9.0 mLの水を添加した。H2O(12.0 mL)中のK2CO3(4.24 g, 30.6 mmol, 0.5当量)を、室温にて30分間にわたり滴下により添加した。2時間後、別部分のジ-tert-ブチルジカーボネート(1.35 g, 6 mmol, 0.1当量)を添加し、溶液を夜通し撹拌した。アセトンを減圧下で除去し、得られた白色固体を30.0 mLの水に溶かし、0℃にて30分間撹拌した。沈殿したtert-ブチル (イミノ(1H-ピラゾール-1-イル)メチル)カルバメートをろ過によって集め、水で洗い、ヘキサンで洗い、減圧下で乾燥させて、無色固体として表題化合物を得た(11.37 g, 88%収率)。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ 9.06 (brs, 1H), 8.45 (d, J = 3.2 Hz, 1H), 7.67 (d, J = 0.8 Hz, 1H), 7.59 (brs, 1H), 6.39 (dd, J = 2.8, 1.6 Hz, 1H), 1.54 (s, 9H)。
【0098】
〔例10:tert-ブチル tert-ブトキシカルボニル (((tert-ブトキシカルボニル)イミノ)(1H-ピラゾール-1-イル)メチル)カルバメートの調製〕
【化46】
【0099】
4-(ジメチルアミノ)ピリジン(660 mg, 5.41 mmol)を、ジクロロメタン(60 mL)中のtert-ブチル(((tert-ブトキシカルボニル)イミノ)(1H-ピラゾール-1-イル)メチル)カルバメート(11.37 g, 54.1 mmol, 1.0当量)の溶液に添加した。THF(40.0 mL)中のジ-tert-ブチルジカーボネート(23.61 g, 108.2 mmol, 2.0当量)を、シリンジポンプを使用して、8時間にわたってゆっくり添加した。その溶液を室温で夜通し撹拌した後、溶媒を減圧下で除去した。得られた無色固体を、希薄な酢酸溶液(0.52 g, 8.66 mmol, 60 mLの水中の酢酸)中で撹拌した。沈殿したtert-ブチルtert-ブトキシカルボニル(((tert-ブトキシカルボニル)イミノ)(1H-ピラゾール-1-イル)メチル)カルバメートを集め、水、ヘキサンで洗い、減圧下で乾燥させて無色の固体を得た(20.21 g, 91%収率)。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ 8.20 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 7.69 (d, J = 0.8 Hz, 1H), 6.45 (dd, J = 2.8, 1.6 Hz, 1H), 1.54 (s, 9H), 1.39 (s, 18H)。
【0100】
〔例11:tert-ブチル (((tert-ブトキシカルボニル)イミノ)(1H-ピラゾール-1-イル)メチル)カルバメートの調製〕
【化47】
【0101】
例10で調製した化合物(tert-ブチル tert-ブトキシカルボニル(((tert-ブトキシカルボニル)イミノ)(1H-ピラゾール-1-イル)メチル)カルバメート)(20.21g, 49.2 mmol, 1.0当量)、Mg(ClO4)2(823 mg, 3.69 mmol, 0.075当量)、及びTHF(70 mL)を、極度に乾燥させた丸底フラスコに入れ、その混合物を50〜60℃で5時間撹拌した。反応の終了後(TLCによる観察による)、溶媒を減圧下で蒸発させて、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン, 1:10)で精製して、無色固体として単離されたtert-ブチル (((tert-ブトキシカルボニル)イミノ)(1H-ピラゾール-1-イル)メチル)カルバメートを得た(14.58 g, 95%収率)。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ 8.94 (brs, 1H), 8.31 (d, J = 2.8 Hz, 1H), 7.63 (d, J = 1.6 Hz, 1H), 6.42 (dd, J = 2.8, 1.6 Hz, 1H), 1.56 (s, 9H), 1.50 (s, 9H)。
【0102】
〔例12:tert-ブチル (((tert-ブトキシカルボニル)イミノ)(3,5-ジメチル-4-オキソ-1,3,5-トリアジナン-1-イル)メチル)カルバメートの調製〕
【化48】
【0103】
例11で調製した化合物(tert-ブチル (((tert-ブトキシカルボニル)イミノ)(1H-ピラゾール-1-イル)メチル)カルバメート)(1.15 g, 3.7 mmol, 1.0当量)及び1,3-ジメチル-[1,3,5]トリアジナン-2-オン(0.57 g, 4.4 mmol, 1.2当量)を、極度に乾燥させたフラスコ中で無水THF(15 mL)にアルゴン下で溶かした。この溶液を70℃にて22時間加熱した。その混合物を室温まで冷やし、溶媒を減圧下で除去し、残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル, 溶出液としてEtOAc)によって精製して、無色固体として生成物を得た(0.51 g, 37%収率)。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 10.5 (brs, 1H), 4.70 (s, 4 H), 2.92 (s, 6 H), 1.51 (s, 9H), 1.50 (s, 9H)。
【0104】
〔例13:tert-ブチル (((tert-ブトキシカルボニル)イミノ)(3,5-ジメチル-4-オキソ-1,3,5-トリアジナン-1-イル)メチル)(3-ヨードベンジル)カルバメートの調製〕
【化49】
【0105】
CH2Cl2/H2Oの1.4/1.0混合物(24.0 mL)中のtert-ブチル (((tert-ブトキシカルボニル)イミノ)(3,5-ジメチル-4-オキソ-1,3,5-トリアジナン-1-イル)メチル)カルバメート(1.04 g, 2.8 mmol, 1.0当量)、ヨウ化テトラブチルアンモニウム(0.11 g, 0.3 mmol, 0.10当量)、及びKOH(85%, 0.37 g, 5.6 mmol, 2.0当量)の2相溶液に、THF(4.0 mL)中の3-ヨードベンジルブロマイド(102 mg, 71 ul, 0.60 mmol, 1.2当量)を1.5時間にわたって滴下により添加した。反応物を室温で12時間撹拌した。反応が終了したときに、有機層を分離し、水層をCH2Cl2(20 mL×2)で抽出した。一緒にした有機抽出液をブラインで洗い、Na2SO4上で乾燥させ、ろ過し、減圧下で濃縮した。残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル, 溶離液としてEtOAc)で精製して、無色固体として生成物(1.0 g, 61%収率)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.71 (s, 1H), 7.66 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 7.30 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 7.07 (t, J = 7.7 Hz, 1H), 4.46 (brs, 6H), 2.74 (brs, 6H), 1.53 (s, 9H), 1.47 (s, 9H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 158.7, 156.2, 151.9, 150.2, 135.8, 135.4, 134.3, 132.1, 128.1, 83.8, 81.7, 79.3, 60.8, 50.9, 32.1, 27.4, 24.3。
【0106】
〔例14:tert-ブチル ベンジル (((tert-ブトキシカルボニル)イミノ)(3,5-ジメチル-4-オキソ-1,3,5-トリアジナン-1-イル)メチル)カルバメートの調製〕
【化50】
【0107】
このモデル化合物は、例13に記載した方法を用いて、ベンジルブロマイドから調製した。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 7.40-7.27 (m, 5H), 4.43 (brs, 6H), 2.67 (brs, 6H), 1.53 (s, 9H), 1.46 (s, 9H); 13C NMR (75 MHz, CDCl3) δ 158.6, 156.9, 152.1, 150.6, 136.2, 129.2, 128.9, 128.4, 82.7, 80.6, 77.4, 77.0, 76.6, 60.8, 51.2, 32.9, 28.2, 28.1; HRMS (ESI) C23H35N5O5に対する計算値: 461.2638; 測定値: [M+Na] = 484.2536。
【0108】
〔例15:tert-ブチル (((tert-ブトキシカルボニル)イミノ)(3,5-ジメチル-4-オキソ-1,3,5-トリアジナン-1-イル)メチル)(3-フルオロベンジル)カルバメートの調製〕
【化51】
【0109】
この化合物は、例13に記載した方法を用いて、3-フルオロベンジルブロマイドから調製した(90%)。
1H NMR (400 MHz, CD3CN) δ 7.40-7.32 (m, 1H), 7.19-7.03 (m, 3H), 4.45 (brs, 6H), 2.66 (brs, 6H), 1.48 (s, 9H), 1.43 (s, 9H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 163.8, 161.4, 158.8, 156.4, 152.0, 150.6, 138.9, 138.8, 130.6, 130.5, 125.3, 125.3, 116.1, 115.9, 115.0, 114.8, 82.2, 79.9, 60.7, 50.4, 32.1, 27.3, 27.3。
【0110】
〔例16:カリウム tert-ブチル (((tert-ブトキシカルボニル)イミノ)(3,5-ジメチル-4-オキソ-1,3,5-トリアジナン-1-イル)メチル)(3-(トリフルオロボリル)ベンジル)カルバメートの調製〕
【化52】
【0111】
例13で調製したヨードアレーン(1.20 g, 2.0 mmol, 1.0当量)、PdCl2(PhCN)2(39 mg, 0.10 mmol, 0.05当量)、ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(55 mg, 0.10 mmol, 0.05当量)、ビスピナコラートジボロン(1.02 g, 4.0 mmol, 2.0当量)、及びKOAc(1.96 g, 20.0 mmol, 10.0当量)を仕込んだフラスコに窒素を勢いよく流し(フラッシュし)、脱気したDMSO(20 mL)を添加した。その混合物を80℃で加熱し、12時間撹拌した後、その混合物を室温まで冷やした。その混合物を酢酸エチルで抽出し、水で洗い、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濃縮した。フラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル, シリカへの暴露時間を最小にするための溶離液としてEtOAc)の後、粗製tert-ブチル (((tert-ブトキシカルボニル)イミノ)(3,5-ジメチル-4-オキソ-1,3,5-トリアジナン-1-イル)メチル)(3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ベンジル)カルバメートを無色固体として得た(1.05 g)。
1H NMR (400 MHz, アセトン-d6) δ 7.76 (s, 1H), 7.70 (d, J = 7.4 Hz, 1H), 7.51 (d, J = 7.5 Hz, 1H), 7.38 (t, J = 7.5 Hz, 1H), 4.50 (brs, 6H), 2.66 (brs, 6H), 1.52 (s, 9H), 1.47 (s, 9H), 1.33 (s, 12H); 13C NMR (100 MHz, アセトン-d6) δ 158.6, 157.0, 152.1, 150.6, 138.5, 138.1, 137.4, 130.6, 128.4, 94.5, 83.1, 80.7, 61.0, 50.6, 33.0, 28.2, 28.1。
【0112】
上のピナコールエステル(1.05 g)をMeOH(20 mL)に溶かし、そこへKHF2(aq)(1.24 g, 15.9 mmol, 4.5 M溶液)の溶液を1.0時間にわたって添加した。この混合物をさらに1時間撹拌した後、ジクロロメタンを添加して白色沈殿物を生じさせた。その沈殿物をろ過によって除去し、DCMで洗った。母液を濃縮して、1.22 gの粗製生成物を白色固体として得た。この白色固体をヘキサンで洗って、純粋なトリフルオロボレート塩を得た(0.69 g, 2工程で61%)。
1H NMR (500 MHz, CD3CN) δ 7.38 (d, J = 7.1 Hz, 1H), 7.35 (s, 1H), 7.14 (t, J = 7.5 Hz, 1H), 7.07 (d, J = 7.4 Hz, 1H), 4.91 (brs, 1H), 4.46 (brs, 3H), 4.01 (brs, 2H), 2.60 (brs, 6H), 1.94 (s, 9H), 1.44 (s, 9H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 158.9, 156.6, 152.0, 151.1, 133.9, 132.3, 131.3, 126.9, 126.2, 81.7, 79.7, 60.6, 51.6, 32.1, 27.4, 24.3。
【0113】
〔例17:1-(ジアセトキシヨード)-4-メトキシベンゼンの調製〕
【化53】
【0114】
4-ヨードアニソール(2.34 g, 10 mmol)を90 mLの氷酢酸に溶かし、その撹拌溶液を40〜45℃に温めた。過ホウ酸ナトリウム四水和物(15.4 g, 110 mmol)を3時間にわたって分けて添加した。添加が終了した後、反応混合物の温度を夜通し40℃に保った後、室温まで冷やした。酢酸(〜30 mL)を減圧下で蒸留によって除去した。残った溶液を100 mLの脱イオン水で処理し、水層をジクロロメタンで抽出した(40 mL×3)。一緒にした有機画分を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濃縮した。その白色固体をヘキサンで洗い、次に氷酢酸2滴を添加し、減圧下40℃で夜通し乾燥させて1.60 g(45%)の1-(ジアセトキシヨード)-4-メトキシベンゼンを得た。
1H NMR (400 MHz, CD3CN): δ 8.06 (d, J = 9.2 Hz, 2H), 7.05 (d, J = 9.2 Hz, 2H), 3.86 (s, 3H), 1.91 (s, 6H)。
【0115】
〔例18:(3-((N,N'-ビス(tert-ブトキシカルボニル)-3,5-ジメチル-4-オキソ-1,3,5-トリアジナン-1-カルボキシイミドアミド)メチル)フェニル)(4-メトキシフェニル)ヨードニウム トリフレートの調製〕
【化54】
【0116】
N2で満たしたグローブボックス中で、1-(ジアセトキシヨード)-4-メトキシベンゼン(224 mg, 0.64 mmol, 1.0当量)を7.0 mLの無水CH3CNに溶かした。この溶液を、7.0 mLの無水CH3CN中のトリフルオロボレート塩(397 mg, 0.70 mmol, 1.1当量)の溶液と混ぜた。トリメチルシリルトリフレート(155 mg, 0.70 mmol, 1.1 mmol)を滴下により添加し、混合物を室温に30分間置いておいた。飽和酢酸ナトリウム水溶液(20 mL)を添加し、混合物をCH2Cl2で抽出した(3×20 mL)。一緒にした有機抽出液を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濃縮した。この化合物を1 mLのアセトニトリル/水(体積で9:1)溶液に溶かし、Amberlite IRA-400イオン交換カラム(トリフレート対イオン)に上から下へゆっくり通過させた。減圧下で溶媒を除去した後、無色の残留物をペンタンで洗って有機不純物を除去することにより、精製されたヨードニウムトリフレート生成物を得た。その残留物をジクロロメタンから再結晶して、350 mg(66%)の表題ヨードニウムトリフレートを得た。
1H NMR (500 MHz, CD3CN) δ 8.05 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 8.04 (d, J = 9.2 Hz, 2H), 8.01-7.99 (m, 1H), 7.69 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 7.50 (t, J = 8.0 Hz, 1H), 7.04 (d, J = 9.2 Hz, 2H), 4.40 (brs, 6H), 3.83 (s, 3H), 2.60 (brs, 6H), 1.48 (s, 9H), 1.43 (s, 9H); 19F NMR (CD3CN, 376 MHz): δ -79.3 (s, 3F)。
【0117】
〔例19: ベンゼン中での(3-((N,N'-ビス(tert-ブトキシカルボニル)-3,5-ジメチル-4-オキソ-1,3,5-トリアジナン-1-カルボキシイミドアミド)メチル)フェニル)(4-メトキシフェニル)ヨードニウム トリフレートのヨウ素化〕
【化55】
【0118】
窒素雰囲気のグローブボックス中で、0.020 mmol(17 mg)のヨードニウムトリフレートを0.5 mLの無水アセトニトリル-d3に溶かした。0.2 mLの無水アセトニトリル-d3中の0.020 mmol(2 mg)のTMAIの溶液をゆっくり添加した。この混合物をJ-Young NMRチューブ中に移し、封じ、グローブボックスから取り出した。溶媒を蒸発させ、チューブをグローブボックスに戻した。無水ベンゼン-d6(0.6 mL)を添加し、J-Young NMRチューブ中に移し、封じ、グローブボックスから取り出した。チューブをアルミニウムホイルで包み、80℃のオイルバス中においた。1時間後、残っている出発物質は1H NMRスペクトルによって観察されず、tert-ブチル (((tert-ブトキシカルボニル)イミノ)(3,5-ジメチル-4-オキソ-1,3,5-トリアジナン-1-イル)メチル)(3-ヨードベンジル)カルバメートの特徴的なシグナルが見られた。
【0119】
〔例20: CD3CN中での(3-((N,N'-ビス(tert-ブトキシカルボニル)-3,5-ジメチル-4-オキソ-1,3,5-トリアジナン-1-カルボキシイミドアミド)メチル)フェニル)(4-メトキシフェニル)ヨードニウム トリフレートのヨウ素化〕
【化56】
【0120】
窒素雰囲気のグローブボックス中で、0.020 mmol(17 mg)のヨードニウムトリフレートを0.5 mLの無水アセトニトリル-d3に溶かした。0.2 mLの無水アセトニトリル-d3中の0.020 mmol(2 mg)のTMAIの溶液をゆっくり添加した。この混合物をJ-Young NMRチューブ中に移し、封じ、グローブボックスから取り出し、チューブをアルミニウムホイルで包み、80℃のオイルバス中においた。反応の進行を1H NMRスペクトルによって観察した。24時間後、残っている出発物質は1H NMRスペクトルによって観察されず、tert-ブチル (((tert-ブトキシカルボニル)イミノ)(3,5-ジメチル-4-オキソ-1,3,5-トリアジナン-1-イル)メチル)(3-ヨードベンジル)カルバメートの特徴的なシグナルが見られた。この試験は、化学量論条件下でさえ、極性溶媒がヨウ素化の速度を顕著に遅くすることを示した。
【0121】
〔例21: CD3CN中での(3-((N,N'-ビス(tert-ブトキシカルボニル)-3,5-ジメチル-4-オキソ-1,3,5-トリアジナン-1-カルボキシイミドアミド)メチル)-2,6-ジフロロフェニル)(4-メトキシフェニル)ヨードニウム トリフレートのヨウ素化〕
【化57】
【0122】
窒素雰囲気のグローブボックス中で、0.020 mmol(17 mg)のヨードニウムトリフレートを0.5 mLの無水アセトニトリル-d3に溶かした。0.2 mLの無水アセトニトリル-d3中の0.020 mmol(2 mg)のTMAIの溶液をゆっくり添加した。この混合物をJ-Young NMRチューブ中に移し、封じ、グローブボックスから取り出し、チューブをアルミニウムホイルで包み、80℃のオイルバス中においた。反応の進行を1H NMRスペクトルによって観察した。90分後、残っている出発物質は1H NMRスペクトルによって観察されず、(E)-tert-ブチル (((tert-ブトキシカルボニル)イミノ)(3,5-ジメチル-4-オキソ-1,3,5-トリアジナン-1-イル)メチル)(2,4-ジフルオロ-3-ヨードベンジル)カルバメートの特徴的なシグナルが見られた。この試験は、ジフルオロ置換パターンは極性溶媒中でさえ、ヨウ素化の速度を顕著に高めることを示した。
【0123】
〔例22: トルエン中での(3-((N,N'-ビス(tert-ブトキシカルボニル)-3,5-ジメチル-4-オキソ-1,3,5-トリアジナン-1-カルボキシイミドアミド)メチル)フェニル)(4-メトキシフェニル)ヨードニウム トリフレートの125I-放射性ヨウ素化〕
【化58】
【0124】
ボロシリケート瓶中で、200uLのアセトニトリル中の(3-((N,N'-ビス(tert-ブトキシカルボニル)-3,5-ジメチル-4-オキソ-1,3,5-トリアジナン-1-カルボキシイミドアミド)メチル)フェニル)(4-メトキシフェニル)ヨードニウム トリフレート(15 mg)を、200μLのアセトニトリル中に溶かしたNa125I水溶液(1 uLのヨウ化ナトリウム溶液, 比放射能: ~17Ci(629GBq)/mg, 10-5M NaOH (pH 8-11), 300 uCi全放射能)水溶液で処理した。溶媒を減圧下で除去した。トルエン(250 uL)を添加し、その混合物を85℃に30分間加熱した。その溶液を瓶から取り出し、真正な標準品(例13で調製したもの)とともにシリカゲルTLCプレート上に点状に付着させた。100%酢酸エチル中での生成物の溶出は、放射能の全体の94%が生成物中にあり、6%がNa125Iとしてプレート上になお存在することを示した。しかし、放射能の全内訳は、初期放射能(270 uCi)の90%が瓶に残り、生成物中に組み込まれていないことを示した。生成物の全放射化学収率は9.4%だった。この例は、従来の市販されているナトリウム塩を用いた場合には、非極性溶媒が、放射性ヨウ素の比較的低い組み込みをもたらすことを示している。
【0125】
〔例23: 10%アセトニトリル/トルエン中での(3-((N,N'-ビス(tert-ブトキシカルボニル)-3,5-ジメチル-4-オキソ-1,3,5-トリアジナン-1-カルボキシイミドアミド)メチル)フェニル)(4-メトキシフェニル)ヨードニウム トリフレートの125I-放射性ヨウ素化〕
【化59】
【0126】
ボロシリケート瓶中で、200 uLのアセトニトリル中の(3-((N,N'-ビス(tert-ブトキシカルボニル)-3,5-ジメチル-4-オキソ-1,3,5-トリアジナン-1-カルボキシイミドアミド)メチル)フェニル)(4-メトキシフェニル)ヨードニウム トリフレート(15 mg)を、200 uLのアセトニトリルに溶かしたNa125I水溶液(1 uLのヨウ化ナトリウム溶液, 比放射能: ~17Ci(629GBq)/mg, 10-5M NaOH (pH 8-11), 300 uCi全放射能)で処理した。溶媒を減圧下で除去した。トルエン(225 uL)中のアセトニトリル(25 uL)の溶液を添加し、混合物を85℃で30分間加熱した。溶液を瓶から取り出し、真正な標準品(例13で調製したもの)とともにシリカゲルTLCプレート上に点状に付着させた。100%酢酸エチル中での生成物の溶出は、残ったNa125Iがなく、生成物中への放射能のほとんど定量的な組み込みを示した。放射能の全内訳は、瓶中にはほとんど残る放射能はなく、生成物溶液中に291 uCiを示した。生成物の全放射化学収率は97%だった。この例は、非極性溶媒中に少量の極性溶媒を混ぜた混合物が、従来の市販されているナトリウム塩を用いて、放射性ヨウ素の優れた組み込みをもたらすことを示している。さらに、少量の極性溶媒を添加した場合でも、反応の速度は顕著な影響を受けない。
【0127】
〔例24: 少量の前駆体を用いる、10%アセトニトリル/トルエン中での(3-((N,N'-ビス(tert-ブトキシカルボニル)-3,5-ジメチル-4-オキソ-1,3,5-トリアジナン-1-カルボキシイミドアミド)メチル)フェニル)(4-メトキシフェニル)ヨードニウム トリフレートの125I-放射性ヨウ素化〕
【化60】
【0128】
ボロシリケート瓶中で、200 uLのアセトニトリル中の(3-((N,N'-ビス(tert-ブトキシカルボニル)-3,5-ジメチル-4-オキソ-1,3,5-トリアジナン-1-カルボキシイミドアミド)メチル)フェニル)(4-メトキシフェニル)ヨードニウム トリフレート(1 mg)を、200 uLのアセトニトリルに溶かしたNa125I水溶液(1 uLのヨウ化ナトリウム溶液, 比放射能: ~17Ci(629GBq)/mg, 10-5M NaOH (pH 8-11), 300 uCi全放射能)で処理した。溶媒を減圧下で除去した。トルエン(225 uL)中のアセトニトリル(25 uL)の溶液を添加し、混合物を85℃で30分間加熱した。溶液を瓶から取り出し、真正な標準品(例13で調製したもの)とともにシリカゲルTLCプレート上に点状に付着させた。100%酢酸エチル中での生成物の溶出は、生成物中への放射能の90%の組み込みと、5%の残留Na125Iと、5%の125I-4-ヨードアニソールを示した。放射能の全内訳は、瓶中にはほとんど残る放射能はなく、生成物溶液中の約290 uCiを示した。生成物の全放射化学収率は87%だった。この例は、低減した量の物質でも、標識の良好な組み込みをもたらしたけれども、これらの条件下で選択性及び収率はより低いことを示している。
【0129】
〔例25: ジアリールヨードニウム塩のヨウ素化の、フッ素化、塩素化、及び臭素化との比較〕
4つのビス(4-メトキシフェニル)ヨードニウムハライド(フルオライド、クロライド、ブロマイド、アイオダイド)のそれぞれ(10 mg)をC6D6に懸濁させ、J. Young NMRチューブ中に封じ、次に示す時間、120℃に加熱した:(フルオライド、2.5時間;クロライド、5日;ブロマイド、5時間;アイオダイド、2.5時間)。反応を1H NMRスペクトルによって追跡し、ジアリールヨードニウム塩出発物質のいかなる痕跡も含まない均一な溶液が得られたときに完了したものと判断した。反応が完了したときに得られた代表的な1H NMRを図1に示している。
【0130】
異なる反応性の様子が一連のハロゲン化物を通して観察される。d6-ベンゼン中でのジアリールヨードニウムフルオライドの熱分解は、大部分の4-フルオロアニソールと少量の3-フルオロアニソールを与える。この副生成物は、これらの条件下でハードな塩基であるフルオライドによるオルト位プロトン引き抜きによって形成されるベンザイン中間体が関与する競合する機構からおそらく生じている。対照的に、クロライド及びブロマイドは反応して、定量的収率で対応する4-ハロアニソールをもたらし、3-ハロ位置異性体は全く生成しなかった。これは以下のように容易に説明することができる。すなわちクロライド及びブロマイドの塩基性は、プロトン引き抜きによるベンザイン形成を促進するほどには十分高くない。2電子中間体を通して進むように思われるこれら3つの反応とは対照的に、ビス(4-メトキシフェニル)ヨードニウムアイオダイドの熱分解は、4,4’-ジメトキシビフェニル、I2、及び4-ヨードアニソールに加えて未だ特定されていないアレーン生成物を生成する。このビフェニルとI2は、おそらくフリーラジカル中間体の形成から生じている。
【0131】
〔例26:124I-放射性ヨウ素化−124Iで標識されたベンジルグアニジン誘導体の調製のための一般的な方法〕
【化61】
【0132】
アイオダイド溶液の調製:
Na124I水溶液を0.1M NaOHに溶かした。1μLのNa124I(Na*I; 約1 mCi)を1μLの1.0 M AcOHとともに反応瓶に添加して、酸性の、わずかに緩衝された溶液を調製した。水の体積は非常に小さかったので、Na*I溶液の初期乾燥は必要なかった。(より多くの水が関与するより大きなスケールでの反応については、400μLのCH3CNを用いた共沸乾燥法を、標識化工程の前に行った。)
【0133】
標識化:
保護されたジアリールヨードニウム前駆体5 mgを400μLのCH3CNに溶かした。その混合物を10分間置いておき、結晶性の反応原料の全てが解けていることを確実にした。その溶かした前駆体を反応瓶に入れ、その溶液を90℃にて乾燥アルゴン流で蒸発させた(約2分)。溶媒が完全に除去された後、125μLのCH3CNを添加して(浸透又は撹拌とともに)、その塩を溶かした。トルエン(125μL)を添加し、その溶液を90℃に30分間加熱した。シリカTLC(100%酢酸エチル)を行って、標識化効率を決定した。
【0134】
中間体の精製:
シリカゲルsep-pak plusをヘキサン(2×2 mL)で処理し、それによってヘキサンがsep-pak上に残った(sep-pakはブローイングによる乾燥はしなかった)。反応混合物をsep-pakに導入し、次に3 mLの1:1のトルエン:アセトニトリルを導入した。溶出液を集め、放射TLC分析(シリカ、100%酢酸エチル)は、ほとんど全てのヨウ化物塩が混合物から除去されていることを示した。溶媒を蒸発させた(90℃においてアルゴン流を用いて減圧下)。4 mLの反応瓶から溶媒を完全に蒸発させるには約30分かかった。
【0135】
脱保護
反応瓶中の残留物を200μLの6M HClに溶かし、100℃に10分間加熱した。その溶液を1分間冷えるようにさせておき、120μLの10M NaOHで中和した。逆相(C18)sep-pakをエタノール(10 mL)及び水(10 mL)ですすぎ、ブローイングして乾燥させた。中和した溶液(pH約2)をそのsep pakを通し、sep pakを2 mLの水ですすぎ(残る塩類を溶出させるため)、ブローイングして乾燥させた。エタノール(0.8 mL)をsep pakに通して、放射性標識されたベンジルグアニジン誘導体を溶出した。窒素流を用いてエタノールを除去した後、その物質をHPLCによって精製した。
【0136】
粗製反応混合物のセミプレパラティブHPLC
分析及び最終的なHPLCを、Alltech Econosphere C18クロマトグラフィーカラム(250×4.6 mm)を使用して行い、生成物は、1.5 mL/分の流速で50%アセトニトリル/50% 20 mmol酢酸アンモニウムを用いて溶出した。
【0137】
HPLC単離後:
集めた画分を20 mLのH2Oで希釈し、放射性標識された生成物を第二のC18 sep pakの上に捕捉させた。そのカートリッジを蒸留水ですすぎ、ブローイングして乾燥させ、生成物を0.8 mLのエタノール中に溶出させた。
【0138】
〔例27:124I-MIBGの調製〕
【化62】
【0139】
例26に概略を示した方法を用いて、1-2 mCiスケールにて、124I-MIBGを74±5%の放射化学収率(n = 8)で調製した。標識された最終生成物のセミプレパラティブHPLC精製についての滞留時間(リテンションタイム)は7.3分だった。単離の後、HPLCによって分析して、生成物は99%より高い化学的及び放射化学的純度だった。
【0140】
〔例28:124I-2,4-ジフルオロ-3-ヨードベンジルグアニジンの調製〕
【化63】
【0141】
例26に概略を示した方法を用いて、1-2 mCiスケールにて、124I-2,4-ジフルオロ-3-ヨードベンジルグアニジンを80±6%の放射化学収率(n = 4)で調製した。単離の後、HPLCによって分析して、生成物は99%より高い化学的及び放射化学的純度だった。MIBGと比較して、このジフルオロ化化合物は、脱保護反応中のヨウ素喪失に対してより大きな熱安定性を示し、そのため、得られた最終生成物の収率は有意により高かった。
【0142】
〔例29:124I-4-ヨードベンジルグアニジンの調製〕
【化64】
【0143】
例26に概略を示した方法を用いて、1-2 mCiスケールにて、124I-4-ヨードベンジルグアニジンIBGを62±6%の放射化学収率(n = 4)で調製した。単離の後、HPLCによって分析して、生成物は99%より高い化学的及び放射化学的純度だった。
【0144】
〔例30:124I-4-ヨード-3,5-ジフルオロベンジルグアニジンの調製〕
【化65】
【0145】
例26に概略を示した方法を用いて、1-2 mCiスケールにて、124I-4-ヨード-3,5-ジフルオロベンジルグアニジンを70±7%の放射化学収率(n = 4)で調製した。単離の後、HPLCによって分析して、生成物は99%より高い化学的及び放射化学的純度だった。
【0146】
〔例31:2つの方法を用いて調製した124-MIBGの造影及び生体内分布研究〕
MIBGの調製方法がその化合物の生体内分布に影響を及ぼしたかどうか決定するために、高い比放射能の124I-MIBGを、ジアリールヨードニウム塩法(例27)と従来のスタニル化された樹脂前駆体を用いて調製した。これらの化合物をげっ歯動物モデルにおいて造影した。
【0147】
8頭のオスのスプラーグ-ドーリーラットをこの研究のために使用した。研究室に到着したときに、各動物を検査し、それらの尾の上に書いた動物の番号によって一意的に特定し、体重を測定した。動物が良好な健康状態にあることを判断し、直ちに順化に置いた。動物は6〜14週齢であり、440.5±36.4 gだった。
【0148】
ジアリールヨードニウム塩前駆体によって調製した124I-MIBG又は従来法を用いて調製した124I-MIBGの単回静脈内投与の後、スプラーグ-ドーリーラットを放射性トレーサーの注入後1、4、及び24時間においてPET/CTスキャンした。生体内分布分析を行って、各動物の心臓、肝臓、腎臓、甲状腺、大腿四頭筋の筋肉、及び全身に取り込まれた量を時間の関数として定量化した。データはμCi、μCi/mm3、%ID、及び%ID/gの単位で表されている。HPLCによって分析して、全ての化合物の放射化学的純度は、投与の1時間内で97%より高かった。ジアリールヨードニウム塩前駆体によって調製した124I-MIBGと従来法によって調製した124I-MIBGの生体内分布には、顕著な定性的又は定量的違いは全くなかった。
【0149】
その他の態様
本発明をその詳細な説明と併せて記載しているが、上述した記載は説明することを意図しており、本発明も範囲を限定せず、本発明は添付した特許請求の範囲によって規定されている。その他の側面、利点、及び変形は、以下の特許請求の範囲内にある。
図1