特許第6563402号(P6563402)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6563402整形外科用関節プロテーゼのカップ部品を位置決めする器具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6563402
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】整形外科用関節プロテーゼのカップ部品を位置決めする器具
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/36 20060101AFI20190808BHJP
   A61F 2/40 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
   A61F2/36
   A61F2/40
【請求項の数】19
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-544784(P2016-544784)
(86)(22)【出願日】2014年9月29日
(65)【公表番号】特表2016-531711(P2016-531711A)
(43)【公表日】2016年10月13日
(86)【国際出願番号】GB2014052933
(87)【国際公開番号】WO2015044685
(87)【国際公開日】20150402
【審査請求日】2017年6月20日
(31)【優先権主張番号】1317287.9
(32)【優先日】2013年9月30日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】516312682
【氏名又は名称】デピュイ・アイルランド・アンリミテッド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】DEPUY IRELAND UNLIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ベイリー・アンドリュー
【審査官】 小原 一郎
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第0811360(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/36
A61F 2/40
A61F 2/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
整形外科用関節プロテーゼの寛骨臼カップ部品を位置決めする器具であって、
支持部材であって、前記支持部材の周辺部周りに一体的に形成された複数の顎部材を有し、前記顎部材のそれぞれは、前記寛骨臼カップ部品の外部側壁上の窪み内で受容されるように第1の方向に前記支持部材から延在するカップ係合肢部を有し、それぞれの顎部材は、前記カップ係合肢部が内方に変位される係合位置と、前記カップ係合肢部が外方に変位されて、前記寛骨臼カップ部品が前記顎部材間から除去されることを可能にする係合解除位置との間で枢動可能である、支持部材と、
アクチュエータであって、前記アクチュエータが全ての前記顎部材を前記係合位置に付勢するために全ての前記顎部材に作用する係合構成、又は、前記アクチュエータが前記顎部材を前記係合位置に付勢するために前記顎部材のいずれにも作用せず、全ての前記顎部材が前記係合解除位置を採用することができる係合解除構成、を採用するように作動可能である、アクチュエータと、
を備える、器具。
【請求項2】
前記支持部材の前記周辺部周りに一体的に形成された少なくとも3つの顎部材を含む、請求項1に記載の器具。
【請求項3】
顎部材の少なくとも3つのグループを含み、顎部材のそれぞれのグループは、複数の顎部材を含み、前記顎部材のそれぞれのグループは、顎部材を含まない間隙により、前記支持部材の周辺部周りで顎部材の隣接グループから離間されている、請求項2に記載の器具。
【請求項4】
それぞれの顎部材は、その係合解除位置の方向に付勢されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の器具。
【請求項5】
それぞれの顎部材は、ライブヒンジにより前記支持部材に接続されている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の器具。
【請求項6】
前記アクチュエータは、前記支持部材に係合することができる第1のシャフトを含む第1の部分と、前記第1のシャフトに平行に延在するように配置された第2の部分とを含み、前記第1の部分は、前記第2の部分内にスライド受容されている、請求項1〜5のいずれか一項に記載の器具。
【請求項7】
前記第2の部分は、上部及び下部を有し、前記下部は、それぞれの枢動可能な顎部材に係合するように配置されており、前記上部及び下部は、それらの間に、使用時にユーザの1対の指を受容するように配置された前記アクチュエータの外側のアクチュエータ窪みを画定する、請求項6に記載の器具。
【請求項8】
前記アクチュエータ窪みは、前記第2の部分の両側の第1部分と第2部分とを含む、請求項7に記載の器具。
【請求項9】
前記アクチュエータ窪みは、前記アクチュエータの長手方向中心軸線周り全体に延在する、請求項8に記載の器具。
【請求項10】
前記アクチュエータは、前記係合構成で前記アクチュエータを係止するように作動可能な解放可能なロックを含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の器具。
【請求項11】
前記解放可能なロックは、ラチェット機構である、請求項10に記載の器具。
【請求項12】
前記解放可能なロックは、前記アクチュエータより盛り上がって位置し、かつ、前記解放可能なロックを解放するためにユーザによりアクセス可能であるボタン部を含む、請求項10又は11に記載の器具。
【請求項13】
前記ボタン部は、前記アクチュエータの前記上部に設けられている、請求項7に従属する場合の請求項12に記載の器具。
【請求項14】
それぞれの顎部材は、前記支持部材の前記周辺部にて、又は該周辺部に隣接して前記カップ係合肢部に接続され、かつ、該顎部材が前記アクチュエータの外面により作用されることができる前記支持部材の縁部から内方に延在する内面を有する制御肢部を含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の器具。
【請求項15】
前記アクチュエータは、ハンドルを前記器具に解放可能に取り付けることができる取付構造を含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載の器具。
【請求項16】
組立体であって、
請求項1〜15のいずれか一項に記載の器具と、
整形外科用関節プロテーゼの寛骨臼カップ部品であって、外部側壁及び前記寛骨臼カップ部品の前記外部側壁上の窪みを有する、寛骨臼カップ部品と、
を備える、組立体。
【請求項17】
前記窪みは、前記寛骨臼カップ部品の周り全体に、かつ、前記寛骨臼カップ部品の上縁部に隣接して延在する、請求項16に記載の組立体。
【請求項18】
前記窪みは、前記寛骨臼カップ部品の前記外部側壁の内方傾斜部分により画定されている、請求項16又は17に記載の組立体。
【請求項19】
前記支持部材は、前記寛骨臼カップ部品の上縁部に、その全長にわたって係合する第1の面を有する、請求項16〜18のいずれか一項に記載の組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、整形外科用関節プロテーゼのカップ部品を位置決めする器具に関する。
【背景技術】
【0002】
特定の整形外科用関節プロテーゼは、概ね半球中空領域を画定する内面を有する中空カップ、及び、カップ部品に対する関節接合に向けて中空領域において受容することができる球面部を有する別の部品を含む。そのような関節プロテーゼとしては、股関節プロテーゼ及び肩関節プロテーゼを挙げることができる。カップの外部は、該部品が埋め込まれるべき患者の骨の用意された表面に接触することになる。カップの内部は、関節プロテーゼの他方の部品の球凸面部に対する平滑な支え面を提示することになる。支え面は、単体カップ部品により提供することができる。あるいは、カップ部品は、患者の骨の調製された表面に接触する外殻部、及び、支え面を提供し、かつ、外殻部に嵌入する支え部を含むことができる。支え部は、外殻部の材料と異なる材料から作製することができ、支え部は、ポリマー材料(ポリエチレンなどの)又はセラミック材料から作製することができ、外殻部(そして、他方の部品の球凸面部)は、金属(コバルトクロム系合金、又は、ステンレス鋼、又は、チタン系合金など)から作製することができる。
【0003】
整形外科用関節プロテーゼの部品が患者の骨において正確に位置決めされていることが重要である。場所及び位置合わせは、重要である。部品の正確な位置決めには、部品は、適切な器具により係合され、かなりの力を必要な場合に、及び、必要に応じて(例えば、衝撃子器具を使用して)部品に印加することができることが必要とされる。しかしながら、部品の外面又は内面、又はその両方、該部品に平滑な研磨支え面が既に施されているときには特に内面を器具と接触させないことが重要である可能性がある。その表面を擦過するか、又は、その他の方法で損傷すると、プロテーゼの支持性が弱まる可能性がある。
【0004】
米国特許第5171243号−では、股関節プロテーゼ際において使用される寛骨臼カップが開示されている。カップは、円周溝が内面に刻設された外殻を含む。溝は、カップが器具上で保持されているように、挿入用具の自由端にてフランジを受容することができ、外殻が器具を使用して操作されることを可能にする。溝付き外殻部は、関節プロテーゼの別の部品の支え面が関節接合することができる平滑な内面を有する支え部を受容する。外殻部は、骨接合用ねじが骨の表面に外殻部を固着するために延在することができるその壁部を通って延在する締結孔を有することができる。
【0005】
国際公開第2008/099242号では、整形外科用関節プロテーゼのカップ部品を握持する器具が開示されている。器具は、中央駆動軸から半径方向に延在する複数の顎部材を有する。顎部材は、該部材がカップ部品の外壁に係合するように半径方向に内方にスライドさせることができる。顎部材のそれぞれは、ドライブプレート上の螺旋状トラック内で受容されている一端にてピンを有する。顎部材は、ドライブプレートを回転させることにより、半径方向にスライドさせられる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、支持部材に取り付けられた顎部材を含み、かつ、係合位置と係合解除位置との間で支持部材に対して枢動することができる整形外科用関節プロテーゼのカップ部品を位置決めする器具を提供する。
【0007】
したがって、本発明は、支持部材の周辺部周りに複数の顎部材を有する支持部材を含む整形外科用関節プロテーゼの中空カップ部品を位置決めする器具を提供する。顎部材は、周辺部周りに支持部材と一体的に又は一体式に形成することができる。顎部材のそれぞれは、カップ部品の外部側壁上で窪み内で受容されているために第1の方向に支持部材から延在するカップ係合肢部を有することができる。それぞれの顎部材は、カップ係合肢部が内方に変位される係合位置と、カップ係合肢部が外方に変位され、カップ部品が顎部材間から除去されることを可能にする係合解除位置との間で枢動可能とすることができる。器具は、アクチュエータが全ての顎部材を係合位置に付勢するために全ての顎部材に作用する係合構成、又は、アクチュエータが顎部材を係合位置に付勢するために顎部材のいずれにも作用せず、全ての顎部材が係合解除位置採用することができる係合解除構成、を採用するように作動可能である、アクチュエータを更に含むことができる。
【0008】
支持部材の一体式又は一体的部分として複数の顎部材を提供設置すると、器具の部品の数が低減され、その構造、動作が簡素化され、かつ、掃除しやすくなる。本発明の器具は、作製部品数が小さいという利点を有する。更に、部品からの器具の組み立てが単純であり得る。これらの利点所は、器具が単純にかつローコストで製造することができることを意味する。
【0009】
機器は、少なくとも2つの顎部材、例えば3つの顎部材及び好ましくは3つより多い顎部材を有することができる。顎部材は、例えば、器具が3つの顎部材を有するとき、隣接顎部材間の角度は120°であるように支持部材周りで等しく離間されることが、時には好適になる。顎部材のそれぞれは、係合位置と係合解除位置間で枢動することができるように支持部材上に取り付けられ、アクチュエータは、顎部材のそれぞれを係合位置と係合解除位置との間で移動させるために顎部材に作用することが、一般に好適になる。
【0010】
器具は、その周辺部の少なくとも一部周りに提供された顎部材のアレイを有することができる。アレイの顎部材の間の間隔は、顎部材のそれぞれの幅を下回ることができる。器具は、アレイにおいて、少なくとも10個の顎部材、又は少なくとも20個の顎部材、又は少なくとも30個の顎部材、又は少なくとも40個の顎部材を有することができる。アレイの顎部材は、機器の周辺部周りで、好ましくは、機器の周辺部全体周りでほぼ均一に離間させることができる。
【0011】
顎部材は、支持部の周辺部全体周りで提供するか、又は、周辺部周りの顎部材の複数のグループとして提供することができ、顎部材を有しない領域が、顎部材の隣接グループ間で提供される。それぞれのグループは、1つの顎部材又は複数の顎部材を有することができる。少なくとも2つのグループ、好ましくは少なくとも3つのグループが提供され得る。
【0012】
顎部材の全て未満が支持部材に対して枢動することができる場合、カップ部品からの器具の分離は、カップ部品に対する器具の横方向の移動を必要とすることがあり得る。しかしながら、顎部材のそれぞれが枢動可能であることが好ましい。これは、カップ部品からの器具の分離を促進することができる。
【0013】
支持部材は、力がカップ部品の内部への又は該内部の方の方向に支持部材を介してカップ部品に印加することができるようにカップ部品に係合することができるべきである。支持部材は、カップ部品の開口面にてカップ部品の縁と係合することができる。
【0014】
支持部材の横断寸法は、カップ部品の横断寸法を上回らないことが好ましい。これは、支持部材が、カップ部品の視野を完全にマスキングしないことを意味する。また、支持部材が、カップ部品が埋め込まれる部位の近傍の硬骨組織に当たらないことになることも意味する。
【0015】
支持部材は、カップ部品上に取り付けることができるプレートの形態とすることができる。プレートは、プレートを通って延在する開口部を有することができ、ユーザがカップ部品の内部を検査することを可能にする。支持部材は、複数の肢部の形とすることができる。
【0016】
複数の顎部材は、支持部材と一体式に又は一体的に形成することができる。例えば、顎部材は、顎部材が支持部材を有する単体として形成されるように、成型により支持部材と一体式に又は一体的に形成することができる。例えば、顎部材の1つ又は2つ以上は、成型作業において支持部材を設けることができる。成型作業は、リビングヒンジを形成することにより支持部材に対して枢動することができる顎部材を形成するために使用することができる。リビングヒンジは、周囲の材料と比較して局所的に肉薄である、顎部材及び支持部材が形成される材料のウェブ又は部分を提供することにより形成される。
【0017】
その又はそれぞれの枢動可能な顎部材は、支持部材の周辺部にて又は該周辺部に隣接してカップ係合肢部に接続されている制御肢部を含むことができ、かつ、該顎部材がアクチュエータにより作用される支持部材の縁部から内方に延在する。その又はそれぞれの枢動可能な顎部材が支持部材の周辺縁部にて又は該周辺縁部の方に支持部材上に取り付けられるとき、取り付け品は、カップ係合肢部と制御肢部との接続部にて又は該接続部に近接する可能性があり、カップ係合肢部は、支持部材の第1の面が導かれる方向に取り付け品から延在し、制御肢部は、(第1種レバーのように)支持部材の第2の面全体にわたって取り付け品から延在するようになっている。別の構造において、その又はそれぞれの枢動可能な顎部材は、(第3種レバーのように)カップ係合肢部から遠く離れている制御肢部の端部にて又は該端部の方に支持部材上に取り付けられ得る。
【0018】
その又はそれぞれの枢動可能な顎部材は、その係合位置の方向に付勢され得る。アクチュエータは、その後、係合解除位置の方向に顎部材を移動させるために顎部材に力を印加するために使用され得る。
【0019】
その又はそれぞれの枢動可能な顎部材は、係合解除位置の方向に付勢され得る。アクチュエータは、その後、係合位置の方向に顎部材を移動させるために顎部材に力を印加するために使用され得る。
【0020】
顎部材のための枢動がリビングヒンジにより提供されるとき、顎部材に対する付勢力は、リビングヒンジの材料により提供され得る。付勢部材は、必要であれば支持部材又は顎部材又はそれらのそれぞれとは別個の部品として提供することができる。付勢は、アクチュエータにより顎部材に印加され得る。
【0021】
アクチュエータは、支持部材に係合する第1のシャフト、及び、第1のシャフトに平行に延在するように、及び、その又はそれぞれの枢動可能な顎部材に係合するように配置される第2のシャフトを含むことができる。枢動可能な顎部材は、第1及び第2のシャフトの間の相対的移動により係合位置と係合解除位置との間で移動させることができる。
【0022】
第2のシャフトは、上部及び下部を有し得、下部は、その又はそれぞれの枢動可能な支持部材に係合し得る。上部及び下部は、上部及び下部間の窪みを画定し得る。窪みは、使用時にユーザの1つ又は2つ以上の母指又は、指状部を受容するようにサイズ決め、寸法決定、又は、その他の方法で配置され得る。窪みは、第1のシャフトの両側の第1の部分と第2の部分とを含み得る。第1及び第2の部分は、使用時にユーザの1対の指状部を受容するように配置され得る。窪みは、アクチュエータの長手方向中心軸線の一部周りに、又は、該長手方向中心軸線周り全体に延在し得る。
【0023】
アクチュエータは、付勢力下の変位に対してアクチュエータを係止する係止機構を含むことができる。例えば、アクチュエータは、第1のアクチュエータシャフトが第2のアクチュエータシャフトに対して移動されたとき、歯止めによって順次係合される複数の歯を含むラチェット機構を含むことができる。アクチュエータは、その後、ラチェット機構が解放することができる解除ボタンを含むことができ、アクチュエータの付勢部品が、顎部材に作用することを可能にする。解除ボタンは、アクチュエータの上部に提供することができる。解除ボタンは、アクチュエータの上部の最外面より盛り上がって延在することができる。
【0024】
アクチュエータは、付勢力下の変位に対してアクチュエータを係止するねじ付き機構を含むことができる。
【0025】
アクチュエータは、アクチュエータ上に取り付けられたとき、アクチュエータ及びカップ部品を操作することができるハンドルを含むことができる。第1のシャフト又は第2のシャフトは、ハンドルを提供することができる。第1のシャフトがハンドルを提供することが好適になることが多い。ハンドルは、アクチュエータの一部とすることができる。ハンドルは、例えば、ねじ付き接続の手段により、又は、バイオネット接続の手段によりアクチュエータに接続することができる別個の部品として提供することができる。
【0026】
アクチュエータは、患者の骨において(例えば、患者の寛骨臼において)用意された空洞内に完全にカップ部品を着座させるために篏入力を印加することができる篏入面を有することができる。篏入面は、アクチュエータに向けてハンドル上で提供することができる。
【0027】
器具の構成部品は、ポリマー材料又は金属材料から、又はポリマー材料及び金属材料の両方から作製することができる。適切なポリマー材料としては、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリエーテルエーテルケトン及びアセタールなどのエンジニアリングポリマーが挙げられる。--適切な金属としては、特定のステンレス鋼、チタン及び、その合金が挙げられる。器具の構成部品の少なくとも一部に対するポリマー材料の使用は、例えば成型による、低コスト化及び製造の容易さという長所がある。
【0028】
多くの用途については、カップ部品は、極軸周りで回転対称になる。カップ部品が球の一部の形状を有することは、好適になることが多い。知られているように、人工股関節置換処置において患者の寛骨臼に嵌合されるべきカップ部品の縁は、角度を球の中央にて少なくとも140°、例えば少なくとも150°、又は少なくとも160°、又は少なくとも170°の輪郭を示すことが多い。寛骨臼カップ部品の縁は、円形になることが多いが、時には、縁は、転位のリスクを低減するために、例えば片側で拡張部を有することができる。カップ部品の縁が円形であるとき、縁は、少なくともカップ部品の周辺部の50%周りで平面とすることができる。縁により画定された平面は、部品の極軸に垂直とすることができる。
【0029】
肩プロテーゼの関節部品は、一般的に、人工股関節のカップ部品より浅くなり、縁は、円形ではないことがあり得る。
【0030】
カップ部品の骨対向面は、硬骨組織との接触に向けて適合させることができる。例えば、部品の表面への骨の方向相互作用(例えば骨内殖)の結果として硬骨組織に結合するように適合させることができるか、又は、骨セメント材により組織に結合するように適合させることができる。
【0031】
カップ部品は、顎部材の各部を受容することができる、周辺部周りに配置された複数の離散的窪みを有することができる。カップ部品が周辺部周りに配置された離散的窪みを有するとき、窪みの数は、顎部材の数を下回るべきでない。窪みの数及び窪み間の間隔は、顎部材の数及び顎部材間の間隔に対応するべきであることが多い。
【0032】
カップ部品は、例えば、カップ部品の少なくとも一部周りに延在する溝の形で、該部品内で受容されている指状部の幅よりも長い窪みを有することができる。溝は、カップ部品の周辺部全体周りに連続的に延在することができる。
【0033】
カップ部品の内面は、表面が支えの関係で嵌め合い部品の凸面と協働することを可能にする平滑面を有することができる。あるいは、カップ部品は、カップ部品を外殻とみなすことができるように平滑な支え面を有するライナーを受容するように構成することができる。
【0034】
本発明は、また、本発明による器具及び整形外科用関節プロテーゼの中空カップ部品を含む、整形関節に取って代わるために外科的処置において使用される組立体を提供する。器具の顎部材のそれぞれの一部は、カップ部材壁部の窪みで受容することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
本発明の実施形態をあくまで一例として、及び、添付図面を参照して以下で詳細に説明する。
図1】整形外科用関節プロテーゼの中空カップ部品と組み合わせた器具の実施形態を含む組立体の等角図である。
図2図1に示す組立体の断面等角図である。
図3図1及び図2に示す組立体の中空カップ部品の断面等角図である。
図4図1及び図2に示す器具の支持部の断面等角図である。
図5図1及び図2に示す器具のアクチュエータの第1のシャフト部材の断面等角図である。
図6図1及び図2に示す器具のアクチュエータの第2のシャフト部材の断面等角図である。
図7図1及び図2に示す器具のアクチュエータの解除ボタンの等角図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図面を参照すると、図1及び図2は、整形外科用関節プロテーゼの中空カップ部品を位置決めする器具200及びカップ部品202の組立体100の斜視図及び断面斜視図を、それぞれ示す。器具は、股関節プロテーゼの寛骨臼カップ部品を患者寛骨臼の用意された空洞内に位置決めするのに使用することができる。
【0037】
図3図7は、器具200及びカップ部品202の様々な部分の斜視図及び断面斜視図を、それぞれ示す。
【0038】
器具200は、支持部材204を含み、該支持部材の断面斜視図は、縁部にて複数の顎部材208を有し、かつ、円板206の周辺部全体周りに延在する円板206の形で図4に示される。支持部材204及び複数の顎部材208は、一体型構造を有し、顎部材は、ピボット機構によって取り付けられている別個の部分であることよりもむしろ、支持部材の不可欠の部分として提供される。顎部材のそれぞれは、内向きの指状部212が端部にあって、カップ部品に向けてプレートから延在するコップ係合肢部210を有する。顎部材のそれぞれは、カップ部品から離れるようにプレートから延在する制御肢部214を有する。制御肢部は、内方に傾動される。顎部材が円板に対応する領域207は、ライブつまりリビングヒンジつまりスプリングを提供する。ライブヒンジもまた、スプリング入りか、つまり弾性ヒンジであり得、かつ、顎部材を好適な方向に付勢し得る。ライブスプリング207は、支持部材のディスク206の残りよりも薄い部分を生成するために、例えば、支持部材204の幾何学的及び/又は材料特性により、又は、材料機械加工又は成型により製造され得る。他の実施形態において、ライブスプリングは、リブを組み込むことにより、又は、鋼製エレメントを含むことにより、例えば、ライブスプリングの弾性を提供する一助となるように配置された鋼製エレメント又はエレメント類上へ支持部材の材料をオーバーモールド成型することにより実行することができる。
【0039】
アクチュエータ216は、第1のシャフト218を含み、該シャフトの断面斜視図が、図5に示されており、該シャフトは、遠位端222に向かって外方にフレア状である。第1のシャフトは、外面に、かつ、近位端に向かって形成された複数の環状歯224を有する。遠位に導かれるそれぞれの歯の面、例えば、面225は、アクチュエータの縦軸に傾動される。第1のシャフト218は、近位端にて該シャフト内に中央に形成されたねじ穴226を有し、該ねじ穴は、ハンドル(図示せず)上でねじ付き突出部を受容することができる。ハンドルは、アクチュエータの組立体100及び該組立体と係合されたカップ部品を操作するために使用することができる。ハンドルは、篏入面を有することができる。
【0040】
アクチュエータ216は、第2のシャフト220を含み、該シャフトの断面斜視図が、図6に示されており、該シャフトは、第1のシャフトが受容されてスライドすることができる、該シャフトを通って中央に延在する内径部228を有する。第2のシャフトは、遠位端にて周辺フランジ230を有し、該周辺フランジは、制御肢部とプレート206との間で顎部材208上の制御肢部214の下で嵌合する。
【0041】
第2のシャフトは、近位端にてカラー229を有し、カラーは、該カラー内に形成されたスロット232を有し、かつ、アクチュエータの縦軸に垂直に延在する。スロット232は、片側の部分233にわたって開いている。解除ボタン234は、スロットに嵌合されている。解除ボタン234は、斜視図が図7に示されており、概ねリングの形を有し、該ボタンを通って延在する開口部238を有するプレート236を含む。歯240は、解除ボタン上に設けられている。ボタン234は、外方にスロットのボタンを付勢するためにカラー216においてスロット232の盲端部235にて壁部に当接して作用することができる1対の可撓かつ弾性指状部242を有する。カラー229は、1対の指状部242の反対側に直径に沿って底部の部分237を露出させるように切れ取られ、かつ、解除ボタンをユーザによって操作することができる部分を有する。
【0042】
器具200は、整形外科用関節プロテーゼのカップ部品202の縁250上に着座するように、円板206を位置決めすることによる使用に向けて準備される。カップ部品は、その外面上に、縁250にてリップ部256を画定する環状窪み254を有する。顎部材208のカップ係合肢部210は、カップ部品の外面の環状窪みの外方に半径方向に位置決めされ、内向きの指状部212は、リップ部256より下方にある。いくつかの実施形態において、顎部材は、係合解除位置の方にライブスプリングにより付勢することができ、顎部材208の指状部212は、器具を簡単にカップ202の縁250に提示して、該肢部に載置することができるようにリップ部256に係合しないようになっている。
【0043】
第1のシャフト218は、円板206の方の方向に第2のシャフト220に対して変位されている。これは、周辺フランジ230とカラー229との間で、第2のシャフトのカラー229の両側に第1及び第2の指を位置決めして、第1のシャフトの近位端上に母指を位置決めすることによりユーザによって達成することができる。第1のシャフトは、その後、第1及び第2の指で引き上げながら、母指で押し下げることによって変位される。
【0044】
第2のシャフトに対する第1のシャフト218の変位により、結果的に、周辺フランジ230は、支持板206が第1のシャフトのフレア状遠位部により与えられた力に反力を与えるときに制御肢部214に押上げ力を印加する。制御肢部214に印加された押上げ力は、顎部材208を、該顎部材が円板206に接続されている時点にてライブヒンジ周りに枢動させることをもたらし、カップ係合肢部210は内方に変位され、カップ係合肢部上の内向きの指状部212は、カップ部品の縁上のリップ部256の下で嵌合するようになっている。
【0045】
第2のシャフト220の内径部228を通る第1のシャフト218の近位端の移動は、解除ボタン234を、第1のシャフト上の環状歯224が軸方向に動移動して解除ボタン上の歯240を通り過ぎたときに、スロットの閉鎖端を押し付ける可撓指状部242により与えられた付勢力に対してカラー216のスロット232においてスライドすることをもたらす。環状歯上の解除ボタンに対する歯240の作用は、ラチェット式であり、一方向の第2のシャフトの内径部を通る第1のシャフトの漸進的な動きを可能にするが、逆方向の移動を防止する。第2のシャフト220に対する第1のシャフト218の望ましくない動きを防止することは、(内方に導かれた指状部212がカップ部品上のリップ部256に係合するような)カップ係合肢部210の内方の変位が固定され、カップ部品が支持部材204と係合して係止されるようになっていることを意味する。カップ部品202は、その後、ねじ付き内径部226に螺入されることにより第1のシャフトに接続されているハンドルにより操作することができる。篏入力は、ハンドルを介してカップ部品に印加することができる。
【0046】
カップ部品が設置されて嵌入されると、ハンドルは、ねじ付きボア226から螺脱して廃棄することができる。カップ部品202から器具200を除去して組立体100を分解するために、ユーザは、再び、周辺フランジ230とカラー229との間で、第2のシャフトのカラー229の両側に第1及び第2の指状部を位置決めして、解除ボタン234の露出した部分237上に母指を位置決めする。可撓指状部242により掛けられた付勢力に対して解除ボタン234を押し付けることにより、解除ボタン上の歯240は、環状歯224間から引き抜かれる。第1のシャフト218は、その後、上向き方向に(カップ部品から離れるように)第2のシャフト220の内径部でスライドすることができ、顎部材208は、該顎部材が円板206に接続されているライブスプリング周りに枢動することを可能にし、制御肢部214は内方に移動し、カップ係合肢部210は外方に移動するようになっている。
【0047】
一部の実施形態において、ライブスプリング及び/又は顎部材は、カップ係合肢部及び特に内方に導かれた指状部212がカップのリップ部256から離脱される係合解除位置の方に付勢され、器具は、カップ部品から簡単に除去することができるようになっている。他の実施形態では、ライブスプリング及び/又は顎部材は、器具が全体に自由になり、例えば、落下するのを防止するために、カップ係合肢部及び特に内方に導かれた指状部212がカップのリップ部256と部分係合される部分係合位置の方に付勢されているが、小さい力だけで、器具は、ライブスプリング及び/又は顎部材が、リップ部256から解放するように屈曲するようにカップ部品から器具を引くことにより簡単に除去することができるようになっている。他の実施形態において、ライブスプリング及び/又は顎部材は、部分係合位置の方にも、係合解除位置の方にも付勢されない。
【0048】
〔実施の態様〕
(1) 整形外科用関節プロテーゼの中空カップ部品を位置決めする器具であって、
支持部材であって、前記支持部材の周辺部周りに一体的に形成された複数の顎部材を有し、前記顎部材のそれぞれは、前記カップ部品の外部側壁上の窪み内で受容されるように第1の方向に前記支持部材から延在するカップ係合肢部を有し、それぞれの顎部材は、前記カップ係合肢部が内方に変位される係合位置と、前記カップ係合肢部が外方に変位されて、前記カップ部品が前記顎部材間から除去されることを可能にする係合解除位置との間で枢動可能である、支持部材と、
アクチュエータであって、前記アクチュエータが全ての前記顎部材を前記係合位置に付勢するために全ての前記顎部材に作用する係合構成、又は、前記アクチュエータが前記顎部材を前記係合位置に付勢するために前記顎部材のいずれにも作用せず、全ての前記顎部材が前記係合解除位置を採用することができる係合解除構成、を採用するように作動可能である、アクチュエータと、
を備える、器具。
(2) 前記支持部材の前記周辺部周りに一体的に形成された少なくとも3つの顎部材を含む、実施態様1に記載の器具。
(3) 顎部材の少なくとも3つのグループを含み、顎部材のそれぞれのグループは、複数の顎部材を含み、顎部材のそれぞれのグループは、顎部材を含まない間隙により、前記支持部材の周辺部周りで顎部材の隣接グループから離間されている、実施態様2に記載の器具。
(4) それぞれの顎部材は、その係合解除位置の方向に付勢されている、実施態様1〜4のいずれかに記載の器具。
(5) それぞれの顎部材は、ライブヒンジ(live hinge)により前記支持部材に接続されている、実施態様1〜4のいずれかに記載の器具。
【0049】
(6) 前記アクチュエータは、前記支持部材に係合することができる第1のシャフトを含む第1の部分と、前記第1のシャフトに平行に延在するように配置された第2の部分とを含み、前記第1の部分は、前記第2の部分内にスライド受容されている、実施態様1〜5のいずれかに記載の器具。
(7) 前記第2のシャフトは、上部及び下部を有し、前記下部は、それぞれの枢動可能な支持部材に係合するように配置されており、前記上部及び下部は、それらの間に、使用時にユーザの1対の指を受容するように配置された前記アクチュエータの外側のアクチュエータ窪みを画定する、実施態様6に記載の器具。
(8) 前記アクチュエータ窪みは、前記第2のシャフトの両側の第1の部分と第2の部分とを含む、実施態様7に記載の器具。
(9) 前記アクチュエータ窪みは、前記アクチュエータの長手方向中心軸線周り全体に延在する、実施態様8に記載の器具。
(10) 前記アクチュエータは、前記係合構成で前記アクチュエータを係止するように作動可能な解放可能なロックを含む、実施態様1〜9のいずれかに記載の器具。
【0050】
(11) 前記解放可能なロックは、ラチェット機構である、実施態様10に記載の器具。
(12) 前記解放可能なロックは、前記アクチュエータより盛り上がって位置し、かつ、前記解放可能なロックを解放するためにユーザによりアクセス可能であるボタン部を含む、実施態様10又は11に記載の器具。
(13) 前記ボタンは、前記アクチュエータの前記上部に設けられている、実施態様7に従属する場合の実施態様12に記載の器具。
(14) それぞれの顎部材は、前記支持部材の前記周辺部にて、又は該周辺部に隣接して前記カップ係合肢部に接続され、かつ、該顎部材が前記アクチュエータの外面により作用されることができる前記支持部材の縁部から内方に延在する内面を有する制御肢部を含む、実施態様1〜13のいずれかに記載の器具。
(15) 前記アクチュエータは、ハンドルを前記器具に解放可能に取り付けることができる取付構造を含む、実施態様1〜14のいずれかに記載の器具。
【0051】
(16) 組立体であって、
実施態様1〜15のいずれかに記載の器具と、
整形外科用関節プロテーゼのカップ部品であって、外部側壁及び前記カップ部品の前記外部側壁上の窪みを有する、カップ部品と、
を備える、組立体。
(17) 前記窪みは、前記カップ部品の周り全体に、かつ、前記カップ部品の上縁部に隣接して延在する、実施態様16に記載の組立体。
(18) 前記窪みは、前記カップ部品の前記外部側壁の内方傾斜部分により画定されている、実施態様16又は17に記載の組立体。
(19) 前記支持部材は、前記カップ部品の縁の上縁部に、その全長にわたって係合する第1の面を有する、実施態様16〜18のいずれかに記載の組立体。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7