(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
血漿補充フィブリノゲンの調製方法、血漿補充フィブリノゲン、及び、シーラント製剤の成分の製造のための血漿補充フィブリノゲンの使用を本明細書に提供する。
【0007】
また、フィブリノゲン製剤の製造方法、フィブリノゲン製剤それ自体、及びそれを用いた使用、特に、組織シーラント製剤におけるフィブリノゲン成分としての使用を本明細書に提供する。
【0008】
一態様において、濃縮フィブリノゲン調製物と血漿源とを混合する工程を含む、フィブリノゲン製剤の調製方法を本明細書に提供する。濃縮フィブリノゲン調製物は、血液又は血漿中のフィブリノゲン濃度よりも高いフィブリノゲン濃度を含む調製物に関する(約2〜4mg/mlを超え、例えば最大200mg/ml)。濃縮フィブリノゲン調製物は、例えば、哺乳類起源(例えばヒト又は豚)から得ることができ、又は組換え体であってもよい。幾つかの実施形態では、濃縮フィブリノゲン調製物は、血液又は血液画分に由来する。幾つかの実施形態では、濃縮フィブリノゲン調製物は、ヒト血液又はヒト血液画分に由来する。
【0009】
本方法の様々な実施形態において、濃縮フィブリノゲン調製物中のフィブリノゲンの濃度は、約10mg/ml〜約200mg/ml、例えば、約10mg/ml〜150mg/ml、約20〜40mg/ml、約15〜40mg/ml、約20〜150mg/ml、約30mg/ml、又は約25〜120mg/mlである。幾つかの実施形態では、濃縮フィブリノゲン調製物は、クリオプレシピテートである。様々な実施形態において、クリオプレシピテートは、第VIII因子枯渇クリオプレシピテート(FDC)である。血漿源を含む溶液との混合後、フィブリノゲン濃度は、7mg/ml〜150mg/ml、約20〜40mg/ml、約15〜40mg/ml、約25〜120mg/mlの範囲内、又は約30mg/mlであってもよい。
【0010】
本方法の幾つかの実施形態では、血漿源は、例えば、動物血漿、例えば哺乳類血漿、好ましくはヒト血漿である。幾つかの実施形態では、血漿源は、プールした動物血漿、例えば、プールしたヒト血漿である。一実施形態において、血漿源は、クリオプア(cryo-poor)血漿である。クリオプア血漿は、クリオプレシピテートが除去された、プールした血漿である。典型的には、血漿は、増殖因子を含む。一実施形態において、血漿源及び/又はフィブリノゲンは、非自己である。特定の実施形態では、血漿は、血小板に富んだ(reach)血漿ではない。
【0011】
用語「血小板に富んだ血漿」(PRP)は典型的に、限られた体積の血漿中で濃縮された血小板を含むエクスビボ調製物に関する(Lacci KM,Dardik A.Platelet−rich plasma:support for its use in wound healing.Yale J Biol Med.2010.Mar;83(1):1〜9)。
【0012】
用語「自己」は、同一の個体に由来するか、又は一個体がドナー及びレシピエントの両方として関与することを意味する。
【0013】
一実施形態において、血漿は、トロンビンを含まない、かつ/又は因子枯渇血漿である。
【0014】
「因子枯渇血漿」は、本明細書では、第II因子、第X因子、第V因子などの1つ又は2つ以上の凝固因子が枯渇した血漿に関する。
【0015】
「第II因子枯渇血漿」若しくは「第II因子欠乏血漿」又は「プロトロンビン欠乏血漿」は、第II因子又はプロトロンビンが枯渇した、プールした正常なヒト血漿から製造される。残留するプロトロンビンの活性は、例えば10%以下、又は1%以下であり得る。
【0016】
用語「トロンビンを含まない血漿」は、凝固時間アッセイ又は発色性アッセイによって、例えば2IU/ml以下の、又は検出できないトロンビン活性を有する血漿に関する。
【0017】
様々な実施形態において、濃縮フィブリノゲン調製物と血漿源とは、約3:1〜約1:3(w/v、v/v、又はw/w)、約2:1〜約1:2(w/v、v/v、又はw/w)、又は約1:1(w/v、v/v、又はw/w)の比で混合される。
【0018】
別の態様では、血漿で補充されたフィブリノゲン調製物を含むフィブリノゲン製剤を提供する。幾つかの実施形態では、フィブリノゲン製剤は、濃縮フィブリノゲン調製物と血漿源とを混合することにより調製される。濃縮フィブリノゲン調製物は、血液又は血漿中のフィブリノゲン濃度よりも高い、例えば約2〜4mg/mlを超え、例えば最大200mg/mlのフィブリノゲン濃度を含む調製物に関する。濃縮フィブリノゲン調製物は、例えば、哺乳類起源(例えばヒト又は豚)から得ることができ、又は組換え体であってもよい。幾つかの実施形態では、濃縮フィブリノゲン調製物は、血液又は血液画分に由来する。幾つかの実施形態では、濃縮フィブリノゲン調製物は、ヒト血液又はヒト血液画分に由来する。
【0019】
様々な実施形態において、濃縮フィブリノゲン調製物中のフィブリノゲンの濃度は、約10mg/ml〜約200mg/ml、例えば、約10mg/ml〜150mg/ml、約20〜40mg/ml、約20〜150mg/ml、約30mg/ml、又は約25〜120mg/mlである。幾つかの実施形態では、濃縮フィブリノゲン調製物は、クリオプレシピテートである。様々な実施形態において、クリオプレシピテートは、第VIII因子枯渇クリオプレシピテート(FDC)である。血漿源を含む溶液との混合後、フィブリノゲン濃度は、7mg/ml〜150mg/ml、約20〜40mg/ml、約15〜40mg/ml、約25〜120mg/mlの範囲内、又は約30mg/mlであってもよい。
【0020】
幾つかの実施形態では、血漿源は、動物血漿、好ましくは哺乳類血漿、例えばヒト血漿である。幾つかの実施形態では、血漿源は、プールした動物血漿、例えばプールしたヒト血漿(例えばクリオプア血漿)である。様々な実施形態において、濃縮フィブリノゲン調製物と血漿源とは、約3:1〜約1:3(w/v、v/v、又はw/w)、又は約2:1〜約1:2(w/v、v/v、又はw/w)、又は約1:1(w/v、v/v、又はw/w)の比で混合される。
【0021】
幾つかの実施形態では、フィブリノゲン製剤は、液体形態である。幾つかの実施形態では、フィブリノゲン製剤は、薬学的に許容される担体を含む。一実施形態において、製剤中のフィブリノゲン濃度は、50〜120mg/mlの範囲内である。別の態様では、製剤中のフィブリノゲン濃度は、50〜90mg/ml又は55〜85mg/mlの範囲内、約70mg/ml、7mg/ml〜150mg/ml、約20〜40mg/ml、約15〜40mg/ml、約25〜120mg/mlの範囲内、又は約30mg/mlである。
【0022】
フィブリノゲン製剤は、例えばS/D処理、低温殺菌及び/又は濾過によって、無菌でありかつ病原体を含まないことが好ましい。様々な実施形態において、フィブリノゲン製剤は、凍結乾燥される。
【0023】
別の態様では、血漿補充フィブリノゲン製剤を保持する容器を提供する。この容器は、例えば、アンプル、バイアル瓶又は注射器であってもよい。容器は、例えば、ガラス、金属又はプラスチック製であってもよい。
【0024】
別の態様では、本明細書で上記に開示した血漿補充フィブリノゲン製剤を含むアンプル、バイアル瓶又は注射器などの容器を含むキットを提供する。任意にキットは、トロンビン成分及び/又は使用説明書を含む。幾つかの実施形態では、濃縮フィブリノゲン調製物を有する容器と、血漿を有する容器とを含むキットを提供する。キットは、トロンビン成分及び/又は使用説明書を更に含んでもよい。キットは、少なくとも1つの容器及び少なくとも1つのラベルを含んでもよい。好適な容器の例としては、アンプル、バイアル瓶、注射器及び試験管が挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
本明細書で上記に開示した血漿補充フィブリノゲン製剤は、移植片固定、創傷治癒、修復、再建、及び吻合部位の封止を含むがこれらに限定されない、例えば止血、治癒、及び/又は手術用のシーラントの形成において有用である。フィブリノゲン製剤はまた、形成手術、例えば腹壁形成術、皮膚及び内部器官移植片固定、組織治癒、やけど処置、及び/又は創傷出血の軽減のためのシーラント中に使用されてもよい。そのようなシーラントは、更に、例えば頭蓋又は脊髄手術におけるデュラシーリング(dura sealing)に有用である。
【0026】
したがって、一態様において、必要のある対象における表面に対する止血処理、移植片固定、創傷治癒及び/又は吻合の提供方法であって、治療的有効量の血漿補充フィブリノゲン製剤を表面に適用することを含む、方法を提供する。本方法は、腹壁形成術、組織治癒、やけど処置、及びデュラシーリングを含むが、これらに限定されない。対象は、動物、例えばヒト対象を含む哺乳類対象であってもよい。
【0027】
別の態様では、治癒、止血及び/又は手術における使用のための血漿補充フィブリノゲン製剤を提供する。この使用には、移植片固定、創傷治癒、吻合、腹壁形成術、組織治癒、やけど処置、及びデュラシーリングが含まれるが、これらに限定されない。
【0028】
別の態様では、血漿補充フィブリノゲン成分及びトロンビン成分を表面に適用することを含む、表面におけるシーラントの形成方法を本明細書に提供する。
【0029】
別の態様では、シーラントの形成方法を本明細書に提供する。本方法は、血漿補充フィブリノゲンを使用することを含む。
【0030】
更なる別の態様では、濃縮フィブリノゲン調製物を血漿源と混合する工程を含む、シーラント製剤用の成分の製造方法を本明細書に提供する。
【0031】
シーラント製剤は、一成分シーラント製剤、又は二成分若しくはそれよりも多くの成分のシーラント製剤などの多成分シーラント製剤であってもよい。一成分シーラント製剤の例としては、米国特許第5318524号、同第8367802号、同第6262236 B1号、同第6268483 B1号、同第6268483A号、同第6500427 B1号が挙げられる。一実施形態において、一成分シーラントは、フィブリンモノマー及び可逆的フィブリン重合遮断剤を含む安定液体シーラント製剤である。一実施形態において、単一成分シーラント製剤は、フィブリノゲン、並びに第II因子(FII)及び第X因子(FX)などのビタミンK依存性凝固チモーゲンを含む。
【0032】
表面は、対象における出血又は非出血表面であってもよい。表面はまた、例えば、身体表面、外部若しくは内部身体器官、血管、又は移植組織若しくは器官であってもよい。対象は、動物、例えばヒト対象を含む哺乳類対象であってもよい。
【0033】
特定の実施形態では、本発明の様々な態様における血漿源は、クリオプレシピテートではない。
【0034】
本発明のこれら及び他の態様並びに実施形態は、以下の本発明の詳細な説明及び図面を参照して明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明は、濃縮フィブリノゲン調製物を血漿で補充することにより、特に生物学的シーラントの成分として有用な、安定なフィブリノゲン製剤が得られるという予想外の発見に部分的に基づいている。今まで、フィブリノゲン又はフィブリノゲン含有画分を血漿から単離して、組織シーラント中で使用するためのフィブリノゲン製剤を生成していたため、血漿源を濃縮フィブリノゲン調製物に添加することを含む、フィブリノゲン製剤の製造は直感に反しており、例えばプロテアーゼによる、製剤の汚染が考えられていた。更に、血漿補充フィブリノゲン製剤は、非補充フィブリノゲン製剤と比較して、驚くべき安定性を呈する。
【0037】
フィブリノゲン製剤の安定性は、例えば、製剤のゲル分離パターンの観察、Claussによる経時的なフィブリノゲン濃度の比較、又は製剤が凝塊を形成する能力、によって決定することができる。
【0038】
本明細書には、濃縮フィブリノゲン調製物と血漿源とを混合する工程を含むフィブリノゲン製剤の製造方法、血漿補充フィブリノゲン製剤それ自体、及び血漿補充フィブリノゲン製剤の使用方法を開示する。
【0039】
本明細書で使用されるとき、不定冠詞「a」及び「an」は、文脈が明確にそうでない旨を表さない限り、「少なくとも1つの」又は「1つ又は2つ以上の」を意味する。
【0040】
本明細書で使用されるとき、用語「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する」、及びその文法的変形は、記載される特徴、工程、又は成分を特定するものとして理解されるが、1つ又は2つ以上の更なる特徴、工程、成分、又はこれらの群の追加を排除するものではない。
【0041】
数値の前に用語「約」が記載されている場合、用語「約」は、+/−10%を示すことを意図する。用語「g」はグラムを指し、「mg」はミリグラムを指し、「ml」はミリリットルを指す。
【0042】
本明細書で使用されるシーラントという用語は、糊という用語と交換可能である。
【0043】
「濃縮フィブリノゲン調製物」は、血液又は血漿中のフィブリノゲン濃度よりも高い、例えば約2〜4mgフィブリノゲン/mlを超え、最大約200mgフィブリノゲン/mlのフィブリノゲン濃度を含む、調製物に関する。濃縮フィブリノゲン調製物は、例えば、約20〜40mg/ml、約15〜40mg/ml、約10〜200mg/ml、10〜150mg/ml、20〜150mg/ml、約30mg/ml、又は約25〜120mg/mlを含む。濃縮フィブリノゲン調製物は、任意の起源、例えば、哺乳類起源から(例えば、ヒト血漿又は豚血漿から)調製されてもよく、又は組換え体であってもよい。幾つかの実施形態では、濃縮フィブリノゲン調製物は、クリオプレシピテートである。血漿源を含む溶液との混合後、フィブリノゲン濃度は、7mg/ml〜150mg/ml、約20〜40mg/ml、約15〜40mg/ml、約25〜120mg/mlの範囲内、又は約30mg/mlであってもよい。
【0044】
本発明の一実施形態では、「濃縮フィブリノゲン調製物」は、精製フィブリノゲン調製物である。精製フィブリノゲン調製物は、フィブリノゲンを含む出発組成物から得られ、出発組成物を1つ又は2つ以上の精製工程(クロマトグラフィー工程、又は沈殿工程など)に供して、出発組成物と比較してフィブリノゲンが豊富にされた調製物をもたらす。
【0045】
用語「クリオプア血漿」は、クリオプレシピテートが除去された、プールした血漿を指す。
【0046】
機能性フィブリノゲンの濃度は、欧州薬局方、フィブリンシーラントキット1997;0903:858、及びClauss A.Gerinnungsphysiologische Schnellmethode zur Bestimmung des Fibrinogens.Acta Haematol.1957;17:237〜246に詳論されている欧州薬局方アッセイ(0903/1997)手順の修正により、凝塊を形成する能力により、又は当該技術分野において既知の他の方法により、測定されてもよい。
【0047】
用語「クリオプレシピテート」は、全血、回収された血漿、又は血漿交換により収集された血漿から調製された凍結血漿から得られる、血液成分を指す。クリオプレシピテートは、凍結血漿を低温、典型的には0〜4℃の温度でゆっくり解凍すると、フィブリノゲン及び第XIII因子を含有する沈殿物が形成されることで得ることができる。この沈殿物は、例えば遠心分離によって、収集することができる。
【0048】
沈殿物は、FVIIIの製造プロセスからの副産物であってもよく、本明細書では「FDC」、例えば酸沈殿物、冷却沈殿物、水酸化アルミニウム沈殿物(例えば、米国特許第4,455,300参照)、グリシン沈殿物(例えば、米国特許第4,297,344号参照)、エタノール沈殿物及びヘパリン沈殿ペーストと称される。
【0049】
用語「副産物」は、通常、産業的又は生物学的プロセスの過程において、所望の物質/生成物に加えて生成又は形成される、所望でない及び/又は意図されない及び/又は不使用の物質及び/又は残留物質を指す。
【0050】
用語「沈殿物」及び「沈殿画分」は、交換可能である。
【0051】
一実施形態において、沈殿物は、水酸化アルミニウム沈殿物である。有利には、沈殿物が水酸化アルミニウムを含む場合、この水酸化アルミニウムは、例えば遠心分離及び/又は濾過により、特定のプロテアーゼと共に、浮遊沈殿物から容易に除去することができる。
【0052】
本発明の一実施形態では、濃縮フィブリノゲン調製物は、血漿源を用いた補充の間、少なくとも部分的に可溶性、完全に可溶性、又は完全に不溶性である。
【0053】
「完全に可溶性」は、例えばいかなる固体粒子も有することなく、100%溶解していることを意味する。「部分的に可溶性」は、100%未満溶解していることを意味し、例えば濃縮フィブリノゲン調製物は、約5%〜100%未満溶解していてもよい。
【0054】
本発明の一実施形態では、濃縮フィブリノゲン調製物は、約50%〜約95%溶解している。
【0055】
「完全に不溶性」は、100%固体形態であることを意味する。
【0056】
本明細書に記載されるとき、濃縮フィブリノゲン調製物と血漿源とは、約3:1〜約1:3(w/v、v/v、又はw/w)、又は約2:1〜約1:2(w/v、v/v、又はw/w)、又は約1:1(w/v、v/v、又はw/w)の比で混合される。用語「w/v、v/v、又はw/w」は、濃縮フィブリノゲン調製物及び血漿源が、独立して、液体又は固体のいずれかであり得ることを意味する。
【0057】
シーラント製剤の製造方法を提供する。本方法は、濃縮フィブリノゲン調製物を血漿源と混合する工程を含む。
【0058】
シーラント製剤は、1つ又は2つ以上の成分を含んでもよい。
【0059】
シーラントは、血漿補充フィブリノゲンを含む1つの成分と、
トロンビンを含む他の成分とを含んでもよい。
【0060】
あるいは、シーラントは、血漿補充フィブリノゲン及びプロトロンビンを含む成分を含んでもよい。
【0061】
また、シーラントは、例えば低pH、又はGPRPなどの重合阻害剤を組成物に含めることによる、重合を阻害する条件下で、フィブリンモノマーを含む成分を含んでもよい。フィブリンモノマーは、例えば血漿補充フィブリノゲンを、ビーズに結合したトロンビンと接触させ、未結合画分を収集することにより、血漿補充フィブリノゲンから調製されてもよい。
【0062】
フィブリノゲン、トロンビン及び血漿は、フィブリン重合を阻害する条件下で接触させてもよい。
【0063】
血漿は、フィブリンモノマーを含む液体シーラント製剤を安定化させ、かつ/又は、重要な血漿タンパク質を該液体シーラント製剤に添加するために、使用され得る。
【0064】
フィブリンモノマーを含む血漿補充液体シーラント製剤を本明細書に提供する。更に、a)フィブリンモノマーと、b)可逆的フィブリン重合遮断剤とを含む、血漿補充液体シーラント製剤を本明細書に提供する。
【0065】
一実施形態において、可逆的阻害剤は、フィブリンモノマーに対して低親和性の阻害剤(例えばGPRPペプチド)、及びフィブリン重合又はフィブリン凝塊に対する永久的効果を有しない阻害剤に関する。したがって、典型的に、希釈及び/又は除去は、阻害効果を除去するであろう。
【0066】
可逆的フィブリン重合阻害剤の例としては、GPRPペプチド、pH、及びアプタマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0067】
本明細書で使用される用語「フィブリンモノマー」は、約20、21、22、23、24、及び25℃からなる群から選択される周囲温度で、フィブリンが水性液体溶液中に可溶形態で維持されるような数のフィブリン単位を有する、フィブリンモノマー、ダイマー及び/又はオリゴマーを含む。一実施形態において、オリゴマーは、最大10個のフィブリン単位を含む。
【0068】
本明細書で使用される用語「フィブリンポリマー」は、約20、21、22、23、24、及び25℃からなる群から選択される周囲温度で、水性液体溶液中のフィブリンの溶解度を制限する数のフィブリン単位を有する、複数のフィブリン単位を含む。
【0069】
また、必要のある対象に独立型製剤として投与することができる、血漿補充フィブリノゲン、及び/又はフィブリンモノマーを含む血漿補充液体シーラント製剤を本明細書に提供する。
【0070】
必要のある対象に投与することができる、フィブリンシーラント製剤を提供する。
【0071】
「血漿(plasma)」及び「血漿(blood plasma)」は、交換可能に使用されてもよく、特に、塩、酵素、免疫グロブリン(抗体)、凝固因子、並びにアルブミン、第VIII因子及びフィブリノゲンを含むタンパク質を含有する、血液の血漿画分を指し得る。「血漿源」は、分画からの血漿、プールした血漿、クリオプア血漿、回収された血漿、及び、血漿交換により収集されたヒト血液の流体部分である血漿であってもよい。一実施形態において、血漿は、トロンビン枯渇及び/又は因子枯渇血漿である。
【0072】
血漿は、血液の画分である。未分画の血液は、本願に定義される「血漿源」とは見なされない。
【0073】
「トロンビン」又は「トロンビンペプチド」は、別のセリンプロテアーゼ(第Xa因子)により、チモーゲン前駆体であるプロトロンビン(第II因子)を切断することによってもたらされる、セリンプロテアーゼである。「トロンビン」は、血液凝固カスケードの一部であり、フィブリノゲンをフィブリンの不溶性鎖に変換するとともに、他の凝固関連反応を触媒する。ヒトでは、プロトロンビンは、F2遺伝子によってコードされており、得られるポリペプチドは、凝固カスケードにおいてタンパク質分解的に切断されてトロンビンを形成する。トロンビンは、幾つかの止血製品において、特に、活性成分として機能する。例えば、フィブリンシーラントは、典型的に、フィブリノゲン成分及びトロンビン成分を含む。両成分を混合したとき(例えば、出血している創傷に塗布したとき)、トロンビンは、フィブリノゲンを切断し、フィブリンポリマーが形成される。
【0074】
長期間の保存のためには、フィブリノゲン製剤を滅菌バイアル瓶、アンプル、又は他の容器、例えば注射器若しくは他のアプリケータ内に等分し、これを次いで封止する。一実施形態では、シールを貫通する注射器を用いて製剤を取り出すことができる容器を用いる。容器は、薬学分野又は医療機器分野における標準的慣行に従ってラベルが付けられる。
【0075】
別の態様では、本明細書で上記に開示したフィブリノゲン製剤を含むアンプル、バイアル瓶又は注射器などの容器を含む、キットを提供し、任意に、キットは、トロンビン成分及び/又は使用説明書を含む。キットは、少なくとも1つの容器及び少なくとも1つのラベルを含んでもよい。好適な容器としては、例えば、アンプル、バイアル瓶、注射器及び試験管が挙げられる。容器は、例えば、ガラス、金属又はプラスチック製であってもよい。代替的な態様では、濃縮フィブリノゲン調製物を有する容器と、血漿を有する容器とを含むキットを提供し、任意に、キットは、トロンビン成分及び/又は使用説明書を含む。
【0076】
「周囲温度」は、フィブリノゲン製剤が維持されている環境内の温度である。
【0077】
フィブリノゲン製剤は、生物学的シーラントを形成するためのフィブリノゲン成分として使用されてもよい。使用に関しては、フィブリノゲン製剤は、個々の患者の必要性及出血の重症度に従って、容器から直接使用されてもよい。例えば、フィブリノゲン製剤は、トロンビン製剤と併用して出血組織に適用されて、止血を達成してもよい。あるいは、フィブリノゲン製剤は、単一成分シーラント製剤中で使用されてもよい。一実施形態において、単一成分シーラント製剤は、フィブリノゲン、並びに第II因子(FII)及び第X因子(FX)などのビタミンK依存性凝固チモーゲンを含む。
【0078】
本発明による製剤は、液体であっても、凍結又は凍結乾燥されていてもよい。
【0079】
本製剤の利点は多種多様であり、以下のうちの少なくとも1つであり得る。向上された安定性、向上された抗ウイルス活性、例えば抗B19特異的抗体の豊富化、改善された治癒特性、及び/又はフィブリンシーラントのための代替的な出発物質としての濃縮フィブリノゲン副産物調製物の効率的な使用。
【0080】
フィブリンシーラントは、一成分製剤、二成分又はそれよりも多くの成分の製剤から形成することができる。
【0081】
「薬学的に許容される担体又は希釈剤」は、製剤中の構成成分と適合し、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、又は他の合併症を伴うことなく、妥当な利益/危険性の比に見合って、人間及び動物の組織との接触における使用に好適な試薬、化合物、材料、組成物、希釈剤を指す。
【0082】
「表面」は、シーラント又は糊の形成が所望される位置又は場所である。表面は、シーラントの用途に依存する。シーラントは、例えば、止血、組織固定、移植片固定、創傷治癒及び吻合において使用され得る。本明細書に開示する製剤、方法、及びキットは、組織及び器官移植片固定のために、手術創の封止のために、止血の提供を含む脈管手術において、並びに動脈、胃腸管及び気管吻合などの吻合のために、内部的及び外部的に使用することができる。
【0083】
本明細書で使用される用語「動物」は、哺乳類及びヒト対象を含む。
【0084】
本明細書で使用される「対象」は、ヒトを含む、哺乳類起源の動物を含む。一実施形態において、対象は、手術患者、又は創傷患者である。
【0085】
「治療的有効量」は、対象におけるフィブリン封止効果、例えば封止、治癒、及び/又は失血の低減を提供する量を意味する。
【0086】
血液成分由来の生物学的物質は、典型的に、血液媒介病原体によりもたらされる潜在的な危険性を最小限にするために、感染性粒子から精製される。精製手順は、ナノ濾過、溶媒/洗剤(S/D)処理、熱処理、ガンマ線若しくはUVC(<280nm)照射などにより、又は当該技術分野において既知の任意の他の方法により実行することができる。
【0087】
用語「感染性粒子」は、微生物又はプリオンなどであるが、これらに限定されない、微細粒子を指し、これらは生物有機体に感染又は伝播し得る。感染性粒子はウイルス粒子であってもよい。感染性粒子の不活化手順は、手順前及び/又は手順中に、不活化分子を溶液に添加することによって行われ得る。添加した分子及びそれらの生成物は、重力、カラムクロマトグラフィー相分離により、又は当該技術分野において既知の任意の他の方法により除去できる。感染性粒子の除去は、濾過により、又はアフィニティ、イオン交換、若しくは疎水性クロマトグラフィーなどの選択的吸収法によって行われ得る。
【0088】
多工程のウイルス不活化手順を行ってもよい。例えば、以下のうちの2つ又は3つ以上、即ち、溶媒/洗剤処理、低温殺菌、選択的クロマトグラフィー及びナノ濾過、を組み合わせることによる。
【0089】
用語「ウイルス不活化」は、ウイルスが溶液中に維持されるが、(例えば、それらの脂質被覆を溶解することによって)生育不能にされる状況、及び/又は、(例えば、サイズ排除技法によって)ウイルスが溶液から物理的に除去される状況の両方を指す。
【0090】
「溶媒洗剤(S/D)処理」は典型的に、それらの脂質エンベロープを破壊することによって、エンベロープを持つ又は脂質被覆されたウイルスを不活化するプロセスを指す。処理は、洗剤(Triton X−45、Triton X−100又はTween 80など)及び溶媒[トリ(n−ブチル)ホスフェート(TnBP)、ジ−又はトリアルキルホスフェートなど]を添加することにより行ってもよい。脂質被覆ウイルスの不活化に使用される溶媒−洗剤の組み合わせは、TnBP及びTriton X−100、Tween 80及びコール酸ナトリウム、並びに他の組み合わせなどの、当該技術分野において既知の任意の溶媒−洗剤の組み合わせであってもよい。溶媒(複数可)及び洗剤(複数可)の濃度は、例えば、0.1%超のTnBP及び0.1%超のTriton X−100のような、当該技術分野において一般的に使用されるものであり得る。時には、1%Triton X−100及び0.3% TnBPの組み合わせが使用される。典型的には、溶媒−洗剤がウイルスを不活化する条件は、5〜8の範囲のpH値で10〜100mg/mLの溶媒−洗剤、及び2〜37℃の範囲の温度にて30分間〜24時間からなる。しかしながら、他の溶媒−洗剤の他の組み合わせ、及び好適な条件が、当業者には明らかとなろう。S/D処理において使用される溶媒−洗剤のバルクは、例えば、疎水性相互作用クロマトグラフィーカラム(HIC)、例えば、C−18シリカ充填材料及びSDR(溶媒−洗剤除去)HyperD、イオン交換マトリックスなどのタンパク質吸着マトリックス、アフィニティマトリックス、油抽出及び/又はサイズ排除マトリックスなどの、クロマトグラフィーカラムを使用することによって除去することができる。SDR HyperDは有利に、疎水性相互作用の混合モード吸着を伴い、分子排除効果に関連している[Guerrier L et al.「Specific sorbent to remove solvent−detergent mixtures from virus−inactivated biological fluids」。J Chromatogr B Biomed Appl.1995 Feb 3;664(1):119〜125]。
【0091】
「低温殺菌」は典型的に、熱が脂質エンベロープを持つ及びエンベロープを持たないウイルスの両方を破壊するプロセスを指す。「低温殺菌」は、用語「熱不活化」又は「熱処理」と交換可能である。熱不活化は、約60℃で約10時間行われてもよい。低温殺菌工程中、スクロース及びグリシンなどの安定剤を溶液中に添加してもよい。
【0092】
「ナノ濾過」は典型的に、例えばPlanova(商標)15N、20N、35N及び75N;Viresolve/70(商標)、Viresolve/180(商標)などのナノメートルスケールのフィルタを使用することによって、脂質エンベロープを持つ及びエンベロープを持たないウイルスを溶液から排除するプロセスを指す。フィルタは、70nm未満、好ましくは15〜50nmの孔径を有し得る。しかしながら、試料からウイルスを低減又は排除するのに十分な孔径を有する任意の膜を、ナノ濾過で採用することができる。ナノ濾過によって除去されるウイルスは、エンベロープを持つ(例えば、HIV、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、ウエストナイルウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタインバールウイルス(EBV)、単純ヘルペスウイルス(HSV))、及びエンベロープを持たない(例えば、A型肝炎ウイルス、パルボウイルスB19、ポリオウイルス)可能性がある。溶液は、限外濾過プロセスによって濃縮され得る。限外濾過に続いて、又は限外濾過の前に、緩衝液を交換するために透析濾過が行われ得る。限外濾過及び透析濾過による濃縮及び透析はそれぞれ、1つの工程において又は2つの別々の工程として行われ得る。透析濾過は、ヒト投与に好適である任意の溶媒又は緩衝液に対して行われ得る。
【0093】
以上又は以下に引用する出願、特許、及び刊行物の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0094】
以下の実施例は、本発明の特定の実施形態を示すが、本発明の範囲を限定するものではなく、本発明を十分に説明するのに寄与するものとして解釈すべきである。
【実施例】
【0095】
材料及び方法
第VIII因子枯渇クリオプレシピテート(FDC)の調製:
FVIII枯渇クリオプレシピテート(FDC)は、第VIII因子(FVIII)の製造プロセスの副産物である。製造プロセス中、低い塩濃度の条件下、14〜18℃の範囲内の温度でエタノールを添加した後、遠心分離することにより、フィブリノゲン、フィブロネクチン、第XIII因子、並びにプラスミン及び/又はプラスミノゲンなどのプロテアーゼが、再懸濁クリオプレシピテートから沈殿する。遠心分離工程に先立って、上記の再懸濁中に水酸化アルミニウム[Al(OH)
3]を添加することにより)、第II因子、第VII因子及び第X因子などのビタミンK依存性凝固因子が水酸化アルミニウムと共に沈殿する。水酸化アルミニウム沈殿物(即ち、FDC)を、第VIII因子含有上清から分離し、下記に記載する実験にて使用した。
【0096】
FDCは、以下のように得られた。血漿クリオプレシピテートを基本的に国際特許出願公開第93/05822号及び同第94/22503号に記載されているように調製した。
【0097】
手短には、凍結(−30℃)したヒト血漿を4℃で解凍することによりクリオプレシピテートを調製し、上清を除去した。このクリオプレシピテートを、使用まで−30℃に維持した。このクリオプレシピテートを0〜4℃で解凍し、3IU/mlヘパリンナトリウム(プロテアーゼ阻害剤)を含む2倍容積の水中に10〜20℃で再懸濁した。希釈酢酸を使用して、pHを7〜8に調整した。エタノールを添加して、最終濃度1%とした。希釈酢酸を使用してpHを6.8〜7.2に調整した。混合物を撹拌しながら10〜15℃の温度に冷却し、水酸化アルミニウムを添加した(1Kgクリオプレシピテート当たり108gの2%アルハイドロゲル溶液)後、14〜18℃にて17,000gで25分間遠心分離した。上清(第VIII因子を含む)を除去し、ペレットを収集した。この沈殿物(ペレット)、別名FDCは、特に、フィブリノゲン、第XIII因子、フィブロネクチン、プラスミン及び/又はプラスミノゲン、水酸化アルミニウム並びにビタミンK依存性凝固因子を含有した。ペレットはエタノールを含み(約1%エタノール)、7.2未満のpHを有した。ペレットを更なる処理まで−80℃に維持した。
【0098】
この沈殿物(FDC)を濃縮フィブリノゲン調製物の一実施例として使用した。
【0099】
フィブリノゲンレベルの決定:
凝固時間の試験によるフィブリノゲンレベルの決定(Clauss法)
【0100】
Clauss法は、欧州薬局方アッセイ0903/1997の修正であり、試験試料の凝固時間を評価する運動学的方法であるClauss法に基づいている。過剰のトロンビンの存在下、1%フィブリノゲン(Enzyme Research)を用いて較正曲線を準備し、試料のフィブリノゲン濃度を較正曲線から計算する。較正曲線を8mg/100ml〜32mg/100mlの範囲内でフィブリノゲンに関して生成した。試験試料の結果を試料の希釈倍数で乗算することにより、mg/mlフィブリノゲン単位で報告する。
試料のフィブリノゲン(mg/ml)=(較正曲線からのmg/100ml×希釈倍数)/100。
【0101】
実施例1:FDCから得られた濃縮フィブリノゲン調製物の血漿補充
非補充及び血漿補充フィブリノゲン試料を、以下のように調製した。120ml及び90mlの再懸濁緩衝液(0.7% NaCl、0.295%クエン酸三ナトリウムpH7.4)を、それぞれ2つの異なるビーカーA及びB内で34℃に予熱した。次いで、7.5mlの2%アルハイドロゲル[Al(OH)
3]及び2.25mlの、ビーズに結合したトラネキサム酸(TEA)(これは、概して国際特許出願公開第2013/001524号に開示されているように、特にFDC調製物からプラスミン及び/又はプラスミノゲンを除去する)を連続的に撹拌しながら各ビーカーに添加した。30mlのプールしたヒト血漿(クリオプア血漿)をビーカーB内の混合物に添加した。
【0102】
FDCを以下のように調製した。80gの凍結FDCを、ブレンダーを使用して20秒間の2サイクルで機械的に粉砕して小片(<1cm)とし、このサイクル間に20秒間の中断を有した。30gの粉砕FDCを、30〜32℃の温度で連続的に撹拌しながら各ビーカー(A及びB)に添加した。試料B中のFDCと血漿との比は、1:1(w/v)であった。10分後、0.1M NaOHを使用して混合物のpHを7.2〜7.3に調整し、この混合物を90分間撹拌しながら可溶化するに任せた。FDCが両方のビーカー内で可溶化すると、非再懸濁/非可溶化粒子を、17,000g/25分間の遠心分離により沈殿させた。上清を1.2μmフィルタを通した濾過により清澄化した。清澄化した上清を、最終濃度1mM CaCl
2及び120mMグリシンを有するように補充し、安定性(実施例2)及び抗B19抗体含有率(実施例4)に関してアッセイするまで、試料A及びB(上清)を−30℃以下で保存した。試料A及びB中のフィブリノゲン濃度は、15〜40mg/mlの範囲内であった。
【0103】
実施例2:FDCから得られた血漿補充濃縮フィブリノゲン調製物の安定性
上記の実施例1の非補充(A)及び血漿補充(B)フィブリノゲン試料を、以下のように、フィブリノゲン安定性に関して試験した。
【0104】
試料を室温20〜25℃で最大5日間維持した。Clauss法(以前に記載した)を用いて、フィブリノゲンの安定性を評価した。結果を表1にまとめる。
【0105】
【表1】
【0106】
表1は、血漿補充試料(試料B)が、試験の5日間、安定な状態を保ったが、対応する非補充試料(試料A)は乏しい安定性を示したことを示す。
【0107】
FDCの異なるバッチ及び血漿の異なるバッチを使用した数回の実験において、結果を確認した。
【0108】
実施例3:クリオプレシピテートから得られた血漿補充濃縮フィブリノゲンの安定性
クリオプレシピテートから得られた濃縮フィブリノゲン調製物に血漿を添加して、タンパク質安定性に対する血漿の効果(例えば、タンパク質分解の低下)を評価した。クリオプレシピテートを溶解し、水酸化アルミニウムを添加し、S/D処理に供し、油抽出及び逆相カラムによりS/D物質を除去する(概して、国際公開第93/05822号及び同第94/22503号に記載されているように)ことによって、クリオプレシピテート由来の濃縮フィブリノゲン調製物を調製した。この実施例では、濃縮フィブリノゲン調製物は、プラスミン/プラスミノゲンを除去するためのTEAに供されず、またプロテアーゼ阻害剤にも供されなかった。濃縮フィブリノゲン調製物(約30mg/ml)の2つのバッチからの試料を収集し、添加された血漿と共に又は添加された血漿なしに、37℃(又は凍結状態に維持)でインキュベートし、SDS−PAGEを使用してタンパク質の完全性に関して試験した。使用した血漿は、ドナーから血漿交換により収集した血漿単位であった。希釈緩衝液の組成は、120mM NaCl、10mMクエン酸ナトリウム、120mMグリシン、95mMアルギニン塩酸塩、1mM塩化カルシウムであった。
【0109】
濃縮フィブリノゲン調製物及び血漿を解凍し、以下の4グループのそれぞれに関して以下のアリコート(4×200μl)を調製した。
I.37℃保存−100μlフィブリノゲン調製物+100μl血漿。
II.37℃保存−100μlフィブリノゲン調製物+100μl希釈緩衝液。
III−80℃保存−100μlフィブリノゲン調製物+100μl血漿。
IV.−80℃保存−100μlフィブリノゲン調製物+100μl希釈緩衝液。
【0110】
上記のスキームに従って、試料を−80℃又は37℃で5日間保存した。5日間のインキュベーション後、4グループからの試料をSDS−PAGEにより分析した。
【0111】
SDS−PAGE手順は、以下のように行った。
950ml DDWを50ml MOPS泳動緩衝液X20(Life Technologies,NP0001)で希釈することにより1リットルの泳動緩衝液を調製した。試料ローディング混合物の組成を、表2に示す。
【0112】
【表2】
1 Nupage試料緩衝液x4(Invitrogen NP0007)。
2 Nupage還元剤x10(Invitrogen NP0009)。
【0113】
全試料を95℃で5分間加熱し、遠心分離した。ゲル(NuPAGE 12% Bis−Tris Gel,Life Technologies NP0314BOX)に1レーン当たり10μlの希釈試料をロードした。ゲルを200Vで40分間泳動させた。ゲルをDDWで3回洗浄し、Instant Imperial Protein Stain(Thermo,26145)で少なくとも1時間染色した。DDW洗浄により脱染を行い、ゲルを一晩乾燥した。SDS−PAGEの結果を
図1に示す。
【0114】
図1は、SDS−PAGEによりアッセイして、37℃(レーン1及び2)又は−80℃(レーン3及び4)で5日間保持した、非補充(レーン2及び4)又は血漿補充(レーン1及び3)であった濃縮フィブリノゲン試料の比較を示す。
【0115】
驚くべきことに、この結果は、血漿の添加が低分子量のバンドの出現を顕著に低下させ、無処理フィブリノゲンのバンドを増大させたことを示す(
図1、レーン1対レーン2参照)。
【0116】
実施例4:実施例1に開示する血漿補充フィブリノゲンにおける抗B19抗体の定量
ヒト血清血漿中のIgGクラスパルボウイルスB19抗体を検出するためにパルボウイルスB19−IgG ELISAキット(BIOTRIN)、サンドイッチELISAを用いて、B19特異的抗体の定量を行った。アッセイは製造者の指示書に従って行った。試料A及びBに関して得られた結果を、表3に要約する。
【0117】
【表3】
【0118】
表3は、両方の試料に抗B19 Absが存在するが、血漿で補充されたフィブリノゲン試料(試料B)中の抗B19 Absの量が、非補充試料(試料A)における量よりも有意に高い(4.8IU/ml対2.0IU/ml)ことを示す。
【0119】
実施例5:血漿補充フィブリノゲンの処理
実施例1の血漿補充フィブリノゲンを、2つの直交性ウイルス不活化工程と、プラスミン及びプラスミノゲンの除去と、濃縮と、調製と、滅菌濾過とを含むように、処理した(基本的に、国際特許出願公開第2013/001524号におけるように)。最終的な製剤は、50〜90mg/mlの範囲内のフィブリノゲン濃度を含んでいた。
【0120】
実施例6:フィブリンシーラントの成分としての血漿補充フィブリノゲン製剤のインビボでの評価
ラット腎臓止血モデルは、止血試験のための一般的なモデルである(Raccuia JS et al.,Comparative efficacy of topical hemostatic agents in a rat kidney model.Am J Surg.1992.163(2):234〜8)。手短には、腎臓を腹膜側から解剖して出し、その周囲にパッドを置いて血液を吸い上げた。腎臓に供給する血管上にクランプを置き、腎臓を通して横方向の切断部を作製した。血漿補充フィブリノゲン成分(実施例5のように調製)及びトロンビン成分(VICELフィブリンシーラントにおけるトロンビン成分のような)を含むシーラント製剤を、1:1の比で使用した。シーラントを適用し、クランプを除去した。出血を1時間の間評価した後、出血の総量を秤量した。続いて、シーラントを擦り落とし、出血を再開させ、低、中又は高として定量した(出血の可能性が尚存在するか否かを評価するために)。全てのラットに300IUヘパリン/kg動物体重を注入して、自発的な止血を防止した。
【0121】
結果は、血漿補充フィブリノゲン成分を含むフィブリンシーラントが効果的な止血を達成したことを示す。
【0122】
本明細書では様々な実施形態について説明してきたが、その実施形態に対して多くの改変及び変更を行ってもよい。また、特定の成分に関して材料を開示したが、他の材料を使用してもよい。以上の明細書及び以下の「特許請求の範囲」は、このような改変及び変更を全て網羅することを意図する。
【0123】
全体的に又は一部において、本明細書に参照により援用すると言われるいずれの特許、刊行物、又は他の開示資料も、援用される資料が既存の定義、記載、又は本開示に記載されている他の開示資料と矛盾しない程度にのみ本明細書に援用するものとする。このように、また必要な範囲で、本明細書に明瞭に記載されている開示は、参照により本明細書に組み込まれる任意の矛盾する事物に取って代わるものとする。本出願のいずれの参照文献の引用又は指定も、このような参照文献が本発明の先行技術として利用可能であることを認めるものと解釈されるべきではない。
【0124】
節の見出しは、本明細書では、明細書の理解を容易にするために用いられており、必ずしも限定するものとして解釈すべきではない。
【0125】
〔実施の態様〕
(1) フィブリノゲン製剤の調製方法であって、
濃縮フィブリノゲン調製物と血漿源とを混合する工程を含む、方法。
(2) 前記濃縮フィブリノゲン調製物が、血液又は血液画分に由来する、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記濃縮フィブリノゲン調製物中のフィブリノゲン濃度が、約10mg/ml〜200mg/mlの範囲内である、実施態様1又は2に記載の方法。
(4) 前記濃縮フィブリノゲン調製物中のフィブリノゲン濃度が、約10mg/ml〜150mg/mlの範囲内である、実施態様1又は2に記載の方法。
(5) 前記濃縮フィブリノゲン調製物がクリオプレシピテートである、実施態様1〜4のいずれかに記載の方法。
【0126】
(6) 前記クリオプレシピテートが、第VIII因子枯渇クリオプレシピテートである、実施態様5に記載の方法。
(7) 前記濃縮フィブリノゲン調製物と前記血漿とが、約1:1の比で混合される、実施態様1〜6のいずれかに記載の方法。
(8) 血漿補充フィブリノゲン製剤。
(9) 実施態様1〜7のいずれかに記載の方法に従って得ることが可能なフィブリノゲン製剤。
(10) フィブリンシーラントの成分として使用するための、実施態様8又は9に記載のフィブリノゲン製剤。
【0127】
(11) 血漿補充フィブリノゲンを含むシーラント製剤。
(12) 血漿補充フィブリノゲン成分及びトロンビン成分を表面に適用することを含む、前記表面におけるシーラントの調製方法。
(13) 血漿補充フィブリノゲンから調製されたフィブリンモノマーを含む、シーラント製剤。
(14) 実施態様8、9、11又は13のいずれかに記載の製剤を含む容器。
(15) 実施態様14に記載の容器及び任意に使用説明書を含む、キット。
【0128】
(16) 必要のある対象における失血を封止、治癒及び/又は低減する方法であって、有効量の実施態様8、9、11又は13のいずれかに記載の製剤を前記対象に適用することを含む、方法。
(17) 有効量の実施態様8、9又は11のいずれかに記載の製剤を、トロンビン製剤と共に前記対象に適用することを含む、実施態様16に記載の方法。
(18) フィブリンモノマーを含む血漿補充製剤。