(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御装置は、前記第1の印刷層を前記第2の印刷層よりも下に形成させる第1の印刷方法と前記第1の印刷層を前記第2の印刷層よりも上に形成させる第2の印刷方法とを含む複数の印刷方法を選択可能に構成されたモード選択部を備えている、
請求項1〜6のいずれか一つに記載のインクジェットプリンタ。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、いくつかの実施形態に係るインクジェットプリンタについて説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材、部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。以下の説明では、インクジェットプリンタを正面から見たときに、インクジェットプリンタから遠ざかる方を前方、インクジェットプリンタに近づく方を後方とする。また、図面中の符号Yは主走査方向を示し、符号Xは主走査方向Yと直交する副走査方向Xを示している。また、図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を表している。ただし、これらは説明の便宜上の方向に過ぎず、インクジェットプリンタの設置態様等を限定するものではない。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る大判のインクジェットプリンタ(以下、「プリンタ」とする。)10の正面図である。プリンタ10は、ロール状の記録媒体5を順次前方(副走査方向Xの下流X2側)に移動させると共に、主走査方向Yに移動するキャリッジ25に搭載された第1インクヘッド40および第2インクヘッド50(
図2参照)からインクを吐出することによって、記録媒体5上に画像を印刷する。
【0012】
記録媒体5は、画像が印刷される対象物である。記録媒体5は特に限定されない。記録媒体5は、例えば、普通紙やインクジェット用印刷紙等の紙類であってもよいし、樹脂製やガラス製などの透明なシートであってもよいし、金属製やゴム製等のシートであってもよい。本実施形態にあっては、記録媒体5は透明なシートである。
【0013】
図1に示すように、プリンタ10は、プリンタ本体10aと、プリンタ本体10aを支持する脚11とを備えている。プリンタ本体10aは、主走査方向Yに延びている。プリンタ本体10aは、ガイドレール21と、ガイドレール21に係合したキャリッジ25とを備えている。ガイドレール21は、主走査方向Yに延びている。ガイドレール21は、キャリッジ25の主走査方向Yへの移動をガイドする。キャリッジ25には無端状のベルト22が固定されている。ベルト22は、ガイドレール21の右側に設けられたプーリ23aおよび左側に設けられたプーリ23bに巻き掛けられている。右側のプーリ23aにはキャリッジモータ24が取り付けられている。キャリッジモータ24は、制御装置100と電気的に接続されている。キャリッジモータ24は、制御装置100によって制御される。キャリッジモータ24が駆動するとプーリ23aが回転し、ベルト22が走行する。それにより、キャリッジ25がガイドレール21に沿って主走査方向Yに移動する。このように、キャリッジ25が主走査方向Yに移動することによって、第1インクヘッド40および第2インクヘッド50も主走査方向Yに移動する。本実施形態では、ベルト22とプーリ23aとプーリ23bとキャリッジモータ24とが、キャリッジ25およびキャリッジ25に搭載された第1インクヘッド40、第2インクヘッド50を主走査方向Yに移動させるキャリッジ移動機構20の一例である。
【0014】
キャリッジ25の下方には、プラテン12が配置されている。プラテン12は、主走査方向Yに延びている。プラテン12には記録媒体5が載置される。プラテン12の上方には、記録媒体5を上から押下するピンチローラ31が設けられている。ピンチローラ31は、キャリッジ25より後方に配置されている。プラテン12には、グリットローラ32が設けられている。グリットローラ32は、ピンチローラ31の下方に配置されている。グリットローラ32は、ピンチローラ31と対向する位置に設けられている。グリットローラ32は、フィードモータ33(
図3参照)に連結されている。グリットローラ32は、フィードモータ33の駆動力を受けて回転可能に形成されている。フィードモータ33は、制御装置100と電気的に接続されている。フィードモータ33は、制御装置100によって制御される。ピンチローラ31とグリットローラ32との間に記録媒体5が挟まれた状態でグリットローラ32が回転すると、記録媒体5は副走査方向Xに搬送される。本実施形態では、ピンチローラ31とグリットローラ32とフィードモータ33とが、記録媒体5を副走査方向Xに移動させる搬送機構30の一例である。搬送機構30とキャリッジ移動機構20とは、記録媒体5とキャリッジ25とを相対的に移動させる移動機構を構成している。
【0015】
図2は、キャリッジ25の記録媒体5と対向する側の面(本実施形態では下面)の構成を示す模式図である。
図2に示すように、キャリッジ25は、第1インクヘッド40と第2インクヘッド50とを下面に保持している。第1インクヘッド40は、1つのインクヘッド40Wからなっている。第2インクヘッド50は、複数のインクヘッド50C、50M、50Y、50K、50Lk、50Lc、および50Lmからなっている。
図2に示すように、キャリッジ25において、第1インクヘッド40Wと第2インクヘッド50C〜50Lmとは主走査方向Yに並んで配置されている。
【0016】
第1インクヘッド40は、本実施形態にあっては、カラー画像の色調や意匠性に変化を与えるための、所謂、特色インクを吐出する。特色インクは、「第1のインク」の一例である。ここでは、第1インクヘッド40を構成するインクヘッド40Wは、ホワイトインクを吐出する。ただし、特色インクの色調は、白に限定されない。特色インクとは、CMYKといったプロセスカラーインク以外のインク、例えば、シルバーインクやゴールドインクなどのメタリックインクや、透明インクを含むものである。本実施形態では、第1インクヘッド40を構成するインクヘッドの数は1個であるが、これに限定されない。第1インクヘッド40を構成するインクヘッドの数は、例えば2個以上であってもよい。また、特色インクの色調は何ら限定されるわけではない。第1インクヘッド40は、例えばシルバーインクやゴールドインクなどのメタリックインクや、透明インクを吐出するように構成されていてもよい。
【0017】
図2に示すように、第1インクヘッド40を構成するインクヘッド40Wは、8個のサブインクヘッド40a〜40hを有している。8個のサブインクヘッド40a〜40hは、それぞれインクを吐出するノズル41を複数備えている。複数のノズル41は、各サブインクヘッド上で副走査方向Xに一列に並んでいる。サブインクヘッド40a〜40hが備えるノズル41の数は同数である。ただし、各サブインクヘッドにおけるノズル41の配置は上記配置に限定されず、また、各サブインクヘッドが備えるノズル41の数も同数に限定されない。なお、
図2では、サブインクヘッド40a〜40hに各2個のノズル41が図示されているが、実際のサブインクヘッド40a〜40hにはもっと多数(例えば40個)のノズル41が形成されている。サブインクヘッド40a〜40hが備えるノズル41の数は何ら限定されない。
【0018】
インクヘッド40Wにおいて、8個のサブインクヘッド40a〜40hは、いわゆる千鳥配置で配置されている。即ち、サブインクヘッド40a〜40hは、副走査方向Xの上流X1から下流X2に向かってこの順に並ぶとともに、左右に2列をなしている。8個のサブインクヘッドのうち、サブインクヘッド40a、40c、40e、40gは、副走査方向Xに一列に並んでいる。サブインクヘッド40a、40c、40e、40gの右側には、サブインクヘッド40b、40d、40f、40hが副走査方向Xに一列に並んでいる。サブインクヘッド40a〜40hは、左列と右列に交互に配置されている。サブインクヘッド40a〜40hは、上記のように断続的に配置されているが、左右両列を合わせて見ると、副走査方向Xに関して切れ目なく続くように配置されている。実際のインクヘッドにおいては、ノズルが副走査方向Xに切れ目なく続くように、サブインクヘッド同士を副走査方向Xに関して一部重ねて配置してもよい。
【0019】
第2インクヘッド50を構成する各インクヘッド50C〜50Lmは、それぞれ、カラー画像を形成するためのプロセスカラーインクを吐出する。プロセスカラーインクは、「第2のインク」の一例である。本実施形態にあっては、インクヘッド50Cは、シアンインクを吐出する。インクヘッド50Mは、マゼンタインクを吐出する。インクヘッド50Yは、イエローインクを吐出する。インクヘッド50Kは、ブラックインクを吐出する。インクヘッド50Lkは、グレーインクを吐出する。インクヘッド50Lcは、ライトシアンインクを吐出する。インクヘッド50Lmは、ライトマゼンタインクを吐出する。ただし、第2インクヘッドを構成するインクヘッドの数は7個に限定されない。また、プロセスカラーインクの色調は何ら限定されるわけではない。
【0020】
図2に示すように、第2インクヘッド50を構成する7個のインクヘッド50C、50M、50Y、50K、50Lk、50Lc、50Lmは、それぞれ8個のサブインクヘッド50a〜50hを有している。8個のサブインクヘッド50a〜50hは、それぞれインクを吐出するノズル51を複数備えている。複数のノズル51は、各サブインクヘッド上で副走査方向Xに一列に並んでいる。インクヘッド50C、50M、50Y、50K、50Lk、50Lcおよび50Lmのノズル51は、インクヘッド40Wのノズル41と副走査方向Xに関して揃った位置に配置されている。また、サブインクヘッド50a〜50hが備えるノズル51の数は、サブインクヘッド40a〜40hが備えるノズル41の数と同数である。ただし、各サブインクヘッドにおけるノズル51の配置は上記配置に限定されず、また、各サブインクヘッドが備えるノズル51の数も同数に限定されない。
【0021】
第2インクヘッド50を構成する7個のインクヘッド50C〜50Lmにおいても、サブインクヘッド50a〜50hは、第1インクヘッド40Wと同様に配置されている。即ち、サブインクヘッド50a〜50hは、副走査方向Xの上流X1から下流X2に向かってこの順に並ぶとともに、左列と右列に交互に配置されている。詳しくは、サブインクヘッド50a、50c、50e、50gは左列に、サブインクヘッド50b、50d、50f、50hは右列に配置されている。第2インクヘッド50においても、サブインクヘッド50a〜50hは、副走査方向Xに関して切れ目なく続くように設けられている。
【0022】
インクヘッド40Wおよびインクヘッド50C〜50Lmの内部には、アクチュエータ45(
図3、
図8参照)が設けられている。本実施形態に係るアクチュエータ45は、圧力室45aと圧電素子45bとを備えている。圧力室45aにはインクが貯留され、下面にはノズルが設けられている。圧電素子45bは圧力室45aに接触して設けられ、駆動時には圧力室45aを収縮させるように変位する。アクチュエータ45は制御装置100(
図1参照)と電気的に接続され、制御装置100によって制御される。アクチュエータ45が駆動することによって、第1インクヘッド40のノズル41および第2インクヘッド50のノズル51から記録媒体5に向かってインクが吐出される。
【0023】
第1インクヘッド40を構成するインクヘッド40W、および第2インクヘッド50を構成する各インクヘッド50C〜50Lmは、それぞれ、図示しないインク供給路によって、図示しないインクカートリッジと連通されている。インクカートリッジは、例えばプリンタ本体10aの右端部に着脱可能に配置されている。なお、インクの材料は何ら限定されず、従来からインクジェットプリンタのインクの材料として用いられている各種の材料を使用することができる。上記インクは、例えば、ソルベント系(溶剤系)顔料インクや水性顔料インクであってもよいし、水性染料インク、あるいは、紫外線を受けて硬化する紫外線硬化型顔料インク等であってもよい。
【0024】
図1に示すように、プリンタ10は、ヒータ35を備えている。ヒータ35は、プラテン12の下方に設けられている。ヒータ35は、グリットローラ32より前方に配置されている。ヒータ35は、プラテン12を加熱する。プラテン12が加熱されることによって、プラテン12上に配置されている記録媒体5および記録媒体5に着弾したインクが加熱され、インクの乾燥が促進される。ヒータ35は、制御装置100に電気的に接続されている。ヒータ35の加熱温度は、制御装置100によって制御される。
【0025】
図1に示すように、プリンタ本体10aの右端部には、操作パネル110が設けられている。操作パネル110には、機器状態を表示する表示部と、ユーザーによって操作される入力キー等が設けられている。操作パネル110の内側には、プリンタ10の各種の動作を制御する制御装置100が収容されている。
図3は、本実施形態に係るプリンタ10のブロック図である。
図3に示すように、制御装置100は、フィードモータ33、キャリッジモータ24、ヒータ35、第1インクヘッド40のインクヘッド40Wおよび第2インクヘッド50の各インクヘッド50C〜50Lmに設けられた各アクチュエータ45とそれぞれ通信可能に接続されており、それらを制御可能に構成されている。制御装置100は、変換部101と、モード選択部102と、構成部103と、印刷制御部104と、比率設定部105とを備えている。印刷制御部104は、さらに第1印刷制御部104a、第2印刷制御部104b、および第3印刷制御部104cを備えている。
【0026】
制御装置100の構成は特に限定されない。制御装置100は、例えばマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータのハードウェア構成は特に限定されないが、例えば、ホストコンピュータ等の外部機器から印刷データ等を受信するインターフェイス(I/F)と、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(CPU:central processing unit)と、CPUが実行するプログラムを格納したROM(read only memory)と、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAM(random access memory)と、上記プログラムや各種データを格納するメモリ等の記憶装置とを備えている。なお、制御装置100は必ずしもプリンタ本体10aの内部に設けられている必要はなく、例えば、プリンタ本体10aの外部に設置され、有線または無線を介してプリンタ本体10aと通信可能に接続されたコンピュータ等であってもよい。
【0027】
変換部101は、特色インクおよびプロセスカラーインクの画像データをそれぞれインクドットのパターンに変換する、所謂スクリーン処理を行う部位である。インクジェットプリンタによる印刷画像は、各プロセスカラーインクのインクドットの集合体として構成されている。本実施形態に係るプリンタ10においては、画像はシアン、マゼンタ、イエロー、ブラック、グレー、ライトシアン、ライトマゼンタの7色からなるインクドットのパターンに変換される。特色インクも、本実施形態ではホワイトインク1色であるが、同様にスクリーン処理され、インクドットのパターンに変換される。変換部101は、プリンタ本体10aに備えられていてもよいし、あるいは外部のコンピュータ等に備えられていてもよい。
【0028】
モード選択部102は、印刷方法が選択される部位である。本実施形態では、印刷方法は「通常印刷」と「重ね印刷」とに区別される。「重ね印刷」はさらに、「第1重ね印刷」と「第2重ね印刷」とに区別される。「第1重ね印刷」は、特色インクによる地色層を下層に、プロセスカラーインクによる画像層を上層に印刷する印刷方法である。「第2重ね印刷」は、プロセスカラーインクによる画像層を下層に、特色インクによる地色層を上層に印刷する印刷方法である。「第1重ね印刷」および「第2重ね印刷」の詳細については後述する。モード選択部102は、「第1重ね印刷」または「第2重ね印刷」が選択されたとき、第1印刷制御部104aおよび第2印刷制御部104bに対して、選択された重ね印刷モードで印刷を実行するよう指令する。また、モード選択部102は、「通常印刷」モードが選択されたとき、第3印刷制御部104cに、「通常印刷」を行うよう指令する。なお、印刷方法は、印刷データに予め組み込まれ自動的に選択されるようになっていてもよいし、作業者が適宜選択できるようになっていてもよい。
【0029】
構成部103は、変換部101で生成されたプロセスカラーインクのインクドットから「第1ドット群」と「第2ドット群」とを構成する部位である。「第1ドット群」および「第2ドット群」は、プロセスカラーインクのインクドット全体の一部からなっている。「第1ドット群」と「第2ドット群」とは、合わせるとプロセスカラーインクのインクドット全体と一致するように構成される。即ち、プロセスカラーインクのインクドット全体を100%とするとき、「第1ドット群」と「第2ドット群」の合計は100%である。「第1ドット群」、「第2ドット群」、およびプロセスカラーインクのインクドット全体の関係の詳細については後述する。また、「第1ドット群」、「第2ドット群」を生成させる方法についても後述する。
【0030】
印刷制御部104は、印刷動作を制御する部位である。印刷制御部104は、キャリッジモータ24、フィードモータ33、第1インクヘッド40Wおよび第2インクヘッド50C〜50Lmに設けられたアクチュエータ45に接続され、それらを制御することで印刷を行う。また、印刷制御部104は、ヒータ35の温度を制御することで、印刷後のインクの乾燥を促進する。
【0031】
印刷制御部104のうち、第1印刷制御部104aは、「第1ドット群」による画像と特色インクによる地色の同時印刷作業を制御する部位である。以下では、上記同時印刷によって印刷される印刷層を適宜、「第1印刷層」と称する。「第1印刷層」は、プロセスカラーインクによる画像が一部混入した地色層である。第1印刷制御部104aは、キャリッジモータ24、フィードモータ33、第1インクヘッド40Wおよび第2インクヘッド50C〜50Lmに設けられたアクチュエータ45に接続され、それらを制御することで「第1印刷層」の印刷を行う。また、第1印刷制御部104aは、モード選択部102で「第1重ね印刷」が選択されたか「第2重ね印刷」が選択されたかに応じて、各部に対して異なる制御を行う。具体的には、第1印刷制御部104aは、モード選択部102で「第1重ね印刷」が選択されたときには、「第1印刷層」が下層に形成されるように各部を制御する。一方、モード選択部102で「第2重ね印刷」が選択されたときには、第1印刷制御部104aは、「第1印刷層」が上層に形成されるように各部を制御する。制御の詳細については後述する。
【0032】
印刷制御部104のうち、第2印刷制御部104bは、「第2ドット群」による画像の印刷作業を制御する部位である。以下では、上記印刷によって印刷される印刷層を適宜、「第2印刷層」と称する。「第2印刷層」は、画像層である。第2印刷制御部104bによる「第2印刷層」の印刷は、「第1印刷層」の上層または下層に行われる。モード選択部102で「第1重ね印刷」が選択されたとき、「第2印刷層」の印刷は「第1印刷層」の上層に行われる。一方、モード選択部102で「第2重ね印刷」が選択されたとき、「第2印刷層」の印刷は、「第1印刷層」の印刷に先立って「第1印刷層」の下層に行われる。第2印刷制御部104bは、キャリッジモータ24、フィードモータ33、および第2インクヘッド50C〜50Lmに設けられたアクチュエータ45に接続され、それらを制御することで「第2印刷層」の印刷を行う。上記制御の詳細については後述する。
【0033】
第3印刷制御部104cは、モード選択部102で「通常印刷」が選択されたときに、キャリッジモータ24、フィードモータ33、および第2インクヘッド50C〜50Lmに設けられたアクチュエータ45を制御して、記録媒体5に対して「通常印刷」を行う。「通常印刷」のプロセスについては後述する。
【0034】
比率設定部105は、プロセスカラーインクのインクドット全体に対して「第1ドット群」が占める割合、および、プロセスカラーインクのインクドット全体に対して「第2ドット群」が占める割合が設定される部位である。以下では適宜、プロセスカラーインクのインクドット全体に対する「第1ドット群」の割合を「第1印刷率」と称し、プロセスカラーインクのインクドット全体に対する「第2ドット群」の割合を「第2印刷率」と称する。比率設定部105は、構成部103に対して、「第1ドット群」と「第2ドット群」とを構成する際の構成条件として上記「第1印刷率」および「第2印刷率」を指令する。比率設定部105の詳細については後述する。
【0035】
「通常印刷」は、記録媒体5に対して一層だけの印刷を行う印刷方法である。「通常印刷」においてはプロセスカラーインクだけが用いられる。「通常印刷」において記録媒体5上に形成されるのは、変換部101で生成されたプロセスカラーインクのインクドット全体である。「通常印刷」において、第3印刷制御部104cは、キャリッジモータ24を駆動してキャリッジ25を主走査方向Yに移動させるとともに、アクチュエータ45を駆動して第2インクヘッド50からインクを吐出させ、記録媒体5の印刷面にプロセスカラーインクを着弾させる。また、第3印刷制御部104cは、記録媒体5が順次前方F(副走査方向Xの下流X2側)に送り出されるように、フィードモータ33を制御する。フィードモータ33に送り出された記録媒体5上のインクは、順次ヒータ35によって加熱され乾燥される。第3印刷制御部104cは、例えば、記録媒体5が1回前方Fに送り出されるまでに、キャリッジ25を主走査方向Yに1回または複数回移動させる。
【0036】
「第1重ね印刷」および「第2重ね印刷」を含む重ね印刷モードは、地色層と画像層を記録媒体5上に重ねて形成する印刷モードである。本実施形態におけるように記録媒体5が白色でない(本実施形態の場合は透明)場合などには、しばしば記録媒体に対して重ね印刷が実施される。色が白色でない記録媒体に対しては、直接プロセスカラーインクを吐出しても多くの場合、インク本来の発色が得られないので、まずホワイトインクの層を記録媒体上に形成し、上記ホワイトインクの層の上に重ねて画像を印刷する。それにより、色が白色でない記録媒体に対してもインク本来の発色に近い発色で印刷を施すことができる。また、上記のような場合以外にも、重ね印刷は実施される。例えば、画像の上層または下層に透明インクやメタリックインクなどの特色インクの層を重ねて形成させ、特定の視覚効果を狙う場合などである。本実施形態のように記録媒体5が透明シートであるときは、主として画像に対して地色(本実施形態においてはホワイト)を付与する目的で重ね印刷が行われる。特色インクの層が下層に印刷される場合の印刷成果物は、印刷面側から見られるものとして製作される。特色インクの層が上層に印刷される場合の印刷成果物は、印刷面の裏側から見られるものとして製作される。
【0037】
ところで、上記重ね印刷においては、より高品質な印刷画像を得たいというニーズが存在する。例えば屋外広告などの用途において、より強く人目を引くために、奥行きや重厚感を強調した画像を印刷したいというニーズが存在する。
【0038】
そこで、本実施形態に係るプリンタ10は構成部103と第1印刷制御部104aと第2印刷制御部104bとを備え、画像の一部を地色層に混入させて印刷できるように構成されている。本実施形態に係る構成部103は、プロセスカラーインクのインクドットのデータを受け、プロセスカラーインクのインクドットから「第1ドット群」および「第2ドット群」を構成する。その際、「第1ドット群」および「第2ドット群」は、合計がプロセスカラーインクのインクドット全体と一致するように構成される。第1印刷制御部104aは、特色インクのインクドットと「第1ドット群」のインクドットとによって記録媒体5上に「第1印刷層」を形成させる。なお、「第1印刷層」が記録媒体5「上」に形成されるとは、「第1印刷層」が必ずしも記録媒体5に接して形成されることを意味せず、「第1印刷層」と記録媒体5との間に別の印刷層(例えば、「第2印刷層」)が挟まれる場合も含む。第2印刷制御部104bは、「第1印刷層」より上または下に、「第2ドット群」のインクドットによって「第2印刷層」を形成させる。「第1印刷層」が下層に、「第2印刷層」が上層に印刷される場合は、「第1重ね印刷」の場合である。「第2印刷層」が下層に、「第1印刷層」が上層に印刷される場合は、「第2重ね印刷」の場合である。
【0039】
本実施形態に係るプリンタ10によれば、プロセスカラーインクによる画像の一部が混入された地色層(第1印刷層)を形成することができる。このように地色層に画像の一部を混入させることによって、画像の層の厚さが物理的に厚くなり、従来のプリンタによる重ね印刷によるものよりも奥行きや重厚感のある印刷を実施することができる。
【0040】
また、記録媒体が透明である場合、本実施形態に係るプリンタ10による印刷物は、地色層側からも画像の視認が可能である。透明な記録媒体に印刷する場合、従来の重ね印刷では画像を鮮明に見せるため、地色層の遮光性を高めていた。即ち、地色層を厚く、または高密度に印刷していた。しかし、このように地色層の遮光性を高めると地色層側から画像が視認できず、貼り付け施工など複数の記録媒体を位置合わせすることが必要な施工では、位置合わせの問題が発生することがあった。本実施形態に係るプリンタ10によれば、地色層の遮光性を高く保ちつつ、地色層側から画像が確認できる印刷を施すことができる。
【0041】
以下に、本実施形態に係るプリンタ10における「第1ドット群」、「第2ドット群」の構成のプロセス、および「重ね印刷」における印刷プロセスについて説明する。まず、プロセスカラーインクのインクドットから「第1ドット群」と「第2ドット群」とを構成するプロセスについて説明する。
【0042】
図4は、モード選択部102および比率設定部105のインターフェイスの例である。モード選択部102および比率設定部105のインターフェイスは、例えばコンピュータの表示装置などに表示される。
図4に示されるように、インターフェイスは、印刷方法を選択するチェックボックスCBと、「第1印刷率」を入力する入力ボックスBxとを備えている。チェックボックスCBは、モード選択部102に入力を行うインターフェイスである。入力ボックスBxは、比率設定部105に入力を行うインターフェイスである。
【0043】
チェックボックスCBは、「通常印刷」、「第1重ね印刷」、および「第2重ね印刷」の中から印刷モードを択一的に選択できるように構成されている。本実施形態に係るモード選択部102においては、「通常印刷」、「第1重ね印刷」、および「第2重ね印刷」の3つの印刷モードのうちチェックボックスCBにチェックを入れた印刷モードが選択される。
図4に示された例では、選択されている印刷モードは「第1重ね印刷」である。
図4の設定がされた場合、プリンタ10は、「第1印刷層」を下層に印刷し、「第2印刷層」を上層に印刷する。
【0044】
図4に示すインターフェイスにおいて、入力ボックスBxには「第1印刷率」が数値入力される。前述したように、本実施形態に係るプリンタ10では、「第1ドット群」と「第2ドット群」は、合計がプロセスカラーインクのインクドット全体と一致するように構成される。即ち、プロセスカラーインクのインクドット全体を100%とすると、「第1ドット群」と「第2ドット群」とは、合計が100%になるように構成される。そこで、「第1ドット群」のプロセスカラーインクのインクドット全体に対する比率(=第1印刷率)が入力されれば、「第2ドット群」のプロセスカラーインクのインクドット全体に対する比率(=第2印刷率)は自動的に算出される。本実施形態では、「第1ドット群」および「第2ドット群」を「構成する」とは、実質的に、プロセスカラーインクのインクドット全体の「分割」である。
図4に示されている例では、比率設定部105の入力ボックスBxには、第1印刷率「25%」と入力されている。よって、第2印刷率は「75%」である。このように、本実施形態では「第1ドット群」に属するインクドットと「第2ドット群」に属するインクドットとは重複がないように構成され、プロセスカラーインクのインクドット全体のうち「第1ドット群」として抽出されなかった残りが「第2ドット群」となる。
【0045】
なお、「第1ドット群」および「第2ドット群」の比率は、それぞれ0%または100%に設定できてもよい。「第1ドット群」の比率が0%、「第2ドット群」の比率が100%に設定された場合は、従来からの重ね印刷の場合である。「第1ドット群」の比率が100%、「第2ドット群」の比率が0%に設定された場合は、画像の全てを「第1印刷層」に印刷する場合である。本願発明者が得た知見によれば、好ましい第1印刷率は、0.5%〜30%程度である。
【0046】
本実施形態においては、第1印刷率は、全てのプロセスカラーインクで同じ率である。つまり、
図4の例によれば、「第1印刷層」には、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインク、グレーインク、ライトシアンインク、ライトマゼンタインクのそれぞれについて、全量の25%のインクドットが形成される。従って、「第1印刷層」に地色と同時印刷される画像は、元画像と同じ色バランスを備えた画像である。
【0047】
「第1ドット群」に属するインクドットは、構成部103により、例えば、各プロセスカラーインクの全インクドットのうちからランダムに抽出される。
図4に示された第1印刷率が25%の場合には、プロセスカラーインク毎に全インクドットの25%に当たる数のインクドットがランダム抽出される。画像を構成するインクドットの数は多いので、上記のようなランダム抽出によっても抽出の偏りは発生せず、印刷密度が低いことを除いて元画像と同じ画像が抽出できる。「第1ドット群」に属するインクドットから構成される画像は、元の画像の印刷密度を落とした「薄い」画像である。
【0048】
上記のように印刷方法および印刷率が設定された後、重ね印刷が実行される。以下に、
図4に示された印刷条件の場合の印刷プロセスを説明する。前述したように
図4に示された印刷条件は、下層に「第1印刷層」として画像の25%と地色とが同時印刷され、上層に「第2印刷層」として画像の残り75%が印刷される「第1重ね印刷」である。
図5および
図6は、上記条件における重ね印刷においてインクの着弾位置を表す模式図である。
図5、
図6では、記録媒体5を上方Uから見ている。
図5、
図6の下方がプリンタ10の前方Fであり、
図5、
図6の左方がプリンタ10の左方Lである。
図5、
図6において記録媒体5は副走査方向Xの上流X1から下流X2方向に(後方Rrから前方F方向に)搬送されている。
図5、
図6において、円形で表したポイントはインクドットの着弾位置を表している。そのうち白丸Spは特色インクが吐出されたことを表している。また、黒丸Pcはプロセスカラーインクが吐出されたことを示している。二重丸PSは、特色インクとプロセスカラーインクの両方が吐出されたことを表している。
図6は、
図5に示された時点の次のパスにおける同一地点を表す図である。さらに、
図5(a)および
図6(a)は、当該時点における記録媒体5上の状態(=当該時点までに吐出された全てのインクドットが重なった状態)を表し、
図5(b)および
図6(b)は当該パスにおいて吐出されたインクドットだけを表したものである。
図5(b)および
図6(b)では、「第1ドット群」に属するインクドットには符号P1、「第2ドット群」に属するインクドットには符号P2を付してある。なお、
図5(a)および
図6(a)には、当該時点におけるキャリッジ25の副走査方向Xの位置が図示されている。
【0049】
図5において、記録媒体5上の領域E2には、第1インクヘッド40のサブインクヘッド40a、40b、40c、および40dのノズル41からホワイトインクが吐出されている。サブインクヘッド40a、40b、40c、および40dは、第1インクヘッド40のサブインクヘッドのうち副走査方向Xの上流X1側の半分に位置するサブインクヘッドである。同時に、領域E2には、第2インクヘッド50のサブインクヘッド50a、50b、50c、および50dのノズル51から全量の25%のプロセスカラーインク(第1ドット群P1)が吐出されている。
図5ではそれを8個のノズル51のうちの2個がプロセスカラーインクの吐出を行っているという形で表している。サブインクヘッド50a、50b、50c、および50dは、第2インクヘッド50のサブインクヘッドのうち副走査方向Xの上流X1側の半分に位置するサブインクヘッドである。
図5の時点において、領域E2には「第1印刷層」が形成されている。
【0050】
図5の領域E1は、記録媒体5上において領域E2の下流側の領域である。つまり、領域E2よりも1パス先を進んでいる領域である。
図5(b)に示されるように、領域E1には、第2インクヘッド50のサブインクヘッド50e、50f、50g、および50hのノズル51から全量の75%のプロセスカラーインク(第2ドット群P2)が吐出されている。
図5(b)ではそれを8個のノズル51のうちの6個がプロセスカラーインクの吐出を行っているという形で表している。サブインクヘッド50e、50f、50g、および50hは、第2インクヘッド50のサブインクヘッドのうち副走査方向Xの下流X2側の半分に位置するサブインクヘッドである。
図5の領域E1には、「第1印刷層」の上に重ねて「第2印刷層」が形成されている。
図5(b)に示されている「第2印刷層」を形成する吐出によって、領域E1は
図5(a)に示される状態となり、印刷が完成する。即ち、
図5(a)に示すように、全ポイントが二重丸PSの状態になる。
【0051】
図6は、
図5の1パス先の時点を表す図である。記録媒体5上の領域E1は、印刷が完了し、インクヘッドよりも副走査方向Xの下流X2側に送られている。
図6の時点において、領域E2には、
図5の時点における領域E1と同様の吐出が行われている。即ち、領域E2には、第2インクヘッド50のサブインクヘッド50e、50f、50g、および50hのノズル51から全量の75%のプロセスカラーインク(第2ドット群P2)が吐出されている。
図6の時点において、領域E2の重ね印刷は完了している。また、
図6の時点において、領域E2の副走査方向Xの上流X1側に位置する領域E3には、
図5の時点における領域E2と同様の吐出が行われている。即ち、領域E3には、第1インクヘッド40のサブインクヘッド40a、40b、40c、および40dのノズル41からホワイトインクが吐出されるとともに、第2インクヘッド50のサブインクヘッド50a、50b、50c、および50dのノズル51から全量の25%のプロセスカラーインク(第1ドット群P1)が吐出されている。このようにして、本実施形態に係るプリンタ10は、下層の「第1印刷層」および上層の「第2印刷層」を連続的に印刷する。
【0052】
「第2重ね印刷」は、「第1重ね印刷」と上層/下層が逆の印刷方法である。「第2重ね印刷」では、まず第2インクヘッド50のサブインクヘッド50a、50b、50c、および50dのノズル51から全量の75%のプロセスカラーインク(第2ドット群P2)が吐出されることによって「第2印刷層」が形成され、「第2印刷層」の上に「第1印刷層」が形成される。「第1印刷層」は、第1インクヘッド40のサブインクヘッド40e、40f、40g、および40hのノズル41から吐出されるホワイトインクと、第2インクヘッド50のサブインクヘッド50e、50f、50g、および50hのノズル51から吐出される全量の25%のプロセスカラーインク(第1ドット群P1)とによって形成される。連続印刷に係るプロセスは、「第1重ね印刷」の場合と同様である。
【0053】
上記のように、本実施形態に係るプリンタ10は、プロセスカラーインクのインクドット全体から「第1ドット群」および「第2ドット群」を構成するとともに「第1ドット群」のインクドットと特色インクのインクドットとで「第1印刷層」を形成する。さらに、本実施形態に係るプリンタ10は、「第1印刷層」の上または下に、「第2ドット群」のインクドットによって「第2印刷層」を形成する。本実施形態に係るプリンタ10によれば、このように地色層に画像の一部を混入させた「第1印刷層」を形成し、それに重ねて画像の別の一部からなる「第2印刷層」を形成することによって、出来上がりの画像に立体感および重厚感を与えることができる。
【0054】
また、本実施形態に係る構成部103は、「第1ドット群」および「第2ドット群」を、合わせるとプロセスカラーインクのインクドット全体と一致するように構成する。そのため、最終的には、プロセスカラーインクの全インクドットが過不足なく記録媒体5上に形成される。
【0055】
さらに、本実施形態に係る制御装置100は、プロセスカラーインクのインクドット全体に対する「第1ドット群」および「第2ドット群」の比率が設定される比率設定部105を備えている。構成部103は、プロセスカラーインクのインクドット全体に対する「第1ドット群」および「第2ドット群」の比率が上記比率設定部105において設定された比率と同じになるように「第1ドット群」および「第2ドット群」を構成する。比率設定部105において上記比率が設定できることによって、出来上がりの印刷画質の調整が可能になり、細かい画質調整のニーズにも対応可能となる。
【0056】
本実施形態に係る構成部103では、「第1ドット群」に属するドットをプロセスカラーインクのインクドットからランダムに抽出している。「第1ドット群」のインクドットは、多数のインクドットからランダム抽出されているので、偏りがない。「第1ドット群」による画像は、印刷密度が低いことを除けば元画像と同じ画像である。そこで、本実施形態に係るプリンタ10は、重ね印刷においても元画像と同じ色バランスの画像を印刷することができる。
【0057】
本実施形態に係るプリンタ10は、モード選択部102を備え、「第1重ね印刷」と「第2重ね印刷」とを選択可能である。「第1重ね印刷」は、「第1印刷層」を下層に印刷し、「第2印刷層」を上層に印刷する印刷方法である。「第2重ね印刷」は、「第2印刷層」を下層に印刷し、「第1印刷層」を上層に印刷する印刷方法である。本実施形態に係るプリンタ10は、モード選択部102を備えることにより、上記「第1重ね印刷」および「第2重ね印刷」のいずれの印刷方法にも対応できる。特に記録媒体が透明な記録媒体の場合には、印刷面側から見る印刷成果物と印刷面の裏側から見る印刷成果物の両方の場合が想定されるので、有効である。
【0058】
なお、本実施形態に係るモード選択部102および比率設定部105は上記したようなインターフェイスを備えていたが、モード選択部102および比率設定部105は、作業者が設定を行うインターフェイスを備えなくてもよい。例えば、印刷データそのものに印刷モードおよび第1、第2印刷率が含まれており、自動的に印刷モードおよび印刷率が設定されるように構成されていてもよい。また、インターフェイスは
図4に示されたようなレイアウトに限定されない。例えば、インターフェイスは、数値を入力する入力ボックスBxの代わりに「鮮明」「普通」「ぼかし」等の発色レベルを選択するツールであってもよい。その場合、各発色レベルに対応した印刷率が予め設定されている。
【0059】
また、上記した実施形態では、「第1ドット群」に属するドットの抽出はランダム抽出であったが、「第1ドット群」の抽出方法はこれに限られない。例えば、「第1ドット群」はランダム抽出によってではなく、何らかの統計的手法によって抽出されてもよい。
【0060】
(第2実施形態)
第2実施形態は、「第1ドット群」に属するインクドットと「第2ドット群」に属するインクドットとの合計がプロセスカラーインクのインクドット全体を超えてもよいように構成された実施形態である。つまり、第1印刷率と第2印刷率の合計が100%を超えてもよいように構成された実施形態である。第2実施形態に係るプリンタ10は、上記構成を除き、第1実施形態に係るプリンタ10と共通である。そこで、以下の第2実施形態の説明においては、第1実施形態と同じ部材には同じ符号を付すものとし、重複する説明は省略または簡略化する。
【0061】
図7は、本実施形態に係るインターフェイスを示す図である。
図4と同様に、
図7に示されるインターフェイスにも、モード選択部102および比率設定部105が表示されている。
図7に示す比率設定部105は、2つの入力ボックスB1とB2を備えている。第1入力ボックスB1は、プロセスカラーインクのインクドット全体に対する「第1ドット群」の割合(=第1印刷率)を入力する部位である。第2入力ボックスB2は、プロセスカラーインクのインクドット全体に対する「第2ドット群」の割合(=第2印刷率)を入力する部位である。第1入力ボックスB1および第2入力ボックスB2には、それぞれ数値入力が可能である。
【0062】
図7では、第1入力ボックスB1には「25%」が入力されている。一方、第2入力ボックスB1には「100%」が入力されている。つまり、
図7に示す例では、「第1ドット群」と「第2ドット群」とを合わせて125%となる印刷率が入力されている。また、
図7では、モード選択部102によって「第1重ね印刷」が選択されている。つまり、
図7に示されている印刷設定では、下層に「第1印刷層」として特色インクおよび全量の25%に当たるプロセスカラーインクが吐出され、上層に「第2印刷層」として全量の100%に当たるプロセスカラーインクが吐出される。
【0063】
上記のように、本実施形態に係る構成部103では、プロセスカラーインクのインクドットの一部または全部が重複するように「第1ドット群」と「第2ドット群」を構成可能であり、比率設定部105はそれに対応している。上記構成により、本実施形態に係るプリンタ10では、印刷の画質調整の自由度が向上している。最終的に元画像の100%を超えるインクドットで印刷された画像は、100%のインクドットで印刷された画像よりも鮮明であることが期待できる。特に、「第1ドット群」の印刷率の調整だけでは所望の印刷品質を得るのが困難な場合には、本実施形態に係るプリンタ10は有効である。また、上記のように最終的なインク量がプロセスカラーインクのインクドットの100%を超えることにより、同一インクを用いて同一のプリンタで表現することができる色の範囲(いわゆる色域)を拡張できる。
【0064】
図7では、第2入力ボックスB2には「100%」が入力されているが、例えば「90%」のような数値が入力されてもよい。第1印刷率が25%、第2印刷率が90%の例では、合計は115%である。ただし、比率設定部105は、第1印刷率と第2印刷率との合計が100%以上に設定されなければエラーを発するように構成されることが好ましい。例えば、第1印刷率25%、第2印刷率70%と入力されたとき、印刷率の合計は95%である。この場合、印刷率の合計が100%を下回るので、エラーとされるのが好ましい。また、本実施形態では、第1印刷率と第2印刷率を合わせた最大の印刷率は、第1印刷率100%、第2印刷率100%のときの200%である。
【0065】
なお、第2実施形態の変形例として、第2印刷率が「100%」に固定された変形例が実施されてもよい。つまり、プリンタ10は、「第2ドット群」を常にプロセスカラーインクのインクドット全体と一致させるように構成されていてもよい。上記変形例は、「第2印刷層」を従来の重ね印刷と同じように形成しつつ、「第1印刷層」に画像の一部を添加する印刷方法である。上記変形例によれば、比較的簡単な調整で立体感と重厚感のある画像を得ることができる。実際に本願の発明者は、上記のような重ね印刷によって従来の重ね印刷よりも奥行きと重厚がある画像が得られることを確認している。その条件は、例えば、第1印刷率が20%〜30%(第2印刷率は固定で100%)の条件である。
【0066】
(第3実施形態)
第3実施形態は、「第1ドット群」のドットサイズと「第2ドット群」のドットサイズをそれぞれ調整でき、従って「第1ドット群」のドットサイズと「第2ドット群」のドットサイズを異なるサイズにすることも可能に構成された実施形態である。本実施形態に係る制御装置100は、第1サイズ制御部106a、第2サイズ制御部106b(ともに
図8参照)、第1サイズ設定部107a、および第2サイズ設定部107b(ともに
図9参照)を備える。第3実施形態は、上記部位に関わる部分を除き、第2実施形態と共通である。
【0067】
図8は、第2インクヘッド50のノズル51付近の模式図である。
図8(a)は、「第1ドット群」に係るプロセスカラーインクを吐出するノズル51の縦断面を表している。
図8(b)は、「第2ドット群」に係るプロセスカラーインクを吐出するノズル51の縦断面を表している。
図8に示されるように、第1サイズ制御部106aおよび第2サイズ制御部106bは、各インクヘッドに設けられたアクチュエータ45の圧電素子45bに接続されている。第1サイズ制御部106aおよび第2サイズ制御部106bによるドットサイズの制御は、ノズル単位、即ち圧電素子45b単位で可能である。第1サイズ制御部106aおよび第2サイズ制御部106bは、圧電素子45bの駆動を制御することで、各インクヘッドの各ノズルが形成するインクドットのサイズを制御する。第1サイズ制御部106aは、「第1ドット群」のインクドットのドットサイズを制御する。第2サイズ制御部106bは、「第2ドット群」のインクドットのドットサイズを制御する。そこで、印刷モードが「第1重ね印刷」であるときと「第2重ね印刷」であるときとでは、第1サイズ制御部106aおよび第2サイズ制御部106bが制御する圧電素子45bの位置が異なる。「第1重ね印刷」および「第2重ね印刷」の各印刷モードにおいて、「第1ドット群」に係るプロセスカラーインクを吐出するノズル51、および「第2ドット群」に係るプロセスカラーインクを吐出するノズル51は、第1実施形態の説明において説明された通りである。
【0068】
第1サイズ設定部107aは、「第1ドット群」に係るプロセスカラーインクのドットサイズを設定する部位である。第1サイズ制御部106aは、「第1ドット群」に係るプロセスカラーインクのドットサイズを、第1サイズ設定部107aで設定されたドットサイズに調整する。同様に、第2サイズ設定部107bは、「第2ドット群」に係るプロセスカラーインクのドットサイズを設定する部位である。第2サイズ制御部106bは、「第2ドット群」に係るプロセスカラーインクのドットサイズを、第2サイズ設定部107bで設定されたドットサイズに調整する。
【0069】
図9は、本実施形態に係るインターフェイスを示す図である。
図9に示されるように、第1サイズ設定部107aおよび第2サイズ設定部107bは、それぞれ第1メニューM1および第2メニューM2としてインターフェイス画面に表示されている。第1メニューM1は、「第1ドット群」を構成するインクドットのドットサイズ(=第1ドットサイズ)を選択するメニューである。第2メニューM2は、「第2ドット群」を構成するインクドットのドットサイズ(=第2ドットサイズ)を選択するメニューである。本実施形態においては、インクのドットサイズは、S、M、Lの3種類である。
図9に示されている例では、「第1ドット群」のインクドットのサイズはSサイズ、「第2ドット群」のインクドットのサイズはLサイズが選択されている。
【0070】
多くの場合、画像データには、S、M、Lの3種類のインクドットのサイズデータが予め含まれている。そして、サイズデータ内では、S、M、Lの3種類のインクドットが混在している。第1サイズ設定部107aおよび第2サイズ設定部107bは、上記画像データに含まれているサイズデータを変更することによって、「第1ドット群」および「第2ドット群」のインクドットのドットサイズを変更する。
【0071】
本実施形態に係る第1サイズ制御部106a、第2サイズ制御部106b、およびアクチュエータ45は、吐出するインクのサイズをS、M、Lの3種類のサイズに調整可能である。3種類のサイズのうちSサイズは、最も体積が小さい基本のサイズである。Sサイズの次に体積が小さいサイズはMサイズである。Mサイズは、例えば、Sサイズの2倍の体積を有している。最も体積が大きいサイズはLサイズである。Lサイズは、例えば、Sサイズの3倍の体積を有している。本実施形態では吐出されるインクのサイズは3種類であるが、4種類以上であっても2種類であってもよく、またサイズの倍率は2倍、3倍でなくともよい。
【0072】
図8(a)は、ノズル51からSサイズのインク滴Sが吐出されている状態を示している。
図8は、
図9に示されている印刷条件(即ち、第1ドットサイズがS、第2ドットサイズがLである吐出条件)を反映している。インク滴Sは、圧力室45aが圧電素子45bの1回の変位によって収縮させられることによって吐出されるインクからなっている。即ち、インク滴Sの体積は、圧力室45aの1回の体積減少分である。
【0073】
図8(b)は、第2インクヘッド50の1つのノズル51からLサイズのインク滴Lが吐出されている状態を示している。「第2ドット群」のドットサイズはLサイズである。アクチュエータ45は、
図8(b)において、1つのノズル当たり3つのインク滴Sを吐出している。これは、極めて短い時間間隔を置いて3回吐出が行われることによってなされたものである。上記3回の吐出の間の時間間隔は極めて短いので、キャリッジ25が移動しているにも関わらず、3つのインク滴Sは、ほぼ同じ地点に着弾する。3つのインク滴Sが同じ地点に着弾することによって、インク滴Sの3倍の体積を持つインク滴Lが形成される。上記のようにして、第1サイズ制御部106aおよび第2サイズ制御部106bは、アクチュエータ45を制御して、「第1ドット群」のドットサイズおよび「第2ドット群」のドットサイズを、第1サイズ設定部107aおよび第2サイズ設定部107bで設定された所定のサイズに調整している。
【0074】
上記のように、本実施形態に係るプリンタ10は、「第1ドット群」のドットサイズを制御する第1サイズ制御部106aと、「第2ドット群」のドットサイズを制御する第2サイズ制御部106bと、「第1ドット群」のドットサイズを設定する第1サイズ設定部107aと、「第2ドット群」のドットサイズを設定する第2サイズ設定部107bとを備える。それにより、画質調整の自由度をさらに向上させている。例えば、「第1ドット群」のドットサイズが「第2ドット群」のドットサイズよりも小さくなるように設定すれば、地色層に混入された画像は目立たなくなり、印刷が自然な仕上がりになる。あるいは逆に、「第1ドット群」のドットサイズが「第2ドット群」のドットサイズよりも大きくなるように設定すれば、地色層に混入された画像が強く現れ、より高い視覚効果を得ることができる。
【0075】
なお、第1サイズ設定部107aおよび第2サイズ設定部107bのインターフェイス上の形態は、
図9のような形態でなくともよい。例えば、「鮮明」「普通」「ぼかし」等の発色レベルを選択する形態であってもよい。その場合、各発色レベルに対応したドットサイズが自動選択される。また、上記したドットサイズの制御方法は一例であって、ドットサイズの制御方法は上記した方法に限られるものではない。
【0076】
以上、本発明の好適な実施形態について説明した。しかし、上述の実施形態は例示に過ぎず、本発明は他の種々の形態で実施することができる。
【0077】
例えば、上記した実施形態では、制御装置100は比率設定部105を備えていたが、比率設定部105を備えなくてもよい。その場合、第1印刷率および第2印刷率は、例えば、固定であったり、自動計算であったり、画像データ中に予め含まれていたりする。第1サイズ設定部107aおよび第2サイズ設定部107bについても同様であって、制御装置100はサイズ設定部を備えなくともよい。その場合、第1サイズ制御部106aおよび第2サイズ制御部106bは、例えば、予め定められたドットサイズで「第1ドット群」および「第2ドット群」のインクを吐出させる。その際、「第1ドット群」のドットサイズが「第2ドット群」のドットサイズよりも小さくなるように設定されていてもよい。「第1ドット群」のドットサイズが「第2ドット群」のドットサイズよりも小さければ、地色層に混入された画像は目立たなくなり、印刷が自然な仕上がりになる。あるいは逆に、「第1ドット群」のドットサイズが「第2ドット群」のドットサイズよりも大きくなるように設定されてもよい。「第1ドット群」のドットサイズが「第2ドット群」のドットサイズよりも大きければ、地色層に混入された画像が強く現れ、より高い視覚効果を得ることができる。
【0078】
上記した実施形態では、「重ね印刷」は、下層と上層の2層を重ねて印刷する印刷方法であったが、3層以上であってもよい。例えば、地色層、画像層、トップコートの3層重ね印刷であってもよい。トップコートは、例えば透明インクなどである。3層以上の重ね印刷を行う場合には、プロセスカラーインクのインクドット全体から「第1ドット群」「第2ドット群」だけでなく、3つ以上のドット群が抽出されてもよい。
【0079】
上記した実施形態では、第1インクヘッド40および第2インクヘッド50は、それぞれ複数のサブインクヘッドを備え、サブインクヘッドはインクヘッドにおいて2列に千鳥配置されていた。しかし、インクヘッドにおけるサブインクヘッドの配置は、上記した配置に限られない。
図10は、第1〜第3実施形態とは別のサブインクヘッドの配置がなされたキャリッジ25下面の構成を示す図である。本発明は、例えば
図10のようにサブインクヘッドが配置されたプリンタ10によっても実施できる。
図10に示されたキャリッジ25の下面の構成では、各インクヘッドにおいてサブインクヘッドは、副走査方向Xに1列に並んでいる。
【0080】
図10に示される実施形態では、第1インクヘッド40は、副走査方向Xに一列に並んだサブインクヘッド40a〜40hを有している。サブインクヘッド40a〜40hはそれぞれ副走査方向Xに並んだ複数のノズル41を備えているので、ノズル41は、全体として副走査方向Xに一列に延びるノズル列42を構成している。ノズル列42は、副走査方向Xの上流X1側に位置する第1上流側ノズル列42aと、副走査方向Xの下流X2側に位置する第1下流側ノズル列42bとに区分されている。第1上流側ノズル列42aは、副走査方向Xの上流X1側に位置する4個のサブインクヘッド40a、40b、40c、および40dのノズル41から構成されている。第1下流側ノズル列42bは、副走査方向Xの下流X2側に位置する4個のサブインクヘッド40e、40f、40g、および40hのノズル41から構成されている。第1上流側ノズル列42aのノズル41の数と、第1下流側ノズル列42bのノズル41の数とは同じである。なお、第1上流側ノズル列42aと第1下流側ノズル列42bの区別は、制御上のものであって機構上の差異があってのものではない。
【0081】
図10に示される実施形態では、複数のインクヘッド50C、50M、50Y、50K、50Lk、50Lcおよび50Lmも、それぞれ、副走査方向Xに一列に並んだ複数のサブインクヘッド50a〜50hを有している。サブインクヘッド50a〜50hはそれぞれ副走査方向Xに並んだ複数のノズル51を備えているので、ノズル51は、全体として副走査方向Xに一列に延びるノズル列52を構成している。ノズル列52は、副走査方向Xの上流X1側に位置する第2上流側ノズル列52aと、副走査方向Xの下流X2側に位置する第2下流側ノズル列52bとに区分されている。第2上流側ノズル列52aは、副走査方向Xの上流X1側に位置するサブインクヘッド50a、50b、50c、および50dのノズル51から構成されている。第2下流側ノズル列52bは、副走査方向Xの下流X2側に位置するサブインクヘッド50e、50f、50g、および50hのノズル51から構成されている。第2上流側ノズル列52aのノズル51の数と、第2下流側ノズル列52bのノズル51の数とは同じである。第2上流側ノズル列52aと第2下流側ノズル列52bの区別も、制御上のものであって機構上の差異があってのものではない。第2インクヘッド50C、50M、50Y、50K、50Lk、50Lcおよび50Lmのノズル51は、第1インクヘッド40を構成するインクヘッド40Wのノズル41と、副走査方向Xに関して揃った位置に配置されている。
【0082】
図10のようなキャリッジ25下面の構成を備えたプリンタ10によっても、「第1重ね印刷」および「第2重ね印刷」の連続的な実施が可能である。
図11は、
図10に示されたプリンタ10で重ね印刷を行った場合のインクの着弾位置を表す模式図である。
図11の印刷条件は、
図5、
図6に示したものと同じである。即ち、下層に「第1印刷層」としてプロセスカラーインクのインクドットの25%と特色インクのインクドットとによる層が形成され、上層に「第2印刷層」としてプロセスカラーインクのインクドットの残り75%による層が形成される「第1重ね印刷」である。
図11は、
図5と同じ印刷プロセス中の時点を表している。また、
図11(a)は、当該時点までに着弾した全てのインクドットが重なった状態を示し、
図11(b)は当該パスにおいて着弾したインクだけを示している。
図11で使用されているインクドットに関する符号は、
図5におけるものと同じである。
【0083】
図11において、記録媒体5上の領域E2には、第1上流側ノズル列42aのノズル41からホワイトインクが吐出されている。同時に、領域E2には第2上流側ノズル列52aのノズル51から全量の25%のプロセスカラーインク(第1ドット群P1)が吐出されている。
図11の時点において、領域E2には「第1印刷層」が形成されている。
【0084】
図11の領域E1は、記録媒体5上において領域E2の下流側の領域である。つまり、領域E2よりも1パス先を進んでいる領域である。
図11(b)に示されるように、領域E1には、第2下流側ノズル列52bから全量の75%のプロセスカラーインク(第2ドット群P2)が吐出されている。領域E1には、「第1印刷層」の上に重ねて「第2印刷層」が形成されている。
図11(b)に示される吐出によって、領域E1の印刷は完了する。
図5、
図6において説明されたのと同様に、上記プロセスは、順次記録媒体5が前方Fに送られながら続くため、
図11の時点の次のパス時には領域E2の印刷が完成する。このようにして、
図10に示すようなノズル配置を備えたプリンタ10によっても、「第1重ね印刷」は連続的に実施される。
【0085】
「第2重ね印刷」のプロセスは、各インクが吐出されるノズルを除き、「第1重ね印刷」のプロセスと同様である。「第2重ね印刷」が選択された場合には、「第2印刷層」が下層に形成され、「第1印刷層」が上層に形成される。そこで、第2ドット群P2を構成するプロセスカラーインクは、第2上流側ノズル列52aのノズル51から吐出される。「第2印刷層」は、第2ドット群P2のインクドットによって形成されている。また、第1ドット群P1を構成するプロセスカラーインクは第2下流側ノズル列52bのノズル51から吐出され、特色インクは第1下流側ノズル列42bのノズル41から吐出される。「第1印刷層」は、特色インクのインクドットおよび第1ドット群P1のインクドットによって形成されている。このように、
図10のようにノズルが配置されたプリンタ10は、「第1重ね印刷」と同様に「第2重ね印刷」も連続的に実施することができる。
【0086】
なお、各インクヘッドにおいてサブインクヘッドの数が奇数であって2等分できない場合は、例えば、使用しないサブインクヘッドを1個設けてもよい。使用しないサブインクヘッドは、インクヘッドにおいて副走査方向Xの最も上流X1側に設定されてもよいし、最も下流X2側に設定されてもよい。あるいは、ノズル列を副走査方向Xに2等分したときに境界線が通るサブインクヘッド内のノズルを、境界線を挟んで上流X1側と下流X2側とに2分してもよい。
【0087】
キャリッジ25におけるインクヘッドは、さらに別の配置で設けられてもよい。例えば、第1インクヘッド40と第2インクヘッド50とは、副走査方向Xにずれた配置を取っていてもよい。第1インクヘッド40と第2インクヘッド50とが副走査方向Xに完全にずれた配置を取れば、1つインクヘッドの複数のノズルを上流側と下流側に分けて使用する形態ではなくなり、1つのインクヘッドのすべてのノズルを使用することができる。また、第1インクヘッド40と第2インクヘッド50とが副走査方向Xに部分的にずれた配置を取れば、完全にずれた配置の場合よりも使用可能なノズルの数は減少するものの、キャリッジ25をコンパクトにすることができる。あるいは、第1インクヘッド40と第2インクヘッド50とは、それぞれ別々のキャリッジに搭載され、別々のキャリッジモータによって移動可能なように構成されていてもよい。さらには、「第1印刷層」の印刷と、「第2印刷層」の印刷とは、完全に別工程として分けて行われてもよい。
【0088】
上記した実施形態では、インクを吐出させる方式は、圧電素子45bの変位によって圧力室45aの体積を変化させる方式、いわゆるピエゾ駆動式であった。しかしながら、本発明に係るプリンタのインク吐出方式は、例えば、二値偏向方式または連続偏向方式などの各種の連続方式、および、サーマル方式などの各種のオンデマンド方式であってもよい。本発明に係るインク吐出方式は、限定されない。
【0089】
上記した実施形態では、キャリッジ25が主走査方向Yに移動し、記録媒体5が副走査方向Xに移動するように構成されていたが、これには限定されない。キャリッジ25と記録媒体5との移動は相対的なものであり、そのどちらが主走査方向Yまたは副走査方向Xに移動してもよい。例えば、記録媒体5は移動不能に配置され、キャリッジ25が主走査方向Yおよび副走査方向Xの両方向に移動可能なように構成されていてもよい。また、キャリッジ25および記録媒体5のいずれもが両方向に移動可能なように構成されていてもよい。
【0090】
さらに、ここに開示される技術は様々なタイプのインクジェットプリンタに適用することができる。上記実施形態で示したロール状の記録媒体5を搬送する、所謂、Roll-to-Rollタイプのプリンタの他、例えばフラットベッドタイプのインクジェットプリンタにも同様に適用することができる。また、プリンタ10は独立したプリンタとして単独で使用されるものに限定されず、他の装置と組み合わせたものであってもよい。例えば、プリンタ10は、他の装置に内蔵されていてもよい。