(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6563441
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】パイロット式電磁弁
(51)【国際特許分類】
F16K 31/06 20060101AFI20190808BHJP
【FI】
F16K31/06 305E
F16K31/06 305K
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-124690(P2017-124690)
(22)【出願日】2017年6月26日
(65)【公開番号】特開2019-7572(P2019-7572A)
(43)【公開日】2019年1月17日
【審査請求日】2018年1月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(74)【代理人】
【識別番号】110002608
【氏名又は名称】特許業務法人オーパス国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100091694
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 守
(72)【発明者】
【氏名】加藤 真介
(72)【発明者】
【氏名】伊東 雅晴
【審査官】
角田 貴章
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016−089969(JP,A)
【文献】
特開2004−340560(JP,A)
【文献】
特開2003−307371(JP,A)
【文献】
実開昭57−072064(JP,U)
【文献】
特開2001−295946(JP,A)
【文献】
特開2014−214842(JP,A)
【文献】
特開2016−017583(JP,A)
【文献】
特開平07−035257(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 1/00−1/54
7/00−7/20
13/00−17/168
25/00−25/04
29/00−29/02
31/06−31/165
31/36−31/42
33/00
39/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流入口及び流出口が形成され、その間に主弁座及び主弁室が形成された弁本体と、
パイロット通路及び均圧孔が形成され、前記主弁座と接離可能となるように前記主弁室内に配置された主弁体と、
前記パイロット通路の端部に設けられたパイロット弁座と接離可能となるようにされたパイロット弁体と、
前記パイロット弁体を駆動するための、コイルが巻回されたソレノイド及び前記主弁体を摺動可能に収容する主弁体収容部を有する吸引子と、
前記パイロット弁体に連結され、前記吸引子に吸引されるプランジャと、を備え、
前記ソレノイドへの通電により前記パイロット弁体を駆動して前記パイロット通路内の流体の流れを制御することにより前記主弁体を駆動するパイロット式電磁弁において、
前記主弁体はアルミニウム材料で構成されると共に、前記吸引子は磁性材料によって構成され、
前記主弁体の、少なくとも前記吸引子と摺動する面は、アルマイト加工処理層で構成されたことを特徴とするパイロット式電磁弁。
【請求項2】
前記吸引子を構成する磁性材料は、磁性ステンレスであることを特徴とする請求項1記載のパイロット式電磁弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイロット式電磁弁に関し、特に、自動車用空調機の冷凍サイクル等に用いられ、幅広い温度仕様領域においても動作が良好なパイロット式電磁弁に関する。
【背景技術】
【0002】
流体の流れを制御する弁の一種として電磁弁がある。電磁弁は、流路を開閉する弁体を備えており、ソレノイドにより駆動されるプランジャと呼ばれる可動子を駆動し、その動きによって、弁体を動作させて流路を開閉制御するものである。
【0003】
さらに、この電磁弁を弁体の駆動方式によって分類すれば、直動式電磁弁とパイロット式電磁弁に分類される。主弁の弁体が駆動プランジャに直結しているタイプを「直動式」と呼び、流体の圧力により主弁の弁体をダイヤフラムやピストンを介して駆動し、それを制御するタイプを「パイロット式」と呼ぶ。ここで、パイロット式は、ソレノイドを動作させる電力を小さくすることが可能であり、小形・軽量化の要求が厳しい自動車用空調機の冷凍サイクル等にも用いられている。
【0004】
このように、自動車用空調機の冷凍サイクルに用いることのできるパイロット式電磁弁が従来知られており、例えば、特許文献1には、パイロット式電磁弁が組み込まれた複合弁が開示されている。この複合弁は、構成を簡単にして弁形状を小型化でき、更に、製造工数を少なくして製造コストを抑制することができる。また、複合弁の構成を簡略化することでシステムとしての軽量化を図るようにしている。
【0005】
電磁弁の軽量化対策は、自動車用空調機の冷凍サイクルに用いる機器においては大きな課題の一つである。そして、この軽量化のためには、主要な部材である弁本体(電磁弁ボディ)等にアルミニウム材を採用するのが効果的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−340560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1記載のパイロット式電磁弁においては、パイロット弁を作動させる吸引子に、主弁体を収容し摺動させる摺動部(主弁体収容部)が一体形成されている。このような構成を有する場合、吸引子は磁性材料で形成する必要があるが、その他の弁本体や主弁体などは上述のようにアルミニウム材で形成すると、当該パイロット式電磁弁の軽量化に繋げることが可能となる。
【0008】
ここで、パイロット式電磁弁は、パイロット弁を電磁力により動作させ、これにより主弁体の前後の差圧を生じさせて該主弁体を動作させるという構造を有している。そのため、特に主弁体とこれと摺接する部材とがそれぞれ線膨張係数の相違した材料で構成されている場合、例えば自動車用として適用される際には、−40℃〜80℃程度の温度仕様範囲内での摺動部材間の適切なクリアランスの維持が課題とされる。
【0009】
この課題は、主弁体をアルミニウム材料で構成し、吸引子を例えば磁性ステンレス材料で構成する際には、磁性ステンレスの線膨張係数は約10.4×10
−6/℃であるのに対し、アルミニウムの線膨張係数は約23.6×10
−6/℃であるので、主弁と吸引子との摺動部分で顕著に現れる。
【0010】
本発明は、電磁弁の主弁体をアルミニウム材料で構成し、該主弁体を収容し摺動可能とする主弁体収容部を備えた吸引子を磁性ステンレスで構成する場合において、アルミニウム製の主弁体の摺動部分にアルマイト処理を施すことによって、主弁体の摺動部分の線膨張係数を吸引子の主弁体収容部の線膨張係数に近づけて、このような課題を解決するものである。つまり、電磁弁の使用環境による大きな温度変化(例えば−40℃〜80℃程度)においても、アルミニウム製の主弁体と磁性ステンレス製の吸引子の間のクリアランスの変動を小さく保つことができ、クリアランスに異物が入り込んで主弁の動作がロックされることを防止でき、主弁体の表面強度も増すことによって、耐異物性及び作動耐久性を向上させることができるものである。
【0011】
アルマイト処理とは、アルミニウムを電解処理してアルミニウム表面に人工的に酸化被膜を形成する表面処理であり、アルミニウムの耐食性・耐候性を高めるために行われるものである。しかし、このアルマイト処理は、処理層の母材内部への浸透(例えば10μm程度)があると同時にアルミ表面よりも外側へ同等深さの酸化被膜の成長もあるために、部品の寸法管理が難しいものである。したがって、耐食性について考慮する必要がない場合にはアルマイト処理を実施することはしない。つまり、自動車用空調機の冷凍サイクルに用いられるパイロット式電磁弁の弁本体の内面においては、冷媒が通過するだけの部分であるのでアルマイト処理をしないのが普通である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のパイロット式電磁弁は、流体の流入口及び流出口が形成され、その間に主弁座及び主弁室が形成された弁本体と、パイロット通路及び均圧孔が形成され、前記主弁座と接離可能となるように前記主弁室内に配置された主弁体と、前記パイロット通路の端部に設けられたパイロット弁座と接離可能となるようにされたパイロット弁体と、前記パイロット弁体を駆動するための、コイルが巻回されたソレノイド及び前記主弁体を摺動可能に収容する主弁体収容部を有する吸引子と、前記パイロット弁体に連結され、前記吸引子に吸引されるプランジャと、を備え、前記ソレノイドへの通電により前記パイロット弁体を駆動して前記パイロット通路内の流体の流れを制御することにより前記主弁体を駆動するパイロット式電磁弁において、前記主弁体はアルミニウム材料で構成されると共に、前記吸引子は磁性材料によって構成され、前記主弁体の、少なくとも前記吸引子と摺動する面は、アルマイト加工処理層で構成されたことを特徴とする。
【0013】
さらに、本発明のパイロット式電磁弁は、前記吸引子を構成する磁性材料は、磁性ステンレスであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明においては、アルミニウム製主弁体における磁性材料製吸引子との摺動部分がアルマイト加工処理層で構成されているので、主弁体の線膨張係数が吸引子の線膨張係数に近くなり、温度変化による主弁体と吸引子間のクリアランスの変化が小さくなる。そのため、パイロット式電磁弁の幅広い温度領域での良好な摺動動作が可能となる。さらに、環境温度の変化による、クリアランス部の流量変化が小さくなり、開閉動作の応答性が向上する。また、主弁体の摺動部分の表面硬度も向上し、耐コンタミ性、耐摩耗性も向上する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係るパイロット式電磁弁の構成を説明する縦断面図であり、パイロット弁及び主弁の両方を開いた全開状態(ソレノイドに通電しない状態)を示すものである。
【
図2】本発明の実施形態に係るパイロット式電磁弁の構成を説明する縦断面図であり、パイロット弁及び主弁の双方を閉じた全閉状態(ソレノイドに通電した状態)を示すものである。
【
図3】本発明の実施形態に係るパイロット式電磁弁の構成を説明する縦断面図であり、ソレノイドへの通電を解除した直後における、パイロット弁のみが開いた状態を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態に係る電磁弁について
図1〜
図3を参照して説明する。ここで、
図1は、本発明の実施形態に係る電磁弁の構成を説明する図で、全開状態を示すものであり、
図2は、全閉状態を示すものであり、
図3は、パイロットポートのみ開状態を示すものである。なお、以下の実施形態の説明においては、上下・左右・内外の方向は、
図1乃至
図3の紙面内における方向を示すものであり、これによって本発明の技術的範囲を狭める解釈が為されるものではない。
【0017】
本発明の実施形態のパイロット式電磁弁100は、弁本体30内に主弁部10及びパイロット弁部20を備えた自動車用空調機の冷凍サイクル等に用いることのできるパイロット式電磁弁であり、主弁部10の開閉により、流体の流入口31と流出口32間の流体の流れを開閉制御する。流入口31と流出口32はバルブボディとしての弁本体30に形成されており、流入口31と流出口32との間には、主弁室33が設けられている。主弁室33内には、後述のように主弁体40が上下に摺動可能に収容されている。当該主弁体40の摺動方向の一方側(図示の実施例では下方)には主弁部10が構成され、他方側(図示の実施例では上方)にはパイロット弁部20が構成されている。弁本体30には、雌ねじ30b、30cが形成されている。弁本体30及び主弁体40は、アルミニウムあるいはアルミニウム合金等のアルミニウム材料により作成されている。
【0018】
電磁弁100の上部中央には、パイロット弁体60を摺動させるプランジャ50が、下方に開放したパイプ51内に配置されている。パイロット弁体60は、プランジャ50に連結されており、プランジャ50と共に上下にパイプ51内を摺動可能に構成されている。つまり、プランジャ50は、ソレノイド70の作動によりパイプ51内を上下に摺動する。ソレノイド70の作動により、プランジャ50を駆動する手段として、吸引子80が設けられている。磁性ステンレス製の吸引子80は、適宜な制御手段(図示せず)によりソレノイド70に通電されると磁化し、スプリング52の弾発力に打ち勝ってプランジャ50を下方に吸引する。プランジャ50を収容するパイプ51は、下方に開放しており、かしめ又は溶接等の適宜手段により吸引子80に固定されている。ソレノイド70は、コイル70aが巻回されたボビン70bの周囲を磁性材より形成されたヨーク70cで囲繞することにより構成されている。ヨーク70cの下側(弁本体側)には外側に張り出す張出部70dが形成されている。
【0019】
吸引子80は、全体的には上下に貫通孔が形成された多段の筒形状をしており、パイプ51が取り付けられる。この状態で、吸引子80は弁本体30に形成された上部大径穴部30aに挿入あるいは螺着され、その後、パイプ51の外周に挿入されたソレノイド70の張出部70dに形成された貫通孔に雄ねじ71を挿入し、これを弁本体30に形成された雌ねじに螺合することにより、吸引子80は弁本体30に押え付けられ、固定される。吸引子80の筒形状は概略では上部の小径部81と下部の大径部82とから成り、小径部81にパイプ51の下側開放端が固定されており、大径部82は前述のように弁本体30に固定されている。小径部81に固定されたパイプ51にはプランジャ50が上下に摺動可能に収納される。
【0020】
吸引子80の大径部82には、その内側に円筒状の主弁体収容部(空間部)82aが形成され、この主弁体収容部82a内に主弁体40が上下に摺動可能に収容されている。当該空間が主弁体40により上下に分割されることにより、当該空間の下部が主弁室33となり上部がパイロット弁室34とされている。吸引子80の大径部82の外側は、適宜Oリング83により弁本体30との間がシールされ、大径部82の内側は、大径部82内を摺動する主弁体40の外周面(吸引子80と摺動する部分)との間が適宜主弁体シーリング43によりシールされ、冷媒の漏出がないように構成されている。
【0021】
本発明の図示した実施例においては、吸引子80の小径部81と大径部82とを一つの部材として段差を介して一体構造の円筒形状部材を構成しているが、勿論、実施形態によっては、図示はしないが、小径部81と大径部82とを別部材により構成して、適宜手段により両者を固定するものでも良い。要は、ソレノイド70への通電により、吸引子80がプランジャ50を吸引して駆動できれば良い。本発明においては、プランジャ50を吸引駆動し、主弁体40を上下摺動可能に収容する部材を吸引子として称している。吸引子80が一つの部材により構成されているか、又は、複数の部材により構成されているかが問題ではない。
【0022】
主弁部10は、主弁体40の下側に取り付けられた主弁パッキン41と、弁本体30の流入口31と流出口32との間に形成された主弁座35により構成されており、パイロット弁部20は、パイロット弁体60の下方に取り付けられたパイロット弁パッキン61と、主弁体40の上側に形成されたパイロット弁座42によって構成されている。主弁体40には、パイロット通路45と均圧孔44が形成されている。パイロット通路45の端部に、パイロット弁座42が設けられている。均圧孔44は、主弁室33とパイロット弁室34とを連通するものであり、該均圧孔44の断面積はパイロット通路45の断面積よりも小とされている。
【0023】
この均圧孔44の形成により、主弁室33とパイロット弁室34とを均圧化し、主弁体40の開閉作動を容易・円滑化する。また、主弁部10が閉状態において、当該電磁弁100に接続された図示されない圧縮機からの急激な圧力変化、例えば圧縮機を起動させたときに対しても速やかに主弁室33の冷媒をパイロット弁室34に流出させ主弁部10が開弁しないように、又は、開弁し難くする作用を奏するものである。
【0024】
このパイロット式電磁弁100においては、弁本体30と主弁体40とはアルミニウム又はアルミニウム合金等のアルミニウム材料で構成し、吸引子80を磁性ステンレスで構成している。そして、主弁体40の全体、あるいは主弁体40の、少なくとも吸引子80の主弁体収容部82aと摺動する面はアルマイト加工処理層で構成している。
【0025】
主弁体40をアルマイト処理する際には、電気的に陽極に接合した主弁体40を電解液の中に浸漬して行う。この際、主弁体40全体を電解液の中に浸漬して処理を行って、主弁体40全体の表面にアルマイト処理層を形成しても良いし、図示された主弁体40を上下反転して主弁体40の吸引子80と摺動する面のみにアルマイト加工処理層を形成しても良い。要は、吸引子80の摺動内面と主弁体40の摺動外面の相互の線膨張係数を近づけることができれば良い。
【0026】
電解液には例えば希硫酸を用い、溶液の濃度、温度、浸漬時間等を管理することで目的とするアルマイト膜厚を得ることができる。また、この処理において表面に微細孔が発生した場合には、所定の封孔処理にてこの微細孔を封止することができる。
【0027】
このアルマイト処理によって、例えば10μmのアルマイト処理層を形成する際には、処理前の主弁体40のアルミニウム素材の内部に5μm程度の浸透膜が形成され、素材の外側に5μm程度の成長皮膜が形成される。従って、本発明の対象製品である筒状の主弁体40の場合は最終製品の外径寸法Dに対して、約10μm小さい製品(直径:D−10μm)の製品を鋳造又は機械加工により得てから、それをアルマイト処理加工することにより、目的の寸法の主弁体40を得ることができる。
【0028】
次に、電磁弁100の動作について、該電磁弁100が冷凍サイクルに適用されている場合を例にとり、
図1乃至
図3を用いて説明する。
図1は、ソレノイド70(コイル70a)へ通電されていない状態を示している。この場合、吸引子80には吸引力は発生しないから、スプリング52の弾発力により、プランジャ50はパイプ51内を上方に持ち上げられ、パイロット弁部20は開状態とされている。また主弁体40は、主弁体スプリング46の弾発力により主弁室33内で上方に持ち上げられ、主弁部10は開状態とされている。
【0029】
この状態で、圧縮機(図示なし)を運転すれば、流入口31から、主弁室33内で開いている主弁部10を介し、流出口32を通じて例えば高温高圧の冷媒が流れる。また、主弁室33から均圧孔44を経由してパイロット弁室34に流れる冷媒の量よりも、パイロット弁室34からパイロット通路45を経由して主弁室33に流れる冷媒の量の方が大きいので、パイロット弁室34の圧力が主弁室33の圧力よりも小さくなって主弁体40には上方へ作用する力が発生し、主弁体スプリング46の弾発力と共に主弁部10は十分な開状態を保持し、流入口31から流出口32への流れが維持される。
【0030】
次に、
図1に示す状態でソレノイド70に通電すると、吸引子80及びプランジャ50が磁化し、両者間に電磁吸引力が発生して、プランジャ50がスプリング52の弾発力に抗して引き下げられる。プランジャ50には、下方に、パイロット弁体60が一体的に固定されているので、パイロット弁体60はプランジャ50の移動と同じくパイプ51内を上下に摺動する。吸引子80による吸引力により、プランジャ50が引き下げられ、それと共にパイロット弁体60も下方に摺動される。これにより、パイロット弁体60の下方に設けられたパイロット弁パッキン61が主弁体40の上方側に形成されたパイロット弁座42に当接し、パイロット弁部20を閉状態とする(すなわちパイロット通路45を閉塞する)。
【0031】
パイロット通路45が閉塞されると、パイロット弁室34と主弁室33とを連通する通路が均圧孔44だけとなり、両弁室の圧力差がなくなる。そしてさらに、プランジャ50が主弁体40を下方に押し下げられてその最下点まで摺動すると、主弁体40の下方側に形成した主弁パッキン41が弁本体30内に形成された主弁座35に当接して主弁部10を閉状態とする。これにより、
図2に示すように、主弁部10も閉状態とされ、冷媒等の流体は、流路が閉じられて流入口31から流出口32への流れが阻止される。
【0032】
図2に示す状態で、ソレノイド70への通電が停止させると、ソレノイド70による吸引子80の電磁吸引力が無くなり、プランジャ50はスプリング52の弾発力により上方へ押し上げられ、プランジャ50と共にパイロット弁体60が上方に移動して、パイロット弁パッキン61が主弁体40の上面側に設けたパイロット弁座42から離れてパイロット弁部20が開状態となり、
図3に示す状態となる。
【0033】
これにより、主弁体40の中心部に設けたパイロット通路45を介して、パイロット弁室34が流出口32と連通され、パイロット弁室34内の圧力が高圧から低圧へ移行する。
【0034】
これにより、主弁体40は上方に移動して、主弁体40の下面側に固定した主弁パッキン41が主弁座35から離れて、開弁状態となり、
図1の状態となる。
【0035】
さて、前述の説明においては、パイロット弁体60の先端にはパイロット弁座42を開閉するパイロット弁パッキン61が設けられ、また主弁体40の先端には主弁座35を開閉する主弁パッキン41が設けられるものとして説明したが、本発明はこれのみに限定されることはなく、パイロット弁座42及び/あるいは主弁座35を良好に閉鎖することができればパイロット弁パッキン61及び/あるいは主弁パッキン41は特に設けられなくても良いことは当然である。
【0036】
また、主弁体40の全体又は一部をアルマイト加工処理層で構成するものとして説明したが、弁本体30にも例えば防錆効果を高める為にアルマイト加工処理層を形成しても良い。この場合、アルマイト加工処理層は弁本体30の内外全体に亘って形成しても良いが、弁本体30の、外気と接触する外周面だけにアルマイト加工層を形成しても良い。
さらに、吸引子80は磁性ステンレスにより形成されるものとしたが、本発明はこれのみに限定されることはなく、磁性材料であればいかなる材料であっても良い。
【符号の説明】
【0037】
100・・・パイロット式電磁弁
10・・・主弁部
20・・・パイロット弁部
30・・・弁本体
31・・・流入口
32・・・流出口
33・・・主弁室
34・・・パイロット弁室
35・・・主弁座
40・・・主弁体
41・・・主弁パッキン
42・・・パイロット弁座
43・・・主弁体シーリング
44・・・均圧孔
45・・・パイロット通路
46・・・主弁体スプリング
50・・・プランジャ
51・・・パイプ
52・・・スプリング
60・・・パイロット弁体
61・・・パイロット弁パッキン
70・・・ソレノイド
80・・・吸引子
81・・・小径部
82・・・大径部
83・・・Oリング