(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6563475
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】希土ナノマテリアル溶解・増強時間分解蛍光免疫測定法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/543 20060101AFI20190808BHJP
【FI】
G01N33/543 501P
G01N33/543 575
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-501447(P2017-501447)
(86)(22)【出願日】2014年8月22日
(65)【公表番号】特表2017-509902(P2017-509902A)
(43)【公表日】2017年4月6日
(86)【国際出願番号】CN2014085075
(87)【国際公開番号】WO2015143830
(87)【国際公開日】20151001
【審査請求日】2017年6月9日
(31)【優先権主張番号】201410118864.3
(32)【優先日】2014年3月27日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】516290586
【氏名又は名称】中国科学院福建物質結構研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】陳学元
(72)【発明者】
【氏名】周山勇
(72)【発明者】
【氏名】鄭偉
(72)【発明者】
【氏名】馬恩
(72)【発明者】
【氏名】黄明東
(72)【発明者】
【氏名】陳卓
(72)【発明者】
【氏名】塗大涛
【審査官】
大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】
中国特許出願公開第102305854(CN,A)
【文献】
中国特許出願公開第103224787(CN,A)
【文献】
特表2010−501481(JP,A)
【文献】
特開2004−279429(JP,A)
【文献】
特表2005−519305(JP,A)
【文献】
米国特許第06030840(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48 − 33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
希土ナノマテリアル溶解・増強時間分解蛍光免疫測定方法であり、
上記方法では、時間分解蛍光免疫測定に用いられる希土ナノマテリアルを用いて生体分子を標識しており、
標識された上記生体分子を投入して、免疫複合体を形成してから、増強液を投入し、希土ナノマテリアルを希土イオンに溶解させると共に、増強液中のキレートと強蛍光信号を有する分子を形成し、時間分解測定による蛍光信号の測定を行い、
上記生体分子は、ビオチン、アビジン、抗体或いは核酸アプタマを含み、
化学配位法或いは物理吸着法により上記生体分子への上記希土ナノマテリアルの標識を行っており、
上記希土ナノマテリアルは、XYF4ナノ結晶であり、
上記Xは、リチウム、ナトリウム、或いはカリウムから選ばれる一種或いは多種であり、
上記Yは、ユウロピウム、サマリウム、テルビウム、或いはジスプロシウムの四つの元素から選ばれる一種或いは多種である、方法。
【請求項2】
上記方法の具体的なステップは以下であることを特徴とする請求項1に記載の方法:
1)捕捉抗体或いは抗原を、物理吸着或いは共有結合の方式で微孔プレート上に固定させる;
2)シーリング液でシールする;
3)測定待ちの抗原或いは測定待ちの抗体を含むサンプルを投入する;
4)上記時間分解蛍光免疫測定に用いられる希土ナノマテリアル標識の生体分子を投入して、免疫複合体を形成する;
5)増強液を投入し、時間分解を利用した蛍光信号への測定を行う。
【請求項3】
上記測定待ちの抗原を投入する際、上記生体分子は、ビオチン、アビジン、抗体或いは核酸アプタマから選ばれ、
上記測定待ちの抗体を投入する際、上記生体分子は、ビオチン、アビジン或いは核酸アプタマから選ばれることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
上記のステップ4)は、上記時間分解蛍光免疫測定に用いられる希土ナノマテリアル標識の抗体を投入して、免疫複合体を形成する、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
上記のステップ4)は、以下のステップに分解できる、請求項2に記載の方法:
(a)ビオチン標識の抗体を投入する;
(b)上記時間分解蛍光免疫測定に用いられる希土ナノマテリアル標識のアビジンを投入して、免疫複合体を形成する。
【請求項6】
上記のステップ4)は、また以下のステップに分解できる:
(a’)ビオチン標識の抗体を投入する;
(b’)アビジンを投入する;
(c’)上記時間分解蛍光免疫測定に用いられる希土ナノマテリアル標識のビオチンを投入して、免疫複合体を形成する;
ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項7】
上記の増強液は、緩衝液、β-ジケトン、非イオン性界面活性剤、及び水を含む、請求項2から6までの何れの一項に記載の方法。
【請求項8】
サンドイッチ法測定、直接法測定或いは競合法測定を含む、請求項1から6までの何れの一項に記載の方法。
【請求項9】
サンドイッチ法測定、直接法測定或いは競合法測定を含む、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、生体分子標識に用いられる希土ナノマテリアル、その標識方法及びそのものが媒介する蛍光免疫測定法であり、具体的には、生体分子標識に用いられる希土マテリアル、その標識方法、及び希土ナノマテリアルにより溶解・増強実現された時間分解蛍光免疫測定法である。
【0002】
〔背景技術〕
放射免疫測定(RIA)の測定技術は、放射能汚染、半減期と有効期とが短いなどの弱点があるため、間もなく廃止される。酵素結合免疫吸着法(ELISA)の感度と再現性とは、全て放射免疫測定を下回り、その酵素活性と発色基質との安定性は、改善すべきである。化学ルミネッセンス免疫検定(CLIA)は、発光時間が短いため繰り返し測定することができないし、環境物質に影響され易く、且つ試薬の価格が高いため、普及できない。
【0003】
上記に対して、時間分解免疫測定(TRFIA)は、高感度、低バックグラウンド、優れた安定性、広いリニアレンジ(linear range)を持っているため、今の時点で最も発展可能性のある非放射性免疫標識技術と公認されており、近年内に開発された測定システムは、下記の通り:
解離・増強ランタノイド系時間分解免疫測定法(DELFIA)――最も幅広く応用されており、トレーサー、二官能性キレート剤、増強剤で構成されている。蛍光増強は、極高感度を持たせる重要な要因の一つである。ランタノイドイオンは、増強液とマイクロカプセルを形成することにより、水分子からの消光を効率よく防止するため、蛍光を極めて大きく増強することができる。そのほか、二官能性キレート剤も肝心要素の一つであり、ユウロピウム(Eu)イオンは、最優先される標識物質としてタンパク質との標識比率は10〜20である。しかし、標識物質としての二官能性キレートは、外部物質(例えば、外因性希土イオン、及びエチレンジアミン四酢酸、ヘパリンなどの抗凝固剤)に影響され易いため、測定する標本は必ず血清であり、操作基準が厳しく、価格も安くない。
【0004】
固相時間分解免疫測定(FIAgen)――二官能性希土キレートを標識物質とする時間分解免疫測定である。その利点は、増強液を投入する必要なく、直接蛍光を測定することが出来るが、測定感度はDELFIAを大きく下回る。
【0005】
そのほか、希土キレートが包まれている蛍光ナノ粒子は、時間分解免疫測定にも用いられている。各々のナノ粒子中には数千個の希土キレートが含まれており、測定感度を極めて大きく向上させた。しかし、希土キレートが漏れ易いことと光漂白され易いなどの不安定要素がる。
【0006】
希土ナノマテリアルは、安定した性質、大きい比表面積、優れた化学修飾性、安い合成コストなどの利点があるため、現在、一般的に可能性があると見られている次世代の蛍光生体標識材料と言える。但し、希土ナノマテリアルの発光は、希土イオン4f配置の電子間遷移吸収増感によって発光するため、モル吸光係数が小さく、発光が弱い。希土ナノマテリアルを標識物質とした直接測定は、感度が低いため応用範囲が限られている。
【0007】
〔発明内容〕
本発明の目的は、上記の先行技術の不足を克服し、時間分解蛍光免疫測定に用いられる高感度の希土ナノマテリアルで生体分子を標識する方法を提供する。
【0008】
本発明のもう一つの目的は、希土ナノマテリアルによって溶解・増強された時間分解蛍光免疫測定法を提供する。
【0009】
本発明は、下記のような技術案を提供する。
【0010】
時間分解蛍光免疫測定法(TRFIA)に用いられる希土ナノマテリアルで標識された生体分子であり、上記の生体分子は、ビオチン、アビジン、抗体或いは核酸アプタマを含み;上記希土ナノマテリアルは、ユウロピウム、サマリウム、テルビウム、ジスプロシウム中の一種または多種を含む。
【0011】
本発明に基づき、配位化学法或いは物理吸着法によって上記生体分子を標識する。
【0012】
本発明に基づき、上記希土ナノマテリアルは、ユウロピウム、サマリウム、テルビウム、ジスプロシウム中の一種或いは多種を含む希土のフッ化物、酸化物、フッ素酸化物、塩素酸化物、希土リン酸塩、ホウ酸塩、ケイ酸塩、モリブデン酸塩、タングステン酸塩、炭酸塩ナノ結晶から選ばれる。
【0013】
好ましくは、上記希土ナノマテリアルは、XYF
4ナノ結晶であり、上記Xは、リチウム、ナトリウム、カリウムなどから選ばれる一種或いは多種であり、上記Yは、ユウロピウム、サマリウム、テルビウム、ジスプロシウムから選ばれる一種或いは多種である。
【0014】
本発明は、また下記の通りの技術案を提供する。
【0015】
時間分解蛍光免疫測定法(TRFIA)に用いられる希土ナノマテリアルで生体分子を標識する標識方法であり、上記希土ナノマテリアルは、配位化学法或いは物理吸着法により生体分子を標識し、上記生体分子は、ビオチン、アビジン、抗体或いは核酸アプタマを含む。
【0016】
本発明に基づき、上記希土ナノマテリアルは、ユウロピウム、サマリウム、テルビウム、ジスプロシウム中の一種或いは多種を含む。
【0017】
本発明に基づき、上記希土ナノマテリアルは、ユウロピウム、サマリウム、テルビウム、ジスプロシウム中の一種或いは多種を含む希土のフッ化物、酸化物、フッ素酸化物、塩素酸化物、希土リン酸塩、ホウ酸塩、ケイ酸塩、モリブデン酸塩、タングステン酸塩、炭酸塩ナノ結晶から選ばれる。
【0018】
本発明に基づき、上記希土ナノマテリアルは、好ましくはXYF
4ナノ結晶であり、上記Xは、リチウム、ナトリウム、カリウムなどから選ばれる一種或いは多種であり、上記Yは、ユウロピウム、サマリウム、テルビウム、ジスプロシウムから選ばれる一種或いは多種である。
【0019】
本発明は、また下記の通りの技術案を提供する。
【0020】
希土ナノマテリアルの溶解により増強された時間分解蛍光免疫測定法であり、上記方法は、上記時間分解蛍光免疫測定に用いられる希土ナノマテリアルで標識された生体分子を採用したことを特徴とする時間分解蛍光免疫測定法である。
【0021】
本発明に基づき、上記方法は、以下のものことを含む:上記時間分解蛍光免疫測定に用いられる希土ナノマテリアルで標識された生体分子を投入して、免疫複合体を形成した後、増強液を投入して、希土ナノマテリアルを溶解させ希土イオンの形で存在させ、増強液中のキレートと強い蛍光信号を有する分子を形成させ(希土ナノミセル)、時間分解を利用した蛍光信号を測定する。
【0022】
本発明に基づき、上記方法の具体的ステップは以下の通り:
1)捕捉抗体或いは抗原を、物理吸着或いは共有結合の方法で微孔プレートに固定する。
【0023】
2)シーリング溶液によるシール処理を行う。
【0024】
3)測定待ちの抗原或いは測定待ちの抗体を含むサンプルを投入する。
【0025】
4)上記時間分解蛍光免疫測定に用いられる希土ナノマテリアル標識の生体分子を投入することにより免疫複合体を形成する。
【0026】
5)増強液を投入し、時間分解を利用した蛍光信号の測定を行う。
【0027】
本発明に基づき、測定待ちの抗原を投入する際、上記生体分子は、ビオチン、アビジン、抗体或いは核酸アプタマーから選ばれる。
【0028】
本発明に基づき、測定待ちの抗体を投入する際、上記生体分子は、ビオチン、アビジン或いは核酸アプタマーから選ばれる。
【0029】
本発明に基づき、上記のステップ4)は、以下でよい。
【0030】
上記時間分解蛍光免疫測定に用いられる希土ナノマテリアル標識の抗体を投入して、免疫複合体を形成する。
【0031】
本発明に基づき、上記のステップ4)は、また以下のステップに分解してよい:
(a)ビオチン標識の抗体を投入する。
【0032】
(b)上記の時間分解蛍光免疫測定に用いられる希土ナノマテリアル標識のアビジンを投入して、免疫複合体を形成する。
【0033】
本発明に基づき、上記のステップ4)は、また以下のステップに分解してよい:
(a’)ビオチン標識の抗体を投入する;
(b’)アビジンを投入する;
(c’) 上記の時間分解蛍光免疫測定に用いられる希土ナノマテリアル標識のビオチンを投入して、免疫複合体を形成する。
【0034】
本発明に基づき、上記の希土ナノマテリアルは、ユウロピウム、サマリウム、テルビウム、ジスプロシウム中の一種或いは多種を含む。
【0035】
本発明に基づき、上記希土ナノマテリアルは、ユウロピウム、サマリウム、テルビウム、ジスプロシウム中の一種或いは多種を含む希土のフッ化物、酸化物、フッ素酸化物、塩素酸化物、希土リン酸塩、ホウ酸塩、ケイ酸塩、モリブデン酸塩、タングステン酸塩、炭酸塩ナノ結晶から選ばれる。
【0036】
本発明に基づき、上記希土ナノマテリアルは、好ましくは、XYF
4ナノ結晶であり、上記Xは、リチウム、ナトリウム、カリウムなどから選ばれる一種或いは多種であり、上記Yは、ユウロピウム、サマリウム、テルビウム、ジスプロシウム四つの元素から選ばれる一種或いは多種である。
【0037】
本発明に基づき、上記の希土ナノマテリアルは、ビオチン、アビジン、抗体或いは核酸アプタマーと配位化学或いは物理吸着による標識方法を採用する。
【0038】
本発明に基づき、上記シーリング溶液は、本分野の通常なる溶液であり、市販品購入または自行合成することができある。上記シーリング溶液は、ウシ血清タンパク(BSA)シーリング溶液或いはエタノールアミンシーリング溶液でよい。
【0039】
本発明に基づき、上記の増強液は、本分野の通常なる増強液でよいが、好ましくは、主に緩衝液、β-ジケトン、非イオン性界面活性剤と協力剤からなる。
【0040】
本発明基づき、上記緩衝液は、Triton X-100から選ばれる;上記β-ジケトンは、ナフトエ酸トリフルオロアセトンから選ばれ、上記非イオン性界面活性剤は、トリ-n-オクチルホスフィンオキシドから選ばれ、上記協力剤は、水から選ばれる。
【0041】
本発明基づき、上記増強液は、主にTriton X-100、ナフトエ酸トリフルオロアセトン、トリ-n-オクチルホスフィンオキシド、蒸留水からなる。
【0042】
本発明に基づき、その測定法には、サンドイッチ法測定、直接法測定或いは競合法測定が含まれる。
【0043】
本発明中の、上記XYF
4ナノ結晶は、具体的にNaEuF
4ナノ結晶のような結晶は、当業者既知の方法で製造し得ることが出来る。例えば以下の方法により製造し得る。
【0044】
1)Eu(Ac)
3を計量して、オレイン酸とオクタデセンとの混合溶剤中に投入し、窒素雰囲気で160℃の攪拌・溶解を行い、A液とする;
2)NH
4Fと NaOHとを計量し、メタノールを投入して溶解させ、B液とする;
3)A液を室温まで冷却してから、滴下ピペットにでB液をゆっくりとA液中に滴下し、空気を完全排出し、窒素雰囲気で60℃まで昇温させ、攪拌しならがらメタノールを除去する;
4)120℃まで昇温させ、攪拌反応を行い、残留水分を除去する;
5)300℃まで昇温させ、攪拌反応させる;
6)室温まで冷却してから、無水エタノールを投入し、ナノ結晶を析出させる;
7)遠心操作、または無水エタノール洗浄何れかの処理を行い、好ましくは、三回洗浄する。
【0045】
その他のXYF
4ナノ結晶の製造方法は、上記方法を参考に製造出来る。
【0046】
本発明に基づき、配位化学によって上記生体分子を標識することができる。上記配位化学は、当業者既知の方法であり、NaEuF
4ナノ結晶の配位化学法によるビオチン標識を例にした場合、その方法は以下の通り:
1)油溶性NaEuF
4ナノ結晶を計量して、塩酸エタノール溶液中に溶解させる。超音波、遠心法によるナノ粒子の集積を行ってから、無水エタノールで洗浄することによりナノ結晶表面のオレイン酸を除去させてから、脱イオン水を投入して溶解させ、水溶性ナノ結晶を獲得する。
【0047】
2)スッテプ1)で合成した水溶性ナノ結晶を用意して、ビオチンとアンモニア水とを投入してから、超音波処理を行い、脱イオン水を使った遠心洗浄を行い、最後に脱イオン水中に溶解させることでよい。
【0048】
本発明に基づき、物理吸着法によって上記生体分子を標識することが出来る。上記物理吸着法は、当業者既知の方法であり、NaEuF
4ナノ結晶の物理吸着法による抗体への標識を例にした場合、その方法は以下の通り。
【0049】
1)油溶性のNaEuF
4ナノ結晶を計量して、塩酸エタノール溶液中に溶解させる。超音波、遠心法によってナノ粒子を集積してから、無水エタノールの洗浄によってナノ結晶表面のオレイン酸を除去し、脱イオン水を投入して溶解させ、水溶性ナノ結晶を獲得する。
【0050】
2)スッテプ1)で合成した水溶性ナノ結晶を用意して、抗体を投入し、リン酸塩緩衝液を投入し、室温で震動させ、遠心法によるナノ粒子の集積を行い、水洗浄してから緩衝液中に溶解させることでよい。
【0051】
本発明の有益な効果は:
1)希土ナノマテリアルを標識物質として生体分子を標識する。上記希土ナノマテリアルは、安定した性質、大きい比表面積、優れた修飾性、低いコストの利点があり、かつ各々のナノ粒子は、数千個の希土イオンを含むため、希土イオンの標識比率を極大に向上させ、外因性希土イオンからの影響を少なく受け取り、且つ抗凝固剤の影響を受けないため、適用範囲が広くなる。
【0052】
2)希土ナノマテリアル標識を含有する生体分子が免疫複合体を形成した後、増強液を投入することにより希土ナノマテリアルを希土イオンに溶解させる共に、増強液中のキレート体と新たな信号分子が形成され、分子内と分子間とのエネルギー伝達が行われたため、蛍光が百万倍近く増強され、測定感度を極大に向上させた。具体的に、本発明の測定感度は、市販の時間分解癌胎児性抗原測定キットより900倍高い。
【0053】
3)
図1の比較で示すように、本発明の方法では、各々の希土ナノマテリアル粒子が数千個の希土イオンを含むため、希土イオンの標識比率を極大に向上された。従って、蛍光信号と測定感度とを著しく増強させた。
【0054】
〔図面〕
図1:(a)伝統的解離・増強ランタノイド系時間分解免疫測定法(DELFIA)と(b)本発明の希土ナノマテリアル溶解・増強蛍光免疫測定法生体測定(DELBA)との原理イメージ図。
【0055】
そのうち、二重抗体サンドイッチ法を採用し、(a)希土キレート或いは(b)希土ナノマテリアルを使って測定待ちの抗原或いは測定待ちの抗体に対する標識を行い、免疫複合体が形成された後増強液を投入し、時間分解を利用した蛍光信号の測定を行う。
【0056】
図1から分かるように、各々の希土ナノ粒子は数千個の希土イオンを含有しており、希土イオンの標識比率を極めて大きく向上させた。増強液を投入した後に強蛍光信号分子が大量に形成されたため、蛍光信号と測定感度とを著しく増強させた。
【0057】
図2:NaEuF
4ナノ結晶の透過型電子顕微鏡(TEM)図、機器の型番:JEM-2010、製造メーカ:JEOL。
【0058】
図3:NaEuF
4ナノ結晶の粉末回折図形、機器の型番:MiniFlex2、製造メーカ:Rigaku、Cuターゲット放射波長λ=0.154187nm。
【0059】
図4:本発明の二重抗体サンドイッチ法による癌胎児性抗原測定の基準グラフ。
【0060】
図5:市販の時間分解癌胎児性抗原測定試薬キットによる癌胎児性抗原測定の基準グラフ。
【0061】
〔実施方法〕
以下、図面と実施例とを使って本発明に対してさらに説明を行う。但し、本発明の保護範囲は、以下の実施例のみに限らず、当業者は分かるように、本発明の開示内容に基づき、本発明の技術案が提示する技術特徴と範囲を逸脱しない場合、上記記載の実施例に対して様々な変化と修正とを行っても全て本発明の保護範囲内となる。
【0062】
〔実施例〕
〔実施例1〕
希土ナノマテリアル溶解・増強時間分解蛍光免疫測定法であり、その具体的なステップは以下の通り。
【0063】
1.NaEuF
4ナノ結晶の合成
1)1mmol Eu(Ac)
3を計量して、6mlのオレイン酸と15mlのオクタデセンとの混合溶剤中に投入し、空気を完全排除し、窒素雰囲気で160℃で攪拌し30分間溶解させた液をA液とする;
2)150mgのNH
4Fと100mgのNaOHとを計量して、10mlのメタノールを投入して溶解させた液をB液とする;
3)A液を室温まで冷却した後、滴下ピペットにでB液をゆっくりA液中に滴下し、空気を完全排除させ、窒素雰囲気で60℃まで昇温させ、30分間攪拌しながらメタノールを除去する;
4)120℃まで昇温させ、10分間攪拌反応させ残留水分を除去する;
5)300℃まで昇温させ、0.5時間攪拌反応させる;
6)室温まで冷却させた後、体積2倍分の無水エタノールを投入して、ナノ結晶を析出させる;
7)遠心操作、ナノ結晶を無水エタノールで三回洗浄して置く。
【0064】
図2と
図3とは、各自合成されたNaEuF
4ナノ結晶の透過型電子顕微鏡図と粉末回折図形を示している。
【0065】
2.NaEuF
4ナノ結晶によるビオチン或いは抗体の標識
A、NaEuF
4ナノ結晶の配位化学によるビオチン標識
1)ステップ1で合成したNaEuF
4ナノ結晶20mgを計量して、15ml、pH1.0の塩酸エタノール溶液中に溶解させ、超音波処理を30分間行い、遠心法でナノ粒子を集積してから、更に無水エタノールで三回洗浄することによってナノ結晶表面のオレイン酸を除去し、2mlの脱イオン水を投入して溶解させ、10mg/mlの水溶性ナノ結晶を得る。
【0066】
2)ステップ1)で1mmolのビオチンと2滴のアンモニア水を投入して、超音波処理を20分間行い、脱イオン水による遠心洗浄を3回行い、最後に1mlの脱イオン水中に溶解させて置く。
【0067】
B、NaEuF
4ナノ結晶の物理吸着法による抗体標識:ステップA−1)で合成した水溶性ナノ結晶を1ml計量して、100μgの抗体を投入し、100μlのpH8.0のリン酸塩緩衝液を投入し、室温で1h震動させてから遠心法でナノ粒子を収集し、水洗を三回行い、pH8.0の緩衝液中に溶解させて置く。
【0068】
3.増強液の調製
1gのTriton X-100、26.6mgのナフトイルトリフルオロアセトン、193mgのトリ-n-オクチルホスフィンオキシドを計量して、蒸留水で1Lに定容し、希HClを使ってpHを2.0まで調節して置く。
【0069】
4.NaEuF
4ナノ結晶の二重抗体サンドイッチ法による癌胎児性抗原測定
1)外被:0.05mol/Lの炭酸塩緩衝液を使って癌胎児性抗原の抗体を10ug/mlまで希釈してから、96孔ポリスチレンプレートの毎孔へ100μlずつ注入し、37℃で1時間培養して、孔内の液体を除去し、PBST洗浄緩衝液で3回洗浄する。
2)シーリング:0.05mol/Lの炭酸塩緩衝液で2%のウシ血清アルブミンを調製し、毎孔に300ulずつ注入し、37℃で1時間培養してから、孔内の液体を除去し、PBST洗浄緩衝液で3回洗浄する。
【0070】
3)サンプル投入:PBS緩衝液で0.00256-1000ng/mlの癌胎児性抗原のシリーズ基準溶液を調製する。その各基準溶液の濃度は、0ng/ml、0.00256ng/ml、0.064ng/ml、0.0128ng/ml、0.32ng/ml、1.6ng/ml、8ng/mlになるように調製し、37℃で1時間培養してから、孔内の液体を除去し、PBST洗浄緩衝液で3回洗浄する。
【0071】
4)NaEuF
4ナノ結晶標識の抗体を投入:PBS緩衝液で1μg/mlのNaEuF
4ナノ結晶で標識された抗体を調製して(上記ステップ2で製造した物)、毎孔に100μlずつ投入し、37℃で1時間培養して、孔内の液体を除去し、PBST洗浄緩衝液で6回洗浄する。
【0072】
5)増強液投入:毎孔に増強液を200μlずつ投入し、時間分解を利用した蛍光信号の測定を行う。具体的なパラメータは、励起波長340nm、発光波長615nm,遅延時間250μsである。
【0073】
6)基準グラフ作成:癌胎児性抗原基準溶液の濃度を横軸とし、各濃度基準溶液の蛍光強度を縦軸として、基準グラフを作成する。
図4参照。0.00256-8ng/mlの範囲内で、癌胎児性抗原の濃度は、蛍光強度とリニア相関があり、y=480.87x+425、R=0.9987、ブランクサンプル平均値に3倍のSD(standard deviation)をプラスした場合、最低測定限界は0.1pg/mlである。
【0074】
7)サンプルの測定:ステップ3)で100μlの測定待ちサンプルを投入し、その他のステップは上記と同様に、測定待ちサンプルの蛍光強度を基準グラフの計算式に導入し、濃度の値を計算する。
【0075】
8)上記ステップ4)は、また以下のように実現できる。
【0076】
(1)ビオチン標識の抗体を投入:PBS緩衝液を使って1μg/mlのビオチンを標識した抗体を調製し、毎孔に100μlずつ注入し、37℃で1時間培養させてから、孔内の液体を除去し、PBST洗浄緩衝液で3回洗浄する。
【0077】
(2)アビジン投入:PBS緩衝液で5μg/mlのアビジンを調製し、毎孔に100μlずつ注入し、37℃で0.5時間培養し、孔内の液体を除去してから、PBST洗浄緩衝液で3回洗浄する。
【0078】
(3)NaEuF
4ナノ結晶標識のビオチンを投入:PBS緩衝液を使って10μg/mlのNaEuF
4ナノ結晶で標識されたビオチンを調製して(上記スッテプ2で造ったもの)、毎孔に100μlずつ投入し、37℃で0.5時間培養し、孔内の液体を除去してから、PBST洗浄緩衝液で6回洗浄する。
【0079】
〔実施例2〕
実施例2:本発明と市販の時間分解癌胎児性抗原測定キットとの比較
1)外被:0.05mol/Lの炭酸塩緩衝液を使って癌胎児性抗原の抗体を10ug/mlまで希釈し、96孔ポリスチレンプレートの各孔に100μlずつ注入し、37℃で1時間培養し、孔内の液体を除去し、PBST洗浄緩衝液で3回洗浄する。
【0080】
2)シーリング:0.05mol/Lの炭酸塩緩衝液で2%のウシ血清アルブミンを調製し、毎孔に300ulずつ注入し、37℃で1時間培養し、孔内の液体を除去してから、PBST洗浄緩衝液で3回洗浄する。
【0081】
3)サンプル投入:PBS緩衝液で0.00256-1000ng/mlの癌胎児性抗原のシリーズ基準液を調製するが、そのシリーズ基準液の濃度は各自0ng/ml、0.00256ng/ml、0.064ng/ml、0.0128ng/ml、0.32ng/ml、1.6ng/ml、8ng/mlになるよう調製し、37℃で1時間培養し、孔内の液体を除去してから、PBST洗浄緩衝液で3回洗浄する。
【0082】
4)ビオチン標識の抗体を投入:PBS緩衝液で1μg/mlのビオチン標識の抗体を調製して、毎孔に100μlずつ注入し、37℃で1時間培養させ、孔内の液体を除去してから、PBST洗浄緩衝液で3回洗浄する。
【0083】
5)アビジンを投入:PBS緩衝液を使って5μg/mlのアビジンを調製して、毎孔に100μlずつ注入し、37℃で0.5時間培養し、孔内の液体を除去してから、PBST洗浄緩衝液で3回洗浄する。
【0084】
6)NaEuF
4ナノ結晶標識のビオチンを投入:PBS緩衝液で10μg/mlのNaEuF
4ナノ結晶で標識されたビオチンを調製して(上記実施例1のスッテプ2で造ったもの)、毎孔に100μlずつ注入し、37℃で0.5時間培養し、孔内の液体を除去してから、PBST洗浄緩衝液で6回洗浄する。
【0085】
7)増強液を投入:毎孔に増強液を200ulずつ注入し、時間分解を利用した蛍光信号の測定を行う。具体的なパラメータは、励起波長340nm、発光波長615nm、遅延時間250μsである。
【0086】
8)基準グラフを作成:癌胎児性抗原基準溶液の濃度を横軸とし、各濃度基準溶液の蛍光強度を縦軸として、基準グラフを作成する。
図4参照。0.00256-8ng/ml範囲内で、癌胎児性抗原の濃度は、蛍光強度とリニア相関があり、y=480.87x+425、R=0.9987である。ブランクサンプル平均値に3倍の基準差(standard deviation)をプラスした場合、最低測定限界は0.1pg/mlである。
【0087】
9)時間分解癌胎児性抗原測定試薬キットで癌胎児性抗原を測定:取り扱い書の通りに操作し、基準グラフを作成する。
図5参照。0.1-800ng/ml範囲内で、癌胎児性抗原の濃度は、蛍光強度とリニア相関があり、y=12.732x+223.98、R=0.9989である。ブランクサンプル平均値に3倍の基準差をプラスした場合、最低測定限界は90pg/mlである。本発明の測定感度は、市販の時間分解癌胎児性抗原測定キットより900倍高い。
【0088】
〔実施例3〕
実施例3:本発明と市販の時間分解癌胎児性抗原測定キットとで異なる標本を測定した際の回収率比較
1)外被:0.05mol/Lの炭酸塩緩衝液を使って癌胎児性抗原の抗体を10ug/mlまで希釈し、96孔ポリスチレンプレートの毎孔に100μlずつ注入し、37℃で1時間培養し、孔内の液体を除去してから、PBST洗浄緩衝液で3回洗浄する。
【0089】
2)シーリング:0.05mol/Lの炭酸塩緩衝液を使って2%のウシ血清アルブミンを調製し、毎孔に300ulずつ注入し、37℃で1時間培養し、孔内の液体を除去してから、PBST洗浄緩衝液で3回洗浄する。
【0090】
3)サンプルを投入:PBS緩衝液で0.00256-1000ng/mlの癌胎児性抗原のシリーズ基準液を調製するが、その基準液の濃度は各自0ng/ml、0.00256ng/ml、0.064ng/ml、0.0128ng/ml、0.32ng/ml、1.6ng/ml、8ng/mlになるように調製し、37℃で1時間培養し、孔内の液体を除去してから、PBST洗浄緩衝液で3回洗浄する。
【0091】
4)NaEuF
4ナノ結晶標識の抗体を投入:PBS緩衝液で1μg/mlのNaEuF
4ナノ結晶で標識した抗体を調製して(上記実施例1のステップ2で造ったもの)、毎孔に100μlずつ注入し、37℃で1時間培養させ、孔内の液体を除去してから、PBST洗浄緩衝液で6回洗浄する。
【0092】
5)増強液を投入:毎孔に増強液を200μlずつ注入し、時間分解を利用した蛍光信号の測定を行い、具体的なパラメータは、励起波長340nm、発光波長615nm、遅延時間250μsである。
【0093】
6)基準グラフを作成:癌胎児性抗原基準溶液の濃度を横軸とし、各濃度基準溶液の蛍光強度を縦軸として、基準グラフを作成する。0.00256-8ng/ml範囲内で、癌胎児性抗原の濃度は、蛍光強度とリニア相関があり、y=480.87x+425、R=0.9987である。
【0094】
7)本発明の血清とプラスママトリックスとに対する回収率測定:一つの血清とEDTA抗凝固剤を含むプラスマとを二つに分け、その内の一つには、2ng/mlの癌胎児性抗原の基準液を投入し、ステップ3)で100μlの測定待ちサンプルを投入し、他の手順は上記と同様に、各サンプル3回測定し、測定待ちサンプルの蛍光強度を基準グラフの計算式に導入し、濃度の値を計算する。
【0095】
8)市販の時間分解癌胎児性抗原測定キットの血清とプラスママトリックスに対する回収率測定:取り扱い書の通りに操作し、基準グラフを作成する。0.1-800ng/ml範囲内で、癌胎児性抗原の濃度は、蛍光強度とリニア相関があり、y=12.732x+223.98、R=0.9989である。血清とプラスママトリックスとの回収率測定はステップ7)と同じ。
【0096】
9)結論:表1から分かるように、本発明と市販の時間分解癌胎児性抗原測定試薬キットとの血清マトリックスに対する回収率は、全て95%以上であるが、なおEDTA抗凝固剤を含むプラスママトリックスに対する回収率は、各自95.2%、85%である。このような結果は、キレートで標識された市販の時間分解癌胎児性抗原測定試薬キットは、EDTA抗凝固剤を含むサンプルに対してネガティブな干渉作用があることを示しており、本発明は干渉作用がないため適用範囲が更に広い。
【0097】
表1 本発明と市販の時間分解癌胎児性抗原測定試薬キットとの異なる標本を測定する回収率の比較
【図面の簡単な説明】
【0099】
【
図1】(a)伝統的解離・増強ランタノイド系時間分解免疫測定法(DELFIA)と(b)本発明の希土ナノマテリアル溶解・増強蛍光免疫測定法生体測定(DELBA)との原理イメージ図。
【
図2】NaEuF
4ナノ結晶の透過型電子顕微鏡(TEM)図、機器の型番:JEM-2010、製造メーカ:JEOL。
【
図3】NaEuF
4ナノ結晶の粉末回折図形、機器の型番:MiniFlex2、製造メーカ:Rigaku、Cuターゲット放射波長λ=0.154187nm。
【
図4】本発明の二重抗体サンドイッチ法による癌胎児性抗原測定の基準グラフ。
【
図5】市販の時間分解癌胎児性抗原測定試薬キットによる癌胎児性抗原測定の基準グラフ。