特許第6563477号(P6563477)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6563477多元系複合負極材料、その製造方法及びそれを含むリチウムイオン電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6563477
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】多元系複合負極材料、その製造方法及びそれを含むリチウムイオン電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/587 20100101AFI20190808BHJP
   H01M 4/133 20100101ALI20190808BHJP
   H01M 4/1393 20100101ALI20190808BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20190808BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20190808BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20190808BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20190808BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20190808BHJP
【FI】
   H01M4/587
   H01M4/133
   H01M4/1393
   H01M4/36 C
   H01M4/36 E
   H01M4/38 Z
   H01M4/48
   H01M4/62 Z
   H01M10/052
【請求項の数】19
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-502234(P2017-502234)
(86)(22)【出願日】2015年8月17日
(65)【公表番号】特表2017-526118(P2017-526118A)
(43)【公表日】2017年9月7日
(86)【国際出願番号】CN2015087266
(87)【国際公開番号】WO2016008455
(87)【国際公開日】20160121
【審査請求日】2017年1月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】514013417
【氏名又は名称】深▲セン▼市貝特瑞新能源材料股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002217
【氏名又は名称】特許業務法人矢野内外国特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岳▲敏▼
(72)【発明者】
【氏名】何▲鵬▼
(72)【発明者】
【氏名】李▲勝▼
(72)【発明者】
【氏名】任建国
(72)【発明者】
【氏名】黄友元
【審査官】 藤原 敬士
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−106563(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0264020(US,A1)
【文献】 特開2015−128045(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00 − 4/62
C01B 32/00 − 32/991
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多元系複合負極材料であって、マルチシェル層コア−シェル構造を有し、内核が黒鉛と黒鉛の表面に塗布されたナノ活物質で構成され、前記内核の外層は、順に、導電性炭素材料の第1シェル層、ナノ活物質の第2シェル層、導電性炭素材料被覆層の第3シェル層であり、
前記多元系複合負極材料はナノ活物質合計1〜40wt%、前記黒鉛30〜80wt%、前記導電性炭素材料合計10〜50wt%を含有し、
前記ナノ活物質が、活性金属単体、活性半金属単体、金属酸化物、金属合金化合物のうちの1種又は少なくとも2種の組合せであることを特徴とする多元系複合負極材料。
【請求項2】
前記多元系複合負極材料のメジアン径が5.0〜45.0μmであり、
前記多元系複合負極材料の比表面積が1.0〜20.0m/gであり、
前記多元系複合負極材料の粉末プレス密度が1.0〜2.0g/cmであり、
前記黒鉛が、天然鱗片状黒鉛、天然無定形黒鉛、天然結晶脈状黒鉛、人造黒鉛又は導電性黒鉛の1種又は少なくとも2種の組合せであり、
前記黒鉛の形状が、フレーク状、略球形又は球形の1種又は少なくとも2種の組合せであり、
前記黒鉛のメジアン径が、5.0〜30.0μmであり
前記ナノ活物質のメジアン径が30.0〜300.0nmであり、
前記導電性炭素材料が、カーボンナノチューブ、グラフェン、導電性黒鉛、炭素繊維、ナノ黒鉛、導電性カーボンブラック又は有機物分解炭素のうちの1種又は少なくとも2種の組合せである、ことを特徴とする請求項1に記載の多元系複合負極材料。
【請求項3】
前記ナノ活物質が、シリコン単体、スズ単体、アンチモン単体、ゲルマニウム単体、アルミニウム単体、マグネシウム単体、亜鉛単体、ガリウム単体、カドミウム単体、チタン酸化物、シリコン酸化物、錫酸化物、コバルト酸化物、鉄酸化物、銅酸化物、マンガン酸化物、ニッケル酸化物、錫アンチモン合金、インジウムアンチモン合金、銀アンチモン合金、アルミニウムアンチモン合金、銀錫合金及びシリコンマグネシウム化合物のうちの1種又は少なくとも2種の組合せである、ことを特徴とする請求項に記載の多元系複合負極材料。
【請求項4】
請求項1〜のいずれか1項に記載の多元系複合負極材料の製造方法であって、
(1)黒鉛の表面にナノ活物質を塗布して、第1前駆体を得る工程と、
(2)前記第1前駆体に対して導電性炭素材料で表面複合改質を行って、第2前駆体を得る工程と、
(3)第2前駆体の表面にナノ活物質を塗布して、第3前駆体を得る工程と、
(4)前記第3前駆体に対して被覆改質を行って、多元系複合負極材料を得る工程と、
を含み、
前記ナノ活物質が、活性金属単体、活性半金属単体、金属酸化物、金属合金化合物のうちの1種又は少なくとも2種の組合せである製造方法。
【請求項5】
工程(4)の後に、工程(4)で得た複合材を粉砕して、篩分けして消磁して、メジアン径5.0〜45.0μmの多元系複合負極材料を得る工程(5)を行うことを特徴とする請求項に記載の製造方法。
【請求項6】
工程(1)と工程(3)の前記塗布は、気相塗布法、液相塗布法又は固相塗布法のうちの1種又は少なくとも2種の組合せによって行われる、ことを特徴とする請求項4または5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記気相塗布法の工程は、前記工程(1)の黒鉛又は工程(2)の第2前駆体を回転炉に投入して、保護性ガスを導入し、600〜1500℃に昇温させてナノ活物質蒸気を導入して、0.5〜10.0h保温後に室温に冷却させ、工程(1)の第1前駆体又は工程(3)の第3前駆体を得るものであり、
前記保護性ガスは、窒素ガス、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガス又はキセノンガスのうちの1種又は少なくとも2種の組合せであり、
前記ナノ活物質蒸気は、ナノ活物質を昇華又は有機ガスを分解して得たものであり、
前記回転炉の速度は0.1〜5.0rpmであり、
温速度は1.0〜20.0℃/minであり、
前記ナノ活物質の流量は0.1〜1.0L/minである、ことを特徴とする請求項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記液相塗布法の工程は、ナノ活物質、分散剤及び工程(1)の黒鉛又は工程(2)の第2前駆体を有機溶剤に分散させて、乾燥させ、工程(1)の第1前駆体又は工程(3)の第3前駆体を得るものであり、
前記分散剤は、トリポリリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、トリエチルヘキシルリン酸、ドデシル硫酸ナトリウム、メチルペンタノール、セルロース誘導体、ポリアクリルアミド、グアーガム、脂肪酸ポリエチレングリコールエステル、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、ポリエチレングリコールパラオクチルフェニルエーテル、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、パラエチル安息香酸及びポリエーテルイミドのうちの1種又は少なくとも2種の組合せであり、
前記有機溶剤は、アルコール、ケトン及びエーテルのうちの1種又は少なくとも2種の組合せである、ことを特徴とする請求項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記固相塗布法の工程は、ナノ活物質と前記工程(1)の黒鉛又は工程(2)の第2前駆体を融合機に投入して融合し、工程(1)の第1前駆体又は工程(3)の第3前駆体を得るものであり、
前記融合機は、回転数が500〜3000rpm、刃具の隙間幅が0.01〜0.5cmであり、
合時間が0.5h以上である、ことを特徴とする請求項に記載の製造方法。
【請求項10】
工程(2)の前記表面複合改質として、機械物理改質、気相化学改質又は液相化学改質が使用され、
前記機械物理改質用の反応器、気相化学改質用の回転炉、液相化学改質用の反応器の昇温速度は、0.5〜20.0℃/minであり、
前記反応器は真空炉、箱形炉、回転炉、ローラーハースキルン、プッシャーキルン又は管状炉である、ことを特徴とする請求項4または5に記載の製造方法。
【請求項11】
前記機械物理改質の工程は、導電性炭素材料と工程(1)の前記第1前駆体を融合機に投入して融合し、次に反応器に仕込み、保護性ガスを導入し、600〜1200℃に昇温させて、0.5〜10.0h保温後に室温に冷却させ、工程(2)の前記第2前駆体を得るものであり、
前記融合機の回転数は500〜3000rpmであり、
前記融合機の刃具の隙間幅は0.01〜0.5cmであり、
合時間は少なくとも0.5hである、ことを特徴とする請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記気相化学改質の工程は、工程(1)の前記第1前駆体を回転炉に投入して、保護性ガスを導入し、600〜1200℃に昇温させて、有機炭素源ガスを導入して、0.5〜10.0h保温後に室温に冷却させ、工程(2)の前記第2前駆体を得るものであり、
前記有機炭素源ガスは、メタン、エチレン、アセチレン、ベンゼン、トルエン、キシレン、スチレン及びフェノールのうちの1種又は少なくとも2種の組合せであり、
前記回転炉の回転数は、0.1〜5.0rpmであり、
前記有機炭素源ガスの流量は0.1〜2.0L/minである、ことを特徴とする請求項10に記載の製造方法。
【請求項13】
前記液相化学改質の工程は、工程(1)の前記第1前駆体と有機物を有機溶剤系に分散させて、乾燥させ、次に反応器に仕込み、保護性ガスを導入し、600〜1200℃に昇温させて、0.5〜10.0h保温後に室温に冷却させ、工程(2)の前記第2前駆体を得るものであり、
前記有機溶剤はエーテル、アルコール及びケトンのうちの1種又は少なくとも2種の組合せであり、
前記有機物は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、フルフラール樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリフッ化ビニリデン、アクリル樹脂及びポリアクリロニトリルのうちの1種又は少なくとも2種の組合せであり、
前記保護性ガスは、窒素ガス、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、及びキセノンガスのうちの1種又は少なくとも2種の組合せである、ことを特徴とする請求項10に記載の製造方法。
【請求項14】
工程(4)の前記被覆改質として気相被覆改質、液相被覆改質又は固相被覆改質が使用される、ことを特徴とする請求項4または5に記載の製造方法。
【請求項15】
前記気相被覆改質の工程は、工程(3)の前記第3前駆体を回転炉に投入して、保護性ガスを導入し、600〜1200℃に昇温させて、有機炭素源ガスを導入して、0.5〜10.0h保温後に室温に冷却させ、工程(4)の前記多元系複合負極材料を得るものであり、
前記有機炭素源ガスは、メタン、エチレン、アセチレン、ベンゼン、トルエン、キシレン、スチレン及びフェノールのうちの1種又は少なくとも2種の組合せであり、
前記回転炉の回転数は0.1〜5.0rpmであり、
前記有機炭素源ガスの導入流量は0.1〜2.0L/minである、ことを特徴とする請求項14に記載の製造方法。
【請求項16】
前記液相被覆改質の工程として、前記工程(3)の第3前駆体と有機物を有機溶剤系に分散させて、乾燥させ、次に反応器に仕込み、保護性ガスを導入し、600〜1200℃に昇温させて、0.5〜10.0h保温後に室温に冷却させ、工程(4)の前記多元系複合負極材料が得られるものであり、
前記有機溶剤はエーテル、アルコール及びケトンのうちの1種又は少なくとも2種の組合せである、ことを特徴とする請求項14に記載の製造方法。
【請求項17】
前記固相被覆改質の工程は、前記工程(3)の第3前駆体と有機物をV型混合機に投入して混合し、次に反応器に仕込み、保護性ガスを導入し、600〜1200℃に昇温させて、0.5〜10.0h保温後に室温に冷却させ、工程(4)の多元系複合負極材料を得るものであり、
前記V型混合機の回転数は500〜3000rpmであり、
時間は0.5h以上であり、
前記反応器の昇温速度は0.5〜20.0℃/minであり、
前記反応器は真空炉、箱形炉、回転炉、ローラーハースキルン、プッシャーキルン又は管状炉であり、
前記有機物は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、フルフラール樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリフッ化ビニリデン、アクリル樹脂及びポリアクリロニトリルのうちの1種又は少なくとも2種の組合せであり
前記保護性ガスは窒素ガス、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、及びキセノンガスのうちの1種又は少なくとも2種の組合せであることを特徴とする請求項14に記載の製造方法。
【請求項18】
リチウムイオン電池であって、前記リチウムイオン電池の負極極片は、請求項1または2に記載の多元系複合負極材料、導電剤及びバインダーである、ことを特徴とするリチウムイオン電池。
【請求項19】
前記リチウムイオン電池の正極極片に使用される正極活物質は、三元系材料、リチウムリッチ材料、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、スピネルマンガン酸リチウム、層状マンガン酸リチウム又はリン酸鉄リチウムの1種又は少なくとも2種の組合せであり、
前記導電剤は黒鉛粉末及び/又はナノ導電液であり、
前記ナノ導電液は0.5〜20wt%のナノ炭素材料と分散溶剤からなり、
前記ナノ炭素材料はグラフェン、カーボンナノチューブ、ナノ炭素繊維、フラーレン、カーボンブラック及びアセチレンブラックのうちの1種又は少なくとも2種の組合せであり、
前記グラフェンの黒鉛層の数が1〜100であり、
前記カーボンナノチューブとナノ炭素繊維の直径が0.2〜500nmであり、
前記フラーレン、カーボンブラック及びアセチレンブラックの粒子径が1〜200nmであり、
前記バインダーは、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム又はスチレンブタジエンゴムの1種又は少なくとも2種の組合せであり、
電池のタイプは、一般的なアルミニウムケース、鋼ケース、又はラミネートリチウムイオン電池であることを特徴とする請求項18に記載のリチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリチウムイオン電池用負極材料の分野に関し、具体的には、本発明は多元系複合負極材料及びその製造方法、並びにそれを含むリチウムイオン電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、動作電圧が高く、サイクル寿命が長く、記憶効果がなく、自己放電量が少なく、環境に優しい等の利点を有するため、携帯型電子デバイスや電気自動車に幅広く使用されている。従来、市販されるリチウムイオン電池として、主に黒鉛系負極材料が使用されているが、黒鉛系負極材料の理論比容量が372mAh/gと低いため、将来のリチウムイオン電池に対する高エネルギー密度の要求を満足できない。国内外の研究によれば、リチウムと合金を形成できる金属元素、金属酸化物及び金属合金化合物、例えばSi、Sn、Ge、Pb、SiO、SnO、SbSn、MgSi等が、高比容量を有することが報告されている。しかしながら、これらの材料は使用中に電池の容量減衰が速いことにより、実用化が制限される。
【0003】
分析した結果、金属単体、合金及び金属酸化物の負極材料は、リチウムの挿入脱離によって体積が大幅に膨張したり収縮したりすることにより、材料が破壊又は粉砕されてしまい、材料の容量減衰を速める要因になる。従って、材料の体積膨張を抑制して、材料の構造安定性を向上させることは、合金と金属酸化物の負極材料のサイクル安定性の向上に対して重大な意義がある。従来、主にナノ化、合金化及び多元系複合(活性又は非活性材料との複合)によって材料の体積膨張を改善することが一般的である。
【0004】
例えば、CN103199223Aにおいて、Cu−Cr−Si三元系負極材料及びその製造方法が開示されており、該発明は、銅粉末、クロム粉末、シリコン粉末を混合して焼成して合金インゴットを製造し、次に粉砕して、寸法がミクロンスケール以下のCu−Cr−Si三元合金粉末を得るものであり、得た材料は高容量を有するとともに、サイクル特性に優れるが、該方法で製造された三元系材料において、シリコンとクロムで形成される連続相の寸法が依然として大きく、銅、クロム及びシリコンを均一に分散させない。CN103560249Aでは、多元系複合負極材料及び製造方法が開示されており、シリコン粉末、カーボンナノチューブ、膨張黒鉛をポリビニルアルコール又はポリエチレングリコール水系に添加し、次に乾燥混合して焼成し、ナノシリコン粉末、カーボンナノチューブ、膨張黒鉛及び無定形カーボンからなる多元系複合材を得るものであり、該複合材は導電性に優れ、容量が高いが、該方法は、製造工程でナノシリコン粉末の十分な分散が実現されにくいため、該材料の初回充放電効率が低い。
【0005】
従って、高導電性、高容量、高初回充放電効率及び優れたサイクル安定性を有する多元系複合負極材料の研究・開発はリチウムイオン電池分野での技術的難問となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術の欠点に対して、本発明は導電性に優れ、容量が高く、初回クーロン効率が高く、サイクル特性に優れる多元系複合負極材料を提供することを第一目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成させるために、本発明は下記の技術案を採用する。
【0008】
多元系複合負極材料であって、前記負極材料はマルチシェル層コア−シェル構造であり、内核が黒鉛と黒鉛の表面に塗布されたナノ活物質で構成され、前記内核の外層は、順に、導電性炭素材料の第1シェル層、ナノ活物質の第2シェル層、導電性炭素材料被覆層の第3シェル層である多元系複合負極材料である。
【0009】
本発明の多元系複合負極材料は、ナノ活物質1〜40wt%、黒鉛30〜80wt%、導電性炭素材料10〜50wt%を含有する。
【0010】
好ましくは、前記多元系複合負極材料のメジアン径が、5.0〜45.0μm、好ましくは8.0〜35.0μm、より好ましくは10.0〜25.0μmである。
【0011】
好ましくは、前記多元系複合負極材料の比表面積が、1.0〜20.0m/g、好ましくは1.5〜8.0m/gである。
【0012】
好ましくは、前記多元系複合負極材料の粉末プレス密度が、1.0〜2.0g/cm、好ましくは1.1〜1.7g/cmである。
【0013】
好ましくは、前記黒鉛は天然鱗片状黒鉛、天然無定形黒鉛、天然結晶脈状黒鉛、人造黒鉛又は導電性黒鉛の1種又は少なくとも2種の組合せである。
【0014】
好ましくは、前記黒鉛の形状が、フレーク状、略球形又は球形の1種又は少なくとも2種の組合せである。
【0015】
好ましくは、前記黒鉛のメジアン径が、5.0〜30.0μm、好ましくは8.0〜25.0μm、より好ましくは10.0〜20.0μmである。
【0016】
好ましくは、前記ナノ活物質は、リチウムに対して電気化学的活性を有する材料、好ましくは活性金属単体、活性半金属単体、金属酸化物、金属合金化合物のうちの1種又は少なくとも2種の組合せ、より好ましくはシリコン単体、スズ単体、アンチモン単体、ゲルマニウム単体、アルミニウム単体、マグネシウム単体、亜鉛単体、ガリウム単体、カドミウム単体、チタン酸化物、シリコン酸化物、錫酸化物、コバルト酸化物、鉄酸化物、銅酸化物、マンガン酸化物、ニッケル酸化物、錫アンチモン合金、インジウムアンチモン合金、銀アンチモン合金、アルミニウムアンチモン合金、銀錫合金及びシリコンマグネシウム化合物のうちの1種又は少なくとも2種の組合せである。
【0017】
好ましくは、前記ナノ活物質のメジアン径が30.0〜300.0nm、好ましくは25.0〜250.0nm、より好ましくは20.0〜200.0nmである。
【0018】
好ましくは、前記導電性炭素材料が、カーボンナノチューブ、グラフェン、導電性黒鉛、炭素繊維、ナノ黒鉛、導電性カーボンブラック又は有機物分解炭素のうちの1種又は少なくとも2種の組合せである。
【0019】
本発明は以下の工程を含む本発明の前記多元系複合負極材料の製造方法を提供することを第二目的とする。
【0020】
(1)黒鉛の表面にナノ活物質を塗布して、第1前駆体を得る。
【0021】
(2)前記第1前駆体に対して導電性炭素材料で表面複合改質を行って、第2前駆体を得る。
【0022】
(3)第2前駆体の表面にナノ活物質を塗布して、第3前駆体を得る。
【0023】
(4)前記第3前駆体に対して被覆改質を行って、多元系複合負極材料を得る。
【0024】
好ましくは、工程(4)の後に、工程(4)で得た複合材を粉砕して、篩分けして消磁し、メジアン径5.0〜45.0μmの多元系複合負極材料を得る工程(5)を行う。
【0025】
好ましくは、工程(1)と工程(3)の前記塗布は気相塗布法、液相塗布法又は固相塗布法のうちの1種又は少なくとも2種の組合せによって行われる。
【0026】
本発明の製造方法では、前記気相塗布法の工程は以下のとおりである。前記工程(1)の黒鉛又は工程(2)の第2前駆体を回転炉に投入して、保護性ガスを導入し、600〜1500℃に昇温させてナノ活物質蒸気を導入して、0.5〜10.0h保温後に室温に冷却させ、工程(1)の第1前駆体又は工程(3)の第3前駆体を得る。
【0027】
好ましくは、前記ナノ活物質蒸気はナノ活物質を昇華又は有機ガスを分解して得るものである。
【0028】
好ましくは、前記回転炉の速度が0.1〜5.0rpmである。
【0029】
好ましくは、前記昇温速度が1.0〜20.0℃/minである。
【0030】
好ましくは、前記ナノ活物質の流量が0.1〜1.0L/minである。
【0031】
本発明の製造方法では、前記液相塗布法の工程は以下のとおりである。ナノ活物質、分散剤及び工程(1)の黒鉛又は工程(2)の第2前駆体を有機溶剤に分散させて、乾燥させ、工程(1)の第1前駆体又は工程(3)の第3前駆体を得る。
【0032】
好ましくは、前記分散剤は、トリポリリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、トリエチルヘキシルリン酸、ドデシル硫酸ナトリウム、メチルペンタノール、セルロース誘導体、ポリアクリルアミド、グアーガム、脂肪酸ポリエチレングリコールエステル、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、ポリエチレングリコールパラオクチルフェニルエーテル、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、パラエチル安息香酸及びポリエーテルイミドのうちの1種又は少なくとも2種の組合せである。
【0033】
好ましくは、前記有機溶剤はアルコール、ケトン及びエーテルのうちの1種又は少なくとも2種の組合せである。
【0034】
本発明の製造方法では、前記固相塗布法の工程は以下のとおりである。ナノ活物質と前記工程(1)の黒鉛又は工程(2)の第2前駆体を融合機に投入して融合し、工程(1)の第1前駆体又は工程(3)の第3前駆体を得る。
【0035】
好ましくは、前記融合機は回転数が500〜3000rpm、刃具の隙間幅が0.01〜0.5cmである。
【0036】
好ましくは、前記融合時間が0.5h以上である。
【0037】
本発明の製造方法では、工程(2)の前記表面複合改質として、機械物理改質、気相化学改質又は液相化学改質が使用される。
【0038】
本発明の製造方法では、前記機械物理改質の工程は、導電性炭素材料と工程(1)の前記第1前駆体を融合機に投入して融合し、次に反応器に仕込み、保護性ガスを導入し、600〜1200℃に昇温させて、0.5〜10.0h保温後に室温に冷却させ、工程(2)の前記第2前駆体を得るものである。
【0039】
好ましくは、前記融合機の回転数が500〜3000rpmである。
【0040】
好ましくは、前記融合機の刃具の隙間幅が0.01〜0.5cmである。
【0041】
好ましくは、前記融合時間が少なくとも0.5hである。
【0042】
本発明の製造方法では、前記気相化学改質の工程は、工程(1)の前記第1前駆体を回転炉に投入して、保護性ガスを導入し、600〜1200℃に昇温させて、有機炭素源ガスを導入して、0.5〜10.0h保温後に室温に冷却させ、工程(2)の前記第2前駆体を得るものである。
【0043】
好ましくは、前記有機炭素源ガスは、炭化水素類及び/又は1〜3個の環を持つ芳香族炭化水素系誘導体のうちの1種又は少なくとも2種の組合せであり、好ましくはメタン、エチレン、アセチレン、ベンゼン、トルエン、キシレン、スチレン及びフェノールのうちの1種又は少なくとも2種の組合せである。
【0044】
好ましくは、前記回転炉の回転数が0.1〜5.0rpmである。
【0045】
好ましくは、前記有機炭素源ガスの流量が0.1〜2.0L/minである。
【0046】
本発明の製造方法では、前記液相化学改質の工程は、工程(1)の前記第1前駆体と有機物を有機溶剤系に分散させて、乾燥させ、次に反応器に仕込み、保護性ガスを導入し、600〜1200℃に昇温させて、0.5〜10.0h保温後に室温に冷却させ、工程(2)の前記第2前駆体を得るものである。
【0047】
好ましくは、前記有機溶剤はエーテル、アルコール及びケトンのうちの1種又は少なくとも2種の組合せである。
【0048】
好ましくは、前記有機物は重合体、糖類、有機酸、ピッチ及び高分子材料のうちの1種又は少なくとも2種の組合せであり、好ましくはエポキシ樹脂、フェノール樹脂、フルフラール樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリフッ化ビニリデン、アクリル樹脂及びポリアクリロニトリルのうちの1種又は少なくとも2種の組合せである。
【0049】
本発明の製造方法では、前記機械物理改質用の反応器、気相化学改質用の回転炉、液相化学改質用の反応器の昇温速度が0.5〜20.0℃/minである。
【0050】
好ましくは、前記反応器は真空炉、箱形炉、回転炉、ローラーハースキルン、プッシャーキルン又は管状炉である。
【0051】
本発明の製造方法では、工程(4)の前記被覆改質として気相被覆改質、液相被覆改質又は固相被覆改質が使用される。
【0052】
本発明の製造方法では、前記気相被覆改質の工程は、工程(3)の前記第3前駆体を回転炉に投入して、保護性ガスを導入し、600〜1200℃に昇温させて、有機炭素源ガスを導入して、0.5〜10.0h保温後に室温に冷却させ、工程(4)の前記多元系複合負極材料を得るものである。
【0053】
好ましくは、前記有機炭素源ガスは炭化水素類及び/又は1〜3個の環を持つ芳香族炭化水素系誘導体のうちの1種又は少なくとも2種の組合せであり、好ましくはメタン、エチレン、アセチレン、ベンゼン、トルエン、キシレン、スチレン及びフェノールのうちの1種又は少なくとも2種の組合せである。
【0054】
好ましくは、前記回転炉の回転数が0.1〜5.0rpmである。
【0055】
好ましくは、前記有機炭素源ガスの導入流量が0.1〜2.0L/minである。
【0056】
本発明の製造方法では、前記液相被覆改質の工程は、前記工程(3)の第3前駆体と有機物を有機溶剤系に分散させて、乾燥させ、次に反応器に仕込み、保護性ガスを導入し、600〜1200℃に昇温させて、0.5〜10.0h保温後に室温に冷却させ、工程(4)の前記多元系複合負極材料を得るものである。
【0057】
好ましくは、前記有機溶剤はエーテル、アルコール及びケトンのうちの1種又は少なくとも2種の組合せである。
【0058】
本発明の製造方法では、前記固相被覆改質の工程は、前記工程(3)の第3前駆体と有機物をV混合機に投入して混合し、次に反応器に仕込み、保護性ガスを導入し、600〜1200℃に昇温させて、0.5〜10.0h保温後に室温に冷却させ、工程(4)の多元系複合負極材料を得るものである。
【0059】
好ましくは、前記V混合機の回転数が500〜3000rpmである。
【0060】
好ましくは、前記混合時間が0.5h以上である。
【0061】
本発明の製造方法では、前記気相被覆改質用の回転炉、液相被覆改質用の反応器、固相被覆改質用の反応器の昇温速度が0.5〜20.0℃/minである。
【0062】
好ましくは、前記反応器は真空炉、箱形炉、回転炉、ローラーハースキルン、プッシャーキルン又は管状炉である。
【0063】
好ましくは、前記有機物は重合体、糖類、有機酸、ピッチ及び高分子材料のうちの1種又は少なくとも2種の組合せであり、好ましくはエポキシ樹脂、フェノール樹脂、フルフラール樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリフッ化ビニリデン、アクリル樹脂及びポリアクリロニトリルのうちの1種又は少なくとも2種の組合せである。
【0064】
好ましくは、前記有機炭素源は、メジアン径が0.1〜25.0μm、特に好ましくは0.5〜8.0μmの粉末状である。
【0065】
本発明の製造方法では、前記保護性ガスは、窒素ガス、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガス及びキセノンガスのうちの1種又は少なくとも2種の組合せである。
【0066】
本発明は、本発明の前記多元系複合負極材料、導電剤及びバインダーを91〜94:1〜3:3〜6の質量百分率で溶剤に混合して、銅箔集電体に塗布し、真空雰囲気で乾燥させて得る負極極片を有するリチウムイオン電池を提供することを第三目的とする。
【0067】
好ましくは、前記リチウムイオン電池の正極極片に使用される正極活物質は、三元系材料、リチウムリッチ材料、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、スピネルマンガン酸リチウム、層状マンガン酸リチウム又はリン酸鉄リチウムの1種又は少なくとも2種の組合せである。
【0068】
好ましくは、前記導電剤は黒鉛粉末及び/又はナノ導電液である。
【0069】
好ましくは、前記ナノ導電液は0.5〜20wt%のナノ炭素材料と分散溶剤からなる。
【0070】
好ましくは、前記ナノ炭素材料はグラフェン、カーボンナノチューブ、ナノ炭素繊維、フラーレン、カーボンブラック及びアセチレンブラックのうちの1種又は少なくとも2種の組合せである。
【0071】
好ましくは、前記グラフェンの黒鉛層の数は1〜100である。
【0072】
好ましくは、前記カーボンナノチューブとナノ炭素繊維の直径は0.2〜500nmである。
【0073】
好ましくは、前記フラーレン、カーボンブラック及びアセチレンブラックの粒子径が1〜200nmである。
【0074】
好ましくは、前記バインダーはポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム又はスチレンブタジエンゴムの1種又は少なくとも2種の組合せである。
【0075】
好ましくは、前記リチウムイオン電池のタイプは一般的なアルミニウムケース、鋼ケース、又はラミネートリチウムイオン電池である。
【発明の効果】
【0076】
従来技術に比べて、本発明の多元系複合負極材料は、塗布処理技術、表面複合改質及び被覆改質技術を組み合わせた手段によって製造、マルチシェル層構造を有するコア−シェル多元系複合負極材料の製造ができた。本発明では、ナノ活物質を黒鉛の表面に塗布して内核を形成し、更に内核の表面に導電性炭素を複合して第1シェル層を形成し、次にナノ活物質を第1シェル層の表面に塗布して第2シェル層を形成し、最終的に第2シェル層に対して均質被覆を行って、高性能多元系複合負極材料を得る。ナノ活物質を緩衝基材としての黒鉛粒子の表面に均一に塗布して、更に緩衝層及び導電層としての導電性炭素層の表面に2次塗布することにより、ナノ活物質の高担持と高分散化を実現し、更に材料の比容量、サイクル特性(400サイクル後の容量維持率が90%以上である)と初回充放電効率(>90%)を大幅に向上させた。また、本発明の多元系複合負極材料は、プレス密度が高く、加工性に優れ、該負極材料の製造プロセスが簡単であり、原料のコストが低く、環境に優しい。
【図面の簡単な説明】
【0077】
図1図1は本発明の実施例1の複合負極材料のSEM画像である。
図2図2は本発明の実施例1の複合負極材料のXRDパターンである。
図3図3は本発明の実施例1の複合負極材料の初回充放電曲線である。
図4図4は本発明の実施例1の複合負極材料のサイクル特性曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0078】
本発明を理解しやすくするために、本発明は下記の実施例を挙げる。当業者にとっては、前記実施例は本発明を理解しやすくするためのものに過ぎず、本発明を具体的に制限するものではないことが自明である。
【0079】
実施例1
【0080】
粒子径5〜20μmの略球形天然黒鉛、粒子径30〜250nmのSi及びポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートを80:5:0.5の質量比でプロパノールに分散させて、回転蒸発によって乾燥させ、第1前駆体を得た。第1前駆体とグラフェンを85:5の質量比で融合機に投入し、回転数を3000.0rpm、刃具の隙間幅を0.01cmに調節して、0.5h融合し、次に箱形炉に投入して、アルゴンガスを導入し、0.5℃/minの昇温速度で600.0℃に昇温させて、10.0h保温し、室温に自然冷却させて、第2前駆体を得た。第2前駆体、粒子径30〜250nmのSi及び脂肪酸ポリエチレングリコールエステルを90:5:0.2の質量比でエタノールに分散させ、噴霧乾燥させて、第3前駆体を得た。第3前駆体と粒子径0.1〜6.0μmのピッチ粉末を95:20の質量比でV高効率混合機に投入し、回転数を3000.0rpmに調節して、0.5h混合し、次に箱形炉に投入して、アルゴンガスを導入し、10.0℃/minの昇温速度で1050.0℃に昇温させ、10.0h保温して、室温に自然冷却させ、粉砕、篩分けして消磁して、粒子径5.0〜45.0μmの新規な高容量多元系複合負極材料を得た。
【0081】
図1は本実施例の複合負極材料のSEM画像であり、図2は本実施例の複合負極材料のXRDパターンであり、図3は本実施例の複合負極材料の初回充放電曲線であり、図4は本実施例の複合負極材料のサイクル特性曲線である。
【0082】
図1から分かるように、製造された材料表面は緻密に被覆されており、図2から分かるように、材料は黒鉛及びシリコンの回折ピークを有し、図3及び図4から分かるように、材料は高い初回充放電効率と優れたサイクル特性を有する。
【0083】
実施例2
【0084】
粒子径10.0〜30.0μmの球形人造黒鉛を回転炉に投入して、回転数を0.1rpmに調節して、アルゴンガスを導入し、1.0℃/minの昇温速度で800℃に昇温させ、次にシランガスの流量を0.5L/minに制御しながらシランガスを導入して、5.0h保温して、室温に自然冷却させ、第1前駆体を得た。第1前駆体とポリビニルアルコールを80:20の質量比でメタノールに分散させて、噴霧乾燥させ、次に管状炉に投入して、窒素ガスを導入し、0.5℃/minの昇温速度で900.0℃に昇温させて、0.5h保温し、室温に自然冷却させ、第2前駆体を得た。第2前駆体を回転炉に投入して、回転数を0.5rpmに調節して、窒素ガスを導入し、10.0℃/minの昇温速度で800℃に昇温させ、次にシランガスの流量を1.0L/minに制御しながらシランガスを導入して、0.5h保温して、室温に自然冷却させ、第3前駆体を得た。第3前駆体とフェノール樹脂を85:25の質量比でエタノールに分散させて、噴霧乾燥させ、次に箱式炉に投入して、窒素ガスを導入し、10.0℃/minの昇温速度で900.0℃に昇温させて、10.0h保温し、室温に自然冷却させ、粉砕、篩分けして消磁して、粒子径5.0〜45.0μmの新規な高容量多元系複合負極材料を得た。
【0085】
実施例3
【0086】
粒子径50〜300nmのSiO0.4と粒子径10〜25μmの球形天然黒鉛を10:30の質量比で融合機に投入し、回転数を2000.0rpm、刃具の隙間幅を0.5cmに調節して、0.5h融合し、第1前駆体を得た。第1前駆体を回転炉に投入して、回転数を3.0rpmに調節して、窒素ガスを導入し、5.0℃/minの昇温速度で700℃に昇温させて、1.0L/minの流量でアセチレンガスを導入し、2.0h保温して、室温に自然冷却させ、第2前駆体を得た。粒子径50〜300nmのSiO0.4と第2前駆体を10:80の質量比で融合機に投入し、回転数を3000.0rpm、刃具の隙間幅を0.5cmに調節して、1.0h融合し、第3前駆体を得た。第3前駆体と粒子径5〜10.0μmのピッチ粉末を80:30の質量比でV高効率混合機に投入し、回転数を1000.0rpmに調節して、1.0h混合し、次に箱形炉に投入して、ヘリウムガスを導入して、5.0℃/minの昇温速度で1200.0℃に昇温させ、0.5h保温して、室温に自然冷却させ、粉砕、篩分けして消磁して、粒子径5〜45μmの新規な高容量多元系複合負極材料を得た。
【0087】
実施例4
【0088】
粒子径50〜200nmのSnOと粒子径20.0〜30.0μmのフレーク状天然黒鉛を20:40の質量比で融合機に投入し、回転数を2000.0rpm、刃具の隙間幅を0.5cmに調節して、2.0h融合し、第1前駆体を得た。第1前駆体とカーボンナノチューブを80:10の質量比で融合機に投入し、回転数を2000.0rpm、刃具の隙間幅を0.03cmに調節して、1.0h融合し、次に箱形炉に投入して、窒素ガスを導入し、10.0℃/minの昇温速度で700.0℃に昇温させて、2.0h保温し、室温に自然冷却させ、第2前駆体を得た。第2前駆体、粒子径50〜200nmのSnO及びポリアクリルアミドを20:60:0.1の質量比でエタノールに分散させて、噴霧乾燥させ、第3前駆体を得た。第3前駆体と粒子径2.0〜10.0μmのポリ塩化ビニル粉末を80:20の質量比でV高効率混合機に投入し、回転数を1000.0rに調節して、1h混合し、次にローラーハースキルン炉に投入して、窒素ガスを導入し、3.0℃/minの昇温速度で800.0℃に昇温させて、4.0h保温し、室温に自然冷却させ、粉砕、篩分けして消磁して、粒子径18〜45μmの新規な高容量多元系複合負極材料を得た。
【0089】
実施例5
【0090】
粒子径100〜300nmの錫アンチモン合金と粒子径10.0〜20.0μmの球形天然黒鉛を5:60の質量比で融合機に投入し、回転数を3000.0rpm、刃具の隙間幅を0.05cmに調節して、0.5h融合し、第1前駆体を得た。第1前駆体とエポキシ樹脂を65:15の質量比でエタノールに分散させて噴霧乾燥させ、次に管状炉に投入して、窒素ガスを導入し、0.5℃/minの昇温速度で800.0℃に昇温させて、0.5h保温し、室温に自然冷却させ、第2前駆体を得た。第2前駆体、粒子径100〜300nmの錫アンチモン合金及びポリエーテルイミドを80:10:0.2の質量比でエタノールに分散させて噴霧乾燥させ、第3前駆体を得た。第3前駆体と粒子径5〜10μmのエポキシ樹脂粉末を80:20の質量比でV高効率混合機に投入し、回転数を800.0rpmに調節して、1h混合し、次に箱形炉に投入して、ヘリウムガスを導入して、5.0℃/minの昇温速度で1200.0℃に昇温させ、8.0h保温して、室温に自然冷却させ、粉砕、篩分けして消磁して、粒子径5.0〜45.0μmの新規な高容量多元系複合負極材料を得た。
【0091】
実施例6
【0092】
粒子径80〜150nmの錫アンチモン合金と粒子径5.0〜15.0μmの球形天然黒鉛を50:6の質量比で融合機に投入し、回転数を500.0rpm、刃具の隙間幅を0.2cmに調節して、4.5h融合し、第1前駆体を得た。第1前駆体とエポキシ樹脂を50:30の質量比でエタノールに分散させて、噴霧乾燥させ、次に管状炉に投入して、窒素ガスを導入し、20℃/minの昇温速度で1200.0℃に昇温させて、5h保温し、室温に自然冷却させ、第2前駆体を得た。第2前駆体、粒子径100〜300nmの錫アンチモン合金及びポリエーテルイミドを40:20:1の質量比でエタノールに分散させて、噴霧乾燥させ、第3前駆体を得た。第3前駆体と粒子径5〜10μmのエポキシ樹脂粉末を50:30の質量比でV高効率混合機に投入し、回転数を1500.0rpmに調節して3h混合し、次に箱形炉に投入して、ヘリウムガスを導入し、20℃/minの昇温速度で600.0℃に昇温させて、2.0h保温し、室温に自然冷却させ、粉砕、篩分けして消磁して、粒子径5.0〜45.0μmの新規な高容量多元系複合負極材料を得た。
【0093】
比較例1
【0094】
第3前駆体を製造せず、第3前駆体の製造に用いるシリコン粉末を第1前駆体に添加する以外、実施例1とほぼ同様な方法によって多元系複合負極材料を製造し、実施例1と同様な方法によって電池を作製する。
【0095】
以下の方法によって実施例1〜5と比較例1の負極材料を測定する。
【0096】
本発明の前記粉末プレス密度について、CARVER粉末プレス機を使用して測定する。ここで、粉末プレス密度=測定サンプルの質量/測定サンプルの体積、極片プレス密度=(負極極片の質量−銅箔質量)/(極片の面積×極片のプレス後の厚さ)である。
【0097】
米国のマイクロメリティック社製のTristar3000全自動比表面積・細孔分布測定装置を使用して材料の比表面積を測定する。
【0098】
マルバーンレーザー粒度分析器MS 2000を使用して材料の粒子径の範囲及び原料粒子の平均粒子径を測定する。
【0099】
X線回折装置X′PertPro、PANalyticalを使用して材料の構造を測定する。
【0100】
日立社製のS4800走査電子顕微鏡を使用してサンプルの表面形態、粒子サイズ等を観察する。
【0101】
以下の方法によって電気化学的サイクル特性を測定する。負極材料、導電剤及びバインダーを94:1:5の質量百分率で溶剤に溶解させて混合し、固形分を50%に制御して、銅箔集電体に塗布し、真空乾燥させて、負極極片を得た。次に伝統的な成熟したプロセスで製造された三元系正極極片、1mol/LのLiPF/EC+DMC+EMC(v/v=1:1:1)電解液、Celgard2400セパレータ、ケースを一般的な生産プロセスによって組み立てて18650円筒型単電池を得た。円筒型電池の充放電測定として、武漢金諾電子有限公司製のLAND電池測定システムにおいて、室温条件下で、0.2Cの定電流で充放電を行い、充放電電圧を2.75〜4.2Vに制限する。
【0102】
実施例1〜5及び比較例1で製造された負極材料の電気化学測定結果は表1に示される。
【0103】
【表1】
【0104】
上表中のデータから分かるように、実施例1の前記方法で製造された負極材料は、初回可逆容量、初回クーロン効率、サイクル容量維持率等の電気化学的特性が比較例1の前記方法で製造された負極材料よりも優れる。
【0105】
出願人は下記のように声明する。本発明では、上記実施例を利用して本発明の詳細なプロセス用装置及びプロセスを説明したが、本発明が上記の詳細なプロセス用装置及びプロセスに限定されず、即ち、本発明は、上記の詳細なプロセス用装置及びプロセスを利用しなければ実施できないものではない。当業者にとっては、本発明に対する全ての改良、本発明の製品の各原料に対する同等置換及び補助成分の添加、具体的な形態の選択等は、いずれも本発明の保護範囲及び開示範囲に属されることが自明である。
図1
図2
図3
図4