【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成させるために、本発明は下記の技術案を採用する。
【0008】
多元系複合負極材料であって、前記負極材料はマルチシェル層コア−シェル構造であり、内核が黒鉛と黒鉛の表面に塗布されたナノ活物質で構成され、前記内核の外層は、順に、導電性炭素材料の第1シェル層、ナノ活物質の第2シェル層、導電性炭素材料被覆層の第3シェル層である多元系複合負極材料である。
【0009】
本発明の多元系複合負極材料は、ナノ活物質1〜40wt%、黒鉛30〜80wt%、導電性炭素材料10〜50wt%を含有する。
【0010】
好ましくは、前記多元系複合負極材料のメジアン径が、5.0〜45.0μm、好ましくは8.0〜35.0μm、より好ましくは10.0〜25.0μmである。
【0011】
好ましくは、前記多元系複合負極材料の比表面積が、1.0〜20.0m
2/g、好ましくは1.5〜8.0m
2/gである。
【0012】
好ましくは、前記多元系複合負極材料の粉末プレス密度が、1.0〜2.0g/cm
3、好ましくは1.1〜1.7g/cm
3である。
【0013】
好ましくは、前記黒鉛は天然鱗片状黒鉛、天然無定形黒鉛、天然結晶脈状黒鉛、人造黒鉛又は導電性黒鉛の1種又は少なくとも2種の組合せである。
【0014】
好ましくは、前記黒鉛の形状が、フレーク状、略球形又は球形の1種又は少なくとも2種の組合せである。
【0015】
好ましくは、前記黒鉛のメジアン径が、5.0〜30.0μm、好ましくは8.0〜25.0μm、より好ましくは10.0〜20.0μmである。
【0016】
好ましくは、前記ナノ活物質は、リチウムに対して電気化学的活性を有する材料、好ましくは活性金属単体、活性半金属単体、金属酸化物、金属合金化合物のうちの1種又は少なくとも2種の組合せ、より好ましくはシリコン単体、スズ単体、アンチモン単体、ゲルマニウム単体、アルミニウム単体、マグネシウム単体、亜鉛単体、ガリウム単体、カドミウム単体、チタン酸化物、シリコン酸化物、錫酸化物、コバルト酸化物、鉄酸化物、銅酸化物、マンガン酸化物、ニッケル酸化物、錫アンチモン合金、インジウムアンチモン合金、銀アンチモン合金、アルミニウムアンチモン合金、銀錫合金及びシリコンマグネシウム化合物のうちの1種又は少なくとも2種の組合せである。
【0017】
好ましくは、前記ナノ活物質のメジアン径が30.0〜300.0nm、好ましくは25.0〜250.0nm、より好ましくは20.0〜200.0nmである。
【0018】
好ましくは、前記導電性炭素材料が、カーボンナノチューブ、グラフェン、導電性黒鉛、炭素繊維、ナノ黒鉛、導電性カーボンブラック又は有機物分解炭素のうちの1種又は少なくとも2種の組合せである。
【0019】
本発明は以下の工程を含む本発明の前記多元系複合負極材料の製造方法を提供することを第二目的とする。
【0020】
(1)黒鉛の表面にナノ活物質を塗布して、第1前駆体を得る。
【0021】
(2)前記第1前駆体に対して導電性炭素材料で表面複合改質を行って、第2前駆体を得る。
【0022】
(3)第2前駆体の表面にナノ活物質を塗布して、第3前駆体を得る。
【0023】
(4)前記第3前駆体に対して被覆改質を行って、多元系複合負極材料を得る。
【0024】
好ましくは、工程(4)の後に、工程(4)で得た複合材を粉砕して、篩分けして消磁し、メジアン径5.0〜45.0μmの多元系複合負極材料を得る工程(5)を行う。
【0025】
好ましくは、工程(1)と工程(3)の前記塗布は気相塗布法、液相塗布法又は固相塗布法のうちの1種又は少なくとも2種の組合せによって行われる。
【0026】
本発明の製造方法では、前記気相塗布法の工程は以下のとおりである。前記工程(1)の黒鉛又は工程(2)の第2前駆体を回転炉に投入して、保護性ガスを導入し、600〜1500℃に昇温させてナノ活物質蒸気を導入して、0.5〜10.0h保温後に室温に冷却させ、工程(1)の第1前駆体又は工程(3)の第3前駆体を得る。
【0027】
好ましくは、前記ナノ活物質蒸気はナノ活物質を昇華又は有機ガスを分解して得るものである。
【0028】
好ましくは、前記回転炉の速度が0.1〜5.0r
pmである。
【0029】
好ましくは、前記昇温速度が1.0〜20.0℃/minである。
【0030】
好ましくは、前記ナノ活物質の流量が0.1〜1.0L/minである。
【0031】
本発明の製造方法では、前記液相塗布法の工程は以下のとおりである。ナノ活物質、分散剤及び工程(1)の黒鉛又は工程(2)の第2前駆体を有機溶剤に分散させて、乾燥させ、工程(1)の第1前駆体又は工程(3)の第3前駆体を得る。
【0032】
好ましくは、前記分散剤は、トリポリリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、トリエチルヘキシルリン酸、ドデシル硫酸ナトリウム、メチルペンタノール、セルロース誘導体、ポリアクリルアミド、グアーガム、脂肪酸ポリエチレングリコールエステル、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、ポリエチレングリコールパラオクチルフェニルエーテル、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、パラエチル安息香酸及びポリエーテルイミドのうちの1種又は少なくとも2種の組合せである。
【0033】
好ましくは、前記有機溶剤はアルコール、ケトン及びエーテルのうちの1種又は少なくとも2種の組合せである。
【0034】
本発明の製造方法では、前記固相塗布法の工程は以下のとおりである。ナノ活物質と前記工程(1)の黒鉛又は工程(2)の第2前駆体を融合機に投入して融合し、工程(1)の第1前駆体又は工程(3)の第3前駆体を得る。
【0035】
好ましくは、前記融合機は回転数が500〜3000r
pm、刃具の隙間幅が0.01〜0.5cmである。
【0036】
好ましくは、前記融合時間が0.5h以上である。
【0037】
本発明の製造方法では、工程(2)の前記表面複合改質として、機械物理改質、気相化学改質又は液相化学改質が使用される。
【0038】
本発明の製造方法では、前記機械物理改質の工程は、導電性炭素材料と工程(1)の前記第1前駆体を融合機に投入して融合し、次に反応器に仕込み、保護性ガスを導入し、600〜1200℃に昇温させて、0.5〜10.0h保温後に室温に冷却させ、工程(2)の前記第2前駆体を得るものである。
【0039】
好ましくは、前記融合機の回転数が500〜3000r
pmである。
【0040】
好ましくは、前記融合機の刃具の隙間幅が0.01〜0.5cmである。
【0041】
好ましくは、前記融合時間が少なくとも0.5hである。
【0042】
本発明の製造方法では、前記気相化学改質の工程は、工程(1)の前記第1前駆体を回転炉に投入して、保護性ガスを導入し、600〜1200℃に昇温させて、有機炭素源ガスを導入して、0.5〜10.0h保温後に室温に冷却させ、工程(2)の前記第2前駆体を得るものである。
【0043】
好ましくは、前記有機炭素源ガスは、炭化水素類及び/又は1〜3個の環を持つ芳香族炭化水素系誘導体のうちの1種又は少なくとも2種の組合せであり、好ましくはメタン、エチレン、アセチレン、ベンゼン、トルエン、キシレン、スチレン及びフェノールのうちの1種又は少なくとも2種の組合せである。
【0044】
好ましくは、前記回転炉の回転数が0.1〜5.0r
pmである。
【0045】
好ましくは、前記有機炭素源ガスの流量が0.1〜2.0L/minである。
【0046】
本発明の製造方法では、前記液相化学改質の工程は、工程(1)の前記第1前駆体と有機物を有機溶剤系に分散させて、乾燥させ、次に反応器に仕込み、保護性ガスを導入し、600〜1200℃に昇温させて、0.5〜10.0h保温後に室温に冷却させ、工程(2)の前記第2前駆体を得るものである。
【0047】
好ましくは、前記有機溶剤はエーテル、アルコール及びケトンのうちの1種又は少なくとも2種の組合せである。
【0048】
好ましくは、前記有機物は重合体、糖類、有機酸、ピッチ及び高分子材料のうちの1種又は少なくとも2種の組合せであり、好ましくはエポキシ樹脂、フェノール樹脂、フルフラール樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリフッ化ビニリデン、アクリル樹脂及びポリアクリロニトリルのうちの1種又は少なくとも2種の組合せである。
【0049】
本発明の製造方法では、前記機械物理改質用の反応器、気相化学改質用の回転炉、液相化学改質用の反応器の昇温速度が0.5〜20.0℃/minである。
【0050】
好ましくは、前記反応器は真空炉、箱形炉、回転炉、ローラーハースキルン、プッシャーキルン又は管状炉である。
【0051】
本発明の製造方法では、工程(4)の前記被覆改質として気相被覆改質、液相被覆改質又は固相被覆改質が使用される。
【0052】
本発明の製造方法では、前記気相被覆改質の工程は、工程(3)の前記第3前駆体を回転炉に投入して、保護性ガスを導入し、600〜1200℃に昇温させて、有機炭素源ガスを導入して、0.5〜10.0h保温後に室温に冷却させ、工程(4)の前記多元系複合負極材料を得るものである。
【0053】
好ましくは、前記有機炭素源ガスは炭化水素類及び/又は1〜3個の環を持つ芳香族炭化水素系誘導体のうちの1種又は少なくとも2種の組合せであり、好ましくはメタン、エチレン、アセチレン、ベンゼン、トルエン、キシレン、スチレン及びフェノールのうちの1種又は少なくとも2種の組合せである。
【0054】
好ましくは、前記回転炉の回転数が0.1〜5.0r
pmである。
【0055】
好ましくは、前記有機炭素源ガスの導入流量が0.1〜2.0L/minである。
【0056】
本発明の製造方法では、前記液相被覆改質の工程は、前記工程(3)の第3前駆体と有機物を有機溶剤系に分散させて、乾燥させ、次に反応器に仕込み、保護性ガスを導入し、600〜1200℃に昇温させて、0.5〜10.0h保温後に室温に冷却させ、工程(4)の前記多元系複合負極材料を得るものである。
【0057】
好ましくは、前記有機溶剤はエーテル、アルコール及びケトンのうちの1種又は少なくとも2種の組合せである。
【0058】
本発明の製造方法では、前記固相被覆改質の工程は、前記工程(3)の第3前駆体と有機物をV
型混合機に投入して混合し、次に反応器に仕込み、保護性ガスを導入し、600〜1200℃に昇温させて、0.5〜10.0h保温後に室温に冷却させ、工程(4)の多元系複合負極材料を得るものである。
【0059】
好ましくは、前記V
型混合機の回転数が500〜3000r
pmである。
【0060】
好ましくは、前記混合時間が0.5h以上である。
【0061】
本発明の製造方法では、前記気相被覆改質用の回転炉、液相被覆改質用の反応器、固相被覆改質用の反応器の昇温速度が0.5〜20.0℃/minである。
【0062】
好ましくは、前記反応器は真空炉、箱形炉、回転炉、ローラーハースキルン、プッシャーキルン又は管状炉である。
【0063】
好ましくは、前記有機物は重合体、糖類、有機酸、ピッチ及び高分子材料のうちの1種又は少なくとも2種の組合せであり、好ましくはエポキシ樹脂、フェノール樹脂、フルフラール樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリフッ化ビニリデン、アクリル樹脂及びポリアクリロニトリルのうちの1種又は少なくとも2種の組合せである。
【0064】
好ましくは、前記有機炭素源は、メジアン径が0.1〜25.0μm、特に好ましくは0.5〜8.0μmの粉末状である。
【0065】
本発明の製造方法では、前記保護性ガスは、窒素ガス、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガス及びキセノンガスのうちの1種又は少なくとも2種の組合せである。
【0066】
本発明は、本発明の前記多元系複合負極材料、導電剤及びバインダーを91〜94:1〜3:3〜6の質量百分率で溶剤に混合して、銅箔集電体に塗布し、真空雰囲気で乾燥させて得る負極極片を有するリチウムイオン電池を提供することを第三目的とする。
【0067】
好ましくは、前記リチウムイオン電池の正極極片に使用される正極活物質は、三元系材料、リチウムリッチ材料、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、スピネルマンガン酸リチウム、層状マンガン酸リチウム又はリン酸鉄リチウムの1種又は少なくとも2種の組合せである。
【0068】
好ましくは、前記導電剤は黒鉛粉末及び/又はナノ導電液である。
【0069】
好ましくは、前記ナノ導電液は0.5〜20wt%のナノ炭素材料と分散溶剤からなる。
【0070】
好ましくは、前記ナノ炭素材料はグラフェン、カーボンナノチューブ、ナノ炭素繊維、フラーレン、カーボンブラック及びアセチレンブラックのうちの1種又は少なくとも2種の組合せである。
【0071】
好ましくは、前記グラフェンの黒鉛層の数は1〜100である。
【0072】
好ましくは、前記カーボンナノチューブとナノ炭素繊維の直径は0.2〜500nmである。
【0073】
好ましくは、前記フラーレン、カーボンブラック及びアセチレンブラックの粒子径が1〜200nmである。
【0074】
好ましくは、前記バインダーはポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム又はスチレンブタジエンゴムの1種又は少なくとも2種の組合せである。
【0075】
好ましくは、前記リチウムイオン電池のタイプは一般的なアルミニウムケース、鋼ケース、又はラミネートリチウムイオン電池である。