(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【0008】
本発明の1つの目的は、正確には、現在の光電池技術において使用される無機化合物に代替の無機化合物を提供することであり、それによって上述の問題を避けることができる。
【0009】
このために、本発明は、無機材料の新規な群を使用することを提案し、それに関して、驚くべきことに、それらが良い効率を有することが判明したこと、そしてそれらが上述のIn、TeまたはCdなどの希少金属または毒性金属を使用する必要がないかまたは非常に低い含有量で使用するという利点を有すること、そしてまた、SeまたはTeなどのアニオンをより少ない含有量において使用する可能性、またはさらにこのタイプのアニオンを使用しない可能性を提供することを本発明者はここで実証した。
【0010】
本発明の主題の1つは、式(I):
Bi
1−xM
xCu
1−y−εM’
yOS
1−zM’’
z (I)
[式中:
Mが、Pb、Sn、Hg、Ca、Sr、Ba、Sb、In、Tl、Mg、希土類金属からなる群(A)から選択される元素または元素の混合物であり、
M’が、Ag、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ga、Mg、Al、Cdからなる群(B)から選択される元素または元素の混合物であり、
M’’がハロゲンであり、
x、yおよびzが、1より小さい、特に0.6より小さい、特に0.5より小さい、例えば0.2より小さい数であり、
x、yまたはzの少なくとも1つがゼロではなく、
0≦ε<0.2である]の少なくとも1つの化合物を含む新規な材料である。
【0011】
それらが存在しているとき、元素M、M’およびM’’は一般的に、元素Bi、元素Cuおよび元素Sの場所をそれぞれ占める置換元素である。
【0012】
「式(I)の少なくとも1つの化合物を含む材料」という用語は一般的に、分割された形態(粉末、分散体)のまたは担体上のコーティングまたは連続したまたは不連続な層の固体を意味し、そしてそれは、式(I)に相当する化合物を含むか、またはさらにからなる。
【0013】
「希土類金属」という用語は、イットリウムおよびスカンジウムと周期表の57番と71番との間(それらも含む)の原子番号の元素とからなる群の元素を意味するものと理解される。
【0014】
本発明によって、元素Mは好ましくは、元素Sb、Pb、Baおよび希土類金属から選択されてもよい。元素Mは、例えば、ルテチウムであってもよい。
【0015】
本発明によって、元素M’は好ましくは、元素Ag、ZnおよびMnから選択されてもよい。元素M’は、例えば、元素Agであってもよい。
【0016】
本発明によって、元素M’’は特に元素Iであってもよい。
【0017】
本発明の第1の変種において、本発明に従う式(I)の化合物は、以下の式:Bi
1−xM
xCu
1−εOS(I
a)[式中、x≠0、εがゼロまたはゼロでない数であり、Mが、Pb、Sn、Hg、Ca、Sr、Ba、Sb、In、Tl、Mg、希土類金属からなる群(A)から選択される元素または元素の混合物である]に相当する。
【0018】
本発明のこの変種の一実施形態に従って、Mが、希土類金属から選択される元素または元素の混合物である。
【0019】
その場合には、化合物は、例えば、式Bi
1−xLu
xCuOS(式中、x≠0およびε=0である)に相当してもよい。
【0020】
本発明の第2の変種において、本発明に従う式(I)の化合物は、以下の式:BiCu
1−y−εM’
yOS(I
b)[式中、y≠0、εがゼロまたはゼロでない数であり、M’が、Ag、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ga、Mg、Al、Cdからなる群(B)から選択される元素または元素の混合物である]に相当する。
【0021】
本発明のこの変種の一実施形態に従って、M’が、元素AgおよびZnから選択される元素または元素の混合物である。
【0022】
その場合には、化合物は、例えば、式BiCu
1−yAg
yOSまたは式BiCu
1−yZn
yOS(式中、y≠0およびε=0である)に相当してもよい。
【0023】
本発明の第3の変種において、本発明に従う式(I)の化合物は、以下の式:BiCuOS
zM’’
1−z(I
c)(式中、z≠0、εがゼロまたはゼロでない数であり、M’’がハロゲンである)に相当する。
【0024】
本発明のこの変種の一実施形態に従って、M’’が元素Iであり、その場合には、化合物は、式BiCuOS
zI
1−z(式中、z≠0およびε=0である)に相当する。
【0025】
また、本発明の主題は、本発明に従う材料の様々な利用経路である。
【0026】
したがって、第1の変種において、本発明の主題は、ビスマスおよび銅の少なくとも無機化合物と、
任意選択によりBiとPb、Sn、Hg、Ca、Sr、Ba、Sb、In、Tl、Mg、希土類金属からなる群(A)からの元素とから選択される少なくとも1つの元素の少なくとも1つの酸化物、硫化物、オキシ硫化物、ハロゲン化物またはオキシハロゲン化物と、
任意選択によりCuとAg、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ga、Mg、Al、Cdからなる群(B)からの元素とから選択される少なくとも1つの元素の少なくとも1つの酸化物、硫化物、オキシ硫化物、ハロゲン化物またはオキシハロゲン化物とを含む混合物のソリッドミリングの工程を含む、本発明による材料を調製するための第1の方法である。
【0027】
本変種によって、ビスマスおよび銅の少なくとも無機化合物を含む固体形態の混合物がミリングされる。好ましくは、混合物中に存在しているビスマスおよび銅の無機化合物は、少なくとも化合物Bi
2O
3、Bi
2S
3およびCu
2Sである。
【0028】
このミリングは、それ自体公知の任意の手段によって行われてもよい。この混合物は特に瑪瑙乳鉢内に置かれてもよい。ミリングは、例えば、遊星ミルで行なわれてもよい。
【0029】
ミリングを容易にするために、例えば、ステンレス鋼ビーズ、特殊クロム鋼ビーズ、瑪瑙ビーズ、タングステンカーバイドビーズまたは酸化ジルコニウムビーズからなるミリングビーズを固体形態の混合物に加えることができる。
【0030】
ミリング時間は、所望の生成物に従って調節されてもよい。それは特に20分〜96時間の間、特に1時間〜72時間の間であってもよい。
【0031】
混合物中のビスマスおよび銅の無機化合物は、50μm未満、特に10μm未満、例えば1μm未満の粒度を有する粒子の形態であってもよい。
【0032】
ここで言及される粒子の寸法は典型的に、走査型電子顕微鏡法(SEM)によって測定されてもよい。
【0033】
第2の変種において、本発明の主題は、以下の工程を含む沈殿反応を行なうことによる本発明に従う材料を調製するための第2の方法である:
(a)ビスマスの無機化合物の少なくとも1つの塩の形態の金属前駆体と、
任意選択によりBiとPb、Sn、Hg、Ca、Sr、Ba、Sb、In、Tl、Mg、希土類金属からなる群(A)からの元素とから選択される少なくとも1つの元素の少なくとも1つの酸化物、硫化物、オキシ硫化物、ハロゲン化物またはオキシハロゲン化物とを含む少なくとも1つの溶液の調製、および
(b)銅の無機化合物の少なくとも1つの塩の形態の金属前駆体と、
任意選択によりCuとAg、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ga、Mg、Al、Cdからなる群(B)からの元素とから選択される少なくとも1つの元素の少なくとも1つの酸化物、硫化物、オキシ硫化物、ハロゲン化物またはオキシハロゲン化物とを含む少なくとも1つの溶液の調製、および
(c)任意選択により、硫黄源を含む少なくとも1つの溶液の調製、
(d)工程(a)、(b)および任意選択により(c)の結果得られる溶液を混合することによる沈殿、
(e)工程(d)の結果得られる式(I)の化合物の濾過、および必要ならば洗浄。
【0034】
この方法は、可溶性金属前駆体を使用して沈殿反応を行ない、式(I)の化合物を含む材料中の置換元素の均質混合物を得ることにある。
【0035】
前駆体の様々な溶液が別々に調製され、次に一緒に混合され、それによって均質混合物およびサブミクロン粒度が得られる。
【0036】
特定の場合において、沈殿は、特に、温度を上げて行なわれ、より良い結晶化を得てもよい。
【0037】
実例として、このような沈殿は、以下の方法で行なわれてもよい:
(a)−(b)可溶性金属前駆体の溶液の提供。例えば、塩基性pHの溶液を以下のように調製することができる:
− 元素Biと群(A)の元素が、クエン酸塩、乳酸塩、酒石酸塩などの強く錯体を形成するポリカルボン酸塩アニオンとの錯化によって安定化される、
− 銅が、過剰な還元剤(例えばチオ硫酸ナトリウム、ヒドラジン等)の添加によって銅(I)の形態で安定化される、
− 銅と群(B)の元素が、塩基性pH(Al、Zn)の作用によるかまたはアミノ配位子(アンモニア、エチレンジアミン、有機アミン等)などのイオンと錯化する配位子を加えることによって塩基性媒体中で安定化されるかどちらかで塩基性媒体中に可溶性に維持されてもよい、
(c)硫黄源、例えば硫化物イオンを含む溶液の提供、
(d)工程(a)および(b)の結果得られた溶液と工程(c)の結果得られた溶液との混合。混合速度および混合温度を調節して、得られた固体粒子のモフォロジーまたは大きさを制御してもよい。
(e)所望の化合物の結晶化を得るために十分な時間の加熱および撹拌。次に、化合物を濾過および洗浄して、固体組成物中に保持されないイオンを除去し、次いで炉内で乾燥させる。
【0038】
第3の変種において、本発明の主題は、以下の工程を含む、本発明に従う材料を調製するための第3の方法である:
(a’)少なくとも、分散された形態でのビスマスおよび銅の無機化合物と、
任意選択によりBiとPb、Sn、Hg、Ca、Sr、Ba、Sb、In、Tl、Mg、希土類金属からなる群(A)からの元素とから選択される少なくとも1つの元素の少なくとも1つの酸化物、硫化物、オキシ硫化物、ハロゲン化物またはオキシハロゲン化物と、
任意選択によりCuとAg、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ga、Mg、Al、Cdからなる群(B)からの元素とから選択される少なくとも1つの元素の少なくとも1つの酸化物、硫化物、オキシ硫化物、ハロゲン化物またはオキシハロゲン化物と、
任意選択により、硫黄源とを含む混合物の提供、
(b’)水熱条件下でおよび好ましくは撹拌しながら水または水性媒体中に混合物を溶解、および
(c’)得られた溶液の冷却(それによって式(I)Bi
1−xM
xCu
1−y−εM’
yOS
1−zM’’
z(式中、x、y、zおよびεが上述の定義を有する)の化合物の粒子が得られる。
【0039】
工程(b’)において使用される水性媒体は特に、還流下の溶剤、例えばエチレングリコールまたはイオン性液体の混合物であってもよい。
【0040】
工程(c’)の終了時に、解凝集工程が、例えば超音波処理プローブを使用して行なわれてもよい。
【0041】
好ましくは、工程(a’)の混合物で供給されるビスマスおよび銅の無機化合物は、少なくともBi
2O
3およびCu
2Oである。別の可能な実施形態に従って、ビスマスおよび銅可溶塩を使用してもよい。特に、工程(a’)で無機化合物の酸化物を利用しない場合、工程(b’)は有利には、水、硝酸塩または炭酸塩などの酸素源の存在下で行なわれる。
【0042】
工程(a’)で使用される硫黄源は、硫黄、硫化水素H
2Sおよびその塩、有機硫黄化合物(チオール、チオエーテル、チオアミド等)、好ましくは無水または水和硫化ナトリウムから選択されてもよい。
【0043】
有利には、それらの厳密な性質にかかわらず、分散された形態での酸化物は、10μm未満、特に5μm未満および有利には1μm未満の粒度を有する、粒子の形態で、典型的に粉末の形態で工程(a’)で使用される。この粒度は、例えば超微粉砕機または湿式ボールミルなどのデバイスを使用して例えば、酸化物の先行のミリングによって得られてもよい(別々にまたは、酸化物の混合物の場合はより有利には、このミリングは、酸化物の混合物で行なわれてもよい)。
【0044】
工程(b’)において、溶解は、「水熱条件」を使用して行なわれる。本説明のために、用語「水熱条件」は、工程が、水の飽和蒸気圧下で180℃を超える温度で行なわれることを意味する。
【0045】
ミリングが行なわれるとき、工程(b’)の温度は、240℃未満、またはさらに210℃未満、例えば180℃〜200℃の間であってもよい。
【0046】
あるいは、工程(b’)は先行のミリングをせずに行なわれてもよく、しかしながら、その場合、240℃を超える温度、好ましくは250℃を超える温度で工程を行なうことが好ましい。
【0047】
好ましくは、工程(b’)において、混合物を水熱条件よりも低い温度(典型的に室温および大気圧)の水中に置き、次に、運転温度が達せられるまで(水熱容器、特にParr容器などの装置を使用して)典型的に密閉媒体内で運転して温度をゆっくりと、有利には10℃/分未満の速度で、例えば0.5〜5℃/分の間、典型的に2.5℃/分で上昇させる。
【0048】
工程(b’)において、溶解は特に、撹拌しながら行なわれる。この撹拌はとりわけ、例えば水熱容器を電磁攪拌機上に置くことによって電磁撹拌によって行なわれてもよく、組立体は、加熱室(例えば炉)内に置かれる。
【0049】
工程(b’)は、溶解を達成するために十分な時間の間行なわれる。典型的に、温度は、少なくとも12時間、例えば48時間、またはさらに7日間の間少なくとも190℃に維持される。
【0050】
工程(b’)で行なわれる溶解の終了時に、得られた溶液は典型的に、工程(c)において、冷却によって、例えば温度を少なくとも1℃/分の速度で低下させることによって、典型的に少なくとも3℃/分、例えば3〜5℃/分の減少で好ましくはより急速に冷却することによって室温にまたはより一般的には10〜30℃の温度にされる。このタイプの冷却は典型的に、長さが50nm〜5μmの間、典型的に100nm〜1μmの間、そして厚さが50nmの粒子をもたらす。さらに、特定の理論に縛られることを望まないが、前述の高い冷却速度は一般的に、不純物(特にCu
2S、Bi
2O
3およびCu
2BiS
3)の非常に低い含有量をもたらす。
【0051】
有利には、本発明に従う材料は、上に示された第1のソリッドミリング法によって得られる。
【0052】
また、本発明の主題は、式(I):
Bi
1−xM
xCu
1−y−εM’
yOS
1−zM’’
z (I)
[式中:
Mが、Pb、Sn、Hg、Ca、Sr、Ba、Sb、In、Tl、Mg、希土類金属からなる群(A)から選択される元素または元素の混合物であり、
M’が、Ag、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ga、Mg、Al、Cdからなる群(B)から選択される元素または元素の混合物であり、
M’’がハロゲンであり、
x、yおよびzが、1より小さい、特に0.6より小さい、特に0.5より小さい、例えば0.2より小さい数であり、
x、yおよびzの少なくとも1つがゼロではなく、
0≦ε<0.2である]の少なくとも1つの化合物を含む材料の、特に光電気化学または光化学用途のための、特に光電流をもたらすための半導体としての使用である。
【0053】
特に元素M、M’およびM’’に関して、上記の説明に示されるものが本発明によるこの使用に適用される。
【0054】
半導体中に存在している化合物は、特にp型の置換された無機材料である。
【0055】
ビスマス、銅および/または硫黄の化学置換は、いくつかの役割を有してもよい。
【0056】
元素Biと希土類金属または元素Sbとの置換または代わりに元素Cuと元素Agとの置換などの等電子置換の場合、これらの置換は、特に格子パラメーターを変えることによっておよび/または軌道の拡大およびそれらのエネルギー位置を変えることによるものであってもよく、したがってギャップ(価電子帯−伝導帯)の変更をもたらす。
【0057】
異原子価置換に関して、それらは元素Cuの酸化数を変える。
【0058】
半導体の構造に置換を導入することによって、場合に応じて、電荷キャリアの数の減少または増加をもたらしてもよい。置換された材料は特に、より高い導電率を有する場合があり、それは、その置換されない形態に対して改良された伝導能をもたらすが、または、反対に、より低い導電率を有する場合がある。
【0059】
本発明の文脈において、上述の式(I)に相当する材料は、特にそれらがp型であるとき、それらのギャップよりも長い波長において照射される時に光電流をもたらすことができる(すなわち、十分なエネルギーの入射光子の効果下で材料内に電子・正孔対が生成され、形成された荷電種(電子および「正孔」、すなわち、電子が不足した状態)が自由に移動して電流を発生する)ことを本発明者はここで実証した。
【0060】
特に、本発明者はここでは、本発明の材料が光電池効果を生じ得ると考えられることを示した。
【0061】
一般的には、光電池効果は、異なったタイプの2つの半導体化合物、すなわち、
− pタイプの半導体の性質を有する第1の化合物と、
− nタイプの半導体の性質を有する第2の化合物とを組み合わせて使用することによって得られる。
【0062】
これらの化合物は、本質的に公知の方法で互いに近接して(すなわち直接に接触しているかまたは少なくとも、光電池効果を確実にするために十分に小さい距離において)配置されて、p−nタイプの接合を形成する。光の吸収によって生じた電子・正孔対はp−n接合において分離され、励起電子はn型半導体によってアノードに運ばれてもよく、正孔自体は、p型半導体によってカソードに運ばれる。
【0063】
本発明の文脈において、典型的には、光電池効果を得るために、同様に特にp型である上述の式(I)の半導体をベースとした材料を2つの電極の間のn型半導体と、直接に接触させるかまたは任意選択により、付加的なコーティング、例えば電荷収集コーティングによって電極の少なくとも一方に接続して接触させて置き、そしてこのように製造された光電池デバイスを適した電磁線、典型的には太陽スペクトルからの光で照射する。これを実施するために、電極の一方が、使用される電磁線を通過させるのが好ましい。
【0064】
別の特定の態様に従って、本発明の主題は、正孔伝導性材料と電子伝導性材料との間に、式(I)のp型化合物をベースとした層と、n型半導体をベースとした層とを含む光電池デバイスであり、そこで、
− 式(I)の化合物をベースとした層が、n型半導体をベースとした層と接触しており、
− 式(I)の化合物をベースとした層が正孔伝導性材料に近接しており、
− n型半導体をベースとした層が電子伝導性材料に近接している。
【0065】
本明細書の説明のために、用語「正孔伝導性材料」は、p型半導体と電気回路との間に電流を循環させることができる材料を意味する。
【0066】
本発明による光電池デバイスにおいて使用されるn型半導体は、式(I)の化合物よりも著しい電子吸引性質を有する任意の半導体または電子の除去を促進する化合物から選択されてもよい。好ましくは、n型半導体は酸化物、例えばZnOまたはTiO
2、または硫化物、例えばZnSであってもよい。
【0067】
本発明による光電池デバイスにおいて使用される正孔伝導性材料は、例えば、適した金属、例えば金、タングステンまたはモリブデン、または担体上に堆積された、または電解質と接触した金属、例えばPt/FTO(フッ素がドープされた二酸化スズ上に堆積された白金)、または例えばガラス上に堆積されたITO(スズがドープされた酸化インジウム)などの導電性酸化物、またはp型導電性ポリマーであってもよい。
【0068】
特定の実施形態に従って、正孔伝導性材料は、上述のタイプの正孔伝導性材料とレドックス媒介物質、例えばI
2/I
−対を含有する電解質を含んでもよく、その場合、正孔伝導性材料は典型的にPt/FTOである。
【0069】
電子伝導性材料は、例えば、FTOまたはAZO(アルミニウムがドープされた酸化亜鉛)、またはn型半導体であってもよい。
【0070】
本発明による光電池デバイスにおいて、p−n接合において生成された正孔は、正孔伝導性材料を介して引き抜かれ、電子は、上述のタイプの電子伝導性材料を介して引き抜かれる。
【0071】
本発明による光電池デバイスにおいて、正孔伝導性材料および/または電子伝導性材料は、使用される電磁線を通過させる、少なくとも部分的に透明である材料であるのが好ましい。この場合、少なくとも部分的に透明な材料は有利には、入射電磁線の供給源とp型半導体との間に置かれる。
【0072】
このために、正孔伝導性材料は、例えば、金属および導電性ガラスから選択される材料であってもよい。
【0073】
代わりにまたは組み合わせて、電子伝導性材料は少なくとも部分的に透明であってもよく、そのとき、それは例えば、FTO(フッ素がドープされた二酸化スズ)、またはAZO(アルミニウムがドープされた酸化亜鉛)およびn型半導体から選択される。
【0074】
別の有利な実施形態に従って、式(I)のp型化合物をベースとした層と接触しているn型半導体をベースとした層もまた、少なくとも部分的に透明であってもよい。
【0075】
用語「部分的に透明な材料」はここでは、光電流をもたらすために有用な、入射電磁線の少なくとも一部を通過させる材料を意味し、そしてそれは、
− 入射電磁界を完全には吸収しない材料、および/または
− 電磁線の一部が、材料に当たらずにこの電磁線を通過させることができる(典型的に孔、スリットまたは隙間を含む)有孔の形態である材料であってもよい。
【0076】
本発明に従って使用される式(I)の化合物は、50μm未満、好ましくは20μm未満、典型的に10μm未満、有利には5μm未満、一般に1μm未満、より有利には500nm未満、例えば200nm未満、またはさらに100nmの少なくとも1つの寸法を有する等方性または異方性物体の形態で使用されるのが有利である。
【0077】
典型的に、50μm未満の寸法は、
− 等方性物体の場合は平均直径、
− 異方性物体の場合は厚さまたは横径であってもよい。
【0078】
第1の異形によって、式(I)の化合物をベースとした物体は、典型的に10μm未満の寸法を有する粒子である。
【0079】
これらの粒子は好ましくは、本発明の調製方法の1つによって得られる。
【0080】
用語「粒子」はここでは、等方性または異方性物体を意味し、それは単一粒子、または凝結体であってもよい。
【0081】
ここで言及される粒子の寸法は典型的に、走査型電子顕微鏡法(SEM)によって測定されてもよい。
【0082】
有利には、式(I)の化合物は、プレートレットタイプの異方性粒子、またはこのタイプの数十〜数百の粒子の凝集体の形態であり、これらのプレートレットタイプの粒子は典型的に、5μm未満(有利には1μm未満、より有利には500nm未満)である寸法を有し、典型的に500nm未満、例えば100nm未満である厚さを有する。
【0083】
第1の異形によって記載されたタイプの粒子は典型的に、n型導電体または半導体担体上に堆積された形態で使用されてもよい。
【0084】
したがって、本発明に従う式(I)のp型粒子で覆われたITOまたは金属板は、例えば、特に光検出器として使用されてもよい光電気化学的タイプのデバイスのための光活性電極として作用してもよい。
【0085】
典型的に、上述のタイプの光活性電極を使用する光電気化学的タイプのデバイスは、一般に、約1Mの濃度を典型的に有する塩溶液、例えばKCl溶液である電解質を含み、その中に、
− 上述のタイプの光活性電極(本発明に従う式(I)の化合物の粒子で覆われたITOまたは金属板)、
− 参照電極、および
− 対電極
が浸漬され、
これらの3つの電極は典型的にポテンショスタットによって一緒に連結される。
【0086】
可能な実施形態に従って、電気化学デバイスは、
− 光活性電極として:式(I)の化合物の粒子で覆われた担体(ITO板など)、
− 参照電極として:例えば、Ag/AgCl電極、および
− 対電極として:例えば、白金線
を含んでもよく、
これらの3つの電極は典型的にポテンショスタットによって一緒に連結される。
【0087】
このタイプの電気化学デバイスが光源下に置かれるとき、照射の効果で、電子・正孔対が形成され、分離される。
【0088】
通常の場合、電解質が水溶液であるとき、電解質中の水は、発生した電子によって光活性電極付近で還元され、水素およびOH
−イオンを生じる。このように生じたOH
−イオンは、電解質を介して対電極に向かって移動し、式(I)の化合物の正孔は、ITO型導体によって引き抜かれ、外部電気回路に入る。最後に、OH
−イオンの酸化が対電極付近で正孔を利用して行なわれ、酸素を生じる。式(I)の化合物による光吸収によって引き起こされた、これらの電荷(正孔と電子)の移動が、光電流を発生する。
【0089】
このデバイスは特に、光検出器として使用されてもよく、光電流は、デバイスが照らされる時にだけ発生される。
【0090】
上に記載されたような光活性電極は特に、溶剤中に分散された上述のタイプの式(I)の化合物の粒子を含む懸濁液を使用して、そして湿潤経路または任意のコーティング方法によって、例えばドロップ−キャスティング、スピンコーティング、浸漬コーティング、インクジェット印刷またはスクリーン印刷によって、担体上に、例えばITOで覆われたガラス板または金属板上にこの懸濁液を置いて作製されてもよい。この主題に関するさらなる詳細については、文献:R.M. Pasquarelli,D.S.Ginley,R.O’Hayre、Chem. Soc.Rev.,vol40,5406−5441ページ、2011年が参照されてもよい。好ましくは、懸濁液中に存在している式(I)の化合物をベースとした粒子は、レーザー粒度測定によって測定されたとき(例えばMalvern型レーザー粒度計を使用して)5μm未満である平均直径を有する。
【0091】
好ましい実施形態に従って、式(I)の化合物の粒子は溶剤、例えばテルピネオールまたはエタノール中に予め分散されてもよい。
【0092】
式(I)の化合物の粒子を含有する懸濁液は、担体、例えば、導電性酸化物で覆われた板上に堆積されてもよい。
【0093】
光電池デバイスを製造するためによく適していることが判明している、本発明の第2の異形によって、式(I)の化合物は、式(I)の化合物をベースとした連続した層の形態であり、その厚さは50μm未満、好ましくは20μm未満、より有利には10μm未満、例えば5μm未満そして典型的に500nm超である。
【0094】
用語「連続した層」はここでは、担体上への粒子の分散体の単純な堆積によって得られない、担体上に生じそして前記担体を覆う均質な堆積物を意味する。
【0095】
本発明のこの特定の異形による式(I)のp型化合物をベースとした連続した層は典型的に、正孔伝導性材料と電子伝導性材料との間に、n型半導体の層に近接して置かれ、光電池効果をもたらすことが意図された光電池デバイスを形成する。
【0096】
本発明に従う使用においてn型半導体は、導電性酸化物、例えばZnOまたはTiO
2、または硫化物、例えばZnSであってもよい。
【0097】
さらに、用語「式(I)の化合物をベースとした層」は、式(I)の化合物を、好ましくは少なくとも50質量%の比率において、またはさらに少なくとも75質量%の比率において含む層を意味する。
【0098】
一実施形態に従って、第2の異形による連続した層は、式(I)の化合物から本質的になり、それは典型的に、式(I)の化合物の少なくとも95質量%、またはさらに少なくとも98質量%およびより有利には少なくとも99質量%を含む。
【0099】
この実施形態に従って使用される式(I)の化合物をベースとした連続した層は、いくつかの形態をとってもよい。
【0100】
連続した層が、ポリマーマトリックスと、このマトリックス中に分散された、特に、本発明の第1の実施形態において使用されるタイプの10μm未満、またはさらに5μm未満の寸法を典型的に有する式(I)の化合物をベースとした粒子とを含む。
【0101】
典型的に、ポリマーマトリックスがp型導電性ポリマーを含み、それは、特にポリチオフェン誘導体から、より詳しくはポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン):ポリ(スチレンスルホネート)(PEDOT:PSS)誘導体から選択されてもよい。
【0102】
ポリマーマトリックス中に存在している式(I)の化合物をベースとした粒子は好ましくは、5μm未満の寸法を有し、それは特に、SEMによって定量されてもよい。
【実施例】
【0111】
実施例1
ソリッドミリングによってBiCu
0.5Ag
0.5OS粒子を調製するための方法
BiCu
0.5Ag
0.5OS粉末は、以下の手順に従って、室温での反応性ミリングによって調製された:
1.028gのBi
2S
3、1.864gのBi
2O
3、0.477gのCu
2Sおよび0.744gのAg
2Sを瑪瑙ミリングビーズの存在下で瑪瑙乳鉢内に置く。
【0112】
次に、乳鉢に覆いをかけ、約500rpmの回転速度を有するFritsch No.6遊星ミル内に置く。高純度相が得られるまでミリングを120分間継続する。
【0113】
X線回折によって特性決定された得られた化合物C
1は、以下の正方格子パラメーターを有する:a=3.866Å、c=8.5805Å、V=128.27Å
3。
【0114】
実施例2
ソリッドミリングによってBiCuOS
0.95I
0.05粒子を調製するための方法
BiCuOS0.95I0.05粉末は、以下の手順に従って、室温での反応性ミリングによって調製された:
1.028gのBi
2S
3、1.864gのBi
2O
3、0.906gのCu
2Sおよび0.114gのCuIを瑪瑙ミリングビーズの存在下で瑪瑙乳鉢内に置く。
【0115】
次に、乳鉢に覆いをかけ、約500rpmの回転速度を有するFritsch No.6遊星ミル内に置く。高純度相が得られるまでミリングを120分間継続する。
【0116】
X線回折によって特性決定された得られた化合物C
2は、以下の正方格子パラメーターを有する:a=3.88Å、c=9.595Å、V=129.47Å
3。
【0117】
実施例3
ソリッドミリングによってBiCu
0.7Zn
0.3OS粒子を調製するための方法
BiCu
0.7Zn
0.3OS粉末は、以下の手順に従って、室温での反応性ミリングによって調製された:
0.720gのBi
2S
3、1.584gのBi
2O
3、0.668gのCu
2Sおよび0.349gのZnSを瑪瑙ミリングビーズの存在下で瑪瑙乳鉢内に置く。
【0118】
次に、乳鉢に覆いをかけ、約500rpmの回転速度を有するFritsch No.6遊星ミル内に置く。高純度相が得られるまでミリングを120分間継続する。
【0119】
X線回折によって特性決定された得られた化合物C
3は、以下の正方格子パラメーターを有する:a=3.870Å、c=8.571Å、V=128.36Å
3。
【0120】
実施例4
可溶性前駆体からBiCu
0.7Zn
0.2OS粒子を調製するための方法
1)ビスマス前駆体溶液(0.1Mで50mL):
4mLの濃HNO
3(商用52.5%)を容器内の2.425gのBiNO
3.5H
2Oに添加し、次に、混合物を10mLの水で希釈する。別のビーカー内で、3gの水酸化ナトリウムを3gの酒石酸二ナトリウム(C
4H
4Na
2O
6・2H
2O)と混合する。
【0121】
得られた2つの溶液を急速に混合する。白色沈殿物がすぐに形成され、消失する。得られた溶液は透明色である。次に、それを水で50mLの体積に希釈する。
【0122】
2)銅Iおよび亜鉛(II)の前駆体の溶液(0.1M(Cu+Zn)のカチオン濃度で50mL)
0.992gの硫酸銅五水和物(CuSO
4.5H
2O)および0.285gの硫酸亜鉛七水和物を30mLの蒸留水に溶解する。1.5mLの濃アンモニア(28%)が添加され、濃青色溶液が得られる。次に、15gのチオ硫酸ナトリウム五水和物が添加される。
【0123】
混合物が4時間の間中程度に(50℃)加熱される。無色の溶液が得られる。密閉容器を使用して銅(I)の酸化を避けることが好ましい。
【0124】
3)Na
2Sの溶液
12.25gのNa
2S.9H
2Oを100mLの蒸留水に溶解する。
【0125】
4)化合物の形成
Biおよび(Cu(+Zn)を含有する前もって調製された溶液を急速に混合する。白色沈殿物がすぐに形成され、消失する。混合物が90℃の温度に加熱される。Na
2S溶液が90℃に加熱される。
【0126】
2つの溶液が所望の温度であるとき、カチオン(Bi,Cu,Zn)の溶液は、Na
2S溶液に添加される。黒色沈殿物がすぐに形成される。溶液は4時間の間90℃で撹拌される。次に、それは濾過され、蒸留水で洗浄され、炉内で80℃で乾燥される。
【0127】
得られた生成物は、X線回折によって観察される時に単一相を有する。
【0128】
実施例5
光電気化学デバイス内での化合物C
1〜C
3の使用
図1に記載されたデバイスは、作用電極をAg/AgClに対して−0.8Vの電位に分極して使用された。システムは、白熱電球(2700Kの色温度)下で暗時と点灯時と交互で照明される。システムが照明下に置かれる時に電流の強さが増加した。これは、光電流であり、それは、化合物C
1〜C
3の各々が光電流を発生する能力を裏づける。この光電流はカソード電流(すなわち負側)であり、それは、これらの化合物C
1〜C
3の各々がp型半導体であるという事実と一致している。
【0129】
化合物C
1〜C
5の各々について、得られた光電流の測定値は以下の通りである。
【0130】