(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6563484
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】潜在的に爆発性の不純物を含有する液体を蒸発させる装置および方法
(51)【国際特許分類】
B01D 1/22 20060101AFI20190808BHJP
【FI】
B01D1/22 A
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-508057(P2017-508057)
(86)(22)【出願日】2014年8月14日
(65)【公表番号】特表2017-530857(P2017-530857A)
(43)【公表日】2017年10月19日
(86)【国際出願番号】CN2014084399
(87)【国際公開番号】WO2016023209
(87)【国際公開日】20160218
【審査請求日】2017年4月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】515266223
【氏名又は名称】コベストロ、ドイチュラント、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】COVESTRO DEUTSCHLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【弁理士】
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(72)【発明者】
【氏名】アルフレート、ソッペ
(72)【発明者】
【氏名】サン、ジユアン
(72)【発明者】
【氏名】トルシュテン、ライディヒ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス、ルノースキ
(72)【発明者】
【氏名】ディーター、ハイトカンプ
【審査官】
関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭50−024163(JP,A)
【文献】
特開2007−275821(JP,A)
【文献】
実開昭61−019401(JP,U)
【文献】
特表2013−521210(JP,A)
【文献】
特開昭62−280580(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0118545(US,A1)
【文献】
実開昭55−115303(JP,U)
【文献】
中国特許出願公開第102767692(CN,A)
【文献】
特開2001−241883(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第2213367(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 1/00−3/42
C02F 1/02−18
C07B 63/00
C01B 7/01−075
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
潜在的に爆発性の不純物を含む液体(1)を蒸発させる蒸発装置(100)であって、
(i)潜在的に爆発性の不純物を含む前記液体(1)用の少なくとも1つの入口(2)であって、前記入口(2)は、前記蒸発装置の上部(2.1)および/または前記蒸発装置の側部(2.2)に位置する、入口(2)と、
(ii)任意の密閉ポット(3)であって、前記密閉ポットが存在する場合に、前記密閉ポット内へと収容されるいずれかの入口(2.1)を有する、任意の密閉ポット(3)と、
(iii)液体分配器(4)であって、
・いずれかの入口(2.1)の下部、または存在する場合は前記密閉ポット(3)の下部、および/または、
・前記液体分配器(4)が連結したいずれかの入口(2.2)の上部、
に配置される液体分配器(4)と、
(iv)前記蒸発装置内で前記液体分配器(4)の下部で水平に配置された上側加熱部(5.1)であって、前記上部加熱部(5.1)は、前記液体(1)と前記液体(1)中の潜在的に爆発性の不純物とを完全に蒸発させるのに十分な熱を提供するよう十分に大きく設計されている、上部加熱部(5.1)と、
(v)前記蒸発装置内で前記上側加熱部(5.1)の下部で、水平に配置されたまたは下方向の傾斜を伴った下側加熱部(5.2)と、
(vi)前記下側加熱部(5.2)の下部の前記蒸発装置の底部で水平に配置された加熱可能平板(10)と、
(vii)蒸発した液体(14)用の出口(15)と、
を備える蒸発装置。
【請求項2】
前記上側加熱部(5.1)と前記下側加熱部(5.2)の両方が、複数の管の束を備える、請求項1に記載の蒸発装置。
【請求項3】
上側の管の束(5.1)と下側の管の束(5.2)は、曲がったU型の連結要素で互いに連結しており、それによって上側部分(5.1)と下側部分(5.2)とを有するU型管の束(5)を形成している、請求項2に記載の蒸発装置。
【請求項4】
前記下側の管の束(5.2)は、0.7度よりも大きい、好ましくは0.8度〜5度、より好ましくは1度〜3度の下方向の傾斜を有する、請求項2または3に記載の蒸発装置。
【請求項5】
前記管の束を形成する加熱可能な複数の管の複数の層は、複数の管の1つの層の個々の管の間の隙間が、その上および/またはその下の複数の管の層の複数の管によって覆われているように配置されている、請求項2〜4のいずれか一項に記載の蒸発装置。
【請求項6】
複数の加熱部(5.1)および(5.2)用の複数のスロットを有するバッフル板(18)は、前記複数の加熱部(5.1)および(5.2)が前記複数のスロットを通って走り、前記バッフル板の上端部が蒸発器の内側の上部シェルまで延びるように、前記加熱可能平板(10)の上部の前記入口(1)と前記出口(15)との間で、前記蒸発器内で垂直に配置されている、請求項1〜5のいずれか一項に記載の蒸発装置。
【請求項7】
蒸発した液体(1)の気体流を前記水平に配置された加熱可能平板(10)上へ強制的に方向付けるように、誘導デバイスが蒸発器内に配置されている、請求項1〜6のいずれか一項に記載の蒸発装置。
【請求項8】
前記誘導デバイスは、複数の加熱部(5.1)および(5.2)用の複数のスロットを有するバッフル板(18)であり、前記バッフル板は、前記複数の加熱部(5.1)および(5.2)が前記複数のスロットを通って走り、前記バッフル板の上端部が蒸発器の内側の上部シェルまで延び、前記バッフル板の下端部が前記下側加熱部(5.2)の下部の前記蒸発器のセクションまで延びるように、前記加熱可能平板(10)の上部の前記入口(1)と前記出口(15)との間で、前記蒸発器内で垂直に配置されている、請求項7に記載の蒸発装置。
【請求項9】
前記液体分配器(4)は、複数の誘導羽根(4.1)を備える、請求項1〜8のいずれか一項に記載の蒸発装置。
【請求項10】
前記液体(1)は、塩素、ジニトロトルエン、およびエーテルからなる群から選択される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の蒸発装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の蒸発装置を動作させる方法であって、
(I)蒸発させる液体(1)を、
・存在する場合は前記密閉ポット(3)を介した入口(2.1)、および/または、
・入口(2.2)、
を経由して前記液体分配器(4)に導入し、そこから加熱された前記上側加熱部(5.1)に導入され、前記液体(1)の質量流量は、前記上側加熱部(5.1)が提供する設計蒸発容量を超えないように選択され、
(II)未蒸発の滴を、加熱された平板(10)上に誘導し、
(III)前記蒸発した液体(14)を、前記出口(15)を介して排出する、
ことを含む方法。
【請求項12】
前記液体(1)は、塩素、ジニトロトルエン、およびエーテルからなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実際の液体化合物よりも揮発性が低い潜在的に爆発性の不純物を含有する液体を蒸発させる装置および方法に関する。本発明による蒸発器の組み立てによって、未蒸発液体の液体だめ(liquid sump)を形成せずに、液体の完全な蒸発を伴った蒸発器の動作が可能になる。
【背景技術】
【0002】
多くの産業プロセスで、液体はある段階で蒸発されなければならない。純液体を蒸発させる際、気相は、未蒸発の液体を同じ組成を必ず有する。しかし、大規模の産業プロセスで使用される様々な化合物はしばしば顕著な量の不純物を含有しており、そのいくらかは、潜在的に爆発性の有害性物質を有し得る。通常、ある温度および圧力に関して、潜在的に爆発性の不純物の存在がそれ未満では危険ではない臨界閾値濃度が存在する。よって、産業プロセスでは、そのような不純物を前記閾値未満に抑えるよう配慮がなされる。しかし、周囲温度および圧力で保管されている際に、危険ではない濃度でしかないそのような不純物を含有する液体でも、前記液体が蒸発すると、状況は一気に変化し得る。第1に、多くの場合で、蒸発を起こすために温度を上げ、すなわち、液体が加熱される。しかし、液体の温度が高いと、不純物の臨界閾値濃度は、周囲温度にあるときよりもかなり低くなり得る。第2に、蒸発が温度を上げずに圧力を低下させることで実行されるだけでも、未蒸発液体に蓄積される不純物のために、問題は生じ得る:
【0003】
不純物が実際の化合物と非常に類似した沸点を有する場合、蒸発の際に形成される気相は、未蒸発液相と本質的に同一の組成を有する。しかし、不純物は、実際の化合物よりも顕著に低い(低沸点不純物)または顕著に高い(高沸点不純物)沸点を有することがほとんどである。第1の場合、液体の蒸発の際、不純物を多く含む気相が最初に形成され、不純物が枯渇した未蒸発液相を残す。後者の場合、蒸発される実際の化合物を多く含んだ気相が最初に形成され、不純物を多く含んだ未蒸発液相を残す。後者の場合で不純物が潜在的に爆発性の有害性物質を有する化合物である場合、液相中の不純物のこの蓄積は、大変危険となり得る。このように、実際の標的化合物よりも揮発性が低く、潜在的に爆発性の不純物を含有する液体を蒸発させることは、常にリスクが伴う。そのような状況は、たとえば、液体塩素(潜在的に爆発性の不純物として三塩化窒素を含有し得る)、液体ジニトロトルエン(潜在的に爆発性の不純物としてトリニトロトルエン、ニトロクレゾールなどを含有し得る)、および、液体エーテル(過酸化物を含有し得る)を蒸発させるときに起こり得る。
【0004】
この問題に対処するアプローチがいくつか当該技術分野で公知である:
たとえば、発熱して分解し得る高反応性物質であり、閾値濃度を超えた場合に最悪の事態では爆発を引き起こす三塩化窒素(NCl
3)を含有する液体塩素の蒸発の場合、通常、液体塩素中でのNCl
3の高濃度の蓄積を回避するために特別な配慮がなされなくてはならない。この点において、液体塩素中の三塩化窒素の濃度を、各場合で塩素およびその中に存在する不純物の総重量をもとに、3重量%未満の値、より好ましくは1重量%未満の値、最も好ましくは0.1重量%未満の値に制限することが好ましい。これは、(1)蒸発器への液体塩素原料中のNCl
3濃度を極端に低い値に制限すること、または、(2)蒸発器内での蓄積を回避すること、または、両方の対策の組合せによって達成され得る。第1の場合(1)では、塩素原料の組成を定期的に分析する必要があり、検知されたNCl
3濃度が高すぎる場合、適切な対策をとる必要があり、たとえば、不純塩素に純度がもっと高い塩素を混合すること、NCl
3が形成される前にアンモニア化合物を電気分解の食塩水回路で分解すること、または、液体塩素中のNCl
3を高温度で分解することである。これら全ての方法は、かなり限定された効果しか有さない。最終的には、極端な場合、十分な高品質の塩素が再び利用可能になるまで、蒸発器を遮断しなくてはならない。第2の場合(2)では、蒸発器の底部に蓄積する液体を、絶え間なく、または、定期的な間隔で引き出し、安全に排出しなくてはならない。これらの対策は全て明らかな不利益を伴い、全プロセスの実用性が低くなる。
【0005】
明らかに、不純物を多く含んだ液体だめの形成なしで液体を素早く完全に蒸発させることが可能である場合、気相は液相と常に同じ組成を有し、よって最初の液相中の不純物の濃度が臨界閾値未満で液体の温度が蒸発プロセスでそこまで上昇させられなければ、通常は、危険性は一切存在しない。しかし、塩素プロセスで通常用いられる気化器は、垂直管の束タイプ、バヨネットの束タイプ、二重被覆タイプ、ケトルタイプの蒸発器(Euro Chlor GEST 75/47)であり、どれも、液体塩素の液体だめの形成を伴わずには動作し得ず、液体塩素の液体だめ中のNCl
3の蓄積により、上記の通り潜在的な爆発のリスクにつながる。浴内コイルタイプの蒸発器のみが、液体だめである液体塩素の蓄積を伴わずに運転され得る。しかし、このタイプの蒸発器は、その特別な設計のために、通常は蒸発の能力がかなり限定され、よって、実用的な大規模生産には適さない。
【0006】
NCl
3の破壊も、NCl
3含有塩素に対処する1つの方法である。公知の実施形態としては(Safe Handling of Chlorine Containing Nitrogen Trichloride, Chlorine Institute Pamphlet 152を参照)、触媒、紫外光、熱的方法を使用し、還元剤などを添加してNCl
3を破壊することを伴う。これらの方法は、安全にNCl
3を破壊することが可能であり、特定の制限しか伴わない。触媒による破壊は、現時点では実験段階を超えていない。紫外光の方法は、気体塩素流のみに適用可能である。熱的方法は、温度および滞在時間に関連し、よって、流速、温度および装置の規模によって制限される。還元剤の添加では、塩素流の不純物の濃度を低下させる工程が依然として必要であり、さらに、最終生成物の品質に望まれない影響を及ぼす。
【0007】
上記した潜在的に爆発性の不純物を含有する液体の他の例の場合、同様の欠点を有する同様のアプローチが存在する。上記される問題および欠点は、時に大きすぎて技術分野でのさらなる開発が阻まれる。たとえば、気相製造プロセスは、液相製造プロセスに比べて様々な本質的な利点をもたらすことがよく知られている。しかし、発明者らが知る限り、ジニトロトルエンの気相水素添加はかなり前に原則的に説明されたにも関わらず、普通の工業用純度のジニトロトルエンで動作する大規模産業用ジニトロトルエン気相水素添加プラントは一切存在しない。これは、モノニトロベンゼンの場合とかなり対照的であり、気相であるモノニトロベンゼンの水素添加は、長い間、工業基準となっている。発明者らは、この顕著な違いは、少なくとも部分的に、工業用純度のジニトロトルエンを実用的な方法で安全に蒸発させる問題に起因すると考える。
【0008】
よって、潜在的に爆発性の不純物を含有する液体を蒸発させるアプローチで、不純物の濃度を極端に低い値で維持する必要がなく、蒸発させられる実際の化合物の損失を最小化またはさらに望ましくは阻止する、工業用大規模で安全および実用的であるアプローチの必要性が当該技術分野に存在していた。
【発明の概要】
【0009】
したがって、この必要性を満たすために、本発明の一態様に従って、蒸発装置(100)(以後、蒸発器とも呼ぶ)を提供し、当該装置は、
(i)蒸発させる液体(1)用の少なくとも1つの入口(2)であって、当該入口(2)は、蒸発装置の上部(2.1)および/または蒸発装置の側部(2.2)に位置する、入口(2)と、
(ii)好ましい実施形態では、任意で(optionally)、いずれかの入口(2.1)が収容される密閉ポット(3)と、
(iii)誘導羽根(4.1)を任意で備える液体分配器(4)であって、
・いずれかの入口(2.1)の下部、または存在する場合は密閉ポット(3)の下部、および/または、
・液体分配器(4)が連結したいずれかの入口(2.2)の上部、
に配置される液体分配器(4)と、
(iv)蒸発装置内で液体分配器(4)の下部で水平に配置された、好ましくは加熱可能な複数の管の束である上側加熱部(5.1)と、
(v)蒸発装置内で上側加熱部(5.1)の下部で、水平に配置されたまたは下方向の傾斜(downward slope)を伴った、好ましくは加熱可能な複数の管の下側の束である下側加熱部(5.2)と、
(vi)下側加熱部(5.2)の下部の蒸発装置の底部で水平に配置された加熱可能平板(10)と、
(vii)蒸発した液体(すなわち所望される気体流)(14)用の出口(15)と、
を備える。
【0010】
本発明の別の態様によれば、本発明による蒸発装置を動作させる方法が提供され、当該方法は、
(I)蒸発させる液体(1)を、
・好ましくは密閉ポット(3)を介した入口(2.1)、および/または、
・入口(2.2)
を経由して液体分配器(4)に導入し、そこから好ましくは蒸気加熱で加熱された上側加熱部(5.1)に導入し、液体(1)の質量流量が、上側加熱部(5.1)が提供する設計蒸発容量(design evaporation capacity)を超えないように選択され、
(II)未蒸発の滴を、好ましくは蒸気加熱されて加熱された平板(10)上に誘導(guide)し、
(III)蒸発した液体(すなわち所望される気体流)(14)を、出口(15)を介して排出する、
ことを含む。
【0011】
「液体(1)」は、蒸発し得るあらゆる液体であってよい。爆発のリスクに関して潜在的に有害性化合物を含有する液体が好ましい。塩素、ジニトロトルエン、およびエーテルからなる群から選択される液体が特に好ましく、塩素が最も好ましい液体である。塩素の場合、含有される三塩化窒素の濃度は、三塩化窒素および存在し得るあらゆる他の不純物を含む塩素の総重量を参照し、好ましくは20ppm〜250ppm、より好ましくは30ppm〜140ppmである。
【0012】
本発明の文脈で「加熱部(heating unit)」は、前記加熱部と接触する液体の蒸発を起こすのに適切なあらゆるデバイスを包含する。上側加熱部(5.1)は水平に配置され、つまり、この加熱部の長手方向面がこの様に配置されることを意味する(
図1も参照)。下側加熱部(5.2)も、本発明の一実施形態では、水平の方向に配置され得る。しかし、特定の状況下では、下側加熱部(5.1)の場合、水平の配向からずらすことが効果的であり得る。具体的には、以下で詳細を説明するが、下側加熱部(5.2)に、0.7度よりも大きく、好ましくは0.8度〜5度、より好ましくは1度〜3度の下方向の傾斜を付与することが効果的であり得る。
【0013】
設計蒸発容量は、液体(1)を完全に蒸発させるのに必要な理論上の熱伝達面積によって決定される。理論上の熱伝達面積は、液体(1)の性質、圧力および温度、液体(1)を蒸発装置などに誘導するパイプの形状、配置、長さ、傾斜および寸法といった関連する蒸発条件によって、当該技術分野で公知の方法を用いて当業者によって計算され得る。適切な計算方法は、VDI-Waermeatlas, 11
th edition 2013, Chapter C, , Berechnung von Waermeuebertraegern“, “VDI−Verlag“, ISBN 9783642199806およびPerry’s Chemical Engineers’ Handbook, Don W. Green, Robert H. Perry, eighth edition 2008, McGraw-Hill Professional, ISBN 9780071422949, Chapter 11 “Thermal Design of heat transfer equipment”に記載されている。
【0014】
本発明の動作方法によれば、この理論上の熱伝達面積は、上側の管の束(5.1)によって全体が提供される。よって、本質的に加熱された管の下側の束(5.2)は、過熱ゾーンとして作用する。
【0015】
本発明の様々な実施形態を以後説明する。異なる実施形態は、文脈によって特に示唆されない限り、それぞれ所望の通りに組み合わされてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明による蒸発装置(100)の好ましい実施形態を示す。
【
図2a】本発明による蒸発装置(100)の断面模式図を示す。
【
図2b】
図2aに示す蒸発器(100)の加熱可能平板(10)の上面の解像度を上げた平面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
適切な入口(2)は当業者には公知であり、たとえば、好ましくは遮断デバイスを備えた供給パイプである。本発明の一実施形態では、入口(2)は、蒸発器の上部に位置する(入口タイプ(2.1))。好ましい実施形態では、入口(2.1)は、流体ロックとして作用し、よって蒸発した液体が入口(2)へ逆流するのを防ぐ密閉ポット(3)に浸かっている。
【0018】
本発明の他の実施形態では、蒸発器は、蒸発装置の側部に位置する入口(2.2)を備え、この場合、液体分配器(4)は、前記入口(2.2)の上部に配置され、前記入口(2.2)と連結している。この文脈で、「連結(connected)」という用語は、前記入口(2.2)が、液体分配器(4)に対して、入口(2.2)に導入されるあらゆる液体(1)が、入口(2.2)を介して上方向に液体分配器(4)まで流れ、そこから上側加熱部(5.1)へ下向きに流れ得るように、配置されていることを意味する。この実施形態は、異なる液体の流れ(1)での場合で特に有用であり、なぜなら、そのような場合、密閉ポット(3)は、蒸発した液体(1)の、蒸発器に連結した供給パイピングシステム内への逆流を安全に回避するのには不十分であり得るからである。この効果が生じる可能性があり、プロセス動作を乱し得る全ての場合で、液体入口(2.2)は、液体(1)を供給するのに用いられ得る。入口(2.2)と液体分配器(4)との間の連結により、入口(2.2)、および、入口(2.2)を液体(1)の貯蔵所(reservoir)に連結させるパイピングシステムに、液体レッグ(liquid leg)が形成される。この配置により、蒸発した液体(1)によって形成される気泡の逆向きの移動による、プロセスのあらゆる乱れが安全に回避される。
【0019】
蒸発器を、両方の種類の入口(2.1)および(2.2)を備えるように設計することも可能である。好ましくは、1種類のみの入口が一度に用いられ、他方は遮断されている。どっちの種類の入口を実際に使用するかの選択は、動作環境による。たとえば、液体(1)の大きな貯蔵所が一切利用可能でない場合、液体(1)を入口(2.1)経由で蒸発器に供給するのが望ましい。それによって、追加のポンプなしで圧力が作られる。一方で、たとえば緩衝タンクから、大量の液体(1)が蒸発されるならば、入口(2.2)経由でこれら大量の液体を蒸発器に供給することが望ましい。
【0020】
液体分配器(4)は、液体(1)の上側加熱部(5.1)上での均等な分配を確実にする。適切な液体分配器は当業者には公知であり、たとえば、Perry’s Chemical Engineers’ Handbook, Perry’s chemical engineers‘ handbook, Don W. Green, Robert H. Perry, eighth edition 2008, McGraw-Hill Professional, ISBN 9780071422949, Chapter 14.4.5, “Distributors”に記載されている。
【0021】
好ましい実施形態では、液体分配器(4)は、分配トレーである。さらなる代替設計では、液体分配器(4)には、下向きに方向付けられた誘導羽根(4.1)が備えられ、当該誘導羽根は、液体分配器を出る液体が、液体が加熱領域を迂回し得る蒸発器のシェルに直接分散され得るのを回避する。
【0022】
加熱部(5.1)および(5.2)はそれぞれ、液体(1)を蒸発および過熱するのに十分加熱され得るよう設計されている。加熱は、たとえば電気的に、または、蒸気、塩融解物、熱水、熱い油または熱い燃焼ガスといった適切な加熱媒体を加熱部(5.1)および(5.2)の内部を通って通過させることで達成され得る。しかし、蒸気加熱が好まれる。
【0023】
加熱部(5.1)および(5.2)の適切な実施形態は、たとえば、コイルヒーターまたは加熱可能な複数の管である。加熱可能な複数の管の場合、これらの管は、平らな表面または構成された表面(ひれ、リブ、溝など)のいずれかを有し、熱伝達値を向上させる。蒸発装置の好ましい実施形態では、加熱部(5.1)および(5.2)は、加熱可能な複数の管の複数の束であり、各束は、10〜2,000の管、好ましくは100〜1,000の管、より好ましくは200〜500の管を備える。管の束を形成する加熱可能な複数の管の複数の層は、
図2aで模式的に示すように、複数の管の1つの層の個々の管の間の隙間が、その上および/またはその下の複数の管の層の管によって覆われるように配置される。
【0024】
加熱可能な複数の管を加熱部として有する実施形態の特に好ましい変形版では、上側の管の束(5.1)および下側の管の束(5.2)は、曲がったU型の連結要素(connecting piece)で互いに連結しており、すなわち、それぞれの上側および下側の管は、上側部分(5.1)および下側部分(5.2)を有するU型管の束(5)である、1ピースの装置の2つの部品を構成する。この設計によって、熱応力を埋め合わせる熱交換シェルに伸縮継ぎ手を設計することが不必要になる。そのような補償器は通常機械的設計において弱点であり、さらに、未蒸発の液体(1)の液体だめを形成するリスクを有し得る。
【0025】
本実施形態のさらなる代替設計では、U型管の束の上側部分(5.1)は水平に配置され、これによって、管に沿った液体塩素の滴の偏向が回避され、一方で、下側部分(5.2)は、0.7度よりも大きく、好ましくは0.8度〜5度、より好ましくは1度〜3度の下方向の傾斜を有する。それによって、管の束(5)が、最も好ましい加熱形態である蒸気によって加熱される場合、管からの蒸気凝縮物の排出が改善される。
【0026】
水平に配置された上側加熱部(5.1)は、液体(1)を蒸発させる加熱領域として作用する一方で、下側加熱部(5.2)は、蒸発した液体の気体流を過熱する役目を果たす。下側加熱部(5.2)は、上側加熱部(5.2)と同じ理論上の加熱能力を有することが好ましい。
【0027】
本発明の好ましい実施形態では、加熱部(5.1)および(5.2)用の複数のスロットを有するバッフル板(18)が、加熱部(5.1)および(5.2)がスロットを通って走り、バッフル板の上端部が蒸発器の内側上部シェルまで延びるように、加熱可能平板(10)の上部の入口(1)および出口(15)の間に、蒸発器内で垂直に配置されている。バッフル板の下端部は、下側加熱部(5.1)の一番低い部分をちょうど囲うように、下側加熱部(5.1)の下端部のすぐ下側の位置まで延び得る。以下で詳細を説明する好ましい実施形態では、バッフル板の下端部はまた、
図1で示すように、蒸発器の、下側加熱部(5.2)の下部のセクションまで顕著に延びてもよい。しかし、どの場合でも、バッフル板の下端部は、加熱可能平板(10)までは完全に延びない。この配置によって、蒸発器は、2つの領域に分離される:
【0028】
導入される液体(1)の蒸発に特化し、および、蒸発した液体の気体流が、未蒸発液体の滴と一緒に下方向に流れる、第1の領域(すなわち、バッフル板(18)の、入口(2)と向かい合う面の領域)、ならびに、蒸発した液体が蒸発器の上部にある出口(15)に向かって上向きに方向付けられる第2の領域(すなわち、バッフル板(18)の、出口(15)と向かい合う面の領域)である。第2の領域では、蒸発した液体は、出口(15)を介して蒸発器を出る前に、過熱される。
【0029】
バッフル板(18)をU型管の束(5)と組み合わせて用いる場合、バッフル板(18)は、好ましくは、
図1で示す通り、管の束(5)のまっすぐな部分(5.1および5.2)を、曲がった連結要素から分離する位置に配置される。
【0030】
水平に配置された加熱可能平板(10)は、2つの加熱部(5.1)および(5.2)を通過するはずであるあらゆる非蒸発液体の滴の蒸発を確実にする安全対策として機能する。通常の動作条件下では、液体(1)のあらゆる滴は、蒸発器の底部に到達するとは予測されない。しかし、たとえば、加熱部(5.1)および(5.2)への熱供給の欠陥または不足といった規格外の動作条件の場合、液体(1)のいくつかの滴が加熱部(5.1)および(5.2)を通過することが生じ得る。蒸発器の加熱部を通過する液体(1)のそれぞれの滴は、板(10)の表面に接触するとすぐに蒸発し、有害性物質の危険な量の蓄積の可能性は伴わない。この目的のために、平板(10)は、好ましくは蒸気で下から、最も好ましくは飽和蒸気で、加熱される。より多くの量の液体(1)は、平板(10)の水平配置により、板(10)の表面上で均等に分配する。水平配置によって、液体(1)が加熱された板の1つのかどに集まることが回避される。こうして、前記液体(1)中の爆発の可能性がある物質が、面積に関連した許容可能閾値濃度を可能性として超えることが安全に回避される。(面積に関連した閾値濃度は、面積あたりの爆発の可能性がある化合物の量を指す。塩素中の三塩化窒素の場合、1.5g/cm
2、好ましくは0.3g/cm
2の値を超えるべきではなく、Euro Chlor GEST 76/55を参照されたい。爆発性不純物の許容可能濃度のさらなる参照値は、各技術文献で見つかり得る。)水平配置の平板(10)上に集まった液体(1)は次いで、再度蒸発させられ、蒸発した液体の主流(14)と一緒に出口(15)を通って蒸発器を出る。平板(10)ができる限り理想に近い水平配向で配置されることを確実にするために、
図1で示すように、平板(10)が目に見える円周縁10.1を備えていることが好ましい。
【0031】
有害性不純物(たとえば、塩素中のNCl
3)が、爆発を引き起こすのには十分でない量で存在するだけでも、発熱反応で分解してしまう場合にあらゆる損傷を回避するため、平板(10)に十分な機械的強度を付与することが好ましい。そのような加速される分解の影響は、さらに、水平配置の平板(10)の表面領域を、板(10)の表面上に囲い(11)を設計してより小さいサブ領域に分離することで、さらに制限され得る。これらの囲いは、始まる分解の広まりを止め、よって、あらゆる分解が不可避的に有する有害効果を緩和し得る。囲いは、1mm〜5mmといった、比較的低い高さであることが好ましい。
【0032】
好ましい実施形態では、蒸発した液体(1)の気体流は、誘導板、誘導管、バッフル板などといった当業者には公知の適切な誘導デバイスによって、水平に配置された加熱可能平板(10)の表面上を強制的に流れるよう方向付けられる。そうする際に、平板(10)の表面上で蒸発している液体(1)は、既に蒸発した液体(1)の気体流と熱力学的平衡状態に保たれ、よって、平板(10)が、残留液体(1)の有害性物質の濃度のさらなる増大につながる第2の蒸留段階として作用し得るのを回避する。好ましい設計では、水平に配置された加熱可能平板(10)の表面上での気体流の望ましい方向は、蒸発器の管セクションを分離する蒸気バッフル板(18)を、
図1で示すように蒸発器の、下側加熱部(5.2)の下部のセクションまで直接延ばすことで得られる。
【0033】
本発明による蒸発装置の動作方法は、主に、蒸発される液体(1)の質量流量が、上側加熱部(5.1)が提供する設計理論上の蒸発容量を超えないように選択されることを特徴とする。そうすることで、蒸発器の底部に蒸発していない液体の液体だめが形成される確率が大きく下がり、通常は、一切予想されない。上側部分(5.1)および下側部分(5.1)を備えるU型管の束(5)の好ましい実施形態では、上側加熱部(5.1)は、管の束(5.1)のまっすぐな部分のみによって包含されると見なされ、すなわち、上側および下側部分を組合せて装置の1ピースの装置を形成する曲がった連結要素は、理論上の設計蒸発容量を決定する目的のためには、上側加熱部(5.1)の一部として見なされない。
【0034】
このため、蒸発される液体(1)の質量流量は、上側加熱部(5.1)の所与の理論上蒸発容量に調節されなくてはならない。加熱部の理論上の蒸発容量は、加熱部の表面積および表面形状、加熱部に供給される1時間あたりの熱量、加熱媒体の温度、蒸発される液体の物理的データなどといった様々な要因次第である。これらの要因は全て、蒸発器の所与の設計に関して公知であり、よって、当業者であれば簡単に上側加熱部(5.1)の理論上の蒸発容量を計算できる。
【0035】
加熱部(5.1)および(5.2)への熱の供給は、好ましくは、分解反応または他のあらゆる望まれない反応(潜在的に腐敗性の液体(1)の場合、蒸発器材料の腐敗といった)が予期されないように選択される。たとえば、熱源として蒸気を用いる液体塩素の蒸発の場合、用いる蒸気の絶対圧力は、好ましくは1.98bar以下、より好ましくは1.43bar以下、さらにより好ましくは1.10bar以下であることを意味し、それぞれの圧力で、塩素は、120℃以下、または110℃以下、または102.5℃以下の動作温度内で安全に取り扱いできる。
【0036】
本発明による蒸発器(100)の特に好ましい実施形態を、図面を参照しながら以下で説明する:
【0037】
蒸発器は、入口(2.1)が収容される密閉ポット(3)を備える。液体分配器(4)は、液体の滴が管の束と蒸発器シェルの間の隙間にまき散らされることで、液体の滴が管の束を迂回し得るのを回避する誘導羽根(4.1)(
図2aを参照)を備える。
【0038】
加熱部(5.1)および(5.2)は、上側部分(5.1)および下側部分(5.2)を有する1つのU型管の束に組み合わされる。分かりやすくするため、1つの上側部分および1つの下側部分しか
図1には示していない。これらは、実際には、
図2aで示すように複数の管である。液体分配器(4)は、管を保持する管シート(17)、および、蒸発した液体(1)の気体流の流れおよびあらゆる未蒸発液体(1)を平板の上面(10)に誘導するバッフル板(18)を連結する。後者には、
図2bでより明確に示され得る囲い(11)、および、蒸発器の設計の際に容易に水平に配置することを可能にする、外側から目で見える円周縁(10.1)が備えられている。
【0039】
管の束(5.1)および(5.2)は蒸気作製ポット(23)で生成された蒸気(6)で加熱される。蒸気(6)は、入口(7)を介して上側チャンバー(8.1)に導入され、そこから、蒸気は上側の管の束(5.1)およびその後に下側の管の束(5.2)を通って流れて下側チャンバー(8.2)に入り、両方のチャンバーは、Leidig:分離板(8.3)によって分離されている。平板(10)の下の加熱チャンバー(12)には、妨害されない熱供給を常に保障する連結管(9)を介した下側チャンバー(8.2)からの蒸気および凝縮物が直接供給される。加熱チャンバー(12)では、平板の上面(10)に蓄積したかもしれないNCl
3を有するあらゆる液体塩素を蒸発させるために、残留蒸気の蒸気が平板(10)を介して蒸発器のシェル側に追加的な熱エネルギーを提供する。気化した塩素の流れ(16)は、平板(10)の上をさっと移動する。流れ16はさらに、管の束のU型部分によって過熱され、次いで、ノズル15を通って蒸発器を出る。
【0040】
凝縮物の流れ(13)は、低圧蒸気作製ポット(23)に自由に逆流する。凝縮物は、凝縮物ポット(29)内に、凝集物の高さ以下で漬かって蒸気損失を阻止するあふれ管(24)を介して流れる。はけノズル(21)は、時間制御弁22を介してあらゆる不活性ガスを放出するよう設定される。
【実施例】
【0041】
実施例1(シミュレーション:三塩化窒素含有液体塩素の蒸発)
図1で示す蒸発器で、10ppm〜20ppmの三塩化窒素(NCl
3)を含有する液体塩素である流れ(1)を、5,000mbarの絶対圧力で入口(2.1)に供給する。入口(2.2)は、使用されず、遮断されている。管の束の上側部分(5.1)は、約5,000kg/hの供給速度で供給される塩素を完全に蒸発させるのに十分な熱を提供するのに十分な大きさに設計される。密閉ポット(3)から出た流れ(1)は、液体分配器(4)を介して、U型管の束の上側部分(5.1)上へ均等に分配される。液体分配器(4)の側部の誘導羽根(4.1)(
図2aを参照)は、液体塩素の滴が管の束と蒸発器シェルの間の隙間にまき散らされることで、液体塩素の滴が管の束を迂回し得るのを回避する。蒸気がライン(28)および制御弁(27)から低圧蒸気作製ポット(23)内に導入され、ここで、蒸気は所望される圧力に調節され、および、脱過熱される(すなわち、その飽和温度まで冷却される)。約1.1barの絶対圧力を有し、低圧蒸気作製ポット(23)から出てくる飽和蒸気の蒸気(6)は、蒸発器(100)内へ入口(7)を介して導入される。加熱プロセスによる蒸気凝縮物は、出口管(13)を介して蒸発器(100)を出て蒸気作製ポット(23)に戻り、ここで、導入された過熱蒸気を脱過熱するのに部分的に用いられる。弁(22)は、蒸気システムを周辺環境に通気させ、不活性ガスが蒸気システムに蓄積するのを回避するのに用いられ得る。過剰な凝縮物は、排出管(24)から凝縮物ポット(29)へ排出される。凝縮物ポット(29)内の液体の高さは、排出管(24)の長さと合わせると、飽和蒸気の圧力、よって蒸発温度が塩素プロセスの設計温度よりも高くならないよう保障する。ここから、自由排出口(26)を介して排出される。凝縮物ポットは、はけ管(25)によって周辺環境に通気される。「設計が複雑過ぎる」蒸発器は、U型管の束の上側部分(5.1)に接触に際して全ての液体塩素(1)を蒸発させる傾向がある。
【0042】
部分的に凝縮した蒸気(6)は、蒸気の蒸気流によってU型管の束の下側部分(5.2)に運ばれ、凝縮物は、U型管の束の下側部分(5.2)の傾斜に沿った重力および蒸気押し力の両方によって、下側チャネル頭部チャンバー(8.2)および連結管(9)を通って追加の加熱チャンバー(12)へ流れ得る。後者では、平板(10)の上面に蓄積したかもしれないNCl
3を有するあらゆる液体塩素を蒸発させるために、残留蒸気の蒸気が平板(10)を介して蒸発器のシェル側に追加的な熱エネルギーを提供する。
【0043】
気化した塩素の流れ(16)は、平板(10)の上をさっと移動する。流れ16はさらに、管の束のU型部分によって過熱され、次いで、ノズル15を通って蒸発器を出る。