特許第6563492号(P6563492)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6563492
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】間葉系幹細胞を区別する方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/0775 20100101AFI20190808BHJP
   G01N 33/48 20060101ALI20190808BHJP
   C12Q 1/04 20060101ALI20190808BHJP
   C12Q 1/68 20180101ALI20190808BHJP
【FI】
   C12N5/0775
   G01N33/48 M
   C12Q1/04
   C12Q1/68
【請求項の数】18
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2017-525390(P2017-525390)
(86)(22)【出願日】2014年12月5日
(65)【公表番号】特表2018-502556(P2018-502556A)
(43)【公表日】2018年2月1日
(86)【国際出願番号】CN2014093109
(87)【国際公開番号】WO2016086403
(87)【国際公開日】20160609
【審査請求日】2017年6月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】517156610
【氏名又は名称】メリディジェン・バイオテック・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Meridigen Biotech Co., Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100084146
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(72)【発明者】
【氏名】シュアン・チャン−ヨウ
(72)【発明者】
【氏名】リウ・ウェイ−ティン
(72)【発明者】
【氏名】シェン・シー−ペイ
(72)【発明者】
【氏名】リン・ユン
(72)【発明者】
【氏名】リ・ユエン−ツン
(72)【発明者】
【氏名】チャン・チア−チー
【審査官】 小林 薫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−290189(JP,A)
【文献】 特開2009−065879(JP,A)
【文献】 特開2010−189302(JP,A)
【文献】 特表2007−528702(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/111161(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/131315(WO,A1)
【文献】 Cytotechnology, 2012, Vol.64, p.511-521
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00− 7/08
C12Q 1/00− 3/00
G01N 33/48−33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
DWPI(Derwent Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維芽細胞から間葉系幹細胞(MSC)を区別する方法であって、
繊維芽細胞からMSCを区別するように、MSC上で発現されるマーカーEphA2を使用して繊維芽細胞からMSCを単離することを含み、
MSCおよび繊維芽細胞は胎盤関連組織に由来する細胞の初代培養からである、方法。
【請求項2】
胎盤関連組織が、羊膜、絨毛膜板(chorionic disk)、絨毛膜(chorionic membrane)および臍帯からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
単離する工程が、抗体ベースの、またはヌクレオチドベースの単離方法によって行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
単離した胎盤関連組織からMSCおよび繊維芽細胞を回収すること;
初代培養を調製するために培養培地においてMSCおよび繊維芽細胞を培養すること
の予備段階をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
抗体ベースの単離方法が抗体ベースの磁気細胞選別または抗体ベースのフローサイトメトリーである、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
ヌクレオチドベースの単離方法がヌクレオチドベースのフローサイトメトリーである、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
間葉系幹細胞(MSC)集団の純度を増加させる方法であって、
MSC上で発現されるマーカーEphA2を使用してMSCを単離および回収すること、ここでMSCは胎盤関連組織に由来する細胞の初代培養からであり;および
MSCを培養すること
を含む、方法。
【請求項8】
胎盤関連組織が、羊膜、絨毛膜板、絨毛膜および臍帯からなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
単離する工程が、抗体ベースの、またはヌクレオチドベースの単離方法によって行われる、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
胎盤関連組織に由来する細胞がMSCのための培養培地において培養される、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
MSC集団の純度が、単離工程後にP0で少なくとも95%である、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
抗体ベースの単離方法が抗体ベースの磁気細胞選別または抗体ベースのフローサイトメトリーである、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
ヌクレオチドベースの単離方法がヌクレオチドベースのフローサイトメトリーである、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
炎症環境においてより応答性である間葉系幹細胞(MSC)集団を単離する方法であって、
MSC上で発現されるマーカーEphA2を使用してMSCを単離および回収することを含み、MSCは胎盤関連組織に由来する細胞の初代培養からであり、MSCの集団は炎症環境においてより応答性である、方法。
【請求項15】
単離する工程が、抗体ベースの、またはヌクレオチドベースの単離方法によって行われる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
MSC集団が、TNF−αシグナル伝達またはTNF−α−依存性シグナル伝達に対してより応答性である、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
抗体ベースの単離方法が抗体ベースの磁気細胞選別または抗体ベースのフローサイトメトリーである、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
ヌクレオチドベースの単離方法がヌクレオチドベースのフローサイトメトリーである、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、胎盤関連組織に由来する細胞の初代培養において間葉系幹細胞(MSC)を区別する方法に関する。本願発明はまた、胎盤関連組織に由来する細胞の初代培養においてMSC集団の純度を増加させる方法に関する。他の局面において、本願発明は、炎症環境においてより応答性であるMSC集団を単離する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
間葉系幹または間質細胞(MSC)は、繊維芽細胞様形態を有する胚性中胚葉起源の多分化能細胞である。これらの細胞は、刺激および培養条件に依存して、他の細胞型の中で特に脂肪細胞、骨細胞、軟骨細胞、神経系細胞および筋細胞に分化することができる。hMSCの可塑性および組織修復および再生におけるhMSCの役割が広範に研究されているが、最近興味を集めたのはhMSCの免疫学的栄養特性である[50−51]。ヒト間葉系幹細胞は種々の組織から単離されている。MSCの最も頻繁に使用される供給源は骨髄(BM)である。しかしながら、単離手順は極めて侵襲的である。侵襲的単離手順を回避するために、ヒト臍帯および胎盤のような組織は、通常は分娩後に廃棄されるため、良い候補物と考えられている。臍帯または胎盤からのhMSCの単離は、以前の研究によって効率的であることが証明されている[49]。
【0003】
MSCは、間葉組織に含まれる間質細胞のより複雑な細胞組成の亜集団である。不均一な性質および間葉系幹細胞に特異的な既知のバイオマーカーの非存在によって、MSC表現型および特性を定義することは困難な課題である[52−54]。MSCの機能に関与する分子成分、特に細胞膜上の分子成分は、ほとんど知られていないままである。加えて、特異的細胞表面マーカーの欠如は、逆に間葉組織に豊富に存在する他の細胞型、特に成熟間質細胞、例えば繊維芽細胞での潜在的な汚染リスクを細胞培養に与える[52−54]。胎盤由来組織からのMSCの単離処理において、繊維芽細胞、胎盤由来上皮細胞および胎盤由来細網細胞を含む非MSCは、しばしばインビトロ培養中にMSCと共存する。特に、繊維芽細胞は主な汚染源である。
【0004】
繊維芽細胞は、結合組織において特に豊富に存在する成熟間葉細胞であると考えられている。したがって、これらの細胞は、多くの細胞培養系に存在する最も頻繁な汚染細胞表現型である。培養物から繊維芽細胞を成功裏に除去する技術を適用することは困難であるだけでなく、同じ培養物中でMSCと繊維芽細胞とを区別することも特に複雑である。繊維芽細胞およびMSCは、非常に類似した形態学的外観を有する。これらは両方ともよく増殖し、多くの同一の細胞表面マーカーを共有する[55、56]。MSCは、現在、国際細胞治療学会(ISCT)によって、CD73、CD90、CD105を発現し、造血マーカーCD14、CD34およびCD45に対して陰性である、プラスチック接着性の多分化能繊維芽細胞様細胞として定義されている。しかしながら、これらの特性およびマーカーはまた、線維芽細胞によって共有される。したがって、ISCTによって提案される現在の定義は、MSCを一般的な繊維芽細胞と区別することができない。現在まで、繊維芽細胞からMSCを区別する最良の方法は、これらの2種類の細胞の機能特性の分析に基づいている。MSCは多分化能性幹細胞性および免疫調節能を保持しているが、繊維芽細胞はこれらの機能特性の両方においてより制限されているようである。
【0005】
MSCの同定におけるFriedensteinの先駆的研究以来[48]、エキソビボで繊維芽細胞から培養拡張されたMSCを一貫して明確に区別する培養由来の方法論、形態および遺伝子発現の特徴において明確な違いはない[57−60]。現在、繊維芽細胞からMSCを分離するための許容される基準または単一の細胞表面マーカーは存在しない。繊維芽細胞が胎盤由来のときのMSC培養において一般的な汚染細胞集団であるという事実によって、繊維芽細胞からMSCを区別するためのバイオマーカーとしての新規の表面タンパク質は、胎盤由来MSCの初代培養の均質性を保証するために重要である。
【0006】
ヒトエリスロポエチン産生肝細胞(Eph)受容体は、受容体チロシンキナーゼ(RTK)の最大ファミリーを含む膜貫通タンパク質を含む。Eph受容体の最初の同定された機能は、軸索誘導における複雑で洗練されたメカニズムにおける役割であった[4]。Eph受容体は現在、胚発生中の細胞の位置決定および組織パターン形成に関与する広範囲の細胞間伝達事象および癌および血管合併症などの病理学的状態を制御することが知られている[1−5]。加えて、これらの受容体は、シナプス可塑性、インスリン分泌、骨再形成、上皮性ホメオスタシスならびに炎症および免疫応答における特殊な細胞機能の重要な調節因子である[1,2,6]。それらは、ニューロン、血管細胞、上皮細胞、炎症細胞、免疫細胞、および癌幹細胞を含む腫瘍細胞のような多種多様な細胞型によって発現される[7−10]。
【0007】
EphA2遺伝子は、タンパク質チロシンキナーゼファミリーのEph受容体サブファミリーに属する。以前の研究は、特に神経系における発生事象の介在におけるEphA2の機能に関係している[4]。発生中、EphA2は、パターン形成の特徴的な局面において、および後に、脈管形成、神経管発生、軸索中胚葉形成、早期後脳発生、ニューロン分化、細胞遊走の制御、破骨細胞形成および骨芽細胞形成の制御による骨再形成、乳腺上皮細胞増殖および乳腺発生中の分岐形態形成を含むいくつかの胎児組織の発生において機能する[11]。特に、神経系の胚発生におけるEphA2の役割は、よく定義されており[12]、ニューロンが正しい標的に到達するために軸索を送るプロセスを含む。
【0008】
Eph受容体の役割は、胚発生中および成体幹細胞ニッチ中の両方において、最近になってようやく幹細胞生物学に関与している。Eph受容体は、ほとんどの成体幹細胞ニッチにおいて発現されている。幹細胞は、特殊な組織位置内の幹細胞プールの自己複製および分化を調整する細胞および微小環境の決定因子の組合せとして定義される、特殊な微小環境であるニッチに位置している。胚形成および組織ホメオスタシス間のEph受容体およびエフリンリガンドの発現は、発生中の幹細胞制御における、および成人組織ホメオスタシスにおける関与と一致する[13、15]。Eph/エフリン系が幹細胞休止、自己複製および分化間のバランスにおいて時空間調節機能を実行することが示唆されている[14]。しかしながら、幹細胞ニッチ維持におけるEphのメカニズムおよび幹細胞の調節における役割は十分に理解されていない。EphA2は、胚幹細胞において高度に発現される[16]。それにもかかわらず、大多数の幹細胞におけるEphA2機能試験は、神経系に焦点を当てている。EphA2は、ニューロンおよびグリア系統の前駆体を含むCNSにおいて高度に発現される[12、15]。最近の試験は、エフリン−A1がEphA2陽性心臓幹細胞の運動性を促進し、心筋梗塞後の再生および心機能の増強を引き起こす証拠を提供する[17]。これらの知見に加えて、幹細胞科学におけるEphA2の発現プロフィールおよび機能はまだ十分に決定されていない。
【0009】
Eph受容体およびエフリンリガンドは、幹細胞/前駆細胞の自己複製および腫瘍進行の両方を調節する[14]。未形質転換幹細胞/前駆細胞と癌細胞との間の高度の類似性も認められている。近年、癌細胞集団の25%までを占める「癌幹細胞」区画を有する多数の癌の概念が記載されている[14]。これらの細胞は、動物宿主で腫瘍を誘導し、自己複製し、腫瘍細胞量の増殖においてより分化した細胞を引き起こす能力について、腫瘍増殖細胞(TPC)として定義されている[14]。最近、Eph/エフリンシグナルは、癌細胞脱分化および幹様特性の制御に関連していた[9、18、19]。しかしながら、癌幹細胞は、関連分野において一般的に言及されるように、実際には(多分化能)「幹細胞」ではないことに留意されたい。
【0010】
特定のエフリンリガンドの下方制御と結びついたEphの過剰発現は、いくつかの癌で報告されており、腫瘍の攻撃性および高いグレードと関連している[19−22]。乳癌、卵巣癌および肺癌において、ならびに神経膠腫および黒色腫においてEphA2発現が上昇し、高レベルのEphA2は患者の生存率の低下と相関する、高レベルのEphA2は低い患者生存率と相関する[20、23−29]。しかしながら、癌細胞におけるEph受容体の役割および発現は完全に文脈依存である。逆の発現パターンも乳癌、結腸直腸癌および急性リンパ芽球性白血病を含むいくつかの腫瘍において観察され、エピジェネティックサイレンシングまたは突然変異による低いEph受容体発現が予後不良と相関する[30]。ヒト副腎皮質癌腫、腺腫および健常副腎皮質組織のアレイによる転写プロファイリングの研究において、EphA2発現は健常副腎皮質組織と比較したとき、ヒト副腎皮質腫瘍組織において下方制御された[31]。したがって、特定のEphおよびエフリンの発現パターンは多くの腫瘍形成症例において予後マーカーとして役割を果たすことができるが、相当量の研究報告における逆転現象もまた観察された。Eph/エフリンの発現は、非常に細胞/腫瘍−文脈特異的および文脈依存である。
【0011】
グリア芽腫(GBM)に関する最近の研究は、TPCの大きな亜集団を有する腫瘍が、EphA2およびEphA3の増加した発現を示すことを示した。EphA2受容体は、ヒトグリア芽腫癌幹細胞(CSC)において過剰発現され、EphA2発現は、この特定のタイプの腫瘍におけるCSCのサイズおよび腫瘍開始能力と正の相関がある[9]。これらのEph受容体は中枢神経系の発生を調節するが、それらの脱調節された発現および体細胞突然変異は、神経系腫瘍の成長、進行および転移と関連する[32−36]。
【0012】
他方では、GBM、結腸直腸癌、乳癌、前立腺癌および皮膚癌における腫瘍抑制効果を有するEphAシグナル伝達のリガンド依存性活性化も報告された[27、38−43]。実質的なGBM研究において、エフリンA1によるEphA2キナーゼの活性化は、恐らくEphA2およびFAK活性の下方制御を介して抗増殖効果を有することが報告された[27、38、44]。EphA2ノックアウトマウスは、腫瘍細胞増殖およびERKリン酸化の増加を示す[45]。EphA2のリガンド刺激はまた、EGF介在ERKリン酸化を減弱させ、細胞増殖および遊走の減少と相関する[46、47]。概して、興味深いことに、これらの知見は、腫瘍増殖抑制および浸潤抑制EphA2/エフリンA1シグナル伝達を支持する。エフリン−Eph相互作用の結果は、異なる文脈において顕著に異なる。
【0013】
2012年のVescoviグループにより公開された論文[9]は、(1)hGBMにおける幹様腫瘍増殖細胞(TPC)がEphA2受容体を高度に発現すること、(2)高いEphA2発現がTPCにおける未分化状態および自己複製を支えることを、(3)TPC含有物および発癌性がEphA2[低い]hGBM細胞よりもEphA2[高い]hGBM細胞において高いことを証明する。上記の観察された事実にもかかわらず、EphA2[低い]hGBMは依然として有意な腫瘍開始能力を有する。異なる腫瘍または異なるタイプの細胞はもちろんhGBMにおいてさえ、EphA2が真のTPCマーカーを示すかどうかは議論の余地がある。言い換えれば、当業者は、EphA2がTPCに対する特異的なユニバーサルマーカーであること、ましてや多分化能幹細胞に対する特異的なユニバーサルマーカーであることを認識していなかったであろう。同じグループはまた、幹細胞、好ましくは哺乳動物幹細胞、さらに好ましくはヒトまたはマウス幹細胞の同定および単離のための細胞表面マーカーとしてのEphA2の使用を主張する特許出願を出願した[37、EP 2733206 A1]。しかしながら、Vescoviの研究が完全にヒトグリア芽腫(hGBM)に焦点を当てているだけであること、およびEphA2[低い]hGBMが依然として有意な腫瘍開始能力を有するという事実を考慮すると、当業者は、EphA2が多分化能幹細胞を同定することにおいて適した特異的なマーカーであることを全く認識していなかったであろう。さらに、Vescoviは、胎盤関連組織に由来する細胞の初代培養において多分化能幹細胞をどのように区別するかについて記載していない。
【発明の概要】
【0014】
特定の表面マーカーEphA2の発現レベルに基づいて、胎盤関連組織に由来する細胞の初代培養において、間葉系幹細胞(MSC)を区別し得ることを本願発明において予想外に見出された。
【0015】
したがって、1つの局面において、本願発明は、胎盤関連組織に由来する細胞の初代培養においてMSCを区別する方法であって、EphA2の表面マーカーによって細胞を選別することを含む、方法を特徴とする。
【0016】
他の局面において、本願発明は、胎盤関連組織に由来する細胞の初代培養においてMSC集団の純度を増加させる方法であって、EphA2の表面マーカーによって細胞を選別することを含む、方法を提供する。
【0017】
さらなる局面において、本願発明は、炎症環境においてより応答性であるMSC集団を単離する方法であって、EphA2の表面マーカーによって細胞を選別することを含む、方法を提供する。
【0018】
本願発明の方法は、繊維芽細胞、胎盤由来上皮細胞、胎盤由来細網細胞、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される細胞集団からMSCを区別するために使用され得る。
【0019】
本願発明の好ましい態様において、該方法は繊維芽細胞からMSCを区別するために使用される。
【0020】
本願発明によると、胎盤関連組織は、羊膜、絨毛膜板(chorionic disk)、絨毛膜(chorionic membrane)および臍帯からなる群から選択され得る。
【0021】
本願発明によると、選別工程は、当分野で公知の技術または開発される技術、例えば、抗体ベースの、またはヌクレオチドベースの単離方法を使用して実施され得る。
【0022】
本願発明の1つの態様において、胎盤関連組織に由来する細胞はMSCのための培養培地において培養される。
【0023】
特定の態様によると、単離されたMSC集団は、TNF−αシグナル伝達またはTNF−α−依存性シグナル伝達に対してより応答性である。
【0024】
前述の概要および以下の詳細な説明の両方が例示的および説明的なものに過ぎず、本願発明を限定するものではないことを理解すべきである。
【0025】
前述の概要ならびに以下の発明の詳細な説明は、添付の図面と共に読むとき、さらによく理解される。本願発明を説明する目的のために、現在好ましい態様が図面に示されている。
【0026】
図面において
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1はEphA2転写産物のリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応定量を示す。胎盤由来MSCにおけるEphA2の転写産物レベルを、繊維芽細胞におけるEphA2の発現と比較しての豊富倍数によって、すなわちMSCにおけるEphA2mRNAレベル 対 繊維芽細胞におけるEphA2レベルの比(MSC/繊維芽細胞)によって評価した。MSCにおけるEphA2の転写産物レベルは、ドナー#12、#17、#21および#28からのサンプルによって証明された。結果は、EphA2がインビトロで繊維芽細胞と比較してMSCにおいて高度に豊富であったことを示した。D=ドナー。AM=羊膜;CD=絨毛膜板;CM=絨毛膜;およびUC=臍帯。BS=ウシ胎児血清。P1=継代1。P3=継代3。
【0028】
図2図2はMSCおよび繊維芽細胞の混合集団のフローサイトメトリー分析の結果を示す。ドナー#23からの臍帯(UC)由来のMSCを異なる比率で繊維芽細胞と混合した。結果は、フローサイトメトリーにより検出したEphA2集団のパーセントが増加した繊維芽細胞集団に応答して比例的に減少したことを証明した。FB=繊維芽細胞。
【0029】
図3図3は、qPCRによって評価されたEphA2 RNAレベルを示す。異なる個々の細胞集団における全RNA発現レベルを、内因性GAPDH発現レベルによって標準化した。「スクランブル」は、shRNAノックダウン実験におけるスクランブルコントロールとして示した。正常な野生型UC由来のMSCにおけるEphA2転写産物発現レベルと比較することによって、qRT−PCR結果はsh−EphA2ノックダウン効率を確認した。D=ドナー。UC=臍帯。
【0030】
図4図4Aおよび図4Bは、トランズウェル遊走アッセイおよび細胞生存能力検出の結果を示す。図4Aにおいて、生存可能である遊走細胞は、CellTiter−Glo(登録商標)発光シグナル強度として示される。図4Bにおいて、生存可能である遊走細胞は、0.2% FBSコントロールにおける野生型MSCと比較しての相対的な比率として示される。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本願発明は、表面マーカーEphA2による細胞選別を介して、胎盤関連組織に由来する細胞の初代培養において間葉系幹細胞(MSC)を区別することができるという予期し得ない知見に基づく。
【0032】
1つの局面において、本願発明は、胎盤関連組織に由来する細胞の初代培養においてMSCを区別する方法であって、EphA2の表面マーカーによって細胞を選別することを含む、方法を提供する。
【0033】
他の局面において、本願発明は、胎盤関連組織に由来する細胞の初代培養においてMSC集団の純度を増加させる方法であって、EphA2の表面マーカーによって細胞を選別することを含む、方法を特徴とする。
【0034】
EphA2選別されたMSCが選別されていないMSCまたはMSCのような細胞と比較して炎症環境において優れた応答性を示すことも証明される。したがって、さらなる局面において、本願発明は、炎症環境または微小環境においてより応答性であるMSC集団を単離する方法であって、EphA2の表面マーカーによって細胞を選別することを含む、方法を提供する。本願発明の1つの態様において、単離されたMSC集団は、TNF−αシグナル伝達またはTNF−α−依存性シグナル伝達に対してより応答性である。
【0035】
MSCは、種々のサイトカインによる活性化に続くT細胞応答およびB細胞応答を抑制することによって、免疫抑制機能を示す。サイトカインはまた、TNF−αおよびIFN−γの作用による急性炎症環境の存在下で炎症誘発効果を発揮するように誘導され得る。リウマチ性関節炎のような炎症性関節疾患において、骨髄におけるMSCはTNF−α−依存性メカニズムによって関節へ遊走し、疾患プロセスに部分的に関与し得る。MSCはまた、骨関節症の関節周囲組織において増加した数で示されており、これは関節修復または再生の試みを反映し得る[6]。炎症環境において放出されるTNF−αは、MSCのTNF−R1に結合しMSCにおけるNF−κB経路を活性化することによって、MSCに免疫抑制特性を与え、免疫調節における役割を果たすMSCをもたらすことが提案されている[62]。
【0036】
本願発明によると、細胞は、当分野で知られているプロトコール、例えばFukuchi et alのもの、にしたがって、胎盤関連組織から新たに由来、取得または回収される。特定の好ましい態様において、次に、胎盤関連組織に由来する細胞はMSCのための培養培地において培養される。MSCのための標準培地は、最少必須培地イーグル(Minimum Essential Medium Eagle)(様々なタイプの修飾を有する)、ウシ胎児血清(FBS)および塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)を含む[49、64−68]。
【0037】
本願発明によると、方法は、繊維芽細胞、胎盤由来上皮細胞、胎盤由来細網細胞、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される細胞集団からMSCを区別するために使用され得る。好ましくは、本願発明の方法は、胎盤関連組織に由来する細胞の初代培養において繊維芽細胞からMSCを区別するために使用される。
【0038】
胎盤関連組織は、羊膜、絨毛膜板、絨毛膜および臍帯からなる群から選択され得る。
【0039】
本願発明の方法の実施において、胎盤関連組織に由来する細胞の初代培養の培養物は、EphA2による細胞選別に付される。細胞選別は、当分野で公知の技術または開発される技術、例えば、抗体ベースの、またはヌクレオチドベースの単離方法によって行われ得る。好ましくは、細胞選別は、抗体ベースの磁気細胞選別により行われる。例えば、MACS方法(MACS(登録商標) Technology、Miltenyi Biotec)。加えて、細胞選別は、フローサイトメトリー方法、例えば抗体ベースの、またはヌクレオチドベースのフローサイトメトリーを介して行われ得る。
【0040】
本願明細書において使用される「より応答性」なる用語は、TNF−αシグナル伝達またはTNF−α−依存性シグナル伝達を含むが、これらに限定されない炎症関連シグナル伝達経路に応答するMSCの細胞挙動(例えば移動)を指す。
【0041】
本願発明は、限定よりはむしろ証明の目的のために提供される以下の実施例によってさらに説明される。
【0042】
実施例
【実施例1】
【0043】
実施例1:胎盤由来間葉系幹細胞(MSC)および繊維芽細胞の免疫表現型の特性化
【0044】
ドナーから書面によるインフォームドコンセントを得た後、満期胎盤(n=8)を回収した。MSCは、羊膜(AM)、絨毛膜板(CD)、絨毛膜(CM)および臍帯(UC)由来であった。胎盤由来細胞をFBSおよび塩基性FGFを有するα−MEM中、37℃、飽和湿度および5% COで培養し、増殖し、維持し、細胞が80%コンフルエンスに達したとき継代培養し、後にフローサイトメトリーにより表現型で特徴付けた。フローサイトメトリーの対象を免疫染色する過程において、製造業者の指示にしたがって細胞を抗体とインキュベートした。対応するクラスの非特異的IgGは陰性コントロールとして働いた。細胞懸濁液を、Flowjo 7.6.1 ソフトウェアにてフローサイトメーター(BD Biosciences FACSCanto II)で分析した。
【0045】
本願発明者らは、CD11b、CD19、CD34、CD45、CD73、CD90、CD105、HLA−DRおよびEphA2の発現を評価した。胎盤の種々の位置から単離された全てのMSCのフローサイトメトリー分析は、CD73、CD90、CD105、EphA2について陽性であり、CD11b、CD19、CD34、CD45、HLA−DRについて陰性であった。繊維芽細胞(Human Foreskin Fibroblasts、neonatal、PC501A−HFF、SBI)のフローサイトメトリー分析は、CD73、CD90、CD105について陽性であり、CD11b、CD19、CD34、CD45、HLA−DRについて陰性であり、EphA2について陰性または低かった。胎盤由来MSCおよび繊維芽細胞間で別個のパターンは、EphA2について注目された。MSCはEphA2陽性細胞の高いパーセントを示したが、繊維芽細胞は反対を示した。結果は以下の表1に示される。
【0046】
表1:胎盤由来間葉系幹細胞および繊維芽細胞の免疫表現型(フローサイトメトリーにおける陽性細胞のパーセント)
【表1】
AM=羊膜;CD=絨毛膜板;CM=絨毛膜;およびUC=臍帯。陰性カクテルは、CD11b、CD19、CD34、CD45およびHLA−DRに対する抗体を含む(Human MSC Analysis Kit, BD StemflowTM, catalog number 562245)。胎盤由来間葉系幹細胞の免疫表現型は、P0でドナー#12およびドナー#17からのサンプルによって証明された。フローサイトメトリー分析は、MSC集団がP0で99.3〜99.7% CD73陽性、77.8〜99.8% CD90陽性、75.9〜98.0% CD105陽性および45.0〜80.7% EphA2であったことを示した。対照的に、造血細胞系−特異的マーカー、例えばCD11b、CD19、CD34、CD45およびHLA−DRは、MSCにおいて発現されなかった。繊維芽細胞のフローサイトメトリー分析は、集団が99.3% CD73陽性、97.7% CD90陽性、75.6% CD105陽性および18.6% EphA2陽性であったことを示した。造血細胞系特異的マーカー、例えばCD11b、CD19、CD34、CD45およびHLA−DRは、繊維芽細胞において発現されなかった。
【実施例2】
【0047】
実施例2:EphA2選別された胎盤由来間葉系幹細胞(MSC)の免疫表現型の特性化
【0048】
a.磁気活性化細胞選別(MACS)によって選別されるEphA2豊富MSCのフローサイトメトリー分析
【0049】
MACS方法(MACS(登録商標) Technology, Miltenyi Biotec)は、EphA2表面抗原に対する抗体でコーティングした磁気ナノ粒子とインキュベートすることにより細胞を分離させる。胎盤に由来するMSCの初代培養物を、EphA2に対する蛍光コンジュゲート抗ヒト抗体とインキュベートし、製造業者の指示にしたがってR−フィコエリトリン(PE)磁性粒子により選別した。P0でMACS選別MSCのフローサイトメトリー分析は、継代0のため、細胞集団が100% CD73陽性、97.2〜99.5% CD90陽性、96.0〜99.9% CD105陽性および96.6〜100% EphA2陽性発現において均質となり得ることを示し(以下の表2参照)、抗体コンジュゲート電磁ビーズを介するEphA2選別は、P0からMSC純度を劇的に改善することができることを証明した。豊富なEphA2陽性MSC集団は、後の継代までインビトロでの拡張において十分に維持された(以下の表3参照)。
【0050】
表2:P0でEphA2選別された胎盤由来MSCの免疫表現型の特性化(フローサイトメトリーにおける陽性細胞のパーセント)
【表2】
EphA2選別されたMSCの免疫表現型の特性化は、P0でドナー#17からの絨毛膜板(CD)に由来するMSCによって証明された。結果は、EphA2陽性細胞はまたCD73陽性、CD90陽性およびCD105陽性であったことを示した。D=ドナー。P=継代。
【0051】
表3:インビトロでの拡張中のEphA2−MACS豊富集団の免疫表現型の特性化(フローサイトメトリーにおける陽性細胞のパーセント)
【表3】
後の拡張におけるEphA2選別されたMSCの免疫表現型の特性化。免疫表現型は、ドナー#17からの絨毛膜板(CD)に由来するMSCによって証明された。MSCは、P0でEphA2−抗体−コンジュゲートされた電磁ビーズによって選別され、インビトロでの拡張中の後の継代での最適化されたMSC培養条件下で維持された。結果は、細胞表面マーカーEphA2の発現が、最適化されたMSC培養条件下で後の継代において十分に維持され得ることを示した。
【0052】
b.フローサイトメトリー細胞選別機(FCCS)によって選別されるEphA2豊富MSCのフローサイトメトリー分析
【0053】
胎盤に由来する細胞を収集し、P0でJAZZ細胞選別機(BD、USA)を介して抗EphA2抗体によって選別された。EphA2選別されたMSCのフローサイトメトリー分析は、継代2〜6において99.5〜100% CD73&CD90二重陽性、99.6〜100% CD105&CD90二重陽性、99.5〜100% EphA2&CD90二重陽性、99.8〜100% CD73&EphA2二重陽性、99.5〜100% CD105&EphA2二重陽性および99.7〜100% CD73&CD105二重陽性集団があったことを示した(以下の表4参照)。データは、EphA2タンパク質が後の継代でMSC培養物において連続的に発現され、維持され得ることを示した。
【0054】
表4:インビトロでの拡張中のEphA2−FCCS豊富集団の免疫表現型の特性化
【表4】
後の拡張におけるEphA2豊富MSCの免疫表現型の特性化。免疫表現型は、ドナー#7からの臍帯(UC)に由来するMSCによって証明された。MSCは、P0で細胞選別機を介して抗EphA2抗体によって選別され、インビトロでの拡張中の後の継代での最適化されたMSC培養条件下で維持された。細胞表面マーカーEphA2の発現は、後の継代において良く保存され得る。
【実施例3】
【0055】
実施例3:胎盤由来間葉系幹細胞(MSC)および繊維芽細胞におけるEphA2転写産物の定量リアルタイムPCR評価
【0056】
胎盤由来細胞(n=8、胎盤の4つの異なる部分AM、CD、CM、UCから、継代1および継代3を含む)およびHuman Foreskin Fibroblasts(neonatal, PC501A-HFF, SBI)の64集団からの全RNAを、Direct−zol miniprep Kit(Zymo Research Corporation, CA, USA)を使用して単離した。相補的DNA(cDNA)を、Transcriptor First Strand cDNA Synthesis Kit(Roche, Basel, Switzerland)で合成した。次に、定量RT−PCRを、製造業者の指示にしたがってLightCycler480 II(Roche, Basel, Switzerland)を用いるRoche Universal ProbeLibrary Systemを使用して行った。
【0057】
本願発明者らは、胎盤由来多分化能MSCおよび繊維芽細胞を比較するために、定量リアルタイムPCRによってEphA2の発現を評価した。遺伝子発現は、様々な細胞集団において、内因性遺伝子のグリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ発現に対して標準化した。MSCにおけるEphA2転写産物の発現は、繊維芽細胞におけるEphA2の発現と比較しての豊富倍数により計算された。結果は、EphA2が繊維芽細胞と比較してMSCにおいて高度に発現されたことを示した(図1)。
【実施例4】
【0058】
実施例4:MSCおよび繊維芽細胞の混合集団のフローサイトメトリー分析
【0059】
EphA2が胎盤由来MSCを繊維芽細胞から分離するためのバイオマーカーとして役割を果たすことができることを証明するために、ドナー#23からの臍帯(UC)に由来するMSCを、Eppendorfチューブ中に繊維芽細胞と以下の比率によって混合した(細胞数において、MSC:繊維芽細胞):2x10:0、2x10:2x10、2x10:4x10、2x10:2x10、2x10:1x10、2x10:2x10および0:2x10。次に、各Eppendorfチューブ中のEphA2集団をフローサイトメトリーにより分析した。図2に示される結果は、フローサイトメトリーを介して抗EphA2抗体により検出されたEphA2集団のパーセントは、繊維芽細胞集団の増加に応じて比例的に減少されたことを証明した。
【実施例5】
【0060】
実施例5:レンチウイルスの形質導入によるEphA2ノックダウン
【0061】
単離されたMSC集団においてEphA2の機能を評価するために、レンチウイルスの形質導入によるshRNA(shEphA2)ノックダウン実験を行った。各構築物は、形質導入効率をモニタリングするためにEGFPレポーターを有する。4つの異なるshRNA配列をそれぞれ3つの異なる感染多重度(MOI)(2、5、10)で試験し、各実験条件をトリプリケートで行った。ノックダウン効率はqRT−PCRによって評価された。結果は図3に示される。50%ノックダウンの最も良いノックダウン効率をなし遂げることができた。
【実施例6】
【0062】
実施例6:
【0063】
この試験において、本願発明者らは、インビトロで、TNF−αシグナルのような、炎症性刺激に応答してのMSCにおけるEphA2の役割を調べた。本願発明者らは、炎症中のMSC遊走に関与するEphA2の効果に焦点を当てた[51、63]。基礎培養条件下またはTNF−α炎症性刺激の存在下でのEphA2高いMSCおよびEphA2低いMSCの遊走を調べた。
【0064】
a.EphA2ノックダウンMSCのトランズウェル遊走分析
【0065】
野生型sh−スクランブルおよびsh−EphA2標的MSCを、8μmトランズウェル中、30,000細胞の条件で培養した。0.2%FBSおよびTNF−αを、MSC遊走を活性化するために、より少ない(lower)チャンバーにおいて加えた。6時間後、生存可能である遊走細胞を、製造業者の指示にしたがってCellTiter−Glo(登録商標)発光試薬を介して分析した。結果は図4Aおよび4Bに示される。データは、sh−EphA2 MSCのTNF−αシグナルに応答する能力および遊走がEphA2ノックダウンによって支障を来たしたことを示した。
【0066】
b.EphA2高い MSCのトランズウェル遊走分析
【0067】
胎盤に由来する細胞の初代培養物を、EphA2に対する抗ヒト抗体によってコンジュゲートされた電磁ビーズとインキュベートし、次に製造業者の指示にしたがって陽性選択によって選別した。フローサイトメトリー分析は、MACS選別後にEphA2 MSCおよびEphA2細胞集団を確認した。細胞を、8μmトランズウェル中、30,000細胞の条件で培養した。0.2%FBSおよびTNF−αを、MSC遊走を活性化するために、より少ないチャンバーにおいて加えた。6時間後、生存可能である遊走細胞を、製造業者のマニュアルにしたがってCellTiter−Glo(登録商標)発光試薬を介して分析した。データは、MSCのTNF−αシグナルに応答する能力および遊走がEphA2飽和集団において増強されたことを示した。
【0068】
図4Aおよび4Bに示されるとおり、MSCの遊走は、基礎培地へのTNF−αの添加によって有意に影響を受けた。TNF−αでのMSCの刺激後、CellTiter−Glo(登録商標)発光試薬を介して検出されたMSCの遊走は、TNF−α用量依存的において増加された(図4A参照)。対照的に、細胞の移動は、EphA2−ノックダウンMSC集団において、または選別によるEphA2細胞において破壊された。TNF−αシグナルに応答してのMSCの遊走におけるEphA2分子の効果は、発光シグナルが、倍率変化における0.2%FBSコントロールにおいて遊走した野生型MSCと比較して遊走細胞集団に変換されたとき、より明らかである(図4B参照)。
【0069】
本願発明の広い概念から逸脱することなく、変更が上記態様に加えることができることが当業者に理解されよう。したがって、本願発明は記載された特定の態様に限定されず、特許請求の範囲により定義される本願発明の精神および範囲内の修飾を包含することが意図されることが理解される。
【0070】
文献:
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
図1
図2
図3
図4A
図4B