【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を実現するために、本発明は、低温衝撃靱性に優れた低降伏比高強靱厚鋼板を提出し、当該鋼板の化学元素の質量百分率の含有量が、
C:0.05〜0.11%;
Si:0.10〜0.40%;
Mn:1.60〜2.20%;
S≦0.003%;
Cr:0.20〜0.70%;
Mo:0.20〜0.80%;
Nb:0.02〜0.06%;
Ni:3.60〜5.50%;
Ti:0.01〜0.05%;
Al:0.01〜0.08%;
0<N≦0.0060%;
0<O≦0.0040%;
0<Ca≦0.0045%であり,残部がFe及び不可避不純物であり;
また,NiとMn元素は、Ni+Mn≧5.5を満足する。
【0009】
本発明に記載の低温衝撃靱性に優れた低降伏比高強靱厚鋼板における各化学元素の設計原理は、以下のようである。
【0010】
C:鋼におけるC元素の添加量の変化は、鋼板の相変態の類型が異なることを招く。C元素と合金元素の含有量が低いと、フェライト、パーライトなどの拡散型の相変態が発生する。C元素と合金元素の含有量が高いと、マルテンサイト変態が発生する。C原子の増加は、オーステナイトの安定性を増加させるが、C元素の含有量が高すぎると、鋼板の塑性と靱性を低下させてしまう。直接焼入れの過程において、C含有量が低すぎると、鋼板に高強度の組織を形成できなくなる。C元素が鋼板の強靱性と強塑性に対する影響をまとめると、本発明の低温衝撃靱性に優れた低降伏比高強靱厚鋼板におけるC含有量は、0.05wt.%≦C≦0.11wt.%に限定する。
【0011】
Si:鋼に添加するSi元素は、原子置換、固溶強化によって鋼板の強度を向上させるが、Si含有量が高すぎると、鋼板溶接時に熱割れを増加させる傾向がある。このため、本発明の低温衝撃靱性に優れた低降伏比高強靱厚鋼板におけるSi含有量は、0.10〜0.40wt.%の範囲に限定する。
【0012】
Mn:Mnは、固溶強化によって鋼板の強靱性を向上させる。また、Mnはオーステナイトを安定させる元素であり、オーステナイトの相領域の拡大に有利である。本発明の技術方案では、Ni、Mn及びCを合わせて添加し、焼戻し過程におけるオーステナイトの相領域を制御して、鋼板に焼戻しの時に逆変態オーステナイトを形成させる。これとともに、マルテンサイトにおけるMn元素は引張強度を向上させる。逆変態オーステナイトとマルテンサイトの両相組織は、鋼板の降伏比を効率的に低下させる。よって、本発明の技術方案に基づいて、鋼板におけるMn元素の質量百分率含有量を1.60〜2.20%に設定すべき、これによって鋼板の降伏比と強靱性を調整する。
【0013】
S:Sは鋼において硫化物を形成し、鋼板の低温衝撃靱性を低下させる。本発明の鋼板において、S元素は制御すべく不純物元素であり、石灰化処理によって硫化物を球状化することで、Sが低温衝撃靱性に対する影響を低下することができる。本発明の低温衝撃靱性に優れた低降伏比高強靱厚鋼板について、Sの含有量は0.003wt.%を超えない。
【0014】
Cr:Crは鋼板の焼入れ性を向上させ、鋼板に冷却の時にマルテンサイト組織を形成させる。Cr含有量が高すぎると、鋼板の炭素当量が増加し、溶接性を劣化させる。鋼板厚さの要素を考慮して、適量のCrを添加する必要があり、このため、本発明の低温衝撃靱性に優れた低降伏比高強靱厚鋼板には、Cr含有量を0.20〜0.70wt.%に限定する。
【0015】
Mo:Moは、拡散性の相変態を効率的に抑制でき、鋼板に冷却の時に高強度の低温相変態組織を形成させる。Mo含有量が低すぎると、鋼板の拡散性相変態への抑制効果を十分に発揮できず、鋼板に冷却の時にもっと多くのマルテンサイト組織を得ることができなく、鋼板の強度を低下させる。Mo含有量が高すぎると、炭素当量の増加を招く、溶接性能を劣化させる。鋼板の厚さ要素を考慮して、鋼板におけるMo含有量を0.20〜0.80 wt.%に制御する必要がある。
【0016】
Nb:鋼に添加されるNbは、オーステナイト粒界運動を抑制でき、鋼板を高い温度で再結晶させる。高い温度でオーステナイト化する時、オーステナイトに固溶されたNbは、圧延の時に変形誘導析出効果によって、転位及び粒界においてNbC粒子を形成し、粒界運動を抑制して、鋼板の強靱性を向上できる。しかし、Nb含有量が高すぎると、粗大なNbCを形成する可能性があり、鋼板の低温衝撃性能を劣化させる。よって、本発明の高強靱厚鋼板に添加されたNbの含有量は、鋼板の力学性能を効率的に制御できるように0.02〜0.06wt.%に限定すべきである。
【0017】
Ni:Niは鋼においてFeと共に固溶体を形成し、結晶格子の積層欠陥を低減することで鋼板靱性を向上させる。低温靱性に優れた高強靱厚鋼板を得るために、鋼板に一定のNiを添加する必要がある。Niは、オーステナイトの安定性を増加させ、鋼板に冷却の過程でマルテンサイトと残留オーステナイト組織を形成させて、降伏比を低下させる。しかし、Ni含有量が増加すると、鋼板に焼戻し過程において逆変態オーステナイト組織を形成させ、逆変態オーステナイトとマルテンサイトは、鋼板の降伏比を低下させる。このため、本発明の低温衝撃靱性に優れた低降伏比高強靱厚鋼板におけるNi含有量は、3.60〜5.50wt.%に限定すべきである。
【0018】
Ti:Tiは溶鋼においてNと共にチタン窒化物を形成し、その後、より低い温度範囲で酸化物及び炭化物を形成する。しかし、Ti含有量が高すぎると、溶鋼に粗大なTiNを生成してしまう。TiN粒子は立方体であり、粒子の角部が応力集中になりやすく、割れの形成の起源と呼ばれる。Tiが鋼板における添加作用をまとめて考慮して、本発明の低温衝撃靱性に優れた低降伏比高強靱厚鋼板におけるTi含有量を0.01〜0.05wt.%の範囲に制御する。
【0019】
Al:鋼に添加するAlは、酸化物と窒化物を形成することで、結晶粒を微細化する。鋼板の靱性を向上してその溶接性能を保証するために、本発明の低温衝撃靱性に優れた低降伏比高強靱厚鋼板におけるAl含有量を0.01〜0.08wt.%に限定する。
【0020】
N:本発明の技術方案において、Nは限定すべく添加元素である。Nは、Ti及びNbと共に窒化物を形成できる。オーステナイト化の過程において、鋼板に溶解しない窒化物は、オーステナイト粒界運動を障害して、オーステナイト結晶粒の微細化効果を達する。N元素の含有量が高すぎると、NとTiは粗大なTiNを形成し、鋼板の力学性能を劣化させる。それとともに、N原子は、鋼の欠陥において富化して、気孔と粗めを形成させる。よって、N含有量は0<N≦0.0060wt.%に限定すべきである。
【0021】
O:Oは、鋼において、Al、Si及びTiと共に酸化物を形成する。鋼板の加熱によるオーステナイト化の過程で、Alの酸化物は、オーステナイトの成長を抑制し、結晶粒を微細化する役割を担う。しかし、O含有量が多い鋼板は、溶接の場合、熱割れを発生する傾向があるので、本発明の低温衝撃靱性に優れた低降伏比高強靱厚鋼板におけるO含有量を0<O≦0.0040wt.%に限定する。
【0022】
Ca:Caは、鋼に添加すると、CaSを形成し、硫化物を球状化する役割を担い、鋼板の低温衝撃靱性を向上させる。よって、本発明の高強靱厚鋼板におけるCa含有量は、0<Ca≦0.0045wt.%に限定する必要がある。
【0023】
本発明の技術方案において、N、O及びCaは限定すべく添加元素である。
本技術方案において、不可避不純物は、主にP元素であり、P元素の含有量が低いほど好ましい。
【0024】
この他、本発明の低温衝撃靱性に優れた低降伏比高強靱厚鋼板におけるNi元素及びMn元素は、Ni+Mn≧5.5wt.%に満足する必要がある。
【0025】
鋼板が焼戻しの後に逆変態オーステナイトを形成し、降伏強度と引張強度との間の格差を効率的に広げて、降伏比を低下させるために、鋼板におけるNiとMnの合計量を限定する必要がある。NiとMnは、いずれもオーステナイト相領域を広げて、得られるオーステナイトの焼戻し温度を低下させる。Mnが鋼板強度に対する貢献は、Niが鋼板強度に対する貢献より高い。厚鋼板の力学性能に超低降伏比及び高強靱性を備える状況についてまとめて考慮すると、上記NiとMn元素は、それぞれの成分の限定要求に満たす以外、NiとMnの合計量は、5.5wt.%以上に達する必要がある。
【0026】
さらに、本発明の低温衝撃靱性に優れた低降伏比高強靱厚鋼板において、TiとNは、さらにTi/N≧3.0に満たす必要がある。
【0027】
TiとN合金元素は、Ti/N≧3.0との条件に満たす必要がある原因は、TiとNが液相に析出し、正方型TiNを形成することにある。TiN粒子が大き過ぎると、鋼板の疲労性能を影響しており、TiN含有量が低すぎると、オーステナイト結晶粒の成長に対する抑制作用が明らかでない。
【0028】
さらに、本発明の低温衝撃靱性に優れた低降伏比高強靱厚鋼板において、CaとSは、さらに1.2≦Ca/S≦3.5に満たす必要がある。
【0029】
通常に、Ca含有量は、ESSP=(Ca wt%)*[1−1.24(O wt%)]/1.25(S wt%)によって限定し、そのうち、ESSPは硫化物混じり形状制御指数であり、値の範囲は0.5〜5の間にあることが好ましい。カルシウム−硫比について、制御する必要があり、本発明の技術方案にとって、CaとSの元素は、1.2≦Ca/S≦3.5に満たす必要がある。
【0030】
さらに、本発明の低温衝撃靱性に優れた低降伏比高強靱厚鋼板には、0.01〜0.10wt.%のV及び0.50〜1.00wt.%のCuの少なくとも一つを有する。
【0031】
鋼に添加されたVは、固溶強化及びMC型炭化物の析出強化効果によって鋼板の強靱性を向上させる。しかし、V元素の含有量が高すぎると、MC型炭化物は、熱処理過程で粗大化を発生し、低温靱性を影響する。鋼板の力学性能を保証するために、本発明の低温衝撃靱性に優れた低降伏比高強靱厚鋼板におけるV元素の含有量について、0.01wt.% ≦V≦0.10 wt.%に限定する必要がある。
【0032】
鋼に添加されたCuは、冷却及び焼戻し過程において、微細なε−Cuを形成し、転位運動を抑制して、鋼板の強度を向上させ、かつ鋼に添加されたCuは鋼板の靱性を影響しない。しかし、Cuを鋼に添加し、その融点が約1083℃であるので、加熱過程でCuが溶解して粒界に入るのを避けるために、Cuの含有量を0.50〜1.00wt.%に限定する必要がある。
【0033】
さらに、V元素を有する場合、本発明の低温衝撃靱性に優れた低降伏比高強靱厚鋼板におけるC、Nb及びVは、0.45*C≦Nb+V≦1.55*C(「*」は「掛ける」を指す)を満足する。
【0034】
NbとVは、冷却及び焼戻し過程で炭化物を形成する。C含有量が高すぎると、粗大なNb及びVの炭化物を形成し、よって、鋼板の−84℃における低温衝撃靱性を明らかに劣化させる。C含有量が低すぎると、形成した分散の炭化物が少なく、鋼板の強度を低下させる。Nbは、鋼板の再結晶を抑制し、厚さを低減し、鋼板の力学性能を向上させることを影響する。Nb及びVが鋼板の強靱性に対する影響をまとめて考慮すると、CとNb、Vとの間の関係は、鋼板の強靱性に整合することを保証するように、0.45*C≦Nb+V≦1.55*Cを満足する必要がある。
【0035】
さらに、Cu元素を有する場合、本発明の低温衝撃靱性に優れた低降伏比高強靱厚鋼板におけるNi、Mn及びCuは、Ni≧1.45(Mn+Cu)を満足する必要がある。
【0036】
Cuの融点が1083℃であり、鋼におけるCuは、加熱時に溶融する可能性があり、鋼板の表面の質量に劣化、内部割れなどの問題を招く。Cuが鋼板質量を影響することを避けるために、一定の含有量のNiを添加する必要がある。Mn含有量が高すぎると、粗大なMnS粒子を形成し、鋼板の低温靱性を低下させる。鋼板の低温靱性を向上させるために、一定の含有量のNiを補充として添加する必要がある。Mn及びCuの役割、及び2種類の元素とNiとの整合関係をまとめて考慮すると、Ni含有量がNi≧1.45(Mn+Cu)を満足することを保証する必要がある。
【0037】
本発明の技術方案は、高Ni、高Mn、低Cの成分体系を採用し、かつ本発明の技術方案はNi+Mnの合計量、CとNb+Vとの成分関係、NiとMn+Cuとの成分関係、及びTi/N比、Ca/S比を限定し、かつ後続のプロセス設計を組み合わせて、強靱性、降伏比と超低温衝撃性に優れた厚鋼板を得ることに用いられる。
【0038】
さらに、本発明の低温衝撃靱性に優れた低降伏比高強靱厚鋼板は、そのミクロ組織が逆変態オーステナイトと焼戻しマルテンサイトを有する。そのうち、逆変態オーステナイトとは、焼戻し過程で、フェライトから変態して生成するオーステナイトである。
【0039】
本発明の技術方案は、従来の技術のように柔軟相と硬相との組み合わせたミクロ組織によって、低降伏強度及び高い引張強度を有する鋼材料を得ることと異なり、従来の技術のようにフェライトとマルテンサイトの2相鋼を利用して、引張強度が高いかつ降伏比が低い鋼板を得ることと異なり、焼戻しマルテンサイトと逆変態オーステナイトのミクロ組織によって降伏比が低く、強度が高く、かつ低温靱性に優れた鋼板を得る。
【0040】
さらに、上記逆変態オーステナイトの相の比例は3〜10%である。
さらに、本発明の低温衝撃靱性に優れた低降伏比高強靱厚鋼板の厚さは5〜60mmである。
【0041】
本発明は、さらに低温衝撃靱性に優れた低降伏比高強靱厚鋼板の製造方法を提供し、当該方法によって降伏比が低く、強靱性が高くかつ低温靱性が良好な厚鋼板を得ることができる。
【0042】
本発明の低温衝撃靱性に優れた低降伏比高強靱厚鋼板の製造方法は、製錬、鋳造、加熱、2段階圧延、焼入れ、焼入れ後の冷却、及び焼戻しの工程を含む。
【0043】
さらに、上記鋳造工程において、鋳込プロセスを採用し、鋳込温度が1490〜1560℃であり、鋳込の過熱度を8〜35℃に限定する。
【0044】
上記鋳込温度を採用し、かつ一定の加熱度を限定すると、混ざり物の浮上を効率的に促進でき、スラブの質量を保証できる。
【0045】
さらに、上記加熱工程において、加熱温度を1080〜1250℃に限定し、スラブ中心が当該温度に達する後に60〜300minを保持する。
【0046】
加熱工程は、主に炭窒化物の溶解及びオーステナイト結晶粒の成長が発生する過程である。Nb、V、Ti、Cr及びMoのような炭化物形成元素の炭化物、又は炭窒化物は、部分的に鋼に溶解し、合金元素原子は拡散によってオーステナイトに固溶する。1080〜1250℃の加熱温度では、鋼板のオーステナイト化を実現できる。
【0047】
さらに、上記2段階圧延工程において、再結晶領域圧延の単バスの圧下率を8%以上に限定し、再結晶領域圧延の合計圧下率を50%以上に限定し、無再結晶領域圧延の単バスの圧下率を12%以上に限定し、無再結晶領域圧延の合計圧下率を50%以上に限定する。
【0048】
加熱後に圧延を行い、圧延工程において、一部の炭窒化物は変形誘導析出効果によって、欠陥において結晶核が成長し、最終の結晶粒を微細化して、鋼板の力学性能を向上させる。加熱後の鋼板は、2段階圧延技術を採用し、かつ再結晶領域圧延の単バスの圧下率、再結晶領域圧延の合計圧下率、無再結晶領域圧延の単バスの圧下率、無再結晶領域圧延の合計圧下率について上限を制限していなく、つまり、設備及び生産条件が許容する場合、上記パラメーターは下限の制限を満足する下に可及的に大きくすることができる。再結晶領域圧延の単バスの圧下率を8%以上に限定し、再結晶領域圧延の合計圧下率を50%以上に限定することで、オーステナイト結晶粒が十分に変形し、再結晶を発生させて、結晶粒を微細化できる。無再結晶領域圧延の単バスの圧下率を12%以上に限定し、無再結晶領域圧延の合計圧下率を50%以上に限定することで、転位密度を十分に向上させることに有利であり、Nb、Vなどが転位線及び零転位に細かい分散の析出を促進するとともに、相変態の核生成に充分な核生成位置を提供する。
【0049】
さらに、上記2段階圧延の工程において、無再結晶領域圧延の圧延開始温度を800〜860℃、仕上圧延温度を770〜840℃に限定することで、鋼板の転位密度を向上し、仕上げ組織を微細化して、高強度及び高靱性の鋼板を形成することに有利である。
【0050】
さらに、上記焼入れ工程では、水焼入れプロセスを採用し、入水温度を750〜820℃とし、冷却速度を10〜150℃/sとし、最終冷却温度を室温〜350℃とする。
【0051】
上記焼入れ工程では、鋼板におけるCr、Mn、Mn、Niなどの合金元素の総合的な作用によって、微細化のマルテンサイト組織を形成する。マルテンサイト組織におけるC元素は、結晶格子の歪みを招く、鋼板の降伏強度及び引張強度を大幅に向上させる。
【0052】
さらに、上記焼入れ後の冷却工程において、厚さが30mm以下の鋼板に対して、堆積冷却又は冷床冷却の方式によって鋼板を室温に冷却し、厚さが30mmを超えた鋼板に対して、堆積冷却又は保温徐冷の方式によって鋼板を室温まで冷却する。
【0053】
本発明の厚鋼板の厚さの範囲が5〜60mmであるので、厚さが異なる鋼板に対して、異なる冷却方式を採用する必要がある。
【0054】
さらに、上記焼戻し工程において、焼戻し温度を650〜720℃に限定し、かつ鋼板中心が当該温度に達する後に、10〜180minを保温し続ける。
【0055】
鋼板は、冷却後に、所定温度で焼戻し工程を完成する。焼戻し過程では、成分における異なる合金元素の作用によって、下記一連の変化が起こる。即ち、1)合金元素NiとMnは、オーステナイトの安定化に有利であり、焼戻し温度は、合金成分の設計におけるNi及びMnの含有量と密切に関係している。焼戻し温度が低すぎると、逆変態オーステナイトを形成できなく、低降伏比の設計目的を達成できなく;焼戻し温度が高すぎると、鋼板の強度が大幅に低下し、高強度を実現できなくとともに、低降伏比も実現できない。2)焼戻しの過程では、Nb、V及びTiが、CやNとともに炭窒化物を形成する。焼戻し温度が高すぎると、炭窒化物の粗大化が明らかであり、低温衝撃靱性を低下させ、鋼板が極めて低い温度で良好な低温衝撃靱性を実現できなく;焼戻し温度が低すぎると、Nb、V及びTiの析出が不十分であり、強度への貢献が低い。3)焼戻し過程では、形成されたε−Cuが析出し、鋼板における転位の運動を抑制でき、鋼板の強度を向上させる。焼戻し温度が低すぎると、Cuが十分に析出できなく、鋼板の強度への貢献が低下する。4)焼戻し過程では、鋼における転位が煙滅する可能性があり、転位密度が小さくなり、小角粒界の数量が低減して、鋼板の強度が低下してしまう。焼戻し温度が高すぎると、転位密度が低減する程度がはなはだしくなり、鋼板強度が明らかに低下する。5)焼戻しの後に、Cr、Mo及びCは結合して、複雑な炭化物を形成する。焼戻し工程の上記作用と、本発明の成分体系と、加熱、圧延、冷却工程を経て形成されたミクロ組織をまとめて考慮して、焼戻し温度を650〜720℃に設定し、鋼板中心が所定温度に達する後に10〜180minを保温し続ける。
【0056】
本発明の低温衝撃靱性に優れた低降伏比高強靱厚鋼板は、高い引張強度を有し、その引張強度が1100Mpa以上であり、降伏強度が690Mpa以上であり、かつ伸び率が14%以上である。
【0057】
また、本発明の低温衝撃靱性に優れた低降伏比高強靱厚鋼板は、低い降伏比を有し、その降伏比が0.65より低い。
【0058】
また、本発明の低温衝撃靱性に優れた低降伏比高強靱厚鋼板は、良好な低温衝撃靱性を有し、その−84℃の低温での衝撃エネルギーが60Jより大きい。
【0059】
本発明の低温衝撃靱性に優れた低降伏比高強靱厚鋼板の厚さの規格は5〜60mmに達することができる。
【0060】
本発明の低温衝撃靱性に優れた低降伏比高強靱厚鋼板の製造方法では、引張強度が高く、降伏比が低く、低温靱性がよく、かつ厚さの範囲が適切である鋼板を生産できる。
【0061】
また、本発明の低温衝撃靱性に優れた低降伏比高強靱厚鋼板の製造方法は、中・厚鋼板の生産ラインで安定的に生産される。