【発明が解決しようとする課題】
【0006】
通常、エンジンバルブへの溶融金属ナトリウムの充填は、多数の、例えば数百個のエンジンバルブの軸部内に一定量の充填を連続的に行い、短時間で充填を完了することが非常に望ましい。しかし、市販のバルク状の金属ナトリウムを溶かして、内径が約2〜4mmの前記軸部内に一定量を充填することは、従来技術では行うことができなかった。
【0007】
つまり、特許文献1に図示された例(
図4)では、金属Na定量タンク16に収容された溶融金属ナトリウムを、その下端部がエンジンバルブ11内に位置する供給管を通して、前記エンジンバルブ内に供給することが開示されているが、金属ナトリウムが充填されるエンジンバルブの中空軸部は細長い中空部(直径約2〜4mm)であり、この細長い中空部に、更に小径の金属ナトリウム供給管を挿入してその微小径の供給管を通して、中空エンジンバルブの軸部に供給しようとしても、供給管側は溶融しているとはいえ、溶融金属ナトリウムが固化しないで注入できるように中空エンジンバルブを金属ナトリウムの融点以上に予熱すれば金属ナトリウムは固化しないで注入できるが、金属ナトリウムは温度が高くなればなる程酸化しやすくなるので、出来るだけ中空エンジンバルブを金属ナトリウムの融点以下にせざるを得ず、この場合金属ナトリウムを目詰まりさせることなく前記微小径の供給管を通過させることが困難である。しかも供給した金属ナトリウムの体積に相当する空気を外部に取り出さなければ、金属ナトリウムが酸化してしまうので円滑な充填は行えない。
【0008】
更に、特許文献2の方法では、溶融金属ナトリウムを炭化水素系液に線状に吐出して棒状に固化する工程を有するが、一旦細径の棒状に成型し固化した金属ナトリウムをそのまま細径のエンジンバルブに挿入し充填することは、柔らかく曲がりやすい金属ナトリウムでは非常に困難である。
【0009】
更に一定量充填を実現するためには、中空エンジンバルブ内への充填金属ナトリウムは、指向性固化を行って、巣のない均一組織とすることが好ましい。つまり全体的に同時期に固化させるのではなく、一定方向に順次固化させるのが望ましい。一般に溶融物が固化する際に体積収縮するため、全外周部から固化させると、中心部ほど固化収縮による固化対象物が不足して、空隙(巣)が発生しやすく、場合によっては空隙(巣)に空気を巻き込んでしまう事になる。指向性固化を行うことにより、このような事態を回避できる。
【0010】
例えば細径のノズルを通して、空隙等の欠陥を有する金属ナトリウムがエンジンバルブの中空部へ充填されてしまうと、第1に特定体積の金属ナトリウムの重量が一定せず、従って、中空部内への充填重量にばらつきが生じるという欠点が生じ、第2に、供給される溶融金属ナトリウム内に液相と空隙があると、円滑な充填が困難になるという欠点が生じる。
【0011】
本発明は、このように一定量の金属ナトリウムを、望ましくは連続的かつ円滑にエンジンバルブに充填できなかった従来技術の欠点を解消し、簡単かつ確実に一定量の金属ナトリウムをエンジンバルブの中空部に充填できる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、第1発明(請求項1)に係る金属ナトリウムの充填方法は、中空エンジンバルブの中空部に金属ナトリウムを充填する方法において、溶融金属ナトリウムを、前記エンジンバルブの中空部の内径より大径であるシリンダ内に注入し、当該シリンダ内に実質的に均一な組織を有する棒状の固化した金属ナトリウムを生成させ、この棒状金属ナトリウムの均一組織を維持しながら、押し出し機構を用いて当該金属ナトリウムを、細径のノズル状ダイスを通して、前記エンジンバルブの中空部に挿入し、切断して充填し封入する。
【0013】
(作用)第1発明では、まずエンジンバルブの中空部の内径より大径であるシリンダに、溶融金属ナトリウムを、指向性固化を起こさせるように注入する。例えば、溶融金属ナトリウムの液滴を、時間的な間隔を十分に取って滴下させると、滴下された第1の金属ナトリウムの溶融滴下物が、シリンダ内で十分に冷却固化して固体金属ナトリウムとなった後に、第2の溶融滴下物が、前記固化した金属ナトリウムの上面に接触すると、前記金属ナトリウムが既に固化しているため、固相である固化金属ナトリウムと、液相である第2の溶融滴下物が接触することになるがすぐに固まるので融合せず、第2の溶融滴下物の固化後も、両相界面間に組織に境目が生じるという不連続性が生じる。この境目は融合していないので剥離しやすい。
【0014】
一方、第1の溶融滴下物である金属ナトリウムがシリンダ内に未固化の状態で存在し、第2の溶融滴下物が前記未固化金属ナトリウム上に滴下されると、滴下物の当たる液面から空気を吸い込み両者の界面に空隙が形成されやすくなる。これに対し、例えば第1の溶融滴下物の固化が進行しているが完全には固化していない状態、つまり半固化の状態で、シリンダ内の前記半固化金属ナトリウム(第1の溶融滴下物)に第2の溶融滴下物が接触すると、粘性が高くなった半固化金属ナトリウムの半固化表面の動きが悪くなり、第2の溶融滴下物が互いに混じり合わない程度に接触して融合し、両者の金属ナトリウム間に連続性が生じる。これが多数回繰り返されることにより、前記シリンダ内に溶融滴下物である金属ナトリウムの指向性固化物が、棒状で均一な固体金属ナトリウムとして形成される。なお、この半固化状態は、前記シリンダ内に注入される溶融金属ナトリウムが液滴形状だけで注入しなくても、前記液滴凝固速度より若干速い速度で注入され、不連続ができない形態で供給される場合にも生じ、この不連続でない形態も本発明に含まれる。
【0015】
この金属ナトリウムの溶融注入(滴下)は、所定の内径(例えば20〜40mm)を有する前記シリンダ内に注入されるが、この場合の棒状金属ナトリウムは組織が均一であるため、長さが一定であればその重量も一定になる。従って、シリンダ注入前の溶融金属ナトリウムを一定内径の縦長の容器に収容し、多数の位置センサで前記容器内の溶融金属ナトリウムの液面高さを検出し、所定上下長分の溶融金属ナトリウムを前記シリンダに供給するよう設定すると、前記シリンダ内に空隙の無い一定量の金属ナトリウムが形成される。
【0016】
次に、第1発明では、前記シリンダ内の固化した棒状金属ナトリウムを、細径のノズル状ダイスに通して細く押し出して、前記エンジンバルブの中空部(内径は約2〜4mm)に、線状又はワイヤ状として挿入し切断しかつ封入する。前記シリンダには、例えばその底面を着脱自在のキャップ材で構成し、当該シリンダ内への金属ナトリウムの充填時には、前記キャップ材を装着した状態とし、前記棒状の金属ナトリウムに固化した後には、前記キャップ材を脱離させる。そして、当該キャップ材の代わりに、先細り状としたノズル状ダイスを装着させ、このノズル状ダイスの下方に、金属ナトリウムを挿入し封入するエンジンバルブ中空部を合わせて、ピストン状の押し出し部材で、前記シリンダ内の棒状金属ナトリウムを下方に押し出し、前記ノズル状ダイスに通すことにより、前記中空部の内径に応じた線状又はワイヤ状に細径化し、前記中空部内に必要な長さの線状の金属ナトリウムを挿入し切断し封入する。
【0017】
前記シリンダの内径を前記中空部の内径より大きくしてあるため、当該中空部に封入される金属ナトリウムの体積より、体積の大きい棒状金属ナトリウムを前記シリンダ内に作製でき、この単一個の棒状金属ナトリウムで、比較的多数の、通常は数百個のエンジンバルブの中空部に、前記ノズル状ダイスを通して一定量の金属ナトリウムを挿入し切断し封入することができる。
【0018】
請求項2においては、請求項1に記載の金属ナトリウムの充填方法において、溶融金属ナトリウムのシリンダ内への注入を、シリンダ内の金属ナトリウムの表面を半固化状態に維持しながら行う。
【0019】
(作用)本実施形態では、半固化の状態で、つまり先行する溶融注入物の固化が進行しているが完全には固化していない状態で、シリンダ内の前記半固化金属ナトリウムに引き続く溶融注入物が接触すると、前述の通り、半固化金属ナトリウムの半固化表面と、引き続く溶融注入物が互いに混じり合わない程度に接触して融合し、両者の金属ナトリウム間に空隙が生じることなく、連続性が生じる。
【0020】
請求項3においては、請求項1又は2に記載の金属ナトリウムの充填方法において、溶融金属ナトリウムを、滴下によりシリンダ内に注入するようにする。
【0021】
(作用)本実施形態では、シリンダ内に注入される溶融金属ナトリウムが液滴として供給されて、注入される金属ナトリウムの表面が半固化状態に維持される。
【0022】
請求項4においては、請求項1から3までのいずれか1項に記載の金属ナトリウムの充填方法において、内径が、20mm〜50mmであるシリンダに、温度180〜250℃の溶融金属ナトリウムを150g/分〜300g/分の速度で注入する。
【0023】
(作用)前記シリンダ内で、溶融金属ナトリウムの指向性固化を実現するためには、シリンダの内径、当該シリンダに供給される金属ナトリウムの温度、及び溶融金属ナトリウムの注入速度のそれぞれを適切な値に設定することが望ましい。前記シリンダの内径を大きくするほど、得られる棒状金属ナトリウムの体積が増えて、単一の棒状金属ナトリウムで、多数のエンジンバルブの中空部に金属ナトリウムを充填できる。しかしシリンダの内径が大きくなると、シリンダ内の内壁近傍と中央付近との金属ナトリウム間の固化条件(温度)に差異が生じ、中央付近が最後に固まって下から上への指向性固化が達成しにくくなる。他のパラメータにも影響されるが、指向性固化を起こすシリンダ内径は、10mm〜80mmであり、20mm〜50mmであることが好ましい。
【0024】
シリンダ内充填時の金属ナトリウムは、最低限溶融状態が確保されていれば良いが、温度が高すぎると固まりにくく、逆に融点に近すぎるとすぐに固まって温度制御が難しいので、温度範囲は、120℃〜300℃とし、180℃〜250℃が好ましい。
【0025】
シリンダ内へ注入する溶融金属ナトリウムの注入速度は指向性固化を実現するために、重要なパラメータである。前述の通り、注入速度が速すぎると、溶融状態の金属ナトリウムがシリンダ内に存在して、その固化時の体積収縮に起因して空隙が発生しやすくなる。他方、注入速度が遅すぎると、先に注入された溶融金属ナトリウムが固化した後に、引き続き注入される金属ナトリウムが前記固化した金属ナトリウムに接触するため、両者間に融合しない境界面で不連続性が生じ、多数の層が形成されることがある。
【0026】
本発明では、通常充填操作は不活性ガス雰囲気下で行われるが、若干量の空気が存在する可能性があり、その場合に、単一層のうち、不活性ガス雰囲気に接触する箇所が酸化されて酸化ナトリウムが生じ、酸化ナトリウムが生じない部分は金属ナトリウムのまま存在する。前記酸化ナトリウムは比較的硬く変形しにくいのに対し、前記金属ナトリウムは比較的軟らかく変形しやすい。このような酸化ナトリウムと金属ナトリウムから成る多数の層の積層物をノズル状ダイスから押し出し通過させると、硬い酸化ナトリウムは抵抗が大きいためノズル状ダイスを通りにくく、軟らかい金属ナトリウムは容易にノズル状ダイスを通り抜ける。そのため層状組織を有するナトリウムがノズル状ダイスを通過する際に抵抗の大小に起因して円滑な挿入切断が行いにくくなるおそれがある。他のパラメータにも影響されるが、指向性固化を起こさせて空隙形成を回避し、更に好ましくは層状組織の形成を回避するために、溶融金属ナトリウムの注入速度は、50g/分〜500g/分とし、150g/分〜300g/分が好ましい。
【0027】
第2発明(請求項5)では、有機溶媒を含有する金属ナトリウムを精製し、精製した金属ナトリウムを中空エンジンバルブの中空部に充填する方法において、当該金属ナトリウムを密閉した溶融タンクに収容し、減圧下、当該溶融タンクを加熱することにより、前記金属ナトリウムに付着した前記有機溶媒を気化させ除去し、当該溶融金属ナトリウムを、前記エンジンバルブの中空部の内径より大径であるシリンダに注入して、当該シリンダ内に均一組織を有する棒状の金属ナトリウムを生成させ、この棒状金属ナトリウムの均一組織を維持しながら、当該金属ナトリウムを、細径のノズル状ダイスを通して、前記エンジンバルブの中空部に挿入し切断し封入する。
【0028】
第2発明では、第1発明と実質的に同一である充填に先立って、使用する金属ナトリウムの精製を行い、エンジンバルブの中空部に充填される金属ナトリウムの純度を更に高くする。前述の通り、金属ナトリウムは石油や流動パラフィンなどの有機溶媒に浸漬し、水や空気との接触を断った状態で保存される。
【0029】
有機溶媒から取り出した金属ナトリウムには、その表面に石油や流動パラフィンが付着している。この金属ナトリウムをエンジンバルブの中空部に充填して使用する場合には、充填に先立って前記これらの有機溶媒を除去して金属ナトリウムの純度を高めることが望ましく、従来は表面から拭き取った後に使用している。
【0030】
しかし、市販の金属ナトリウムの表面にはひび割れが生じていることがある。このひび割れのまま溶融して液体の金属ナトリウムとすると、石油や流動パラフィン等の不純物混入などの不都合が生じるため、更に体積に基づいて金属ナトリウム量の定量を行う際に誤差が生じるため、従来は、前記ひび割れの周囲を削り取ってから溶融し使用している。このように従来は、金属ナトリウムの表面状態を個別に検査して、表面状態が良好なものは、流動パラフィン等の拭き取り後に、ひび割れが生じているものは、表面を比較的厚く削り取った後に、それぞれ溶融し、精製している。しかしこの手法では、各金属ナトリウムインゴットごとに検査が必要でかつ不良品表面を削り取るという手間の掛かる作業が必要となるとともに、削り取った金属ナトリウムの屑が歩留りを落としているという欠点がある。
【0031】
第2発明では、金属ナトリウムの前記シリンダ内への充填に先立って、当該金属ナトリウムを密閉した溶融タンクに収容し、当該溶融タンク中で、減圧下、加熱することにより、前記金属ナトリウム中の前記有機溶媒を気化させ除去し、高純度金属ナトリウムとする。これにより、従来のように、原料となる金属ナトリウムの表面状態を個別に検査する必要がなくなって操作性が向上するとともに、ひび割れを削り取ることによる金属ナトリウムの歩留りの低下を防止できる。