特許第6563534号(P6563534)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6563534プラスチックレンズ用ポリチオール組成物
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  • 特許6563534-プラスチックレンズ用ポリチオール組成物 図000010
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6563534
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】プラスチックレンズ用ポリチオール組成物
(51)【国際特許分類】
   G02B 1/04 20060101AFI20190808BHJP
   G02C 7/00 20060101ALI20190808BHJP
   G02B 3/00 20060101ALI20190808BHJP
   C08G 18/38 20060101ALN20190808BHJP
   C08G 18/00 20060101ALN20190808BHJP
【FI】
   G02B1/04
   G02C7/00
   G02B3/00 Z
   !C08G18/38 078
   !C08G18/00 L
【請求項の数】2
【外国語出願】
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-17148(P2018-17148)
(22)【出願日】2018年2月2日
(65)【公開番号】特開2018-123323(P2018-123323A)
(43)【公開日】2018年8月9日
【審査請求日】2018年2月2日
(31)【優先権主張番号】10-2017-0015509
(32)【優先日】2017年2月3日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】504004533
【氏名又は名称】エスケーシー カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜飼 健
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(72)【発明者】
【氏名】洪 承模
(72)【発明者】
【氏名】沈 ▲じょん▼▲みん▼
(72)【発明者】
【氏名】慎 政煥
【審査官】 松浦 裕介
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−025240(JP,A)
【文献】 特開平09−110983(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0065336(US,A1)
【文献】 特開2013−007784(JP,A)
【文献】 特開2006−284920(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/129450(WO,A1)
【文献】 特表2015−506947(JP,A)
【文献】 特開2016−175905(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0154739(US,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第2808321(EP,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第2008998(EP,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第0742244(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC C08G 18/00 − 18/87
C08G 71/00 − 71/04
C08L 1/00 − 101/14
C08K 3/00 − 13/08
G02C 1/00 − 13/00
C07B 31/00 − 61/00
C07B 63/00 − 63/04
C07C 1/00 − 409/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリチオウレタン系レンズを調製する方法であって、
(1)イソシアネート化合物、ポリチオール化合物および光活性色補正剤を含む、重合性組成物を提供すること、
(2)前記重合性組成物を初期温度0〜30℃から1℃/分〜10℃/分の速度で100〜150℃まで加熱し、次いで5〜30時間維持することによって熱硬化させ、ポリチオウレタン系樹脂を製造すること、ならびに
(3)前記ポリチオウレタン系樹脂に波長395nm〜445nmの紫外線を5分〜50分間照射すること
を含み、
前記光活性色補正剤が、以下の式1
【化1】
(式中、
1は、C1〜10アルキル、C1〜10アルコキシ、フェニルまたはハロゲンで置換されているC1〜10アルキルであり、
Xは、C1〜10アルキル、C1〜10アルコキシ、ハロゲンで置換されているニトロ、C1〜20ジアルキルアミノまたはシアノであり、
lおよびmは互いに独立に1または2であり、
l+m=3であり、
nは0〜3の整数であり、
lが2であるとき、R1は、互いに同一または異なってもよく、nが2または3であるとき、Xは、互いに同一または異なってもよい)
で表される化合物を含み、
前記工程(3)において、前記重合性組成物を熱硬化させることにより形成された前記ポリチオウレタン系樹脂の第1の黄色度指数よりも、紫外線照射後の前記ポリチオウレタン系樹脂の第2の黄色度指数を0.11以上低下させる、ポリチオウレタン系レンズを調製する方法。
【請求項2】
前記工程(3)において、直径75mmの円形レンズに対して、波長395nm〜445nmの紫外線が5分〜50分間、1J〜3Jの強度で照射される請求項1に記載のポリチオウレタン系レンズを調製する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
一態様は、プラスチックレンズ用ポリチオール組成物に関する。さらに、別の態様は、ポリチオール組成物を含む、重合性組成物、ならびにポリチオウレタン系化合物およびそこから得られるプラスチックレンズに関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック光学材料は、無機材料、例えば、ガラスからなる光学材料と比較して、軽量で、破損しにくく、可染性に優れている。したがって、様々な樹脂のプラスチック材料が、眼鏡レンズ、カメラレンズなどのための光学材料として広く用いられている。近年、特に、高透明性、高屈折率、低比重、高耐熱性および高耐衝撃性の観点から、高性能の光学材料に対する需要が高まっている。
【0003】
ポリチオウレタン系化合物は、その優れた光学的特徴および優れた機械的特性により光学材料として広く用いられている。ポリチオウレタン系化合物は、ポリチオール化合物およびイソシアネート化合物の重合により調製できる。このような場合、ポリチオール化合物の物理的特性は、調製されるポリチオウレタン系化合物の物理的特性に顕著な影響を与える。
【0004】
ポリチオウレタン化合物からなるレンズは、その高屈折率、軽量および比較的高い耐衝撃性により広く用いられている。しかし、ポリチオウレタン系レンズは、ガラスレンズよりもアッベ数が低いため、ポリチオウレタン系レンズの鮮明度は、ガラスレンズよりも低く、レンズが摩耗したとき、眼精疲労がひどくなる。さらに、ポリチオウレタン系レンズは、ガラスレンズよりも耐熱性が低い。
【0005】
近年、ガラスと同等の透明性を得るために、原料の純度を高めるか、または反応を制御することにより、その光学特性、例えば、透明性および屈折率を改善する努力がなされてきた。
【0006】
例えば、韓国特許第1338568号には、(ポリ)ハロゲン化合物または(ポリ)アルコール化合物とチオ尿素とを反応させて得られるイソチオウロニウム塩を加水分解することにより、ポリチオール化合物を調製する方法であって、そこでチオ尿素中のカルシウム含有量が1.0重量%以下であるため、無色透明な(ポリ)チオール化合物が得られる、方法が開示されている。さらに、韓国特許第1464942号には、エピクロロヒドリン化合物と2−メルカプトエタノールとを反応させることを含む、光学材料用ポリチオール化合物を調製する方法であって、エピクロロヒドリン化合物に含有される不純物の総量が、0.45重量%以下であり、不純物が、アクロレイン、アリルクロライド、1,2−ジクロロプロパン、2,3−ジクロロプロペン、2−メチル−2−ペンタノール、2−クロロアリールアルコール(2-chloroaryl alcohol)、シス−1,3−ジクロロプロペン、トランス−1,3−ジクロロプロペン、1,3−ジクロロイソパノール、1,2,3−トリクロロプロパンおよび2,3−ジクロロプロパノールからなる、方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】韓国特許第1338568号
【特許文献2】韓国特許第1464942号
【発明の開示】
【0008】
技術的課題
しかし、韓国特許第1338568号に開示されている技術は、ポリチオール化合物の原料であるチオ尿素の純度を制御し、韓国特許第1464942号に開示されている技術は、ポリチオール化合物の原料であるエピクロロヒドリンの純度を制御する。したがって、ガラスと同等の透明性を有する明澄透明のレンズの製造には限界がある。さらに、原料の純度のみが制御される場合、レンズの製造中に生じ得る黄色化を防止するのは困難であり、そこから製造されるレンズは、品質、加工性および経済性の観点から不利である。
【0009】
したがって、一態様は、ポリチオウレタン系プラスチックレンズの利点を維持しながら、ガラスレンズの利点である、高透明性の利点を有するプラスチックレンズ用ポリチオール組成物、ならびにポリチオウレタン系化合物およびそこから得られるプラスチックレンズを提供することを目的とする。
【0010】
課題の解決
一態様は、二官能性以上のポリチオール化合物、および以下の式1
【0011】
【化1】
【0012】
(式中、R1は、C1〜10アルキル、C1〜10アルコキシ、フェニルまたはハロゲンで置換されているC1〜10アルキルであり、Xは、C1〜10アルキル、C1〜10アルコキシ、ハロゲンで置換されているニトロ、C1〜20ジアルキルアミノまたはシアノであり、lおよびmは互いに独立に1または2であり、l+m=3であり、nは0〜3の整数であり、lが2であるとき、R1は、互いに同一または異なってもよく、nが2または3であるとき、Xは、互いに同一または異なってもよい)
で表される化合物を含む、ポリチオール組成物を提供する。
【0013】
さらに、別の態様は、イソシアネート化合物、ポリチオール化合物および光活性色補正剤を含む、ポリチオウレタン系レンズ用重合性組成物を提供する。
【0014】
さらに、別の態様は、(1)イソシアネート化合物、ポリチオール化合物および光活性色補正剤を含む、重合性組成物を提供すること、(2)重合性組成物を熱硬化させて、ポリチオウレタン系樹脂を製造すること、ならびに(3)ポリチオウレタン系樹脂に紫外線を照射し、ポリチオウレタン系樹脂の黄色度指数を低下させることを含む、ポリチオウレタン系レンズを調製する方法を提供する。
【発明の有利な効果】
【0015】
該態様によるプラスチックレンズ用ポリチオール組成物からは、ポリチオール化合物、イソシアネートなどといった原料を重合し、次いで、簡単な後処理、例えば、紫外線照射を行うことにより、明澄透明のプラスチックレンズが製造できる。さらに、レンズを調製する方法が、簡単かつ安価であるため、レンズは、様々なプラスチックレンズ、例えば、眼鏡レンズおよびカメラレンズを製造するために有利に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、紫外線照射前後の例に従ってポリチオール組成物の分子構造の状態を例示する概略図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
一態様は、二官能性以上のポリチオール化合物、および以下の式1
【0018】
【化2】
【0019】
(式中、R1は、C1〜10アルキル、C1〜10アルコキシ、フェニルまたはハロゲンで置換されているC1〜10アルキルであり、Xは、C1〜10アルキル、C1〜10アルコキシ、ハロゲンで置換されているニトロ、C1〜20ジアルキルアミノまたはシアノであり、lおよびmは互いに独立に1または2であり、l+m=3であり、nは0〜3の整数であり、lが2であるとき、R1は、互いに同一または異なってもよく、nが2または3であるとき、Xは、互いに同一または異なってもよい)
で表される化合物を含む、ポリチオール組成物を提供する。
【0020】
ポリチオール組成物は、上記式1で表される化合物、および二官能性以上のポリチオール化合物、特に、三官能性以上のポリチオール化合物を含んでいてもよい。
【0021】
上記式1で表される化合物は、ホスフィンオキシド系化合物であってよい。例えば、これは、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド、2,4,5−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィネート、エチル2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィネートであってよい。具体的には、これは、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシドまたは2,4,5−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィネートであってよい。
【0022】
上記式1で表される化合物は、組成物に対して、50〜40000ppm、特に、55〜30000ppmの量で使用できる。化合物の量が上記範囲内である場合、紫外線照射後により鮮明かつ透明であるように、該組成物から製造したプラスチックレンズの色を調整および維持してもよい。
【0023】
二官能性以上のポリチオール化合物は、有機ポリチオールであってよい。
【0024】
有機ポリチオールは、1,2−ビス[(2−メルカプトエチル)チオ]−3−メルカプトプロパン、4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、2,5−ビス(メルカプトメチル)−1,4−ジチアン、ペンタエリスリトールテトラ(メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラ(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリ(メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリ(3−メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサ(メルカプトアセテート)、ジペンタエリスリトールヘキサ(3−メルカプトプロピオネート)、ビス(2−(2−メルカプトエチルチオ)−3−メルカプトプロピル)スルフィド、4−メルカプトメチル−1,8−ジメルカプト−3,6−ジチアオクタン、2,3−ビス(2−メルカプトエチルチオ)プロパン−1−チオール、2,2−ビス(メルカプトメチル)−1,3−プロパンジチオール、ビス(2−メルカプトエチル)スルフィド、テトラキス(メルカプトメチル)メタン、2−(2−メルカプトエチルチオ)プロパン−1,3−ジチオール、2−(2,3−ビス(2−メルカプトエチルチオ)プロピルチオ)エタンチオール、ビス(2,3−ジメルカプトプロパニル)スルフィド、ビス(2,3−ジメルカプトプロパニル)ジスルフィド、1,2−ビス(2−(2−メルカプトエチルチオ)−3−メルカプトプロピルチオ)エタン、2−(2−メルカプトエチルチオ)−3−2−メルカプト−3−[3−メルカプト−2−(2−メルカプトエチルチオ)−プロピルチオ]プロピルチオ−プロパン−1−チオール、2,2−ビス−(3−メルカプト−プロピオニルオキシメチル)−ブチルエステル、2−(2−メルカプトエチルチオ)−3−(2−(2−[3−メルカプト−2−(2−メルカプトエチルチオ)−プロピルチオ]エチルチオ)エチルチオ)プロパン−1−チオール、(4R,11S)−4,11−ビス(メルカプトメチル)−3,6,9,12−テトラチアテトラデカン−1,14−ジチオール、(S)−3−((R−2,3−ジメルカプトプロピル)チオ)プロパン−1,2−ジチオール、(4R,14R)−4,14−ビス(メルカプトメチル)−3,6,9,12,15−ペンタチアヘプタンー1,17−ジチオール、(S)−3−((R−3−メルカプト−2−((2−メルカプトエチル)チオ)プロピルチオ)プロピルチオ)−2−((2−メルカプトエチル)チオ)プロパン−1−チオール、3,3’−ジチオビス(プロパン−1,2−ジチオール)、(7R,11S)−7,11−ビス(メルカプトメチル)−3,6,9,12,15−ペンタチアヘプタデカン−1,17−ジチオール、(7R,12S)−7,12−ビス(メルカプトメチル)−3,6,9,10,13,16−ヘキサチアオクタデカン−1,18−ジチオール、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトアセテート)、ビスペンタエリスリトールエーテルヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)、1,1,3,3−テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,1,2,2−テトラキス(メルカプトメチルチオ)エタン、4,6−ビス(メルカプトメチルチオ)−1,3−ジチアン、2−(2,2−ビス(メルカプトジメチルチオ)エチル)−1,3−ジチアンおよびこれらの混合物からなる群から選択できる。
【0025】
具体的には、これは、1,2−ビス[(2−メルカプトエチル)チオ]−3−メルカプトプロパン、4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、2,5−ビス(メルカプトメチル)−1,4−ジチアン、ペンタエリスリトールテトラ(メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラ(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリ(メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリ(3−メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサ(メルカプトアセテート)、ジペンタエリスリトールヘキサ(3−メルカプトプロピオネート)またはこれらの混合物であってよい。
【0026】
より具体的には、これは、1,2−ビス[(2−メルカプトエチル)チオ]−3−メルカプトプロパン、4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、2,5−ビス(メルカプトメチル)−1,4−ジチアンまたはこれらの混合物であってよい。
【0027】
該組成物は、光スペクトルにおける400nmの透過率がT400(%)であり、450nmの透過率がT450(%)であるとき、以下の方程式1
[方程式1]
30<A=(T450%)−(T400%)<95
を満たす。
この方程式において、Aは、400nmおよび450nmの透過率の差を表し、A値が小さければ小さいほど、黄色度指数(Y.I.)は低い。色度座標を測定できる装置を用いて、Y.I.値を測定できる。ポリチオール組成物が、L*a*b色空間(Lab色空間)で表されるとき、b*は、1.0以上、1.5以上または2.0以上であってよい。Y.I.およびb*は、当技術分野で周知の色評価法のパラメーターである。Y.I.は、固体の色を評価するために好都合に用いられ、b*は、液体の色を評価するために好都合に用いられる。
【0028】
別の態様は、イソシアネート化合物、ポリチオール化合物および光活性色補正剤を含む、ポリチオウレタン系レンズ用重合性組成物を提供する。
【0029】
光活性色補正剤は、上記式1で表される化合物を含んでいてもよい。
【0030】
光活性色補正剤を含む、重合性組成物では、重合性組成物を硬化させることにより形成されるポリチオウレタン系樹脂の黄色度指数を、紫外線照射時にさらに低下できる。このような場合、紫外線は、1J〜3Jの強度でUVV領域において波長395nm〜445nmで5分〜50分間、10分〜50分間、5分〜45分間または10分〜45分間照射できる。
【0031】
具体的には、重合性組成物を熱硬化させることにより形成されるポリチオウレタン系樹脂の黄色度指数が、第1の黄色度指数と称され、ポリチオウレタン系樹脂に紫外線を照射した後の黄色度指数が、第2の黄色度指数と称されるとき、第1の黄色度指数は、第2の黄色度指数よりも高い。
【0032】
より具体的には、第2の黄色度指数は、0.1〜5.5、0.1〜5.4、0.5〜5.4または1.0〜5.4であってよい。このような場合、第1の黄色度指数は、一定の値で第2の黄色度指数よりも高くてよい。例えば、第1の黄色度指数と第2の黄色度指数との差は、少なくとも0.11であってよく、より具体的には、第1の黄色度指数と第2の黄色度指数との差は、少なくとも0.2であってよい。
【0033】
イソシアネート化合物は、ポリチオウレタンの合成のために一般に用いられる従来のものであってよい。
【0034】
具体的には、これは、脂肪族イソシアネート系化合物、例えば、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2−ジメチルペンタンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサンジイソシアネート、ブテンジイソシアネート、1,3−ブタジエン−1,4−ジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,6,11−ウンデカトリイソシアネート、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、1,8−ジイソシアネート−4−イソシアナトメチルオクタン、ビス(イソシアナトエチル)カーボネート、ビス(イソシアナトエチル)エーテル、1,2−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ジシクロヘキシルジメチルメタンイソシアネート、2,2−ジメチルジシクロヘキシルメタンイソシアネート、ビス(イソシアナトエチル)スルフィド、ビス(イソシアナトプロピル)スルフィド、ビス(イソシアナトヘキシル)スルフィド、ビス(イソシアナトメチル)スルホン、ビス(イソシアナトメチル)ジスルフィド、ビス(イソシアナトプロピル)ジスルフィド、ビス(イソシアナトメチルチオ)メタン、ビス(イソシアナトエチルチオ)メタン、ビス(イソシアナトエチルチオ)エタン、ビス(イソシアナトメチルチオ)エタン、1,5−ジイソシアナト−2−イソシアナトメチル−3−チアペンタン、2,5−ジイソシアナトチオフェン、2,5−ビス(イソシアナトメチル)チオフェン、2,5−ジイソシアナトテトラヒドロチオフェン、2,5−ビス(イソシアナトメチル)テトラヒドロチオフェン、3,4−ビス(イソシアナトメチル)テトラヒドロチオフェン、2,5−ジイソシアナト−1,4−ジチアン、2,5−ビス(イソシアナトメチル)−1,4−ジチアン、4,5−ジイソシアナト−1,3−ジチオラン、4,5−ビス(イソシアナトメチル)−1,3−ジチオラン、および4,5−ビス(イソシアナトメチル)−2−メチル−1,3−ジチオラン;ならびに芳香族イソシアネート化合物、例えば、ビス(イソシアナトエチル)ベンゼン、ビス(イソシアナトプロピル)ベンゼン、ビス(イソシアナトブチル)ベンゼン、ビス(イソシアナトメチル)ナフタレン、ビス(イソシアナトメチル)ジフェニルエーテル、フェニレンジイソシアネート、エチルフェニレンジイソシアネート、イソプロピルフェニレンジイソシアネート、ジメチルフェニレンジイソシアネート、ジエチルフェニレンジイソシアネート、ジイソプロピルフェニレンジイソシアネート、トリメチルベンゼントリイソシアネート、ベンゼントリイソシアネート、ビフェニルジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、トルイジンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3−ジメチルジフェニルメタン−4,4−ジイソシアネート、ビベンジル−4,4−ジイソシアネート、ビス(イソシアナトフェニル)エチレン、3,3−ジメトキシビフェニル−4,4−ジイソシアネート、ヘキサヒドロベンゼンジイソシアネート、ヘキサヒドロジフェニルメタン−4,4−ジイソシアネート、o−キシレンジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、p−キシレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、X−キシレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ジフェニルスルフィド−2,4−ジイソシアネート、ジフェニルスルフィド−4,4−ジイソシアネート、3,3−ジメトキシ−4,4−ジイソシアナトジベンジルチオエーテル、ビス(4−イソシアナトメチルベンゼン)スルフィド、4,4−メトキシベンゼンチオエチレングリコール−3,3−ジイソシアネート、ジフェニルジスルフィド−4,4−ジイソシアネート、2,2−ジメチルジフェニルジスルフィド−5,5−ジイソシアネート、3,3−ジメチルジフェニルジスルフィド−5,5−ジイソシアネート、3,3−ジメチルジフェニルジスルフィド−6,6−ジイソシアネート、4,4−ジメチルジフェニルジスルフィド−5,5−ジイソシアネート、3,3−ジメトキシジフェニルジスルフィド−4,4−ジイソシアネート、および4,4−ジメトキシジフェニルジスルフィド−3,3−ジイソシアネート;これらの混合物からなる群から選択できる。
【0035】
具体的には、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネートなどを使用できる。
【0036】
重合性組成物は、その目的に応じて、内部離型剤、熱安定剤、反応触媒、紫外線吸収剤および青味剤といった添加剤をさらに含んでいてもよい。
【0037】
内部離型剤としては、パーフルオロアルキル基、ヒドロキシアルキル基またはリン酸エステル基を有する、フッ素系非イオン界面活性剤;ジメチルポリシロキサン基、ヒドロキシアルキル基またはリン酸エステル基を有する、シリコーン系非イオン界面活性剤;アルキル第4級アンモニウム塩、例えば、トリメチルセチルアンモニウム塩、トリメチルステアリルアンモニウム塩、ジメチルエチルセチルアンモニウム塩、トリエチルドデシルアンモニウム塩、トリオクチルメチルアンモニウム塩およびジエチルシクロヘキサドデシルアンモニウム塩;ならびに酸性リン酸エステルを挙げることができる。これは、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0038】
熱安定剤としては、脂肪酸金属塩、リン化合物、鉛化合物または有機スズ化合物を、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0039】
反応触媒としては、ポリチオウレタン系樹脂の調製で用いられる公知の反応触媒を適切に使用できる。例えば、これは、ハロゲン化ジアルキルスズ、例えば、ジブチルスズジクロリドおよびジメチルスズジクロリド、ジアルキルスズジカルボキシレート、例えば、ジメチルスズジアセテート、ジブチルスズジオクタノエートおよびジブチルスズジラウレート、ジアルキルスズジアルコキシド、例えば、ジブチルスズジブトキシドおよびジオクチルスズジブトキシド、ジアルキルスズジチオアルコキシド、例えば、ジブチルスズジ(チオブトキシド)、ジアルキルスズオキシド、例えば、ジ(2−エチルヘキシル)スズオキシド、ジオクチルスズオキシドおよびビス(ブトキシジブチルスズ)オキシド、ならびにジアルキルスズスルフィド、例えば、ジブチルスズスルフィドからなる群から選択できる。具体的には、これは、ハロゲン化ジアルキルスズ、例えば、ジブチルスズジクロリドおよびジメチルスズジクロリドなどからなる群から選択できる。
【0040】
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、サリチレート、シアノアクリレート、オキサニリドなどを使用できる。
【0041】
青味剤は、可視光領域のうち橙色から黄色の波長域に吸収帯を有し、樹脂からなる光学材料の色相を調整する機能を有する。具体的には、青味剤は、青色から紫色を示す材料を含んでいてもよいが、それだけに特に限定されない。さらに、青味剤の例としては、染料、蛍光増白剤、蛍光顔料および無機顔料が挙げられる。これは、製造される光学部品に要求される物性および樹脂色相に従って適切に選択できる。青味剤は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0042】
重合性組成物への溶解性および製造される光学材料の透明性の観点から、染料が青味剤として好ましくは用いられる。吸収波長の観点から、染料は、特に520〜600nmの最大吸収波長、より特に540〜580nmの最大吸収波長を有していてよい。さらに、化合物の構造の観点から、アントラキノン系染料が染料として好ましい。青味剤を添加する方法は、特に限定されず、青味剤をモノマーに予め添加してもよい。具体的には、様々な方法を使用できる。例えば、青味剤を、モノマーに溶解してもよく、またはマスター溶液に高濃度で含有させてもよく、その後、マスター溶液を、モノマーまたは他の添加剤で希釈し、次いで、添加する。
【0043】
別の態様は、上記重合性組成物を成形型中で熱硬化させることにより、ポリチオウレタン系プラスチックレンズを調製する方法を提供する。該態様によれば、ポリチオウレタン系プラスチックレンズは、(1)イソシアネート化合物、ポリチオール化合物および光活性色補正剤を含む、重合性組成物を提供する工程、(2)重合性組成物を熱硬化させ、ポリチオウレタン系樹脂を製造する工程、ならびに(3)ポリチオウレタン系樹脂に紫外線を照射し、ポリチオウレタン系樹脂の黄色度指数を低下させる工程により調製できる。さらに、一態様は、上記調製方法で得られるポリチオウレタン系プラスチックレンズを提供する。
【0044】
具体的には、工程(1)において、上記重合性組成物を調製する。
【0045】
次に、工程(2)において、重合性組成物を減圧下で脱気し、次いでレンズを成形するための成形型に射出する。このような脱気および射出成形は、例えば、温度20〜40℃で行われてもよい。組成物を成形型に射出したら、組成物を低温から高温に徐々に加熱することにより、重合を通常行う。重合温度は、例えば、20〜150℃、特に、25〜120℃であってよい。
【0046】
このような場合、成形型の形状は、用途に応じて様々に変更できる。例えば、眼鏡レンズ、カメラレンズなどといった用途に応じて、異なる形状を有する成形型を使用できる。
【0047】
さらに、工程(2)において、重合性組成物は、1℃/分〜10℃/分の速度で初期温度約0〜約30℃から加熱されてよい。さらに、熱硬化工程において、重合性組成物を、上記速度で温度約100〜約150℃まで加熱し、次いで5〜30時間維持してもよい。
【0048】
工程(3)において、熱硬化時に形成されるポリチオウレタン系樹脂に、1J〜3Jの強度でUVV領域において波長395nm〜445nmを有する紫外線照射を行い、ポリチオウレタン系樹脂の黄色度指数を低下させてもよい。具体的には、ポリチオール組成物からは、重合により形成されるポリマー、すなわち、ポリチオウレタン系樹脂に、後処理として紫外線を照射することにより、明澄透明のプラスチックレンズが製造できる。より具体的には、紫外線照射時のポリチオウレタン系樹脂の黄色度指数を0.11以上または0.2以上低下させてもよい。紫外線は、5分〜50分、10分〜50分、5分〜45分または10分〜45分間照射できる。ここで、光強度は、EITのUV Power PUCK光度計で測定できる。
【0049】
重合性組成物は、イソシアネート化合物、ポリチオール化合物、光活性色補正剤、触媒、離型剤などを混合および重合して、プラスチックレンズを製造し、次いで上記UVV領域に主波長を有するUVランプで紫外線を照射し、それにより、より透明なレンズを製造することにより調製される。
【0050】
このような場合、上記のように、光活性色補正剤は、上記式1で表される化合物であってよい。上記式1で表される化合物、例えば、ホスフィンオキシド系化合物は、UVA領域およびUVV領域に吸収波長を有し、したがって、初期のポリチオール組成物の色は黄色になり得る。しかし、このように調製したレンズに、UVV領域に主波長を有するUVランプ、例えば、TLランプ、ブラックランプなどを用いて、1J〜3Jの光強度で紫外線を照射したとき、本質的に黄色のホスフィンオキシド系化合物は、紫外線により分解され、それにより、固有の黄色は除去される。この現象は、フォトブリーチングと称される。
【0051】
さらに、ホスフィンオキシド系化合物では、紫外線照射による分解時に生成物としてラジカルが生成される。この時、ラジカルは、ポリチオウレタン系樹脂の分子構造でも生成され、酸素と結合する前にホスフィンオキシド系化合物の分解生成物と結合する。したがって、ホスフィンオキシド系化合物は、ポリチオウレタン系樹脂の酸化を抑制できる(図1参照)
さらに、ポリチオウレタン系樹脂の分子構造が、熱硬化後完全な基底状態ではないため、紫外線照射により励起状態に変化する場合、これは基底状態に容易に戻り、それにより、レンズの色はより透明でより明澄なものに変化し得る(図1参照)。
【0052】
必要な場合、上記方法により調製されるプラスチックレンズに、反射防止、硬度、耐摩耗性、耐薬品性、防雲性(anti-fogging)またはファッション性(fashionity)を付与するために、物理的または化学的処理、例えば、表面研磨、帯電防止処理、ハードコート処理、反射防止コート処理、染色処理および調光処理を施してもよい。
【0053】
上記のように、該態様によるプラスチックレンズ用ポリチオール組成物からは、ポリチオール化合物、イソシアネート、光活性色補正剤などといった原料を重合し、次いで、簡単な後処理、例えば、紫外線照射を行うことにより、明澄透明のプラスチックレンズが製造できる。さらに、レンズを調製する方法が、簡単かつ安価であるため、レンズは、様々なプラスチックレンズ、例えば、眼鏡レンズおよびカメラレンズを製造するために有利に用いられる。
【0054】
以下、本発明を例により詳細に説明する。以下の例は、その範囲を限定することなく、本発明をさらに例示することが意図される。
【0055】
例1
ポリチオール組成物の調製
4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンおよび5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンを含む、四官能性ポリチオール化合物の混合物を、公開特許公報平7−252207号の例1に従って調製した。ここで、混合物に含有されるポリチオール化合物は、互いに構造異性体である。ポリチオール混合物を、上記式1で表される化合物としてビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド(IGACURE819、BASF)60ppmと混合し、ポリチオール組成物を製造した。
【0056】
例2〜9および比較例1
ポリチオール組成物の調製
化合物の種類および量を以下の表1に示すように変更した以外は、例1と同様の手順を行って、ポリチオール組成物を製造した。
【0057】
【表1】
【0058】
例10
重合性組成物の調製
例1のポリチオール組成物49.3重量部、キシレンジイソシアネート50.7重量部、重合触媒としてジブチルスズクロリド0.01重量部およびZelec(登録商標)UN(酸性リン酸アルキル離型剤、Stepan Company)0.1重量部を均一に混合し、重合性組成物を製造した。
【0059】
例11〜18および比較例2
重合性組成物の調製
以下の表1に示すように、例2〜9および比較例1のポリチオール組成物を各々使用した以外は、例10と同様の手順を行って、例11〜18および比較例2の重合性組成物を製造した。
【0060】
試験例1:特性測定
例1〜9および比較例1で調製したポリチオール組成物、ならびに例10〜18および比較例2で調製した重合性組成物の特性を、以下に記載の方法に従って測定した。測定結果を以下の表2および3に示す。
【0061】
(1)b*の測定
例1〜9および比較例1で調製したポリチオール組成物各々を、内厚10mmを有する石英セルに射出し、b*を、分光測色計(CM−3700A、Minolta Co.)を用いて測定した。b*値が高ければ高いほど、液体組成物はより透明である。結果を以下の表2に示す。
【0062】
(2)黄色度指数(Y.I.)
例10〜18および比較例2で調製した重合性組成物各々を、600Paで1時間脱気し、次いで3μmのテフロン(登録商標)フィルターを通して濾過した。このように濾過した重合性組成物を、テープで組み立てられたガラス成形型に射出した。成形型を5℃/分の速度で25℃から120℃まで加熱し、重合を120℃で18時間行った。次いで、ガラス成形型中の硬化樹脂を、130℃で4時間さらに硬化させ、成形品(すなわち、プラスチックレンズ)をガラス成形型から離型した。ここで、厚さ9mmおよび直径75mmを有する円形レンズプレート成形型(circular lens plate mold)を用いて、レンズを製造した。このように製造したレンズの400nmの透過率(T400%)および450nmの透過率(T450%)を、分光測色計(CM−3700A、Minolta Co.)を用いて測定し、それにより、これらの差A(すなわち、T450%−T400%)を出した。
【0063】
硬化直後のY.I.値を、同じ装置を用いて測定し、同じレンズに、UVVの光強度が1.5JであるようにTLランプ(Philips)で10分間照射した。次いで、照射後のY.I.値を、分光測色計で測定した。結果を以下の表3に示す。
【0064】
【表2】
【0065】
【表3】
【0066】
上記表2に示すように、例1〜9のポリチオール組成物は、比較例1のポリチオール組成物よりもb*値が高く、透明な液体であることを示している。さらに、上記表3に示すように、例10〜18で得られたプラスチックレンズは、比較例2で得られたプラスチックレンズと比較して、透過率に大きな差があり、硬化後のY.I.値が高かった。しかし、Y.I.値は、UV照射後に顕著に低下した。したがって、例で製造したプラスチックレンズは、より透明でより明澄な像を形成できるため有利に用いられることが予想される。
以下において、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載した発明を付記する。
[1] 二官能性以上のポリチオール化合物、および以下の式1
【化3】
(式中、
1は、C1〜10アルキル、C1〜10アルコキシ、フェニルまたはハロゲンで置換されているC1〜10アルキルであり、
Xは、C1〜10アルキル、C1〜10アルコキシ、ハロゲンで置換されているニトロ、C1〜20ジアルキルアミノまたはシアノであり、
lおよびmは互いに独立に1または2であり、
l+m=3であり、
nは0〜3の整数であり、
lが2であるとき、R1は、互いに同一または異なってもよく、nが2または3であるとき、Xは、互いに同一または異なってもよい)
で表される化合物
を含む、ポリチオール組成物。
[2] 式1で表される前記化合物が、組成物に対して55〜30000ppmの量で用いられる、[1]に記載のポリチオール組成物。
[3] 前記二官能性以上のポリチオール化合物が、1,2−ビス[(2−メルカプトエチル)チオ]−3−メルカプトプロパン、4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、2,5−ビス(メルカプトメチル)−1,4−ジチアン、ペンタエリスリトールテトラ(メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラ(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリ(メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリ(3−メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサ(メルカプトアセテート)、ジペンタエリスリトールヘキサ(3−メルカプトプロピオネート)およびこれらの混合物からなる群から選択される、[1]に記載のポリチオール組成物。
[4] 前記ポリチオール組成物がL*a*b*色空間で表されるとき、b*が2.0以上である、[1]に記載のポリチオール組成物。
[5] 光スペクトルにおける400nmの透過率がT400(%)であり、450nmの透過率がT450(%)であるとき、以下の方程式1
[方程式1]
30<A=(T450)−(T400)<95
を満たす、[1]に記載のポリチオール組成物。
[6] イソシアネート化合物、
ポリチオール化合物、および
光活性色補正剤、
を含む、ポリチオウレタン系レンズ用重合性組成物。
[7] 前記光活性色補正剤が、以下の式1
【化4】
(式中、
1は、C1〜10アルキル、C1〜10アルコキシ、フェニルまたはハロゲンで置換されているC1〜10アルキルであり、
Xは、C1〜10アルキル、C1〜10アルコキシ、ハロゲンで置換されているニトロ、C1〜20ジアルキルアミノまたはシアノであり、
lおよびmは互いに独立に1または2であり、
l+m=3であり、
nは0〜3の整数であり、
lが2であるとき、R1は、互いに同一または異なってもよく、nが2または3であるとき、Xは、互いに同一または異なってもよい)
で表される化合物を含む、[6]に記載のポリチオウレタン系レンズ用重合性組成物。
[8] 前記重合性組成物を熱硬化させることにより形成されるポリチオウレタン系樹脂の第1の黄色度指数が、前記ポリチオウレタン系樹脂に紫外線を照射した後の第2の黄色度指数よりも高い、[6]に記載のポリチオウレタン系レンズ用重合性組成物。
[9] 前記第1の黄色度指数と前記第2の黄色度指数との差が、少なくとも0.11である、[8]に記載のポリチオウレタン系レンズ用重合性組成物。
[10] 前記第1の黄色度指数と前記第2の黄色度指数との差が、少なくとも0.2である、[9]に記載のポリチオウレタン系レンズ用重合性組成物。
[11] 紫外線が、1J〜3Jの強度でUVV領域において波長395nm〜445nmで照射される、[8]に記載のポリチオウレタン系レンズ用重合性組成物。
[12] 前記第2の黄色度指数が0.1〜5.5である、[8]に記載のポリチオウレタン系レンズ用重合性組成物。
[13] ポリチオウレタン系レンズを調製する方法であって、
(1)イソシアネート化合物、ポリチオール化合物および光活性色補正剤を含む、重合性組成物を提供すること、
(2)前記重合性組成物を熱硬化させ、ポリチオウレタン系樹脂を製造すること、ならびに
(3)前記ポリチオウレタン系樹脂に紫外線を照射し、前記ポリチオウレタン系樹脂の黄色度指数を低下させること
を含む方法。
[14] 前記工程(2)において、前記重合性組成物が、1℃/分〜10℃/分の速度で約0〜約30℃の初期温度から加熱される、[13]に記載のポリチオウレタン系レンズを調製する方法。
[15] 前記重合性組成物が、100〜150℃の温度まで加熱され、次いで5〜30時間維持される、[14]に記載のポリチオウレタン系レンズを調製する方法。
[16] 前記工程(3)において、紫外線照射後の前記ポリチオウレタン系樹脂の黄色度指数を0.11以上低下させる、[13]に記載のポリチオウレタン系レンズを調製する方法。
[17] 前記工程(3)において、紫外線が、1J〜3Jの強度でUVV領域において波長395nm〜445nmで照射される、[13]に記載のポリチオウレタン系レンズを調製する方法。
[18] 紫外線が5分〜50分間照射される、[17]に記載のポリチオウレタン系レンズを調製する方法。
図1