(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6563565
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】立体装飾物の製作法及び立体装飾物を備えた装飾用品
(51)【国際特許分類】
B44F 7/00 20060101AFI20190808BHJP
B44C 5/04 20060101ALI20190808BHJP
G03B 35/00 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
B44F7/00
B44C5/04 E
G03B35/00 Z
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-136367(P2018-136367)
(22)【出願日】2018年7月20日
【審査請求日】2018年9月12日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592239866
【氏名又は名称】永和紙器工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074251
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100066223
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 政美
(72)【発明者】
【氏名】穴穂 元伸
(72)【発明者】
【氏名】福崎 利昭
(72)【発明者】
【氏名】松野 政行
(72)【発明者】
【氏名】後藤 克宏
【審査官】
竹下 和志
(56)【参考文献】
【文献】
特開平7−61200(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3191563(JP,U)
【文献】
特開平11−5400(JP,A)
【文献】
韓国登録特許第10−1389748(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B44F 7/00
B44C 5/04
G03B 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚複製した同一写真や絵の素材をそれぞれ切り抜き、間隔をあけて何層にも重ねて配置する立体装飾物の製作法において、各層の素材をそれぞれ左右後方に湾曲させて素材の中央面部を前方に突出させると共に、重ねた各層の最先端の層に至るほど素材の曲面が次第に強くなるように配置することを特徴とする立体装飾物の製作法。
【請求項2】
前記素材の各層の左右端部側を、接着手段、係止手段、止着手段のいずれかで綴じてまとめる請求項1記載の立体装飾物の製作法。
【請求項3】
前記素材は、複数枚の複製した同一写真や絵を切り抜いた状態で透明板体に印刷され、該透明板体を湾曲して配置する請求項1記載の立体装飾物の製作法。
【請求項4】
複数枚複製した同一写真や絵の素材をそれぞれ切り取り、間隔をあけて何層にも重ねて配置し、各層の素材をそれぞれ左右後方に湾曲させて素材の中央面部を前方に突出させると共に、重ねた各層の最先端の層に至るほど素材の曲面が次第に強くなるように配置し、各素材の左右端部側を夫々まとめた立体装飾物を備える装飾用品であって、装飾用品の一部に収納凹部を形成し、該収納凹部に前記立体装飾物を収納するように構成したことを特徴とする立体装飾物を備えた装飾用品。
【請求項5】
前記装飾用品は収納スペースを備えた装飾用品とし、前記収納凹部は独立した装飾物収納体に凹設され、該収納凹部に収納した前記立体装飾物Pを該装飾用品の収納スペースに装飾物収納体ごと収納すると共に、該装飾物収納体の裏側に物品を収納する収納部を形成した請求項4記載の立体装飾物を備えた装飾用品。
【請求項6】
前記装飾用品は、丸背状に形成される背板を中央に介して底板と蓋板が連接されると共に、これら底板、背板、蓋板の内側に重ねて強化する一部又は全体が透明な合成樹脂製の補強板を有する丸背ブック型ケースとして構成され、該装飾用品の内部に形成された前記収納スペース内に、前記装飾物収納体ごと前記立体装飾物を収納すると共に、蓋板に重ねた透明な補強板の内側に前記立体装飾物を配置し、蓋板に形成した開口窓部から透明な補強板を通して前記立体装飾物が見えるように構成した請求項5記載の立体装飾物を備えた装飾用品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面的な写真や絵を立体的な装飾物にすることが可能な立体装飾物の製作法及び立体装飾物を備えた装飾用品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、写真や絵を立体的に見えるようにする立体装飾物の製作法が特許文献1や特許文献2などに記載されている。
【0003】
これらの立体装飾物は、いずれも、写真や絵を切り取った複数枚の素材を、間隔をあけて何層にも重ねるように配置するものである。このように、素材の間隔をあけて何層にも重ねることで、素材の側面に、重なり合った素材の隙間と影が見えるようになる。この結果、遠近感が生じ、立体的に見えるようになるというものである。
【0004】
一方、当出願人は先に、紙材にて形成するブック型ケースの強度を高めることができる丸背ブック型ケースを発明している(特許文献3)。この丸背ブック型ケースは、ケースの内側に配置する補強板の撓み形状で丸くなった背板ごとブック型ケースの強度を高めるものである。この強度により、各種の装飾をブック型ケースに施すことが可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7-61200号公報
【特許文献2】実公昭51-52554号公報
【特許文献3】特許第5970504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1や特許文献2に記載の立体装飾物の製作法では、重ねた素材の間隔を広くするほど立体感が増加し、素材の間隔が狭くなるほど立体感が失われてしまう性質がある。したがって、この立体装飾物は、必然的に厚みのある装飾物にならざるを得ず、比較的大型の物品を装飾することは可能でも、小物用品を装飾することが困難な構造になっていた。
【0007】
そのため、ブック型のケースのような小物用品に、従来の立体装飾物を用いると、ブック型ケースの内部が全て立体装飾物で占められてしまうことになり、ケースとしての用途は果たせなくなる。したがって、この状態ではケースの装飾というより、ケース形の装飾品にならざるを得ない。このような状況から、ブック型のケースのような小物用品を装飾することが可能な立体装飾物の提供が望まれていた。
【0008】
そこで本発明は、上述の課題を解消すべく創出されたもので、各層の間隔が狭くても立体装飾的な効果が得られ、これまで困難とされてきた小物類の装飾を可能にする立体装飾物の製作法及び立体装飾物を備えた装飾用品の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成すべく本発明における第1の手段は、複数枚複製した同一写真や絵の素材1をそれぞれ切り抜き、間隔をあけて何層にも重ねて配置する立体装飾物の製作法において、各層の素材1をそれぞれ左右後方に湾曲させて素材1の中央面部1Aを前方に突出させると共に、重ねた各層の最先端の層に至るほど素材1の曲面が次第に強くなるように配置する製作法にある。
【0010】
第2の手段は、前記素材1の各層の左右端部側1Bを、接着手段、係止手段、止着手段のいずれかで綴じてまとめる製作法である。
【0011】
第3の手段において、前記素材1は、複数枚の複製した同一写真や絵を切り抜いた状態で透明板体2に印刷され、該透明板体2を湾曲して配置する製作法とする。
【0012】
第4の手段は、複数枚複製した同一写真や絵の素材1をそれぞれ切り取り、間隔をあけて何層にも重ねて配置し、各層の素材1をそれぞれ左右後方に湾曲させて素材1の中央面部1Aを前方に突出させると共に、重ねた各層の最先端の層に至るほど素材1の曲面が次第に強くなるように配置し、各素材1の左右端部側1Bを夫々まとめた立体装飾物Pを備える装飾用品Qであって、装飾用品Qの一部に収納凹部3を形成し、該収納凹部3に前記立体装飾物Pを収納するように構成した装飾用品Qにある。
【0013】
第5の手段の前記装飾用品Qは収納スペースQ1を備えた装飾用品Qとし、前記収納凹部3は独立した装飾物収納体Rに凹設され、該収納凹部3に収納した前記立体装飾物Pを該装飾用品Qの収納スペースQ1に装飾物収納体Rごと収納すると共に、該装飾物収納体Rの裏側に物品Sを収納する収納部Q2を形成したことにある。
【0014】
第6の手段の前記装飾用品Qは、丸背状に形成される背板11を中央に介して底板12と蓋板13が連接されると共に、これら底板12、背板11、蓋板13の内側に重ねて強化する一部又は全体が透明な合成樹脂製の補強板10を有する丸背ブック型ケースとして構成され、該装飾用品Qの内部に形成された前記収納スペースQ1内に、前記装飾物収納体Rごと前記立体装飾物Pを収納すると共に、蓋板13に重ねた透明な補強板10の内側に前記立体装飾物Pを配置し、蓋板13に形成した開口窓部13Aから透明な補強板10を通して前記立体装飾物Pが見えるように構成したものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の請求項1乃至3によると、各層の素材1をそれぞれ左右後方に湾曲させて素材1の中央面部1Aを前方に突出させると共に、重ねた各層の最先端の層に至るほど素材1の曲面が次第に強くなるように配置することにより、各層2の間隔が狭くなっても立体的な効果が得られ、これまで困難とされてきた小物類の装飾が可能になった。この結果、従来では困難であった小物用品の装飾も可能になり、立体装飾物Pの使用範囲を広げることができる。
【0016】
本発明の請求項4のごとく、装飾用品Qの一部に収納凹部3を形成し、該収納凹部3に前記立体装飾物Pを収納することで装飾用品Qを立体装飾することができる。したがって、どのような装飾用品Qでも収納凹部3を形成するだけで、立体装飾物Pを備えた装飾用品Qを容易に提供することが可能になる。
【0017】
請求項5のように、装飾用品Qは収納スペースQ1を備えた装飾用品Qとし、前記収納凹部3は独立した装飾物収納体Rに凹設され、該装飾用品Qの収納スペースQ1に装飾物収納体Rごと立体装飾物Pを収納することで、立体装飾物Pの飾り付け作業が極めて容易になる。しかも、装飾物収納体Rの裏側に物品Sを収納する収納部Q2を形成しているので収納容器として好適な装飾用品Qを提供することが可能である。
【0018】
請求項6のごとく、丸背ブック型ケースの装飾用品Qに立体装飾物Pを収納することで、物品Sの収納と収納ケースの立体装飾とを同時に備えたこれまでにないブック型ケースの装飾用品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明製作法の概念を示し、(イ)は分解斜視図、(ロ)は平面図である。
【
図2】本発明の立体装飾物を収納した装飾用品の一実施例を示す斜視図である。
【
図6】本発明素材を綴じる手段の一実施例を示す分解斜視図である。
【
図9】本発明素材を綴じる手段の他の実施例を示す正面図である。
【
図11】本発明の素材の他の実施例を示す分解斜視図である。
【
図12】本発明装飾片を追加する実施例を示し、(イ)は斜視図、(ロ)は使用断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施例を説明する。本発明は、複数枚複製した同一写真や絵の素材1をそれぞれ切り抜き、これらの素材1を何層にも間隔をあけて配置する立体装飾物を製作するものである。
【0021】
このような立体装飾物の製作法は従来からある手法で、重ねた層の一番奥に素材1の全体が配置され、層の先端に至るほど小さく切り抜いた素材1を順次間隔をあけて重ねていくものである。
【0022】
本発明では、このような各層の素材1をそれぞれ左右後方に湾曲させて素材1の中央面部1Aを前方に突出させている(
図1(イ)参照)。更に、重ねた各層の最先端の層に至るほど素材1の曲面が次第に強くなるように配置している(
図1(ロ)参照)。
【0023】
このように素材1の曲面が次第に強くなるように湾曲させることで、重ねた素材1全体に統一感が得られる。しかも、中央面部1Aが湾曲していることから、各素材1の間隔が狭い状態でも十分な立体感が得られる。
【0024】
各素材1の左右端部側1Bを夫々まとめて素材1全体を一体化することも可能である。このとき、各層の素材1の左右端部側1Bをまとめる手段は任意に選択することができる。例えば、接着手段、係止手段、止着手段のいずれかで綴じることで、複数の素材1を一体化することができる。接着手段は、左右端部側1Bを接着剤で接着する手段である。
【0025】
また、左右端部側1Bを差し込む切欠部1Dなどを形成し、この切欠部1Dに左右端部側1Bから更に突出させた係止突起1Cを差し込んで係止する手段がある(
図6乃至
図8参照)。図示例では、切欠部1Dの位置を複数配置しておき、各素材1がそれぞれ係止できるように形成している(
図7参照)。この切欠部1Dに各係止突起1Cを差し込んで素材1を固定すると、平面状の各素材1が屈曲するように構成している(
図8参照)。
【0026】
更に、ステープラー等の止着具で左右端部側1Bを止着する手段などもある(
図9、
図10参照)。この場合、各素材1の左右端部側1Bを揃えて重ね、これを止着することで、各素材1が屈曲するように構成している(
図10参照)。また、予め屈曲した素材1を止着することも可能である。もちろん、前述した各手段を組み合わせることも可能である。
【0027】
立体装飾物Pの各素材1は複数枚の複製した同一写真や絵を切り抜いて形成しているが、この他、同一写真や絵を切り抜いた状態で透明板体2に印刷しても良い(
図11参照)。この透明板体2を素材1として使用した場合も、それぞれの透明板体2を湾曲して中央面部1Aを前方に突出させて配置する。また、重ねた各層の最先端の層に至る透明板体2ほど素材1の曲面が次第に強くなるように湾曲するものである。図示例では、後述する装飾物収納体Rに収納凹部3を形成し、この収納凹部3に設けた切欠部1Dに透明板体2の係止突起1Cを係止させ、各素材1の左右端部側1Bを夫々まとめるように構成している。
【0028】
このような立体装飾物Pを利用して各種装飾用品Qを飾り付けることができる。例えば、装飾用品Qの一部に収納凹部3を形成し、この収納凹部3に立体装飾物Pを収納することが可能である(図示せず)。この場合、立体装飾物Pを収納せしめる収納凹部3を形成可能な装飾用品Qであれば、どのような装飾用品Qでも立体装飾物Pを利用することが可能になる。
【0029】
また、立体装飾物Pを収納凹部3に収納する手段として、独立した装飾物収納体Rに収納凹部3を凹設することも可能である(
図3参照)。図示の装飾物収納体Rは、薄い箱体状を成している。したがって、装飾物収納体Rの収納凹部3に立体装飾物Pを収納すると、装飾物収納体Rごと立体装飾物Pを任意の位置に移動することが可能になる。また、この装飾物収納体Rは、立体装飾物Pを収納可能であればどのような形状でも良いので、装飾物収納体Rの形状は任意に変更することができる。
【0030】
一方、図示の装飾用品Qは、内部に収納スペースQ1を備えた装飾用品Qを構成している(
図3参照)。そして、この収納スペースQ1に装飾物収納体Rごと立体装飾物Pを収納する(
図2参照)。更に、装飾物収納体Rの裏側に、物品Sを収納する収納部Q2を形成したものである(
図4参照)。
【0031】
図示の装飾用品Qは、丸背ブック型ケースとして構成されている(
図2参照)。すなわち、丸背状に形成される背板11を中央に介して底板12と蓋板13が連接され、これら底板12、背板11、蓋板13に重ねて内側から強化する透明な合成樹脂製の補強板10とを備えた構成である(
図5参照)。
【0032】
そして、蓋板13に重ねた補強板10の内側に装飾物収納体Rを配置すると共に、蓋板13に形成した開口窓部13Aから装飾物収納体R内の立体装飾物Pが見えるように構成している(
図2参照)。図示の補強板10は、全体が透明な板で形成しているが、補強板10の透明部分から立体装飾物Pが見えるようにするため、この補強板10は、この開口窓部13Aの部分のみを透明にすることも可能である。
【0033】
更に、この丸背ブック型ケースの収納スペースQ1に、物品Sを収納し、この物品Sと補強板10との間に装飾物収納体Rを設置している(
図4参照)。すなわち、丸背ブック型ケースの内部全体が収納スペースQ1となり、物品Sを収納している部分は収納部Q2となっている。また、図示の装飾物収納体Rは物品S上に載置しているが、この装飾物収納体Rを収納スペースQ1内に固定することも可能である。
【0034】
また、立体装飾物Pの素材1に、装飾片4を追加することも可能である(
図12参照)。この装飾片4は、任意の素材1表面に装着する紙材や合成樹脂材にて形成された装飾部材である。図示の装飾片4は、周囲縁から係止突起4Aを突設し(同図(イ)参照)、素材1に形成した切欠部4Bに係止するものである(同図(ロ)参照)。
【0035】
尚、本発明の構成は図示例に限られるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲での設計変更は自由に行えるものである。
【符号の説明】
【0036】
P 立体装飾物
Q 装飾用品
Q1 収納スペース
R 装飾物収納体
S 物品
1 素材
1A 中央面部
1B 左右端部側
1C 係止突起
1D 切欠部
1E 止着具
2 透明板体
3 収納凹部
4 装飾片
4A 係止突起
4B 切欠部
10 補強板
11 背板
12 底板
13 蓋板
13A 開口窓部
【要約】
【課題】間隔が狭くても立体装飾的な効果が得られ、これまで困難とされてきた小物類の装飾を可能にする立体装飾物の製作法を提供する。
【解決手段】複数枚複製した同一写真や絵の素材1をそれぞれ切り抜く。各素材1の間隔をあけて何層にも重ねて配置する。各層の素材1をそれぞれ左右後方に湾曲させて素材1の中央面部1Aを前方に突出させる。重ねた各層の最先端の層に至るほど素材1の曲面が次第に強くなるように配置する。各素材1の左右端部側1Bを夫々まとめる。
【選択図】
図1