(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1〜4のいずれか1項に記載の蓋体と、前記蓋体によって塞がれる開口部を有する容器本体とを備える包装容器であって、前記蓋体と前記容器本体とを密着嵌合することができる、電子レンジ加熱食品を包装する包装容器。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態について以下説明する。但し、本発明の実施形態は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0013】
〔蓋体の素材〕
本実施形態の蓋体は、スチレン系樹脂組成物からなる二軸延伸シートを成形したものである。以下、蓋体の素材について説明する。
【0014】
(スチレン系樹脂組成物)
本実施形態におけるスチレン系樹脂組成物は、スチレン−メタクリル酸共重合体とゴム強化スチレン系樹脂を含有する。スチレン系樹脂組成物はゴム成分を含有し、当該ゴム成分は専らゴム強化スチレン系樹脂に起因する。スチレン系樹脂組成物中のゴム成分の含有量は0.05〜0.35質量%である。ゴム成分の含有量が0.05質量%未満であると、スチレン系樹脂組成物からなる二軸延伸シートは、レーザー光線を透過してしまい、レーザー光線による穿孔が困難となる。一方、ゴム成分の含有量が0.05質量%以上であれば、スチレン系樹脂組成物からなる二軸延伸シートは、レーザー光線を吸収し、レーザー光線は熱に変換されるため、短時間で穿孔される。ただし、ゴム成分の含有量が0.35質量%を超えると、二軸延伸シートの透明性が低下するため、好ましくない。
【0015】
スチレン系樹脂組成物中のゴム成分の含有量は、一塩化ヨウ素法によって測定される。すなわち、スチレン系樹脂組成物をクロロホルムに溶解し、一塩化ヨウ素を加えてゴム成分中の二重結合と反応させた後、ヨウ化カリウムを加え、残存する一塩化ヨウ素をヨウ素に変え、チオ硫酸ナトリウムで逆滴定することによって測定される。
【0016】
スチレン系樹脂組成物は、ビカット軟化温度が106〜132℃の範囲であることが好ましい。ビカット軟化温度が106℃未満であると、シートの耐熱性が不足し、電子レンジ加熱時に変形が起こり易くなる。ビカット軟化温度は好ましくは112℃以上、さらに好ましくは116℃以上である。一方、ビカット軟化温度が130℃を超えると、製膜時および容器成形時の加工性が低下するおそれがある。ビカット軟化温度は好ましくは128℃以下である。なお、ビカット軟化温度は、JIS K−7206に準拠して、昇温速度50℃/hr、試験荷重50Nの条件での測定値である。
【0017】
さらに、スチレン系樹脂組成物には、発明の効果を損なわない限りにおいて、用途に応じて各種添加剤を配合してもよい。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、ゲル化防止剤などが挙げられる。
【0018】
(スチレン−メタクリル酸共重合体)
本実施形態におけるスチレン−メタクリル酸共重合体は、スチレンとメタクリル酸とを共重合して得られる共重合体である。スチレンとメタクリル酸の共重合比率を種々設定することにより、所望する耐熱性と機械的強度等を有する共重合体を得ることができる。耐熱性、機械的強度、シートにしたときの透明性の観点から、メタクリル酸単量体単位の含有量は3〜16質量%とすることが好ましい。メタクリル酸単量体単位の含有量が3質量%未満であると、耐熱性が不足し、電子レンジ加熱時に孔があいたり、変形が起こり易くなる。一方、メタクリル酸単量体単位の含有量が16質量%を超えると、製膜時の流動性の低下やゲル発生による外観低下が発生し易くなる。
【0019】
スチレン−メタクリル酸共重合体は、必要に応じて、発明の効果を損なわない限りにおいて、スチレンとメタクリル酸以外の他のモノマーを適宜、共重合させてもよい。他のモノマーの含有量は10質量%以下であることが好ましく、より好ましくは5%質量以下、さらに好ましくは3質量%以下である。他のモノマーの含有量が10質量%を超えると、スチレンまたはメタクリル酸の比率が低下し、十分な透明性、機械的強度及び耐熱性が得られない場合がある。
【0020】
スチレン−メタクリル酸共重合体の重量平均分子量(Mw)は、12万〜25万であることが好ましく、より好ましくは14万〜22万、さらに好ましくは15万〜20万である。スチレン−メタクリル酸共重合体の重量平均分子量が12万未満であると、シートのドローダウン、ネックインが発生するなどの製膜性の低下、延伸配向の不足、容器成形時の熱板接触による表面荒れが発生し易くなる。一方、スチレン−メタクリル酸共重合体の重量平均分子量が25万を超えると、流動性低下による製膜時の厚みムラ、ダイラインなどのシート外観低下、容器成形時の賦型不良などが発生し易くなる。
【0021】
また、スチレン−メタクリル酸共重合体の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比Mw/Mnは、2.0〜3.0であることが好ましく、より好ましくは2.2〜2.8である。Mw/Mnが3.0を超えると、容器成形時の熱板接触による表面荒れが発生し易くなる。一方、Mw/Mnが2.0未満であると、流動性低下による製膜時の厚みムラや容器成形時の賦型不良が発生し易くなる。また、Z平均分子量(Mz)とMwとの比Mz/Mwは、1.5〜2.0であることが好ましく、より好ましくは1.6〜1.9である。Mz/Mwが1.5未満であると、シートのドローダウン、ネックインが発生するなどの製膜性の低下、延伸配向の不足が発生し易くなる。一方、Mz/Mwが2.0を超えると、流動性低下による製膜時の厚みムラやダイラインなどのシート外観低下が発生し易くなる。
【0022】
なお、上述の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)およびZ平均分子量(Mz)は、GPC測定において、以下の方法にて単分散ポリスチレンの溶出曲線より各溶出時間における分子量を算出し、ポリスチレン換算の分子量として算出したものである。
機種:昭和電工株式会社製Shodex GPC−101
カラム:ポリマーラボラトリーズ社製 PLgel 10μm MIXED−B
移動相:テトラヒドロフラン
試料濃度:0.2質量%
温度:オーブン40℃、注入口35℃、検出器35℃
検出器:示差屈折計
【0023】
スチレン−メタクリル酸共重合体の重合方法としては、国際公開第2017/122775号等に記載の公知の方法を採用できる。重合溶媒としては例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼンおよびキシレン等のアルキルベンゼン類、アセトンやメチルエチルケトン等のケトン類、ヘキサンやシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類が使用できる。
【0024】
スチレン−メタクリル酸共重合体の重合時には、必要に応じて重合開始剤、連鎖移動剤を使用することができる。重合開始剤としては、有機過酸化物を使用することができる。有機過酸化物の具体例としては、過酸化ベンゾイル、t−ブチルパーオキシベンゾネート、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ポリエーテルテトラキス(t−ブチルパーオキシカーボネート)、エチル−3,3−ジ(t−ブチルパーオキシ)ブチレート、t−ブチルパーオキシイソブチレート等が挙げられる。連鎖移動剤の具体例としては、脂肪族メルカプタン、芳香族メルカプタン、ペンタフェニルエタン、α−メチルスチレンダイマーおよびテルピノーレン等が挙げられる。
【0025】
(ゴム強化スチレン系樹脂)
本実施形態におけるゴム強化スチレン系樹脂は、粒子状のゴム成分が含まれるスチレン系樹脂であればよく、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS樹脂)ハイインパクト・ポリスチレン樹脂(HIPS)、メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合体(MBS樹脂)などが挙げられる。これらの中で、好ましいゴム強化スチレン系樹脂の例としては、HIPSが挙げられ、国際公開第2017/122775号に記載の公知の方法で得ることができる。
【0026】
ゴム成分としては、例えば、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリイソプレン、ブタジエン−イソプレン共重合体などが挙げられる。特に、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体として含まれていることが好ましい。
【0027】
ゴム強化スチレン系樹脂のゴム成分の含有量は、スチレン系樹脂組成物におけるゴム成分の含有量を考慮して、例えば、5.0〜12.0質量%であることが好ましい。ゴム強化スチレン系樹脂中のゴム成分の含有量は、スチレン系樹脂組成物中のゴム成分の含有量と同様に、一塩化ヨウ素法によって測定される。
【0028】
(二軸延伸シート)
本実施形態における二軸延伸シートは、次のような方法で製造することができる。まず、前記スチレン系樹脂組成物を押出機により溶融混練して、ダイ(特にTダイ)から未延伸シートを押し出す。次に、当該未延伸シートを縦方向(シート流れ方向、MD;Machine Direction)および横方向(シート流れ方向に垂直な方向、TD;Transverse Direction)の二軸方向に逐次又は同時で延伸することによって、二軸延伸シートが製造される。
【0029】
二軸延伸シートの厚みは、シートおよび包装容器の強度、特に剛性を確保するために、好ましくは0.1mm以上であり、より好ましくは0.15mm以上、さらに好ましくは0.2mm以上である。一方、賦型性および経済性の観点から、二軸延伸シートの厚みは、好ましくは0.7mm以下であり、より好ましくは0.6mm以下、さらに好ましくは0.5mm以下である。
【0030】
二軸延伸シートの縦方向および横方向の延伸倍率はいずれも、1.8〜3.2倍の範囲にあることが好ましい。延伸倍率が1.8倍未満では、シートの耐折性が低下し易い。一方、延伸倍率が3.2倍を超えると、熱成形時の収縮率が大きすぎることにより賦形性が損なわれるおそれがある。
【0031】
二軸延伸シート中のゴム成分の平均ゴム粒子径は、1〜9μmである。平均ゴム粒子径が1μm未満であると、二軸延伸シートは、レーザーを吸収せず、透過してしまう。その結果、レーザー光線による穿孔が困難となる。平均ゴム粒子径が1μm以上であれば、二軸延伸シートは、レーザー光線を吸収し、レーザー光線が熱に変換されるため、穿孔を容易に行うことができる。一方、平均ゴム粒子径が9μmを超えると、二軸延伸シートの透明性が低下するため、好ましくない。
【0032】
二軸延伸シート中のゴム成分の平均ゴム粒子径は、超薄切片法にて観察面がシート平面と平行方向となるように切削し、四酸化オスミウム(OsO
4)でゴム成分を染色した後、透過型顕微鏡にて粒子100個の粒子の長径を測定し、以下の式により算出した値である。ここで、長径とは、粒子の外周の2点を結ぶ直線のうち最大の長さのことである。
平均ゴム粒子径=Σni(Di)
4/Σni(Di)
3
(ni:測定個数、Di:測定した粒子径(長径))
【0033】
〔包装容器、蓋体、容器本体〕
図1は、包装容器の一例の形状を示す斜視図である。上の図は蓋体1であり、下の図は容器本体2である。蓋体1は、蓋体嵌合部11と、該蓋体嵌合部11の内側に位置する天面部12とを有している。容器本体2は、本体嵌合部21と円形の開口部22とを有する丼形状をしている。蓋体嵌合部11は、容器本体2の上部内側の本体嵌合部21と嵌合することができる。本実施形態の包装容器は、蓋体1を容器本体2の開口部22を塞ぐように上方から被せながら、容器本体2の本体嵌合部21に嵌合して、内容物を包装する内嵌合方式のものである。
【0034】
蓋体1および容器本体2の成形には、通常、公知の真空成形法、圧空成形法、真空圧空成形法、プレス成形法等が使用される。真空成形法、圧空成形法または真空圧空成形法において、シートの加熱手段として熱板を用いる方法を熱板成形法ということがある。また、これらの成形方法に限らず、射出成形やブロー成形によって蓋体1や容器本体2を成形してもよい。
【0035】
天面部12には複数の微細孔3が形成されている。
図2は
図1の蓋体の平面図であり、
図3は蓋体に形成された微細孔群のうちの一の微細孔の拡大平面図である。微細孔3の形状は、円形や楕円が挙げられるがこれらに限定されない。
【0036】
微細孔3を円形とした場合、排気効率と微小な昆虫等の異物の侵入を規制する観点から直径は、1.0mm以下であり、0.4〜0.65mmが好ましい。微細孔3を楕円形とした場合、同様の観点から、短径Dが0.40〜0.55mmであり、長径Lが短径Dの1.5〜1.8倍の長さである。さらに、短径Dが0.45〜0.5mmであって、長径Lが短径Dの1.6〜1.7倍の長さが好ましい。ここで、長径とは、微細孔の平面図において、外周の2点を結ぶ直線のうち最大の長さのことである。ここで短径とは、微細孔の平面図において、長径の直線の中心点を通り、長径の直線と直角の直線であって、外周の2点を結ぶ直線の長さのことである。楕円形とは、2定点からの距離の和が一定となる点からなる形状であるが、楕円形の2定点の位置や距離の和は特に限定されない。本実施形態では、微細孔の形状は、前記楕円形の定義の形状に厳密に限定されるわけではなく、楕円形に類似した外側に膨らんだ連続した曲線で囲まれた形状であればよい。例えば、左右非対称の卵型の形状であってもよい。
【0037】
また、微細孔3の個数は、電子レンジの出力や内容物の状況に応じて水蒸気発生量を勘案して、適宜決めることができる。
【0038】
蓋体1はスチレン系樹脂組成物からなる二軸延伸シートを成形したものであり、撓むことがある。微細孔3が円形や楕円形であっても、極薄い合成樹脂シートを使用した場合は、
図5に示したように、撓みにより微細孔3が拡張し、虫が容器内に侵入する虞がある。そこで、
図3および
図4に示したように、微細孔3の外周部にシートより厚い環状膨出部31を形成することによって微細孔3全体の剛性を高め、微細孔3の変形を阻止することができる。
【0039】
微細孔3の穿孔方法は、レーザー光を照射して穿孔する方法(レーザー法)が好ましい。レーザー法を使用すると、合成樹脂シートを溶融して穿孔するため、溶けた樹脂が自動的に孔の外周部に凝集して環状膨出部31が形成される。また、楕円形の微細孔3を穿孔するには、レーザー光を孔の長径方向に直線状に照射するだけでよく、短時間で所望の排気用の細孔を穿孔でき、生産性に優れている。そのため、環状膨出部31の形成にはレーザー法を使用するのが効果的である。
【0040】
レーザー光線の種類として、炭酸ガスレーザー光線、YAGレーザー光線、半導体レーザー光線、アルゴンレーザー光線等がある。その際、波長領域9〜11μmの炭酸ガスレーザー光線を用いることが好ましい。特に、10〜200Wの出力の炭酸ガスレーザー光線による照射が好ましい。炭酸ガスレーザー光線の出力範囲が、10Wよりも低出力である場合には、作業性が悪く、また、樹脂を貫通できないことがある一方、200Wを超えると過負荷な状態となり、所望の径の穿孔を達成できないことがある。
【0041】
また、レーザー光線の移送速度については、樹脂表面に5〜30000mm/sの移送速度で照射光線を動作することで行われるものであれば、穿孔を円滑に形成することができる。レーザー光線の移動速度が5mm/sより低速になると、作業性が悪く、また、過剰な照射となることがあり、好ましくない。一方、レーザー光線の移動速度が30000mm/sを超える場合には、所望の径の穿孔を達成できない場合がある。
【0042】
図4の微細孔3の外周部においては、環状膨出部31を天面部12の上側および下側の両側に形成したが、環状膨出部31を形成する位置は天面部12の上側だけであっても下側だけであっても構わない。また、
図4に示すとおり、微細孔3の断面の下方から上方(容器の内部から外部)の方向へ進むに従って、孔径が拡大する構造が好ましい。このような構造にすることにより、排出された水蒸気は横方向にも拡散され、上部周辺の水蒸気によるやけどを防止することができる。また、環状膨出部31の厚さTの周囲の合成樹脂シート12aの厚さtに対する比率は、限定されるものではないが、1.4〜2.0倍の範囲とすることが好ましい(
図4参照)。
【0043】
蓋体1に微細孔3を形成するとき、微細孔3を形成する位置は蓋体1の天面部12の水平面部であっても、蓋体1の側面等の傾斜面部や曲面部であってもよい。
【0044】
食品を収納した包装容器においては、包装容器の中央部に容器本体2から蓋体1まで全体に一周させて帯封を掛けることがある。この場合、帯封によって微細孔3が塞がれるのを防止するため、帯封が微細孔3に直接掛からないように、微細孔3の周囲に微細孔3の位置よりも高い凸部を形成してもよい。また、微細孔3の位置を他の天面部12より低くした凹部を設けてもよい。
【0045】
〔容器本体〕
容器本体2の一例を
図1に示す。容器本体2の形状は、
図1に示す形状が挙げられるが、特に限定されない。開口部22の形状も、円形、楕円形、矩形、三角形、五角形、六角形等、種々の形状にすることが可能であり、特に限定されない。
【0046】
本実施形態の容器本体2の素材は、蓋体との組み合わせにおいて、同一種類としても異なる種類としてもよい。容器本体は電子レンジによる加熱に対応するため、熱伝導を考慮して発泡ポリスチレン製や紙製とすることもできる。使用する樹脂の種類は用途、内容物、包装対象により適宜選択される。
【0047】
本実施形態の容器本体2および蓋体1は、耐熱性および透明性に優れ、レーザー光線照射により、短時間で所望の排気用の細孔を穿孔することができる。本実施形態の容器本体2および蓋体1は、電子レンジ加熱食品を包装する包装容器として好適に使用することができる。
【実施例】
【0048】
以下に実施例と比較例を用いて、本発明の実施の形態をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0049】
(1)スチレン−メタクリル酸共重合体
(a)スチレン−メタクリル酸共重合体(A−1)
スチレン−メタクリル酸共重合体(A−1)は、以下の条件で作製した。
内容量200Lのジャケット、攪拌機付きオートクレーブに純水90kg、ポリビ二ルアルコール100gを加え、120rpmで攪拌した。続いてスチレン72.0kg、メタクリル酸8.0kgおよびt−ブチルパーオキサイド20gを仕込み、オートクレーブを密閉して、110℃に昇温して5時間重合を行った(ステップ1)。さらに140℃で3時間保持し、重合を完結させた(ステップ2)。得られたビーズを洗浄、脱水、乾燥した後、押出し、表1に記載のペレット状のスチレン−メタクリル酸共重合体(A−1)を得た。これを熱分解ガスクロマトグラフィーを用いて分析した結果、スチレン単量体単位/メタクリル酸単量体単位の質量比は90/10であった。
【0050】
(b)スチレン−メタクリル酸共重合体(A−2〜A−5)
スチレン−メタクリル酸共重合体A−1の各種原料仕込み量を調整し、スチレン−メタクリル酸共重合体(A−1)と同様にして、表1に記載の各種スチレン−メタクリル酸共重合体(A−2〜A−5)を得た。
【0051】
(2)ゴム強化スチレン系樹脂
(a)ゴム強化スチレン系樹脂(B−1)
ゴム強化スチレン系樹脂(B−1)は、以下の条件で作製した。
ゴム状重合体として5.5質量%のローシスポリブタジエンゴム(旭化成株式会社製、商品名ジエン55AS)を使用し、89.5質量%のスチレンと、溶剤として5.0質量%のエチルベンゼンに溶解して重合原料とした。また、ゴムの酸化防止剤(BASFジャパン株式会社製、商品名イルガノックス1076)0.1質量部を添加した。この重合原料を翼径0.285mの錨型撹拌翼を備えた14リットルのジャケット付き反応器(R−01)に12.5kg/hrで供給した。反応温度は140℃、回転数は2.17sec
−1で反応させた。得られた樹脂液を直列に配置した2基の内容積21リットルのジャケット付きプラグフロー型反応器に導入した。1基目のプラグフロー型反応器(R−02)では、反応温度が樹脂液の流れ方向に120〜140℃、2基目のプラグフロー型反応器(R−03)では、反応温度が樹脂液の流れ方向に130〜160℃の勾配を持つようにジャケット温度を調整した。R−01出口での樹脂率は25%、R−02出口での樹脂率は50%であった。得られた樹脂液は230℃に加熱後、真空度5torrの脱揮槽に送られ、未反応モノマー、溶剤を分離・回収した。その後、脱揮槽からギヤポンプで抜き出し、ダイプレートを通してストランドとした後、水槽にて冷却し、ペレタイザーを通してペレット化し、表1に記載のゴム強化スチレン系樹脂(B−1)(HIPS)を得た。得られたゴム強化スチレン系樹脂ポリスチレン(B−1)中のゴム成分含有量は8.0質量%、ゴム成分の平均ゴム粒子径は2.0μmであった。
【0052】
(b)ゴム強化スチレン系樹脂(B−2〜B−7)
各種原料仕込み量を調整し、ゴム強化スチレン系樹脂(B−1)と同様にして、表1に記載の各種ゴム強化スチレン系樹脂(B−2〜B−7)を得た。
【0053】
(3)スチレン系樹脂組成物、二軸延伸シート及び蓋体
(実施例1)
実施例1のスチレン系樹脂組成物、二軸延伸シート及び蓋体は、以下の条件で作製した。
スチレン−メタクリル酸共重合体(A−1)99質量%とゴム強化スチレン系樹脂(B−1)1.0質量%をハンドブレンドした。ペレット押出機(真空ベント付き二軸同方向押出機 TEM35B(株式会社 東芝製))を用い、押出温度230℃、回転数250rpm、真空ベントのゲージ圧力−760mmHgにてダイプレートを通してストランドとした。その後、水槽にて冷却したのち、ペレタイザーを通してペレット化し、スチレン系樹脂組成物を得た。なお、真空ベントのゲージ圧力は、常圧に対する差圧値として示した。上記樹脂組成物をシート押出機(Tダイ幅500mm、リップ開度1.5mm、φ40mmのエキストルーダー(田辺プラスチックス機械株式会社製))を用い、押出温度230℃、吐出量20kg/hにて未延伸シートを得た。このシートを(ビカット軟化温度+30)℃に予熱し、バッチ式二軸延伸機(東洋精機株式会社製)を用いて、歪み速度0.1sec-
1でMD2.4倍、TD2.4倍(面倍率5.8倍)に延伸し、表1に記載の二軸延伸シートを得た。この二軸延伸シートを熱板成形することによって、
図1に記載した形状の蓋体を得た。蓋体の肉厚は、0.3mmであった。
【0054】
(実施例2〜8、比較例1〜4)
スチレン−メタクリル酸共重合体およびゴム強化スチレン系樹脂の配合量等を調整し、実施例1と同様にして、表1に記載のスチレン系樹脂組成物、二軸延伸シート及び蓋体(実施例2〜8、比較例1〜4)を得た。いずれの蓋体の肉厚も0.3mmであった。
【0055】
(4)水蒸気排出試験用蓋体、容器本体の製造
(実施例9)
水蒸気排出試験用に、実施例1にて作製した蓋体の天面部に、レーザー光線照射装置を用いて、短径が0.44〜0.50mmで長径が0.79〜0.85mmの楕円形の微細孔を80個形成した。短径に対する長径の比は約1.63〜1.79倍にした。容器本体は、耐熱発泡ポリスチレン製のシート材(ポリプロピレンフィルム被着品)を使用した。これを真空成形により、
図1に記載した形状の、横断面が円形の鉢状(椀状またはボウル状)の容器本体を作製した。
【0056】
<性能評価>
実施例1〜8、比較例1〜4で得られた二軸延伸シート等について、以下の方法にて測定、評価を行った。結果を表1に記載した。
【0057】
(1)スチレン系樹脂組成物の耐熱性
スチレン系樹脂組成物の耐熱性は、ビカット軟化温度により、評価した。ビカット軟化温度は、JIS K−7206に準拠して、昇温速度50℃/hr、試験荷重50Nの条件で測定した。
【0058】
(2)蓋体の穿孔性
蓋体の穿孔性は、下記の条件で、蓋体に直径1mmの円を1つ穿孔する時間を測定することで評価した。
(レーザー光線照射条件)
レーザー光線照射装置:ビデオジェット株式会社製Videojet 3330
波長:10.6μm
出力:30W
レーザー光線の先端からフィルム表面までの距離:350mm
<評価基準>
○:穿孔に要した時間0.02秒以内
×:穿孔に要した時間0.02秒超過
【0059】
(3)蓋体の透明性
蓋体の透明性は、JIS K−7361−1に準じ、ヘーズメーターNDH5000(日本電色工業株式会社製)を用いて、ヘーズを測定することにより評価した。
<評価基準>
○:ヘーズ1.5%未満
×:ヘーズ1.5%以上
【0060】
(4)水蒸気排出試験
実施例9で得られた容器本体に水400ccを入れ、実施例1の蓋体を閉めて、1500Wの電子レンジで5分間加熱し、微細孔からの水蒸気排出状況を目視確認した。
【0061】
【表1】
【0062】
表1の結果から、実施例1〜8はいずれも、本発明の規定を満足するものであり、穿孔性、透明性(ヘーズ)、のいずれの性能においても、優れた性能を有するものであった。
【0063】
また、実施例9は、微細孔からの水蒸気排出は問題なく、蓋体が容器本体から外れることはなかった。また、容器の微細孔が水で塞がることもなかった。
【0064】
一方、比較例1は、シート中の平均ゴム粒子径が小さいため、穿孔性に劣っていた。比較例2は、組成物中のゴム成分含有量が多いため、透明性に劣っていた。比較例3は、シート中の平均ゴム粒子径が大きいため、透明性に劣るものであった。比較例4は、組成物中のゴム成分含有量が少ないため、穿孔性に劣っていた。
【解決手段】スチレン−メタクリル酸共重合体とゴム強化スチレン系樹脂とを含有するスチレン系樹脂組成物からなる二軸延伸シートを成形した蓋体1であって、前記スチレン系樹脂組成物は、ゴム成分を0.05〜0.35質量%含有し、前記二軸延伸シート中のゴム成分の平均ゴム粒子径は、1〜9μmであり、前記蓋体1は、天面部12に、短径が0.40〜0.55mmであり、長径が前記短径の1.5〜1.8倍の長さである楕円形の微細孔3および直径が1.0mm以下の円形の微細孔3の少なくとも一方を複数個有する蓋体1である。また当該蓋体1と容器本体2とを備える包装容器である。また、当該蓋体1の製造方法である。