特許第6563611号(P6563611)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6563611
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】速度検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01P 3/49 20060101AFI20190808BHJP
【FI】
   G01P3/49
【請求項の数】12
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-555082(P2018-555082)
(86)(22)【出願日】2017年12月8日
(86)【国際出願番号】JP2017044193
(87)【国際公開番号】WO2018105728
(87)【国際公開日】20180614
【審査請求日】2018年12月17日
(31)【優先権主張番号】特願2016-239788(P2016-239788)
(32)【優先日】2016年12月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100103263
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 康
(72)【発明者】
【氏名】フランクル ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】トウスズ アルダ
(72)【発明者】
【氏名】コラー ヨハン、 ベー
(72)【発明者】
【氏名】塚田 裕介
(72)【発明者】
【氏名】中村 和人
【審査官】 岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第3062067(EP,A1)
【文献】 特開2016−8929(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0323349(US,A1)
【文献】 英国特許出願公開第2279459(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01P 3/00− 3/80
G01D 5/00− 5/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転または移動する導体である移動体の一主面上に離隔して配置され、前記移動体の回転または移動方向に応じて発生するローレンツ力によって所定の回転軸回りに回転する永久磁石を有する回転体と、
前記回転体に回転駆動力を付与するモータと、
前記モータが前記回転体に付与する前記回転駆動力を制御して、前記回転体の回転速度を可変制御する回転制御部と、
前記ローレンツ力による回転駆動力を受けている前記回転体を任意の回転速度で回転させる際に前記モータに流れる電流値を検出する電流検出部と、
前記電流検出部にて検出された電流値に基づいて、前記移動体の移動または回転速度を推測する移動速度推測部と、を備える、速度検出装置。
【請求項2】
前記回転制御部は、前記回転体の回転速度が可変可能な所定の回転速度になるように前記回転駆動力を制御する、請求項1に記載の速度検出装置。
【請求項3】
前記回転制御部は、前記移動速度推測部により推測された前記移動体の移動または回転速度に基づいて、前記モータに付与する回転駆動力を制御して、前記回転体の回転速度を前記所定の回転速度に制御する、請求項2に記載の速度検出装置。
【請求項4】
前記電流検出部にて検出された電流値と前記移動体の移動または回転速度との相関関係を検出する相関関係検出部を備え、
前記移動速度推測部は、前記電流検出部にて検出された電流と、前記相関関係と、に基づいて、前記移動体の移動または回転速度を推測する、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の速度検出装置。
【請求項5】
前記移動速度推測部は、前記電流検出部にて検出された電流値と前記モータの回転軸に加わるトルクとの相関関係と、前記回転体と前記移動体との磁気結合度合に応じた前記トルクと前記回転体の回転速度との相関関係と、前記磁気結合度合に応じた前記回転体の回転速度と前記移動体の移動または回転速度との相関関係と、に基づいて、前記移動体の移動または回転速度を推測する、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の速度検出装置。
【請求項6】
前記回転体と前記移動体との複数の磁気結合度合についての、前記トルクと前記回転体の回転速度との相関関係と、前記回転体の回転速度と前記移動体の移動または回転速度との相関関係とを検出する相関関係検出部と、
前記回転体の回転速度が変化する状況で連続して複数回検出された前記電流検出部にて検出された電流値と、各回における前記相関関係検出部で検出された各相関関係と、に基づいて、前記磁気結合度合を推測する磁気結合度合推測部と、を備え、
前記移動速度推測部は、前記電流検出部にて検出された電流と、前記磁気結合度合推測部にて推測された前記磁気結合度合と、前記相関関係検出部で検出された相関関係と、に基づいて、前記移動体の移動または回転速度を推測する、請求項5に記載の速度検出装置。
【請求項7】
前記磁気結合度合は、前記回転体と前記移動体とのギャップである、請求項5または6に記載の速度検出装置。
【請求項8】
前記磁気結合度合は、前記回転体と前記移動体との対向面同士の重なり具合である、請求項5または6に記載の速度検出装置。
【請求項9】
前記回転体は、前記移動体の外周面に連なる一側面を前記一主面として、前記移動体から離隔して対向配置される、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の速度検出装置。
【請求項10】
前記移動体の一主面に対向する面を含めて、前記回転体の外表面の少なくとも一部を覆う保護部材と、
前記保護部材のうち、前記移動体の一主面に対向される面に付着された磁性体を除去する磁性体除去部と、を備える、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の速度検出装置。
【請求項11】
前記永久磁石は、前記移動体に対向配置される2つ以上の磁極を有する、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の速度検出装置。
【請求項12】
前記モータは、前記回転体の回転による運動エネルギを電気エネルギに変換する発電機として機能し、
前記発電機が変換した電気エネルギを蓄電する蓄電器をさらに備え、
前記蓄電器が蓄電した電気エネルギは、前記モータ、前記回転制御部、前記電流検出部および前記移動速度推測部の少なくとも一つの電力源として用いられる、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の速度検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体の速度を検出する速度検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
移動体に磁石を取り付けて、その磁石が発生する磁束の変化率に応じた誘起電圧を出力する電磁誘導型の非接触センサにより移動体の移動速度を検出する技術が開示されている(特開平3−25372号公報参照)。
【発明の開示】
【0003】
特開平3−25372号公報に開示された技術では、非接触で移動体の移動速度を検出できるが、移動体に磁石を取り付ける必要があり、磁石を持たない移動体の移動速度を検出することはできない。また、接触式で移動体の移動速度を検出するセンサも知られているが、接触式の場合は、振動等の衝撃により破壊しやすく、信頼性および耐久性の点で問題がある。
【0004】
本発明は、上述した課題を解決するためのものであり、その目的は、非接触で精度よく移動体の移動または回転速度を検出できる速度検出装置を提供するものである。
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様では、回転または移動する導体である移動体の一主面上に離隔して配置され、前記移動体の回転または移動方向に応じて発生するローレンツ力によって所定の回転軸回りに回転する永久磁石を有する回転体と、
前記回転体に回転駆動力を付与するモータと、
前記モータが前記回転体に付与する前記回転駆動力を制御して、前記回転体の回転速度を可変制御する回転制御部と、
前記ローレンツ力による回転駆動力を受けている前記回転体を任意の回転速度で回転させる際に前記モータに流れる電流値を検出する電流検出部と、
前記電流検出部にて検出された電流値に基づいて、前記移動体の移動または回転速度を推測する移動速度推測部と、を備える、速度検出装置が提供される。
【0006】
前記回転制御部は、前記回転体の回転速度が所定の回転速度になるように前記回転駆動力を制御してもよい。
【0007】
前記移動速度推測部により推測された前記移動体の移動または回転速度に基づいて、前記所定の回転速度を決定してもよい。
【0008】
前記電流検出部にて検出された電流値と前記移動体の移動または回転速度との相関関係を検出する相関関係検出部を備え、
前記移動速度推測部は、前記電流検出部にて検出された電流と、前記相関関係と、に基づいて、前記移動体の移動または回転速度を推測してもよい。
【0009】
前記移動速度推測部は、前記電流検出部にて検出された電流と前記モータの回転軸に加わるトルクとの相関関係と、前記回転体と前記移動体との磁気結合度合に応じた前記トルクと前記回転体の回転速度との相関関係と、前記磁気結合度合に応じた前記回転体の回転速度と前記移動体の移動または回転速度との相関関係と、に基づいて、前記移動体の移動または回転速度を推測してもよい。
【0010】
前記回転体と前記移動体との複数の磁気結合度合についての、前記トルクと前記回転体の回転速度との相関関係と、前記回転体の回転速度と前記移動体の移動または回転速度との相関関係とを検出する相関関係検出部と、
前記回転体の回転速度が変化する状況で連続して複数回検出された前記モータを流れる電流と、各回における前記相関関係検出部で検出された各相関関係と、に基づいて、前記磁気結合度合を推測する磁気結合度合推測部と、を備え、
前記移動速度推測部は、前記電流検出部にて検出された電流と、前記磁気結合度合推測部にて推測された前記磁気結合度合と、前記相関関係検出部で検出された相関関係と、に基づいて、前記移動体の移動または回転速度を推測してもよい。
【0011】
前記磁気結合度合は、前記回転体と前記移動体とのギャップであってもよい。
【0012】
前記磁気結合度合は、前記回転体と前記移動体との対向面同士の重なり具合であってもよい。
【0013】
前記回転体は、前記移動体の外周面に連なる一側面を前記一主面として、前記移動体から離隔して対向配置されてもよい。
【0014】
前記移動体の一主面に対向する面を含めて、前記回転体の外表面の少なくとも一部を覆う保護部材と、
前記保護部材のうち、前記移動体の一主面に対向される面に付着された磁性体を除去する磁性体除去部と、を備えてもよい。
【0015】
前記永久磁石は、前記移動体に対向配置される2つ以上の磁極を有してもよい。
【0016】
前記モータは、前記回転体の回転による運動エネルギを電気エネルギに変換する発電機として機能し、
前記発電機が変換した電気エネルギを蓄電する蓄電器をさらに備え、
前記蓄電器が蓄電した電気エネルギは、前記モータ、前記回転制御部、前記電流検出部および前記移動速度推測部の少なくとも一つの電力源として用いられてもよい。
【0017】
本発明によれば、非接触で精度よく移動体の移動または回転速度を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1の実施形態による速度検出装置の概略構成を示すブロック図。
図2】移動体の一主面と回転体の一主面との一部同士が重なり合うように対向配置した例を示す図。
図3】移動体の表面または外周面と回転体の外周面とを対向配置させる例を示す図。
図4】移動体の一側面に発生する渦電流により回転体に回転駆動力が加わる原理を説明する図。
図5】移動体の移動速度と回転体の最大回転速度との相関関係を表すグラフ。
図6】回転体の回転速度とモータの回転軸に加わるトルクとの相関関係を表すグラフ。
図7】モータを流れる電流とモータの回転軸に加わるトルクとの相関関係を示すグラフ。
図8A】移動体の移動または回転速度の時間変化を示す波形を示す図。
図8B】回転体の回転速度の時間変化を示す波形を示す図。
図8C】モータの回転軸に加わるトルクまたはモータを流れる電流の時間変化を示す波形を示す図。
図8D】移動体の移動または回転速度を推測した推測波形を示す図。
図9図1の速度検出装置に相関関係検出部と磁気結合度合推測部を追加したブロック図。
図10】第2の実施形態による速度検出装置1の概略構成を示すブロック図。
図11図10の速度検出装置を備えた非接触発電機の分解斜視図。
図12図11の非接触発電機の断面図。
図13A】速度検出装置の第1変形例を示す図。
図13B】速度検出装置の第2変形例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0020】
(第1の実施形態)
図1は本発明の第1の実施形態による速度検出装置1の概略構成を示すブロック図である。図1の速度検出装置1は、回転体2と、モータ3と、回転制御部4と、電流検出部5と、移動速度推測部6と、電源部7とを備えている。
【0021】
回転体2は、移動または回転する導体である移動体8の一主面上に離隔して配置されている。回転体2は、移動体8の移動または回転方向に応じて発生するローレンツ力によって所定の回転軸回りに回転する永久磁石2aを有する。回転体2は、所定の回転軸回りに回転自在とされている。回転体2は移動体8の移動または回転方向に合わせて、時計回りまたは反時計回りに回転する。回転体2の永久磁石2aは、周状に配置された複数の磁極2bを有する。永久磁石2aが有する磁極2bの数は、2つ以上であればよく、数には特に制限はない。磁極2bの数が多いほど、回転体2の回転角度による回転力の斑(コギングトルク)は減少するが、移動体8と回転体2とのギャップが広い場合には、磁極2bの数を多くすることで、磁極一つあたりの磁力の大きさが小さくなって、移動体8に到達する磁束が減少し、回転体2を回転させる力が弱くなる。
【0022】
移動体8は、例えば車両の車輪やホイールなどの回転する動体、あるいは一方向または複数方向に移動する動体である。移動体8は、回転体2に対向配置された一主面上に渦電流を発生させる。したがって、移動体8の一主面は、渦電流を発生可能な金属などの導電材料で形成されている必要がある。
【0023】
モータ3は、移動体8との磁気結合によるローレンツ力とは無関係に、回転体2に回転駆動力を付与する。これにより、回転体2は、移動体8が移動または回転をしていなくても、回転する。モータ3は、移動体8の移動または回転速度に応じて発生するローレンツ力によって回転体2が回転する方向または逆方向に、回転体2に回転駆動力を付与する。モータ3によって回転体2に回転駆動力が付与されていない場合、回転体2はローレンツ力によって、移動体8の移動または回転速度に応じた回転速度(以下、第1回転速度と呼ぶ)で回転している。回転体2が第1回転速度で安定に回転している状態では、摩擦などの損失を無視すると、回転体2にはローレンツ力は作用しておらず、モータ3による回転駆動力も付与されていない。
この状態で、モータ3にて、回転体2の回転速度を遅くするような回転駆動力を付与すると、回転体2には制動力がかかって、モータ3は発電機として機能する。このときモータ3に流れる電流は正の向きであり、この電流値は電流検出部5にて検出される。一方、モータ3が第1回転速度で安定して回転している状態で、モータ3にて、回転体2の回転速度を速くするような回転駆動力を付与すると、モータ3はいわゆるモータとして機能し、消費電力が増大する。このときモータ3に流れる電流は負の向きであり、この電流値もやはり電流検出部5にて検出される。このように、モータ3は、発電機として機能したり、いわゆるモータとして機能したりするが、本明細書では単に「モータ」と呼称する。なお、上記では、モータ3が発電機として機能する場合にモータ3に流れる電流を正の向きとし、モータ3がいわゆるモータとして機能する場合にモータ3に流れる電流を負の向きとしたが、これは一例であり、正負の向きを逆にしてもよい。
【0024】
回転制御部4は、モータ3が回転体2に付与する回転駆動力を制御して、回転体2の回転速度を可変制御する。より具体的には、回転制御部4は、回転体2の回転速度を検出器9にてモニタして、回転体2が任意の回転速度で回転するように、モータ3が回転体2に付与する回転駆動力を制御する。あるいは、回転制御部4は、検出器9を用いずに、回転体2が任意の回転速度で回転するように、モータ3の回転駆動力を制御してもよい。この場合、検出器9は不要となる。なお、回転体2の回転速度は、モータ3の駆動電流周波数により制御することができる。よって、検出器9なしで回転体2を任意の回転速度で回転させるには、モータ3の駆動電流周波数を制御すればよい。このように、回転制御部4は、回転体2の回転速度が可変可能な所定の回転速度になるように回転駆動力を制御する。より具体的には、回転制御部4は、移動速度推測部6により推測された移動体8の移動または回転速度に基づいて、モータ3に付与する回転駆動力を制御して、回転体2の回転速度を所定の回転速度に制御する。
【0025】
検出器9は、回転体2の回転速度を検出する。検出器9には、非接触式と接触式がある。非接触式の検出器9は、ホール効果を利用したホール素子や、光学スリットを利用したエンコーダや、誘導起電力を利用したコイルや、ギアの歯数またはギャップの変動を利用した静電容量タイプまたは誘導タイプまたはホール素子タイプの近接センサを適用可能である。接触式の検出器9は、回転体2の回転軸に取り付けられたポテンショメータなどを適用可能である。このように、検出器9の具体的な形態は、特に問わない。
【0026】
電流検出部5は、ローレンツ力による回転駆動力を受けている回転体2を任意の回転速度で回転させる際にモータ3に流れる電流値を検出する。以下、この電流値をモータ電流と呼ぶ場合もある。モータ3の回転駆動力が大きくなるほど、モータ3を流れる電流が増大する。移動体8の移動または回転速度と、回転体2の回転速度との速度差が大きくなるほど、モータ3の回転駆動力は増加し、モータ3を流れる電流が増加する。より詳細には、移動体8の移動または回転速度が変化すると、モータ3を流れる電流波形の周波数は変化せずに、電流波形の実効値が変化する。よって、電流検出部5は、モータ3を流れる電流波形の実効値を検出する。
【0027】
移動速度推測部6は、電流検出部5にて検出された電流に基づいて、移動体8の移動または回転速度を推測する。
【0028】
電源部7は、図1の速度検出装置1の各部に電源電圧を供給する。図1では、電源部7から回転制御部4と移動速度推測部6に電源電圧を供給する矢印線を図示しているが、それ以外のモータ3や電流検出部5などにも必要に応じて電源電圧を供給してもよい。
【0029】
以下では、まず最初に、移動体8の移動に応じて回転体2が回転する原理を説明する。移動体8と回転体2とは対向配置されている。図2は移動体8の一側面である一主面を回転体2の一主面2dと向き合わせて、移動体8の一主面と回転体2の一主面2dとの一部同士が重なり合うように対向配置した例を示している。回転体2の一主面2dの全体が移動体8の一主面と重なり合って対向配置されている場合には、回転体2がほとんど回転しなくなるため、このような配置のさせ方は望ましくない。なお、移動体8の一側面を回転体2の一主面2dと対向配置させる代わりに、図3に示すように移動体8の表面または外周面と回転体2の外周面とを対向配置させてもよい。
【0030】
本実施形態では、回転体2を構成する永久磁石2aの各磁極2bからの磁束により、移動体8の一側面8aに渦電流を発生させる。よって、回転体2の一主面2dと移動体8の一側面8aとの間のギャップは、回転体2の各磁極2bからの磁束が移動体8に到達可能な範囲内に制限される。
【0031】
永久磁石2aの各磁極2bは、対向する移動体8の一側面8aに向かう方向またはその反対方向に磁化されている。また、永久磁石2aの隣接する磁極2b同士の磁化方向は逆である。図3では、永久磁石2aの各磁極2bの磁化方向を矢印で示している。図3及び図4に示すように、回転体2の第1側面2dには、周状にN極とS極が交互に並んでいる。また、回転体2の移動体8に対向する一側面2dとは反対側の側面は、一側面2dとは逆極性になる。
【0032】
図4は、回転体2の第1側面2dの表面速度が、対向する移動体8の位置側面8aの表面速度より遅くなるように、回転制御部4とモータ3で制御されている場合の、移動体8の一側面8aに発生する渦電流5d,5eにより回転体2に回転駆動力が加わる原理を説明する図である。回転体2の第1側面2d上に周状に並ぶ複数の磁極2bのうち、移動体8の一側面8aに対向配置された磁極2bからの磁束は、移動体8の一側面8a方向に伝搬する。回転体2の第1側面2dと移動体8の一側面8aとの間は、エアギャップであり、回転体2からの磁束はこのエアギャップを伝搬する。
【0033】
移動体8が回転すると、移動体8の一側面8aには、回転体2からの磁束の変化を妨げる方向に渦電流が生じ、この渦電流による磁束と回転体2からの磁束との相互作用(反発力および誘引力)により、回転体2に回転駆動力が加わる。
【0034】
例えば、回転体2のN極が移動体8の一側面8aに対向配置されている場合、N極の回転方向前方のエッジe1からの磁束が到達する移動体8の一側面8a部分に発生する渦電流5dの向きと、N極の回転方向後方のエッジe2からの磁束が到達する移動体8の一側面8a部分に発生する渦電流5eの向きとは相違している。N極の回転方向後方のエッジe2からの磁束により発生する渦電流5eは、N極からの磁束とは反対方向の磁束を発生させる向きに流れる。一方、N極の回転方向前方のエッジe1からの磁束が到達する移動体8の一側面8a部分に発生する渦電流5dは、N極からの磁束と同方向の磁束を発生させる向きに流れる。いずれの渦電流5d,5eも、移動体8の回転に伴う回転体2からの磁束の変化を妨げる方向に流れる。
【0035】
上述したように、回転体2のN極の回転方向前方のエッジe1側では、渦電流5dによる磁束と回転体2のN極からの磁束との方向が同じになることから、互いに引き寄せ合う誘引力が働く。一方、回転体2のN極の回転方向後方のエッジe2側では、渦電流5eによる磁束と回転体2のN極からの磁束とは反対方向になることから、互いに反発し合う反発力が働く。回転体2の第1側面2dの表面速度が、対向する移動体8の一側面8aの表面速度より遅い場合には、上述した、回転体2と渦電流5d、5eの関係が常に成り立つ。これにより、回転体2には、対向する移動体8の一側面8aの移動表面の移動方向に応じた回転駆動力が加わる。
【0036】
なお、上述した回転体2に加わる回転駆動力の原理は、ローレンツ力による反力にて説明することもできる。上述したように、回転体2のN極の回転方向前方のエッジe1からの磁束による発生する渦電流5dと、回転体2の回転方向後方のエッジe2からの磁束による発生する渦電流5eとは、電流の向きが逆になっていて、N極の直下には常に一定方向の電流が流れる。これら渦電流5d,5eによる電流は、移動体8が図4の矢印の向きに回転する場合には、移動体8の回転方向とは反対方向のローレンツ力を受ける。よって、これら渦電流5d,5eによる磁束を受ける回転体2には、移動体8の回転方向への、ローレンツ力の反力を受けて回転駆動力が加わる。
【0037】
なお、図4の渦電流および磁力の矢印の向きは、回転体2が移動体8の表面速度よりも遅い速度で回転する場合を示しており、モータ3の回転駆動力にて回転体2を移動体8の表面速度よりも速い速度で回転させる場合には、渦電流および磁力の矢印の向きは図4とは逆になる。
【0038】
次に、移動体8の移動または回転速度を推測する手順を説明する。上述したように、回転体2には、移動体8の移動または回転速度と、回転体2の回転速度との相対速度差に応じた回転駆動力が加わる。
【0039】
図5は移動体8の移動速度と回転体2の最大回転速度との相関関係を表すグラフである。図5の横軸は移動体8の移動速度v2(km/h)、縦軸は回転体2の最大回転速度ω1max(rad/s)である。回転体2の最大回転速度ω1maxとは、モータ3の回転駆動力なしで回転体2が回転する際の最大回転速度ω1maxである。回転体2の最大回転速度ω1maxは、以下の(1)式で表される。
【0040】
ω1max(g,v2)=k1(g)・v2 …(1)
【0041】
上記(1)式において、v2は移動体8の移動または回転速度、gは移動体8と回転体2とのギャップ、k1はギャップgに依存する比例係数である。(1)式からわかるように、回転体2の最大回転速度ω1maxは、ギャップgと移動体8の移動または回転速度v2に依存する。
【0042】
図5のグラフは、移動体8と回転体2とのギャップgが10mmの場合の特性を示している。ギャップgが変わると、図5のグラフの傾きが変化する。ギャップgとは、移動体8と回転体2の対向面同士の最短距離を指す。
【0043】
図5のグラフからわかるように、回転体2の最大回転速度ω1maxと、移動体8の移動速度とは、線形の関係にあり、移動体8の移動速度が変化すると、その変化に同期して、回転体2の回転速度が線形に変化する。図5では、移動体8が一方向または複数方向に移動する例を示したが、移動体8が回転する場合であっても、移動体8の回転速度と回転体2の回転速度とは線形の関係になる。
【0044】
図6は回転体2の回転速度とモータ3の回転軸に加わるトルクとの相関関係を表すグラフである。図6の横軸は回転体2の回転速度ω1(rad/s)、縦軸はトルクTorque(Nmm)である。図6では、移動体8と回転体2とのギャップを変化させた場合の回転体2の回転速度とトルクとの相関関係が別々のグラフで示されている。図6の各グラフからわかるように、ギャップが小さいほど、同じ回転速度でのトルクは大きくなる。また、同じギャップでは、回転体2の回転速度が大きくなるほど、トルクは小さくなる。回転体2の回転速度の変化に対するトルクの変化の割合は、ギャップが小さいほど大きくなる。図6の各グラフの横軸との交点が最大回転速度ω1maxを表している。最大回転速度ω1maxでは、トルクは0である。これは、モータ3による回転駆動力を加えない場合でも、回転体2が回転することを示している。このときの回転体2の回転速度が最大回転速度ω1maxになる。
【0045】
図6からわかるように、トルクT1は、以下の(2)式で表される。
【0046】
T1≒k2(g)・(ω1max(g,v2)−ω1)=k2(g)・(k1(g)・v2−ω1) …(2)
【0047】
k2はギャップに依存する比例係数、ω1は回転体2の回転速度である。(2)式からわかるように、トルクT1は、回転体2の回転速度ω1、移動体8の移動または回転速度v2、および移動体8と回転体2とのギャップgに依存する関数T1(ω1,v2,g)である。
【0048】
図7はモータ3を流れる電流とモータ3の回転軸に加わるトルクとの相関関係を示すグラフである。図7の横軸はモータ3を流れる電流(A)であり、より詳しくはモータ3の回転トルクに寄与する電流である。縦軸はトルク(Nmm)である。図7からわかるように、トルクとモータ3を流れる電流とは線形な関係にあり、モータ3を流れる電流が多いほど、トルクが大きくなる。図7のグラフの傾きは、使用するモータ3固有の比例定数であり、モータ3の種類によって比例定数は変化する。
【0049】
移動速度推測部6は、電流検出部5によって検出されたモータ3を流れる電流を用いて、図7のグラフからトルクを検出し、続いて、検出したトルクに対応する回転体2の最大回転速度ω1maxを図6のグラフから検出し、続いて、検出した回転体2の最大回転速度ω1maxに対応する移動体8の移動速度を図5のグラフから検出することができる。このように、モータ3を流れる電流がわかれば、移動体8の移動速度を検出することができる。
【0050】
図5図7より、移動体8の移動または回転速度の推測値v2,estは、以下の(3)式で表される。
【0051】
v2,est=T1-1(ω1,T1,g)=v2(ω1,T1,g) …(3)
【0052】
(3)式からわかるように、移動体8の移動または回転速度の推測値v2,estは、回転体2の回転速度ω1、トルクT1、およびギャップgをパラメータとする関数である。
【0053】
図6のグラフからわかるように、移動体8と回転体2とのギャップが変化すると、回転体2の回転速度とトルクとの相関関係も変化する。よって、移動体8と回転体2のギャップを予め把握しておく必要がある。移動体8の移動または回転によってギャップが変化しない場合には、予め検出したギャップに基づいて、図6から回転体2の回転速度とトルクとの相関関係を取得することができる。
【0054】
一方、移動体8の移動または回転によってギャップが変動する可能性がある場合は、現時点でのギャップを検出する必要がある。ギャップを検出するには、移動体8の移動または回転速度が同一であり、且つギャップが同一であると考えられる程度のごく短い時間に連続して、回転体2の回転速度を少なくとも2つの異なる値に制御し、その際のそれぞれの回転速度の時のトルクT1を検出すればよい。上述したように、回転体2の回転速度は回転制御部4にて制御することができ、トルクT1はモータ3を流れる電流を電流検出部5にて検出すれば図7のグラフから求めることができる。よって、ごく短い時間に、複数回にわたって回転体2の回転速度を制御し、モータ3を流れる電流を検出し、検出された電流と、図6および図7のグラフから、回転体2の回転速度の変化に対するトルク変化の割合を検出し、この割合からギャップを推測する。図6からわかるように、ギャップごとに、回転体2の回転速度の変化に対するトルク変化の割合が異なるため、モータ3を流れる電流の実測値から上述した割合を検出されば、ギャップを精度よく推測できる。
ギャップは、(3)式を用いて算出することもできる。移動体8の移動または回転速度が同一であり、且つギャップが同一であると考えられる程度のごく短い時間に連続して、回転体2の回転速度を少なくとも2つの異なる値に制御し、その際のそれぞれの回転速度の時のトルクT1を検出する。それぞれ検出した値を(3)式に代入すれば、2変数(v2,g)の連立方程式が得られる。この連立方程式を解くことで、速度v2とギャップgを同時に求めることができる。ただし、この場合には、(3)式の関数が明らかになっている必要がある。
【0055】
図8Aは移動体8の移動または回転速度の時間変化を示す波形、図8Bは回転体2の回転速度の時間変化を示す波形、図8Cはモータ3の回転軸に加わるトルクまたはモータ3を流れる電流の時間変化を示す波形、図8Dは移動体8の移動または回転速度を推測した推測波形である。
【0056】
図8A図8B図8Cおよび図8Dの各波形からわかるように、回転体2の回転速度が一定になるように回転制御部4にて制御した状態で、移動体8の移動または回転速度が変化すると、それに応じて、モータ3の電流およびトルクが変化し、モータ3の電流変化を電流検出部5にて検出することで、図5図7のグラフから、移動体8の移動または回転速度を精度よく推測することができる。
【0057】
なお、回転体2と移動体8とは、対向面同士の一部が重なり合っており、重なり具合が変化すると、移動体8と回転体2との磁気結合度合が変化して、図5図6のグラフの傾きが変化してしまう。したがって、図5のような移動体8の移動速度と回転体2の最大回転速度との相関関係を表すグラフを求める際は、ギャップを含めた移動体8と回転体2との磁気結合度合を所定値に設定しておく必要がある。移動体8と回転体2との磁気結合度合は、移動体8と回転体2とのギャップや、移動体8と回転体2との対向面同士の重なり具合などによって変化する。あるいは、移動体8や回転体2との対向面に異物が付着した場合や、移動体8と回転体2との間に何らかの磁気遮蔽部材を配置した場合も変化する。図6のグラフについても、本来的には、ギャップだけでなく、種々の要因で移動体8と回転体2との磁気結合度合を複数通りに変化させた場合のそれぞれについて、回転体2の回転速度とトルクとの相関関係を求めておくのが望ましい。
【0058】
図9図1の速度検出装置1に相関関係検出部11と磁気結合度合推測部12を追加したブロック図である。相関関係検出部11は、モータ3を流れる電流と移動体8の移動または回転速度との相関関係を検出する。より具体的には、相関関係検出部11は、回転体2と移動体8との複数の磁気結合度合についての、トルクと回転体2の回転速度との相関関係と、回転体2の回転速度と移動体8の移動または回転速度との相関関係とを検出する。
【0059】
磁気結合度合推測部12は、連続して複数回異なる回転体の回転数の時に検出されたモータ3を流れる電流と、各回における相関関係検出部11で検出された各相関関係と、に基づいて、磁気結合度合を推測する。
【0060】
図9の移動速度推測部6は、電流検出部5にて検出された電流と、磁気結合度合推測部12にて推測された磁気結合度合と、相関関係検出部11で検出された相関関係と、に基づいて、移動体8の移動または回転速度を推測する。
【0061】
移動体8の移動または回転速度が推測されると、その速度を微分することで加速度情報を検出でき、移動体8の移動または回転速度を積分することで、移動体8の位置情報を検出できる。
【0062】
このように、第1の実施形態では、移動体8の移動または回転方向に応じて回転駆動力を受ける回転体2に対して、モータ3から回転駆動力を付与し任意の回転数に制御した状態でモータ3を流れる電流を検出し、その電流によりモータ3のトルクを検出し、検出したトルクにより回転体2の最大回転速度を検出し、検出した最大回転速度により移動体8の移動または回転速度を検出するため、モータ3を流れる電流および回転体2の回転速度によって、移動体8の移動または回転速度を検出できる。
【0063】
移動体8の移動または回転速度を検出するには、通常は移動体8に速度検出のための永久磁石や、エンコーダ用の光学スリットリングや、近接センサ用の検出歯車などを取り付けるが、移動体8への追加加工が許容されない場合であっても、本実施形態によれば、移動体8の近傍に回転体2を対向配置して、モータ3の電流を検出することにより、移動体8の移動または回転速度を精度よく推測できる。
【0064】
(第2の実施形態)
第2の実施形態は、回転体2の回転エネルギを電気エネルギに変換して蓄電器に蓄電しておき、蓄電された電気エネルギを利用して、移動体8の移動または回転速度を推測するものである。
【0065】
図10は第2の実施形態による速度検出装置1の概略構成を示すブロック図である。図10の速度検出装置1は、図1の構成に加えて、蓄電器13を備えている。図10のモータ3も、図1のモータ3と同様に、発電機として機能したり、いわゆるモータとして機能したりする。
【0066】
モータ3は、回転体2の回転による運動エネルギを電気エネルギに変換する。蓄電器13は、モータ3が変換した電気エネルギを蓄電する。蓄電器13が蓄電した電気エネルギは、検出器9および移動速度推測部6の少なくとも一方の電力源として用いられる。蓄電器13は、図9の速度検出装置1に追加してもよい。
【0067】
図11図10の速度検出装置1を備えた非接触発電機20の分解斜視図、図12図11の非接触発電機20の断面図である。図11の非接触発電機20内のロータ21と、第2永久磁石22aを有する第2回転体22と、ステータ23と、コイル24は、発電機の一部を構成するとともに、速度検出装置1の一部を兼ねている。以下では、速度検出装置1内の回転体2および永久磁石2aをそれぞれ第1回転体2および第1永久磁石2aと呼び、非接触発電機20内の第2回転体22および第2永久磁石22aと区別する。
【0068】
速度検出装置1、ケース(保護部材)25によって覆われている。ステータ23は、実装プレート26上に固定されている。ケース25や実装プレート26は、必須の構成部品ではなく、その形状やサイズも任意である。
【0069】
第1回転体2、ロータ21および第2回転体22は、いずれも共通の回転軸27回りに回転自在とされている。この回転軸27回りに、第1回転体2、ロータ21および第2回転体22は一体に回転する。より詳細には、ロータ21は、ベアリング28を介して回転軸27に回転自在に支持されている。第1回転体2、ロータ21および第2回転体22の径サイズは、同じでも、それぞれ異なっていてもよい。典型的な一例では、ロータ21と第2回転体22は接続されている。あるいは、第1回転体2、ロータ21および第2回転体22を物理的に接続してもよい。回転軸27の周囲にはベアリング28が配置されており、回転軸27は移動体8の回転方向に合わせて、時計回りまたは反時計回りに回転する。図11および12の例では、第1回転体2とロータ21の径サイズを略同一とし、第2回転体22の径サイズをロータ21よりも小さくしている。これにより、ロータ21の内周面の内側に第2回転体22を収納できるようにしている。
【0070】
第2回転体22は、図11に示すように、周方向に複数の磁極2bが配置された円環状の第2永久磁石22aを有する。第2永久磁石22aの磁極数は特に問わない。
【0071】
円環状の第2永久磁石22aの内周面の内側には、ステータ23が配置されている。ステータ23は、固定されており、第2永久磁石22aの中心から放射状に伸びる複数のティース23aを有する。ステータ23は、磁性体で形成されており、各ティース23aにはコイル24が巻回されている。これらコイル24は、第2永久磁石22aからの磁束が鎖交する位置に配置されており、鎖交した磁束の変化量に応じた誘導起電力を発生させる。放射状に伸びるティース23aの先端位置と第2永久磁石22aの内周面との間にはギャップが設けられている。
【0072】
モータ3は、第2回転体22とステータ23とコイル24とを含んで構成されている。移動体8の移動または回転により第1回転体2が回転すると、第1回転体2と一体にロータ21と第2回転体22も回転する。これにより、ステータ23のティース23aに巻回されたコイル24には、周期的に方向が変化する交番磁束が鎖交し、コイル24に誘導起電力が発生する。このように、モータ3は、第1回転体2の回転エネルギを、第2回転体22を介して、コイル24に流れる誘導起電力に変換する機能を持っている。なお、ロータ21は、磁性材料で形成されており、第1回転体2と第2回転体22のヨークとしても機能する。これにより、第1永久磁石2aと第2永久磁石22aで生じた磁束の漏れを防止でき、発電効率が向上する。
【0073】
速度検出装置1内の回転制御部4、電流検出部5、移動速度推測部6、検出器9および蓄電器13は、図12に示すように、例えば実装プレート26などの、第1回転体2の近傍で、かつ静止体上に配置されている。静止体上であればよいため、実装プレート26に限られるわけではなく、ケース25などに配置されていてもよいし、ケーブルで接続して別体としてもよい。
【0074】
第2永久磁石22aとステータ23は、移動体8と第1永久磁石2aとの相対的な形状および位置関係により第1永久磁石2aに発生するコギングトルクの少なくとも一部を相殺する機能を兼ねるようにしてもよい。
【0075】
図11図12に示すように、速度検出装置1内の第1回転体2をケース25で覆う場合、ケース25内の第1永久磁石2aの磁力に引きつけられて、ケース25の外表面に磁性体が付着しやすくなる。特に、移動体8が列車の車輪の場合、レールとの接触により、車輪が削れて、その削り屑がケース25の外表面に付着しやすくなる。ケース25の外表面に付着した削り屑等の磁性体は、移動体8と回転体2との磁気結合度合を変動させる要因となる。ケース25内部の回転体2は、移動体8の移動または回転に応じて回転するため、ケース25の外表面に付着した磁性体も、回転体2の回転に応じて回転し、遠心力によりケース25の外表面から外側に飛散することが期待できる。ただし、油分や水分を含む粘着性の高い磁性体や、回転体の回転中心付近に付着した遠心力をあまり受けない部分の磁性体は、飛散せずにケース25の外表面に留まる可能性がある。よって、ケース25の外表面に付着した磁性体を除去する磁性体除去部を設けてもよい。磁性体除去部の具体的な機構は問わないが、例えば車両のワイパに類似した機構にしてもよい。また、蓄電器13に蓄電した電気エネルギを利用して、磁性体除去部を駆動してもよい。また、ケース25の外表面に溝や突起などのガイドを設けて、回転している磁性体がガイドに沿って移動し、ケース25の外周方向へ飛散するようなケース形状としてもよい。
【0076】
このように、第2の実施形態では、移動体8の移動または回転による運動エネルギを回転体2の回転エネルギに変換し、回転体2の回転エネルギをモータ3にて電気エネルギに変換して蓄電器13に蓄電する。そして、蓄電器13に蓄電された電気エネルギを利用して、速度検出装置1を駆動して、移動体8の移動または回転速度を測定する。これにより、外部電源を確保できない環境下であっても、移動体8の移動または回転速度を推測でき、速度検出装置1の適用範囲を拡げることができる。また、外部電源と速度検出装置1を繋ぐケーブルも不要となるため、速度検出装置1の設置場所についての制約も少なくなる。
【0077】
上述した第1および第2の実施形態では、移動体8の一側面8aを回転体2の一主面2dに対向配置する例を示したが、移動体8と回転体2との配置は上述したものに限定されない。本開示による速度検出装置1は、移動体8の移動または回転方向に応じて発生するローレンツ力によって回転する永久磁石2aを有する回転体2を備えていれば、上述した構造以外の構造であっても、適用可能である。
【0078】
図13Aは速度検出装置1の第1変形例を示す図である。図13Aの速度検出装置1は、回転軸周りに回転する永久磁石2aを有する回転体2と、2個のコイル(第1コイル31aと第2コイル31b)と、ヨーク32とを備えている。
【0079】
永久磁石2aは、回転または移動する移動体8の一主面8a上に離隔して対向配置され、移動体8の回転または移動方向に応じて回転する。永久磁石2aは、少なくとも2個の磁極2bを有し、各磁極2bの磁化方向は、永久磁石2aの外周面の法線方向である。
【0080】
永久磁石2aの外周面2cは、移動体8の一主面8aから離隔して配置されており、永久磁石2aは、移動体8の一主面8aに接触することなく、回転自在とされている。図13Aの例では、2個のコイルのうち一方の第1コイル31aは、移動体8の回転または移動方向に対して永久磁石2aの後方側に配置されている。2個のコイルのうち他方の第2コイル31bは、移動体8の回転または移動方向に対して永久磁石2aの前方側に配置されている。第1および第2コイル31a,31bは、移動体8の一主面8a上に離隔して配置されている。
【0081】
また、図13Aの例では、第1および第2コイル31a,31bの内部と上部には、コの字状のヨーク32が配置されている。ヨーク32と永久磁石2aとの間には隙間があり、同様に、永久磁石2aと第1および第2コイル31a,31bとの間にも隙間がある。これら隙間はエアギャップである。よって、永久磁石2aは、移動体8の一主面と、第1および第2コイル31a,31bと、ヨーク32とで囲まれる領域内で回転する。
【0082】
図13Bは速度検出装置1の第2変形例を示す図であり、1個のコイル31で発電を行う例を示す図である。永久磁石2aの上方には、ヨーク32に巻回されたコイル31が配置されている。ヨーク32は永久磁石2aの上方から移動体8の移動方向の両側に延びて、永久磁石2aを取り囲むように配置されている。コイル31は、永久磁石2aからの磁束のほぼすべてを鎖交させるため、必ずしも複数のコイル31を設ける必要はない。なお、コイル31を配置する場所は、永久磁石2aからの全磁束が集中する場所(例えば、永久磁石2aのN極とS極の少なくとも一方の近傍)であればよい。
【0083】
図13A図13Bのいずれにおいても、永久磁石2aを有する回転体2の回転軸に、図1と同様のモータ3を接続し、さらに、回転制御部4、電流検出部5および移動速度推測部6を設けることで、移動体8の移動速度を推測することができる。
【0084】
本発明の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではなく、当業者が想到しうる種々の変形も含むものであり、本発明の効果も上述した内容に限定されない。すなわち、特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0085】
1 速度検出装置、2 回転体、2b 磁極、3 モータ、4 回転制御部、5 電流検出部、6 移動速度推測部、7 電源部、8 移動体、9 検出器、11 相関関係検出部、12 磁気結合度合推測部、13 蓄電器、20 非接触発電機、21 ロータ、22 第2回転体、22a 第2永久磁石、23 ステータ、24 コイル、25 ケース、26 実装プレート、27 回転軸、28 ベアリング、31a 第1コイル、31b 第2コイル、32 ヨーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B