(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ヒンジは、対向する一対の側板と、前記一対の側板を連結する連結板と、を有して、前記ベースが取り付けられる断面略コ字状の第1部本体を有することを特徴とする請求項1に記載の扉用装置。
前記ヒンジの前記第1部本体が嵌る前記ベースの凹部は、前記ヒンジの前記第1部本体の前記一対の側板に対応する一対の側壁と、前記連結板に対応するベース本体と、前記ベース本体との間で前記一対の側板を挟むように、前記一対の側壁に曲げて設けられる一対の屈曲部と、によって画定されることを特徴とする請求項2に記載の扉用装置。
前記アームを前記本体及び前記扉の前記他方に連結するための座が、前記他方に固定される第1座と、前記アームに連結され、前記第1座に対して軸を中心にして回転可能な第2座と、を有することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載の扉用装置。
前記ベースを前記ヒンジの前記第1部に取り付けた状態で前記ヒンジの位置調節ねじを操作できるように、前記ベースにはアクセス開口が設けられることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか一項に記載の扉用装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面に基づいて、本発明の扉用装置の実施形態を詳細に説明する。ただし、本発明の扉用装置は種々の形態で具体化することができ、本明細書に記載される実施形態に限定されるものではない。本実施形態は、明細書の開示を十分にすることによって、当業者が発明の範囲を十分に理解できるようにする意図をもって提供されるものである。
(第1の実施形態)
【0012】
図1は、本発明の第1の実施形態の扉用装置をヒンジ付きの家具に取り付けた状態を示す。家具の本体1には、スライドヒンジ2(以下、単にヒンジ2という)を介して扉3が開閉可能に取り付けられる。扉3は上開き扉であり、ヒンジ2によって閉じ位置から開き位置まで水平軸の回りを回転する。
図1には、扉3の開き位置を示す。ヒンジ2は、本体1に取り付けられる第1部4と、扉3に取り付けられる第2部5と、を備える。第1部4と第2部5とは、2つのリンク7,8を介して連結される(
図3(b)参照)。扉用装置9は、ベース10と、ベース10に回転可能に支持されるアーム11と、を備える。ベース10は、ヒンジ2の第1部4に取り付けられ、第1部4を介して本体1に取り付けられる。アーム11の先端部は、座12を介して扉3に連結される。座12と第2部5とはアーム11の長さ方向に離れている。アーム11は第2部5に取り付けられてはいない。
【0013】
なお、以下においては、説明の便宜上、本体1を正面から見たときの方向、すなわち
図1に示す前後方向、左右方向、及び上下方向を用いて扉用装置9の構成を説明する。もちろん、扉用装置9の配置は、このような配置に限られるものではない。
【0014】
本体1は、天板1aと、左右一対の側板1bと、図示しない底板と、を備える。ヒンジ2の第1部4は、第1ねじ14を用いて天板1aに取り付けられる。ヒンジ2の第2部5は、第2ねじ15を用いて扉3に取り付けられる。座12は、第3ねじ20を用いて扉3に取り付けられる。
【0015】
図2は、扉用装置9とヒンジ2とを分解した状態の斜視図を示す。ヒンジ2の第1部4(
図1も参照)は、本体1に取り付けられる取付け座16(
図1参照)と、取付け座16にワンタッチで着脱可能に取り付けられる第1部本体17(
図2参照)と、を備える。第1部本体17は、互いに対向する左右一対の側板17aと、側板17aを連結する連結板17bと、を有して、断面略コ字状である。第1部本体17は、前後方向に長い。第1部本体17には、中間プレート18が組み込まれる。中間プレート18も断面コ字状である。中間プレート18の前端部には、軸18aが設けられ、中間プレート18の後端部には、ねじりばね18cによって閉じ方向に付勢される回転可能なフック18bが設けられる。第1部本体17を取付け座16にかぶせるようにして押し込むと、中間プレート18の軸18aが取付け座16の図示しない切欠き部に嵌まると共に、フック18bが一旦開いた後閉じ、フック18bが取付け座16の図示しない切欠き部に嵌まる。これにより、第1部本体17が取付け座16にワンタッチで取り付けられる。第1部本体17を取付け座16から外すときは、レバー19を押し、フック18bを開き方向に回転させる。第2部5はカップ状である。
【0016】
扉用装置9のベース10には、第1部本体17が前後方向にスライド可能に嵌められる凹部21が設けられる。凹部21は、第1部本体17の左右一対の側板17aに対応する左右一対の側壁22と、第1部本体17の連結板17bに対応するベース本体23と、ベース本体23との間で一対の側板17aを上下方向に挟むように、一対の側壁22の上端部に曲げて設けられる一対の屈曲部22aと、によって画定される。
【0017】
図3は、ヒンジ2の第1部本体17に扉用装置9を取り付けた状態を示す。
図3(b)の断面図に示すように、第1部本体17と第2部5とは、2つのリンク、すなわち内側リンク7と外側リンク8を介して連結される。第1部4、第2部5、内側リンク7及び外側リンク8は、4節回転連鎖を構成し、これらは互いに回り待遇で連結される。第1部4と外側リンク8との間には、扉3を閉じ位置に保持するためのねじりばね24が介在する。また、外側リンク8には、扉3が閉じるときに外側リンク8に接触し、外側リンク8の回転を制動、ひいては扉3がゆっくり閉まるようにするダンパ25が組み込まれる。なお、後述するように扉用装置9にもキャッチ機能が設けられる。このため、ヒンジ2のねじりばね24は省略することもできる。
【0018】
扉3の前後、左右、上下の位置を調節できるように、第1部本体17は、取付け座16(
図1、
図8も参照)に前後、左右、上下の位置を調節可能に取り付けられる。
図8に示す左右調節ねじ31を回すことで、第1部本体17の左右方向の位置、ひいては扉3の左右方向の位置を調節できる。
図3(b)に示す前後調節ねじ32を回すことで、中間プレート18に対する第1部本体17の前後方向の位置、ひいては扉3の前後方向の位置を調節できる。
図3(b)に示す上下調節ねじ33を回すことで、中間プレート18に対する第1部本体17の上下方向の位置、ひいては扉3の上下方向の位置を調節できる。
【0019】
扉用装置9のベース本体23には、筒状の止めねじ34が螺合する。ベース10の凹部21(
図2参照)に第1部本体17を前後方向に嵌めた状態で、止めねじ34を締めると、止めねじ34が第1部本体17の上下調節ねじ33にかぶさる。これにより、第1部本体17が前後方向に移動不可能になり、第1部本体17がベース10に取り付けられる。第1部本体17をベース10に取り付けた状態で、第1部本体17は取付け座16に着脱可能である。ベース本体23には、第1部本体17を取付け座16に取り付けた状態で、上記の位置調節ねじ31,32を操作できるように、孔、切欠き等のアクセス開口36,37が設けられる。止めねじ34にも、位置調節ねじ33を操作できるように、アクセス開口34aが設けられる。
【0020】
図4は、扉用装置9の分解斜視図を示す。扉用装置9は、ベース10と、ベース10に回転可能に支持されるアーム11と、アーム11に閉じ方向及び開き方向のトルクを働かせるための付勢手段としてのばね41と、を備える。アーム11には、スライダ42がアーム11の長さ方向にスライド可能に設けられる。スライダ42は、ばね41によってベース10のカム43に付勢される。カム43は、ばね41がスライダ42を押す力をアーム11を回転させるトルクに変換する。
【0021】
ベース10は、カム43が形成されるベース本体23と、ベース本体23の左右側面に取り付けられる左右一対の側壁22と、を備える。ベース本体23は、互いに対向する左右一対の側板部23aと、側板部23aを連結する連結板部23bと、を備えて、断面コ字状である。カム43は、ベース本体23の側板部23aに形成されていて、略円弧状である。カム43の一部には、扉3を開き位置に保つための凹所43aが形成される。ベース本体23には、上記の止めねじ34が螺合する。一対の側壁22それぞれは、板状である。一対の側壁22の上端部には、互いに向かって突出する一対の屈曲部22aが形成される。
【0022】
カム43の形状は、扉用装置9が閉じ位置にある扉3に閉じ方向のトルクを働かせるキャッチ機能、扉3をわずかな力で開けられるように扉3に開き方向のトルクを働かせるアシスト機能、扉3を任意の開き角度で停止させるフリーストップ機能、扉3を開き位置に保つキャッチ機能の少なくとも一つを持つように形成される。
【0023】
アーム11は、前後方向に細長い。アーム11は、互いに対向する左右一対の側板11aと、側板11aを連結する連結板11bと、を備えて、断面コ字状である。アーム11の側板11aの後端部は、ベース10の側壁22に軸44を介して回転可能に支持される。アーム11の側板11aには、スライダ42を案内するための長孔11a1が形成される。長孔11a1には、横長長方形の枠状のガイド体45が嵌められる。
【0024】
アーム11には、軸状のスライダ42がアーム11の長さ方向にスライド可能に設けられる。スライダ42の頭部42aには、ローラ46が回転可能に支持される。スライダ42の頭部42aには、ピン48が通される。ローラ46は、ローラーカラー47を介してピン48に回転可能に支持される。ピン48はガイド体45も貫通する。スライダ42の頭部42aは、ピン48を介してガイド体45に案内される。
【0025】
アーム11には、コイル状のばね41が収容される。ばね41の長さは、アーム11の略全長に渡る。ばね41は、スライダ42の軸部42bを囲むように配置されていて、頭部42aのローラ46をカム43に付勢する。ばね41の一端部には、ばね受け49が当接する。ばね受け49には、ねじ50が螺合する。アーム11の先端部には、L字の板状のばねケース51が固定される。ねじ50の頭部はばねケース51に当接する。ねじ50を回すことで、ばね受け49がアーム11の長さ方向に移動し、ばね41の力が調節される。ねじ50は、スライダ42の軸部42bの孔に挿入される。スライダ42は、その頭部42aがピン48を介してアーム11のガイド体45に案内され、その軸部42bがねじ50に案内される。
【0026】
ばねケース51には、アーム11の長さ方向に延びると共に、先端が下方に向かって円弧状に湾曲する溝51aが形成される。
図1に示すように、扉3に取り付けられる座12は、左右一対の側板部12aと、側板部12aを連結する連結板部12bと、を備え、断面コ字状である。座12の側板部12aの内面には、小径の円形の突起12a1(
図6参照)が形成される。この突起12a1がばねケース51の溝51aにスライド可能にかつ回転可能に嵌まる。
【0027】
図5(a)は扉3の閉じ位置を示し、
図5(b)は扉3の開き位置を示す。
図5(a)に示すように、扉3が閉じ位置にあるとき、アーム11は扉3と略平行であり、扉用装置9のキャッチ機能により扉3は閉じ位置に保たれる。
【0028】
扉3を開くと、アーム11が扉3と略平行な状態を保ったまま開き方向に回転し、座12がアーム11の先端に向かってスライドし始める。扉3を所定角度以上開くと、扉用装置9のアシスト機能により扉3をわずかな力で開けるようになる。また、扉用装置9のフリーストップ機能により、扉3から手を離しても扉3は任意の開き角度を保つ。
【0029】
図5(b)に示すように、扉3を開き位置まで開くと、アーム11が扉3と略平行な状態を保ったまま略水平方向を向くまで回転する。座12はアーム11の略先端までスライドする。扉3を開き位置まで回転させると、スライダ42のローラ46がカム43の凹所43aに嵌まり(
図4参照)、扉用装置9のキャッチ機能により扉3の開き位置が保たれる。
【0030】
扉3を開き位置から閉じるときには、上述と逆の動作になる。扉3を所定角度まで閉じると、扉用装置9のキャッチ機能により扉3が自動的に閉まる。このとき、ヒンジ2のダンパ25(
図3(b)参照)が作動して、扉3がゆっくり閉まる。なお、ダンパ25をヒンジ2の替わりに扉用装置9に設けることもできる。
【0031】
図6ないし
図8は、ヒンジ2及び扉用装置9の取付け方法の工程図を示す。まず、
図6に示すように、第3ねじ20を用いて扉3に座12を取り付ける。扉3には、あらかじめヒンジ2の第2部5が嵌められる凹部3aが形成されている。
【0032】
図7に示すように、ヒンジ2の第1部本体17に扉用装置9を取り付ける。座12の突起12a1を扉用装置9のアーム11の溝51aに嵌めた後、第2ねじ15を用いてヒンジ2の第2部5を扉3に取り付ける。
【0033】
図8に示すように、第1ねじ14を用いて本体1の天板1aにヒンジ2の取付け座16を取り付ける。ヒンジ2の第1部本体17を取付け座16にワンタッチで取り付ければ、扉用装置9を本体1に取り付けることができ、同時に扉3を本体1に取り付けることができる。なお、ヒンジ2の取付け座16に第1部本体17を取り付けた後、第1部本体17に扉用装置9をスライドさせて取り付けることもできる。
【0034】
以上に本発明の第1の実施形態の扉用装置9の構成を説明した。本実施形態の扉用装置9によれば、以下の効果を奏する。
【0035】
扉用装置9のベース10がヒンジ2の第1部4に取り付けられるので、ヒンジ2と扉用装置9とを一体化することができ、すっきりとした印象を与えることができる。また、ばね41を扉用装置9に設けるので、ばね41の選択の幅が広がり、必要なキャッチ機能及び/又はアシスト機能を確保することができる。
【0036】
ヒンジ2の第1部4が断面コ字状の第1部本体17を有し、扉用装置9のベース10を第1部本体17に取り付けるので、ヒンジ2の第1部4に扉用装置9のベース10をしっかりと取り付けることができる。
【0037】
アーム11を扉3に連結するための座12がヒンジ2の第2部5から離れているので、アーム11の長さを長くすることができ、アーム11に収容されるばね41を長くすることができる。このため、ばね41の選択の幅がさらに広がる。
【0038】
ヒンジ2の第1部4が、本体1に固定される取付け座16と、取付け座16に着脱可能に取り付けられる第1部本体17と、を有し、扉用装置9をヒンジの第1部本体17に取り付けるので、第1部本体17に取り付けた状態の扉用装置9を取付け座16に着脱可能にすることができる。
【0039】
扉用装置9のベース10にカム43を設けるので、アーム11に働くトルクを容易に制御できる。
【0040】
ベース10の凹部21が、ヒンジ2の第1部本体17の左右一対の側板17aに対応する左右一対の側壁22と、ベース本体23と、ベース本体23との間で一対の側板17aを上下方向に挟むように、一対の側壁22の上端部に曲げて設けられる一対の屈曲部22aと、によって画定されるので、ヒンジ2の第1部本体17に対してベース10を前後方向のみにスライド可能にすることができる。
(第2の実施形態)
【0041】
図9は、本発明の第2の実施形態の扉用装置61を示す。第1の実施形態では、アーム11が扉3に取り付けられる座12にスライド可能にかつ回転可能に連結される。第2の実施形態では、アーム11が扉3にリンク62を介して連結される。リンク62の一端部は、座12に回り対偶で、すなわち回転可能に連結される。リンク62の他端部は、アーム11に回り対偶で、すなわち回転可能に連結される。ヒンジ2、扉用装置61のその他の構成は、第1の実施形態と略同一なので、同一の符号を付してその説明を省略する。
(第3の実施形態)
【0042】
図10ないし
図12は、本発明の第3の実施形態の扉用装置63を示す。第1の実施形態では、扉用装置9のベース10がヒンジ2の第1部4の第1部本体17に取り付けられる。第3の実施形態では、
図10及び
図11に示すように、扉用装置63のベース10がヒンジ2の第1部4の取付け座16に取り付けられる。ベース10の側壁22には、外側に折り曲げられる係止片22bが形成される。係止片22bには、第1ねじ14が嵌まる溝22b1が形成される。ベース10と取付け座16は、第1ねじ14によって本体1に共締めされる。
図12に示すように、ベース10には、止めねじ34(
図4参照)の替わりに孔、切欠き等のアクセス開口64が形成される。ヒンジ2、扉用装置63のその他の構成は、第1の実施形態と略同一なので、同一の符号を付してその説明を省略する。
(第4の実施形態)
【0043】
図13は、本発明の第4の実施形態の扉用装置65を示す。第1の実施形態では、扉用装置9のベース10がスライドヒンジ2の第1部本体17に取り付けられる。第4の実施形態では、扉用装置65のベース10が1軸ヒンジ66の第1部67に取り付けられる。
図14に示すように、1軸ヒンジ66は、本体1に取り付けられる略板状の第1部67と、扉3に取り付けられる略板状の第2部68と、第1部67の筒部と第2部68の筒部とに挿入される軸69と、を備える。第1部67には、扉用装置65のベース10がスライド可能に嵌められる座67aが形成される。座67aは、第1部67から下方に突出する板状に形成される。座67aには、止めねじ34(
図4参照)が嵌まる筒体67bが一体に形成される。扉用装置65のベース10を座67aに嵌め、止めねじ34を筒体67bに嵌めることで、扉用装置65が1軸ヒンジ66の第1部67に取り付けられる。
(第5の実施形態)
【0044】
図15は、本発明の第5の実施形態の扉用装置71を示す。第1の実施形態では、
図4に示すように、アーム11が断面コ字状で金属製である。第5の実施形態では、
図15に示すように、アーム72が断面コ字状で金属製の基部フレーム72bと、断面略四角形で略筒状の樹脂製の本体フレーム72aと、を備える。金属製の基部フレーム72bは、樹脂製の本体フレーム72aの内側に嵌められていて、本体フレーム72aに固定される。基部フレーム72bは、ベース10の側壁22に軸73を介して回転可能に支持される。本体フレーム72aは、基部フレーム72bと同様にベース10の側壁22に軸73を介して回転可能に支持される。本体フレーム72aには、
図4で示すガイド体45、ばねケース51が一体に樹脂成形される。本体フレーム72a内には、
図4で示すばね41、ばね受け49、ねじ50が設けられる。また、本体フレーム72a内には、ばね41で付勢されるスライダ42がピン48を介してスライド可能に設けられる。
(第6の実施形態)
【0045】
図16は、本発明の第6の実施形態の扉用装置81を示す。第6の実施形態の扉用装置81と第1の実施形態の扉用装置9とは、主に以下の二点で相違する。一点目は、第6の実施形態の扉用装置81では、扉3に取り付けられる座82が第1座83と第2座84とを備え、第2座84が第1座83に対して軸85を中心にして回転可能である点である。二点目は、扉用装置81のベース86がヒンジ2の第1部4の取付け座16に取り付けられ、ベース86をヒンジ2の取付け座16に取り付けた状態で、扉3の位置を調節可能である点である。
【0046】
まず、第6の実施形態の座82を説明する。
図17に示すように、座82は、扉3に取り付けられる第1座83と、第1座83に軸85を中心にして回転可能な第2座84と、を備える。第1座83は、板状である。第1座83には、扉3に取り付けるためのねじ87(
図16参照)が通される長穴83aが形成される。第1座83には、軸85が固定される。軸85は、扉3と直交する。第2座84は、軸85に回転可能に支持される。第2座84は、コ字状であり、互いに対向する一対の側板部84aと、一対の側板部84aを連結する連結板部84bと、を備える。側板部84aの内側面には、アーム88の溝88c(
図16参照)にスライド可能に嵌まる突起84cが形成される。
【0047】
座82が傾いて扉3に取り付けられた場合や扉3の傾きがある場合等、扉3を閉めるにしたがって傾きの影響が大きくなり、座82とアーム88との摺動抵抗が大きくなる。本実施形態によれば、座82や扉3に傾きがあっても、第2座84が回転し、第2座84とアーム88との平行が保たれる。第2座84とアーム88との摺動抵抗が生じにくいので、扉用装置81の動作を安定させることができる。
【0048】
第6の実施形態の扉用装置81の構成は、以下のとおりである。
図16に示すように、第6の実施形態の扉用装置81は、第1の実施形態の扉用装置9と同様に、ヒンジ2の第1部4に取り付けられるベース86と、ベース86に回転可能に支持されるアーム88と、を備える。アーム88に連結される座82は、ヒンジ2の第2部5から離れている。
【0049】
図18は、扉用装置81の分解斜視図を示す。86はベース、88はアームである。アーム88には、アーム88に閉じ方向及び開き方向のトルクを働かせるばね92が収容される。また。アーム88には、スライダ93がアーム88の長さ方向にスライド可能に収容される。スライダ93は、ばね92によってベース86のカム94に付勢される。カム94は、ばね92がスライダ93を押す力をアーム88を回転させるトルクに変換する。
【0050】
ベース86は、カム94が形成されるベース本体90と、ベース本体90の左右側面に取り付けられる左右一対の側板91と、を備える。一対の側板91は、ベース本体90を中心にして左右対称に形成される。ベース本体90と側板91とは、かしめピン95等の結合手段によって結合される。左右方向に幅が広い取付け座16(
図16、
図20(a)参照)にベース86を取り付けることができるように、側板91の上板部91aは、外側に折り曲げられる。上板部91aには、取付け座16の先端部の突起16a(
図20(a)参照)に嵌まる開口91a1が形成される。また、上板部91aには、取付け座16の後端部に螺合するねじ96の頭部に引っかかる開放溝91a2が形成される。
【0051】
ベース本体90には、カム94が形成される。また、ベース本体90には、ベース86を取付け座16に取り付けた状態で、ヒンジ2の位置調節ねじ31,32,33(
図20(a)参照)にアクセスできるように、孔、切欠き等のアクセス開口90a,90b,90cが形成される。ヒンジ2の位置調節については後述する。
【0052】
アーム88は、左右一対の板状の外側アーム88aと、左右一対のケース状の内側アーム88bと、を備える。外側アーム88aは、金属製である。内側アーム88bは、樹脂製である。外側アーム88aと内側アーム88bとは、ピン96等の結合手段によって結合される。
【0053】
外側アーム88aは、ベース86に軸97を介して回転可能に支持される。内側アーム88bには、軸状のスライダ93がスライド可能に収容される。スライダ93には、ピン98を介してローラ99が回転可能に支持される。このローラ99がカム94に付勢される。ピン98は、外側アーム88aの長穴88a1に挿通される。スライダ93の直線運動は、ピン98を介して外側アーム88aに案内される。
【0054】
内側アーム88bの外側面には、座82の突起84cがスライド可能に嵌められる溝88cが形成される。溝88cは、内側アーム88bに沿って延びる。溝88cの先端部88c1は、下方に向かって円弧状に湾曲する。溝88cの基端部88c2は、上方に向かって円弧状に湾曲し、開放する。
【0055】
内側アーム88bには、スライダ93をカム94に付勢するコイル状のばね92が収容される。ばね92の一端部がスライダ93に当接する。ばね92の他端部には、ばね受け100が当接する。ばね受け100は、内側アーム88b内をスライド可能である。内側アーム88bには、プレートナット101が収容される。プレートナット101には、ねじ穴101aが形成される。プレートナット101には、ねじ102が螺合する。ねじ102の先端は、補強プレート103を介してばね受け100に当接する。内側アーム88bの先端部には、ねじ102を操作するための調整用穴88b1が形成される。
【0056】
ばね92の力は、ねじ102によって調整される。
図19(a)は、ばね92の力を最大にした状態を示し、
図19(b)は、ばね92の力を最小にした状態を示し、
図19(c)は、ねじ102がプレートナット101から外れた状態を示す。プレートナット101に螺合するねじ102を回すと、プレートナット101とばね受け100との間の間隔が調整される。プレートナット101は、内側アーム88bに当接していて、ねじ102を回すと、ばね受け100がアーム88の長さ方向に移動し、ばね92の長さが調整される。
図19(c)に示すように、調整用穴88b1の大きさは、ねじ102の頭部よりも小さい。このため、ねじ102がプレートナット101から外れても、ねじ102がアーム88から抜け落ちることはない。ねじ102を締めると、再び
図19(a)(b)に示すように、ねじ102がプレートナット101に螺合する状態に戻る。
【0057】
以下に、第6の実施形態の扉用装置81の取付け方法を説明する。まず、
図20(a)に示すように、本体1にヒンジ2の第1部4の取付け座16を取り付け、扉3にヒンジ2の第2部5及び座82を取り付ける。ヒンジ2は、第1の実施形態と略同様な構成である。すなわち、ヒンジ2は、スライドヒンジであり、第1部4と、第2部5と、第1部4と第2部5に回転可能に連結される内側リンク7及び外側リンク8(
図19(a)参照)と、を備える。第1部4は、取付け座16と、取付け座16にワンタッチで着脱可能に取り付けられる第1部本体17と、を備える。
【0058】
ヒンジ2の取付け座16には、取付け座16に扉用装置81を取り付けるためのねじ96がねじ込まれる。ねじ96は、完全にはねじ込まれておらず、少しだけねじ込まれる。
【0059】
次に、
図20(b)に示すように、第1部本体17を取付け座16に取り付け、本体1に扉3を組み付ける。この状態で扉3の左右調節、上下調節(かぶせ量調節)、及び前後調節を行う。
図20(a)に示す左右調節ねじ31を回すことで、第1部本体17の左右方向の位置、ひいては扉3の左右方向の位置を調節できる。
図20(b)に示す前後調節ねじ32を回すことで、第1部本体17の前後方向の位置、ひいては扉3の前後方向の位置を調節できる。
図20(b)に示す上下調節ねじ33を回すことで、第1部本体17の上下方向の位置、ひいては扉3の上下方向の位置を調節できる。
【0060】
次に、
図21(a)に示すように、扉用装置81を座82に近づけ、座82の突起82cが扉用装置81のアーム88の溝88cの基端部88c2に入るようにする。そして、
図21(b)に示すように、座82の突起82cを溝88cの先端部88c1まで移動させる。
【0061】
次に、
図22(a)〜(b)に示すように、扉用装置81のベース86の開放溝91a2をねじ96に引っ掛け、
図22(c)に示すように、ベース86を後方に移動させ、ベース86の開口91a1を取付け座16の先端の突起16aに引っ掛ける。この状態で、扉3は開き位置にあり、扉用装置81は取付け座16に仮保持される。次に、
図22(d)に示すように、ねじ96,106を本体1に締め込み、ベース86を取付け座16に取り付ける。扉3は開いた状態で保持されているので、扉3から手を放してねじ込みの作業が可能である。
【0062】
扉用装置81を取付け座16に取り付けた後のヒンジ2の位置調節は、以下のように行われる。
図23(a)は、第1部本体17の位置調節前の状態を示し、
図23(b)は、第1部本体17を前方向に位置調節した後の状態を示し、
図23(c)は、第1部本体17を下方向に位置調節した後の状態を示し、
図23(d)は、第1部本体17を後ろ方向に位置調節した後の状態を示す。上述の前後及び上下調節ねじ32,33を回せば、第1部本体17が前後方向及び上下方向に移動する。
【0063】
扉用装置81のベース86は、取付け座16に取り付けられる。ベース86は、第1部本体17が前後方向及び上下方向に移動しても、第1部本体17に干渉しない形状に形成される。このため、ねじ96でベース86を取付け座16に取り付けた状態で、第1部本体17ひいては扉3の前後方向及び上下方向の位置を調節できる。
【0064】
図24は、ベース86の底面図を示す。
図24(a)は、第1部本体17の位置調節前の状態を示し、
図24(b)は、第1部本体17を右方向に位置調節した後の状態を示し、
図24(c)は、第1部本体17を左方向に位置調節した後の状態を示す。第1部本体17の左右方向の位置調節を行う場合には、ねじ96,106を緩め、ベース86を取付け座16から緩める。そして、左右調節ねじ31を回す。調整後、ねじ96,106を再度締める。これにより、ベース86と共に第1部本体17の左右方向の位置を調節でき、扉3の左右方向の位置を調節できる。
【0065】
なお、本発明は、上記実施形態に具現化されるのに限られることはなく、本発明の要旨を変更しない範囲で様々な実施形態に具現化可能である。
【0066】
上記実施形態では、扉用装置を取り付けたヒンジの第1部を本体に取り付け、ヒンジの第2部を扉に取り付けているが、ヒンジの第1部を扉に取り付け、ヒンジの第2部を本体に取り付けることもできる。
【0067】
扉用装置の各部の形状、構造は一例であり、本発明の要旨を変更しない範囲で他の形状、構造を採用し得る。
【0068】
例えば上記実施形態では、アームが座に直接的に連結され、アームが座を介して扉に連結されているが、アームがヒンジの第2部に直接的に連結され、アームがヒンジの第2部を介して扉に連結されてもよい。
【0069】
上記実施形態では、ヒンジの第1部の第1部本体が取付け座に着脱可能に取り付けられているが、ヒンジの第1部の第1部本体が取付け座に分離不可能に一体でもよい。
【0070】
上記実施形態では、スライダとアームの基端部のカムを用いて、ばねの力をアームのトルクに変換しているが、スライダとアームの基端部とをリンクで連結し、このリンクを用いて、ばねの力をアームのトルクに変換することもできる。
【0071】
上記実施形態では、扉用装置を家具の扉に適用した例を説明したが、家具の扉に限られることはなく、建築物の扉、機械装置の扉に適用することができる。また、上記実施形態では、扉が上開きの例を説明したが、扉は左右開きでも、下開きでもよい。さらに、
図25に示すように、本実施形態の扉用装置は、上蓋や下蓋にも適用することができる。
図25(a)は上蓋104の開き位置を示し、
図25(b)は上蓋104の閉じ位置を示す。105は本体である。
【0072】
本明細書は、2017年5月24日出願の特願2017−102850に基づく。この内容はすべてここに含めておく。