特許第6563625号(P6563625)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6563625
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】緩衝器
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/32 20060101AFI20190808BHJP
   F16F 9/34 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
   F16F9/32 J
   F16F9/34
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-518578(P2019-518578)
(86)(22)【出願日】2019年4月3日
(86)【国際出願番号】JP2019014816
【審査請求日】2019年4月5日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000146010
【氏名又は名称】株式会社ショーワ
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(74)【代理人】
【識別番号】100192533
【弁理士】
【氏名又は名称】奈良 如紘
(72)【発明者】
【氏名】中川 尚
(72)【発明者】
【氏名】多田 峻平
【審査官】 大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−108884(JP,A)
【文献】 特開2004−052879(JP,A)
【文献】 特開2009−108937(JP,A)
【文献】 特開2004−044669(JP,A)
【文献】 特開2016−194355(JP,A)
【文献】 特開2012−077886(JP,A)
【文献】 特開2015−075133(JP,A)
【文献】 特開2004−044643(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/32
F16F 9/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状を呈するアウタチューブと、
このアウタチューブの内部に設けられ、前記アウタチューブに対して相対的に移動可能に設けられていると共に、内部にオイルが充填された筒状のインナチューブと、
このインナチューブの内部に設けられ、前記アウタチューブ又は前記インナチューブによって支持されている、前記インナチューブの軸方向に沿って延びた棒状のロッドと、
このロッドに固定され、前記インナチューブが前記アウタチューブに対して移動した際に、減衰力を発生させるピストンと、
前記アウタチューブ及び前記インナチューブを互いに離間する方向に付勢する付勢部材と、
前記ロッドの外周に設けられ、内周が前記ロッドに当接し、前記ロッドを保持している保持部材と、
この保持部材の内部に形成され前記オイルが通過可能な部位であって、前記保持部材の軸方向一端から前記ロッドに沿って延びる第1流路、この第1流路の端部から前記ロッドの径方向に沿って延びる第2流路、及び、この第2流路の端部から前記保持部材の軸方向他端まで前記ロッドに沿って延びる第3流路を含む流路と、を有し、
前記第1流路と前記第3流路との間に環状のリング状部材が配置され、
前記リング状部材には、外縁から前記ロッドに向かって凹んだ凹部が、前記第1流路から前記第3流路までを繋ぐよう備えられ、
前記第2流路は、前記凹部によって構成されていることを特徴とする緩衝器。
【請求項2】
前記保持部材は、
前記インナチューブの内側に設けられ、前記インナチューブの軸方向に延びた筒状の第1本体部を含む第1部材と、
この第1部材の内側且つ前記ロッドの外側に設けられ、前記インナチューブの軸方向に延びた筒状の第2本体部、及び、前記第2本体部から前記第1本体部に向かって突出する第2突出部を有している第2部材と、を有し、
前記第1流路に、前記第1本体部及び前記第2突出部の間に形成された空間が含まれることを特徴とする請求項記載の緩衝器。
【請求項3】
前記第1部材は、前記第1本体部から前記第2本体部に向かって突出する第1突出部を有し、
前記第3流路に、前記第1突出部及び前記第2本体部の間に形成された空間が含まれることを特徴とする請求項記載の緩衝器。
【請求項4】
前記凹部は、前記板部材に備えられるスリットであることを特徴とする請求項〜請求項のいずれかに記載の緩衝器。
【請求項5】
スリット状の前記凹部を複数有することを特徴とする請求項記載の緩衝器。
【請求項6】
上部に配置された筒状のアウタチューブと、
このアウタチューブの内部から下方に延び、前記アウタチューブに対して相対的に移動可能に設けられていると共に、内部にオイルが充填されている筒状のインナチューブと、
このインナチューブの内部に設けられ前記アウタチューブ又は前記インナチューブによって支持されているロッドと、
このロッドに固定され、前記インナチューブが前記アウタチューブに対して移動した際に、減衰力を発生させるピストンと、
前記アウタチューブ及び前記インナチューブを離間する方向に付勢する付勢部材と、
前記ロッドの外周に設けられ、内周が前記ロッドに当接し、前記ロッドを保持している保持部材と、を有し、
前記保持部材は、
前記インナチューブの内周に沿って設けられた筒状の第1本体部、及び、この第1本体部から前記ロッドの軸線に向かって突出する第1突出部を有する第1部材と、
この第1部材の内側且つ前記ロッドの外側に設けられた筒状の第2本体部、及び、前記第1突出部の下方において前記第2本体部から前記第1本体部に向かって突出する第2突出部を有し、この第2突出部が前記第1突出部に向かって付勢されている第2部材と、
前記第1突出部及び前記第2突出部によって挟み込まれた環状の部材であって、外縁から前記第1突出部の先端よりも前記ロッド側まで凹んでいる凹部を、複数有するリング状部材と、
前記第1本体部及び前記第2突出部の間に存在する空間であって前記オイルが通過可能な第1流路と、
前記凹部によって画定される空間であって前記オイルが通過可能な第2流路と、
前記第1突出部及び前記第2本体部の間に存在する空間であって前記オイルが通過可能な第3流路を含む流路と、を有することを特徴とする緩衝器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロッドを保持する保持部材が備えられた緩衝器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動二輪車の前輪は、フロントフォークと称する緩衝器を介して車体に支持されている。このような緩衝器は、相対的に移動可能に設けられた二重の筒の内部にロッドが設けられ、このロッドに減衰力を発生させるためのピストンが備えられてなる。さらに、一部の緩衝器は、ロッドの外周を保持する保持部材を備えている。保持部材を備えた緩衝器に関する従来技術として、特許文献1に開示される技術がある。
【0003】
特許文献1に示されるような、油圧緩衝器は、インナチューブの内周に隔壁部材を設け、隔壁部材の下部に作動油室が、上部に油溜室が、それぞれ区画されている。また、アウタチューブ側に取付けたピストンロッドを、隔壁部材を貫通して作動油室内に挿入し、ピストンロッドの先端部に作動油室内を摺動するピストンを設けている。さらに、隔壁部材に、ピストン側油室と環状油室を連通する油孔を設けている。
【0004】
ピストン側油室と油溜室とを連通することにより、ピストン側油室の油圧と油溜室の油圧とを同じにすることができる。これにより、ピストンを円滑に作動させることができ、安定した減衰力を発生させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−44669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、緩衝器の一般的な課題として、小型化が挙げられる。この点、特許文献1に開示された油圧緩衝器の構造をそのまま維持しながら、小型化のためにインナチューブ及びアウタチューブの径を小さくすると、隔壁部材の径も小さくなる。その結果、ピストン側油室と油溜室とを連通する油孔を隔壁部材に設けることが困難になり、ピストンの円滑な作動が妨げられる虞がある。ピストンの円滑な作動が妨げられると減衰力を発生させ難くなる虞があるため、小型化しても減衰力を確実に発生させることが可能な、新構造の開発が求められていた。
【0007】
本発明は、小型化しても減衰力を確実に発生させることができる緩衝器の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討の結果、(1)ロッドを保持している保持部材の内部に、ロッドの軸線に沿って延びた流路とロッドの径方向に延びた流路とを組み合わせた流路を形成することにより、小型化してもピストンを円滑に作動させることが可能になること、(2)保持部材の内部にリング状部材を配置することにより、上記流路を容易に形成できることを知見した。本発明は、当該知見に基づいて完成させた。
【0009】
以下、本発明について説明する。以下の説明では、本発明の理解を容易にするために添付図面中の参照符号を括弧書きで付記するが、それによって本発明は図示の形態に限定されるものではない。
【0010】
本発明の一面によれば、筒状を呈するアウタチューブ(12)と、
このアウタチューブ(12)の内部に設けられ、前記アウタチューブ(12)に対して相対的に移動可能に設けられていると共に、内部にオイル(Oi)が充填された筒状のインナチューブ(13)と、
このインナチューブ(13)の内部に設けられ、前記アウタチューブ(12)又は前記インナチューブ(13)によって支持されている、前記インナチューブ(13)の軸方向に沿って延びた棒状のロッド(14)と、
このロッド(14)に固定され、前記インナチューブ(13)が前記アウタチューブ(12)に対して移動した際に、減衰力を発生させるピストン(15)と、
前記アウタチューブ(12)及び前記インナチューブ(13)を互いに離間する方向に付勢する付勢部材(16)と、
前記ロッド(14)の外周に設けられ、内周が前記ロッド(14)に当接していると共に外周が前記インナチューブ(13)に当接し、前記ロッド(14)を保持している保持部材(20;20B)と、
この保持部材(20;20B)の内部に形成され前記オイル(Oi)が通過可能な部位であって、前記保持部材(20;20B)の軸方向一端から前記ロッド(14)に沿って延びる第1流路(R1)、この第1流路(R1)の端部から前記ロッド(14)の径方向に沿って延びる第2流路(R2)、及び、この第2流路(R2)の端部から前記保持部材(20;20B)の軸方向他端まで前記ロッド(14)に沿って延びる第3流路(R3)を含む流路(R)と、を有し、
【0011】
記第1流路(R1)と前記第3流路(R3)との間に環状のリング状部材(25;65)が配置され、
前記リング状部材(25;65)には、外縁からロッドに向かって凹んだ凹部(25a;65a)が、前記第1流路(R1)から前記第3流路(R3)までを繋ぐように備えられ、
前記第2流路(R2)は、前記凹部(25a;65a)によって構成されていることを特徴とする緩衝器が提供される
【0012】
また、前記保持部材(20)は、
前記インナチューブ(13)の内側に設けられ、前記インナチューブの軸方向に延びた筒状の第1本体部(41)を含む第1部材(40)と、
この第1部材(40)の内側且つ前記ロッド(14)の外側に設けられ、前記インナチューブの軸方向に延びた筒状の第2本体部(51)、及び、前記第2本体部(51)から前記第1本体部(41)に向かって突出する第2突出部(52)を有している第2部材(50)と、を有し、
前記第1流路(R1)に、前記第1本体部(41)及び前記第2突出部(52)の間に形成された空間が含まれていても良い。
【0013】
また、前記第1部材(40)は、前記第1本体部(41)から前記第2本体部(51)に向かって突出する第1突出部(42)を有し、
前記第3流路(R3)に、前記第1突出部(42)及び前記第2本体部(51)の間に形成された空間が含まれていても良い。
【0014】
また、前記凹部(25a)は、前記リング状部材(25)に備えられるスリットであっても良い。
【0015】
また、スリット状の前記凹部(25a)を複数有していても良い。
【0017】
本発明の別の面によれば、上部に配置された筒状のアウタチューブ(12)と、
このアウタチューブ(12)の内部から下方に延び、前記アウタチューブ(12)に対して相対的に移動可能に設けられていると共に、内部にオイル(Oi)が充填されている筒状のインナチューブ(13)と、
このインナチューブ(13)の内部に設けられ前記アウタチューブ(12)又は前記インナチューブ(13)によって支持されているロッド(14)と、
このロッド(14)に固定され、前記インナチューブ(13)が前記アウタチューブ(12)に対して移動した際に、減衰力を発生させるピストン(15)と、
前記アウタチューブ(12)及び前記インナチューブ(13)を離間する方向に付勢する付勢部材(16)と、
前記ロッド(14)の外周に設けられ、内周が前記ロッド(14)に当接し、前記ロッド(14)を保持している保持部材(20)と、を有し、
前記保持部材(20)は、
前記インナチューブ(13)の内周に沿って設けられた筒状の第1本体部(41)、及び、この第1本体部(41)から前記ロッド(14)に向かって突出する第1突出部(42)を有する第1部材(40)と、
この第1部材(40)の内側且つ前記ロッド(14)の外側に設けられた筒状の第2本体部(51)、及び、前記第1突出部(42)の下方において前記第2本体部(51)から前記第1本体部(41)に向かって突出する第2突出部(52)を有し、この第2突出部(52)が前記第1突出部(42)に向かって付勢されている第2部材(50)と、
前記第1突出部(42)及び前記第2突出部(52)によって挟み込まれた環状の部材であって、外縁から前記第1突出部(42)の先端よりも前記ロッド(14)側まで凹んでいる凹部(25a;65a)を、複数有するリング状部材(25;65)と、
前記第1本体部(41)及び前記第2突出部(52)の間に存在する空間であって前記オイル(Oi)が通過可能な第1流路(R1)と、
前記凹部(25a;65a)によって画定される空間であって前記オイル(Oi)が通過可能な第2流路(R2)と、
前記第1突出部(42)及び前記第2本体部(51)の間に存在する空間であって前記オイル(Oi)が通過可能な第3流路(R3)を含む流路と、を有することを特徴とする緩衝器が提供される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、小型化しても減衰力を確実に発生させることができる緩衝器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施例1による緩衝器の正面図である。
図2図1の2部を拡大してい示す図である。
図3図2に示されたリング状部材の平面図である。
図4図2に示された緩衝器の作用を説明する図である。
図5】実施例2による緩衝器に用いられるリング状部材の平面図である。
図6参考例による緩衝器の要部を拡大して示す図である。
図7図6に示された第2部材の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、説明中、左右とは車両の乗員を基準として左右、前後とは車両の進行方向を基準として前後を指す。また、図中Frは前、Rrは後、Leは乗員から見て左、Riは乗員から見て右、Upは上、Dnは下を示している。添付図に示した形態は本発明の一例であり、本発明は当該形態に限定されない。
<実施例1>
【0021】
図1を参照する。図1には、本発明による緩衝器10が示されている。緩衝器10は、例えば、二輪車の前輪を支持する倒立型フロントフォークである。
【0022】
緩衝器10は、上部に配置され上端が蓋体11によって閉じられているアウタチューブ12と、このアウタチューブ12の内部から下方に延びアウタチューブ12に対して相対的に移動可能に設けられているインナチューブ13と、このインナチューブ13の内部に設けられアウタチューブ12によって支持されているロッド14と、このロッド14に固定され減衰力を発生させることが可能なピストン15と、このピストン15を介してアウタチューブ12を上方に付勢している付勢部材16と、ロッド14の外周に設けられロッド14を保持している保持部材20と、を有する。
【0023】
アウタチューブ12は、上部が車体に支持される筒状の部材である。アウタチューブ12の軸中心は、ロッド14の軸線CLに一致しており、アウタチューブ12の軸方向は軸線CLと平行である。
【0024】
インナチューブ13は、上部がアウタチューブ12の内部に設けられ、下部が外部に露出している。インナチューブ13の下部は、前輪の軸に固定される。インナチューブ13は、内部にオイルOiが充填されている。インナチューブ13の軸中心は、ロッド14の軸線CLに一致しており、インナチューブ13の軸方向は軸線CLと平行である。
【0025】
ロッド14は、一端が蓋体11によって支持され、アウタチューブ12と共に変位可能である。即ち、ロッド14は、インナチューブ13に対して、相対的に移動可能に設けられている。
【0026】
ピストン15は、ロッド14と共にインナチューブ13の内周面に沿って移動可能である。ピストン15は、内部をオイルOiが通過可能であり、ロッド14と共に移動した際に、減衰力を発生させる。ここで、インナチューブ13は、アウタチューブ12、ロッド14及びピストン15に対して、相対的に移動可能に設けられている。このため、ピストン15は、インナチューブ13がアウタチューブ12に対して移動した際に、減衰力を発生させる、ということもできる。ピストン15は、伸長時及び圧縮時の両方において減衰力を発生させる。
【0027】
付勢部材16は、コイルばねによって構成され、一端がインナチューブ13に当接していると共に他端がピストン15の近傍に当接している。付勢部材16は、ピストン15及びロッド14を介して、アウタチューブ12を上方に向かって付勢している。付勢部材16の付勢力は、アウタチューブ12及びインナチューブ13を互いに離間させる方向に作用する。
【0028】
図2を参照する。保持部材20は、内周がロッド14に当接していると共に外周がインナチューブ13に当接し、ロッド14を保持している。
【0029】
保持部材20は、蓋体11(図1参照)に支持された筒状の支持筒21と、この支持筒21に固定されインナチューブ13の内周に沿って設けられている第1部材40と、この第1部材40の外周に嵌め込まれインナチューブ13の内周に当接しているシール23と、第1部材40の内側且つロッド14に沿って設けられている第2部材50と、これらの第2部材50及び第1部材40によって挟み込まれている環状のリング状部材25と、第2部材50及びロッド14の間に設けられている2つのカラー26、27と、第1部材40の内周に固定されC字リング状の止め輪31と、この止め輪31によって抜けが防止されている受け座32と、この受け座32に一端が当接し他端が第2部材50に当接し第2部材50をリング状部材25に向かって付勢している第2部材付勢部33と、を有する。
【0030】
支持筒21は、複数の個所においてかしめられている。支持筒21は、かしめられ変形したかしめ部21aを介して、第1部材40に締結されている。
【0031】
第1部材40は、インナチューブ13の内周面に沿って設けられインナチューブ13の軸方向に延びた略筒状の第1本体部41と、この第1本体部41からロッド14に向かって突出する第1突出部42と、を有する。
【0032】
第1本体部41の外周には、かしめられた支持筒21の一部が噛み込んでいるかしめ溝41aと、シール23が嵌め込まれているシール溝41bと、が周方向に連続して形成されている。支持筒21は、かしめ溝41aに向かって断続的に複数個所でかしめられている。
【0033】
第1本体部41の内周には、受け座32を収納するために拡径された第1収納凹部41cと、この第1収納凹部41cの一部であって止め輪31が嵌め込まれている止め輪溝41dと、が周方向に連続して形成されている。
【0034】
第1突出部42は、第1本体部41の上端に、第1本体部41と一体的に形成されている。第1突出部42は、第1本体部41の内周に周方向に亘って連続して形成され、第1本体部41から第2部材50に向かって突出している。
【0035】
シール23には、例えば、Oリングを採用することができる。
【0036】
第2部材50は、第1本体部41の内側且つロッド14の外側にに沿って設けられた略筒状の第2本体部51と、第1突出部42の下方において第2本体部51から第1本体部41に向かって外方に突出する第2突出部52と、を有している。
【0037】
第2本体部51の内周には、カラー26、27を収納するために拡径された第2収納凹部51aが、周方向に亘って連続して形成されている。
【0038】
第2突出部52は、第1突出部42に向かって付勢されている。第2突出部52の上面の一部は、周方向に連続する円環溝52aによって形成されている。円環溝52aの外縁にリング状部材25が載せられている。
【0039】
第2突出部52は、第1本体部41に向かって突出している。この上方において第1突出部42は、第2本体部51に向かって突出している。
【0040】
リング状部材25は、第1突出部42及び第2突出部52によって挟み込まれた環状のリング状部材である。
【0041】
図3を併せて参照する。リング状部材25は、外縁から第1突出部42の先端よりもロッド14側まで凹んだ凹部25aを、3か所(複数)に有する。凹部25aは、いずれもスリット状に形成され、周方向に略120°ずつ離間している。
【0042】
凹部25aは、例えば、リング状部材25の中央に形成された丸穴と共に、打ち抜き加工によって形成することができる。つまり、リング状部材25は、1つの工程によって金属板から形成することができる。
【0043】
図2を参照する。受け座32は、略リング状の部材であり、オイルOiが通過するオイル通過穴32aが複数形成されている。
【0044】
第2部材付勢部33は、板ばねである。
【0045】
以上に説明した保持部材20の内部には、オイルOiが通過可能な流路Rが形成されている。流路Rは、第1本体部41及び第2突出部52の間に形成された空間である第1流路R1と、凹部25aによって形成された空間である第2流路R2と、第1突出部42及び第2本体部51の間に形成された空間である第3流路R3と、を含む。
【0046】
第1流路R1は、保持部材20の一端からロッド14の軸線CLに沿って延び、第2流路R2は、第1流路R1の端部からロッド14の径方向に沿って延び、第3流路R3は、第2流路R2の端部から保持部材20の他端までロッド14の軸線CLに沿って延びている。
【0047】
第3流路R3は、第1流路R1よりも上方に位置していると共に、第1流路R1よりもロッド14の軸線CLに近い部位に位置している。第3流路R3は、第1突出部42及び第2本体部51の間に形成された空間によって構成されている、ということもできる。
【0048】
リング状部材25は、第1流路R1と第3流路R3との間に配置されている。凹部25aは、第1流路R1から第3流路R3までを繋ぐように形成されている。
【0049】
次に、緩衝器10の作用について説明する。
【0050】
図1を参照する。二輪車の走行中に路面の凹凸に前輪が乗り上げると、緩衝器10には、アウタチューブ12とインナチューブ13とが互いに近づくように荷重が加わる。このとき、アウタチューブ12及びインナチューブ13は、付勢部材16の付勢力に抗して、互いに近づくように変位する。インナチューブ13に対して、アウタチューブ12が変位すると、アウタチューブ12と共に、ロッド14、保持部材20及びピストン15も変位する。ピストン15が変位することにより、ピストン15の内部をオイルOiが通過し、減衰力を発生させる。
【0051】
図4を参照する。荷重が加わることにより、インナチューブ13に対して、アウタチューブ12、ロッド14及び保持部材20は、下方に向かって変位する。ロッド14及び保持部材20が変位することにより、これらの体積分のオイルOiが流路Rを通過する。このとき、オイルOiは、第1流路R1、第2流路R2、第3流路R3の順に流れ、保持部材20下方の主室Maから保持部材20上方の副室Suへと流入する。
【0052】
図1を参照する。次に、付勢部材16の付勢力によって、アウタチューブ12及びインナチューブ13は、互いに離間する方向へ付勢される。インナチューブ13に対して、アウタチューブ12が変位することにより、ピストン15も変位し、減衰力を発生させる。
【0053】
図4を参照する。このとき、インナチューブ13に対して、アウタチューブ12、ロッド14及び保持部材20は、上方に向かって変位する。ロッド14及び保持部材20が変位することにより、これらの体積分のオイルOiが流路Rを通過する。このとき、オイルOiは、第3流路R3、第2流路R2、第1流路R1の順に流れ、保持部材20副室Suから主室Maへと流入する。
【0054】
以上に説明した緩衝器10は、以下の効果を奏する。
【0055】
緩衝器10は、ロッド14を保持している保持部材20の内部に、オイルOiが通過可能な流路Rが形成されている。これにより、保持部材20の上下における油圧を均一に保つことができ、ピストン15(図1参照)の円滑な作動を確保することができる。ピストン15が円滑に作動することにより、減衰力を確実に発生させることができる。
【0056】
加えて、オイルOiが通過可能な流路Rは、保持部材20の内部に形成されている。これにより、径方向に緩衝器10を小型化することができる。
【0057】
以上から、小型化しても減衰力を確実に発生させることができる緩衝器10を提供することができる。
【0058】
また、第3流路R3は、ロッド14の径方向を基準として、第1流路R1に対してオフセットされている。換言すれば、第3流路R3の軸は、第1流路R1の軸と、ロッド14の径方向にずれている。緩衝器10のメンテナンスにおいて、蓋体11(図1参照)を外すことがある。この際、インナチューブ13内のオイルOiが噴出することがある。第3流路R3及び第1流路R1が径方向にオフセットされ、保持部材20の内部がラビリンス構造とされていることにより、蓋体11を外した際に生じ得るオイルOiの噴出を抑制することができる。
【0059】
リング状部材25には、外縁からロッド14に向かって凹んだ凹部25aが、第1流路R1から第3流路R3までを繋ぐように形成されている。この凹部25aによって、第2流路R2は、構成されている。第1流路R1及び第3流路R3に対して略垂直に形成される第2流路R2を、リング状部材25の凹部25aによって構成する。これにより、保持部材20の内部に簡便に第2流路R2を形成することができ、好ましい。
【0060】
第1流路R1は、第1本体部41及び第2突出部52の間に形成された空間によって構成されている。第1部材40及び第2部材50を配置することにより第1流路R1が形成されるため、保持部材20の内部に簡便に第1流路R1を形成することができ、好ましい。
【0061】
第3流路R3は、第1突出部42及び第2本体部51の間に形成された空間によって構成されている。第1部材40及び第2部材50を配置することにより第3流路R3が形成されるため、保持部材20の内部に簡便に第3流路R3を形成することができ、好ましい。
【0062】
凹部25aは、スリット状に形成されている。容易に加工することができるため、リング状部材25の加工コストを安価にすることができ、好ましい。
【0063】
スリット状の凹部25aは、複数形成されている。部品ごとの寸法誤差やあそびによって、第1部材40に対して、ロッド14、第2部材50、リング状部材25は、径方向に変位することがある。このとき、いずれかの凹部25aと第1突出部42との重なり量が大きくなり、オイルOiの通過が困難になることがある。凹部25aが複数形成されていることにより、他の凹部25aによって第2流路R2が確保され、確実にオイルOiを通過させることができる。本発明において、凹部25aの数は特に限定されない。ただし、オイルOiを通過させやすい形態にする観点から、凹部25aは2つ以上であることが好ましく、3つ以上であることがさらに好ましい。
【0064】
次に、本発明の実施例2を図面に基づいて説明する。
<実施例2>
【0065】
図5には、実施例2の緩衝器10Aに用いられるリング状部材65が示されている。実施例2による緩衝器10Aにおいては、実施例1による緩衝器10(図2参照)に用いたリング状部材25に代え、略X字状のリング状部材65が採用されている。その他の基本的な構成については、実施例1による緩衝器と共通する。実施例1と共通する部分については、符号を流用すると共に、詳細な説明を省略する。
【0066】
リング状部材65には、略円弧状の切り欠きである凹部65aが略90°毎に4か所に形成されている。緩衝器10Aにおいても、凹部65aによって第2流路R2(図2参照)が形成される。
【0067】
以上に説明した緩衝器10Aも本発明所定の効果を奏する。
【0068】
次に、参考例を図面に基づいて説明する。
参考例
【0069】
図6は、参考例による緩衝器10Bの断面構成を示し、上記図2に対応させて表している。参考例による緩衝器10Bにおいては、実施例1による緩衝器10(図2参照)に用いたリング状部材25(図3参照)に代え、第2部材50Bの一部によって第2流路R2を形成している。その他の基本的な構成については、実施例1による緩衝器と共通する。実施例1と共通する部分については、符号を流用すると共に、詳細な説明を省略する。
【0070】
図7を併せて参照する。第2流路R2は、第2突出部52Bの外縁からロッド14に向かって凹状に形成された溝部52Bcによって構成されている。溝部52Bcは、それぞれ、円環溝52aに接続されている。溝部52Bcの底面と、円環溝52aの底面とは、いわゆる面一とされている。
【0071】
以上に説明した緩衝器10Bも本発明所定の効果を奏する。
【0072】
さらに、第2流路R2は、第2突出部52Bの外縁からロッド14に向かって凹状に形成された溝部52Bcによって構成されている。リング状部材25(図2参照)を用いないため、少ない部品点数によって緩衝器10Bを構成することができる。
【0073】
加えて、溝部52Bcは、複数形成されていると共に、これらの溝部52Bcは、第2突出部52Bに円環状に形成された円環溝52aによってそれぞれ接続され、この円環溝52aの少なくとも一部は、第3流路R3に臨んでいる。ロッド14や第1部材51が径方向に変位している場合であっても、より円滑にオイルOiを流すことができる。
【0074】
尚、本発明による緩衝器は、倒立型のフロントフォークを例に説明したが、正立型のフロントフォークやリヤダンパ装置であっても適用可能である。また、ロッド14は、インナチューブ13に支持されていてもよい。この場合、支持筒21は、インナチューブ13に支持されることとしてもよいし、支持筒21を用いない構成とすることもできる。
【0075】
さらに、本発明による緩衝器は、これらの形式のものに限られるものではない。即ち、本発明の作用及び効果を奏する限りにおいて、本発明は、実施例に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の緩衝器は、二輪車のフロントフォークに好適である。
【符号の説明】
【0077】
10、10A、10B…緩衝器
12…アウタチューブ
13…インナチューブ
14…ロッド
15…ピストン
16…付勢部材
20、20B…保持部材
25、65…リング状部材、25a、65a…凹部
40…第1部材
41…第1本体部
42…第1突出部
50、50B…第2部材
51…第2本体部
52、52B…第2突出部、52Bc…溝部
R…流路
R1…第1流路
R2…第2流路
R3…第3流路
CL…(ロッドの)軸線
Oi…オイル
【要約】
緩衝器(10、10A、10B)は、ロッド(14)を保持している保持部材(20;20B)を有する。この保持部材(20;20B)の内部には、オイル(Oi)が通過可能な部位であって、保持部材(20;20B)の軸方向一端からロッド(14)の軸線(CL)に沿って延びる第1流路(R1)、この第1流路(R1)の端部からロッド(14)の径方向に沿って延びる第2流路(R2)、この第2流路(R2)の端部から保持部材(20;20B)の軸方向他端までロッド(14)の軸線(CL)に沿って延びる第3流路(R3)を含む流路(R)が形成されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7