【実施例1】
【0011】
図2、3に示すように、実施例1に係る半導体装置10は、半導体基板12と、半導体基板12の表面12a及び裏面12bに形成された電極、絶縁層等を有している。半導体基板12は、4H型のSiCにより構成されている。なお、以下では、半導体基板12の厚み方向をz方向といい、半導体基板12の表面12aに平行な一方向をx方向といい、x方向とz方向に対して直交する方向をy方向という。
【0012】
図2、3に示すように、半導体基板12の表面12aには、ソース電極80が形成されている。半導体基板12の裏面12bには、ドレイン電極84が形成されている。ドレイン電極84は、裏面12bの略全域を覆っている。
【0013】
図1は、表面12a上の電極及び絶縁層等を省略した半導体装置10の平面図を示している。
図1に示すように、半導体基板12の表面12aには、複数のトレンチ34が形成されている。各トレンチ34は、x方向に長く伸びている。複数のトレンチ34は、y方向に間隔を開けて配列されている。
【0014】
図2、3に示すように、各トレンチ34は、側面50、52を有している。側面50は、トレンチ34の短手方向(すなわち、y方向)の両端を画定する側面である。側面52は、トレンチ34の長手方向(すなわち、x方向)の両端を画定する側面である。側面50、52には段差35が形成されている。
【0015】
図2に示すように、短手方向の側面50は、段差35より上側の上部側面50aと、段差35の表面50bと、段差35より下側の下部側面50cを有している。段差35の表面50bは、トレンチ34のy方向の中心C1に近づくに従って下側に変位するように傾斜している。すなわち、トレンチ34の両側の側面50に形成されている一組の段差35の表面50bは、テーパ状に傾斜している。上部側面50aと下部側面50cは、若干テーパ状に傾斜しているものの、略z方向に沿って伸びている。
【0016】
図3に示すように、長手方向の側面52は、段差35より上側の上部側面52aと、段差35の表面52bと、段差35より下側の下部側面52cを有している。段差35の表面52bは、トレンチ34のx方向の中心C2に近づくに従って下側に変位するように傾斜している。すなわち、トレンチ34の両側の側面52に形成されている一組の段差35の表面52bは、テーパ状に傾斜している。上部側面52aと下部側面52cは、若干テーパ状に傾斜しているものの、略z方向に沿って伸びている。
【0017】
図2、3に示すように、各トレンチ34内には、ゲート絶縁層38と、ゲート電極40が形成されている。ゲート絶縁層38は、底部絶縁層38aと側部絶縁膜38bを有している。底部絶縁層38aは、トレンチ34の底部に形成された厚い絶縁層である。底部絶縁層38aは、段差35よりも下側のトレンチ34内に形成されている。底部絶縁層38aの上側のトレンチ34の側面50、52は、側部絶縁膜38bによって覆われている。すなわち、側部絶縁膜38bは、上部側面50a、52aと段差35の表面50b、52bを覆っている。側部絶縁膜38bは、底部絶縁層38aと繋がっている。底部絶縁層38aの上側のトレンチ34内には、ゲート電極40が配置されている。ゲート電極40は、側部絶縁膜38b及び底部絶縁層38aによって、半導体基板12から絶縁されている。ゲート電極40の上面は、層間絶縁層36によって覆われている。ゲート電極40は、層間絶縁層36によってソース電極80から絶縁されている。
【0018】
半導体基板12内には、ソース領域22、ボディ領域26、ドリフト領域28、ドレイン領域30、底部領域32及び側部領域33が形成されている。
【0019】
図2に示すように、ソース領域22は、半導体基板12内に複数個形成されている。ソース領域22は、n型領域である。ソース領域22は、トレンチ34に対してy方向に隣接する位置に形成されている。ソース領域22は、トレンチ34の上部側面50aにおいて、側部絶縁膜38bに接している。ソース領域22は、半導体基板12の表面12aに露出する範囲に形成されている。ソース領域22は、ソース電極80に対してオーミック接触している。
【0020】
ボディ領域26は、ソース領域22の側方及び下側に形成されており、ソース領域22に接している。ボディ領域26は、p型領域であり、高濃度領域26aと低濃度領域26bを有している。高濃度領域26aは、低濃度領域26bよりも高いp型不純物濃度を有している。高濃度領域26aは、ソース領域22の側方に形成されており、半導体基板12の表面12aに露出している。高濃度領域26aは、ソース電極80に対してオーミック接触している。低濃度領域26bは、ソース領域22及び高濃度領域26aの下側に形成されている。低濃度領域26bは、ソース領域22の下側のトレンチ34の上部側面50aにおいて、側部絶縁膜38bに接している。また、
図3に示すように、低濃度領域26bは、トレンチ34の長手方向の側面52に隣接する位置にも形成されている。低濃度領域26bは、トレンチ34の上部側面52aにおいて側部絶縁膜38bに接している。
【0021】
ドリフト領域28は、低濃度にn型不純物を含むn型領域である。ドリフト領域28のn型不純物濃度は、ソース領域22のn型不純物濃度よりも低い。
図2に示すように、ドリフト領域28は、低濃度領域26bの下側に形成されており、低濃度領域26bに接している。ドリフト領域28は、低濃度領域26bの下端の位置から、トレンチ34の下端よりも下側まで広がっている。ドリフト領域28は、ボディ領域26によってソース領域22から分離されている。ドリフト領域28は、ボディ領域26の下側の上部側面50aにおいて、側部絶縁膜38bに接している。また、ドリフト領域28は、下部側面50cにおいて、底部絶縁層38aに接している。また、
図3に示すように、ドリフト領域28は、トレンチ34の長手方向の側面52に隣接する位置にも形成されている。ドリフト領域28は、低濃度領域26bの下側の上部側面52aにおいて側部絶縁膜38bに接している。また、ドリフト領域28は、下部側面52cにおいて底部絶縁層38aに接している。
【0022】
上述したソース領域22、ボディ領域26及びドリフト領域28は、側部絶縁膜38bを介してゲート電極40に対向している。
【0023】
側部領域33は、p型領域である。
図2に示すように、側部領域33は、段差35の下側に形成されている。側部領域33は、段差35の表面50bと、段差35近傍の下部側面50cに露出する範囲に形成されている。側部領域33は、段差35の表面50bの全域において側部絶縁膜38bに接している。また、側部領域33は、段差35近傍の下部側面50cにおいて、底部絶縁層38aに接している。また、
図3に示すように、側部領域33は、トレンチ34の長手方向の側面52に隣接する位置にも形成されている。側部領域33は、段差35の表面52bにおいて側部絶縁膜38bに接している。また、側部領域33は、段差35近傍の下部側面52cにおいて、底部絶縁層38aに接している。側部領域33の上下方向の幅は、段差35の表面50b、52bの上下方向の幅よりも広い。側部領域33の周囲は、ドリフト領域28に囲まれている。側部領域33は、ドリフト領域28によって、ボディ領域26から分離されている。側部領域33は、いずれの電極にも接続されておらず、側部領域33の電位は浮遊電位とされている。
【0024】
底部領域32は、p型領域である。
図2、3に示すように、底部領域32は、各トレンチ34の底面54に露出する位置に形成されている。底部領域32は、トレンチ34の底面54の全域において、底部絶縁層38aに接している。底部領域32の上下方向の幅は、側部領域33の上下方向の幅よりも狭い。底部領域32の周囲は、ドリフト領域28に囲まれている。各底部領域32は、ドリフト領域28によって、ボディ領域26及び側部領域33から分離されている。底部領域32は、いずれの電極にも接続されておらず、底部領域32の電位は浮遊電位とされている。
【0025】
ドレイン領域30は、高濃度にn型不純物を含むn型領域である。ドレイン領域30のn型不純物濃度は、ドリフト領域28のn型不純物濃度よりも高い。ドレイン領域30は、ドリフト領域28の下側に形成されている。ドレイン領域30は、ドリフト領域28に接しており、ドリフト領域28によってボディ領域26、底部領域32及び側部領域33から分離されている。ドレイン領域30は、半導体基板12の裏面12bに露出する範囲に形成されている。ドレイン領域30は、ドレイン電極84に対してオーミック接触している。
【0026】
次に、半導体装置10の動作について説明する。半導体基板12内には、ソース領域22、ボディ領域26、ドリフト領域28、ドレイン領域30、ゲート電極40及びゲート絶縁層38等によって、nチャネル型のMOSFETが形成されている。半導体装置10を動作させる際には、ドレイン電極84に、ソース電極80よりも高い電位を印加する。さらに、ゲート電極40に閾値以上の電位を印加すると、MOSFETがオンする。すなわち、側部絶縁膜38bに接する範囲のボディ領域26にチャネルが形成される。これにより、ソース電極80から、ソース領域22、チャネル、ドリフト領域28及びドレイン領域30を経由して、ドレイン電極84に向かって電子が流れる。
【0027】
ゲート電極40の電位を閾値未満の電位に低下させると、チャネルが消失し、MOSFETがオフする。すると、ボディ領域26とドリフト領域28の境界部のpn接合からドリフト領域28内に空乏層が広がる。ボディ領域26から伸びる空乏層は、側部領域33に到達する。すると、側部領域33からその周囲のドリフト領域内に空乏層が広がる。側部領域33から伸びる空乏層は、底部領域32に到達する。すると、底部領域32からその周囲のドリフト領域28内に空乏層が広がる。その後、空乏層は、ドリフト領域28の略全域に進展する。上記のように側部領域33及び底部領域32によって空乏層の伸展が促進されるため、ドリフト領域28の広い範囲が空乏化する。これによって、半導体装置10の耐電圧特性が向上されている。なお、後に詳述するが、本実施例の半導体装置10では、半導体基板12の厚み方向(すなわち、z方向)における側部領域33の幅が従来に比べて広い。このため、側部領域33からその周囲に空乏層が伸展する際に、z方向において比較的厚く空乏層が広がり易い。このため、側部領域33からその周囲に空乏層が伸展したときに、厚い空乏層によって電界を受けることが可能である。これによって、高い電界がより生じ難くなっており、半導体装置10の耐電圧特性がより向上されている。
【0028】
次に、半導体装置10の製造方法について説明する。半導体装置10は、全体がドリフト領域28と略同じn型不純物濃度を有するn型の半導体基板12から製造される。まず、p型不純物のイオン注入によって、
図4に示すように、半導体基板12の表面12aに露出する範囲に、p型の低濃度領域26b(すなわち、ボディ領域26の一部)を形成する。ここで、p型不純物は、元の半導体基板12(すなわち、ドリフト領域28)のn型不純物濃度よりも高い濃度で注入される。したがって、低濃度領域26bのp型不純物濃度は、ドリフト領域28のn型不純物濃度よりも高い。
【0029】
次に、
図5に示すように、半導体基板12の表面12aにエッチング用マスク70を形成し、エッチング用マスク70を通して半導体基板12をエッチングする。ここでは、異方性のドライエッチングによって、半導体基板12をエッチングする。これによって、半導体基板12の表面12aに、トレンチ34を形成する。なお、上記の通り、低濃度領域26bのp型不純物濃度は、ドリフト領域28のn型不純物濃度よりも高い。このため、低濃度領域26bにおけるエッチングレートは、ドリフト領域28におけるエッチングレートよりも高い。換言すると、低濃度領域26bは、ドリフト領域28よりも高速でエッチングされる。このため、
図5に示すようにドリフト領域28に侵入するトレンチ34を形成すると、低濃度領域26bにおけるトレンチ34の幅が、ドリフト領域28におけるトレンチ34の幅よりも広くなる。その結果、低濃度領域26bとドリフト領域28の境界の深さにおいて、トレンチ34の側面に段差35が形成される。トレンチ34の長手方向の側面にも、段差35が形成される。
図5の状態からさらにエッチングを継続すると、
図6に示すように、トレンチ34が深くなり、段差35がドリフト領域28内に位置するようになる。また、トレンチ34の長手方向の断面においても、
図7に示すように、段差35がドリフト領域28内に位置するようになる。このように、この方法では、不純物濃度の差に起因して生じる低濃度領域26bとドリフト領域28のエッチングレートの差を利用して、側面50、52に段差35を有するトレンチ34を形成する。この方法によれば、一回のエッチング処理によって、段差35を有するトレンチ34を形成することができる。また、この方法によれば、段差35の表面50bを、トレンチ34の中心側に向かうにしたがって下側に変位するように傾斜した形状に形成することができる。
図6、7に示す構造が得られたら、エッチングを停止し、エッチング用マスク70を除去する。
【0030】
次に、
図8、9に示すように、半導体基板12の表面12aにイオン注入用マスク72を形成し、イオン注入用マスク72を通して半導体基板12にp型不純物を注入する。ここでは、トレンチ34内にp型不純物を注入する。p型不純物は、トレンチ34の底面54と段差35の表面50b、52bに注入される。これによって、底面54に露出する範囲に、p型の底部領域32が形成される。また、段差35の表面50b、52bに露出する範囲に、p型の側部領域33が形成される。上述したように、段差35の表面50b、52bは、トレンチ34の中心側に向かうほど下側に変位するように傾斜している。このため、段差35の表面50b、52bにp型不純物を注入して側部領域33を形成すると、側部領域33のz方向の幅を広くすることができる。他方、トレンチ34の底面54は、略フラットである。したがって、底部領域32の上下方向の幅は、側部領域33の上下方向の幅よりも狭くなる。イオン注入が完了したら、イオン注入用マスク72を除去する。
【0031】
次に、トレンチ34内と半導体基板12上に、絶縁層を成長させる。トレンチ34内には、絶縁層が隙間なく形成される。次に、絶縁層をエッチングすることで、半導体基板12上の絶縁層を除去すると共に、トレンチ34内の絶縁層を部分的に除去する。ここでは、
図10に示すように、段差35よりも下側にのみ絶縁層を残存させる。残存した絶縁層は、底部絶縁層38aとなる。
【0032】
次に、
図11に示すように、底部絶縁層38aよりも上側のトレンチ34の側面50に側部絶縁膜38bを成長させる。なお、図示していないが、トレンチ34の長手方向(すなわち、x方向)の断面においても、トレンチ34の側面52(
図3参照)に側部絶縁膜38bが成長する。側部絶縁膜38bを形成したら、
図11に示すように、トレンチ34内にゲート電極40を形成する。
【0033】
ゲート電極40を形成したら、半導体基板12の表面12aに対してp型及びn型の不純物を選択的に注入することによって、
図12に示すように、ソース領域22とボディ領域26の高濃度領域26aを形成する。次に、
図2、3に示すように、半導体基板12の表面12aに層間絶縁層36とソース電極80を形成する。次に、半導体基板12の裏面12bにn型不純物を注入して、ドレイン領域30を形成する。次に、半導体基板12の裏面12b上にドレイン電極84を形成する。以上の工程によって、
図1〜3に示す半導体装置10が完成する。
【0034】
以上に説明したように、この方法によれば、単一のエッチング処理によって段差35を有するトレンチ34を形成することができる。したがって、効率的に半導体装置10を製造することができる。
【0035】
また、この方法によれば、段差35の表面50b、52bを、トレンチ34の中心に向かうに従って下側に変位するように傾斜した形状に形成することができる。したがって、段差35の表面50b、52bにp型不純物を注入することで、z方向の幅が広い側部領域33を形成することができる。したがって、この方法によれば、耐電圧特性に優れる半導体装置10を製造することができる。
【実施例3】
【0037】
図15、16は、実施例3の半導体装置を示している。実施例3の半導体装置は、ドリフト領域28の構造が実施例1の半導体装置10とは異なる。実施例3の半導体装置のその他の構成は、実施例1の半導体装置10と等しい。実施例3の半導体装置では、ドリフト領域28が、上部領域28aと下部領域28bを有している。上部領域28aは、下部領域28bよりも高いn型不純物濃度を有している。上部領域28aは、ボディ領域26の低濃度領域26bの下側に形成されている。下部領域28bは、上部領域28aの下側に形成されている。段差35は、上部領域28aと下部領域28bの境界29の深さに形成されている。すなわち、境界29をトレンチ34側に延長した延長線は、段差35と交差する。実施例3の半導体装置も、段差35の下側に側部領域33が形成されているので、実施例1の半導体装置10と同様に高い耐電圧特性を有する。
【0038】
次に、実施例3の半導体装置の製造方法について説明する。半導体装置10は、全体がドリフト領域28の下部領域28bと略同じn型不純物濃度を有するn型の半導体基板12から製造される。まず、n型不純物のイオン注入によって半導体基板12の表面12a近傍のn型不純物濃度を上昇させる。これによって、
図17に示すように、半導体基板12の表面12aに露出する範囲に、上部領域28aを形成する。上部領域28aよりも下側には、n型不純物濃度が低い下部領域28bが残る。
【0039】
次に、
図18に示すように、半導体基板12の表面12aにエッチング用マスク70を形成し、エッチング用マスク70を通して半導体基板12をエッチングする。ここでは、異方性のドライエッチングによって、半導体基板12をエッチングする。これによって、半導体基板12の表面12aに、トレンチ34を形成する。なお、上記の通り、上部領域28aのn型不純物濃度は、下部領域28bのn型不純物濃度よりも高い。このため、上部領域28aにおけるエッチングレートは、下部領域28bにおけるエッチングレートよりも高い。換言すると、上部領域28aは、下部領域28bよりも高速でエッチングされる。このため、
図18に示すように、下部領域28bに達するトレンチ34を形成すると、上部領域28aにおけるトレンチ34の幅が、下部領域28bにおけるトレンチ34の幅よりも広くなる。その結果、上部領域28aと下部領域28bの境界29の深さにおいて、トレンチ34の側面に段差35が形成される。図示していないが、トレンチ34の長手方向でも、トレンチ34の側面に段差35が形成される。このように、この方法では、不純物濃度の差に起因して生じる上部領域28aと下部領域28bのエッチングレートの差を利用して、側面50、52に段差35を有するトレンチ34を形成する。この方法によれば、一回のエッチング処理によって、段差35を有するトレンチ34を形成することができる。また、この方法によれば、段差35の表面50b、52bを、トレンチ34の中心側に向かうにしたがって下側に変位するように傾斜した形状に形成することができる。
図18に示す構造が得られたら、エッチングを停止し、エッチング用マスク70を除去する。
【0040】
次に、
図19に示すように、半導体基板12の表面12aにイオン注入用マスク72を形成し、イオン注入用マスク72を通して半導体基板12にp型不純物を注入する。ここでは、トレンチ34内にp型不純物を注入する。p型不純物は、トレンチ34の底面54と段差35の表面50b、52bに注入される。これによって、底面54に露出する範囲に、p型の底部領域32が形成される。また、段差35の表面50b、52bに露出する範囲に、p型の側部領域33が形成される。上述したように、段差35の表面50b、52bは、トレンチ34の中心側に向かうほど下側に変位するように傾斜している。このため、段差35の表面50b、52bにp型不純物を注入して側部領域33を形成すると、側部領域33のz方向の幅を広くすることができる。イオン注入が完了したら、イオン注入用マスク72を除去する。
【0041】
次に、実施例1と同様にして、
図20に示すように、トレンチ34内に底部絶縁層38a、側部絶縁膜38b及びゲート電極40を形成する。次に、半導体基板12の表面12aに対してp型及びn型の不純物を選択的に注入することによって、ソース領域22、高濃度領域26a及び低濃度領域26bを形成する。その後、実施例1と同様にして層間絶縁層36、ソース電極80、ドレイン領域30及びドレイン電極84を形成することによって、
図15、16に示す実施例3の半導体装置10が完成する。
【0042】
なお、実施例3の半導体装置では、段差35が、上部領域28aと下部領域28bの境界29の位置に形成されていた。しかしながら、段差35が、境界29よりも下側に形成されていてもよい。トレンチ34を形成するためのエッチング処理を長く行うことによって、境界29よりも下側に段差35を形成することができる。
【実施例4】
【0043】
図21は、実施例4の半導体装置を示している。実施例4の半導体装置では、トレンチ34の側面に2つの段差35a、35bが形成されている。各段差35a、35bの表面においてゲート絶縁層38と接するように、側部領域33a、33bが形成されている。ボディ領域26の低濃度領域26bは、ドリフト領域28の上部領域28aのn型不純物濃度よりも高いp型不純物濃度を有している。ドリフト領域28の上部領域28aは、下部領域28bのn型不純物濃度よりも高いn型不純物濃度を有している。上側の段差35aは、実施例1と同様に、低濃度領域26bと上部領域28aの不純物濃度差を利用して形成された段差である。下側の段差35bは、実施例3と同様に、上部領域28aと下部領域28bの不純物濃度差を利用して形成された段差である。実施例1のトレンチ形成方法と実施例3のトレンチ形成方法を組み合わせることで、このようなトレンチ34を形成することができる。すなわち、一度のエッチング処理で、2つの段差35a、35bを有するトレンチ34を形成することができる。また、このように複数の段差35a、35b(すなわち、複数の側部領域33a、33b)を設けることで、半導体装置の耐電圧特性をさらに向上させることができる。
【0044】
なお、実施例3、4の半導体装置においても、
図13に示すように、側部領域33を段差35よりも下側に形成してもよい。
【0045】
また、上述した実施例では、底部領域32の電位が浮遊電位とされていた。しかしながら、底部領域32が、所定の固定電位に接続されていてもよい。
【0046】
また、上述した実施例では、nチャネル型のMOSFETについて説明したが、pチャネル型のMOSFETに本明細書に開示の技術を適用してもよい。
【0047】
また、上述した実施例では、トレンチ34の短手方向(y方向)の側面50と長手方向(x方向)の側面52の両方に段差35と側部領域33が形成されていた。しかしながら、これらの側面50、52の何れか一方にのみ段差35と側部領域33が形成されていてもよい。
【0048】
また、上述した実施例では、底部絶縁層38aが段差35よりも下側に配置されている。すなわち、底部絶縁層38aの上端が段差35よりも下側に位置している。しかしながら、底部絶縁層38aの上端の位置は、ボディ領域26よりも下側であれば、段差35よりも上側であってもよい。底部絶縁層38aの上端の位置は、ボディ領域26よりも下側であれば何れの位置であってもよい。
【0049】
上述した各実施例の構成と請求項の構成との対応関係について説明する。実施例の側面52は、請求項のトレンチの長手方向の端部を画定する側面の一例である。実施例のソース領域22は、請求項の第1領域の一例である。実施例のドリフト領域28は、請求項の第2領域の一例である。実施例1のドリフト領域28は、請求項の低濃度半導体領域の一例である。実施例1の低濃度領域26bは、請求項の高濃度半導体領域の一例である。実施例3の下部領域28bは、請求項の低濃度半導体領域の一例である。実施例3の上部領域28aは、請求項の高濃度半導体領域の一例である。
【0050】
本明細書が開示する技術要素について、以下に列記する。なお、以下の各技術要素は、それぞれ独立して有用なものである。
【0051】
本明細書が開示する一例の構成では、側部領域の上下方向の幅が、底部領域の上下方向の幅よりも広い。
【0052】
本明細書が開示する一例の構成では、側部領域が、段差の表面においてゲート絶縁層に接している。
【0053】
本明細書が開示する一例の構成では、第2領域が段差の表面においてゲート絶縁層に接しており、側部領域が段差の表面においてゲート絶縁層に接していない。
【0054】
本明細書が開示する一例の構成では、トレンチの長手方向の端部を画定する側面に、段差が形成されている。側部領域が、前記端部を画定する前記側面のうちの下部側面においてゲート絶縁層に接している。
【0055】
このような構成によれば、トレンチの長手方向の端部近傍における電界を抑制することができる。
【0056】
本明細書が開示する一例の構成では、第2領域が、上部領域と、上部領域よりも第1導電型不純物濃度が低いとともに上部領域の下側に配置されている下部領域を有している。段差が、上部領域と下部領域の境界の位置または前記境界よりも下側に形成されている。
【0057】
この構成によれば、第2領域内の濃度差(すなわち、上部領域と下部領域の濃度差)によって段差を形成することができる。
【0058】
本明細書が開示する一例の製造方法では、高濃度半導体領域が、第2導電型のボディ領域であり、低濃度半導体領域が、ボディ領域の第2導電型不純物濃度よりも低い第1導電型不純物濃度を有する第1導電型の第2領域である。段差が、ボディ領域と第2領域の境界よりも下側に位置する。前記方法が、半導体基板に第1導電型の第1領域を形成する工程をさらに有する。製造される半導体装置において、前記第1領域が、ボディ領域によって第2領域から分離されており、段差よりも上側に位置するトレンチの側面においてゲート絶縁層に接している。
【0059】
この構成によれば、第2導電型のボディ領域と第1導電型の第2領域の濃度差によって、段差を形成することができる。
【0060】
本明細書が開示する一例の製造方法では、第2導電型不純物の注入によって、段差よりも下側のトレンチの側面に露出するとともに段差の表面に露出する範囲に第2導電型の側部領域が形成される。
【0061】
本明細書が開示する一例の製造方法では、第2導電型不純物の注入によって、段差よりも下側のトレンチの側面に露出するとともに段差の表面に露出しない範囲に第2導電型の側部領域が形成される。
【0062】
本明細書が開示する一例の製造方法では、段差が、トレンチの長手方向の端部を画定する側面に形成される。
【0063】
本明細書が開示する一例の製造方法では、高濃度半導体領域が、第1導電型の上部領域であり、低濃度半導体領域が、第1導電型の下部領域である。前記方法が、半導体基板に第1導電型の第1領域を形成する工程と、半導体基板に第2導電型のボディ領域を形成する工程をさらに有する。製造される半導体装置において、ボディ領域が、上部領域の上側のトレンチの側面においてゲート絶縁層に接している。製造される半導体装置において、第1領域が、ボディ領域の上側のトレンチの側面においてゲート絶縁層に接しており、ボディ領域によって上部領域から分離されている。
【0064】
この方法によれば、上部領域と下部領域の濃度差によって、段差を形成することができる。
【0065】
以上、実施形態について詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独あるいは各種の組み合わせによって技術有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの1つの目的を達成すること自体で技術有用性を持つものである。