(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の遊星歯車装置100では、締結部材106によって円板103と支持部材104とが締結されることにより、円板103は、軸C1方向における接触面103bと接触面103cとのちょうど中間に位置する中間面S1において径方向の外側に膨出するように大きく変形する。このため、締結部材106によって円板103と支持部材104とを締結することにより、中間面S1の面上に位置する円板103の転動面103aが転動体105に強く押し付けられることになる。これにより、遊星歯車装置100の寿命が短くなる虞がある。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、寿命が短くなることを抑止できる偏心揺動型歯車装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る偏心揺動型歯車装置は、外筒と、第1部材および第2部材を有するキャリアと、前記第2部材とは反対側から前記第1部材を押圧する頭部を有し、前記第1部材と前記第2部材とを締結する締結部材と、転動体を前記第1部材に形成された受け面で受けるとともに、少なくとも一部が前記締結部材の長さ範囲内に位置しており、前記外筒と前記キャリアとの間の相対回転を許容する主軸受と、を備え、前記第1部材は、前記頭部から前記締結部材の締結力を受ける第1接触面と、前記第2部材から前記締結部材の締結力を受ける第2接触面と、を有しており、前記受け面は、前記締結部材による前記第1部材と前記第2部材との締結方向において、前記第1接触面と前記第2接触面とが等しい距離にあ
る中間面から前記締結方向に
前記締結部材の締結に伴う前記第1部材の変形によって前記受け面が前記転動体に押し付けられることが抑制されるようにずれて位置しているととも
に前記第1接触面よりも前記締結方向における前記第2部材とは反対側に位置している。
【0007】
一般に、締結部材によって第1部材と第2部材とを締結する場合、第1部材は、中間面において径方向の外側に膨出するように大きく変形しやすい。そこで、前記の偏心揺動型歯車装置では、締結部材による第1部材と第2部材との締結方向において、受け面を中間面からずれるように配置することにより、前記締結に伴う第1部材の変形の影響によって受け面が転動体に強く押し付けられることを抑止できる。このため、偏心揺動型歯車装置の寿命が短くなることを抑止できる。
【0008】
しかも、前記の偏心揺動型歯車装置では、前記受け面は、前記第1接触面よりも前記締結方向における前記第2部材とは反対側に位置している。締結部材の締結方向における第1接触面と第2接触面との間の領域の外側に受け面を配置することにより、当該受け面が締結部材による第1部材と第2部材との締結に伴う第1部材の変形の影響を受けることをより抑止できる。
【0009】
また、前記の偏心揺動型歯車装置は、受け面が第1部材と一体に形成されていて第1部材の変形に伴って受け面が変形しやすい構成であるため、締結部材の締結方向において受け面が中間面からずれるように配置することにより、当該受け面の変形を抑止することが好適である。
【0010】
前記第1部材に形成された内周面に回転可能に支持されており、前記揺動歯車を揺動回転させるクランク軸をさらに備え、前記第1部材の前記内周面は、前記中間面から前記締結方向にずれて位置していることが好ましい。
【0011】
前記の偏心揺動型歯車装置では、第1部材の内周面が中間面から締結部材の締結方向にずれて位置しているため、締結部材による第1部材と第2部材との締結に伴う第1部材の変形の影響により当該第1部材の内周面が大きく変形してしまうことを抑止できる。このため、第1部材の内周面が大きく変形することによりクランク軸に強く押し付けられることを抑止できる。これにより、偏心揺動型歯車装置の寿命が短くなることを抑止できる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明によれば、寿命が短くなることを抑止できる偏心揺動型歯車装置が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、参考形態及び本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。但し、以下で参照する各図は、説明の便宜上、参考形態及び実施形態に係る偏心揺動型歯車装置X1の構成部材のうち主要部材のみを簡略化して示したものである。したがって、参考形態及び実施形態に係る偏心揺動型歯車装置X1は、本明細書が参照する各図に示されていない任意の構成部材を備え得る。
【0015】
図1および
図2に示すように、参考形態に係る偏心揺動型歯車装置X1は、外筒2と、キャリア4と、揺動歯車7と、クランク軸6と、を備えている。偏心揺動型歯車装置X1では、クランク軸6の回転に伴って揺動歯車7が揺動回転することにより、外筒2とキャリア4とが相対的に回転する。
【0016】
外筒2は、軸C1を中心軸とする略円筒形状をなす本体部2aと、当該本体部2aの径方向の中間部分から軸C1方向の一方側に延びる円環状の第1延部2bと、当該本体部2aの径方向の中間部分から軸C1方向の他方側に延びる円環状の第2延部2cと、を有している。
【0017】
外筒2における本体部2aの内周面21には、多数のピン溝が形成されている。各ピン溝は、軸C1方向に延びるように配置され、当該軸C1方向に直交する断面において半円形の断面形状を有している。各ピン溝は、外筒2の周方向に等間隔で並んでいる。
【0018】
外筒2における本体部2aのうち第1延部2bおよび第2延部2cよりも径方向の外側に位置する部位には、当該部位を軸C1方向に貫く取付孔22が複数形成されている。各取付孔22は外筒2の周方向に等間隔で並んでいる。各取付孔22は、外筒2に対してロボットの関節部分を構成するベース等の図略の相手側部材を取り付ける際に利用される。外筒2に対してロボットの関節部分を構成するベースを取り付ける場合、外筒2は、偏心揺動型歯車装置X1における固定側の部材となる。
【0019】
偏心揺動型歯車装置X1は、外筒2の本体部2aの内周面21に取り付けられる複数の内歯ピン3をさらに備えている。各内歯ピン3は、軸C1方向に延びる円柱形状をなしている。各内歯ピン3は、内周面21に形成された各ピン溝に取り付けられている。
【0020】
キャリア4は、外筒2の第1延部2bの径方向の内側に位置する第1部材41と、外筒2の本体部2aおよび第2延部2cの径方向の内側に位置する第2部材42と、を有している。
【0021】
第1部材41は、略円板状をなす端板部41fと、当該端板部41fに繋がる第1凸部41gと、を有している。第1凸部41gは、軸C1方向における第2部材42側に位置する端板部41fの端面41Bから当該第2部材42側に突出している。第1凸部41gは、キャリア4の周方向に並んで複数設けられている。本参考形態では、第1部材41は、3つの第1凸部41gを有している。
【0022】
第1部材41の端板部41fには、第1外周面41Fと、第2外周面41Hと、第2受け面41Gと、が形成されている。第1外周面41F、第2外周面41H、および第2受け面41Gは、端板部41fの外周面を構成している。
【0023】
第1外周面41Fは、端板部41fの外周面のうち軸C1方向における端面41A側に位置する面である。第1外周面41Fは、軸C1方向に延びている。
【0024】
第2外周面41Hは、端板部41fの外面のうち軸C1方向における端面41B側に位置する面である。第2外周面41Hは、第1外周面41Fよりもキャリア4の径方向の内に位置している。
【0025】
第2受け面41Gは、軸C1方向において第1外周面41Fと第2外周面41Hとの間に位置しており、円弧状の曲面をなしている。なお、第2受け面41Gの詳細は後述する。
【0026】
第1部材41の端板部41fには、中央孔41aと、クランク軸孔41bと、が形成されている。
【0027】
中央孔41aは、端板部41fの中央部分を軸C1方向に貫くように形成されている。
【0028】
クランク軸孔41bは、
図2に示すように、中央孔41aの外側においてキャリア4の周方向に並んで複数形成されている。各クランク軸孔41bは、端板部41fを軸C1方向に貫くように形成されている。本参考形態では、端板部41fには3つのクランク軸孔41bが形成されている。
【0029】
第2部材42は、略円板状をなす基板部42aと、当該基板部42aに繋がる第2凸部42bと、を有している。第2凸部42bは、軸C1方向における第1部材41側に位置する基板部42aの端面から第1部材41側に延びている。第2凸部42bは、第1部材41における3つの第1凸部41gのそれぞれの位置に対応して、3つ設けられている。第2凸部42bと第1凸部41gとは、後述する第1揺動歯車71に形成された挿入孔71bの内側にて軸C1方向において接触している。本参考形態では、第1部材41の第1凸部41gおよび第2部材42の第2凸部42bが、キャリア4のシャフト部A1を構成している。
【0030】
なお、キャリア4のシャフト部A1は、第1凸部41gおよび第2凸部42bによって構成されていなくともよく、第2凸部42bのみによって構成されていてもよい。すなわち、第1部材41の第1凸部41gはなくともよい。この場合、第2凸部42bは、揺動歯車7の挿入孔71b,72bに挿入されるとともに、軸C1方向において端板部41fの端面41Bに接触する。
【0031】
第2部材42の基板部42aには、中央孔42cと、クランク軸孔42dと、取付孔42eと、が形成されている。
【0032】
中央孔42cは、基板部42aの中央部分を軸C1方向に貫くように形成されている。中央孔42cは、端板部41fに形成された中央孔41aの位置に対応して設けられている。
【0033】
クランク軸孔42dは、中央孔42cの外側においてキャリア4の周方向に並んで複数形成されている。各クランク軸孔42dは、基板部42aを軸C1方向に貫くように形成されている。各クランク軸孔42dは、端板部41fに形成された各クランク軸孔41bの位置に対応して設けられている。
【0034】
取付孔42eは、基板部42aのうち軸C1方向における第1部材41とは反対側の端面が当該軸C1方向に凹むように形成されている。取付孔42eは、ロボットの関節部分を構成する旋回胴等の相手側部材をキャリア4に取り付けるのに利用される。キャリア4に対してロボットの関節部分を構成する旋回胴を取り付ける場合、当該キャリア4は、偏心揺動型歯車装置X1における回転側の部材となる。なお、例えばキャリア4に対してロボットの関節部分を構成するベースが取り付けられる場合であれば、外筒2にはロボットの関節部分を構成する旋回胴が取り付けられ、これによりキャリア4が偏心揺動型歯車装置X1の固定側の部材となるとともに外筒2が偏心揺動型歯車装置X1の回転側の部材となる。
【0035】
クランク軸6は、軸C1方向に延びる軸本体61と、軸本体61に対して偏心する偏心部62,63と、を有している。クランク軸6は、第1部材41のクランク軸孔41b、第2部材42のクランク軸孔41b、および後述する揺動歯車7のクランク軸孔71c,52cに挿入されている。本参考形態では、クランク軸6は、キャリア4の周方向に並んで複数(3つ)設けられている。なお、クランク軸6の数は任意であって、偏心揺動型歯車装置X1の使用態様に応じて適宜変更することができる。
【0036】
軸本体61は、クランク軸受B1を介してクランク軸孔41bの内周面41cに支持されている。また、軸本体61は、クランク軸受B2を介してクランク軸孔42dの内周面に支持されている。クランク軸受B1,B2は、キャリア4に対するクランク軸6の回転を許容する。
【0037】
偏心部62,63は、軸C1方向において軸本体61に繋がっており、外筒2の本体部2aの径方向の内側に位置している。偏心部62,63には、ころを介して揺動歯車7が取り付けられている。
【0038】
揺動歯車7は、軸C1方向に延びる軸心を有している。揺動歯車7は、外筒2の本体部2aの内側に位置しており、軸C1方向において第1部材41と第2部材42とに挟まれている。揺動歯車7は、ころを介して第1偏心部62に取り付けられた第1揺動歯車71と、ころを介して第2偏心部63に取り付けられた第2揺動歯車72と、を有している。
【0039】
揺動歯車71,72は、外筒2の本体部2aの内径よりも少し小さい外径を有しており、その外周面に複数の外歯が形成されている。揺動歯車71,72のそれぞれの外周面に形成された外歯の歯数は、内歯ピン3の数よりも僅かに少ない。これにより、第1揺動歯車71と第2揺動歯車72とは、各外歯が各内歯ピン8に噛み合うように、互いに異なる位相で揺動回転することができる。なお、揺動歯車7は、1つの揺動歯車によって構成されていてもよいし、3つ以上の揺動歯車によって構成されていてもよい。
【0040】
第1揺動歯車71には、端板部41fに形成された中央孔41aの位置に対応する中央孔71aと、第1凸部41gおよび第2凸部42bが挿入された挿入孔72bと、第1偏心部62が挿入されたクランク軸孔71cと、が形成されている。
【0041】
第2揺動歯車72には、基板部42aに形成された中央孔42cの位置に対応する中央孔72aと、第2凸部42bが挿入された挿入孔72bと、第2偏心部63が挿入されたクランク軸孔72cと、が形成されている。
【0042】
偏心揺動型歯車装置X1は、クランク軸6に駆動力を伝達して当該クランク軸6を回転させる伝達歯車8をさらに備えている。伝達歯車8は、軸C1方向において第1部材41を挟んで第2部材42とは反対側に位置している。伝達歯車8は、クランク軸6の軸本体61の一端に取り付けられている。
【0043】
偏心揺動型歯車装置X1は、第1部材41と第2部材42とを締結する締結部材5と、外筒2とキャリア4との間に設けられた主軸受9と、をさらに備えている。締結部材5によって互いに締結された第1部材41および第2部材42は、主軸受9を介して外筒2との間で相対的に回転することができる。すなわち、主軸受9は、外筒2とキャリア4との間の相対回転を許容する。
【0044】
締結部材5は、雄ネジ形状をなす締結部51と、締結部51に繋がっており当該締結部51の外径よりも大きい外径を有する頭部52と、を有している。締結部材5は、第1部材41の端板部41fのうち軸C1方向における第2部材42とは反対の端面41A側から、当該軸C1方向に沿って第1部材41および第2部材42に挿入される。本参考形態では、締結部材5は、
図2に示すように、キャリア4の周方向において隣り合うクランク軸孔71cの間に2つずつ設けられており、合計6つの締結部材5が当該周方向に並んで位置している。
【0045】
第1部材41には、頭部52を収容する収容部41dと、当該収容部41dに繋がっており締結部51の根元部分が挿入された貫通孔41eと、が形成されている。
【0046】
収容部41dは、第1部材41の端板部41fにおける端面41Aの一部が軸C1方向に凹むように形成されている。収容部41dは、軸C1方向においてシャフト部A1の位置に対応して形成されている。本参考形態では、収容部41dは、3つのシャフト部A1のそれぞれの位置に対応して2つずつ形成されており、合計6つの収容部41dがキャリア4の周方向に並んで位置している。
【0047】
貫通孔41eは、軸C1方向において収容部41dの底面から第1凸部41gの第2凸部42b側の端面に亘って形成されている。貫通孔41eの径は、収容部41dの底面の径よりも小さく設定されている。収容部41dおよび貫通孔41eは、第1部材41を軸C1方向に貫通している。
【0048】
第2部材42には、雌ネジ形状をなしており締結部51の先端部分が挿入された締結孔42fが形成されている。締結孔42fは、第2部材42の第2凸部42bのうち第1凸部41g側の端面の一部が軸C1方向に凹むように形成されている。締結孔42fは、貫通孔41eの位置に対応して形成されており、これにより当該貫通孔41eに繋がっている。なお、本参考形態では、締結孔42fは、有底の孔であるが、これに限らず、軸C1方向において第2凸部42bから基板部42aに亘って貫通する貫通孔であってもよい。
【0049】
締結部材5は、軸C1方向において、端板部41fの端面41A側から収容部41d、貫通孔41e、および締結孔42fに挿入される。そして、当該挿入過程において締結部51の先端部分が締結孔42fに螺合し、これにより第1部材41と第2部材42とが軸C1方向において締結される。
【0050】
第1部材41と第2部材42とが締結された状態において、収容部41dの底面は、締結部材5の頭部52に接触し、これにより当該底面が第1接触面41Cとなる。第1接触面41Cは、頭部52から軸C1方向の第2部材42側へ締結部材5の締結力を受ける。
【0051】
また、第1部材41と第2部材42とが締結された状態において、第1凸部41gの第2凸部42b側の端面は、当該第2凸部42bに接触し、これにより当該端面が第2接触面41Dとなる。第2接触面41Dは、第2凸部42bから軸C1方向の第1部材41側へ締結部材5の締結力を受ける。
【0052】
このように、第1部材41のうち軸C1方向における第1接触面41Cと第2接触面41Dとの間の部位は、当該軸C1方向の両側から締結部材5の締結力を受けることになる。
【0053】
主軸受9は、第1主軸受91と、当該第1主軸受91とは軸C1方向において離間した第2主軸受92と、を有している。第1主軸受91および第2主軸受92は、円環形状をなしている。第1主軸受91は、第1部材41における端板部41fの外周面と外筒2における第1延部2bの内周面との間に設けられている。また、第2主軸受92は、第2部材42における基板部42aの外周面と外筒2の第2延部2cの内周面との間に設けられている。本参考形態では、第1主軸受91と第2主軸受92とは、軸C1方向において対称な同一の構成を有している。
【0054】
第1主軸受91は、軸C1方向に延びる締結部材5の長さ範囲内に位置している。本参考形態では、第1主軸受91の全体が締結部材5の長さ範囲内に位置しているが、これに限らず、第1主軸受91の一部のみが当該長さ範囲内に位置していてもよい。
【0055】
第1主軸受91は、転動体91bと、当該転動体91bを外筒2で受けるための第1受け面91Aと、当該転動体91bを第1部材41で受けるための第2受け面41Gと、を有している。
【0056】
転動体91bは、第1受け面91Aと第2受け面41Gとの間に回転自在に支持されている。本参考形態では、転動体91bは、球体形状をなしている。なお、転動体91bは、例えば円柱形状等をなしていてもよい。転動体91bが円柱形状をなしている場合、当該転動体91bの回転軸を軸C1に対して傾けることによって、第1主軸受91が外筒2とキャリア4との間の相対回転に対するスラスト軸受およびラジアル軸受として機能する。
【0057】
第1受け面91Aは、外筒2における第1延部2bの内周面および本体部2aの軸C1方向端面に沿って配置された受け部材91aに形成されている。第1受け面91Aは、受け部材91aのうち転動体91bが接触する表面である。第1受け面91Aは、円弧状の曲面をなしている。なお、受け部材91aはなくともよく、第1受け面91Aが外筒2に形成されていてもよい。この場合、外筒2には、第1延部2bの内周面から本体部2aの軸C1方向端面に亘って円弧状の曲面が形成され、当該曲面が第1受け面91Aとして機能する。
【0058】
第2受け面41Gは、端板部41fの外周面に形成されており、転動体91bに接触している。なお、本参考形態では、第1主軸受91の第2受け面41Gは、第1部材41の端板部41fと一体に形成されているが、これに限らない。例えば、端板部41fの外周面に受け部材を取り付け、当該受け部材に第2受け面41Gを形成してもよい。
【0059】
第2受け面41Gは、
図1に示すように、仮想の平面である中間面S1から締結部材5の締結方向である軸C1方向にずれて位置している。中間面S1は、軸C1方向において第1接触面41Cと第2接触面41Dとが等しい距離にある面であり、当該第1接触面41Cと第2接触面41Dとの中間に位置している。本参考形態では、中間面S1は、軸C1方向において端板部41fの端面41Bと重なっている。このため、端板部41fの外周面である第1外周面41F、第2外周面41H、および第2受け面41Gは、軸C1方向において中間面S1よりも端板部41fの端面41A側に位置している。
【0060】
なお、シャフト部A1が第2凸部42bのみからなる場合、当該第2凸部42bは、端板部41fの端面41Bに接触するため、当該端面41Bが第2接触面41Dとなる。この場合、中間面S1は、軸C1方向において第1接触面41Cと端面41Bとが等しい距離にある仮想の平面となる。
【0061】
このように、本参考形態に係る偏心揺動型歯車装置X1では、第1主軸受91が締結部材5の長さ範囲内に位置しているため、当該偏心揺動型歯車装置X1が締結部材5の締結方向である軸C1方向に大型化することを抑止できる。しかも、第2受け面41Gが前記締結方向において中間面S1とずれて配置されているため、締結部材5による第1部材41と第2部材42との締結に伴って、第1部材41のうち中間面S1上に位置する部位がキャリア4の径方向の外側に大きく変形したとしても、第2受け面41Gが転動体91bに強く押し付けられることを抑止できる。このため、偏心揺動型歯車装置X1の寿命が短くなることを抑止できる。
【0062】
なお、本参考形態に係る偏心揺動型歯車装置X1では、第2受け面41Gが第1部材41の外周面に形成されているため、締結部材5により第1部材41と第2部材42との締結に伴って、当該第2受け面41Gが転動体91b側に膨出するように変形しやすい。このため、第1部材41のうち締結部材5による第1部材41と第2部材42との締結に伴って最も変形が生じやすい中間面S1上の部位から、第2受け面41Gを逃がすように配置することにより、当該第2受け面41Gの変形を抑止することが好適である。
【0063】
次に、
図3を参照しつつ、本実施形態に係る偏心揺動型歯車装置X1について説明する。
【0064】
図3に示すように、軸C1方向において、本実施形態に係る偏心揺動型歯車装置X1における収容部41dの深さは、上記の参考形態に係る偏心揺動型歯車装置X1における収容部41dの深さよりも深く設定されている。また、軸C1方向において、本実施形態に係る偏心揺動型歯車装置X1における第1部材41の第1凸部41gの長さは、上記の参考形態に係る偏心揺動型歯車装置X1における第1部材41の第1凸部41gの長さよりも長く設定されている。また、軸C1方向において、本実施形態に係る偏心揺動型歯車装置X1における第2部材42の第2凸部41g42bの長さは、上記の参考形態に係る偏心揺動型歯車装置X1における第2部材42の第2凸部42bの長さよりも短く設定されている。
【0065】
本実施形態に係る偏心揺動型歯車装置X1における収容部41dの第1接触面41Cは、端板部41fの端面41Bと同一平面上に位置している。これにより、第1主軸受91の第2受け面41Gは、第1接触面41Cよりも軸C1方向における第2部材42とは反対側に位置している。
【0066】
本実施形態に係る偏心揺動型歯車装置X1における第1凸部41gの第2接触面41Dは、軸C1方向において第1揺動歯車71と第2揺動歯車72との間に位置している。すなわち、第1部材41の第1凸部41gと第2部材42の第2凸部42bとは、軸C1方向における第1揺動歯車71と第2揺動歯車72との間において接触している。
【0067】
本実施形態に係る偏心揺動型歯車装置X1では、第1接触面41Cと第2接触面41Dとの中間面S1は、締結部材5の締結方向である軸C1方向において端板部41fの端面41Bよりも第2部材42側に位置している。これにより、主軸受9は、軸C1方向において中間面S1よりも端板部41fの端面41A側に位置している。また、端板部41fに形成されたクランク軸孔41bの内周面41cは、軸C1方向において中間面S1よりも端板部41fの端面41A側に位置している。すなわち、内周面41cは、締結部材5の締結方向である軸C1方向において中間面S1とずれて位置している。
【0068】
第1部材41のうち、締結部材5の締結方向である軸C1方向において第1接触面41Cと第2接触面41Dとの間に位置する部位は、締結部材5によって第1部材41と第2部材42とを締結するのに伴って、キャリア4の径方向の外側に変形が生じやすい部位である。本実施形態に係る偏心揺動型歯車装置X1では、軸C1方向において第2受け面41Gを第1接触面41Cよりも端面41A側に配置することにより、前記変形が生じやすい部位から第2受け面41Gを逃がすことができる。これにより、第2受け面41Gが締結部材5による第1部材41と第2部材42との締結に伴う第1部材41の変形の影響を受けることをより抑止できる。
【0069】
さらに、本実施形態に係る偏心揺動型歯車装置X1では、第1部材41におけるクランク軸孔41bの内周面41cが締結部材5の締結方向である軸C1方向において中間面S1とずれて位置している。このため、締結部材5による第1部材41と第2部材42との締結に伴う第1部材41の変形の影響により、内周面41cが大きく変形してしまうことを抑止できる。そのため、内周面41cが大きく変形することにより、当該内周面41cがクランク軸受B1を介してクランク軸6の軸本体61に強い押圧力を加えることを抑止できる。これにより、偏心揺動型歯車装置X1の寿命が短くなることを抑止できる。
【0070】
なお、
図3に示した本実施形態では、シャフト部A1は、第1凸部41gおよび第2凸部42bによって構成されているが、これに限らず、第1凸部41gのみによって構成されてもよい。すなわち、第2部材42は、第2凸部42bを有していなくともよい。この場合、第1凸部41gが揺動歯車7の挿入孔71b,72bに挿入されるとともに、当該第1凸部41gの第2接触面41Dが基板部42aの第1部材41側の端面に接触することになる。
【0071】
以上説明した参考形態および実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記の参考形態および実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。