(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6563667
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】鉄筋コンクリート柱・鉄骨柱・鉄骨梁接合構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/30 20060101AFI20190808BHJP
E04B 1/58 20060101ALI20190808BHJP
E04C 3/36 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
E04B1/30 K
E04B1/58 505P
E04C3/36
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-68352(P2015-68352)
(22)【出願日】2015年3月30日
(65)【公開番号】特開2016-188485(P2016-188485A)
(43)【公開日】2016年11月4日
【審査請求日】2018年3月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086793
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅士
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(72)【発明者】
【氏名】岡本 勇紀
(72)【発明者】
【氏名】森 貴久
(72)【発明者】
【氏名】長濱 温子
【審査官】
佐藤 美紗子
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−036449(JP,A)
【文献】
実開昭62−175107(JP,U)
【文献】
韓国公開特許第2001−0028920(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/58
E04B 1/30
E04C 3/29
E04C 3/04
E04C 3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋コンクリート柱からなる下階柱の上端部と、鉄骨梁と、前記下階柱より小径でかつ前記鉄骨梁の幅より大径の鉄骨柱からなる上階柱の下端部とを接合する鉄筋コンクリート柱・鉄骨柱・鉄骨梁接合構造であって、
前記鉄骨梁は前記下階柱の上端部内に埋め込まれ、
前記鉄骨梁の前記下階柱に埋め込まれる平面範囲内の上面に、立ち姿勢の上階柱支持板が設けられ、
この上階柱支持板上に、前記上階柱の下端面の全体が載るベースプレートが設けられ、 前記上階柱の下端部の周囲にこの上階柱の曲げを補強する曲げ補強体が設けられ、
前記上階柱支持板は十字状に交差し下端が前記鉄骨梁の上面に溶接で接合された
ことを特徴とする鉄筋コンクリート柱・鉄骨柱・鉄骨梁接合構造。
【請求項2】
鉄筋コンクリート柱からなる下階柱の上端部と、鉄骨梁と、前記下階柱より小径でかつ前記鉄骨梁の幅より大径の鉄骨柱からなる上階柱の下端部とを接合する鉄筋コンクリート柱・鉄骨柱・鉄骨梁接合構造であって、
前記鉄骨梁は前記下階柱の上端部内に埋め込まれ、
前記鉄骨梁の前記下階柱に埋め込まれる平面範囲内の上面に、立ち姿勢の上階柱支持板が設けられ、
この上階柱支持板上に、前記上階柱の下端面の全体が載るベースプレートが設けられ、 前記上階柱の下端部の周囲にこの上階柱の曲げを補強する曲げ補強体が設けられ、
前記鉄骨梁が前記下階柱から2方または3方に延び、前記下階柱の上端における前記鉄骨梁の梁成内の範囲における前記鉄骨梁が位置しない方向の部分に、前記下階柱に埋め込まれた鉄骨梁の側面に基端が接合されて先端が前記下階柱の表面まで延びるアーム状の補強鉄骨が埋め込まれた鉄筋コンクリート柱・鉄骨柱・鉄骨梁接合構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の鉄筋コンクリート柱・鉄骨柱・鉄骨梁接合構造において、前記鉄骨梁が、ウェブが立方向に向く設置姿勢のH形鋼からなり、前記上階柱支持板が十字状に交差して設けられ、この十字状を成す少なくとも片方の上階柱支持板が、前記鉄骨梁の前記ウェブの真上に沿って位置する鉄筋コンクリート柱・鉄骨柱・鉄骨梁接合構造。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の鉄筋コンクリート柱・鉄骨柱・鉄骨梁接合構造において、前記曲げ補強体が、前記下階柱から一体に続く鉄筋コンクリート製の根巻きである鉄筋コンクリート柱・鉄骨柱・鉄骨梁接合構造。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の鉄筋コンクリート柱・鉄骨柱・鉄骨梁接合構造において、前記上階柱が角パイプである鉄筋コンクリート柱・鉄骨柱・鉄骨梁接合構造。
【請求項6】
請求項1に記載の鉄筋コンクリート柱・鉄骨柱・鉄骨梁接合構造において、前記鉄骨梁が前記下階柱の4方に延びる鉄筋コンクリート柱・鉄骨柱・鉄骨梁接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鉄筋コンクリート柱からなる下階柱の上端部と、鉄骨梁と、鉄骨柱からなる上階柱の下端部とを接合する鉄筋コンクリート柱・鉄骨柱・鉄骨梁接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図11は、物流施設などに採用される、柱をRC造、梁をS造とした構造(以下、「RCS構造」と称す)の建物躯体の従来例を示す。この種の建物の柱において、一般階は鉄筋コンクリート柱21とされているが、最上階だけを鉄骨柱24とすることがある。最上階は折板などからなる軽量の屋根が載るだけであり、負担する荷重が小さいため、コスト削減のために鉄骨柱とされる。また、最上階の鉄骨柱24は、支持すべき荷重が小さいため、300mm角程度のH形鋼や角パイプで足り、鉄骨梁23の梁幅は300mm程度が一般的であるため、
図11のXIII部を
図12に斜視図で示すように、鉄骨梁23の上に鉄骨柱24を梁幅内に納まるように載せた接合構造とすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−68106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような物流施設の建物において、さらなるコスト削減のため、中間階の柱についても鉄骨柱とすることが望まれている。物流施設の場合、1階は出入り口等を設けるプラン上、ブレースが入れられず、鉄骨造ラーメン構造では剛性が不足するため、RC造の柱がほぼ必須である。1階以外の中間階では外周部にはほぼブレースを入れることが出来るため、ブレース併用の鉄骨造とすることができる。
【0005】
しかし、
図13に示すように、中間階の柱を鉄骨柱22とする場合、この鉄骨柱22は床スラブやその上の積載荷重を支持する必要があり、耐力の関係上、鉄骨梁23の梁幅を超える外径、例えば550mm程度の鉄骨柱22が必要となる。
このような梁幅を超える鉄骨柱22を、最上階と同様に同図のように鉄骨梁23の上面に設置したのでは、鉄骨柱22の下端面の鉄骨梁23の梁幅からはみ出る部分の応力を鉄骨梁23に伝達することができない。
このような梁幅を超える鉄骨柱22と鉄骨梁23とを接合する適切な接合構造がなく、中間階を鉄骨造とする工法が実現できなかった。
【0006】
この発明の目的は、下階柱が鉄筋コンクリート柱であって梁が鉄骨梁であるRCS構造の建物躯体において、上階柱となる鉄骨柱がこの鉄骨柱を載せる鉄骨梁の幅より太くても、応力伝達上で支障が生じることなく上階柱と鉄骨梁との接合が行える鉄筋コンクリート柱・鉄骨柱・鉄骨梁接合構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の鉄筋コンクリート柱・鉄骨柱・鉄骨梁接合構造は、鉄筋コンクリート柱からなる下階柱の上端部と、鉄骨梁と、前記下階柱より小径でかつ前記鉄骨梁の幅より大径の鉄骨柱からなる上階柱の下端部とを接合する鉄筋コンクリート柱・鉄骨柱・鉄骨梁接合構造であって、
前記鉄骨梁は前記下階柱の上端部内に埋め込まれ、
前記鉄骨梁の前記下階柱に埋め込まれる平面範囲内の上面に、立ち姿勢の上階柱支持板が設けられ、
この上階柱支持板上に、前記上階柱の下端面の全体が載るベースプレートが設けられ、 前記上階柱の下端部の周囲にこの上階柱の曲げを補強する曲げ補強体が設けられた
ことを特徴とする。
前記上階柱支持板は、十字状に交差し下端が前記鉄骨梁の上面に溶接で接合されてもよい。
【0008】
この構成によると、上階柱の下端面の全体が載るベースプレートが設けられていて、上階柱の軸方向荷重は全てベースプレートで受けられる。このベースプレートで受けられた荷重が、鉄骨梁上に設置された前記立ち姿勢の上階柱支持板を介して鉄骨梁に伝えられる。そのため、上階柱となる鉄骨柱が鉄骨梁の幅より太くても、上階柱の軸方向の応力の鉄骨梁への伝達が支障なく行われる。上階柱の下端に作用する曲げモーメントについては、立ち姿勢の上階柱支持板では十分に伝達することが難しいが、前記曲げ補強体が設けられていることで、上階柱の下端の曲げについても十分に支持することができる。
このように、上階柱となる鉄骨柱がこの鉄骨柱を載せる鉄骨梁の幅より太くても、応力伝達上で支障が生じることなく上階柱と鉄骨梁との接合が行える。
また、この接合構造は、上階柱となる鉄骨柱の下端から鉄骨梁の上面に応力伝達するという従来の最上階等で適用されていたRCS構造の柱梁接合部の応力伝達機構をそのまま用いることができるという特長を持ち、構造計算等の設計が容易である。
【0009】
この発明において、前記鉄骨梁が、ウェブが立方向に向く設置姿勢のH形鋼からなり、前記上階柱支持板が十字状に交差して設けられ、この十字状を成す少なくとも片方の上階柱支持板が、前記鉄骨梁の前記ウェブの真上に沿って位置するものとしても良い。
鉄骨梁にH形鋼を用いる場合、一般的にウェブが立方向となるように設置されるが、この立方向のウェブの真上に沿って前記上階柱支持板が位置することで、上階柱支持板に作用する上階柱の荷重が鉄骨梁のウェブで良好に受けられる。また、前記上階柱支持板が十字状に交差して設けられることで、上階柱の下端に作用する荷重を上階柱支持板でより堅固に受けることができる。
【0010】
この発明において、前記曲げ補強体が、前記下階柱から一体に続く鉄筋コンクリート製の根巻きであっても良い。
前記曲げ補強体には鋼材等も採用できるが、下階柱が鉄筋コンクリート柱であるため、下階柱から一体に続く鉄筋コンクリート製の根巻きとすることで、施工も簡単でかつ堅固な曲げ補強が行える。
【0011】
この発明において、前記上階柱が角パイプであっても良い。角パイプであると、断面性能に優れ、柱径の割合にして大きな曲げ耐力が得られるが、そのため柱断面の寸方を小さくできて鉄骨梁からのはみ出し量が小さくなり、上階柱と鉄骨梁間の応力伝達もより良好に行える。
【0012】
この発明において、前記鉄骨梁が前記下階柱から4方に延びていても良い。鉄骨梁が4方に延びていると、その交差する鉄骨梁に沿って前記上階柱支持板を十字状に設けることなどで、上階柱から鉄骨梁への応力伝達がより良好に行える。
【0013】
前記鉄骨梁は前記下階柱から2方または3方に延びていても良く、その場合、前記下階柱の上端における前記鉄骨梁の梁成内の範囲における前記鉄骨梁が位置しない方向の部分に、前記下階柱に埋め込まれた鉄骨梁の側面に基端が接合されて先端が前記下階柱の表面まで延びるアーム状の補強鉄骨が埋め込まれていても良い。
【0014】
このようにアーム状の補強鉄骨が埋め込むことで、鉄骨梁が下階柱である鉄筋コンクリート柱から2方または3方に延びる場合でも、上階柱である鉄骨柱の下端をベースプレートおよび上階柱支持板を介して鉄骨梁の上に安定良く十分な支持強度で支持することができる。
【発明の効果】
【0015】
この発明の鉄筋コンクリート柱・鉄骨柱・鉄骨梁接合構造は、鉄筋コンクリート柱からなる下階柱の上端部と、鉄骨梁と、前記下階柱より小径でかつ前記鉄骨梁の幅より大径の鉄骨柱からなる上階柱の下端部とを接合する鉄筋コンクリート柱・鉄骨柱・鉄骨梁接合構造であって、前記鉄骨梁は前記下階柱の上端部内に埋め込まれ、前記鉄骨梁の前記下階柱に埋め込まれる平面範囲内の上面に、立ち姿勢の上階柱支持板が設けられ、この上階柱支持板上に、前記上階柱の下端面の全体が載るベースプレートが設けられ、前記上階柱の下端部の周囲にこの上階柱の曲げを補強する曲げ補強体が設けられたため、下階柱が鉄筋コンクリート柱であって梁が鉄骨梁であるRCS構造の建物躯体において、上階柱となる鉄骨柱がこの鉄骨柱を載せる鉄骨梁の幅より太くても、応力伝達上で支障が生じることなく上階柱と鉄骨梁との接合が行える。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】この発明の一実施形態にかかる鉄筋コンクリート柱・鉄骨柱・鉄骨梁接合構造が適用されるRCS構造の建物躯体を示す斜視図である。
【
図2】同鉄筋コンクリート柱・鉄骨柱・鉄骨梁接合構造を示す斜視図である。
【
図3】同鉄筋コンクリート柱・鉄骨柱・鉄骨梁接合構造を鉄筋露出状態で示す斜視図である。
【
図4】同鉄筋コンクリート柱・鉄骨柱・鉄骨梁接合構造を、下階柱および曲げ補強体を省略して示す斜視図である。
【
図5】同鉄筋コンクリート柱・鉄骨柱・鉄骨梁接合構造の平面図である。
【
図6】同鉄筋コンクリート柱・鉄骨柱・鉄骨梁接合構造における鋼材部分のみを示す正面図である。
【
図7】同鉄筋コンクリート柱・鉄骨柱・鉄骨梁接合構造における鋼材部分のみを示す斜視図である。
【
図8】この発明の他の実施形態にかかる鉄筋コンクリート柱・鉄骨柱・鉄骨梁接合構造を示す斜視図である。
【
図9】この発明のさらに他の実施形態にかかる鉄筋コンクリート柱・鉄骨柱・鉄骨梁接合構造を示す平面図である。
【
図10】この発明のさらに他の実施形態にかかる鉄筋コンクリート柱・鉄骨柱・鉄骨梁接合構造を示す平面図である。
【
図11】従来のRCS構造の建物躯体を示す斜視図である。
【
図12】
図11におけるXII部を拡大して示す斜視図である。
【
図13】
図12における鉄骨柱をこれより大径の鉄骨柱に置き換えた場合を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
この発明の一実施形態を
図1ないし
図7と共に説明する。
図1はこの実施形態の鉄筋コンクリート柱・鉄骨柱・鉄骨梁接合構造が適用されるRCS構造の建物躯体を示し、
図2はその鉄筋コンクリート柱・鉄骨柱・鉄骨梁接合構造の概略の斜視図を示す。
図1の建物躯体は、例えば物流施設などに適用される。この建物躯体は、各柱につき、1階は鉄筋コンクリート柱1とされ、中間階および最上階は鉄骨柱2,10とされている。各梁は鉄骨梁3とされている。中間階では各階毎に鋼材のブレース11が設けられている。ブレース11は、図示の例では上端が鉄骨梁3に接合され、下端が鉄骨柱2に接合されている。1階の隣合う鉄筋コンクリート柱1,1間は、ブレースは設けられず、建物の部位によっては、トラック出入り用の開口とされる。
【0018】
各使用部材の種類例および寸法を示すと、前記中間階の鉄骨柱2は角パイプとされ、最上階の鉄骨柱10は角パイプまたはH形鋼等の形鋼とされる。鉄骨梁3はH形鋼とされ、そのウェブが立方向となるように用いられる。中間階の鉄骨柱2は、1階の鉄筋コンクリート柱1より小径でかつ鉄骨梁3のフランジ幅(以下、単に「幅」と称す)より大径とされる。例えば、鉄骨梁3の幅が300mmの場合、中間階の鉄骨柱2は外寸が550mm角程度とされる。
【0019】
最上階の鉄骨柱10は、折板屋根等の屋根材を支持しており、鉄骨梁3と同じく外寸が300mmとされる。そのため、最上階の鉄骨柱10の下端と鉄骨梁3との接合は、
図12の従来例で説明した構成と同様に、鉄骨梁3上に鉄骨柱10を設置する柱・梁接合構造とされている。ただし、最上階の鉄骨柱10の下に続く柱は中間階の鉄骨柱2であり、接合部にコンクリートは設けられていない。
【0020】
図2は、
図1のII部である鉄筋コンクリート柱・鉄骨柱・鉄骨梁接合構造を拡大して示す。すなわち同図は、鉄筋コンクリート柱1からなる下階柱(1階柱)の上端部と、鉄骨梁3と、前記中間階の柱である上階柱(2階柱)の下端部とを接合する構造を示す。
【0021】
この鉄筋コンクリート柱・鉄骨柱・鉄骨梁接合構造において、鉄骨梁2は鉄筋コンクリート柱1の4方に延びている。縦横のいずれか1方向の鉄骨梁2は、鉄筋コンクリート柱1を貫通して延び、その直交方向の鉄骨梁2は、前記1方向の鉄骨梁2の側面に先端が突き合わせ状態に溶接等で接合されている。
【0022】
鉄骨梁3の下階柱である鉄筋コンクリート柱1内の範囲において、立ち姿勢の上階柱支持板4が、
図5に平面図で示すように十字状に交差して設けられる。この十字状を成す一方の上階柱支持板4は、
図6に正面図で示すように一の鉄骨梁3のウェブ3aの真上に沿って位置する。十字状を成す他方の上階柱支持板4は、前記一の鉄骨梁3に対する直交方向の鉄骨梁3のウェブ3aの真上に沿って位置する。上階柱支持板4の長さは、鉄骨柱2の外径と同じか、または鉄骨柱2より両側に若干突出する長さであることが望ましい。前記上階柱支持板4は鋼板等からなり、縦横のいずれか一方の上階柱支持板4は全長に渡って連続して延び、他方の上階柱支持板4は2枚に分割されて前記一方の上階柱支持板4の両側面に端面が溶接等で接合される。上階柱支持板4の下端は、その下の
鉄骨梁3の上面に溶接等で接合される。なお、上階柱支持板4は、スチフナと称しても良い。
【0023】
上階柱支持板4上には、上階柱となる鉄骨柱2の下端面の全体が載る略方形の鋼板からなるベースプレート5が設けられる。ベースプレート5の大きさは、鉄骨柱2の下端面より少し大き目であるのが望ましい。ベースプレート5は上階柱支持板4に溶接等で接合される。
【0024】
上階柱となる鉄骨柱2の下端部の周囲には、この鉄骨柱2の曲げを補強する曲げ補強体6が設けられる。
図3には、この鉄筋コンクリート柱・鉄骨柱・鉄骨梁接合構造の詳細を斜視図で示す。曲げ補強体6は、この実施形態では、下階柱である1階の鉄筋コンクリート柱1から一体に続く鉄筋コンクリート製の根巻きとされている。この根巻きとなる曲げ補強体6の鉄筋19は、1階の鉄筋コンクリート柱1から上方向に延びる複数本の主筋19aと、これら複数本の主筋19aの周囲に位置する帯筋19bとでなる。
【0025】
この実施形態では、下階柱である鉄筋コンクリート柱1における鉄骨梁3の高さ位置の部分、つまり梁成に対応する高さ範囲の部分を打設するために、
図4のようにふさぎ板7が捨て型枠として配置されている。ふさぎ板7は鋼板等からなり、互いに直角に配置される隣り合う各2つの鉄骨梁3、3の間に跨がって水平断面L字状に設けられる。ふさぎ板7の両側端は各鉄骨梁3に溶接により接合されている。なお、
図7に示すように、前記ふさぎ板7を省略して、一般的な型枠を配置することで、鉄筋コンクリート柱1における、鉄骨梁3が位置する高さの部分まで打設して、鉄骨梁3が鉄筋コンクリート柱1に埋め込まれるようにしても良い。
【0026】
この構成の鉄筋コンクリート柱・鉄骨柱・鉄骨梁接合構造によると、上階柱である鉄骨柱2の下端面の全体が載るベースプレート5が設けられていて、上階柱である鉄骨柱2の軸方向荷重は全てベースプレート5で受けられる。このベースプレート5で受けられた荷重が、鉄骨梁3上に設置された立ち姿勢の上階柱支持板4を介して鉄骨梁3に伝えられる。そのため、上階柱となる鉄骨柱2が鉄骨梁3の幅より太くても、上階柱の軸方向の応力の鉄骨梁3への伝達が支障なく行われる。上階柱支持板4がこの実施形態のように十字状に設けられている場合は、より安定して応力伝達が行われる。上階柱の下端に作用する曲げモーメントについては、立ち姿勢の上階柱支持板4では十分に伝達することが難しいが、前記曲げ補強体6が設けられていることで、上階柱である鉄骨柱2の下端の曲げについても十分に支持することができる。曲げ補強体6が上記鉄筋コンクリート製の根巻きであると、より強固に曲げ補強できる。
【0027】
このように、上階柱となる鉄骨柱2がこの鉄骨柱2を載せる鉄骨梁3の幅より太くても、応力伝達上で支障が生じることなく上階柱と鉄骨梁3との接合が行える。また、この接合構造は、上階柱となる鉄骨柱の下端から鉄骨梁の上面に応力伝達するという従来の最上階等で適用されていたRCS構造の柱梁接合部の応力伝達機構をそのまま用いることができるという特長を持ち、構造計算等の設計が容易である。
【0028】
図8は、この発明の他の実施形態を示す。この実施形態の鉄筋コンクリート柱・鉄骨柱・鉄骨梁接合構造では、先の実施形態において、上階柱となる鉄骨柱2の下端部の一側面とその側面の向かう方向に延びる鉄骨梁3の前記鉄骨柱2に近い一端部上面との間に跨がって、ブレース11(
図1参照)の取付用のガセットプレート8が溶接により接合されている。その他の構成は、先の実施形態の場合と同様である。
このようにブレース取付用のガセットプレート8を接合することにより、ブレース付きの鉄骨造とすることができ、中間階の柱を鉄筋コンクリート柱とせずに鉄骨柱2としても、十分な剛性を確保することができる。
【0029】
図9は、この発明のさらに他の実施形態を示す。この実施形態の鉄筋コンクリート柱・鉄骨柱・鉄骨梁接合構造実施形態では、
図1〜
図7に示した先の実施形態において、鉄骨梁3が下階柱である鉄筋コンクリート柱1から3方に平面視(上から見た)でT字状に延び、鉄筋コンクリート柱1の上端部内における鉄骨梁3が位置しない1方向の部分に、鉄筋コンクリート柱1に埋め込まれた鉄骨梁3の側面に基端が接合されて先端が鉄筋コンクリート柱1の表面まで延びるアーム状の補強鉄骨9が埋め込まれている。アーム状の補強鉄骨9は、例えば鉄骨梁3と同じ断面形状で同寸法のH形鋼からなる。その他の構成は、
図1〜
図7に示した先の実施形態の場合と同様である。
【0030】
このように、鉄骨梁3が鉄筋コンクリート柱1から3方にT字状に延びる場合でも、鉄筋コンクリート柱1の上端部内における鉄骨梁3が位置しない1方向の部分にアーム状の補強鉄骨9を埋め込むことにより、上階柱である鉄骨柱2の下端を上階柱支持板4およびベースプレート5を介して鉄骨梁3の上に安定良く十分な支持強度で支持することができる。
【0031】
図10は、この発明のさらに他の実施形態を示す。この実施形態の鉄筋コンクリート柱・鉄骨柱・鉄骨梁接合構造実施形態では、
図1〜
図7に示した先の実施形態において、鉄骨梁3が下階柱である鉄筋コンクリート柱1から2方に直線状に延び、鉄筋コンクリート柱1の上端部内における鉄骨梁3が位置しない2方向の部分に、鉄筋コンクリート柱1に埋め込まれた鉄骨梁3の側面に基端が接合されて先端が鉄筋コンクリート柱1の表面まで延びるアーム状の補強鉄骨9がそれぞれ埋め込まれている。その他の構成は、
図1〜
図7に示した先の実施形態の場合と同様である。
【0032】
この実施形態の場合も、鉄筋コンクリート柱1の上端部内における鉄骨梁3が位置しない2方向の部分にアーム状の補強鉄骨9を埋め込むことにより、上階柱である鉄骨柱2の下端を上階柱支持板4およびベースプレート5を介して鉄骨梁3の上に安定良く十分な支持強度で支持することができる。
【符号の説明】
【0033】
1…鉄筋コンクリート柱(下階柱)
2…鉄骨柱(上階柱)
3…鉄骨梁
3a…ウェブ
4…上階柱支持板
5…ベースプレート
6…曲げ補強体
9…補強鉄骨