(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基端側から先端側に順次摺動自在に嵌挿された複数のブームと、それら複数のブームのうち隣接するブーム間に設けられた摺動板とを有する多段伸縮ブームに用いられる給脂装置であって、
1つのグリスニップルから給脂されたグリスを上下に分割して内外で隣接するブームの2箇所の摺動板に給脂する給脂構造を備え、
前記給脂構造は、
前記グリスニップルが装着されるニップル取付孔と、
当該給脂構造を設けるブームよりも内方側の摺動板がブーム伸縮時に通過する軌道と向き合う位置に開口して当該給脂構造を設けるブームとその1段内側のブームとの間にグリスを給脂する第一グリス吐出孔と、
当該給脂構造を設けるブームの摺動板がブーム伸縮時に通過する軌道と向き合う位置に開口して当該給脂構造を設けるブームとその1段外側のブームとの間にグリスを給脂する第二グリス吐出孔と、
前記ニップル取付孔に対して前記第一グリス吐出孔および前記第二グリス吐出孔をそれぞれ連通させる横送り油路とを有し、
前記第二グリス吐出口は、前記給脂構造を設けるブームの摺動板よりもブーム先端側に位置するように配置されることを特徴とする多段伸縮ブーム用給脂装置。
基端側から先端側に順次摺動自在に嵌挿された複数のブームと、それら複数のブームのうち隣接するブーム間に設けられた摺動板とを有する多段伸縮ブームに用いられる給脂装置であって、
1つのグリスニップルから給脂されたグリスを分割して内外で隣接するブームの2箇所の摺動板に給脂する給脂構造を備え、
前記給脂構造は、
前記グリスニップルが装着されるニップル取付孔と、
当該給脂構造を設けるブームよりも内方側の摺動板がブーム伸縮時に通過する軌道と向き合う位置に開口して当該給脂構造を設けるブームとその1段内側のブームとの間にグリスを給脂する第一グリス吐出孔と、
当該給脂構造を設けるブームの摺動板がブーム伸縮時に通過する軌道と向き合う位置に開口して当該給脂構造を設けるブームとその1段外側のブームとの間にグリスを給脂する第二グリス吐出孔と、
前記ニップル取付孔に対して前記第一グリス吐出孔および前記第二グリス吐出孔をそれぞれ連通させる横送り油路とを有し、
前記給脂構造は、当該給脂構造を設けるブームの上面に溶接されるニップル取付台座を有し、当該ニップル取付台座には、その上面側に前記ニップル取付孔が形成されるとともに、前記ニップル取付孔に連通するとともに当該ニップル取付台座の底面全幅に渡って設けられた凹溝が形成されており、
前記横送り油路は、前記凹溝両端の開口部が当該給脂構造を設けるブームの上面への溶接で塞がれることにより、当該給脂構造を設けるブームの上面と当該ニップル取付台座の底面との間に形成されることを特徴とする多段伸縮ブーム用給脂装置。
前記第一グリス吐出孔の出口は、前記給脂構造を設けるブームのブーム内壁面と前記給脂構造を設けるブームの1段内側のブームに設けられた摺動板の前方上面との間の空間にグリスが溜まる第一グリス溜まり部になっており、
前記第二グリス吐出孔の出口は、前記給脂構造を設けるブームの1段外側のブームのブーム内壁面と前記第二グリス吐出孔の出口の上面との間の空間にグリスが溜まる第二グリス溜まり部になっている請求項1〜6のいずれか一項に記載の多段伸縮ブーム用給脂装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、入り子式の複数のブーム同士の摺動板は、ブーム最縮小時において、隣接するブーム内外の摺動板同士が重なり合うように連装されるとは限らない。つまり、多段伸縮ブームを最縮小した場合に、隣接するブーム内外の摺動板同士が重なり合わない多段伸縮ブームがある。
ここで、通常、ブーム伸縮用の油圧シリンダ及び伸縮に要する装置は、最も内側となる先端ブーム内に設けられる。そして、油圧シリンダの取り付けは、その基端部が、基礎となる外側ブームの基端部に取付ピンを介して枢支されるとともに、油圧シリンダの可動部が、伸縮させたい内側ブームの基端部に取付ピンを介して枢支される。
【0005】
そこで、この種の多段伸縮ブームにおいて、例えば特許文献2記載の技術では、外側ブームの基端部が内側ブームよりも突出するように、内側ブームの基端部の位置を外側の取付ピンの位置よりも短くしている。これらは、ブームを伸長させた状態では、各ブーム毎の取付ピンが露出する構造のため、ブームに油圧シリンダを取付ける際の組立容易性に大きく寄与する。つまり、隣接するブーム内外の摺動板同士が重なり合わなくなっても、この構造の方が都合良いのである。これにより、同文献記載の多段伸縮ブームでは、外側ブームの突出部から取付ピンを装着するときに、取付ピンが内側ブームに干渉することなく油圧シリンダの基端部を軸支可能としている(例えば特許文献2の
図2参照)。
【0006】
これに対し、特許文献1に記載の技術は、隣接するブーム内外の摺動板同士が重なり合うことが必須要件となるため、上記特許文献2記載の多段伸縮ブームの場合には採用できないという問題がある。
そこで、本発明は、グリスニップルの取り付け箇所を減らすとともに作業用穴も減らすことができ、内外のブーム摺動板同士が重なり合わなくとも複数のブーム摺動板に同時に給脂をすることができる多段伸縮ブーム用給脂装置およびこれを備える多段伸縮ブームを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る多段伸縮ブーム用給脂装置は、基端側から先端側に順次摺動自在に嵌挿された複数のブームと、それら複数のブームのうち隣接するブーム間に設けられた摺動板とを有する多段伸縮ブームに用いられる給脂装置であって、1つのグリスニップルから給脂されたグリスを分割して内外で隣接するブームの2箇所の摺動板に給脂する給脂構造を備え、前記給脂構造は、前記グリスニップルが装着されるニップル取付孔と、当該給脂構造を設けるブームよりも内方側の摺動板がブーム伸縮時に通過する軌道と向き合う位置に開口して当該給脂構造を設けるブームとその1段内側のブームとの間にグリスを給脂する第一グリス吐出孔と、当該給脂構造を設けるブームの摺動板がブーム伸縮時に通過する軌道と向き合う位置に開口して当該給脂構造を設けるブームとその1段外側のブームとの間にグリスを給脂する第二グリス吐出孔と、前記ニップル取付孔に対して前記第一グリス吐出孔および前記第二グリス吐出孔をそれぞれ連通させる横送り油路とを有することを特徴とする。
【0008】
また、上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る多段伸縮ブームは、本発明の一態様に係る多段伸縮ブーム用給脂装置を備えることを特徴とする。
ここで、本発明の一態様に係る多段伸縮ブーム用給脂装置において、前記第一グリス吐出孔と前記第二グリス吐出孔とは、相互の流路断面積および流路長さが同じであることは好ましい。また、前記第一グリス吐出孔は、前記給脂構造を設けるブーム自体に形成された貫通孔であることは好ましい。
【0009】
また、本発明の一態様に係る多段伸縮ブーム用給脂装置において、前記第一グリス吐出孔の出口は、前記給脂構造を設けるブームのブーム内壁面と前記給脂構造を設けるブームの1段内側のブームに設けられた摺動板の前方上面との間の空間にグリスが溜まる第一グリス溜まり部になっており、前記第二グリス吐出孔の出口は、前記給脂構造を設けるブームの1段外側のブームのブーム内壁面と前記第二グリス吐出孔の出口の上面との間の空間にグリスが溜まる第二グリス溜まり部になっていることは好ましい。
【0010】
また、本発明の一態様に係る多段伸縮ブーム用給脂装置において、前記給脂構造は、当該給脂構造を設けるブームの上面に溶接されるニップル取付台座を有し、当該ニップル取付台座には、その上面側に前記ニップル取付孔が形成されるとともに、前記ニップル取付孔に連通して当該ニップル取付台座の底面全幅に渡って設けられた凹溝が形成されており、前記横送り油路は、前記凹溝両端の開口部が当該給脂構造を設けるブームの上面への溶接で塞がれることにより、当該給脂構造を設けるブームの上面と当該ニップル取付台座の底面との間に形成されることは好ましい。
【0011】
本発明の一態様に係る多段伸縮ブーム用給脂装置によれば、給脂構造は、グリスニップルが装着されるニップル取付孔と、ニップル取付孔と二つのグリス吐出孔とを連通する横送り油路とを有し、二つのグリス吐出孔は、第一グリス吐出孔が、当該給脂構造を設けるブームよりも内方側の摺動板がブーム伸縮時に通過する軌道と向き合う位置に開口して当該給脂構造を設けるブームとその1段内側のブームとの間にグリスを給脂し、第二グリス吐出孔が、当該給脂構造を設けるブームの摺動板がブーム伸縮時に通過する軌道と向き合う位置に開口して当該給脂構造を設けるブームとその1段外側のブームとの間にグリスを給脂するので、グリスニップルから供給されたグリスを横送り油路を介して二つのグリス吐出孔から、グリスニップルの装着位置よりも離隔して内外で隣接するブーム間に配置された摺動板とブーム伸縮時に重なる位置まで給脂できる。そのため、内外のブーム間に配置した給脂部材の位置を、内外のブームの摺動板に干渉しないように配置することができる。したがって、本発明の一態様に係る多段伸縮ブーム用給脂装置によれば、内外のブーム摺動板同士が重なり合わなくとも、内外の摺動板に向けてグリスニップルから供給されたグリスを複数のブーム摺動板に同時に給脂することができる。
【0012】
そして、第一グリス吐出孔と第二グリス吐出孔は、給脂構造を設けるブームと当該ブームの1段内側のブームとの間と、給脂構造を設けるブームと当該ブームの1段外側のブームとの間にグリスを給脂するように横送り油路に連通して設けられているので、給脂構造に設ける1箇所のグリスニップルから内外の複数のブーム2段分の2箇所の摺動板に同時に給脂をすることができる。したがって、本発明の一態様に係る多段伸縮ブーム用給脂装置によれば、グリスニップルの取り付け箇所を減らすことができ、また、作業用穴も減らすことができる。
【発明の効果】
【0013】
上述のように、本発明によれば、内外のブーム摺動板同士が重なり合わなくとも給脂をすることができ、グリスニップルの取り付け箇所を減らすことができ、また、作業用穴も減らすことができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を適宜参照しつつ説明する。なお、各図面は模式的なものである。そのため、厚みと平面寸法との関係、比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記の実施形態に特定するものではない。
【0016】
第一実施形態では、
図1に示すように、多段伸縮ブーム10は、コラム6の上部に、起伏および伸縮自在に設けられる。本実施形態は、5段の入れ子型をなす例であって、複数のブーム1〜5を備えている。この多段伸縮ブーム10は、車両搭載型の油圧クレーンに用いられる例であり、同図は多段伸縮ブーム10を全縮小した状態を示すとともに、給脂装置の部分については縦断面にて図示している。
複数のブーム1〜5は、基端側(同図左側)のブームから順に、基端ブーム1、第1〜第3中間ブーム2,3,4および先端ブーム5が順次摺動自在に嵌挿されている。そして、これら複数のブーム1〜5のうち、第1〜第3中間ブーム2,3,4および先端ブーム5が不図示の伸縮機構の作動に応じて伸縮されるようになっている。コラム6にはウインチ7が装備され、このウインチ7から繰り出しおよび繰り込み可能にワイヤロープ8を導いてフック9に掛け回し、このフック9を多段伸縮ブーム10の先端から吊り下げている。
【0017】
ここで、この多段伸縮ブーム10には、同図に一部を破断して示すように、隣接するブーム間に設けられた摺動板30と、摺動板30の摺動面30sにグリスを供給するための給脂装置20が付設されている。以下、摺動板30および給脂装置20について詳しく説明する。
この多段伸縮ブーム10は、
図2に横断面を拡大図示するように、各ブーム1〜5の横断面が略六角形に形成されている。複数のブーム1〜5に対し、第1〜第3中間ブーム2,3,4および先端ブーム5の基端側の上面に、摺動板30がそれぞれ付設されている。本実施形態では、摺動板30は、略六角形状のブーム上面の左右の肩の位置2ヶ所にそれぞれ左右対称に配置されている。本実施形態の摺動板30は、摺動板本体32と、摺動板本体32を保持する摺動板取付台座40を有して構成されている。
【0018】
各摺動板取付台座40は、摺動板本体32よりも一回り大きな形状を有する直方体状のブロック部材であり、上面に摺動板本体32を収容する平面視が矩形状の凹部を有する。摺動板取付台座40は、基部の周縁の適所がブーム上に溶接で固着されている。
各摺動板本体32は、平面視が矩形状をなす板部材であり、各摺動板本体32の上面が摺動面30sになっている。摺動面30sには、グリス溜まりとなる不図示の溝や凹部が形成されている。各摺動板本体32は、摺動板取付台座40の上面の矩形状の凹部内に収容されている。摺動板取付台座40の矩形状の凹部の深さは、摺動板本体32の厚さよりも浅く形成されている。
各摺動板本体32は、摺動板取付台座40の凹部によって周囲が拘束されることで第1〜第3中間ブーム2,3,4および先端ブーム5の上面に保持されている。これにより、各摺動板本体32の摺動面30sは、これに対向するブーム1〜4の内壁面に摺接することで第1〜第3中間ブーム2,3,4および先端ブーム5の伸縮を円滑に案内している。
【0019】
ここで、本実施形態の多段伸縮ブーム10は、4段目の第3中間ブーム4および2段目の第1中間ブーム2が、給脂構造を設けるブームになっており、給脂装置20は、これら第3中間ブーム4および第1中間ブーム2の左右の肩の位置の上面2箇所(多段伸縮ブーム10全体として計4箇所)に左右対称となる位置に設けられている。
各給脂装置20は、グリスニップル60と、グリスニップル60が装着されるニップル取付台座50とを有する。各給脂装置20のニップル取付台座50は、隣接する外側ブームに対しては、その内側に隠伏状態となっている。例えば、第1中間ブーム2上および第3中間ブーム4上に設けられた給脂装置20に装着したグリスニップル60は、基端ブーム1の平面方向および側面方向から見ることができない。
そのため、多段伸縮ブーム10を最縮小した状態で、多段伸縮ブーム10の外側から、各給脂装置20のグリスニップル60に給脂可能にするために、各グリスニップル60に対向する外側のブーム壁面全てに、グリス給脂用の貫通孔70A、B、Cが設けられている。なお、貫通孔70A、B、Cの孔径は、後で述べるグリス注入用グリスガンGを用いてグリスを圧入可能なほどに十分開けられている。
【0020】
次に、上記ニップル取付台座50の構造について説明する。
ニップル取付台座50は、
図3に示すように、段部が形成された直方体状のブロック部材であり、多段伸縮ブーム10の幅方向を長手方向として給脂部材として装着される。ニップル取付台座50の長手方向の一端(多段伸縮ブーム10の中央の側)にはニップル取付面59が段部により形成されている。ニップル取付面59は、取り付けられるグリスニップル60の高さの分だけ、ニップル取付面59の高さが低くなっている。
【0021】
ニップル取付面59には、ニップル取付孔51が自身の底面58に対して垂直に貫通形成され、ニップル取付孔51の内周面には、ニップル取付用の雌ねじが形成されている。グリスニップル60は、ニップル取付台座50の上面からニップル取付孔51に装着される。ニップル取付面59の面積は、グリスニップル60を取り付ける上で、工具が干渉しない十分な広さを有する。また、ニップル取付面59の面積は、グリス注入用グリスガンG(
図4参照)の先端をグリスニップル60のニップル先端60sに圧入したときにも、グリスガン先端がニップル取付台座50に干渉しないように設定されている。
【0022】
ニップル取付孔51の底面58には、グリスニップル60と、圧入したグリスを吐出させる第一および第二グリス吐出孔55、56とを連通させる横送り油路52が設けられる。第一グリス吐出孔55は、各給脂装置20のニップル取付台座50が取り付けられるブーム4,2自体の上面に貫通孔として形成されることにより給脂構造を構成している。第二グリス吐出孔56は、グリスニップル60が装着されている側とは反対側の、ニップル取付台座50の肉厚部54の下部に形成されており、第一および第二グリス吐出孔55、56の各々の中心軸CLは同軸を形成している。
【0023】
本実施形態の例では、ニップル取付台座50の底面58の横送り油路52は、ニップル取付台座50の中央に半円状の凹溝が長手方向(ブーム幅方向)全幅に渡って設けられている。本実施形態では、ブーム4,2の上面へのニップル取付台座50の溶接の際に、ニップル取付台座50の底面58に形成された半円状の凹溝の両端が溶着時に融けて両端の開口部が塞がれる。これにより、当該給脂構造20を設けるブームの上面と当該ニップル取付台座50の底面との間に横送り油路52が形成される。ニップル取付孔51の中心軸と第一および第二グリス吐出孔55、56の中心軸CLは、横送り油路52の中心軸と直交するように、自身の底面58に対して垂直に貫通形成される。なお、第二グリス吐出孔56の上部は、上方に向かうにつれ拡径するフレア部57となっている。
【0024】
第一および第二グリス吐出孔55、56は、グリスニップル60を取り付けたブーム4,2と当該ブーム4,2の1段内側のブーム5,3との間と、グリスニップル60を取り付けたブーム4,2と当該ブーム4,2の1段外側のブーム3,1との間に、同時にグリスを給脂可能に位置している。これにより、各給脂装置20のグリスニップル60に給脂することによって、各給脂装置20が取り付けられるブーム4,2の摺動板本体32の摺動面30s、及びそのブーム4,2よりも一段内側の摺動板本体32の摺動面30sにグリスが付着するように第一および第二グリス吐出孔55、56を介して給脂されるようになっている。
【0025】
ニップル取付台座50の、ブーム4,2上におけるブーム幅方向への取付位置は、横送り油路52が、上下2箇所の摺動板30がブーム伸縮時に通過する軌跡と交差する位置まで伸びる位置に設けられる。本実施形態では、第一および第二グリス吐出孔55、56の中心軸CLが、給脂装置20を設けるブームの肩の位置に当たる摺動板30の中心と、ブーム長尺方向に重なる様に配置される。
ニップル取付台座50のブーム4,2上における、ブーム長尺方向の取付位置は、ブーム最縮小時において、横断面視において、当該ブーム4,2の1段内側のブームの摺動板本体32よりもわずかに前方(ブーム先端側)に第一グリス吐出孔55および第二グリス吐出孔56が位置するように配置される。
【0026】
各給脂装置20のグリスニップル60に給脂されたグリスは、第一グリス吐出孔55の出口では、当該ブーム4,2の1段内側のブーム5,3の摺動板取付台座40と当該ブーム4,2のブーム内壁面との間の空間に溜まる。また、第二グリス吐出孔56の出口では、当該ブーム4,2の1段外側のブーム3,1のブーム内壁面と第二グリス吐出孔56の出口の上面との間の空間に溜まる。これにより、給脂されたグリスは、内外で隣接する二つの摺動板本体32の前方のブーム内壁面に一旦付着し、その付着したグリスが各摺動板本体32の摺動面30sに付着することで間接的に各摺動板本体32に給脂するようになっている。
【0027】
ここで、この給脂装置20における、上下の摺動板30に対する2ヶ所同時給脂時のグリス供給量の均一化構造について説明する。
この給脂装置20は、上下の摺動板30に対するグリス供給量を均一化すべく、グリスニップル60から給脂されるグリス供給量が、ニップル取付台座50の下部の第一グリス吐出孔55と上部の第二グリス吐出孔56とで同量が上下に給脂されるように、下記のグリス供給量の均一化構造を設けている。
【0028】
(第一条件:各吐出孔の直径)
第一に、上下のグリス吐出孔55、56は、第一グリス吐出孔55と第二グリス吐出孔56の開口径を同径としている。具体的には、下側開口となる第一グリス吐出孔55、つまり、ブーム2、4の貫通穴の直径は、第二グリス吐出孔56の直径と同径(直径φC)である。なお、半円を形成する横送り油路52の形状を、ニップル取付台座50の側面を貫通する「円形」の横穴から形成する場合であれば、その円形の横穴に直交する、第一グリス吐出孔の開口までの竪穴通路を含めた、ブーム2,4の貫通穴までの径を同径(直径φC)にする。
【0029】
(第二条件:各吐出孔の長さ)
第二に、上下のグリス吐出孔55、56の管路長さを同じ長さにしている。つまり、
図2において、ニップル取付台座50の第二グリス吐出孔56の長さAを、ニップル取付台座50を設けたブームの板厚Bと同じ長さにしている。但し、ニップル取付台座50のグリス吐出孔55、56の長さとは、フレア部57および横送り油路52の凹溝の高さを除いた円形竪穴部分の長さである。これにより、上下のグリス吐出孔55、56とも、流路面積及び流路長さが等しくなるので、上下の摺動板本体32に給脂されるグリスの吐出圧がほぼ等しくなる。
【0030】
(第三条件:複数の吐出孔の合計流路断面積)
第三に、この給脂装置20では、グリス吐出量を安定して上下の摺動板30に分配供給するために、ニップル取付台座50の第二グリス吐出孔56およびブーム2,4の貫通穴からなる第一グリス吐出孔55を、その流路断面積(φCの孔径)を可及的に小径としている。この構成により、小径の吐出流路からグリスが押し出されるので、上下のグリス吐出孔55、56を小径とすることによって生じる抵抗により吐出圧が高くなる。
なお、一般的に、多段伸縮ブーム用のグリスには、リチウム石鹸グリスが使用されることから、その流路断面積(φCの孔径)は、グリス中のゴミによる詰まり、古いグリスの硬化による詰まり防止とのバランスを考慮し、直径φ4mm〜φ8mm相当がよい。また、給脂されるグリスの塗布面積を広く設けたい場合は、上下のグリス吐出孔55、56を幅方向の複数箇所に離隔して設ければよい。
【0031】
(第四条件:上下の吐出孔の先の空間部の対向距離)
第四に、この給脂装置20では、上下のグリス吐出孔55、56から吐出されたグリスが、その先の空間部の影響の差異を受け難いように各部の配置を決定している。ここで、「その先の空間部」とは、本実施形態では、上下のグリス吐出孔55、56の出口から、各グリス吐出孔55、56の出口に対向する摺動板取付台座40の上面またはブーム内壁面までの対向距離をいう。上下のグリス吐出孔55、56の「その先の空間部」にて、上記対向距離の差が大きいと、対向距離の短い方がグリス吐出に際して抵抗となり、グリス吐出量が少なくなってしまうためである。本実施形態では、グリス吐出孔55、56の出口から摺動板取付台座40の上面までの対向距離とブーム内壁面までの対向距離を上下で等距離にしている。
【0032】
すなわち、
図2において、同図右下の給脂装置20の場合、当該給脂装置20の第一グリス吐出孔55(ブーム4の貫通穴)の出口となるブーム4の内壁面と、そのブーム4の内壁面に対向する、内側のブーム5の摺動板取付台座40の上面までの対向距離Dと、当該給脂装置20の第二グリス吐出孔56のフレア部57上面とその上部に対向するブーム3の内壁面との対向距離Eを等距離(D=E)にしている。上記対向距離D、対向距離Eともに、対向距離が狭い方が、吐出されたグリスが水平方向に放射状かつ均一に広がる。したがって、摺動板取付台座40の上面の高さは、吐出されるグリスの広がりに必要な対向距離(E)に基づいて決定される。
【0033】
なお、ニップル取付台座50の第二グリス吐出孔56の流路長さAの設定は、ブーム材の板厚寸法Bを変更することは容易でないことから、ニップル取付台座50側の第二グリス吐出孔56の流路長さAをブーム材の板厚寸法B(つまり、第一グリス吐出孔55の流路長さ)と等しくし、さらに、第二グリス吐出孔56の上部に広がるフレア部57を設けることで第二グリス吐出孔56の管路抵抗を低減して、上下のグリス吐出孔55、56からのグリス供給量の均一化構造の上記第一から第四の条件を満たすようにしている。
【0034】
次に、上記給脂装置20への給脂およびグリスの充填方法、および上記給脂装置20の作用・効果について説明する。
上記給脂装置20に給脂する際は、作業者は、
図4に示すように、まず、多段伸縮ブーム10を全縮小した状態のときに、多段伸縮ブーム10内部の各給脂装置20のグリスニップル60にグリスガンGを差し込み、ニップル取付台座50の横送り油路52を介して上下のグリス吐出孔55、56に給脂する。なお、給脂を行わないときには、最外部の基端ブーム1のグリス給脂用の貫通孔70Cに、エラストマ等の弾性体で形成された蓋62で埋栓をしておくとよい。
【0035】
グリスガンGから射出されたグリスは、各給脂装置20のグリスニップル60からニップル取付台座50の横送り油路52を通って上下のグリス吐出孔55、56に流入する。
下部の第一グリス吐出孔55に流入したグリスは、当該給脂装置20が装着されたブーム2,4のブーム内壁面と当該給脂装置20を取り付けたブーム2,4の1段内側のブーム3,5に設けられた摺動板30の前方上面との間の空間に溜まる(第一グリス溜まり部)。また、上部の第二グリス吐出孔56に流入したグリスは、当該給脂装置20を取り付けたブームの1段外側のブーム1,3のブーム内壁面と第二グリス吐出孔56の出口の上面との間の空間に溜まる(第二グリス溜まり部)。
【0036】
上下のグリス吐出孔55、56は、摺動板30がブーム伸縮時に通過する軌道上に向き合う位置に開口しているので、第一および第二グリス溜まり部に付着したグリスは、多段伸縮ブーム10を何度か伸縮させることで、各摺動板本体32の摺動面30sに付着させることができる。なお、第一および第二グリス溜まり部にグリスが過剰に供給された場合、グリスは、第一および第二グリス溜まり部から溢れてブーム内壁面側方に流れ出す。古いグリスも同様にブーム内壁面側方に流れ出す。そのため、供給したグリスによって第一および第二グリス溜まり部の空間に圧が籠ることはない。
このように、上記給脂装置20によれば、1つのグリスニップル60から給脂したグリスは、グリスニップル60が装着されるニップル取付孔51と、ニップル取付孔51に連通する横送り油路52から、複数の分岐油路である上下のグリス吐出孔55、56を介して、均一なグリス量を上下の摺動板30に対して供給することを可能にしている。
【0037】
そして、複数の分岐油路である上下のグリス吐出孔55、56は、給脂装置20を取り付けたブーム2,4と当該ブーム2,4の1段内側のブーム3,5との間と、給脂装置20を取り付けたブーム2,4と当該ブーム2,4の1段外側のブーム1,3との間に、同時にグリスを給脂するように横送り油路52に連通して設けられているので、給脂装置20に取り付けられた1箇所のグリスニップル60から内外の複数のブーム2段分の2箇所の摺動板20に同時に給脂をすることができる。したがって、この給脂装置20によれば、内外のブーム摺動板30同士が重なり合わなくとも、多段伸縮ブーム10のグリスニップル60の取り付け箇所を減らすことができ、また、作業用穴であるグリス給脂用の貫通孔70A、B、Cも減らすことができる。
【0038】
なお、本発明に係る給脂装置は、上記第一実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しなければ種々の変形が可能なことは勿論である。
例えば、上記第一実施形態では、ニップル取付台座50は、多段伸縮ブーム10の幅方向を長手方向とする装着例で説明したが、これに限定されず、ニップル取付台座50は、横送り油路52がニップル取付孔51に連通するとともに2箇所の摺動板30がブーム伸縮時に通過する位置に対して複数のブームの内外方向で対面する位置まで、または、2箇所の摺動板30がブーム伸縮時に通過する軌跡に沿って設けられていれば種々の装着姿勢を採用できる。つまり、横送り油路52の「横送り」の向きとは、多段伸縮ブーム10の幅方向と伸縮方向とを含む平面に沿った方向であればよく、例えば、横送り油路52の延在方向を多段伸縮ブーム10の伸縮方向に沿って設けることができる。
図5および
図6にこのような第二実施形態を示す。
【0039】
図5および
図6に示すように、この第二実施形態では、上記第一実施形態に対し、ニップル取付台座50が多段伸縮ブーム10の伸縮方向を自身長手方向として装着されている点が異なっている。すなわち、第二実施形態では、ニップル取付台座50は、ニップル取付台座50が多段伸縮ブーム10の伸縮方向を自身の長手方向とし、多段伸縮ブーム10の先端側にニップル取付面59が位置する姿勢で装着されている。また、
図5に示す多段伸縮ブームの横断面視において、ニップル取付孔51の中心軸の位置は、内外の摺動板30の幅方向中央に位置するように固定されている。これにより、この第二実施形態では、ニップル取付台座50の底面の横送り油路は、ブーム伸縮方向に沿って設けられる。
【0040】
このような構成であっても、横送り油路52が、2箇所の摺動板30がブーム伸縮時に通過する軌跡に沿って伸びており、上下のグリス吐出孔55、56は、摺動板30がブーム伸縮時に通過する軌道上に向き合う位置に開口しているので、
図6に示すように、グリスガンGから射出されたグリスは、各給脂装置20のグリスニップル60からニップル取付台座50の横送り油路52を通り、上下のグリス吐出孔55、56から、当該給脂装置20が装着されたブーム2,4のブーム内壁面と当該給脂装置20を取り付けたブーム2,4の1段内側のブーム3,5に設けられた摺動板30の前方上面との間の空間(第一グリス溜まり部)と、当該給脂装置20を取り付けたブームの1段外側のブーム1,3のブーム内壁面と第二グリス吐出孔56の出口の上面との間の空間(第二グリス溜まり部)とに溜まる。そのため、内外のブーム摺動板同士が重なり合わなくとも内外の摺動板30に給脂をすることができ、グリスニップル60の取り付け箇所を減らすことができ、また、作業用穴70A、B、Cも減らすことができる。