特許第6563711号(P6563711)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ デクセリアルズ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6563711-ヘッドアップディスプレイ装置 図000002
  • 特許6563711-ヘッドアップディスプレイ装置 図000003
  • 特許6563711-ヘッドアップディスプレイ装置 図000004
  • 特許6563711-ヘッドアップディスプレイ装置 図000005
  • 特許6563711-ヘッドアップディスプレイ装置 図000006
  • 特許6563711-ヘッドアップディスプレイ装置 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6563711
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/01 20060101AFI20190808BHJP
   B60K 35/00 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
   G02B27/01
   B60K35/00 A
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-126612(P2015-126612)
(22)【出願日】2015年6月24日
(65)【公開番号】特開2017-9855(P2017-9855A)
(43)【公開日】2017年1月12日
【審査請求日】2018年4月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100136858
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100147692
【弁理士】
【氏名又は名称】下地 健一
(72)【発明者】
【氏名】神道 勝寛
【審査官】 鈴木 俊光
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−174855(JP,A)
【文献】 特開2011−180541(JP,A)
【文献】 特開2010−237238(JP,A)
【文献】 特開2007−065011(JP,A)
【文献】 特開2016−122059(JP,A)
【文献】 特開2015−155948(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0279016(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01
B60K 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されるヘッドアップディスプレイ装置であって、
表示光を射出する表示素子と、
前記表示素子から射出された表示光を、車両に設けられた表示面に反射させ、虚像として結像させる結像光学系と、
を備え、
前記結像光学系は、前記表示光の光路に配置され、可視光を透過させ赤外線を吸収する赤外線吸収部材を含み、前記赤外線吸収部材は、熱線吸収ガラスを備えることを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項2】
少なくとも赤外線吸収部材に熱的に接触するハウジングと、該ハウジングに設けられた放熱部材とを備える請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項3】
赤外線吸収部材は、表示光の出射側の面に、赤外線を反射させ可視光を透過させる波長分離フィルタが形成されている請求項に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項4】
赤外線吸収部材は、結像光学系を通る表示光の主光線に対して傾けて配置されていることを特徴とする請求項1からの何れかに記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項5】
赤外線吸収部材は、表示光の入射側の面に、可視光に対する反射防止膜が形成されていることを特徴とする請求項1からの何れかに記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項6】
波長分離フィルタは、表示光と反対向きに入射する外光を、ハウジングに向けて反射し、前記ハウジングは前記外光の照射を受けて発生する熱を放熱部材に伝熱して放熱する請求項に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項7】
車両に搭載されるヘッドアップディスプレイ装置であって、
表示光を射出する表示素子と、
前記表示素子から射出された表示光を、車両に設けられた表示面に反射させ、虚像として結像させる結像光学系と、
を備え、
前記結像光学系は、表示光の光路に配置され、可視光を透過させ赤外線を吸収する赤外線吸収部材を含み、
少なくとも前記赤外線吸収部材に熱的に接触するハウジングと、該ハウジングに設けられた放熱部材とを更に備え、
前記赤外線吸収部材は、表示光の出射側の面に、赤外線を反射させ可視光を透過させる波長分離フィルタが形成され、
前記波長分離フィルタは、表示光と反対向きに入射する外光を、前記ハウジングに向けて反射し、前記ハウジングは前記外光の照射を受けて発生する熱を前記放熱部材に伝熱して放熱するヘッドアップディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両に使用されるヘッドアップディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッドアップディスプレイ装置(HUD)は、液晶表示パネル等の表示素子に表示した画像、文字等の情報を、光学系を介して、フロントウィンドウ又はその近傍に設けられた半透明の表示部(コンバイナ)に投影し、運転者の視界内に虚像として表示するものである。運転者の視界内に投影される虚像は、無限遠又は十分に遠方に結像されるので、運転者は運転をしながら眼の焦点を合わせ直す必要がなく、容易に情報を視認することができる。
【0003】
ヘッドアップディスプレイ装置は、一般的に、透過型の液晶表示パネルとこれを照射する光源により表示光を生成し、これを正の屈折力を有する光学系を用いて、フロントウィンドウの表示部に向けて射出する(例えば、特許文献1参照)。しかし、ヘッドアップディスプレイ装置の表示光は、下方からフロントウィンドウ又はその近傍の表示部に向けて照射されるため、太陽光(赤外光)がこの表示光と逆方向にヘッドアップディスプレイ装置内に侵入し、液晶表示パネル等の表示素子又は偏光板等の他の光学素子に入射して、表示素子又は光学素子を加熱し劣化させるという問題点がある。この問題を解決するため、種々の方法が考案されている(例えば、特許文献2から4参照)。
【0004】
例えば、特許文献2のヘッドアップディスプレイ装置では、表示光の光路内にコールドミラーを設けている。このコールドミラーは、正規の画像を表示するための表示光を反射させ、正規光とは逆方向に進む外光(太陽光)に含まれる赤外光を透過させている。これにより、赤外光が液晶パネルに到達することを抑制し、赤外光による液晶パネルの劣化を低減させている。更に、特許文献2では、コールドミラーを透過する赤外光により生じる熱は、コールドミラーを収容するケースから露出され、ミラーホルダーの外部に設けた放熱フィンによりヘッドアップディスプレイ装置の外部へ放出される。
【0005】
また、特許文献3のヘッドアップディスプレイ装置では、表示光の光路内に、反射型ワイヤーグリッド(WG)偏光板を貼合した凹面鏡を設けている。この凹面鏡は、表示光の偏光方向に偏光板の金属ワイヤの方向を合わせてあるので、表示光はほぼそのまま反射させる。一方、ヘッドアップディスプレイ装置に入射する非偏光の外光に対しては、金属ワイヤに垂直な偏光成分を表示光の光路外に透過させている。これにより、外光の一部を遮断し、外光が液晶パネルに到達することによる液晶パネルの熱劣化を低減させている。
【0006】
更に、特許文献4のヘッドアップディスプレイ装置では、表示光の光路内に、表示光を透過させ赤外光を反射させるホットミラーと偏光板とを配置している。これによって、外光(太陽光)に含まれる赤外光をホットミラーで反射させて、液晶パネルまで到達することを防いでいる。また、赤外線の一部がホットミラーに吸収された場合でも、ホットミラーと液晶表示パネルが離間して配置されているため、液晶表示パネルに熱が伝わりにくい構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−295105号公報
【特許文献2】特開2004−347633号公報
【特許文献3】特開2014−191321号公報
【特許文献4】特開2007−65011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、引用文献2のヘッドアップディスプレイ装置では、コールドミラーの分光反射特性(分光透過特性)の角度依存性により、運転者のアイポイントの移動によりヘッドアップディスプレイに表示される色が変化するという問題がある。図6は、シミュレーションにより得られたコールドミラーの分光透過率の入射角依存性を示すグラフである。コールドミラーへの入射角度に応じて透過する光の波長分布が変化する結果、運転者のアイポイントの位置が変わると、表示される虚像の色が変化する。
【0009】
また、引用文献3のヘッドアップディスプレイ装置では、凹面鏡の表面に偏光板を貼合するのが困難であること、有機偏光板では太陽光による劣化の懸念があること、及び、無機の偏光板を使用するためには大幅なコスト増が見込まれ現実的でないこと等の問題がある。また、引用文献3の構成では、液晶パネルに入射する太陽光が十分に低減されないという問題点もある。また、引用文献4のヘッドアップディスプレイ装置では、偏光板については引用文献3と同様の問題点を有する。更に、ホットミラーのみで太陽光をカットするためには、ホットミラーの膜層数をかなり多くする必要があり、成膜コストが増加する。
【0010】
本発明は、従来技術における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、外部から入射する太陽光による劣化を抑制したヘッドアップディスプレイ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するための手段としては以下の通りである。即ち、
<1>車両に搭載されるヘッドアップディスプレイ装置であって、表示光を射出する表示素子と、前記表示素子から射出された表示光を、車両に設けられた表示面に反射させ、虚像として結像させる結像光学系とを備え、前記結像光学系は、前記表示光の光路に配置され、可視光を透過させ赤外線を吸収する赤外線吸収部材を含み、前記赤外線吸収部材は、熱線吸収ガラスを備えることを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置である。
>少なくとも赤外線吸収部材に熱的に接触するハウジングと、該ハウジングに設けられた放熱部材とを備える<1>に記載のヘッドアップディスプレイ装置である。
>赤外線吸収部材は、表示光の出射側の面に、赤外線を反射させ可視光を透過させる波長分離フィルタが形成されている<>に記載のヘッドアップディスプレイ装置である。<>赤外線吸収部材は、結像光学系を通る表示光の主光線に対して傾けて配置されていることを特徴とする<1>から<>の何れかに記載のヘッドアップディスプレイ装置である。
>赤外線吸収部材は、表示光の入射側の面に、可視光に対する反射防止膜が形成されていることを特徴とする<1>から<>の何れかに記載のヘッドアップディスプレイ装置である。
>波長分離フィルタは、表示光と反対向きに入射する外光を、ハウジングに向けて反射し、前記ハウジングは前記外光の照射を受けて発生する熱を放熱部材に伝熱して放熱する<>に記載のヘッドアップディスプレイ装置である。
<7> 車両に搭載されるヘッドアップディスプレイ装置であって、表示光を射出する表示素子と、前記表示素子から射出された表示光を、車両に設けられた表示面に反射させ、虚像として結像させる結像光学系と、を備え、前記結像光学系は、表示光の光路に配置され、可視光を透過させ赤外線を吸収する赤外線吸収部材を含み、少なくとも前記赤外線吸収部材に熱的に接触するハウジングと、該ハウジングに設けられた放熱部材とを更に備え、
前記赤外線吸収部材は、表示光の出射側の面に、赤外線を反射させ可視光を透過させる波長分離フィルタが形成され、前記波長分離フィルタは、表示光と反対向きに入射する外光を、前記ハウジングに向けて反射し、前記ハウジングは前記外光の照射を受けて発生する熱を前記放熱部材に伝熱して放熱するヘッドアップディスプレイ装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、前記従来における諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、外部から入射する太陽光による劣化を抑制したヘッドアップディスプレイ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明のヘッドアップディスプレイ装置の概略構成を示す断面図である。
図2図2は、図1の赤外線吸収部材の断面図である。
図3図3は、図1の赤外線吸収部材の傾き角及び表示光の入射角を説明する図である。
図4図4は、赤外線吸収部材の分光透過率特性をシミュレーションにより算出した結果を示すグラフである。
図5図5は、ヘッドアップディスプレイ装置の表示光及び外部から侵入した太陽光の光路の例を示す図である。
図6図6は、コールドミラーの分光透過率を異なる入射角について示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0015】
図1は、本発明のヘッドアップディスプレイ装置の概略構成を示す断面図である。本発明のヘッドアップディスプレイ装置1は液晶表示部10、赤外線吸収部材11、凹面鏡12、これらを収納するためのハウジング13及び放熱部材14を備える。このヘッドアップディスプレイ装置1は、自動車のダッシュボード内など車両のフロントウィンドウ15の下側に配置され、液晶表示部10からの表示光をフロントウィンドウ15の表示面16に向けて投影するものである。
【0016】
液晶表示部10は、LED17、レンズ18、拡散板19及び液晶パネル20(表示素子)より構成される。LED17は、液晶パネル20を照明するための光源であり、例えば白色LEDを使用することができる。LED17から射出された照明光は、レンズ18により光束の径を拡大し、拡散板19により拡散されより均一な照明光となって液晶パネル20を照射する。液晶パネル20は、透過型の液晶パネルであり、図示しない信号線を介して送信されて来る画像信号に基づいて画像を形成する。照明光により照射されることにより、液晶パネル20に形成された画像は、表示光として射出される。
【0017】
赤外線吸収部材11は、図2に示すように、可視光を透過させ赤外線を吸収する熱線吸収ガラス21を備える。熱線吸収ガラス21は、例えば、HOYA社製のHA50を用いることができる。熱線吸収ガラス21の表示光の出射側の面(即ち、凹面鏡12側の面)には、ホットミラー22(波長分離フィルタ)がコーティングされている。ホットミラー22は、可視光を透過し赤外線を反射する誘電体多層膜である。また、熱線吸収ガラス21の表示光の入射側の面(即ち、液晶パネル20側の面)には、可視光に対する反射防止膜23が形成されている。ホットミラー22、反射防止膜23は誘電体材料(例えば、高屈折率材料としてTiO、NbO、Ta、ZrOなど、低屈折率材料としてSiOなど)からなり、スパッタリング、真空蒸着法などにより形成される。
【0018】
図3は、図1の赤外線吸収部材の傾き角及び表示光の入射角を説明する図である。本実施形態では、赤外線吸収部材11は、レンズ18及び凹面鏡12の中心を通る光源からの主光線に対して約20度傾いている。
【0019】
図4は、赤外線吸収部材11の分光透過率特性をシミュレーションにより算出した結果を示すグラフである。このシミュレーションでは、熱線吸収ガラス21の厚みを1.5mm、ホットミラー22の誘電体層の層数を31層とし、図3に示すように、主光線に対して15°、0°、−15°の各角度で光線が入射した場合の分光透過率を示している。図4から、入射角の変動に対して可視域光の分光透過率の変動が少なく、赤外線が良好に遮断される。
【0020】
凹面鏡12は、正の屈折力を有し、液晶表示部10から射出され赤外線吸収部材11を透過した表示光を、車両のフロントウィンドウ15に設けられた表示面16に向けて反射する。表示面16は、フロントウィンドウ15の内表面に設けられた画像表示領域(いわゆるコンバイナ)であり、例えば、フロントウィンドウ15上に施した増反射コーティングが使用される。ここで、結像光学系は、液晶表示部10から表示面16へ至る光学系であり、赤外線吸収部材11及び凹面鏡12を含んで構成される。
【0021】
ハウジング13は、熱伝導性の良好な材料(例えば金属)を用いた部材であり、液晶表示部10、赤外線吸収部材11及び凹面鏡12と熱的に接触しこれらを固定し保持する。特に、液晶表示部10は、ハウジング13及び赤外線吸収部材11によって、周囲を囲まれている。また、ハウジング13の液晶表示部10との結合部分には、放熱部材14が設けられている。放熱部材14は、多数の平板形状の放熱フィンを有しており、液晶表示部10のLED17の発生する熱を外部に放出する。また、放熱部材14は、ハウジング13により伝導される赤外線吸収部材11に発生する熱、及び、外部から侵入した太陽光の照射によりハウジング13で発生した熱を放熱することができる。
【0022】
以上のような構成によって、本実施の形態に係るヘッドアップディスプレイ装置1は、液晶パネル20からの表示光を運転者のアイポイントに導光し、液晶パネル20の表示画像を運転者の視野内に拡大された虚像として投影することができる。
【0023】
図5は、ヘッドアップディスプレイ装置1の表示光及び外部から侵入した外光(太陽光)の光路を示す図である。この図において、3本の実線で示される液晶パネル20から射出した表示光Ldは、赤外線吸収部材11を透過し、凹面鏡12で反射され、ハウジング13の開口部24を通り、フロントウィンドウ15上の表示面16に入射する。表示面16で表示光Ldは一部が反射され運転者のアイポイント25に導光される(図5では、反射される表示光のみを示す)。これによって、アイポイント25において観察可能なように、液晶パネル20の表示画像の虚像を結像する。虚像の結像位置は、凹面鏡12の屈折力を適切な値に決定することにより、数m先から無限遠にすることができる。
【0024】
一方、運転者はフロントウィンドウ15を介して、常時車外の周辺環境を目視している。車外からの光は、フロントウィンドウ15の表示面16で一部反射され残りが透過して運転者の視野内に入る。したがって、運転者の視野内には車外の周辺環境とヘッドアップディスプレイ装置1の表示画像とが、重畳して表示される。これによって、運転者は視線の移動及び眼のピント合わせ等の負担なく、運転をしながら表示面16に表示される情報を容易に確認することができる。
【0025】
ここで、表示光Ldの光路に配置した赤外線吸収部材11は、前述のように傾けて配置されている。ホットミラー22の分光透過率の角度依存性が大きい場合は、表示光の方向により色ムラが発生し、運転者がアイポイントを移動させると表示画像の色が変化することが懸念される。しかし、赤外線吸収部材11を20°程度傾斜して用いる場合、本発明者のシミュレーションによれば図4に示したように赤外線吸収部材11への表示光の入射角度を主光線の方向から−15°、0°+15°と変化させても、可視光波長域における分光透過率には大きな変化が生じない。従って、運転者のアイポイントが変動しても色の変化が少ない。
【0026】
また、赤外線吸収部材11の表示光の入射側の面には、反射防止膜23が形成されているので、可視光の表示光Ldの赤外線吸収部材11による反射を抑制することができる。更に、赤外線吸収部材11が表示光の主光線に対して傾けて配置されているので、仮に、反射防止膜23で一部の表示光Ldが反射された場合でも、反射光は液晶パネル20に戻らずノイズ光を発生し難い。
【0027】
一方、図5において、外光Lsは、フロントウィンドウ15の外部から、表示光Ldと反対向きに開口部24を通り、ヘッドアップディスプレイ装置1内に入射する太陽光を破線で示している。外光Lsは、種々の向きからヘッドアップディスプレイ装置1に入射してくる可能性があるが、図5ではその一例を示している。
【0028】
ヘッドアップディスプレイ装置1に入射した外光Lsは、凹面鏡12で反射されると、赤外線吸収部材11の表面に形成されたホットミラー22に入射する。このホットミラー22により、外光Lsに含まれる赤外光の多くが反射される。赤外線吸収部材11は表示光の主光線に対して傾けて配置されているので、反射された赤外光は入射した経路を元に戻らず、ハウジング13を照射して吸収されて熱に変換される。この熱は、金属製のハウジング13を伝熱し放熱部材14から排熱される。これによって、液晶パネル20への赤外光の到達を抑制することができる。更に、反射された赤外線が、凹面ミラー12及び表示部16で反射され運転者のアイポイントへ向かい、運転者の眼に悪影響を与えることを避けることができる。
【0029】
更に、ホットミラー22で反射されなかった赤外線は、熱線吸収ガラス21内に入射しこの熱線吸収ガラス21により吸収され、熱に変換される。熱線吸収ガラス21は金属製のハウジング13に固定されており、変換された熱は放熱部材14へ移動しヘッドアップディスプレイ装置1の外部に排熱される。
【0030】
以上説明したように、本実施の形態によれば、熱線吸収ガラス21を備えた赤外線吸収部材11を、結像光学系に配置したので、外光Lsに含まる赤外線を吸収することができる。したがって、液晶パネル20が加熱されることによる劣化を抑制することができる。また、赤外線吸収部材11は、表示光Ldの出射側の面にホットミラー22を有しているので、外光Lsに含まれる赤外光を、熱線吸収ガラス21に入射する前に反射させることができる。これにより、液晶パネル20に到達する赤外線は更に少なくなり、液晶パネル20の劣化を更に抑制することができる。
【0031】
また、ホットミラー22は、入射角の変化による分光透過率の変化が少なく、赤外線吸収部材11を、20度程度傾けて配置したので、ノイズ光の発生を抑制しつつ太陽光の入射により発生する熱を効率よく排熱することができ、且つ、運転者のアイポイントの移動による色変化も生じないという効果を有する。さらに、ホットミラー22と熱線吸収ガラス21とを組み合わせることにより、ホットミラー22の誘電体多層膜の層数を31層程度に抑えることができたので、コストを抑え且つ高性能を実現したヘッドアップディスプレイ装置1を提供することができる。
【0032】
更に、金属製のハウジング13と、放熱部材14を設けたので、熱線吸収ガラス21に発生する熱及びホットミラー22で反射された外光により生じる熱を放熱することができる。
【0033】
なお、本発明は、上記実施の形態にのみ限定されるものではなく、幾多の変形または変更が可能である。たとえば、表示素子は、透過型液晶パネルに限られない。例えば、反射型液晶パネル、有機EL素子等を使用することができる。自発光の有機EL素子を使用する場合は、照明用の光源は必要としない。結像光学系は、凹面鏡と赤外線吸収部材より構成されるものに限られない。表示部に表示光を投影して、運転者のアイポイントに虚像を表示するものであれば、種々の光学系の構成が可能である。また、凹面鏡は、球面表面を反射面とする凹面鏡に限られず複雑な形状をとり得る。特に、フロントウィンドウに表示面を形成する場合は、フロントウィンドウの形状に合わせて運転者の視界に歪みの無い画像が投影されるように、凹面鏡の形状を調整する。赤外線吸収部材は、表示光の主光線に対して20度傾けるとしたが、これに限られない。赤外線吸収部材の傾きは、ヘッドアップディスプレイ装置のハウジングの大きさ、結像光学系の光学素子の配置等を考慮し、ホットミラーで反射された太陽光の熱が効率良く排熱される角度に定めればよい。更に、表示面は、フロントガラス上ではなく、フロントガラスに近接して配置されたハーフミラーより成るコンバイナであっても良い。また、ヘッドアップディスプレイ装置は、下方からフロントウィンドウに向けて表示光を照射するものに限られず、例えば、車両内のフロントウィンドウの上部に配置して、上部から表示面を照射する形態も可能である。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明のヘッドアップディスプレイ装置は、外部から入射する太陽光による劣化を抑制するヘッドアップディスプレイ装置として、好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0035】
1 ヘッドアップディスプレイ装置
10 液晶表示部
11 赤外線吸収部材
12 凹面鏡
13 ハウジング
14 放熱部材
15 フロントウィンドウ
16 表示面
17 LED
18 レンズ
19 拡散板
20 液晶パネル(表示素子)
21 熱線吸収ガラス
22 ホットミラー(波長分離フィルタ)
23 反射防止膜
24 開口
25 アイポイント
図1
図2
図3
図4
図5
図6