(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1位置と前記第2位置との間に前記突風防止管路を設けた場合に、前記線路階から前記線路階と異なる階へ貫通する前記通路の開口部うち最も狭い部分が、前記突風防止管路に占められるように、前記第1位置と前記第2位置とが選択されることを特徴とする請求項1記載の突風防止管路の設計方法。
前記突風防止管路は、通路方向に垂直な断面積が何れの位置でも略同一になる管路として設計されることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の突風防止管路の設計方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明らは、突風が生じる通路を管状に覆って管路を設けることで、通路に生じる突風を低減することのできる突風防止管路について検討している。突風防止管路は、管路長によって、突風を低減する効果が変化することが分かっている。
階段またはエスカレータなどの通路では、突風の大きさに許容値を定めることができる。通路に管路を設置して突風を低減する場合、どのような長さの管路を設置すれば、突風が許容値を下回るか推定した上で、管路の設計が行えると好ましい。これにより、必要最低限の管路の機能を確保した上で、その他、様々な要求を満たした最適な管路を設計することができる。
従来、通路上に何れの長さの管路を設けると突風がどのくらい低減できるかを調べるには、数値解析により大規模な演算を行うか、或いは、駅舎の模型を作成して模擬実験により計測を行って推定するしかなかった。
【0005】
本発明は、低いコストで、列車通過時の管路内の風速を推測した上で、管路の設計を行うことのできる突風防止管路の設計方法
及び設計支援装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の突風防止管路の設計方法は、上記目的を達成するために、
全覆上屋構造の駅の線路階の空間と前記線路階と異なる階の空間とを結ぶ人の通路を管状に覆う突風防止管路の設計方法であって、
前記突風防止管路を設置せずに、前記通路に沿った複数の計測点で
気圧測定器を用いて列車が駅を通過する際の気圧変動を計測するステップと、
前記複数の計測点のうち、任意の第1位置および第2位置で計測された気圧変動に基づいて、前記第1位置と前記第2位置との間に前記突風防止管路が設けられたと仮定して、列車の通過に伴う前記突風防止管路内の風速を推測するステップと、
推測された風速に基づいて列車の通過に伴う前記突風防止管路内の最大風速を
情報処理装置を用いて推測するステップと、
推測された最大風速に基づいて前記突風防止管路の長さを決定するステップとを含み、
前記風速を推測するステップでは、前記第1位置および前記第2位置の気圧差に
より前記突風防止管路内の空気が一体的に加速されて流れるという運動モデルに従って前記突風防止管路内の風速の時間変化を
情報処理装置を用いて算出することを特徴としている。
【0007】
本発明者らは、管路の入口と出口との気圧差によって管路内の空気が一体的に加速されて流れるという運動モデルに従って、突風防止管路の風速の時間変化が推測できることを実験により確認した。さらに、本発明者らは、列車の通過により突風防止管路の入口および出口に生じる気圧差の時間積分値が、列車が通過する際に突風防止管路を設置していない通路の同じ位置に生じる気圧差の時間積分値と、概ね等しくなることを見出した。そこで、上記の設計方法では、第1位置と第2位置とで計測された気圧変動に基づき、上記の運動モデルを用いて、突風防止管路内の風速の時間変化を算出し、これらから列車の通過に伴う突風防止管路内の最大風速を推測する。これにより、突風防止管路内の最大風速を、突風防止管路を設置せずに、比較的に正確に推測することができる。よって、突風の低減効果を正確に予測した上で突風防止管路を設計することができる。
【0008】
好ましくは、前記第1位置と前記第2位置との間に前記突風防止管路を設けた場合に、前記線路階から前記線路階と異なる階へ貫通する前記通路の開口部うち最も狭い部分が、前記突風防止管路に占められるように、前記第1位置と前記第2位置とが選択されるとよい。
上記の風速の時間変化を算出する運動モデルでは、線路階から他のフロアに貫通する通路の開口部のうち最も狭い部分が突風防止管路に占められるときに、実際に発生する突風と算出される風速とがより合致する。よって、この設計方法のように、第1位置と第2位置とが選択されることで、突風防止管路内の最大風速の予測をより正確に行うことができる。
【0009】
さらに好ましくは、前記通路のうち前記線路階から最も遠い位置が前記第1位置として選択されるとよい。
また好ましくは、前記突風防止管路は、通路方向に垂直な断面積が何れの位置でも略同一になる管路として設計されるとよい。
上記の風速の時間変化を算出する運動モデルでは、突風防止管路の通路方向に垂直な断面積が何れの位置でもほほ同一であるである場合に、実際に発生する突風と算出される風速とがより合致する。よって、この設計方法に従えば、突風防止管路の最大風速の予測をより正確に行うことができる。
【0010】
また、本発明の設計支援装置は、上記目的を達成するため、
全覆上屋構造の駅の線路階の空間と前記線路階と異なる階の空間とを結ぶ人の通路を管状に覆う突風防止管路の設計支援装置であって、
前記突風防止管路を設置せずに、前記通路に沿った複数の計測点で列車が駅を通過する際に計測された気圧変動のデータを入力する気圧変動データ入力手段と、
入力された前記複数の計測点の気圧変動のデータのうち、任意の第1位置の気圧変動のデータおよび第2位置の気圧変動のデータに基づき、前記第1位置と前記第2位置との間に前記突風防止管路が設けられたと仮定して、列車の通過に伴う前記突風防止管路内の風速を推測する風速推測手段と、
推測された風速に基づいて列車の通過に伴う前記突風防止管路内の最大風速を推測する最大風速推測手段と、
推測された最大風速を少なくとも含んだ情報を出力する風速データ出力手段とを備え、
前記風速推測手段は、前記第1位置および前記第2位置の気圧差によって、前記突風防止管路内の空気が一体的に加速されて流れるという運動モデルに従って、前記突風防止管路内の風速の時間変化を算出することを特徴としている。
【0011】
この構成によれば、第1位置と第2位置との間に突風防止管路を設けた場合の最大風速を、突風防止管路を設けずに比較的に正確に推測することができる。よって、突風の低減効果を正確に予測した上で突風防止管路を設計することができる。
【0012】
また、本発明の突風防止管路は、全覆上屋構造の駅の線路階の空間と前記線路階と異なる階の空間とを結ぶ人の通路を管状に覆ったことを特徴としている。
このような構成により、列車通過時に人の通路に生じる突風を低減することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の設計方法および設計支援装置によれば、低いコストで列車通過時の管路内の風速を推測した上で突風防止管路の設計を行うことができる。また、これにより、設計コストの低い突風防止管路を実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
(第1実施の形態)
図1は、全覆上屋構造の駅の一例を説明する図である。
図2は、突風防止管路を模式的に示した斜視図である。
図3は、長さの異なる突風防止管路の一例を示すもので、(a)は通路の半分に設置された突風防止管路の模式図、(b)は通路の全部に設置された突風防止管路の模式図である。
【0016】
本発明の実施の形態の突風防止管路の設計方法は、全覆上屋構造の駅100において、線路階110の空間と線路階110と異なる階(以下、他のフロア120と記す)の空間とを結ぶ人の通路130を管状に覆う突風防止管路10(
図2を参照)の設計を対象としている。
全覆上屋構造の駅100とは、
図1に示すように、線路階110が、屋根113と壁114とで覆われた駅である。屋根113は、線路112の上方も覆っている。
図1において、屋根113と壁114とは二点鎖線により示し、駅100の内部は実線により示している。屋根113と壁114とは、線路階110のほぼ全域を覆っているが、一部に開口があってもよい。また、列車が進入および進出する線路階110の一端および他端は開口している。他のフロア120は、例えば、線路階110の上階であるコンコースであるが、線路階110の下階に設けられたフロアであってもよい。通路130は、例えばエスカレータまたは階段であってよい。
【0017】
突風防止管路10は、
図2に示すように、通路130を管状に覆う管路である。突風防止管路10は、通路の方向に垂直な断面積がどの位置でもほぼ一定になるように設けられる。突風防止管路10は、
図3に示すように、線路階110から他のフロア120へ貫通する通路130の開口部分のうち最も狭くなる部位135を、管路が占めるように設けられる。
突風防止管路10は、
図3(a)に示すように、通路130の一部のみを覆っていてもよいし、
図3(b)に示すように、通路130の始端から終端まで全部を覆っていてもよい。
図3(a)のように、管路長が短い突風防止管路10では、管路の材料または設置コストが少なくて済む一方、突風を低減する効果が低くなる。一方、
図3(b)のように、管路長が長い突風防止管路10では、管路の材料または設置コストが多くなる一方、風速を低減する効果が高くなる。
【0018】
次に、本発明の実施の形態の突風防止管路10の設計方法について説明する。
本発明の実施の形態の突風防止管路10の設計方法は、列車が通過する際の突風防止管路10内の最大風速を推測した上で、突風防止管路10の長さ又は長さと位置とを設計するものである。この設計方法は、気圧計測ステップと、風速推測ステップと、最大風速推測ステップと、管路長決定ステップとを含んでいる。続いて、各ステップについて詳細に説明する。
【0019】
<気圧計測ステップ>
図4は、気圧計測ステップにおいて気圧変動を測定する位置の一例を示す図である。
気圧計測ステップでは、突風防止管路10が設置されていない状態で、通路130に沿った複数の計測点P−A〜P−Hで、列車の通過に伴う気圧変動を測定する。これらの計測は、各計測点P−A〜P−Hに気圧測定器を配置し、列車を想定される速度で駅に通過させ、列車の通過前後の所定期間を通して遂行される。気圧変動の計測位置は、例えば、
図4に示すように、通路130の始端と終端との間に所定長さ(例えば2m)ごとに設定してもよいし、その他、通路130に沿って任意の位置に設定してもよい。
図5は、列車の通過に伴う駅構内の気圧変動の一例を示すグラフである。
図5のグラフの縦軸は、1気圧をゼロに規格化した気圧値を示している。
【0020】
図5の破線および細い実線のグラフ線に示すように、列車が駅を通過すると、駅構内に列車の通過に応じた気圧変動が生じる。例えば、線路階110(例えば計測点P−A)では列車が通路130に近接した際に気圧が高く変化し、列車が通路130から離れる際に気圧が低く変化する。他のフロア120(例えば計測点P−H)でも、同様の気圧変動が生じる。通路130に沿った他の計測点P−B〜P−Gにおいても同様の気圧変動が生じる。しかしながら、
図5の破線と細い実線のグラフ線に示すように、気圧が高くなるタイミングと低くなるタイミングとは、位置毎に異なる。
気圧計測ステップにより、通路130に沿った複数の計測点の気圧変動の計測データが取得される。
【0021】
<風速推測ステップ>
気圧変動の計測データが取得されたら、次に、設計者は、風速を推測する対象の突風防止管路10の入口および出口の位置として、複数の計測点P−A〜P−Hの中から何れかを選択する。選択された入口の位置を第1位置と呼び、選択された出口の位置を第2位置と呼ぶ。そして、第1位置から第2位置にかけて突風防止管路10を設けたと仮定して、列車の通過に伴う突風防止管路10内の風速の時間変化の推測値を、次式(1)により計算する。
【0022】
【数1】
ここで、p
1(τ)は、第1位置の気圧変動[Pa:パスカル]
p
2(τ)は、第2位置の気圧変動[Pa:パスカル]
Lは、突風防止管路の長さ[m]
ρは、空気密度[N・sec
2/m
4]
u(t)は、時刻tにおける風速[m/sec]
tは、列車進入前の時点をゼロとした時間[sec]である。
【0023】
ここで、式(1)により風速が推測される理由を説明する。
図6は、列車の通過に伴う突風防止管路内の風速の一例を説明するグラフである。
先に、
図5を参照して説明したように、列車の通過により生じる気圧変動は、気圧が高くなるタイミングと低くなるタイミングとが位置毎に異なる。これにより、離れた2つの位置には列車の通過に基づく気圧差が生じる。例えば、
図5の太実線のグラフ線に示すように、列車の通過に伴って線路階110と他のフロア120との間には比較的に大きく変化する気圧差が生じる。
【0024】
突風防止管路10では、入口および出口の気圧差によって、管路の内部に空気の流れが生じる。この空気の流れは、入口および出口に作用する外力によって、管路の内部の空気が一体的に加速されて移動するという運動モデルによって表わすことができる。
この運動モデルに従えば、突風防止管路10の内部の空気は、質量“L×A×ρ”の一体的な物体として表わすことができる。また、入口および出口に作用する外力は、入口と出口との気圧差に管路の断面積を乗算した値により表わすことができる。よって、外力と物体の加速度との関係を表す運動方程式から、次式(2)が得られる。
【0025】
【数2】
ここで、p
iは、突風防止管路10の入口の気圧
p
oは、突風防止管路10の出口の気圧
Aは、突風防止管路10の断面積
aは、空気の加速度である。
他の記号は、既出の定義の通りである。
この運動方程式を、加速度aでまとめて、加速度aを時間積分すると、次式(3)が導出される。
【0026】
【数3】
ここで、p
i(τ)は、突風防止管路10の入口の気圧変動
p
o(τ)は、突風防止管路10の出口の気圧変動である。
他の記号は、既出の定義の通りである。
式(3)によれば、突風防止管路10の入口と出口の気圧変動から、突風防止管路10の風速の時間変化を算出することができる。このように算出された風速は、実際の風速を比較的に正確に表わしていることが、実験により確認されている。
【0027】
さらに、今回、新たな知見として、突風防止管路10の入口と出口との気圧変動差の時間積分値が、突風防止管路10を設置していない状態で計測された通路130上の同じ位置の気圧変動差の時間積分値と、概ね等しくなることが見出された。
この新たな知見を式(3)に当てはめると、p
i(τ)をp
1(τ)に置き換えられ、p
o(τ)をp
2(τ)に置き換えられるので、上述した計算式(1)を導出することができる。計算式(1)によれば、突風防止管路10を設置しなくても、通路130の複数の位置の気圧変動の計測データから、突風防止管路10を設置した場合の風速を比較的に正確に求めることができる。
【0028】
風速推測ステップでは、設計者は、突風防止管路10の入口と出口との位置として、気圧変動を計測した複数の計測点の中から、幾つかの組み合わせで何れかの位置を選択することができる。例えば、設計者は、突風防止管路10の出口として
図4の計測点P−Hを選択し、入口として
図4の計測点P−A、P−B、P−C、P−D、P−Eを選択することができる。このように、複数の組み合わせで入口と出口との位置を選択した場合、設計者は、組み合せごとに、計算式(1)の風速の計算をおこなう。これにより、各組み合わせに対応した突風防止管路10の風速の時間変化を推測することができる。
【0029】
なお、入口と出口との位置を選択する場合には、線路階110から他のフロア120へ貫通する通路130の開口部のうち、開口部が最も狭くなる部位135(
図3を参照)をまたぐか含むように、入口と出口との位置が選択されるとよい。風速を推測するための運動モデルは、線路階110から他のフロア120へ貫通する通路130の開口部が、管路に占められるように構成された突風防止管路10の場合に、実際の風速と推測した風速とがより合致する。このため、上記のような入口および出口の位置の選択により、突風防止管路10の風速の時間変化をより正確に推測することができる。
【0030】
<最大風速推測ステップ>
最大風速推測ステップでは、前ステップで算出された風速の時間変化のデータから、風速の最大値を算出し、これを突風防止管路に生じる最大風速と推測する。複数の風速の時間変化のデータがある場合、各々について最大風速を推測する。
図7は、風速の推測精度を説明するもので、(a)は突風防止管路を通路の半分に設けた場合のグラフ、(b)は突風防止管路を通路の全部に設けた場合のグラフである。
図7(a)および
図7(b)は、横軸に最大風速の計算値を、縦軸に最大風速の実測値を示している。
図7(a)および
図7(b)に示すように、突風防止管路10の長さに違いがあっても、また、駅100を通過する列車の違いがあっても、突風防止管路10内の最大風速の計算値は、実測値の誤差20%に収まることを確認することができる。
【0031】
<管路長決定ステップ>
管路長決定ステップでは、設計者は、前ステップで推測された最大風速を参考にして、通路130に設定された風速の許容値を下回ることのできる突風防止管路10の管路長又は管路長と位置とを確認する。設計者は、これらの情報に加えて、コストなどその他の要因を総合的に考慮して、突風防止管路10の長さ、または、長さと配置とを決定する。例えば、設計者は、突風の許容値(例えば10m/s)を下回ることのできる最も短い管路長に決定してもよいし、今後の列車の高速化に対応できるように、余裕を持たせた管路長に決定してもよい。
【0032】
以上のように、本実施の形態の突風防止管路10の設計方法によれば、通路130に沿った複数の位置で、列車が通過したときの気圧変動を計測し、突風防止管路を設置した場合の管路内の風速を容易に推定できる。よって、低コストに、突風の低減効果を確認しながら突風防止管路を設計することができる。
【0033】
(第2実施の形態)
図8は、本発明の実施の形態の設計支援装置の機能構成を示すブロック図である。
図9は、風速推測手段の処理の詳細を説明するフローチャートである。
第2実施の形態の設計支援装置200は、第1実施の形態で設計者が行った計算等を自動的に行って、結果を設計者に出力するものである。
設計支援装置200は、例えばCPU(中央演算処理装置)と、作業用のデータを記憶するメモリと、プログラムを格納した記憶装置等を備えた情報処理装置(コンピュータ)である。設計支援装置200は、
図8に示すように、気圧変動データ入力手段201と、風速推測手段202と、最大風速推測手段203と、風速データ出力手段204とを有する。これらの各ブロックは、CPUがプログラムを実行することで機能するソフトウェア、或いは、ソフトウェアとハードウェアとの協働により実現することができる。
【0034】
気圧変動データ入力手段201は、第1実施の形態の気圧計測ステップで得られた複数の位置の気圧変動データを、外部から入力する。気圧変動データ入力手段201は、気圧測定器から気圧変動データを、通信回線または記憶媒体を介して入力すればよい。各気圧変動データは、気圧が測定された計測点P−A〜P−Hの情報と対応づけられてメモリに記憶される。
風速推測手段202と最大風速推測手段203は、
図9の風速推測処理を実行し、突風防止管路10内の風速の時間変化と最大風速とを推測する。
【0035】
図9に示すように、風速推測手段202は、先ず、突風防止管路10の入口および出口となる位置として、気圧が測定された計測点P−A〜P−Hの中から任意の2つの位置を選択する(ステップS1)。ここで、風速推測手段202は、線路階110から他のフロア120へ貫通する通路130の開口部のうち、開口部が最も狭くなる部位135(
図3を参照)と、複数の計測点P−A〜P−Hとの関係が分かるデータを保持しているとよい。そして、風速推測手段202は、任意の2つの位置を、部位135をまたぐか含むように選択するとよい。
【0036】
次いで、風速推測手段202は、選択された2つの計測点の気圧変動のデータに基づいて、風速の時間変化u(t)を算出する(ステップS2)。また、この算出結果から、最大風速推測手段203が風速の時間変化u(t)の最大値を算出して、これを突風防止管路に生じる最大風速として推測する(ステップS3)。これらの計算方法は、第1実施の形態に示した通りである。風速推測手段202および最大風速推測手段203は、これらの計算結果をステップS1で選択した2つの位置の選択パターンの情報とともにメモリに記憶する(ステップS4)。
次に、風速推測手段202は、入口および出口の位置の選択パターンが、ステップS1で全て選択されたか判別する(ステップS5)。そして、未だ選択されていない選択パターンがあれば、風速推測手段202は、処理をステップS1に戻す。一方、選択パターンが終了であれば、風速推測処理を終了する。
【0037】
風速推測手段202と最大風速推測手段203は、
図9の処理により、複数の計測点P−A〜P−Hの中から選択可能な2つの位置の選択パターンにそれぞれ対応する複数の風速の時間変化と複数の最大風速のデータをメモリに記憶することができる。
風速データ出力手段204は、風速推測手段202により記憶された風速の時間変化と最大風速のデータを、2つの位置の選択パターンの情報と対応させて表示または印字等により出力する。風速の時間変化はグラフ表示にして出力することが可能であり、最大風速はリスト表示により出力することができる。風速データ出力手段204は、これらの情報をデータとして出力する構成としてもよい。
【0038】
以上のように、この実施の形態によれば、設計者は、通路130に沿った複数の計測点P−A〜P−Hで、列車が通過する際の気圧変動を計測し、計測された気圧変動のデータを設計支援装置200に入力する。これにより、設計支援装置200は、入口および出口の位置の異なる複数種類の突風防止管路について、列車が通過する際の管路内の風速の時間変化および最大風速の情報を出力する。よって、突風防止管路10の設計者は、この出力を参考にして、低い設計コストで、突風の低減効果を確認し、その上で、適切な突風防止管路10の設計を行うことができる。
【0039】
以上、本発明の各実施の形態について示したが、本発明は実施の形態で説明した細部に限られず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、上記実施の形態では、管路の通路方向に垂直な断面積が何れの位置でも略同一という条件を用いて、管路内の空気の加速度および風速を予測した計算例を説明した。このような条件を採用することで風速の予測をより正確に行うことができる。しかしながら、本発明は、このような条件に制限されることはない。例えば、通路の途中で断面積が変化する形態の管路であっても、管路内の空気が管路入口の圧力と管路出口の圧力との差によって一体的に加速されるという運動モデルに従って加速度変化の計算式を導出し、これを各計算式に組み込むことで、その他は同様の方法で管路内の風速変化と最大風速の推測を行うことができる。