特許第6563723号(P6563723)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6563723
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】長尺部材の位置計測方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/00 20060101AFI20190808BHJP
   E04G 21/12 20060101ALN20190808BHJP
【FI】
   G01B11/00 A
   !E04G21/12
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-147468(P2015-147468)
(22)【出願日】2015年7月27日
(65)【公開番号】特開2017-26539(P2017-26539A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2018年1月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000174943
【氏名又は名称】三井住友建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096611
【弁理士】
【氏名又は名称】宮川 清
(72)【発明者】
【氏名】中村 收志
(72)【発明者】
【氏名】古賀 友一郎
(72)【発明者】
【氏名】掛橋 孝夫
(72)【発明者】
【氏名】細野 宏巳
(72)【発明者】
【氏名】淺井 宏隆
(72)【発明者】
【氏名】大野 寛太
【審査官】 九鬼 一慶
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−147522(JP,A)
【文献】 特開2005−331383(JP,A)
【文献】 特開平10−038531(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00−11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ほぼ同じ断面で中心軸線方向に所定の長さの長尺部材が配置された位置付近に、複数の基準点を設置する工程と、
前記基準点である互いに離隔距離が知られた少なくとも3点と前記長尺部材とを写し込むように、2つの異なる位置から画像を撮影する工程と、
撮影された画像に写し込まれた前記基準点の該画像上の位置から、それぞれの撮影位置と前記基準点との相対的な位置関係を特定する工程と、
前記長尺部材の表面における複数の位置と前記撮影位置との相対的な位置関係を、前記2つの画像から演算する工程と、
演算された上記表面における複数の位置と該長尺部材の断面形状とに基づいて該長尺部材の中心軸線の位置を該中心軸線に沿った複数の位置で演算する工程と、
を含むことを特徴とする長尺部材の位置計測方法。
【請求項2】
前記画像を撮影する2つの異なる位置は、前記長尺部材の両端を結ぶ直線に沿った方向に離隔するものであることを特徴とする請求項1に記載の長尺部材の位置計測方法。
【請求項3】
前記長尺部材は、断面が円形で水平方向に長くなるように配置されたものであり、
前記画像を撮影する2つの異なる位置は、前記長尺部材を斜め上方から撮影する位置とし、
前記中心軸線の位置を演算する工程は、前記長尺部材の周方向に沿った複数の点の位置情報から該長尺部材の周方向における頂点の位置を該長尺部材の軸線方向に沿って複数の位置で演算し、該頂点の位置から長尺部材の中心軸線の位置を演算することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の長尺部材の位置計測方法。
【請求項4】
前記中心軸線の位置を演算する工程は、前記長尺部材の周方向に沿った複数の点の位置に対して予め知られている該長尺部材の断面形状を重ね合わせ、最も相関の高い位置を抽出する工程を含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の長尺部材の位置計測方法。
【請求項5】
演算された前記中心軸線の位置と前記長尺部材の計画配置位置と対比し、図化して表示する工程を含むことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかに記載の長尺部材の位置計測方法。
【請求項6】
演算された前記中心軸線の位置と前記計画配置位置とを対比する工程は、前記計画配置位置を示す線上で設定された2つの対比基準位置と、2つの画像から演算された中心軸線上の前記対比基準位置と対応する点又は該中心軸線を延長して推定した前記対比基準位置と対応する点とを重ね合わせて、双方の位置を全長にわたって対比するものであることを特徴とする請求項5に記載の長尺部材の位置計測方法。
【請求項7】
前記基準点を設置する工程は、直線状の3つの棒状尺のそれぞれが他の棒状尺と互いに直角となるように結合された基準フレームを配置するものであり、該基準フレームの前記棒状尺のそれぞれの上に複数の基準点が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれかに記載の長尺部材の位置計測方法。
【請求項8】
前記長尺部材が配置された位置付近に基準座標を設定し、
前記長尺部材の計画配置位置は、前記基準座標によって特定されるものとし、
前記基準点を設置する工程は、前記基準座標上における座標値が特定された位置に設置することを特徴とする請求項5に記載の長尺部材の位置計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸線方向に長い部材を配置したときの位置を効率よく計測して設計上の計画配置位置と対比することができる長尺部材の位置計測方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物を構築するときには、鉄筋や緊張材を型枠内に配置し、これらを埋め込むようにコンクリートを打設する。緊張材はコンクリートにプレストレスを導入するために配置されるものであり、設計で定められた位置に配置されていないと、コンクリートに導入されるプレストレスの量が設計値と異なるものとなってしまう。また、鉄筋も予め定められた位置に配置されず、コンクリート部材の表面に近い位置に埋め込まれると腐食が早期に生じ、コンクリート構造物の耐久性が損なわれることになる。このため、組み立てられた型枠内に緊張材や鉄筋を配置した後、これらの位置を計測して、正確に配置されていることを確認してからコンクリートを打設している。
【0003】
緊張材や鉄筋の位置を計測する方法としては、スケールを当てて型枠に対する位置を測定することが一般に行われている、また、特許文献1には、3次元レーザースキャナーを用いて鉄筋の位置を測定する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−14693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、緊張材や鉄筋のそれぞれにスケールを当てて計測するのに多くの作業時間を要している。また、計測された結果を設計上の計画配置位置と対比して図化するためにさらに多大な作業を要することになる。一方、特許文献1に記載されているように3次元レーザースキャナーを用いる方法でも、計測時間が長くなるとともに測定する現場の状況によってはレーザーによる認識度に制約があり、精度も充分ではない。
【0006】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、軸線方向に長い部材の位置を効率よく計測し、図化することができる長尺部材の位置計測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、 ほぼ同じ断面で中心軸線方向に所定の長さの長尺部材が配置された位置付近に、複数の基準点を設置する工程と、 前記基準点である互いに離隔距離が知られた少なくとも3点と前記長尺部材とを写し込むように、2つの異なる位置から画像を撮影する工程と、 撮影された画像に写し込まれた前記基準点の該画像上の位置から、それぞれの撮影位置と前記基準点との相対的な位置関係を特定する工程と、 前記長尺部材の表面における複数の位置と前記撮影位置との相対的な位置関係を、前記2つの画像から演算する工程と、 演算された上記表面における複数の位置と該長尺部材の断面形状とに基づいて該長尺部材の中心軸線の位置を該中心軸線に沿った複数の位置で演算する工程と、を含む長尺部材の位置計測方法を提供する。
【0008】
この方法では、基準点が写し込まれた画像と3つ以上の基準点の相互間の位置関係から、これらの基準点と撮影位置との相対的な位置関係が特定される。そして、2つの画像から3次元写真計測の手法により、配置されている長尺部材の表面と撮影位置との相対的な位置関係が該長尺部材の軸線方向に沿った多数の位置、及び周方向に沿った多数の位置で特定される。長尺部材は断面の形状が分かっていると表面について特定された位置に基づいて中心軸線の位置を演算により推定することができる。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の長尺部材の位置計測方法において、 前記画像を撮影する2つの異なる位置は、前記長尺部材の両端を結ぶ直線に沿った方向に離隔するものとする。
【0010】
この方法では、軸線方向に長い部材について2つの画像から同一点を特定することが容易となり、正確に位置を特定することが可能となる。
【0011】
請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載の長尺部材の位置計測方法において、 前記長尺部材は、断面が円形で水平方向に長くなるように配置されたものであり、 前記画像を撮影する2つの異なる位置は、前記長尺部材を斜め上方から撮影する位置とし、 前記中心軸線の位置を演算する工程は、前記長尺部材の周方向に沿った複数の点の位置情報から該長尺部材の周方向における頂点の位置を該長尺部材の軸線方向に沿って複数の位置で演算し、該頂点の位置から長尺部材の中心軸線の位置を演算するものとする。
【0012】
この方法では、水平方向に長く配置された長尺部材の周方向の頂点を、2つの異なる位置から撮影することができる。したがって、表面の位置が特定される範囲に周方向の頂点の位置が含まれる。そして、撮影された画像内で鉛直方向を設定することによって、周方向の頂点の位置を軸線方向に沿った各位置で特定することができ、さらに長尺部材の断面形状から中心軸線の位置を特定することができる。
なお、本発明において、水平方向に長く配置された長尺部材は、両端間で多少の勾配を有するものであっても良く、勾配が変化するものであってもよい
【0013】
請求項4に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載の長尺部材の位置計測方法において、 前記中心軸線の位置を演算する工程は、前記長尺部材の周方向に沿った複数の点の位置に対して予め知られている該長尺部材の断面形状を重ね合わせ、最も相関の高い位置を抽出する工程を含むものとする。
【0014】
この方法では、長尺部材の表面は撮影するカメラに面した領域が画像に写し込まれ、この領域について位置が特定される。つまり長尺部材の周方向おける一部の範囲つまり断面における一部のみについて位置が特定されるが、長尺部材の断面形状と照合し、周面の位置と断面の輪郭線とが最も良く重なり合う位置を見つけることによって長尺部材の位置すなわち中心軸線の位置を特定することができる。
【0015】
請求項5に係る発明は、請求項1から請求項4までのいずれかに記載の長尺部材の位置計測方法において、 演算された前記中心軸線の位置と前記長尺部材の計画配置位置と対比し、図化して表示する工程を含むものとする。
【0016】
この方法では、演算された長尺部材の中心軸線の位置を予め設定されている長尺部材の計画配置位置と重ね合わせて対比し、これを図化することによって長尺部材が正確な位置に配置されている否かを容易に判断することができる。また、このような長尺部材の配置された位置を簡単に図化することができ、長尺部材の配置位置を記録として残すことが容易となる。
【0017】
請求項6に係る発明は、請求項5に記載の長尺部材の位置計測方法において、 演算された前記中心軸線の位置と前記計画配置位置とを対比する工程は、前記計画配置位置を示す線上で設定された2つの対比基準位置と、2つの画像から演算された中心軸線上の前記対比基準位置と対応する点又は該中心軸線を延長して推定した前記対比基準位置と対応する点とを重ね合わせて、双方の位置を全長にわたって対比するものとする。
【0018】
この方法では、計画配置位置における長尺部材の中心軸線の位置と2つの画像から特定された中心軸線の位置とを、座標系を統一して容易に重ね合わせることができる。そして、長尺部材が所定長さの全長にわたって撮影されていないときにも双方の位置関係を対比して図化することができる。
【0019】
請求項7に係る発明は、請求項1から請求項6までのいずれかに記載の長尺部材の位置計測方法において、 前記基準点を設置する工程は、直線状の3つの棒状尺のそれぞれが他の棒状尺と互いに直角となるように結合された基準フレームを配置するものであり、該基準フレームの前記棒状尺のそれぞれの上に複数の基準点が設けられているものとする。
【0020】
この方法では、長尺部材の近傍に置かれた基準フレームを2つ位置から撮影することにより、双方の画像中で同一の基準点を正確に特定することができる。また、互いに直角となる3方向に棒状尺が伸びているので基準点と撮影位置との相対的な位置関係を正確に演算することができる。
【0021】
請求項8に係る発明は、請求項5に記載の長尺部材の位置計測方法において、 前記長尺部材が配置された位置付近に基準座標を設定し、 前記長尺部材の計画配置位置は、前記基準座標によって特定されるものとし、 前記基準点を設置する工程は、前記基準座標上における座標値が特定された位置に設置するものとする。
【0022】
この方法では、基準点の位置が基準座標上において特定されており、撮影位置及び撮影された画像から特定された長尺部材の表面の位置及び中心軸線の位置を、基準座標上の座標値で示すことができる。また、長尺部材の計画配置位置も基準座標に基づいて表されており、撮影された画像から得られた長尺部材の中心軸線の位置と計画配置位置とを容易かつ正確に対比することが可能となる。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、本発明に係る長尺部材の位置計測方法では、軸線方向に長い部材の位置を効率よく計測し、図化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明に係る長尺部材の位置計測方法を実施するときの状況の一例を示す概略斜視図である。
図2】本発明に係る長尺部材の位置計測方法を実施するために使用することができる基準フレームの正面図、側面図、上面図及び底面図である。
図3図2に示す基準フレームの概略斜視図である。
図4】2つの異なる位置で撮影された2つの画像からこれらの画像に写し込まれた測定対象の位置を特定する原理を示す概略図である。
図5】2つの異なる位置で撮影された2つの画像上で同一点を特定する操作の概略を示す図である。
図6図2に示す基準フレームを設置した状態及び長尺部材の位置を特定するときに設定することができる座標系の例を示す概略図である。
図7】長尺部材の中心軸線の位置を特定する方法の例を示す概略図である。
図8】長尺部材の計画配置位置と2つの画像から演算された長尺部材の中心軸線の位置とを重ね合わせる方法の一例を説明するための概略図である。
図9】長尺部材の計画配置位置と2つの画像から演算された長尺部材の中心軸線の位置とを対比する図の一例を示す概略図である。
図10】2つの画像から演算された長尺部材の位置を図化した例を示す概略図である。
図11】計測しようとする長尺部材が長いときのデジタルカメラの配置例を示す概略図である。
図12】本発明に係る長尺部材の位置計測方法を実施するときの状況の他の例を示す概略斜視図である。
図13】配置された基準尺と長尺部材とを示す立面図である。
図14】基準尺とこれを支持する支持部材とを示す概略側面図である。
図15】基準尺と長尺部材との配置の一例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る長尺部材の位置計測方法を実施するときの状況の例を示す概略斜視図である。
この例は、橋桁1のコンクリート床版2に埋め込まれる緊張材3の位置を、コンクリートの打設前に計測して図化するために本発明が適用されたものであって、複数の緊張材3が配置されてコンクリートが打設される範囲を撮影する2つのデジタルカメラ4a,4bと、位置を計測しようとする一つの緊張材に沿った2ヶ所に設置された基準フレーム5とを用いる。
【0026】
上記緊張材3は、図1に示すようにコンクリートの箱形断面を有する橋桁1の床版部分に配置するものである。コンクリートは、橋桁1の軸線方向に所定の長さで分割された施工ブロック毎に打設するものであり、一施工ブロック分の型枠7を組み立てた後、この型枠内にコンクリートに埋め込む緊張材3や鉄筋(図示しない)等を配置する。そして、コンクリートを打設する前に配置された緊張材3の位置を計測する。
上記緊張材3は、橋桁1の軸線とほぼ直角となる方向に配置されるものであり、上下方向にはウェブ上で最も高い位置に配置され、ウェブ間ではやや下方に曲げ下げるように配置される。
【0027】
上記デジタルカメラ4a,4bは、レンズの歪みが少なく、レンズの中心を通過した光線が撮像素子の受光面に正確に結像するものが望ましく、撮像素子で検知された画像データをコンピュータに出力することができるものを用いる。また、レンズの焦点距離が正確に計測されているものであって、光軸と受光面が直交し、光軸の受光面での位置が正確に計測されているものを用いるのがよい。
【0028】
上記基準フレーム5は、図2及び図3に示すように、断面が矩形となった3つの棒状尺5a,5b,5cを、互いに直角となるように結合したものであり、それぞれの棒状尺5a,5b,5cの稜線上つまり棒状尺の断面における角部分に基準点6が設けられている。基準点6は、各棒状尺5a,5b,5cの軸線方向における複数の位置に設けられ、全ての基準点6は相互間の相対的な位置関係が正確に計測されている。これらの基準点6は、例えば、棒状尺の側面に2つの三角形を頂角が稜線上で突き合わされるように描いたものとすることができ、塗料で描いたもの、印刷されたシールを貼り付けたもの等を採用することができる。この他、撮影された画像内で容易に特定することができるように設けられるものであれば、他の形態の基準点を用いることもできる。
【0029】
上記デジタルカメラ4a,4bで撮影された画像のデジタルデータはコンピュータ(図示しない)に入力され、コンピュータは、画像を表示装置(図示しない)に表示すること、表示装置に表示された画像上で基準点を特定すること、写真測量又は3次元写真計測の手法によって特定された基準点が画像上に写し込まれた位置と実際の基準点間の距離とからデジタルカメラによる撮影位置と基準点との相対的な位置関係を特定すること、2つの異なる位置で撮影された画像から同一点を特定すること、2つの画像における同一点が写し込まれた位置から当該同一点の位置を特定すること等の操作を行うことができるものとなっている。また、2つの画像から特定された緊張材の位置を表示装置に表示すること、特定された緊張材の位置を計画配置位置と対比して表示装置に表示すること等もできるように設定されている。
【0030】
次に、上記デジタルカメラ4a,4b、基準フレーム5等を用いて本発明に係る長尺部材の位置計測方法を実施するときの工程について説明する。
デジタルカメラ4a,4bは、緊張材を配置する床版部分を斜め上方から撮影することができるように配置する。例えば、図1に示すように順次施工ブロック毎にコンクリートを打設するときの、先にコンクリートを打設した部分1aの上に設置することができる。2つのデジタルカメラ4a,4bはほぼ同じ高さに設定し、配置された緊張材3のほぼ軸線方向に沿って並べて設置するのが望ましい。そして、相互の間隔は0.5m〜1.5m程度に設定するのがよい。
【0031】
緊張材3を配置してコンクリートを打設する範囲には、図1に示すように、複数の基準点フレーム5を設置する。この基準点フレーム5は、デジタルカメラで撮影することができる範囲内で任意の位置に設置することができるが、一つの緊張材3aに沿った位置に2つの基準点フレーム5を設置するのが望ましい。また、3つ以上の基準点フレームを設置してもよい。それぞれの基準点フレーム5は、互いに直角となるように結合された棒状尺の2つ5a,5bがほぼ水平となり、一つ5cがほぼ鉛直となるように設置するのが望ましい。複数の基準点フレーム5を設置した後、異なる基準点フレームの基準点間の距離をスケール等によって計測しておくこともできる。このような基準点フレーム間の距離が計測されていることにより、デジタルカメラ4a,4bによる撮影位置の特定し、緊張材3の位置を特定するときの精度が向上する。また、上記基準点フレーム5を設置する他に、寸法を明確に読み取ることができるスケール、標尺等を、デジタルカメラで写し込むことができるように配置しておくことによって精度を上げることもできる。
【0032】
基準フレーム5の設置が終了すると、2つのデジタルカメラ4a,4bで緊張材を配置した範囲を撮影する。撮影された画像データはコンピュータに入力され、画像に写し込まれた基準点6の位置からデジタルカメラ4a,4bによる撮影位置と基準点との相対的な位置関係を演算し、さらに2つの画像に写し込まれた緊張材3について、その表面上の複数の点にについて3次元空間内の位置を演算する。
【0033】
これらの演算方法は、写真測量又は写真計測として知られている方法を用いるものであり、相互間の距離が知られた基準点6が写し込まれた画像から、画像上でその基準点6が写し込まれている位置を特定する。これらの基準点6を撮影したときの光軸とのなす角度からデジタルカメラ4a,4bによる撮影位置を特定する。そして、2つの画像上の同一点を特定し、図4に示すように、この点がそれぞれの画像上で写し込まれている位置から3次元空間における位置を特定するものである。
このとき、デジタルカメラ4a,4bによる撮影位置、基準点6の位置は、図4に示すように撮影位置に基づいて設定された座標系において3次元座標を特定することができる。また、後述するように測定対象に基づいて設定された座標系に変換した3次元座標で表示することもできる
【0034】
撮影された2つの画像上で同一点を特定する工程は、例えば次のように行うことができる。
2つの画像を解像度が低い状態として一方から一部の範囲を取り出し、これをテンプレートT1として、図5(a)に示すように他方の画像P上を走査する。そして、順次位置を移動させながら画像の相関を演算し、相関値がピークとなった位置を2つの画像の同一点とする。次に、画像の解像度を上げ、先にテンプレートT1として取り出した範囲内からさらに一部を取り出してテンプレートT2とし、解像度が低い状態で相関値がピークとなった範囲t1内で、図5(b)に示すように他方の画像上を走査する。そして、順次位置を移動させながら画像の相関を演算し、相関値がピークとなった位置を2つの画像の同一点とする。このような操作を繰り返して緊張材3の表面おける軸線方向及び周方向の多数の位置で所定の大きさのブロック毎に2つの画像上の同一点を特定する。
【0035】
上記テンプレートTは、図5(d)に示すように撮影する角度に応じた補正を行うのが望ましい。2つの異なる位置から撮影した画像は、撮影する角度の違いによって同一の部分であっても形状がひずんだ状態で撮影される。このため、撮影されたままの画像から一部を取り出してテンプレートT0とすると、相関値が小さくなる。したがって、撮影した角度に応じた補正を行うものである。
また、上記走査によって2つの画像から同一点を特定するのを容易とするために、緊張材3の表面に模様や各部の特徴となるマークを付してもよい。これにより、緊張材3の表面上における各位置の特徴が明確となり、同一点の特定が容易となる。
【0036】
上記のように2つの画像上で緊張材3の表面の同一点が特定されると、この点が2つの画像に写し込まれた位置から3次元空間内の位置を特定する。そして、緊張材3の表面上で特定された多数の位置の座標から緊張材3の中心軸の位置を演算する。この演算にあたっては、緊張材が配置された方向に基づいた座標系を設定するのが望ましい。例えば、図6に示すように一つの緊張材3aに沿って配置された2つの基準点フレーム5のほぼ鉛直となった棒状尺5cに設けられた基準点6aを結ぶ線をX軸に設定し、ほぼ鉛直に配置した棒状尺5cの方向をY軸とする。そして、これらと直角となる方向にZ軸を設定する。このように設定された座標系で、緊張材3の中心軸線の位置は次のように演算することができる。
【0037】
各緊張材は2つのデジタルカメラ4a,4bによって斜め上方から撮影されているので、図7(a)に示すように円形断面の緊張材の頂部が撮影されている。そして、周方向に複数の位置で座標値が演算されていると、図7(b)に示すようにX方向の座標値がほぼ同じ複数の点DについてY方向の値を比較し、値が最大となる点を、当該X値における緊張材の頂点Aの位置とする。緊張材の断面形状は予め知られており、半径をrとする円形となっている。したがって、中心軸線の位置はY軸の方向で頂点Aよりrだけ下方つまりY方向の座標値がrだけ小さい値となる点Qとなる。このように中心軸線の位置をX座標が異なる多数の位置で順次演算し、これらの点を結ぶことによって緊張材3の中心軸線の位置を演算することができる。
【0038】
また、中心軸線の位置の演算は、次のように行うこともできる。図7(c)に示すようにX方向の座標値がほぼ同じ複数の点Dを抽出し、緊張材3の断面に相当する半径がrの円Cを重ね合わせる。そして、上記円Cを走査して上記複数の点Dが上記円Cからはずれる量を演算し、その量が最小となった位置を緊張材3の位置として中心軸線の位置Qを推定することができる。
【0039】
このように緊張材3の中心軸線の位置が演算されると、これを緊張材3の計画配置位置と対比する。この対比は次のように行うことができる。
緊張材3は、2つのデジタルカメラ4a,4bで全長にわたって撮影することが難しい場合が多い。特に両端部は、緊張材3に定着具8が装着され、この定着具8が型枠7に固定されているときには、緊張材の端を撮影することができず、緊張材の両端を撮影した画像から特定することは難しい。このようなときには、撮影した2つ画像に基づいて中心軸線の位置が演算された範囲から、緊張材3の両端の位置を補完によって推定する。図8(a)は緊張材3の計画配置位置を示す立面図であり、このように配置しようとする緊張材3について、2つの画像から演算により特定された中心軸線の位置は図8(b)に示すように両端部の位置データが欠落している。この演算されたデータについて、設計上の長さLと一致するように、つまり全長が図8(a)に示すLとなるように緊張材3の両端の位置Eを推定する。例えば、中心軸線の位置が演算された範囲L’から中心軸線を両側に同じ長さL”を延長し、全長をLとする点を両端Eと推定することができる。
【0040】
また、図8(a)中に示すように、配置された緊張材の一方の端から測定された距離Lmの位置Mにマークを付しておき、図8(c)に示すように撮影した画像からマークを付した位置Mを特定し、この位置から長さLmだけ延長して緊張材の端Eの位置を推定することもできる。
【0041】
上記のように両端Eの座標が特定されると、計測された緊張材の位置を計画配置位置と重ね合わせて対比する。対比は、座標系を統一し、緊張材の両端を対比基準位置として重ね合わせることによって行うことができる。緊張材3が配置されるとき、型枠7は設計上の位置に正確に計測して組み立てられており、配置された緊張材3の端部を固定する部分も正確に計測して設定されている。このため、配置された緊張材3の両端は正確に配置されているとみなすことができる。
なお、緊張材3にマークを付すときには、マークを付した位置を対比基準位置として重ね合わせることもできる。
【0042】
計測された緊張材の位置を計画配置位置と対比して図化すると図9に示すようになり、計測された緊張材の位置が計画配置位置からはずれている量、及び管理値との関係を緊張材の全長にわたって表示することができる。つまり、許容される配置位置の誤差を5mmとすると、この管理値に対して計測された緊張材の配置位置が許容範囲内となっているか否かを明確に表示することができる。
【0043】
また、緊張材3が実際に配置された位置を図化して表示することができる。図10(a)は、配置された緊張材3のそれぞれについて軸線方向に配置位置を示すものであり、型枠からの高さとして表示することができる。型枠7は組み立てられるときに、位置、高さを正確に計測して設定されており、演算によって推定された緊張材3の両端の位置を設計上における型枠7の所定位置に重ね合わせることにより、緊張材3の全長にわたって型枠7に対する緊張材3の位置を特定して図10(a)のように表示することができる。また、図10(b)に示すように複数の緊張材3について軸線方向の所定の位置で計測された緊張材の位置を表示することもできる。
【0044】
以上に説明した実施の形態では、位置計測の対象となる緊張材3を2つのデジタルカメラ4a,4bで撮影しているが、緊張材3が長く、設置した2台のデジタルカメラ4a,4bで全長を撮影することができないときには、図11に示すように、2つのデジタルカメラを一組として複数組のデジタルカメラ4,4’を使用して全長にわたる画像を撮影することができる。このとき、隣り合う2組のデジタルカメラ4,4’によって共通の基準点フレーム5−1を撮影しておくことにより、複数組のデジタルカメラ4,4’の相対的な位置関係を特定することができ、緊張材3の全長にわたる計測データを得ることができる。
なお、複数組のデジタルカメラ4,4’は一組のデジタルカメラ4を順次転用するものであってもよい。
【0045】
図12は、本発明に係る長尺部材の位置計測方法を実施するときの状況の他の例を示す概略斜視図である。
この例は、図1に示す例と同様に橋桁1のコンクリート床版2に埋め込まれる緊張材3の位置をコンクリートの打設前に計測するものであって、同様に2つのデジタルカメラ4a,4bを使用して測定対象を撮影する。このとき、本例では測定対象とともに写し込む基準点が図1に示す例とは異なるものとなっている。
【0046】
本例では、基準点が予め現場で設定された基準座標に基づいて設置されている。つまり、測定対象が配置された現場で基準座標が設定され、この基準座標上で基準点の座標値が既知となっている。基準点は、図12に示すように基準点の表示が付された複数の基準尺11を設置することによって設定される。これらの基準尺11は、測定対象となる緊張材3の軸線方向における両端付近と中央点付近とに、基準点が基準座標上の所定の位置となるように設置される。
【0047】
上記基準座標は、例えば図12及び図13に示すように新たにコンクリートを打設する橋桁の上面における側縁を原点Oとし、橋桁1の軸線と直角方向で橋桁1の上面に沿った方向にX軸を設定することができる。Y軸はX軸と直角となるように上下方向に設定し、Z軸は橋桁1の軸線方向に設定することができる。また、原点Oを一つの緊張材3の配置位置とZ軸方向で一致させておくのが望ましい。
【0048】
基準点12は、図13に示すように一つの板状の基準尺11に所定の間隔で2つが設けられており、この基準尺11を鉛直方向に支持して2つの基準点12が上下に配列されるものとする。基準点12は正方形を鉛直線と水平線とで4分割し、頂角が突き合される2つの小さな正方形を黒く塗りつぶして突き合された頂角の位置を基準点12とするものである。このような基準尺11は、例えば図14に示すように磁石を用いた支持部材13によって、予め設定された基準座標上の所定の位置に設定することができる。
【0049】
上記支持部材13は、磁石を内蔵した基部14と、この基部14に支持され、複数の回動が可能となった格点を有するアーム15とを備えるものである。
上記基部14は、鋼型枠が用いられるときには磁石によってこの鋼型枠に固定することができ、木製型枠17が用いられるときには、型枠上に磁性材料からなる部材、例えば鉄板16を基礎部材として載置し、これに固着することができる。また、配置された鉄筋(図示しない)上に上記基礎部材を載置し、これに固着してもよい。
上記アーム15は、基部14に対して仰角が変更可能であるとともに旋回が可能に接合された第1の棒状部材21と、該第1の棒状部材21に対して第1の回動軸22周りに回動が可能に接続された第2の棒状部材23と、該第2の棒状部材23に対して第2の回動軸24周りに回動が可能に接続された第3の棒状部材25とを有している。これにより、第3の棒状部材25に固定された基準尺11の位置及び角度を任意に設定することができるものとなっている。また、基準尺11を鉛直に設定するために、水準器18が基準尺の取り付け部に固定されている。
【0050】
上記基準尺11は、例えば図13及び図15に示すように原点からX方向に距離がL1,L2,L3の3か所に設けるものとし、基準尺11の下辺がX軸と一致するように設置する。これにより、基準点12は上記X座標とY座標L4,L5が特定された状態で設定される。また、原点Oが一つの緊張材の配置位置とZ軸方向で一致していると、基準点は図14に示すように一つの緊張材3の直上に設置されることになる。
基準尺11を設置する上記3か所は、緊張材3の両端付近で該緊張材をデジタルカメラ4で撮影するときに明確に写し込むことができる位置、及び緊張材3の中央部付近に設定するものである。
このように基準座標にしたがって基準尺11を配置するときには、設定した原点Oから橋桁1の上面となる位置に沿って軽量の糸いわゆる水糸を張架し、この糸の位置に合せて設置することができる。
【0051】
このように設置された基準尺11と配置された緊張材3とをコンクリートの打設前にデジタルカメラ4で撮影するときには、図15に示すように緊張材3の一端付近に設置された基準尺11aと緊張材の長さ方向における中央部に配置された基準尺11bとを写し込むように第1の撮影範囲31を2台のデジタルカメラ4a,4bでそれぞれ撮影する。そして、反対側の端部付近に設置された基準尺11cと緊張材の長さ方向における中央部に配置された基準尺11bとを写し込んで第2の撮影範囲32を2台のデジタルカメラ4a,4bで撮影する。
【0052】
上記のように撮影された画像はコンピュータに入力され、それぞれの画像に写し込まれている基準点12の位置からデジタルカメラ4による撮影位置が特定される。個々の撮影画像には4つの基準点が写し込まれており、それぞれの基準点12は設定されている基準座標上の位置が特定されており、それぞれの撮影位置も基準座標上で特定することができる。
【0053】
2台のデジタルカメラによる撮影位置が特定されると2台のデジタルカメラ4a,4bによって撮影された画像上の同一点を特定することにより、当該同一点の位置を上記基準座標上で特定することができる。このような同一点の特定は、図4及び図5に基づいて説明した実施の形態と同様に行うことができ、予め断面形状が知られている緊張材3の中心位置の特定も図7に基づいて説明した実施の形態と同様に行うことができる。そして、本実施の形態では、緊張材3の位置の特定及び図化を設定した基準座標上で行うことができる。また、第1の撮影範囲31の画像から特定された位置情報と第2の撮影範囲32の画像から特定された位置情報も統一された基準座標に基づいて得られたものとなっており、容易に統合して一連の緊張材の位置を全長にわたって特定し、図化することができる。
【0054】
なお、本発明に係る長尺部材の位置計測方法は、以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく本発明の範囲内において適宜に変更を加えて実施することができる。例えば、測定の対象となる長尺部材は緊張材に限定されるものではなく、鉄筋や配管等、軸線方向に長い部材について位置を計測するときに適用することができる。また、基準点フレーム又は基準尺の形状・寸法及び設置する位置や数についても適宜に変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0055】
1:橋桁, 2:コンクリート床版, 3:緊張材, 4:一組のデジタルカメラ, 4a,4b:それぞれのデジタルカメラ, 5:基準フレーム, 5a,5b,5c:基準フレームの棒状尺, 6:基準点, 7:型枠, 8:定着具,
11:基準尺, 12:基準点, 13:支持部材, 14:支持部材の基部,15:支持部材のアーム, 16:鉄板, 17:木製型枠, 18:水準器,
21:アームの第1の棒状部材, 22:アームの第2の回動軸, 23:第2の棒状部材, 24:第2の回動軸, 25:第3の棒状部材,
31:第1の撮影範囲, 31:第2の撮影範囲,
A:水平方向に長く配置された緊張材の断面における頂点, C:緊張材の断面に相当する円, D:3次元座標が特定された緊張材の表面上の点, E:推定された緊張材の端の位置, P:テンプレートを走査する画像, T:テンプレート, O:推定された緊張材の中心軸線の位置, L:緊張材の全長(設計値), L’:緊張材の2つの画像から位置が計測された長さ, L”,Lm:緊張材の補完した長さ, O:基準座標の原点
図1
図2
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