特許第6563727号(P6563727)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社神戸製鋼所の特許一覧

特許6563727ダスト発生防止装置及びダスト発生防止方法
<>
  • 特許6563727-ダスト発生防止装置及びダスト発生防止方法 図000002
  • 特許6563727-ダスト発生防止装置及びダスト発生防止方法 図000003
  • 特許6563727-ダスト発生防止装置及びダスト発生防止方法 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6563727
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】ダスト発生防止装置及びダスト発生防止方法
(51)【国際特許分類】
   G21F 9/28 20060101AFI20190808BHJP
   G21F 9/12 20060101ALI20190808BHJP
   B05B 1/14 20060101ALI20190808BHJP
   B05B 3/02 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
   G21F9/28 501B
   G21F9/28 521J
   G21F9/28 522J
   G21F9/12 501J
   B05B1/14 Z
   B05B3/02 B
【請求項の数】6
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-149872(P2015-149872)
(22)【出願日】2015年7月29日
(65)【公開番号】特開2017-32313(P2017-32313A)
(43)【公開日】2017年2月9日
【審査請求日】2018年4月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100158540
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 博生
(74)【代理人】
【識別番号】100106264
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 耕治
(74)【代理人】
【識別番号】100176876
【弁理士】
【氏名又は名称】各務 幸樹
(74)【代理人】
【識別番号】100187768
【弁理士】
【氏名又は名称】藤中 賢一
(72)【発明者】
【氏名】山下 岳史
(72)【発明者】
【氏名】田中 良明
(72)【発明者】
【氏名】中井 郁夫
(72)【発明者】
【氏名】浅井 克彦
(72)【発明者】
【氏名】仲谷 雅光
【審査官】 小野 健二
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−067899(JP,A)
【文献】 特開平10−282295(JP,A)
【文献】 特開2003−270387(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0051057(US,A1)
【文献】 実開昭64−008955(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 9/00−9/36
B08B 1/00−17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性汚染水を貯留していたタンクの解体時におけるダストの発生防止装置であって、
上記タンクの開口からの挿入によりタンク内に配設され、上記汚染水排出後のタンク下部から残留汚染水を吸上げるポンプと、
上記タンクの開口からの挿入によりタンク内に配設され、汚染水又は洗浄水を上記タンクの側壁内面に噴射する水噴射モジュールと、
上記ポンプ及び水噴射モジュールを制御する制御部と
を備え、
上記制御部は、上記ポンプにより汚染水を吸上げさせ、上記水噴射モジュールにより上記側壁内面にこの汚染水を噴射させ、この汚染水噴射後、上記側壁内面の少なくとも特定の領域へ所定のインターバルを有するように上記水噴射モジュールにより洗浄水を再噴射させる制御を行うことを特徴とするダスト発生防止装置。
【請求項2】
上記ポンプによる汚染水吸上げ経路に、汚染水を浄化可能な吸着剤をさらに備え、
上記水噴射モジュールが、上記洗浄水として上記吸着剤により浄化された水を用いる請求項1に記載のダスト発生防止装置。
【請求項3】
上記タンク内に、上記ポンプで吸上げた汚染水を貯留するバッファータンクをさらに備え、
上記水噴射モジュールが、上記噴射用の汚染水として上記バッファータンクに貯留される汚染水を用いる請求項1又は請求項2に記載のダスト発生防止装置。
【請求項4】
上記水噴射モジュールが、複数のノズル及び首振り機構を有し、
上記首振り機構が、上記汚染水又は洗浄水の流入方向と平行な第1軸及びこの第1軸と垂直方向の第2軸を中心に上記ノズルを連続的に回転させる請求項1、請求項2又は請求項3に記載のダスト発生防止装置。
【請求項5】
上記水噴射モジュールの噴射による上記側壁内面への汚染水及び洗浄水の当接量が、それぞれ平均150cc/m以上200L/m以下である請求項1から請求項のいずれか1項に記載のダスト発生防止装置。
【請求項6】
放射性汚染水を貯留していたタンクの解体時におけるダストの発生防止方法であって、
タンク内に配設されるポンプにより汚染水排水後のタンク下部から残留汚染水を吸い上げる工程と、
タンク内に配設される水噴射モジュールによりタンクの側壁内面に上記汚染水を噴射する工程と、
上記水噴射モジュールによりタンクの側壁内面に洗浄水を再噴射する工程と
を備え、
上記側壁内面の少なくとも特定の領域において、上記噴射工程による噴射と再噴射工程による再噴射との間に所定のインターバルがあることを特徴とするダスト発生防止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダスト発生防止装置及びダスト発生防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
放射性セシウム、放射性ストロンチウム等の放射性汚染物質を含有する汚染水、例えば事故後の原子力発電所における炉心冷却用循環水、廃水等は、環境破壊を防止するために放射性汚染物質を基準値以下に低減しなければ排出することが許されない。
【0003】
このため、事故後の原子力発電所では、余剰となった原子炉冷却水を回収した汚染水が多数のタンクに貯留されている。これらのタンクの多くは、複数の板状部材をボルト締めすることにより現地で接合して形成されたボルト締め型タンクである。このようなボルト締め型タンクでは、部材間の締結部のパッキン等の劣化により漏れが生じ得るため、数年が耐用期間と考えられる。
【0004】
そこで、このようなボルト締め型タンクは、複数の板状部材を溶接により接合して形成され、より寿命の長い溶接型タンクに置き換えることが望ましい。しかしながら、ボルト締め型タンクから汚染水を排出しても、タンクの内面に付着した放射性物質のために、さらに除染処理をしなければボルト締め型タンクを容易に解体することができない。
【0005】
このようなタンク内面の除染処理は、タンク内の汚染水を排出した後、作業員がタンク内に入り、デッキブラシなどを用いて手作業により行うことなどが考えられる。ここで、汚染水排出後のタンク内には放射性汚染物質を含有するダストが飛散するため、上記タンク内面の除染処理の前にタンク内のダスト除去処理が行われる。このダスト除去処理として、例えばタンク内の放射性物質濃度が所定値以下となるまでダスト吸引のための換気が行われる。
【0006】
一方、上記タンク内面の除染処理は、解体作業の直前に実施されることが多い。上記ダスト除去処理を行ってから比較的短い時間内に解体作業を実施すればよいが、例えば上記ダスト除去処理の数日後に解体作業を実施する場合、タンク内に放射性ダストが再発生し、タンク内面の除染処理時にこの放射性ダストが飛散するおそれがある。この点について、例えば「“福島第一原子力発電所の汚染水の状況と対策について”、[online]、平成26年12月2日、東京電力株式会社、[平成27年6月1日検索]、インターネット(URL:http://www.tepco.co.jp/news/2014/images/141202b.pdf)、p59」に、次のような調査結果が記載されている。すなわち、タンク内の汚染水の排出後、タンク内の放射性物質濃度が0.00002Bq/cm程度と十分に低下するまでタンク内のダスト吸引のための換気を実施した後、換気を停止させた後のタンク内の放射性物質濃度の経時変化が調査されている。この調査結果では、換気停止後3日目までは放射性物質濃度の上昇は見られていないが、その後放射性物質濃度が上昇し始め、換気停止5日後には、放射性物質濃度の高いところで0.00025Bq/cm近くまで上昇している。この原因は、定かではないが、タンク内の温度変化に伴いタンク内面が乾燥し、タンク内面にわずかに残留する放射性物質がダストになったものと考えられる。ここで、タンク内のダスト除去処理後、解体作業を実施するまで数日間以上放置する場合が多いことが実情であるため、このような放射性ダストの発生を防止することが重要である。
【0007】
このような放射性ダストの発生は、タンク内面に残留する放射性物質を除去することにより防止できる。このようなタンク内面の放射性物質を除去するために、例えば作業員がタンク内に立ち入らずにタンク内面を除染する装置として、タンクの内壁面に沿って移動しながらタンク内壁面に付着した汚染物質を除去する装置が提案されている(特開平10−2995号公報参照)。
【0008】
上記公報で提案の除染装置を用いることにより、タンク内壁面に残留する放射性物質を除去することができ、その結果上記放射性ダストの発生を防止することができる。しかし、この除染装置は、タンク内壁面の汚染物質の除去処理を行う際、汚染水排出後のタンク内に洗浄用の水を最高水位まで供給する必要がある。ここで、汚染水排水後のタンク下部には汚染水が残留するため、このようにタンク内に洗浄用の水が供給されると、この洗浄用の水が残留汚染水と混合し、その結果大量の汚染水が増加する。
【0009】
また、上記公報で提案の除染装置を用いる以外の方法として、タンクの内面に長時間散水することによっても、タンク内面に残留する放射性物質を除去でき、上記放射性ダストの発生を防止することができる。しかし、この場合も、大量の洗浄水がタンク内の残留汚染水と混合し、大量の汚染水が増加する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平10−2995号公報
【非特許文献1】“福島第一原子力発電所の汚染水の状況と対策について”、[online]、平成26年12月2日、東京電力株式会社、[平成27年6月1日検索]、インターネット(URL:http://www.tepco.co.jp/news/2014/images/141202b.pdf)、p59
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、汚染水の増加を抑制しつつ、タンク解体時の放射性ダストの発生を防止できるダスト発生防止装置及びダスト発生防止方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するためになされた発明は、放射性汚染水を貯留していたタンクの解体時におけるダストの発生防止装置であって、上記タンクの開口からの挿入によりタンク内に配設され、上記汚染水排出後のタンク下部から残留汚染水を吸上げるポンプと、上記タンクの開口からの挿入によりタンク内に配設され、汚染水又は洗浄水を上記タンクの側壁内面に噴射する水噴射モジュールと、上記ポンプ及び水噴射モジュールを制御する制御部とを備え、上記制御部は、上記ポンプにより汚染水を吸上げさせ、上記水噴射モジュールにより上記側壁内面にこの汚染水を噴射させ、この汚染水噴射後、上記側壁内面の少なくとも特定の領域へ所定のインターバルを有するように上記水噴射モジュールにより洗浄水を再噴射させる制御を行うことを特徴とするダスト発生防止装置である。
【0013】
当該ダスト発生防止装置では、制御部が、水噴射モジュールにより汚染水をタンクの側壁内面の少なくとも特定の領域に噴射させた後、所定のインターバルを有するようにその領域へ洗浄水を再噴射させる制御を行う。この所定のインターバルの間に、上記側壁内面に残留する放射性ストロンチウム等の放射性汚染物質が上記噴射で側壁内面に付着した汚染水中に溶解し、洗浄水の再噴射により、このストロンチウム等が溶解した汚染水が洗い流される。従って、当該ダスト発生防止装置は、制御部が、例えばタンクの側壁内面の全面に対して上記制御を行うことにより、タンクの側壁内面全面に残留する放射性ストロンチウム等の放射性汚染物質を上記噴射した汚染水と共に洗い流すことができる。このように当該ダスト発生防止装置は、ストロンチウムの溶解に必要な量の汚染水と、上記側壁内面に付着する汚染水を洗い流すために必要な量の洗浄水とを噴射するので、噴射する汚染水及び洗浄水の使用量を低減しつつ、上記側壁内面に残留する放射性ストロンチウムを効果的に除去できる。従って、当該ダスト発生防止装置は、タンク内の洗浄に伴って増加する汚染水の量を抑制しつつ、タンク解体時の放射性ダストの発生を防止できる。
【0014】
上記ポンプによる汚染水吸上げ経路に、汚染水を浄化可能な吸着剤をさらに備えるとよく、上記水噴射モジュールが、上記洗浄水として上記吸着剤により浄化された水を用いるとよい。このように、汚染水を浄化可能な吸着剤を備え、タンク内の残留汚染水をこの吸着剤で浄化した水を上記洗浄水として用いることにより、放射性汚染物質を含まない外部の水の使用量を低減できる。
【0015】
上記タンク内に、上記ポンプで吸上げた汚染水を貯留するバッファータンクをさらに備えるとよく、上記水噴射モジュールが、上記噴射用の汚染水として上記バッファータンクに貯留される汚染水を用いるとよい。このように、上記ポンプで吸上げた汚染水を貯留するバッファータンクを上記タンク内に備えることにより、水噴射モジュールで必要とされる汚染水の噴射量に対して上記ポンプの能力が低い場合でも、上記ポンプで吸上げた汚染水を利用することができる。つまり、上記ポンプで吸上げた汚染水をバッファータンクに貯留することで、例えばタンク外に配設した他のポンプによりバッファータンクに貯留した汚染水を水噴射モジュールに供給することができる。また、上記バッファータンクは上記タンク内に配設されるので、汚染水の漏洩対策を簡易なものとでき、設備コストを低減できる。
【0016】
上記水噴射モジュールが、複数のノズル及び首振り機構を有しているとよく、上記首振り機構が、上記汚染水又は洗浄水の流入方向と平行な第1軸及びこの第1軸と垂直方向の第2軸を中心に上記ノズルを連続的に回転させるとよい。このように、水噴射モジュールとして、複数のノズル及び首振り機構を有し、この首振り機構が上記第1軸及び第2軸を中心に上記ノズルを連続的に回転させるものを用いることにより、効率よくタンクの側壁内面全体に汚染水及び洗浄水を噴射することができる。
【0017】
除染処理のために使用した海水の塩分濃度に対する水噴射モジュールで噴射する汚染水の塩分濃度の比をA[%]、海水中のストロンチウム濃度をB[mg/L]、上記側壁内面に付着した後、この汚染水中に生成されるストロンチウム化合物の分子量をC、このストロンチウム化合物の溶解度をD[mg/L]、上記水噴射モジュールの噴射による上記側壁内面への洗浄水の平均当接量をE[cc/m]としたとき、上記平均当接量Eが下記式(1)を満たすとよい。
【0018】
このように、上記側壁内面への洗浄水の当接量が下記式(1)を満たすよう洗浄水を噴射することにより、汚染水の増加を抑制しつつ、上記側壁内面に残留するストロンチウム等が汚染水中に溶解し易くなると共に、上記側壁内面に付着した汚染水を乾燥する前に洗い流すことができるので、より効率よく上記放射性ストロンチウム等を除去することができる。ここで、例えば汚染水の塩分濃度が除染のために使用した海水の塩分濃度と等しいときの「塩分濃度の比A」は100%である。「側壁内面への洗浄水の平均当接量」とは、噴射により側壁内面へ当接した洗浄水の全量を側壁内面の全面積で除した値である。
E≧(A×B×C)/(87.6×D) ・・・(1)
【0019】
上記水噴射モジュールの噴射による上記側壁内面への汚染水及び洗浄水の当接量としては、それぞれ平均150cc/m以上200L/m以下が好ましい。このように、上記側壁内面への汚染水及び洗浄水の当接量が上記範囲内となるよう汚染水又は洗浄水を噴射することにより、上記側壁内面に付着する汚染水中に生成される放射性汚染物質を特定しなくても、確実に上記側壁内面に残留するストロンチウム等が汚染水中に溶解し易くなると共に、上記側壁内面に付着した汚染水を乾燥する前に洗い流すことができるので、より確実に上記放射性ストロンチウム等を除去することができる。
【0020】
また、上記課題を解決するためになされた別の発明は、放射性汚染水を貯留していたタンクの解体時におけるダストの発生防止方法であって、タンク内に配設されるポンプにより汚染水排水後のタンク下部から残留汚染水を吸い上げる工程と、タンク内に配設される水噴射モジュールによりタンクの側壁内面に上記汚染水を噴射する工程と、上記水噴射モジュールによりタンクの側壁内面に洗浄水を再噴射する工程とを備え、上記側壁内面の少なくとも特定の領域において、上記噴射工程による噴射と再噴射工程による再噴射との間に所定のインターバルがあることを特徴とするダスト発生防止方法である。
【0021】
当該ダスト発生防止方法は、このように、タンクの側壁内面の少なくとも特定の領域において、噴射工程での汚染水の噴射との間に所定のインターバルを有するように再噴射工程で洗浄水の再噴射を行う。この所定のインターバルの間に、上記側壁内面に残留するストロンチウム等の放射性汚染物質が上記噴射により側壁内面に付着した汚染水中に溶解し、上記再噴射工程での洗浄水の再噴射により、このストロンチウム等が溶解した汚染水が洗い流される。従って、当該ダスト発生防止方法により、例えばタンクの側壁内面の全面に対して上記噴射工程及び再噴射工程を行うことにより、タンクの側壁内面全面に残留する放射性ストロンチウム等の放射性汚染物質を上記噴射した汚染水と共に洗い流すことができる。このように当該ダスト発生防止方法は、ストロンチウムの溶解に必要な量の汚染水と、上記側壁内面に付着する汚染水を洗い流すために必要な量の洗浄水とを噴射するので、噴射する汚染水及び洗浄水の使用量を低減しつつ、上記側壁内面に残留する放射性ストロンチウムを効果的に除去できる。従って、当該ダスト発生防止方法は、タンク内の洗浄に伴って増加する汚染水の量を抑制しつつ、タンク解体時の放射性ダストの発生を防止できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明のダスト発生防止装置及びダスト発生防止方法は、上述のように、汚染水の増加を抑制しつつ、タンク解体時の放射性ダストの発生を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態に係るダスト発生防止装置の構成を示す模式図である。
図2図1の水噴射モジュールの模式的断面図である。
図3図1の水噴射モジュールの模式的正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、適宜図面を参照しつつ、本発明の実施の形態を詳説する。
【0025】
[ダスト発生防止装置]
図1の当該ダスト発生防止装置は、放射性汚染水を貯留していたタンク1の解体時におけるダストの発生防止装置である。当該ダスト発生防止装置は、タンク1の開口からの挿入によりタンク1内に配設され、汚染水排出後のタンク1下部から残留汚染水を吸上げる吸上げポンプ2と、タンク1の開口からの挿入によりタンク1内に配設され、洗浄水をタンク1の側壁内面に噴射する水噴射モジュール3と、吸上げポンプ2及び水噴射モジュール3を制御する制御部4とを主に備える。また、当該ダスト発生防止装置は、吸上げポンプ2による汚染水吸い上げ経路に配設され、汚染水を浄化可能な吸着剤5と、タンク1内に配設され、吸上げポンプ2で吸上げた汚染水を貯留するバッファータンク6とをさらに備える。また、当該ダスト発生防止装置は、吸上げポンプ2で吸い上げた汚染水をバッファータンク6へ供給する汚染水供給配管7と、バッファータンク6内の浄化された汚染水を水噴射モジュール3へ供給する浄化水供給配管8と、浄化水供給配管8を介してバッファータンク6内の浄化された汚染水を圧送する供給ポンプ9とを備える。
【0026】
<タンク>
タンク1は、特に限定されないが、例えば事故後の原子力発電所における炉心冷却用循環水や廃水等の汚染水を貯留するために使用され、複数の板材の周縁に配設したフランジ間をボルトで締結して形成されたボルト締め型タンクが想定される。
【0027】
また、タンク1は、解体前に内部の汚染水を排出するための不図示の排出口を有するが、底部にフランジがあるため、排出口から内部の汚染水を排出した後に内側下部に汚染水が不可避的に残留する。図1は、排出口から内部の汚染水を排出した後のタンク1の状態を示す。
【0028】
タンク1の平均内径の下限としては、特に限定されないが、3mが好ましく、5mがより好ましい。一方、タンク1の平均内径の上限としては、25mが好ましく、20mがより好ましい。タンク1の平均内径が上記下限に満たないと、タンク容量を所定以上に大きくできず汚染水を貯留するためのタンク1の数が増加するおそれがある。逆に、タンク1の平均内径が上記上限を超えると、タンクの側壁内面に洗浄水を当接させることが容易ではないおそれがある。なお、「平均内径」とは、タンク内部の水平方向の最小寸法とこれに直交する水平方向の寸法との平均値を意味する。
【0029】
また、タンク1の平均高さの下限としては、3mが好ましく、5mがより好ましい。一方、タンク1の平均高さの上限としては、25mが好ましく、20mがより好ましい。タンク1の平均高さが上記下限に満たないと、汚染水の貯留可能な容量に対してタンク1の設置面積が大きくなるため、設置面積に対する貯留効率が低下するおそれがある。逆に、タンク1の平均高さが上記上限を超えると、タンク1上部の開口からタンク1内の適切な位置に水噴射モジュール3を配置することができないおそれがある。
【0030】
また、このようなタンク1に貯留される汚染水は、本発明によりダスト発生を防止する物質としてどのような汚染物質を含むものであってもよいが、典型的には放射性物質、特に放射性ストロンチウムを含む放射性汚染水とされる。
【0031】
タンク1に貯留される汚染水の汚染物質濃度としては、特に限定されないが、例えば500Bq/cc以上500,000Bq/cc以下とされる。
【0032】
<吸上げポンプ>
吸上げポンプ2は、タンク1上部の開口からの挿入によりタンク1内に配設される。この開口からの挿入は、例えば吸上げポンプ2をワイヤー等で吊り下ろすことにより行われる。この吸上げポンプ2としては、水中ポンプを使用することが好ましい。中でも、タンク1の底部に着床して配置され、その下部から周囲の水を吸い込んで送出する公知の低水位排水用水中ポンプが特に好適に使用される。このように低水位排水用水中ポンプを使用することにより、タンク1下部に不可避的に残留する汚染水量を低減することができる。
【0033】
吸上げポンプ2の幅及び奥行きの下限としては、40cmが好ましく、50cmがより好ましい。一方、吸上げポンプ2の幅及び奥行きの上限としては、80cmが好ましく、70cmがより好ましい。吸上げポンプ2の幅又は奥行きが上記下限未満であると、タンク1上部の開口を介してタンク1下部の残留汚染水をバッファータンク6に移送できる能力が得られないおそれがある。逆に、吸上げポンプ2の幅又は奥行きが上記上限を超えると、吸上げポンプ2をタンク1上部の開口から挿入できないおそれがある。
【0034】
吸上げポンプ2の吸上げ能力の下限としては、10m/時間が好ましく、12m/時間がより好ましい。一方、上記吸上げ能力の上限としては、20m/時間が好ましく、15m/時間がより好ましい。上記吸上げ能力が上記下限に満たないと、汚染水のバッファータンク6への移送に要する時間が長くなりすぎるおそれがある。逆に、上記吸上げ能力が上記上限を超えると、吸上げポンプ2が大きくなりすぎ、吸上げポンプ2をタンク1上部の開口から挿入できないおそれがある。
【0035】
<水噴射モジュール>
水噴射モジュール3は、浄化された汚染水が供給される浄化水供給配管8の先端に固定され、浄化された汚染水の流入路を画定する固定部22と、この固定部22に浄化された汚染水の流入方向と平行な第1軸Cを中心に回転可能に支持される胴部23と、上記第1軸Cと交差し、胴部23への浄化された汚染水の流入方向と垂直な第2軸Cを中心に回転可能に支持される腕部24と、この腕部24に配設され、浄化された汚染水を噴射する2つのノズル25とを有する。
【0036】
また、水噴射モジュール3は、ノズルの方向を可変とする首振り機構26を有する。この首振り機構26は、腕部24を胴部23に対して連続的に回転させると共に、この腕部24の回転数に比例する速度で胴部23を固定部22に対して連続的に回転させることにより、ノズル25を水噴射モジュール3への浄化された汚染水の流入方向の第1軸C及び流入方向と垂直な第2軸Cを中心に連続的に回転させる。これにより、水噴射モジュール3は、浄化された汚染水の噴流をタンク1の内面全体に当接させる。つまり、水噴射モジュール3により噴出される浄化された汚染水は、側壁内面と共に天板内面全体にも当接する。
【0037】
さらに水噴射モジュール3は、胴部23の固定部22に対する回転を規制することで上記首振り機構26によるノズル25の回転速度を規制する調速機構27を有する。
【0038】
この水噴射モジュール3への給水圧力の下限としては、0.3MPaが好ましく、0.5MPaがより好ましい。一方、水噴射モジュール3への給水圧力の上限としては、1.5MPaが好ましく、1.2MPaがより好ましい。水噴射モジュール3への給水圧力が上記下限に満たないと、水噴射モジュール3からの浄化された汚染水の噴出速度が不十分となり、浄化された汚染水をタンク1の側壁内面の遠い位置に当接させられないおそれがある。逆に、水噴射モジュール3への給水圧力が上記上限を超えると、水噴射モジュール3並びに水噴射モジュール3への配管等に耐圧性が要求され、ダスト発生防止装置が不必要に高価となるおそれがある。
【0039】
(固定部)
固定部22は、浄化水供給配管8に接続するためのフランジ28と、浄化された汚染水が流入する流入路29と、流入路29を通過後の浄化された汚染水を径方向外側に流出させる複数の流出口30とを有する。
【0040】
(胴部)
胴部23は、流出口30から径方向に流出する浄化された汚染水が流通し、水噴射モジュール3への浄化された汚染水の流入方向(第1軸C)と垂直な第2軸Cに沿って伸びる内部流路31を有する。
【0041】
(腕部)
腕部24は、内部流路31通過後の浄化された汚染水を2つのノズル25に分配する。
【0042】
(ノズル)
ノズル25は、図3に示すように、腕部24に対して第2軸Cから偏心して配設され、浄化された汚染水を噴射した反動により腕部24を回転させるよう配設されている。
【0043】
これらのノズル25としては、浄化された汚染水をできるだけ拡散させずに直線的に噴射するものが好ましい。ノズル25から直線的に浄化された汚染水を噴出することにより、タンク1の側壁内面に噴き付けられた後の浄化された汚染水が、タンク1の側壁内面に沿って連続的な水膜を形成するように拡がる。
【0044】
ノズル25からの浄化された汚染水の噴出速度の下限としては、10m/sが好ましく、20m/sがより好ましく、30m/sがさらに好ましい。一方、ノズル25からの浄化された汚染水の噴出速度の上限としては、100m/sが好ましく、80m/sがより好ましく、60m/sがさらに好ましい。ノズル25からの浄化された汚染水の噴出速度が上記下限に満たないと、ノズル25から噴射した後の浄化された汚染水がタンク1の側壁内面の隅々まで届かないおそれがある。逆に、ノズル25からの浄化された汚染水の噴出速度が上記上限を超えると、ダスト発生防止装置が不必要に高価となるおそれがある。
【0045】
ノズル25から噴射される浄化された汚染水の断面積拡大率の上限としては、2倍/mが好ましく、1.5倍/mがより好ましく、1.3倍/mがさらに好ましい。一方、ノズル25から噴射される浄化された汚染水の断面積拡大率の下限としては特に限定されないが、理論上1倍/mが最小である。ノズル25から噴射される浄化された汚染水の断面積拡大率が上記上限を超えると、タンク1の側壁内面に噴き付けられた後の浄化された汚染水が不連続に拡がり、タンク1の側壁内面全体に濡れ拡がらせることが容易でなくなるおそれがある。なお、「浄化された汚染水の断面積拡大率」は、ノズルから水平に水を噴射し、ノズル先端からの水平距離が10mの位置において、浄化された汚染水の噴射方向に垂直な平面内で圧力センサにより浄化された汚染水を受けた際に測定される圧力が最大値の90%以上となる領域の面積をS(mm)、ノズルの開口面積をS(mm)として、(S/S0.1で表わされる値である。ここで用いる圧力センサとしては、直径3mmの円形の受圧面を有するものとする。
【0046】
ノズル25の開口の円相当径の下限としては、3mmが好ましく、5mmがより好ましく、7mmがさらに好ましい。一方、ノズル25の開口の円相当径の上限としては、15mmが好ましく、12mmがより好ましく、10mmがさらに好ましい。ノズル25の開口の円相当径が上記下限に満たないと、十分な水量を得ることができないおそれがある。逆に、ノズル25の開口の円相当径が上記上限を超えると、十分な噴出速度を得ることができないおそれがある。なお、「円相当径」とは、面積が等しい真円の直径を意味する。
【0047】
ノズル25からの浄化された汚染水の噴出量の下限としては、各ノズル当たり2m/hが好ましく、5m/hがより好ましい。一方、ノズル25からの浄化された汚染水の噴出量の上限としては、各ノズル当たり30m/hが好ましく、15m/hがより好ましい。ノズル25からの浄化された汚染水の噴出量が上記下限に満たないと、タンク1の側壁内面に噴き付けたときに浄化された汚染水が側壁内面に沿って十分に拡がらず、タンク1の側壁内面に浄化された汚染水が付着しない領域ができるおそれがある。逆に、ノズル25からの浄化された汚染水の噴出量が上記上限を超えると、ダスト防止のための浄化された汚染水の使用量が増加するおそれがある。
【0048】
(首振り機構)
首振り機構26は、水噴射モジュール3に圧送される浄化された汚染水の水圧を原動力として、水噴射モジュール3への浄化された汚染水の流入方向と平行な第1軸C及び上記流入方向と垂直な第2軸Cを中心にノズル25を連続的に回転させるよう構成される。つまり、首振り機構26は、ノズル25の偏心により水圧の反動が第2軸C周りの回転方向に作用することを利用して、ノズル25を第1軸C及び第2軸Cを中心に連続的に回転させるよう構成される。
【0049】
この首振り機構26の具体的な構成としては、図2に示すように、腕部24の外周に配設される転動ベベルギア32と、この転動ベベルギア32が咬合するよう固定部22の外周に配設される案内ベベルギア33とを有する。
【0050】
首振り機構26は、この構成により、ノズル25を支持する腕部24が第2軸Cを中心に回転するにつれ、転動ベベルギア32と案内ベベルギア33とのギア比に応じた角度だけ腕部24を第1軸Cを中心に回転させる。
【0051】
(調速機構)
調速機構27は、固定部22の流入路29内に同軸に配設されるタービン34と、胴部23の内部に配設され、タービン34の回転を減速して出力する減速機35と、この減速機35により駆動される従動ギア36と、この従動ギア36が咬合するよう固定部22の外周に配設される規制ギア37とを有する。
【0052】
減速機35は、タービン34と同軸で一体に回転する第1ウォーム38と、この第1ウォーム38に咬合するよう胴部23内に支持される第1ウォームホイール39と、この第1ウォームホイール39と同軸で一体に回転する第2ウォーム40と、この第2ウォーム40に咬合するよう胴部23内に支持され従動ギア36と同軸で一体に回転する第2ウォームホイール41とを有する。
【0053】
この調速機構27は、流入路29における水の流速に応じたタービン34の回転数に比例する速度で従動ギア36を駆動することによって、ノズル25からの噴射水量に応じた速度で胴部23を固定部22に対して回転させ、首振り機構26の速度を調節する。より詳しくは、調速機構27は、首振り機構26が従動ギア36をより速い速度で回転させようとしても、ウォーム機構(38,39,40,41)を有することによって、従動ギア36に加えられる回転力を制動する。
【0054】
水噴射モジュール3は、上記首振り機構26及び調速機構27を備えることにより、ノズル25から噴射する浄化された汚染水をタンク1の内面全面に順次噴き付けていくことによって、浄化された汚染水をタンク1の側壁内面全体に当接させる。
【0055】
この水噴射モジュール3によってタンク1の側壁内面に噴射される浄化された汚染水の中心位置の平均ピッチの下限としては、10cmが好ましく、20cmがより好ましい。一方、上記平均ピッチの上限としては、1.5mが好ましく、1mがより好ましい。上記平均ピッチが上記下限に満たないと、タンク1の側壁内面全体に浄化された汚染水を噴き付け終わるまでに必要以上に時間がかかるおそれがある。逆に、上記平均ピッチが上記上限を超えると、タンク1の側壁内面に浄化された汚染水が付着しない領域が生じるおそれがある。なお、「平均ピッチ」とは、浄化された汚染水の中心位置の隣接し合う略平行な軌跡の間隔であって一方の軌跡上の一点から他方の軌跡への垂直距離の平均値を意味する。また、「略平行」とは、両者のなす角度が30°以下、好ましくは15°以下であることをいう。
【0056】
この水噴射モジュール3によってタンク1の側壁内面に噴射される浄化された汚染水の中心位置の最大間隔の下限としては、20cmが好ましく、30cmがより好ましい。一方、上記最大間隔の上限としては、2mが好ましく、1.5mがより好ましい。上記最大間隔が上記下限に満たないと、タンク1の内面全体に浄化された汚染水を噴き付け終わるまでに必要以上に時間がかかるおそれがある。逆に、上記最大間隔が上記上限を超えると、タンク1の側壁内面に浄化された汚染水が付着しない領域が生じるおそれがある。なお、「最大間隔」とは、浄化された汚染水の中心位置の全ての軌跡間の最大離間距離を意味し、軌跡間の交点での間隔はゼロとする。
【0057】
<制御部>
制御部4は、吸上げポンプ2及び水噴射モジュール3を制御する。具体的には、制御部4が、吸上げポンプ2により汚染水を吸上げさせ、水噴射モジュール3によりタンク1の側壁内面に浄化した汚染水を噴射させる制御を行う。また、制御部4は、この浄化した汚染水噴射後、上記側壁内面の少なくとも特定の領域へ所定のインターバルを有するように水噴射モジュール3により洗浄水として浄化した汚染水を再噴射させる制御を行う。なお、この制御部4の制御による当該ダスト発生防止装置の動作の詳細については後述する。
【0058】
<吸着剤>
吸着剤5は、吸上げポンプ2により吸上げられる汚染水の流通経路に配設され、吸上げポンプ2で吸上げるタンク1下部の残留汚染水を浄化する。これにより、放射性汚染物質濃度が低減された汚染水が、汚染水供給配管7を介してバッファータンク6に移送される。ここで、吸上げポンプ2により吸上げられる汚染水が流通する汚染水供給配管7は、後述するように一部がタンク1の外部を通るよう配設されるため、このタンク1の外部を通る汚染水供給配管7の区間に放射性汚染物質濃度の高い汚染水が流通する場合、汚染水供給配管7に厳重な汚染水の漏洩対策が必要となる。従って、タンク1の外部を通る汚染水供給配管7の区間に放射性汚染物質濃度の高い汚染水が流通しないようにするため、図1に示すように吸上げポンプ2とタンク1上部の開口との間のタンク1内に吸着剤5を配設することが好ましい。このような吸着剤5のタンク1内への配設は、例えば吸着剤5を収容する吸着塔を吸上げポンプ2上部に予め接続しておき、ポンプ2と共にタンク1上部の開口からワイヤー等で吊り下ろすことにより行われる。
【0059】
タンク1下部の残留汚染水は、放射性汚染物質として主に放射性ストロンチウムを含むので、上記吸着剤5としては、ストロンチウムを選択的に吸着する吸着剤が好ましい。ストロンチウムを選択的に吸着する吸着剤としては、例えばカルシウム及びマグネシウムを透過せず、ストロンチウムを選択的に透過する膜を表面に有し、ストロンチウムを吸着する無機材料を内部に有するカプセル状の吸着剤が使用できる。上記ストロンチウムを選択的に透過する膜としては、例えばアルギン酸カルシウム膜等が挙げられる。また、ストロンチウムを吸着する無機材料としては、A型ゼオライト、X型ゼオライト等が挙げられる。このようなストロンチウム用吸着剤は、浮遊物質及び油分を濾し取る濾材としても機能する多孔質体に担持させることが好ましい。このような担持体としては、活性炭、ゼオライト等が挙げられる。
【0060】
上記吸着剤5を収容する吸着塔の幅及び奥行きの下限としては、15cmが好ましく、20cmがより好ましい。一方、吸着塔の幅及び奥行きの上限としては、80cmが好ましく、70cmがより好ましい。吸着塔の幅又は奥行きが上記下限未満であると、吸着剤5の体積を所定以上に大きくできず、タンク1内面への噴射に必要な量の汚染水を浄化できないおそれがある。逆に、吸着塔の幅又は奥行きが上記上限を超えると、吸着剤が局所的に破過し易くなり吸着剤の利用効率が低下するおそれや、吸着塔が大きくなりすぎ吸着塔をタンク1上部の開口から挿入できないおそれがある。
【0061】
<バッファータンク>
バッファータンク6は、タンク1の上部の開口からの挿入によりタンク1内に配設される。この開口からの挿入は、例えばバッファータンク6をワイヤー等で吊り下ろすことにより行われる。このバッファータンク6は、吸着剤5により浄化された汚染水を貯留する。また、バッファータンク6はタンク1内に配設されるので、汚染水の漏洩対策を簡易なものとすることができる。従って、このバッファータンク6として、例えば折り畳み式のものを用いることができる。
【0062】
上記吸上げポンプ2及び吸着剤5は、タンク1上部の開口から挿入する関係でこれらのサイズが制限される。そのため、水噴射モジュール3への単位時間当たりの供給水量を上回る吸上げ能力を有する吸上げポンプ2や、上記供給水量を上回る浄化能力を有する吸着剤5を配設できない場合が多い。このような吸上げ能力や浄化能力が上記供給水量を下回る吸上げポンプ2や吸着剤5を用いる場合でも、当該ダスト発生防止装置は吸着剤5で浄化した汚染水を貯留するバッファータンク6及び供給ポンプ9を備えているので、上記供給水量の浄化した汚染水を水噴射モジュール3へ供給することができる。
【0063】
バッファータンク6の幅及び奥行きの下限としては、50cmが好ましく、60cmがより好ましい。一方、バッファータンク6の幅及び奥行きの上限としては、80cmが好ましく、75cmがより好ましい。バッファータンク6の幅又は奥行きが上記下限未満であると、タンク1内面への噴射に十分な量の浄化された汚染水を貯留できないおそれがある。逆に、バッファータンク6の幅又は奥行きが上記上限を超えると、バッファータンク6をタンク1上部の開口から挿入できないおそれがある。
【0064】
浄化された汚染水を貯留可能なバッファータンク6の容量の下限としては、3mが好ましく、3.5mがより好ましい。一方、バッファータンク6の容量の上限としては、5mが好ましく、4.5mがより好ましい。バッファータンク6の容量が上記下限に満たないと、タンク1の側壁内面全体に当接させる量の浄化された汚染水をバッファータンク6に貯留できないおそれがある。逆に、バッファータンク6の容量が上記上限を超えると、バッファータンク6の幅又は奥行きが大きくなりすぎ、タンク1上部の開口からバッファータンク6を挿入できないおそれがある。
【0065】
<汚染水供給配管>
汚染水供給配管7は、ポンプ2により吸上げられつつ吸着剤5により浄化されるタンク1内の残留汚染水をバッファータンク6へ移送するための配管である。汚染水供給配管7は、中間部がタンク1外部を通るようタンク1上部の開口を介して配設される。
【0066】
<浄化水供給配管>
浄化水供給配管8は、バッファータンク6に貯留される浄化された汚染水を水噴射モジュール3へ供給するための配管である。浄化水供給配管8は、中間部がタンク1外部を通るようタンク1上部の開口を介して配設される。
【0067】
<供給ポンプ>
供給ポンプ9は、浄化水供給配管8を介してバッファータンク6に貯留される浄化された汚染水を圧送させることにより、浄化された汚染水を水噴射モジュール3に供給する。この供給ポンプ9は、タンク1の外部に配設される。
【0068】
当該ダスト発生防止装置は、タンク1の内面へ最初に噴射する汚染水として、バッファータンク6に貯留される浄化された汚染水を用いる。また、当該ダスト発生防止装置は、タンク1の内面へ再噴射する洗浄水としても、バッファータンク6に貯留される浄化された汚染水を用いる。上記構成を有する当該ダスト発生防止装置の動作について以下に説明する。
【0069】
当該ダスト発生防止装置は、まず制御部4が、吸上げポンプ2によりタンク1下部の残留汚染水を吸上げさせることにより、吸上げ経路に配設した吸着剤5によりこの汚染水を浄化させると共に、この浄化された汚染水をバッファータンク6に貯留させる。次に、制御部4が供給ポンプ9を制御することにより、浄化水供給配管8を介してバッファータンク6内の浄化された汚染水を水噴射モジュール3へ供給させる。この浄化された汚染水が水噴射モジュール3に供給されると、水噴射モジュール3からタンク1内面に当接するよう浄化された汚染水が噴射される。制御部4は、このように水噴射モジュール3により浄化された汚染水を噴射させた後、所定時間経過後、供給ポンプ9を制御することにより、再度水噴射モジュール3から浄化された汚染水をタンク1内面に噴射させる。ここで、タンク1の側壁内面の特定の領域への最初の噴射による浄化された汚染水の当接後、所定のインターバルを経てその領域へ再噴射による浄化された汚染水が当接するよう上記所定時間が設定される。制御部4は、この設定された所定時間に基づいて水噴射モジュール3による上記浄化された汚染水の噴射及び再噴射を制御する。
【0070】
制御部4が、水噴射モジュール3による浄化された汚染水の噴射及び再噴射をこのように制御するので、タンク1の側壁内面の特定の領域において、最初の噴射による浄化された汚染水当接後の上記所定のインターバルの間に、側壁内面に残留するストロンチウムがこの領域に付着した浄化された汚染水中に溶解する。この浄化された汚染水中にストロンチウムが溶解した後に、この領域に浄化された汚染水が再噴射されるため、ストロンチウムが溶解した浄化された汚染水が再噴射による浄化された汚染水により洗い流される。なお、上記水噴射モジュール3は、ノズル25が連続的に回転して浄化された汚染水の噴流をタンク1の内面全体に当接させるので、上述のように制御部4がタンク1の側壁内面への噴射及び再噴射を制御することで、タンク1の側壁内面の全面において、最初の噴射による浄化された汚染水の当接後、所定のインターバルを経て再噴射による浄化された汚染水が当接する。これにより、当該ダスト発生防止装置は、タンク1の側壁内面の全面に残留する放射性ストロンチウムを効果的に除去できるので、タンク1解体時の放射性ダストの発生を防止できる。
【0071】
また、当該ダスト発生防止装置は、ストロンチウムの溶解に必要な量の浄化された汚染水を噴射すると共に、タンク1の側壁内面に付着する浄化された汚染水を洗い流すために必要な量の浄化された汚染水を再噴射すればよいので、タンク内の洗浄に伴って増加する汚染水の量を抑制できる。
【0072】
上記所定のインターバルの下限としては、10分が好ましく、15分がより好ましい。一方、上記所定のインターバルの上限としては、30分が好ましく、20分がより好ましい。上記所定のインターバルが上記下限に満たないと、上記側壁内面に残留するストロンチウムが最初の噴射により側壁内面に付着する浄化された汚染水中に十分に溶解せず、側壁内面のストロンチウムを十分に除去できないおそれがある。逆に、上記所定のインターバルが上記上限を超えると、最初の噴射により上記側壁内面に付着する浄化された汚染水が乾燥し始め、この浄化された汚染水に溶解したストロンチウムが析出して上記側壁内面に残留するおそれがある。
【0073】
また、当該ダスト発生防止装置は、放射性ダストの発生を防止するためのタンク1内面へ噴射する洗浄水として、タンク1内の残留汚染水を浄化した水を使用するので、放射性汚染物質を含まない外部の水の使用量を低減できる。
【0074】
[ダスト発生防止方法]
当該ダスト発生防止方法は、図1のダスト発生防止装置を用いて行われるダスト発生防止方法である。当該ダスト発生防止方法は、タンク1内に配設される吸上げポンプ2により汚染水排水後のタンク1下部から残留汚染水を吸い上げる工程(吸上げ工程)と、タンク1内に配設される水噴射モジュール3によりタンク1の側壁内面に浄化された汚染水を噴射する工程(噴射工程)と、水噴射モジュール3によりタンク1の側壁内面に、洗浄水として浄化された汚染水を再噴射する工程(再噴射工程)とを備える。当該ダスト発生防止方法は、上記側壁内面の少なくとも特定の領域において、噴射工程による噴射と再噴射工程による再噴射との間に所定のインターバルができるようにこれらの工程を行う。
【0075】
<吸上げ工程>
上記吸上げ工程では、制御部4が吸上げポンプ2を制御し、タンク1内の残留汚染水を吸上げると共に、吸着剤5により吸上げ経路を流通する汚染水を浄化する。この浄化された汚染水は、汚染水供給配管7を介してバッファータンク6へ移送され、バッファータンク6内に貯留される。
【0076】
<噴射工程>
上記噴射工程では、水噴射モジュール3により汚染水排水後のタンク1の側壁内面へ汚染水を噴射する。なお、噴射工程では、タンク1の側壁内面に噴射する上記汚染水として、バッファータンク6内に貯留する浄化された汚染水を用いる。噴射工程では、具体的には、制御部4が供給ポンプ9を制御して、バッファータンク6内の浄化された汚染水を吸上げ、浄化水供給配管8内を圧送させることにより、水噴射モジュール3に供給する。また、制御部4は、この浄化された汚染水を水噴射モジュール3によりタンク1の側壁内面に噴射させる。ここで制御部4は、水噴射モジュール3の噴射による浄化された汚染水の当接及び濡れ拡がりによりタンク1の側壁内面全体が浄化された汚染水で濡れるよう、上記浄化された汚染水を連続的に噴射させる。
【0077】
なお、上記噴射工程で噴射する汚染水として、例えばタンク1内の残留汚染水、他の汚染水貯留用タンクから排出した汚染水等を浄化せずにそのまま用いてもよい。
【0078】
<再噴射工程>
上記再噴射工程では、上記噴射工程後に、水噴射モジュール3によりタンク1の側壁内面へ洗浄水を噴射する。なお、再噴射工程では、タンク1の側壁内面に噴射する上記洗浄水として、バッファータンク6内に貯留する浄化された汚染水を用いる。再噴射工程では、具体的には、上記噴射工程と同様の方法により、制御部4が水噴射モジュール3により浄化された汚染水をタンク1の側壁内面に噴射させる。ここで制御部4は、上記噴射工程での浄化された汚染水の噴射後、タンク1の側壁内面の特定の領域へ所定のインターバルを有するように水噴射モジュール3により浄化された汚染水を再噴射させる。
【0079】
上記噴射工程及び再噴射工程での水噴射モジュール3の噴射による上記側壁内面への浄化された汚染水の平均当接量の下限としては、それぞれ150cc/mが好ましく、200cc/mがより好ましい。一方、上記浄化された汚染水の平均当接量の上限としては、それぞれ200L/mが好ましく、100L/mがより好ましく、50L/mがさらに好ましい。噴射工程での浄化された汚染水の平均当接量が上記下限に満たないと、タンク1の側壁内面に残留するストロンチウムが上記側壁内面に付着する浄化された汚染水中に十分に溶解しないおそれがある。また、再噴射工程での浄化された汚染水の平均当接量が上記下限に満たないと、ストロンチウムが溶解した側壁内面に付着する浄化された汚染水を十分に洗い流せないおそれがある。従って、浄化された汚染水の平均当接量がそれぞれ上記下限以上となる量の浄化された汚染水を噴射させることで、噴射工程及び再噴射工程を複数回繰り返さなくても、噴射工程の後に再噴射工程を一度行うことによりタンク1の側壁内面に残留する放射性ストロンチウムを効果的に除去できる。つまり、平均当接量が上記下限以上となる量の浄化された汚染水を噴射させることで、上記噴射工程及び再噴射工程をそれぞれ1回行うだけで、タンク1の側壁内面に残留する放射性ストロンチウムを十分に除去できる。逆に、上記浄化された汚染水の平均当接量が上記上限を超えると、タンク1内面に噴射する浄化された汚染水量が多くなりすぎるおそれや、噴射に要する時間が長くなりすぎるおそれがある。
【0080】
上記噴射工程でタンク1の側壁内面に付着した浄化された汚染水中に生成される放射性汚染物質が特定できる場合、下記式(1)を満たすようにすることで再噴射工程での水噴射モジュール3の噴射による上記側壁内面への浄化された汚染水の平均当接量をさらに低減でき、浄化された汚染水の噴射量をさらに抑制することができる。すなわち、除染処理のために使用した海水の塩分濃度に対する水噴射モジュール3で噴射する汚染水の塩分濃度の比をA[%]、海水中のストロンチウム濃度をB[mg/L]、上記側壁内面に付着した後、この浄化された汚染水中に生成されるストロンチウム化合物の分子量をC、このストロンチウム化合物の溶解度をD[mg/L]、上記再噴射工程での水噴射モジュール3の噴射による上記側壁内面への浄化された汚染水の平均当接量をE[cc/m]としたとき、上記平均当接量Eが下記式(1)を満たすとよい。なお、ここでは、噴射工程でタンク1の側壁内面に付着した浄化された汚染水の平均膜厚を0.1mmとしている。また、下記式(1)における数値「87.6」は、ストロンチウムの分子量である。
E≧(A×B×C)/(87.6×D) ・・・(1)
【0081】
例えば噴射工程でタンク1の側壁内面に付着した浄化された汚染水中にSrCOが生成されると特定できるとき、この汚染水がすべて海水を除染に使用した汚染水である場合、すなわちA値が100%の場合、SrCOの分子量は147.6、溶解度は11mg/Lであり、海水中のストロンチウム濃度Bが8mg/Lと仮定すると、上記式(1)より、再噴射工程での浄化された汚染水の平均当接量Eは123cc/mと算出される。また、例えば噴射工程でタンク1の側壁内面に付着した浄化された汚染水中にSrSOが生成されると特定できるとき、SrSOの分子量は183.7、溶解度は114mg/Lであり、上記式(1)より、再噴射工程での浄化された汚染水の平均当接量Eは15cc/mと算出される。このように、噴射工程で浄化された汚染水がタンク1の側壁内面に付着した後、その付着の浄化された汚染水中に生成される放射性汚染物質が特定できる場合、再噴射工程での水噴射モジュール3による噴射量を平均当接量が上記式(1)より算出される最小の平均当接量Eとなるような量とすることで、再噴射工程での浄化された汚染水の噴射量を大幅に低減できる。
【0082】
当該ダスト発生防止方法は、上述したようにタンク1の側壁内面の特定の領域において、上記噴射工程での浄化された汚染水の噴射と再噴射工程での浄化された汚染水の噴射との間に所定のインターバルができるようにこれらの工程を行う。例えば、噴射工程での噴射開始時の噴射方向と再噴射工程での噴射開始時の噴射方向とを同じとし、噴射工程での噴射開始時点から上記所定のインターバル経過後に再噴射工程での噴射を開始するよう制御するとよい。これにより、当該ダスト発生防止方法は、タンク1の側壁内面の特定の領域において、噴射工程での噴射と再噴射工程での噴射との間に上記所定のインターバルを確保させることができる。ここで、上記水噴射モジュール3は、ノズル25が連続的に回転して浄化された汚染水の噴流をタンク1の内面全体に当接させるので、上述のようにタンク1の側壁内面に対して噴射工程及び再噴射工程を行うことで、タンク1の側壁内面の全面において、浄化された汚染水の噴射後、所定のインターバルを経て再噴射による浄化された汚染水が当接する。上記制御は、具体的には、まず水噴射モジュール3により噴射工程での噴射を行わせ、タンク1の側壁内面全体に浄化された汚染水が付着した時点で噴射を停止させる。その後、上記制御は、噴射工程での噴射開始時点から上記インターバルが経過した時点に、水噴射モジュール3による再噴射工程の噴射を開始させる。
【0083】
このように、当該ダスト発生防止方法は、タンク1の側壁内面の少なくとも特定の領域において、噴射工程での噴射と再噴射工程での噴射との間に所定のインターバルができるようにこれらの工程を行う。これにより、当該ダスト発生防止方法は、上記側壁内面に残留する放射性ストロンチウムを効果的に除去できるのでタンク1解体時の放射性ダストの発生を防止できる。
【0084】
なお、タンク1の側壁内面の少なくとも特定の領域への噴射間隔が上記所定のインターバル以上となるよう水噴射モジュール3のノズル25を回転させることにより、上記噴射工程及び再噴射工程の制御を容易にすることができる。水噴射モジュール3は上述した構造を有するので、上記噴射間隔の期間のノズル25の回転によりタンク1の内面全体に亘る洗浄水の噴射が行える。従って、この場合、水噴射モジュール3のノズル25を所定時間回転させるという簡易な制御のみで、上記噴射工程に続けて再噴射工程を行わせることができる。なお、「特定の領域への噴射間隔」とは、連続的に回転するノズルにより特定の領域に浄化された汚染水が噴射された時点から、次にその領域に浄化された汚染水が噴射される時点までの期間を意味する。
【0085】
タンク1の側壁内面のストロンチウムを効率よく除去するためには、上記再噴射工程で噴射する浄化された汚染水の放射性ストロンチウム濃度は低いほど好ましい。このため、浄化された汚染水の放射性ストロンチウム濃度の具体的な上限としては、吸着剤5を流通して浄化できる100Bq/ccが好ましく、50Bq/ccがより好ましい。
【0086】
また、上記再噴射工程で再噴射する洗浄水として、タンク1内の汚染水を浄化した水以外の放射性ストロンチウム濃度が上記上限以下の他の水を用いてもよい。例えば上記洗浄水として、放射性汚染物質を含まない外部の水、雨水、海水、地下水等を用いることができる。上記洗浄水として雨水、海水、地下水等を用いることにより、放射性汚染物質を含まない外部の水の使用量を低減できる。なお、雨水、海水、地下水等を用いる場合、濾過により不純物を除去して用いることが好ましい。また、タンク1の天板に溜まった雨水を上記洗浄水として用いる場合、タンク1周辺のホースの取り回しの認可が不要となるので、ダスト発生防止のための設備の設置期間を短縮できる。従って、上記再噴射工程で再噴射する洗浄水として、タンク1の天板に溜まった雨水を濾過して用いることが特に好ましい。
【0087】
また、上記噴射工程で噴射する汚染水及び再噴射工程で噴射する洗浄水のいずれにも、タンク1内の汚染水を浄化した水以外の水を用いる場合、図1のダスト発生防止装置において、吸着剤5を省略できる。
【0088】
[その他の実施形態]
上記実施形態は、本発明の構成を限定するものではない。従って、上記実施形態は、本明細書の記載及び技術常識に基づいて上記実施形態各部の構成要素の省略、置換又は追加が可能であり、それらは全て本発明の範囲に属するものと解釈されるべきである。
【0089】
例えば上記実施形態では、バッファータンク及び供給ポンプを配設しているが、吸上げポンプの吸上げ能力及び吸着剤の浄化能力が水噴射モジュールへの単位時間当たりの供給水量を上回る場合、吸上げポンプにより浄化した汚染水を直接水噴射モジュールへ供給できるので、バッファータンク及び供給ポンプを省略できる。また、1つの吸上げポンプの吸上げ能力及び1つの吸着剤の浄化能力が水噴射モジュールへの単位時間当たりの供給水量を下回る場合でも、複数の吸上げポンプの合計吸上げ能力及び複数の吸着剤の合計浄化能力が上記供給水量を満たすときは、複数の吸上げポンプ及び複数の吸着剤を配設することにより、バッファータンク及び供給ポンプを省略できる。具体的には、放射性汚染水を貯留するタンク(以下、汚染水貯留タンクと呼ぶ)上部の複数の開口からの挿入により複数の吸上げポンプ及び複数の吸着剤を汚染水貯留タンク内に配設し、これらの複数の吸上げポンプ及び複数の吸着剤により浄化した汚染水を同時に水噴射モジュールへ供給させるとよい。
【0090】
また、上記実施形態では、汚染水貯留タンク内に1つのバッファータンクを配設する構成について説明したが、複数のバッファータンクを汚染水貯留タンク内に配設してもよい。この場合、例えば汚染水貯留タンク上部の複数の開口から複数のバッファータンクを汚染水貯留タンク内に挿入する。このようにすることで、外形サイズがより小さいバッファータンクを用いることができ、バッファータンクの汚染水貯留タンク内への挿入が容易となる。
【0091】
また、上記実施形態では、水噴射モジュールとして、複数のノズル及び首振り機構を有する三次元ノズル式の洗浄用モジュールを用いることとしたが、汚染水貯留タンクの側壁内面に洗浄水を噴射できるものであれば、これ以外の洗浄用モジュールを用いてもよい。例えば、水噴射モジュールとして、回転式のスプレーボールを用いるような二次元ノズル式の洗浄用モジュールや、水平方向に噴射する一次元ノズル式の洗浄用モジュールを用いてもよい。なお、上記一次元ノズル式の洗浄用モジュールを用いる場合、例えば水平方向に洗浄水を噴射させながらノズルを鉛直方向に移動させることにより、汚染水貯留タンクの側壁内面全体に汚染水又は洗浄水を噴射することができる。
【0092】
また、上記実施形態では、水噴射モジュールにより側壁内面の全面に汚染水及び洗浄水を噴射させる構成について説明したが、水噴射モジュールにより側壁内面の一部の領域のみに汚染水及び洗浄水を噴射させる構成としてもよい。このように側壁内面の一部の領域のみに汚染水及び洗浄水を噴射させる場合でも、その領域のタンク内面に残留する放射性物質を除去できるので、タンク解体時の放射性ダストの発生量を低減できる。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明のダスト発生防止装置及びダスト発生防止方法は、汚染水の増加を抑制しつつ、タンク解体時の放射性ダストの発生を防止できるので、特に事故後の原子力発電所において発生した汚染水を貯留する汚染水タンクの解体時に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0094】
1 タンク
2 吸上げポンプ
3 水噴射モジュール
4 制御部
5 吸着剤
6 バッファータンク
7 汚染水供給配管
8 浄化水供給配管
9 供給ポンプ
22 固定部
23 胴部
24 腕部
25 ノズル
26 首振り機構
27 調速機構
28 フランジ
29 流入路
30 流出口
31 内部流路
32 転動ベベルギア
33 案内ベベルギア
34 タービン
35 減速機
36 従動ギア
37 規制ギア
38 第1ウォーム
39 第1ウォームホイール
40 第2ウォーム
41 第2ウォームホイール
、C
図1
図2
図3