特許第6563735号(P6563735)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6563735
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】端子金具及び電気接続箱
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/16 20060101AFI20190808BHJP
   H01R 13/11 20060101ALI20190808BHJP
   H01R 11/01 20060101ALI20190808BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
   H02G3/16
   H01R13/11 D
   H01R11/01 R
   H05K7/20 E
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-161086(P2015-161086)
(22)【出願日】2015年8月18日
(65)【公開番号】特開2017-41940(P2017-41940A)
(43)【公開日】2017年2月23日
【審査請求日】2018年7月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】特許業務法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】古屋 宏恭
(72)【発明者】
【氏名】金指 道伸
(72)【発明者】
【氏名】近藤 真海子
【審査官】 木村 励
(56)【参考文献】
【文献】 実公平3−19176(JP,Y2)
【文献】 特開平4−123719(JP,A)
【文献】 特開2014−132547(JP,A)
【文献】 実開平4−55760(JP,U)
【文献】 特開2006−150416(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/16
H01R 11/01
H01R 13/11
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の導電性材料から成る導電板と、
前記導電板の一辺から折り曲げ加工された曲げ板部と、
前記導電板における前記一辺を除いた部分から延出させた端子体と、
を有し、
前記導電板と前記曲げ板部の平面同士を接合させるカシメ接合部を設けることを特徴とした端子金具。
【請求項2】
前記カシメ接合部は、前記端子体における前記導電板側の根元部分に近づけて配置することを特徴とした請求項1に記載の端子金具。
【請求項3】
前記カシメ接合部は、互いに重ね合わせた前記導電板と前記曲げ板部の内の一方に設け、前記導電板と前記曲げ板部の内の前記一方における外方の平面の打ち込み部分を陥没させつつ内方の平面を突出させた一方の凹凸部と、前記導電板と前記曲げ板部の内の他方に設け、前記一方の凹凸部における突出部分を介して前記導電板と前記曲げ板部の内の前記他方における内方の平面を陥没させつつ外方の平面を突出させた他方の凹凸部と、を有し、前記一方の凹凸部における前記突出部分を前記他方の凹凸部における陥没部分に嵌合させることを特徴とした請求項1又は2に記載の端子金具。
【請求項4】
前記カシメ接合部は、互いに重ね合わせた前記導電板と前記曲げ板部の内の少なくとも一方における外方の平面から他方における外方の平面に向けた打ち込み加工によって形成されたものであり、
前記カシメ接合部は、前記一方における外方の平面から前記他方における外方の平面に向けた打ち込み加工を行った場合、前記一方における外方の平面の打ち込み部分を陥没させつつ内方の平面を突出させた第1凹凸部と、該第1凹凸部における突出部分を介して前記他方における内方の平面を陥没させつつ外方の平面を突出させた第2凹凸部と、を有し、前記第1凹凸部における前記突出部分を前記打ち込み加工と共に前記第2凹凸部における陥没部分に嵌合させ、
前記カシメ接合部は、前記他方における外方の平面から前記一方における外方の平面に向けた打ち込み加工を行った場合、前記他方における外方の平面の打ち込み部分を陥没させつつ内方の平面を突出させた第3凹凸部と、該第3凹凸部における突出部分を介して前記一方における内方の平面を陥没させつつ外方の平面を突出させた第4凹凸部と、を有し、前記第3凹凸部における前記突出部分を前記打ち込み加工と共に前記第4凹凸部における陥没部分に嵌合させることを特徴とした請求項1又は2に記載の端子金具。
【請求項5】
前記導電板からは互いに間隔を空けて並列に配置された複数の前記端子体を各々延出させ、
前記カシメ接合部は、少なくとも前記端子体毎に設けることを特徴とした請求項1から4の内の何れか1つに記載の端子金具。
【請求項6】
端子金具と、
前記端子金具が収容される端子収容室と、
を備え、
前記端子金具は、板状の導電性材料から成る導電板と、前記導電板の一辺から折り曲げ加工された曲げ板部と、前記導電板における前記一辺を除いた部分から延出させた端子体と、を有し、前記導電板と前記曲げ板部の平面同士を接合させるカシメ接合部を設けることを特徴とした電気接続箱。
【請求項7】
前記カシメ接合部は、互いに重ね合わせた前記導電板と前記曲げ板部の内の一方に設け、前記導電板と前記曲げ板部の内の前記一方における外方の平面の打ち込み部分を陥没させつつ内方の平面を突出させた一方の凹凸部と、前記導電板と前記曲げ板部の内の他方に設け、前記一方の凹凸部における突出部分を介して前記導電板と前記曲げ板部の内の前記他方における内方の平面を陥没させつつ外方の平面を突出させた他方の凹凸部と、を有し、前記一方の凹凸部における前記突出部分を前記他方の凹凸部における陥没部分に嵌合させることを特徴とした請求項6に記載の電気接続箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子金具及び電気接続箱に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、導電性材料から成る導電板と、この導電板から延出させた端子体と、を有する端子金具が知られている。その端子金具は、例えば、ヒューズボックスやジャンクションボックス等の電気接続箱に収容される。下記の特許文献1には、矩形の導電板と、互いに間隔を空けて並列に配置された複数の音叉端子体と、を有する端子金具としてのバスバが開示されている。端子金具は、相手側端子間との通電に伴い発熱する。例えば、その熱の放熱技術としては、導電板に接着剤で放熱板を貼り合わせ、導電板から放熱板に伝熱させることによって、放熱量を増加させるものが知られている(下記の特許文献2)。また、下記の特許文献3には、導電板の表面に凹凸を形成し、大気との接触面積を増やすことによって放熱量を増加させる、という技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−70462号公報
【特許文献2】特開2006−93404号公報
【特許文献3】実開昭63−137516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の端子金具は、大気に熱を逃がすことで端子体の温度上昇を抑えている。しかしながら、端子金具は、大気の流動性の高い場所に配置されるとは限らず、所望の放熱が為されない場合も考えられる。
【0005】
そこで、本発明は、端子体の温度上昇の抑制効果を高め得る端子金具及び電気接続箱を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する為、本発明に係る端子金具は、板状の導電性材料から成る導電板と、前記導電板の一辺から折り曲げ加工された曲げ板部と、前記導電板における前記一辺を除いた部分から延出させた端子体と、を有し、前記導電板と前記曲げ板部の平面同士を接合させるカシメ接合部を設けることを特徴としている。
【0007】
ここで、前記カシメ接合部は、前記端子体における前記導電板側の根元部分に近づけて配置することが望ましい。
【0008】
また、前記カシメ接合部は、互いに重ね合わせた前記導電板と前記曲げ板部の内の一方に設け、前記導電板と前記曲げ板部の内の前記一方における外方の平面の打ち込み部分を陥没させつつ内方の平面を突出させた一方の凹凸部と、前記導電板と前記曲げ板部の内の他方に設け、前記一方の凹凸部における突出部分を介して前記導電板と前記曲げ板部の内の前記他方における内方の平面を陥没させつつ外方の平面を突出させた他方の凹凸部と、を有し、前記一方の凹凸部における前記突出部分を前記他方の凹凸部における陥没部分に嵌合させることが望ましい。また、前記カシメ接合部は、互いに重ね合わせた前記導電板と前記曲げ板部の内の少なくとも一方における外方の平面から他方における外方の平面に向けた打ち込み加工によって形成されたものであり、前記カシメ接合部は、前記一方における外方の平面から前記他方における外方の平面に向けた打ち込み加工を行った場合、前記一方における外方の平面の打ち込み部分を陥没させつつ内方の平面を突出させた第1凹凸部と、該第1凹凸部における突出部分を介して前記他方における内方の平面を陥没させつつ外方の平面を突出させた第2凹凸部と、を有し、前記第1凹凸部における前記突出部分を前記打ち込み加工と共に前記第2凹凸部における陥没部分に嵌合させ、前記カシメ接合部は、前記他方における外方の平面から前記一方における外方の平面に向けた打ち込み加工を行った場合、前記他方における外方の平面の打ち込み部分を陥没させつつ内方の平面を突出させた第3凹凸部と、該第3凹凸部における突出部分を介して前記一方における内方の平面を陥没させつつ外方の平面を突出させた第4凹凸部と、を有し、前記第3凹凸部における前記突出部分を前記打ち込み加工と共に前記第4凹凸部における陥没部分に嵌合させることが望ましい。
【0009】
また、前記導電板からは互いに間隔を空けて並列に配置された複数の前記端子体を各々延出させ、前記カシメ接合部は、少なくとも前記端子体毎に設けることが望ましい。
【0010】
また、上記目的を達成する為、本発明に係る電気接続箱は、端子金具と、前記端子金具が収容される端子収容室と、を備える。そして、前記端子金具は、板状の導電性材料から成る導電板と、前記導電板の一辺から折り曲げ加工された曲げ板部と、前記導電板における前記一辺を除いた部分から延出させた端子体と、を有し、前記導電板と前記曲げ板部の平面同士を接合させるカシメ接合部を設けることを特徴としている。ここで、前記カシメ接合部は、互いに重ね合わせた前記導電板と前記曲げ板部の内の一方に設け、前記導電板と前記曲げ板部の内の前記一方における外方の平面の打ち込み部分を陥没させつつ内方の平面を突出させた一方の凹凸部と、前記導電板と前記曲げ板部の内の他方に設け、前記一方の凹凸部における突出部分を介して前記導電板と前記曲げ板部の内の前記他方における内方の平面を陥没させつつ外方の平面を突出させた他方の凹凸部と、を有し、前記一方の凹凸部における前記突出部分を前記他方の凹凸部における陥没部分に嵌合させることが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る端子金具及び電気接続箱に収容された端子金具は、端子体に連接させた導電板と、この導電板から折り曲げられた曲げ板部と、を有しており、その導電板と曲げ板部の平面同士をカシメ接合部で接合させている。このため、この端子金具においては、そのカシメ接合部によって、導電板と曲げ板部のそれぞれの表面積を増加させ、導電板と曲げ板部におけるそれぞれの均熱効果を高めることができる。よって、本発明に係る端子金具及び電気接続箱においては、端子体30の温度上昇の抑制効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施形態の端子金具を示す斜視図である。
図2図2は、実施形態の端子金具を示す別角度の斜視図である。
図3図3は、実施形態の端子金具を示す正面図である。
図4図4は、実施形態の端子金具を示す背面図である。
図5図5は、図3のX−X線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明に係る端子金具及び電気接続箱の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0014】
[実施形態]
本発明に係る端子金具及び電気接続箱の実施形態の1つを図1から図5に基づいて説明する。
【0015】
各図の符号1は、本実施形態の端子金具を示す。この端子金具1は、母材となる板状の導電性材料(例えば銅板等の金属板)を所定の展開形状に打ち抜き、これに曲げ加工等を施して、相手側端子100(図1及び図5)や電線(図示略)との接続が可能な所定形状に成形されたものである(図1−4)。その相手側端子100は、例えばリレーやヒューズ等の電子部品101に設けられている。具体的に、本実施形態の端子金具1は、導電板10と曲げ板部20と端子体30とを有する。
【0016】
導電板10と曲げ板部20は、互いに同等の大きさの矩形状に形成され、互いの平面同士を対向させた状態で配置される。曲げ板部20は、その導電板10の一辺(以下、「折り曲げ辺」という。)11から折り曲げ加工された部分である。
【0017】
一方、端子体30は、相手側端子100に対して電気的に接続される部位であり、導電板10における折り曲げ辺11を除いた部分から延出させる。この例示では、導電板10における折り曲げ辺11に対向する辺部12から延出させている。また、この例示では、その辺部12に対する直交方向に延出させている。この端子体30の延出方向は、端子体30の相手側端子100への挿入方向であり、かつ、端子金具1の電気接続箱110(図5)への挿入方向でもある。その電気接続箱110は、例えばジャンクションボックス等のことであり、端子金具1が収容及び保持される端子収容室111と、電子部品101が収容及び保持される電子部品収容室112と、を有する。端子金具1は、例えば、端子収容室111に設けた2つの片部111a等で挟持されることによって、端子収容室111に保持される。
【0018】
端子金具1は、この端子体30を少なくとも1つ備えている。本実施形態では、複数の端子体30を設けているものとして例示する。複数の端子体30は、互いに間隔を空けて並列に配置されており、互いに同一方向を向いた状態で導電板10の辺部12から各々延出させている。
【0019】
具体的に、本実施形態の端子体30としては、タブ状の相手側端子(所謂雄タブ端子)100が内方に挿入されるU字状部31と、このU字状部31に挿入された相手側端子100を挟持する一対の接点部32と、を備えた所謂音叉端子を用いている。
【0020】
更に、本実施形態の端子金具1には、それぞれの端子体30を保護する2つの保護体40を設けている。それぞれの保護体40は、導電板10から端子体30と同一方向に延出させた片状の部位であり、相互間にそれぞれの端子体30が配置されるように設ける。それぞれの保護体40は、互いの延出側の端面同士を繋いだ仮想線よりも辺部12側に全ての端子体30が存在するように延出させ、電気接続箱110に挿入される前の搬送工程等での端子体30への他部品等の接触を可能な限り抑えるようにしている。
【0021】
また更に、本実施形態の端子金具1には、導電板10に対して直交させた矩形の第1片部51と、導電板10と第1片部51に対して直交させた矩形の第2片部52と、を設けている。第1片部51は、折り曲げ辺11や辺部12とは別の辺部13側に配置される。この第1片部51は、辺部13から導電板10と同一平面上で突出させた連結部53を介して、導電板10に連結されている。その連結部53には、貫通孔53aが形成されている。その貫通孔53aは、端子金具1が電気接続箱110へと挿入された際に、電気接続箱110の内方の爪部(図示略)に係合して、端子金具1の電気接続箱110からの脱落を防ぐものとして利用される。第2片部52は、第1片部51における一辺(この例示では端子体30の配置されている側)を根元にして直角に折り曲げられた辺部である。この第2片部52には、貫通孔52aが形成されている。その貫通孔52aは、挿通されたスタッドボルト等の雄螺子部材(図示略)と当該雄螺子部材に螺合される雌螺子部材で電線を第2片部52に繋ぐために利用される。電線は、例えば端部に丸型端子(図示略)が接続されており、この丸型端子の貫通孔(雄螺子部材が挿通される孔)を介して第2片部52に共締めすることによって、この第2片部52に対して電気的に接続される。これにより、この端子金具1においては、その電線と端子体30との間の通電状態が構築される。
【0022】
この端子金具1では、通電された端子体30が発熱する。ここで、本実施形態の端子金具1においては、全ての端子体30の総表面積よりも表面積が広く、かつ、全ての端子体30の総体積よりも体積の大きい導電板10が設けられている。そして、その導電板10は、それぞれの端子体30に連接させている。このため、この端子金具1においては、端子体30の熱が導電板10に伝わって拡散するので、端子体30の温度上昇を抑えることができる。更に、この端子金具1では、その導電板10の熱が曲げ板部20にも伝わる。つまり、この端子金具1において、導電板10や曲げ板部20は、端子体30の温度上昇を抑えるための均熱板としての機能を有している。
【0023】
しかしながら、曲げ板部20は、それぞれの端子体30に連接させたものではなく、伝熱経路として見た場合、導電板10と比較して、それぞれの端子体30からの距離が離れているので、端子体30で発生した熱の均熱効果が低い。そこで、本実施形態の端子金具1では、導電板10と曲げ板部20とを接合させることによって、それぞれの端子体30と曲げ板部20との伝熱経路上での距離を近づけて、曲げ板部20による均熱効果を高める。具体的に、この端子金具1には、導電板10と曲げ板部20の平面同士を接合させるべくカシメ接合部60を設けている。この例示のカシメ接合部60は、互いに重ね合わせた導電板10と曲げ板部20の内の少なくとも一方における外方の平面から他方における外方の平面に向けた打ち込み加工によって形成されたものである。この例示では、一方(導電板10)における外方の平面から他方(曲げ板部20)における外方の平面に向けて打ち込み加工を行ったカシメ接合部60と、他方における外方の平面から一方における外方の平面に向けて打ち込み加工を行ったカシメ接合部60と、を設けている。
【0024】
カシメ接合部60は、一方(導電板10)における外方の平面から他方(曲げ板部20)における外方の平面に向けた打ち込み加工を行った場合、その一方における外方の平面の打ち込み部分を陥没させつつ内方の平面を突出させた第1凹凸部61(図1等)と、その第1凹凸部61における突出部分を介して他方における内方の平面を陥没させつつ外方の平面を突出させた第2凹凸部62(図2等)と、を有している。このカシメ接合部60においては、その第1凹凸部61における突出部分を打ち込み加工と共に第2凹凸部62における陥没部分に嵌合させる。
【0025】
また、カシメ接合部60は、他方(曲げ板部20)における外方の平面から一方(導電板10)における外方の平面に向けた打ち込み加工を行った場合、その他方における外方の平面の打ち込み部分を陥没させつつ内方の平面を突出させた第3凹凸部63(図2等)と、その第3凹凸部63における突出部分を介して一方における内方の平面を陥没させつつ外方の平面を突出させた第4凹凸部64(図1等)と、を有している。このカシメ接合部60においては、その第3凹凸部63における突出部分を打ち込み加工と共に第4凹凸部64における陥没部分に嵌合させる。
【0026】
このカシメ接合部60は、第1凹凸部61と第2凹凸部62との間及び第3凹凸部63と第4凹凸部64との間の嵌合によって、導電板10と曲げ板部20の平面同士を接合させることができる。その第1から第4の凹凸部61,62,63,64は、この技術分野において周知の形状のものを適用すればよく、その形状に応じた治具等を用いて当該形状に応じた打ち込み加工で形成される。この例示では、円錐台状の第1から第4の凹凸部61,62,63,64が形成されている。
【0027】
ところで、本実施形態の端子金具1では、展開形状における矩形の板状部分を前述したように折り曲げることによって、導電板10と曲げ板部20が形成される。このため、カシメ接合部60は、折り曲げ加工に伴うスプリングバックによって導電板10と曲げ板部20との接合状態が解除されないように形成する。
【0028】
このように、本実施形態の端子金具1は、導電板10と曲げ板部20の平面同士をカシメ接合部60によって接合するものであり、そのカシメ接合部60の第1から第4の凹凸部61,62,63,64によって、導電板10と曲げ板部20のそれぞれの表面積を増加させている。この端子金具1においては、端子体30の熱が導電板10と曲げ板部20に伝わって拡散するが、その拡散時間が短縮されるので、導電板10と曲げ板部20におけるそれぞれの均熱効果が高まり、端子体30の温度上昇の抑制効果を高めることができる。
【0029】
ここで、この端子金具1では、相対的に端子体30と端子体30に近い部分の温度が他の部分よりも高くなる。このため、カシメ接合部60は、少なくとも端子体30毎に設けることが望ましい。この例示では、第1凹凸部61及び第2凹凸部62から成るカシメ接合部60と第3凹凸部63及び第4凹凸部64から成るカシメ接合部60とを端子体30毎に交互に配置している。従って、本実施形態の端子金具1は、導電板10と曲げ板部20における端子体30毎の熱に対する均熱効果が高まるので、それぞれの端子体30の温度上昇の抑制効果を高めることができる。更に、このカシメ接合部60は、端子体30における導電板10側の根元部分に近づけて配置し、その根元部分の近くの導電板10と曲げ板部20の平面同士を接合させることが望ましい。例えば、カシメ接合部60は、導電板10の辺部12と曲げ板部20の辺部21とを接合させるが如く配置する。これにより、本実施形態の端子金具1は、導電板10と曲げ板部20における端子体30毎の熱に対する均熱効果の更なる向上が可能になるので、それぞれの端子体30の温度上昇の抑制効果を更に高めることができる。
【0030】
また、本実施形態の端子金具1は、カシメ接合部60によって、金属板等の導電性材料よりも熱伝導率の小さい部材から成る他層(接着層等)を介在させることなく、導電板10と曲げ板部20の平面同士を接合している。このため、この端子金具1においては、導電板10と曲げ板部20の平面同士を接触させることができるので、導電板10から曲げ板部20への伝熱効果が高まり、熱の拡散時間が短縮される。従って、この端子金具1においては、導電板10や曲げ板部20における均熱効果が向上するので、それぞれの端子体30の温度上昇の抑制効果をより高めることができる。
【0031】
本実施形態の端子金具1は、前述したように電気接続箱110の端子収容室111に収容されるので、電気接続箱110の筐体の構造如何で導電板10や曲げ板部20からの大気への放熱が難しくなる場合もある。しかしながら、ここまで説明したように、この端子金具1は、導電板10と曲げ板部20における均熱効果が高いので、かかる環境下であっても、それぞれの端子体30の温度上昇を抑えることができる。
【0032】
一方、本実施形態の端子金具1は、大気の流動性の高い端子収容室111に収容されている場合もある。この場合、この端子金具1は、カシメ接合部60によって、導電板10と曲げ板部20の表面積が広くなっており、かつ、導電板10と曲げ板部20の平面同士の接触と共に、この接触部分での導電板10と曲げ板部20の直交断面の断面積が増加しているので、放熱性能を高めることができる。よって、この場合の端子金具1は、この点からもそれぞれの端子体30の温度上昇の抑制効果を高めることができる。
【0033】
また、本実施形態の端子金具1は、カシメ接合部60によって、導電板10と曲げ板部20との間の開きが抑制されているので、電気接続箱110へと挿入する際における曲げ板部20の辺部21(図2等)の端面の電気接続箱110への接触を抑えることができる。このため、この端子金具1は、曲げ板部20の変形が抑制されるので耐久性が高まり、また、電気接続箱110への組付け作業性を向上させることができる。
【0034】
本実施形態の電気接続箱110は、その端子金具1が収容されたものであり、ここまで説明してきた端子金具1と同様の作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0035】
1 端子金具
10 導電板
11 折り曲げ辺(一辺)
12 辺部
20 曲げ板部
21 辺部
30 端子体
31 U字状部
32 接点部
60 カシメ接合部
61 第1凹凸部
62 第2凹凸部
63 第3凹凸部
64 第4凹凸部
100 相手側端子
110 電気接続箱
図1
図2
図3
図4
図5